第 2 話 初めての安眠
あれから5年の月日が過ぎ、ロシュエが治めている農場は、今も拡張工事を
行って要る。
「司令官、如何ですか、拡張工事は順調に進んで要るですか。」
今回の拡張工事は司令官からの提案だった。
「ハイ、閣下、今は、全てが順調です。」
この農場には、今まで、野盗からの襲撃が頻繁にあったが、司令官の見事
な作戦で、事極撃退したので有る。
「司令官、近頃は、全く野盗からの襲撃も無く成りましたね。」
「そう、言われましたら、そうですね。」
「やはり、司令官の作戦が素晴らしいからですね。」
「閣下、私は、当然の任務を果たしただけですよ。」
ロシュエは、次の事を考えていた。
「司令官、実はね、司令官が以前居られた城を もう一度見に行こうと思
って要るんですがね。」
「閣下、其れでは、私も同行させて頂きたいのですが。」
「オレは、別にあの城に住みたいと思って無いんですがね、あの城の周辺
を調査する必要があると思って要るんですよ。」
司令官は、ロシュエが、何故、今頃になってあの城を調べたいのだろうか
思うのだ。
「閣下、城の周辺をですか。」
「そうなんですよ、この農場は、今、拡張工事を行っていますが、一応、目途もついた
と思って要るんです。
それに、オレはね、この農場から殆ど出なかったので、周辺の状況がわからないんで。」
「閣下、わかりました、私も、お供をさせて頂きますので。」
「そうですか、では、司令官、何時頃に成れば、完成の目途がつくか、そ
れ次第で調査の日を決めて下さいよ。」
「閣下、わかりました、私は、現場の者に聞きますので、では、失礼しま
す。」
司令官はロシュエに敬礼し、部屋を出るので有る。
司令官は、各現場に向かい、状況説明を聞き、数時間後、ロシュエの部屋
に向かったので有る。
「閣下、報告致します。
各現場とも、この数日で完成するそうです。」
「司令官、其れは、大変ご苦労様でした。
では、数日後に完成すると言う事で、私は、それから、調査に向かう事に
します。」
「閣下、私も同行させて頂くのですが、護衛の兵士は何人位を同行させれ
ばよろしいでしょうか。」
司令官は、城に向かう途中が危険で有ると、考えていたのだ。
「司令官、途中にそれ程危険があると思われるのですか。」
「閣下は、この数年間、この城壁から遠くに行かれてないと、先程申され
ました。
閣下に、若しもの事が有れば、私は。」
ロシュエは、二コットして。
「司令官は、オレの身体を心配してくれるんだ。」
「勿論です、閣下の身体に若しもの事があれば、私は、この農場の全員か
ら恨まれますからね。」
司令官は、真剣な顔付きだった。
「司令官、オレの身体を心配してくれているんだ、有難うよ、わかりまし
たよ、では、兵士の数は司令官のお任せしますので。」
司令官の考えは正しいと、ロシュエは思ったのだ。
「そうだよなぁ~、司令官の言う事が正しいと思いますね。」
「閣下、5百の兵士を連れて行きますので。」
「では、宜しく、手配をお願いしますね。」
そして、数日後、拡張工事が完了したので有る。
「司令官、私達も出発しますかね~。」
「では、閣下、では、出発します、全員、出発。」
ロシュエと司令官が先頭になり、馬車10台と兵士の5百人は、ゆっくり
と城門をくぐって行くのだ、だが、本当の目的は別に有った。
「司令官、少し聞きたい事があるんですが。」
司令官は何事かと思った。
「閣下、何か心配事でも有るのですか。」
「いや、別に心配ごとでは無いんだが、我々の農場から見た、右側には森
が続いていでしょう、ところが、左側といえば草地だけですよね~。」
司令官は、何を言いたいのか意味がわからないのだ。
「閣下、その通りですが、其れが、何か。」
「草地だと言う事は開拓も行いやすいと思いませんか。」
ほんの数日前に拡張工事が終わったばかりだと言うのにと司令官は思って
要る。
「閣下、今の農地では狭いと思われるのですか。」
司令官は、何故、必要だと思って要る。
「司令官、私はね、今の事だけを考えて要るんじゃ~、ないんですよ、
我々の将来の事も考えないと駄目なんですよ。」
「閣下、其れは、私もわかりますが。」
「確かに、今は何も、問題は有りませんよ、でもね、何れ子供も大きくなり、新しい
家族が誕生しますよね。」
司令官もやっとわかったのだ。
「閣下、わかりましたよ、将来、我々の仲間が増える、その時の為に、今
から準備に入ると言う事ですね。」
「その通りですね、別に、今、直ぐと言う話しでは有りませんがね。」
ロシュエは、此れから、農場で生活する人達も増えるだろうと考えたので
有る。
「では、閣下は、お城に住まいを移されるのですか。」
司令官は、早合点をして要るのだ。
「司令官、オレはね、お城なんかに移る気持ちは無いよ。」
「では、お城には。」
「オレは、城よりも、この農場がいいんだよ~。」
司令官も、今は、農場での生活に満足しているのだ。
「閣下、私も、今は農場の生活が一番ですよ、でも、何かの目的があっ
て、お城を見に行かれるのですね。」
「その通りですよ、オレはね、お城は見せ掛けで、本隊は農場で生活をす
る、その意味はね、誰も、農場が本隊だとは思わないでしょう。」
確かに、その通りで有る。
誰が、考えても農場には農民だけが生活をして要ると、兵隊は城に居るも
のだと。
「確かに、閣下の言われる通りですね、私も、その様に思いますよ。」
「司令官、農場に兵士が居ないとどうなるかわかりますよね。」
司令官は頷いている。
「そう、司令官の思ってる通り、野盗は兵士に居ないところを襲撃します
よね、ですが、其処に、兵士が居ると、野盗も襲って来れないと、それ
に。」
司令官は、まだ有るとは思って無かったのだ。
「閣下、まだ、何か。」
ロシュエは、ニヤリとして。
「司令官、他の国からの攻撃も防ぐ事が出来るんですよ、之がね~。」
司令官もやっとわかったのか。
「閣下、では、城には、誰も居ないと考えれば、他国からの攻撃を受ける
心配は無いと言われるのですか。」
ロシュエは頷き。
「オレはね、絶対とは思ってはいませんよ、其処に誰も住んでいなけれ
ば、必ず、誰かが住むようになると思いますよ、でもね、住むと言う事は、
食べ物が必要に成りますね、でも、城に無いと成れば、住む事が出来ないと
思いませんか。」
「閣下、ですが、他国は、城主が居ない城に攻撃する必要は有りません。
私も、城主が居れば攻撃はしますが。」
「そうでしょう、でも、その城に定期的な巡回が有れば、何かがあったと
きには対策が取れると思いますがね、オレはね、城主じゃ~、無いし、国王
でもないからね、領土を増やす必要も無いと思って要るんですよ、それより
も、農地を増やす必要があると思っているんですが。」
司令官は感心しているのだが。
「閣下のお考えは、私にも理解は出来ますが、でも、他国から見ればです
が、結果的には領土を拡張していると見えますが。」
「司令官、オレもわかっているんですよ、だから、如何しても、調べたい
んですよ。」
果たして、ロシュエは何処まで調べるつもりなのか。
「閣下、調査される範囲は何処までと、考えておられるのですか。」
「司令官、オレも其処までは考えていませんよ、だからですよ、農場か
ら、あの城までと、今は考えて要るんですがね、城に到着後、数名の兵士に
付近の偵察に行って欲しいんですよ。」
「閣下、わかりました、その様に手配いたします。」
「頼みましたよ。」
ロシュエと司令官は、城に到着するまで、何度も草地を見ているのだ。
「司令官、この草地ですが、何処まで続いているんですかねぇ~。」
「この先ですか、私が偵察させたのですが、馬で朝出たとすれば、昼頃に
着くくらいまで続いていると聞いたのですが、でも、まだ先が有るそうです
よ。」
「では、其処まで草地が続いていると。」
「私は、その様に報告を受けたのですが。」
だが、草地は何処まで続いているのか、それに、その先が果たしてどうな
っているのか。
「司令官、問題は岩石がどれ程有るかと言う事ですね。」
「閣下、申し訳有りません、岩石までは確認しておりませんでした。」
司令官の報告が事実だとすれば、広大な農地が造れると考えたのだ。
「司令官、帰りに、もう、一度、調べましょうか。」
「ハイ、わかりました。」
その数時間後で有る、偵察に出た兵士が戻ってきたのだ。
「閣下、報告します。」
「何か、あったようですね。」
司令官は、わかってないのだが、兵士の顔付きが変わったので有る。
「ハイ、閣下、お城には、野盗が居りました。」
「人数はわかりますかねぇ~。」
「私の見たところでは、30人から50人くらいだと思います。」
「有難う、ご苦労さんでしたね。」
ロシュエは、偵察の兵士を労うのだった。
「では、司令官、野営する場所が決まりましたら、作戦を考えましょうか
ねぇ~。」
だが、ロシュエは、既に作戦は考えついていたので有る。
「閣下、了解しました。」
数時間後、野営地に着いたのだ、兵士達は直ぐに、野営準備に入り、ロシ
ュエと司令官のテントが最初に設営され、そこで作戦会議が始まったので有
る。
「司令官、明日の作戦は簡単に考えています。」
と、簡単に言ったロシュエだが、司令官は深刻に考えて要るのだ。
「閣下の作戦はどの様は方法を。」
「司令官、城門を中心にして、左右に兵士を配置し、司令官と二人で中に
入るんです。」
「そんな事をすれば、正面から狙われますよ。」
ロシュエは二コットして。
「オレに任せて下さいね、明日は早立ちしますからね。」
ロシュエは、朝、太陽が出る前に城門前に到着する事を考えていたのだ。
「閣下、わかりました、では、私も戻りますので。」
明くる朝といっても、まだ、夜明け前の薄暗いときに出発した兵士達は、
太陽の昇る前に城門を取り囲んだので有る、
「お~い、誰か居らんのか。」
ロシュエは大声で言ったのだ、すると中から。
「なんだ、お前は。」
「オレの事かい、オレはなぁ~、この一帯を治めている領主様だ、お前達
は誰の許しを得て、この城に居るのだ。」
ロシュエの芝居は見事で有る。
「此処は、オレ様の城だ、誰の許しも必要は無い。」
「じゃ~、聞くが、外から入る城門以外に入口は無いと思って要るだろう
がな、オレ様が領主と言う事は、この城の抜け道を知って要ると言う事だ、
今、その抜け道に、わが軍の精鋭部隊、千人が入って行く、だが、お前達が
城門を開け、オレと司令官を入れるので有れば、突入は中止するが、どう
だ。」
この男は、多分、野盗の親分だろうと思った。
「あんたが親分か。」
「そうだ、其れが、どうしたんだ。」
ロシュエの芝居は本物なのか、と、司令官は思って要る。
「親分さんよ、お前達は、この城に食べ物は無い事は知って要るよなぁ
~。」
「そんな事は知って要るが、それがどうしたんだ。」
「今、お前達に食べ物はあるのか。」
「何を、言ってやがるんだ、オレ様はなぁ~、名の通った野盗、食料は何
処からでも調達が出来るんだよ~。」
「わかった、じゃ~、この城で篭城するんだなぁ~。」
「何が言いたいんだ。」
「オレ達は、食料も十分にある、それとだが、昼前には、5千人の兵士が
到着するんだ、その時には、一斉攻撃に入る、勿論、抜け道からもだよ、其
れは、皆殺しだと言う事だ。」
この親分らしき男、何を考えて要る。
「来るなら来い、全員、オレ様が殺してやるからよ。」
「わかった、わかった、じゃ~、好きにしろよ、オレ達は今から、朝飯に
するからな。」
兵士の数人が、わざと火を起こし、馬車から大きな荷物を運びだしたの
だ、その荷物は城門から見えるところで、大きな鍋からは、香しい香りだ漂
ってくる、兵士達のスープだ、ロシュエと司令官は城門の近くまで行き、ス
ープを飲む、当然、城内にも香りが漂って来る、城門の上には、5人、10
人と野盗達が見ている。
「どうだ、欲しいか、別に無理する必要な無いぞ。
その時。
「閣下、昼前に、我が軍、5千人が到着します。」
之は、一人の兵士が取った、咄嗟の芝居だった。
暫くして、城門が開いた。
ロシュエと司令官は、悠然と城内に入って行く、二人が入ると、城門は閉
まり。
「オイ、話を聞こうか。」
先程の親分らしき男である。
「オイ、お前、立ち話じゃ~、駄目だよ、中に入って、ゆっくりと話をし
ょうじゃ無いかよ~。」
ロシュエは、その後、何も言わず、城内のあの食堂に入って行く。
其れは、この城内を知って要るものだと思わせるのが目的で、男の顔色が
変わった。
それに、まだ、数人の男達の居たのだが。
「オイ、まぁ~、座れよ。」
ロシュエの口調は荒い、親分らしき男と数人の男も座ったが、何か怯えて
いる様子だ。
「お前達は、いつから、この城に居るんだ。」
「5日前からだ、其れがどうしたんだ。」
「じゃ~、この城内は一応調べたのか。」
「当たり前だ。」
「お前達ははじめから野盗じゃ~、無いな。」
ロシュエは見破ったので有る。
其れは、何処から見ても、元兵士の姿では無かったからだ。
「何故だよ~。」
[其れよりもだ、何で、お前達は野盗に成ったんだ。]
男は直ぐには答えなかったのだが。
「話したくないんだったらいいが、ところで、お前達は腹が減ってないの
か。」
それでも、何も言わないが、腹の虫が、グ~と鳴ったので有る。
「お前、何も言わなかってもだ、腹の虫は泣いてるぞ、腹が減ったと。」
「何が、言いたいんだ、早く言え。」
「よし、わかったよ、オレはさっきも言ったが、この一帯を治めている領
主様だ、勿論、この城もだ。」
「じゃ~、何で、此処に住んでないんだ。」
そうきたか。
「オレの住みかの話か、オレ達は、この先にある、城壁に居るんだよ。」
また、男達の顔色が変わった。
「どうしてだ、何か、恐ろしい事でもあるのか、この城に。」
「じゃ~、お前は、あの城の主か。」
「そうだよ、其れが、どうしたんだ。」
この野盗たちは城壁の事を知って要るのか、男達はぶるぶると振るえ出し
たので有る。
「オイ、何を震えているんだ。」
「じゃ~、聞くが、30日位前に野盗が。」
「あ~、あの野盗か、あいつらなら、全員殺したよ、簡単な事だ。」
其れは、事実だった。
「オレ達は、敵が野盗だろうが他国の兵隊だろうが、必ず、反撃し、全員
を殺す、後は、森の獣が処分してくれるからな、それに、オレ達の城壁は絶
対に破る事は出来ないんだよ、中には、5万人の精鋭部隊が居るんだか
ら。」
「じゃ~、聞くが、その野盗の死体は如何したんだ。」
「奴らの死体か、森に放り込んだ、後は、獣たちの餌になって、後に残るの
は、骨だけだ、そんな簡単な話を何故聞く。」
ますます、男達の顔色が変わっていく。
「どうだ、オレ達の軍隊と戦うか、それとも、この城を出て行くかだ、そ
うだ、司令官、5千の兵士は。」
「多分、少し離れた所の森に潜んでいると思いますが。」
司令官もとぼける事が上手になってきた。
「じゃ~、司令官、オレ達が昼飯の時に、一斉攻撃に入って下さい。
勿論、全員生かして置く必要は有りませんからね、死体は。」
「オイ、オレ達は、まだ、何も言ってないんだ。」
ロシュエは二コットして。
「そうか、悪かったな、で、話しとは、なんだ。」
「オレ達も好きで野盗をやっているんじゃ~無いんだ。」
そら、きたぞ、と、ロシュエは。
「好きでやっていないとは、どう言う事だ。」
「実は、オレ達も、元は農民だったんだ。」
「うん、わかったが、じゃ~、何で、野盗に成ったんだ。」
ロシュエは、あくまでも強気だ。
「オレは、この土地も者じゃ~無いんだ、遠くの国で作物を作ってたん
だ、其れが、ある日、突然、野盗に襲われ、村の者の殆どが殺され、作物も
全部持って行かれたんだ、それに、オレの子供達も全員殺され、何故かわか
らんが、オレだけが生き残ったんだよ、それで、仕方なく野盗に成ったん
だ、生きて行く為にだ。」
ロシュエは見抜いていたので、話は簡単に出来たので有る。
「オレは、直ぐにわかったんだ、お前達は、初めから野盗じゃ~、無かっ
たとね。」
「それじゃ~、オレ達をどうすんだ、殺すなら、早く殺せ。」
「此処で、殺されたいのか、それとも、オレ達の農場で働くかだ。」
「正直言って、オレは村に戻りたいんだ、仲間と相談させてくれ。」
「よし、わかった、だがな、そんなに時間を待つ積もりは無いぞ、早く答
えを出す事だ、其れと、この城から無事に出たいのならば白旗を上げ、全て
の武器を渡す事だ、どうだ、わかったか。」
ロシュエと司令官は直ぐに城を出た。
そして、暫く城門で待って要ると、白旗を上げ、弓矢やヤリを持って、全員
が出てきたので有る。
その人数は49人であった、後は、馬と数十台の馬車もあった。
「オレ達は、全員降伏します。
49人と馬、馬車も全部持ってきました。」
「よし、わかった、ところでお前さん達、食べ物は有るのか。」
「いいえ、何も有りません。」
と、先程までとは違い弱弱しい声だった。
「何時から食べてないんだね。」
「3日前からです。」
「よし、わかった、朝、作ったスープとパンが有る、おーい、彼らに、ス
ープとパンを食べさせてやってくれ。」
「閣下、わかりました。」
野盗達は嬉しかったのだ。
「お前さん達、あの場所に行け、スープとパンが有るからよ。」
「有難う、御座います。」
と、元野盗の49人は静かに向かうのだった。
「司令官、これで一件落着だなぁ~。」
司令官は、ロシュエの話術に感心するので有る。
「閣下、見事ですね。」
「えっ、何が。」
「閣下の話術ですよ。」
「あれか、あれは、全て、咄嗟の思いつきなんで、オレは、何も考えない
んでねぇ~。」
その頃、元野盗の49人は、静かにスープとパンを食べている。
「兵隊さん、あのお方は。」
元野盗はロシュエの事が気になるのだろう。
「我々の将軍だよ。」
「えっ、将軍様なんですか。」
「そうだよ、でもなぁ~、将軍は、我々、兵隊よりも、農民を大事にされ
る人なんだ。」
側に居た、元野盗は驚いているのだ。
「将軍様は、兵隊さんよりも農民を大切にされるって、オレ達も農民だっ
たんですが、今まで、そんな話は聞いた事が有りませんよ。」
数人の元野盗も頷くので有る。
「其れが、本当なんだよ。」
「それじゃ~、オレ達がお城に居た事は、将軍様は知ってたんですか。」
元野盗は、信じる事が出来ない、兵隊といえば、全て、城主の命令で動
く、其れは、司令官や将軍も含めてで、その将軍が、農民を大切にすると
は。
「あんた達は、本当に運が良かったんだよ。」
「えっ、オレ達は運がよかったんですか。」
「そうさ、我々の城壁を攻めてきた野盗は、全て殺されたよ。」
だが、実は、数人が生き残り、他の野盗に話していたのだ。
「兵隊さん、オレ達は生きに残った者から聞いたんだよ。」
兵士は興味を示したのだ。
「なんて、聞いたんだ。」
「其れが、南の方に有る、大きなお城を攻撃すると、全員が殺されるって。」
「そうだよ、我々の城壁を攻め落とす事は不可能だよ。」
兵士は自慢で有る。
「じゃ~、兵隊さん、そのお城に何人位の兵隊さんが居るんですか。」
「そうだなぁ~、5万人は居るよ。」
と、この兵士の気分は最高だったのだ。
「え~、5万人も兵隊さんが居るんですか、それじゃ~、50人や百人の
野盗が攻めても無駄なんですね。」
「その通りだよ、でも、将軍はなぁ~、本当は戦が大嫌いな将軍なんだ。」
元野盗は、またも驚き、将軍といえば戦争が大好きだと、今まで思ってい
たので。
「オレ達は、将軍様だから、一番、戦争が好きだと思っていたんです
よ。」
兵士も、今では戦争なんかしたくないと思って要る。
「我々はなぁ~、初めの頃は、戦争で人を殺す事が大事だと思っていたん
だ、それが、将軍に出会ってから考え方が変わったんだ、其れは、命が一番
大事だとね。」
「オレ達も、本当は野盗なんて成りたくて成ったんじゃ~、無いんですよ、仕方なし
なんですよ。」
数人の元野盗も頷いている、その目は悲しげだった。
「そうか、じゃ~、我々の農場に行けば、今の話が本当だと思うよ、話は
止めて、早く食べな。」
と、兵士は二コットして、熱いスープを入れるのだった。
「兵隊さん、本当に農場に行けるのかねぇ~。」
元野盗達は不安そうな顔つきで有る。
「何も、心配するなよ、将軍は、お前さん達が考える様な将軍じゃ~無い
からさぁ~。」
と、言って、他の者にもスープを入れて行くのだ。
元野盗達は頭を下げ、スープとパンを食べるので有る。
その頃、農場に早馬が向かっていた、農場では、拡張工事は完了したのだ
が、森に入り、木を切り出す作業が行われていた、冬の備えで有る。
「おーい、切り出すときは危ないからなぁ~、注意してくれよ。」
この頃に成ると、作業別に、数百人から、数千人規模の組織が出来上がっ
たので有る。
それでも、3日働き、1日は休みを取る事だけは継続して行われていた。
話は戻り。
「司令官、この城の事なんですがね。」
「閣下、私も、少し気には成ってはいるんですが。」
「やはり、司令官もですか。」
この城は司令官が元居た城で、今は、誰も居ないので有る。
「オレはね、この城に入る事だけはいやなんだ。それは、城が、何か知りま
せんがね、冷たいですからねぇ~。」
「私も、同じですよ、今は、お城よりも、あの農場での生活が一番楽しい
ですから。」
ロシュエも司令官も、やはり、農場が一番だと思って要るのだ。
「司令官、話は変わりますがねぇ~、この城もそうですが、司令官は3百
人ほどの兵士を連れて、この当たりを調べて下さい。」
司令官もわかっていた。
「閣下、私も、先程から考えておりました、この任務は、今は、大事だと
思っています。」
「それで、途中、野盗に遭遇すると思いますが。」
「閣下、私も、その事を考えておりました、野盗で有っても、元は農民達
だと考えるのですね。」
司令官は戦をするのではなく、農民達を助けるのだと考えたのだ。
「その通りですよ、オレはね、農民達を助けたいんです、今は、確かに野
盗ですがね。」
ロシュエの思いは通じるで有る。
「閣下、人数が有る程度になれば、私も農場に戻りますので。」
「司令官、この任務は大変難しい任務ですがね、其処のところは宜しく頼
みますよ。」
「わかりました、それで、今日は、どの様にされますか。」
ロシュエは暫く考え。
「オレ達は戻りますよ、残りの兵士と野盗達とですが。」
「閣下、私達は、暫く進み、野営の後、調べに入りますので。」
「じゃ~、司令官、頼みますね、其れと、戻る兵士ですが。」
「閣下、承知しております、年配者を帰すのですね。」
司令官もわかっていた、その後、司令官は農場に戻る兵士を選び、ロシュ
エは野盗達を引き連れて戻って行くのだ、兵士達はお互いが手を振ってい
る、やはり、この兵士達は普通の兵士では無かった。
ロシュエと分かれた司令官達の行く先には、果たして何が有るのか、其れ
は、司令官も知らないので有る。
ロシュエ達も数日後、農場に戻ってきた。
出迎えたのは、何時もの、技師長と農民の代表と数人の兵士だった。
「よ~、みんな、長い間、留守にして済まなかったなぁ~、オレの居ない
時、何か、特別な事でも有りませんでしたかねぇ~。」
ロシュエは、久し振りに戻った、我が、農場が、やはり一番だと感じてい
た。
「閣下、何も有りませんでしたよ。」
「そうか、何も無かったか、有難うよ。」
農民の代表は、ロシュエが連れてきた、元野盗を見ている。
「みんな、聞いてくれ、此処に49人の元、元だよ、野盗だった人達が居
る、だけど、話を聞けば、彼らも、元は農民だったそうだよ。」
「将軍、それで、この人達も我々の農場で働くんですか。」
代表は、何かを知りたいのだ。
「そうだよ、それでだ、今日、突然来て、直ぐに仕事をしてくれとは、オ
レも言えないんだ、だから、明日から、この農場で働いてもらう事にし
た。」
「将軍、その人達も、元農民だと言われましたが、オレ達はすぐにも仕事
に就いてもらいたいんですよ。」
「何、それ程、今、人が不足しているのか。」
実は、人員不足だったのだ。
「そうなんです、数年前に来られた人達が、新しい農場で仕事をして要る
んですがね、将軍、冬に一番必要な蒔きを切り出すために、多勢がいるんで
すが、今、丁度、両方の農場で収穫時期に入ってまして、森に行く者が居な
いんで、オレ達も本当は困っていたんですよ。」
ロシュエは、冬の準備を忘れていたのでは無い、其れは、穀物が今年が大
豊作になり、収穫する作業に全員が入って要るためだった。
「そうか、オレとした事が、オレの勝手な行動で、みんなに迷惑を掛けて
しまって、申し訳ない。」
将軍が農民に頭を下げている姿を見た元野盗の49人は驚きの為に何も言
え無かった。
「将軍が悪いわけじゃ~無いよ、オレ達も、今年、こんなに、穀物が取れ
るとは予想もしなかったんだから。」
「本当にそんなに出来たのかよ~。」
ロシュエも長い間、農地に入って無かったので知らなかったので有る。
「それで、将軍、今、収穫している穀物を入れる倉庫も足りないんだよ、
倉庫も作り、森に行く事も、昨日もだけど、将軍が出発した後に、みんなで
相談して、将軍が戻ったら、兵隊さんに森の入ってもらう様に頼もうと決ま
ったんだ。」
「そうか、わかった、お前達、今、聞いたとおりだ、我々の兵士と一緒に
森に入って、冬に必要な蒔きの切り出しに行ってくれ。」
「将軍、戻ったばかりなのに、無理を言って済まないです。」
「いや~、いいんだよ、だけど、少しだけ休ませて欲しいんだよ。」
「将軍、自分達は馬の交換に行きますので。」
兵士達は、農場近くに有る放牧場に馬を連れて行くので有る。
「お前達も手伝いに行ってくれ、場所は兵士が教えてくれるから、其れ
と、馬車は倉庫の前で切り離してなぁ~。」
「将軍様、わかりました、では。」
元野盗の言葉使いが、全く変わったのだ。
「オレを呼ぶときにはよ~、様は付けないでくれよ頼むからよ~。」
野盗は頷き、兵士と共に、馬の放牧地に向かうので有る。
「将軍、司令官は。」
「あ~、司令官ね、司令官は城の周辺を偵察に行ったよ。」
「偵察にですか。」
代表は、今は、人手が必要なのに、何故だと思って要る。
「そうなんだ、この農場と城の付近には、何も無いんだが、さっきも見た
とおり、野盗がどれだけいるのか調べるのが大事だと思ってな。」
「でも、将軍。」
「わかってるよ、人手が不足している事はわかったよ、だけどね、野盗や
付近の情報も大切なんだよ、確かに、この城壁は頑丈に造っているよ、で
も、其れは、何時かは壊される可能性が有るんだ。
オレは、兵隊だから、何時、死んでもと覚悟は出来ているよ、しかし、君達
は農民だ、その農民が安心出来る場所を造る事も、オレの仕事なんだよ、わ
かってくれよ。」
「将軍、すまない、オレ達は、自分達の事だけを考えていたんだ。」
「何も謝る事は無いんだ、それで、さっきの話だけどなぁ~。」
代表も理解したのだ。
「将軍、冬の準備の話ですか。」
「そうだよ、この森は、大変な広さだよ、あの城まで続いているんだか
ら。」
「へぇ~、そんなに大きいんですか。」
代表達は大変な驚きで。
「オレもなぁ~、初めて知ったんだ、だからよ、当分は木材の心配は無いと
言う話ですよ、ハ・ハ・ハ。」
代表たちは、将軍とは、大変なんだと、其れは、自分達農民の事を何時も
考えて要ると。
「君達の気持ちはわかっているよ、だけどね、オレ達が城に行った事で、
農場前の森の大きさもわかったんだ。
オレ達の仕事はやはり大事だとわかって欲しいんだなぁ~、すまんがねぇ
~。」
ロシュエは、二コットしたのだ。
「将軍、オレ達は、何も知らずに言ってしまったんだね。」
代表達も少しわかってきたので有る。
その頃、あの野盗達は、放牧場に向かっていた。
「オレ達は本当に運がよかったんだなぁ~。」
「そうだなぁ~、あの時、兵隊さんと戦を始めたら、今頃、オレ達は、あ
の城の近くで転がっていたんだなぁ~。」
「本当だよ、あの将軍様のお陰で、オレ達は助かったんだ、此れからは、
みんなと一緒にあの農場で働こうなぁ~。」
「うん、オレも、頑張るよ。」
野盗達も、次第にわかってきたので有る。
「兵隊さん、さっき、将軍様は頭を下げられましたけど、あの人達は。」
「あ~、あの人達ですか、あの人達は、この農場で働く農民の代表です
よ。」
「えっ、本当なんですか、でも、将軍様は農民に頭を下げるんですか。」
確かに、彼らが思う事は当然だった、将軍が農民に頭を下げるとは、聞い
た事が無い。
「将軍は、其れが当然だと思って要るからだよ。」
「でも、将軍様は、大変、偉い方だと思うんですが、オレ達は、初めて見
て本当に驚いているんですよ。」
「そうだなぁ~、誰でも、初めて見たら驚くよ、だけど、将軍は、何時
も、農民の事を考えておられるんだ、それに、将軍は、オレ達、兵士も同じ
仲間だと言われているんだ。」
「へぇ~、じゃ~、兵隊さんも、農民も同じ仲間だと言われるんです
か。」
「そうだよ、だから、此処では全員が仲間なんだ。」
「じゃ~、オレ達も入れるんですか。」
「多分、そうなると思うがなぁ~、さっきも言ったと思うけど、将軍は農
民の見方だからねぇ~。」
そして、10日が過ぎた頃だった、この城壁には、野盗や敵の襲撃を見張
る兵士が多く城壁の上で見回りを行って要るのだ。
「おーい、多勢の人間が来るぞ~、将軍に伝えてくれよ。」
「わかった、だけど、其れは、兵隊かそれとも、民間人なのかわからない
か。」
「其れが、まだ、遠くてわからないんだよ~。」
「じゃ~、将軍に伝えるが、はっきりしたら教えてくれよ。」
城壁の端に居た兵士が叫んだので、兵士達は次々に伝えて行く。
「将軍、今。」
「あ~、聞えていたよ、オレも直ぐに行くが、兵士全員を配置に着かせ
よ。」
「将軍、全て、配置済みです。」
「よし、じゃ~、行くぞ~。」
「ハイ、将軍。」
「おーい、司令官だよ、それに、はっきりとはわからないが、大勢を連れ
ているよ。
馬車も数十台は有るなぁ~。」
「わかったよ、将軍に伝えるから。」
また、次々と伝言は伝わり。
「よし、わかった、城門を開け。」
やがて、司令官と兵士、更に、野盗と思われる人達が百人程度が城内に入
ったのだ。
馬車も数えると、50台は有った。
司令官は馬から降り。
「閣下、只今、戻りました。」
「司令官、大変、ご苦労さんでしたね、それに、随分と収穫もあったよう
で。」
ロシュエの期待通りだった。
「お~い、みんな、手伝ってくれ、馬は放牧場に、其れと、熱いスープと
パンもだ。」
「将軍、準備は終わって要るよ、後は、私達に任せなよ、将軍は何もしな
くていいから。」
「女性は食事の用意をしておくれ。」
と、年配の女性は、女性達に食事をするように言ったのだ。
「有難うよ、じゃ~、頼むよ。」
「ハイよ。」
此処の女性達は、何時も朗らかだ。
「司令官、まぁ~、座って。」
司令官はゆっくりと椅子に座ったのだ。
「ハイ、司令官、熱いからね、火傷をしない様にね。」
「ほら、慌てちゃ~、駄目だよ、本当に熱いんだからね。」
ロシュエは二コ二コとして見ているのだ。
「ハイよ、将軍もだよ、熱いからね。」
司令官は本当に堅物だが、此処の女性陣には頭が上がらないのだ。
「有難う。」
と、司令官は女性に微笑むのだ。
「閣下、私は、此処の女性が苦手ですよ。」
「司令官でも、此処の女性に勝つ事はできないんだなぁ~。」
側に居る兵士達も知って要るので笑っている。
「じゃ~、司令官、お話を伺いましょうかね、その前に、彼らは。」
「其れがですね、閣下とお別れして、3日後に小さな城に野盗、其れが、
彼ら、百人で。」
「ほぉ~、百人も居るんですか。」
「それに、馬車も50台有るんですが、その中に、閣下も驚かれる武器が
入って要るんですよ。」
「司令官、じゃ~、先に、その武器を拝見しますかねぇ~。」
二人と、数人の兵士が同行し、馬車を見に行くのである。
数分後だった。
「閣下、この馬車の積荷なんですよ。」
兵士が馬車の幌を取ると、中には、今まで、見た事も無い武器があったの
だ。
「司令官、之は。」
「閣下、彼らの話では、自分達が考案した武器だと言うのですが。」
司令官は、中から一つ取り出し、使い方を説明するのだ、だが、ロシュエ
が驚くのは、別の使い方であった。
「閣下、これなんですが、連続で発射が出来るんですよ。」
「えっ、本当に連続で発射が出来るんですか、オレも初めて聞いたよ。」
司令官は、発射の準備に入った、そして。
「閣下、見てて下さいね。」
と、言って、司令官は引き金を引くと、其れは、次々と飛び出す。
司令官は名手である、用意された的の中心部に当たる。
次に司令官は何時も使用して要る、自分の弓で的に向けて矢を放つのだ、
勿論、命中はするのだが。
「閣下、この武器なんですが、この部分で糸を引くので力の弱い女性でも
使う事が出来るのです。」
「司令官、この武器は大変な威力ですね、何丁くらい有るんですか。」
「其れが、百丁もあるんです。」
「百丁もですか。」
百丁もあれば、何時もの数倍、いや、数十倍の敵を渡り合えるとロシュエ
は思った。
「閣下、実は、私も初めて見る武器なんですよ。」
「えっ、本当に、司令官も知らない武器が有るんだ、本当に驚きだなぁ
~。」
司令官が知らないとは、ロシュエや司令官が普段使っている飛び道具は弓
だ、だが、この武器は小型で、しかも、連続発射が出来る。
「閣下、それで、私達も、この新しい武器を使用したいと思って要るので
すが。」
「司令官、之は、此処を襲う敵にすれば、大変恐ろしい武器になります
よ。」
だが、司令官は別の事を考えていたのだ。
「閣下、この武器ですが、農場の鍛冶屋が作る事は出来ませんでしょう
か。」
ロシュエは驚きもせず、二コットして。
「司令官、オレも同じ事を考えていたんだよ。」
司令官も、この数年間で、ロシュエの考え方がわかってきたのである。
「其れと、彼らにも、この武器を作る作業をさせようと思って要るんです
が。」
「うん、それで行こうか。」
「じゃ~、私は、彼らに伝えますので。」
「頼みますね、彼らの事ですが、やはり農民でしたか。」
「その通りです、彼らも、あの城に居ました者達と同じでしたよ。」
「じゃ~、この農場で働く事に。」
「そうです、彼らのも数日間、何も食べて無かったそうで、閣下と同じ作
戦を使ったら、簡単に諦めましたよ。」
と、司令官は二コットするので有る。
「奴らも、やはり、同じ境遇の弱い人間だったと言う事か。」
「そうですね、考え方を変えれば、彼らも被害者だと言う事に成ります
ね。」
「司令官も考え方が変わってきましたね。」
「私は、閣下とお会いしてからですね、其れまでは、城主の言う事が全てで
したから。」
「でもね、あの城主もわかっていたんですね、領民が大切だと言う事
が。」
「私も、今は、同じ様に思います。
でも、あの城では、表面的には城主が握っていましたが、本当は、あの家
臣たちが好きな様にやっていましたので。」
「じゃ~、司令官の立場は。」
「私は、城主の気持ちを知っておりましたので、何とかせねばとは思っていたんです。
でも、現実は、家臣の思い通りに行われていましたので、それに、私は、
一応、司令官だったんですが、実は、古参の兵士が裏の司令官で、その兵士
に逆らう兵士は降りませんでした。」
「それじゃ~、司令官の周辺は敵ばかりだったと。」
「そうなんです、私の本当の部下は、十数名でしたから。」
「じゃ~、あの時、この城壁には、何の為に来たんですか。」
あの時に司令官が来た本当の訳が次第にわかってくるのである。
「この農場の情報は、お城でも知っておりました。」
「では、早くから知られていたんだ。」
「その通りです、それで、私に命令が下されたんですよ。」
「其れは、オレ達を招きいれて殺そうと。」
之は、驚いたのだ、ロシュエは知らなかったのだ。
「そうです、城主は、私と領民を助ける事を考えていたんです。」
「ほぉ~、司令官と領民を助けるとはね。」
「でも、古参の裏司令官は、私と部下をこの農場に行かせ、閣下と戦い殺
される様に考えたんですが。」
ロシュエの思わぬ行動に戦にはならなったのだ。
「ですが、結果は別の方向に行ったと言う事ですか。」
家臣たちの思い通りには行かなかったのである。
「そうなんです、閣下は、戦をしたくない人ですから、家臣たちの思い通
りには行かず、結果は、私と城の兵士ほぼ全員ですね、後は、領民が、この
農場に来る事が出来たと言う事です。」
「じゃ~、裏の司令官はどうなったの。」
「私達が城を出る時にはいませんでしたね、何処に行ったのかは知りませ
んが。」
「そうだったのか、司令官も辛い思いをしたんだなぁ~。」
「いいえ、私は、別に何とも思っていません。
其れよりも、城主には申し訳なかったと思います。」
「そうだな、オレも、今は、後悔しているよ、本当に悪い事をしたってな
ぁ~。」
「でも、閣下、私達と領民は、此れからの先の事を考える必要が有ると思
うのです。」
司令官は、今まで有った事を早く忘れたいのである。
「そうだな、此れから先が大事だからなぁ~。」
「私は、閣下の下で働ける事を、今は、幸せに思っています。」
「ありがたいね、オレのような男に、本当に嬉しいよ。」
司令官は、この10日間の報告をしたいのだが。
「閣下、この10日間の報告なんですが。」
「司令官、其れよりも、さっきの武器の話を先に終わらせたいんだ、それ
に、百人の内、何人が武器を作る作業に入れるかだ、其れに、オレは、この
森から、早く冬に必要な木材を切り出しを終わりにしたいんだ。」
「わかりました、その切り出しに、彼らと、戻ってきた兵士も参加させま
すので。」
「済まないねぇ~、でも、今、直ぐに行く必要は無いんだ、前に着いたも
の達が、今、切り出し作業に入って要るから、兵士も少しは休養させたいん
だ。」
「じゃ~、私が、今から、伝えに行きましょうか。」
と、司令官は席を立とうしたのだが。
「司令官が直接、行く必要は無いよ。」
ロシュエは、側の兵士に行かせるのだった。
「司令官も、少しは休みを取ってから報告すればいいんだ、何も急ぐ必要
な無いからね。」
と、ロシュエは休む事を進めるのだが。
「でも、閣下、私は、先に報告してからにします。」
やはり、司令官は堅物である。
「わかりましたよ、では、お聞きしましょうか。」
と、ロシュエは少し、笑みを浮かべるのである。
「閣下、先ほど到着した野盗から聞いたのですが、彼らが居た城から、馬
で10日以上行っても、何も無いと言うのです。」
「でも、その小城まで、何日掛かったんですか。」
「閣下とお別れして、約2日のところです。」
今日、到着した野盗の話しが本当だとすれば、農場から、10日間、いい
や、15日間以上行っても何も無いと言う事になる。
「じゃ~、野盗の話を信用すれば、15日間も行ったところで、何も無い
と言う事に成りますね~。」
「閣下、私も、実は驚いています。
以前に居た、城の周辺というよりも、あの辺りには、何も、無いと言う事
を、初めて知りました。」
「では、この農場から出ると言う事は命の危険が有ると言う事になるの
か。」
「閣下、その通りに成りますね、更に、戻る途中には、大きな森が有り、
森の周辺では、獣が多くおります。」
「獣とは狼の事ですか。」
「その通りです、私達も夜になると、警戒を強めたんですがね、あの目だ
けは、今でも、恐ろしいですよ。」
ロシュエ達が、この地に到着した頃、夜に良く遠吠えを聞いたのである。
「司令官、じゃ~、あれだね、この農場を更に大きくして、城壁はもっと
高くする必要が有るね。」
「私も、其れが良いと思います。
狼の群れも百頭や2百頭位ですが、どれだけの群れが有るのかわかりませ
んので。」
ロシュエは感じていたのだ。
「それじゃ~、司令官が戻る途中にも、多くの群れがいたと言う事か。」
「そうです、私達が、この農場に戻った事は、群れも知って要ると思うの
です。」
狼の恐ろしさは、ロシュエも知って要る、狼は猪と違い、俊敏で跳躍力も
猪の比では無いのだ。
「司令官、之は、大変だな、人間の行動は読めるが、狼の行動は読めない
からねぇ~。」
「そうなんです、私は、多分ですが、いくつかの群れが、この農場を襲う
事は間違いは無いと思います。」
司令官も、急ぐ必要が有ると考えて要る。
「わかった、今から、隊長と、農場の代表を呼んで、大至急対策を考える
事にする。
司令官、悪いが各隊長の集合と代表に集合を伝えてくれないか、オレは、
技師長と先に対策を考えて要るからよ~。」
「閣下、わかりました、では。」
司令官は、その足で兵舎に向かうのである。
ロシュエは、技師長を呼んだ。
技師長は、大変な事態と聞き、大急ぎで、ロシュエの部屋に来たのであ
る。
「将軍、大変な事態だと聞いたんですが、一体、何が起きたんですか。」
「やぁ~、技師長、まぁ~、座ってくれよ、実は、話は急を要するだ。」
技師長も、元は農民で、狼の恐ろしさは、誰よりも知って要るのだ。
「さっき、司令官から報告があったんだが、この農場から、10日間から
15日間も行ったところまでは、何も無いそうだ、だが、この間に大きな森
があって、其処には我々が考えもしなかった、狼の群れが相当いるらしいん
だ。」
技師長の顔色が変わり、恐怖に襲われたのである。
「将軍、今の話、本当なんですか、狼の群れがあると。」
「うん、本当らしいんだ、しかも、司令官達が戻る途中に、後ろからも付
けて来たらしいんだ。」
「其れじゃ~、この農場の事も知られていますね。」
「多分、そうだと、思うんだ。」
「将軍、私も、狼の恐ろしさは嫌と言う程知っておりますので。」
その時、司令官と隊長達と代表が入ってきた。
「みんな、座ってくれ、司令官、今、技師長に話を始めたばかりなんだ、
悪いが、もう、一度、説明を頼むよ。」
「ハイ、では、最初から説明します。」
司令官は、今までの事を説明するが、内容は簡単だった、そして、対策も
考え、実行する事に成ったので有る。
「閣下、あの武器を使いましょう。」
「そうだな、ただ、兵士は、使い慣れていないから、今日来た、元野盗を
配置する方がいいと思うんだが。」
「勿論です、彼ら全員配置で行きますか。」
「いや、司令官、半分にしてくれ、此れからは、昼も夜も関係なく、警戒
する事になるからね、其れと、兵士は何時ものメンバーで頼むよ。」
「閣下、了解しました。」
「其れと、技師長、城壁の高さはどうだろうか。」
「将軍、これだけの高さで十分です。」
「そうか、わかった、問題は、森に入る、木材の切り出し作業だな。」
「オレ達も、狼の恐ろしさは知って要るからね、だけど、直ぐには、来な
いと思うんだ。」
農民の代表は切り出し作業を優先したいのだが。
「だけど、危険を伴う事になるよ。」
「将軍、其れは、十分わかってるよ、でも、此処まで大変な思いをしてき
たんだからね、今更、狼が怖いからって、切り出し作業を止めると、冬は大
変な事に成るよ。」
農民の代表達も頷くので有る。
「それじゃ~、たとえ、危険でも、切り出し作業は必要だと言うのか。」
「将軍、オレは我慢するよ、だけど、子供達に、そんな思いはさせたく無
いんだ。」
「わかったよ、だけど、無防備では駄目だ、何か、いい対策を考えよ
う。」
会議中の全員が、良い方法は無いか考えるのだが、それ程、簡単には思い
付かない。
ただ、時間だけが過ぎていく。
その様な状態が続き、突然、一人の兵士の代表が。
「将軍、私が考えた方法を聞いていただけますか。」
「いいよ、可能ならね。」
「将軍、この城壁を造るんです。」
「何を、突然に。」
と、司令官は言うのだが。
「城壁を造るって、だが、時間が掛かるぞ。」
「将軍、其れは、自分もわかっています。
でも、私達は、この城壁が有るお陰で、安心出来て要ると思うんです。
其れじゃ~、城内から、森へ通じる城壁を造れば、いつでも、安心して切
り出し作業が出来るんでは無いかと、私は考えたんですが、駄目ですか。」
だが、兵士の考えは突飛な考えでは無かったのだ。
「わかった、面白いぞ、説明してくれ。」
「ハイ、将軍。」
にわかに、兵士の顔が変わったので有る。
「将軍、農場の城壁は岩で造られていますよね。」
みんなが頷くのだ。
「私は、城門から森の中まで、木材で作れば、簡単に作れると考えたんで
す。」
「木材で作るってかよ~。」
「ハイ、その通りなんです、狼が通る事が出来ない、隙間で作るんです
よ。」
「そうか、わかったよ、どちらにせよ、木材は必要だな、狼の攻撃には、
高い壁があれば、いいんだ、そうか、なるほどなぁ~。」
ロシュエは、ニヤリとしながら、一人頷いている。
「将軍、一度、通路を作れば、後は、入口に門を作り、馬車が通れるくら
いの幅があれば、いいと思うんですが。」
兵士の考えは、実に単純だが、高い囲いすれば、幾ら、俊敏な狼でも、乗
り越える事は出来ないのだ。
「閣下、実に面白い発想ですね。」
「いいや、司令官、何も、突飛な発想じゃ無いと思うんだ、オレは、面白
い発想だと思うんだ。」
「将軍、雪が降れば、どうなるんです、通路に雪が積もりますよ。」
いつでも、否定的に考える者は必ず居る。
「其れじゃ~、屋根を作ればいいと思うね。」
「でも、通路は、1本だけですか。」
「オイ、オイ、最初から、余り深刻に考えるなよ、オレも考えたんだが、
森の入り口までは、1本でいいと思うんだ、そしてだ、切り出した後から
は、数本の通路を作るんだ、造り方は同じ方法でいいと思うんだ、すると
だ、森に行く時も帰るときも安全になり、数本の通路で、切り出した木材を
運ぶ事が出来ると思うんだけどよ~。」
「閣下、では、護衛の兵士も大変助かりますねぇ~。」
「オレは、そうだと思うんだ、但しだよ、今までと違うのは、相手が狼だ
と言う事だ。早く、狼を発見できないと、誰かが、犠牲になる事も有るから
なぁ~。」
「そうですね、猪とは、スピードが全く違いますからね、早く見つけ、早
く通路に逃げ込む事で命を守る事が出来ると思いますねぇ~。」
「将軍、この方法であれば、早く作れますよ。」
「どうだろう、早く、取り掛かったほうがいいと思うんだがよ~。」
兵士の提案が受け入られ、早速、通路作りに作業に入る事になり、人選に
入りたいと、司令官は思うのだ。
「閣下、人選は必要有りませんか。」
「司令官、この通路作りは早急に完成させる必要があると思うんだ、とに
かく、早く切り出し、材料を揃えるためには、人選よりも、多勢が作業に就
いていただければ、本当は一番助かるんだ、オレは、誰がなんと言おうと、
絶対にやるからなぁ~。」
司令官も、呆れた表情で有る。
「閣下、やるとは、一体、何をやるんですか。」
司令官は、わかっているので、ニヤリとした。
「オレがやるってのはなぁ~、木を切るんだぁ~。」
みんなが笑っている。
「将軍、正か、一人で、大木を切るんですか。」
兵士も呆れている、この将軍は、何でも先に行きたがるのだ。
「オレ、一人で切り倒す事なんか出来ないと思ってるのかよ~。」
「いいえ、将軍の事ですから、多分、出来るとは思いますが、本当は困る
んですよ。」
司令官は、将軍の参加は辞退して欲しいのだ。
「其れじゃ~、何か、オレが行くと、みんなが迷惑するとでも言うのかよ
~。」
と、言ってはいるが、顔は笑っている。
「将軍もわかってるんですよねぇ~。」
ロシュエが睨んだ、兵士は舌を出し、下を向いたのだ。
「オレも、わかっているんだ、だけどよ~、どうしても、やりたいんだ、
だけど、駄目だろうなぁ~。」
みんなが頷き、そして、全員が大笑いするので有る。
「其れじゃ~よ~、オレは、一体、何をすれば、いいんだ。」
「閣下は、この農場を守っていただければ、私としても、大変助かるので
すが。」
「オレがか、わかったよ~、、じゃ~、オレは、此処に来た野盗どもを監
視するか。」
「其れが、一番ですねぇ~。」
「技師長も、そう思うか、じゃ~、野盗どもの監視に決めたっと。」
また、みんなが笑ったのだ。
「其れじゃ~、司令官、頼みましたよ、其れと、みんなもだけど、これだ
けは覚えておいてくれよ、狼が来たら、何があっても、直ぐに逃げろ、之
は、オレからの絶対命令だからなぁ~。」
今まで、和やかな会議だったが、ロシュエの一言で、全員が気を引き締め
るので有る。
そして、司令官を初め、全員が会議室を出て、各自持ち場に戻り、説明す
る事になった。
一方、ロシュエは、元野盗が切り出し作業を行って要る森に向かったの
だ。
森は城壁の直ぐ前にあり、森からは、木を切る音が聞えてくる。
ロシュエが森の作業現場に着くと、元野盗だった、農民達は必死で木を切
っているのだ。
「どうだ、この仕事は。」
「あっ、将軍、オレ達は、今、本当に嬉しいんです。」
この男は、あの城では、親分の様な存在だったのだが、今の顔は、本当に
生き生きとして要る。
「何が、嬉しいんだよ~。」
「将軍、他の仲間も言っているんですよ、オレ達は、将軍に助けられたん
だと。」
「オレは、お前達を助けた覚えは無いがなぁ~。」
やはり、彼らも、心の中では、農作業に入りたいと思って要るんだと。
「将軍、今、森から、切り出し作業をして要るんですが、何時まで続くん
でしょうか。」
「実はな、事態が変わってなぁ~、当分は、此処での仕事が続く事に成っ
たんだ。」
彼らは、何も知らない、何日後かわからないが、この農場に狼の大群が襲
ってくる事を。
「将軍、何かあったんですか。」
「其れは、後からわかる事だ、今は、この森から少しでも多くの木材を切
り出す事が君達の仕事だよ。」
「ハイ、将軍、わかりました。」
と、言って、男は、大木の伐採を続けるのである。
ロシュエは暫く、男達の仕事を見ていた。
其処は、城門から百ヒロとは離れていない、ロシュエは考えていたが、何
を思ったのか、ロシュエは、城門に戻り、そして、城門の前に立ち、考えて
要る。
城門からは、直線に路が通じている、路と森は幅が10ヒロに渡り、数百
ヒロ先まで、一応、整地はされている。
「おーい、司令官を呼んでくれ。」
「ハイ、将軍。」
城内にいる司令官は数分後に。
「閣下、お呼びでしょうか。」
「なぁ~、司令官、前の路を見て、何か感じないか。」
司令官は、突然の話で、ロシュエが言った、意味がわからないので有る。
「閣下、私は、意味がわかりませんが、教えて頂きたいのです。」
確かに、その通りだ。
「司令官、先程の話は、木材で、屋根付きの通路を作る話しが有ったと思
いますが。」
「私も、居りましたので、存じておりますが、その通路とこの路と何か関係
が有るのでしょうか。」
司令官は、全く関係が無いと思って要るのだ。
「司令官、その通路じゃ無いよ、路の側に何が有ると思う。」
将軍が、一体、何を言いたいのだと思ったのだ。
「路の側ですか、平坦と言いますか、平坦な空き地の草地ですが、其れが
何か。」
「司令官、その平坦な空き地ですよ、先程の通路ですが、この空き地なら
比較的整地も簡単だとは思いませんか。」
司令官は、やっとわかったのである。
「将軍、わかりましたよ、城内から、路に並行して空き地が有りますの
で、この空き地に通路を造るのですね。」
ロシュエは二コットしたのだ。
「この場所で有れば、左側の草原も見渡す事も出来ますね。」
司令官は、ロシュエに言ったとおり、左側も遠くまで見渡す事が出来、右
側の森から切り出した、木材も、この場所で加工出来ると思ったので有る。
「将軍、この場所ならば、通路を造るための基地も出来、比較的時間も掛
からないと思いますねぇ~。」
ロシュエは、この場所が最適だと思い。
「お~い、技師長を呼んでくれないか。」
「ハイ、将軍。」
「お~い、将軍が技師長を呼んでおられるぞ。」
と、叫ぶと同じ頃、技師長は城門を出たのだ。
「将軍、お呼びでしょうか。」
「技師長、忙しい時に済まない、通路の話だが、場所は決まったんですか
ねぇ~。」
「いいえ、まだ、決まってはおりませんが。」
「じゃ~、技師長、この路を見て欲しいんだ。」
技師長は、平坦な空き地を見てはいるのだが、わからない。
「将軍、この空き地が何か。」
ロシュエと司令官はニヤリとした。
「技師長、この空き地の右側は森だ、そして、左側は草地だ、オレはね、
この空き地に通路を造れば、比較的簡単だと思うんだがね~。」
技師長もやっとわかったのだ。
「この場所でしたら最高ですね、この場所ならば、加工も出来ますし、城
内も直ぐ近くですから、いつでも、避難は出来ますねぇ~。」
技師長は、理解が早い、すると、技師長は目を閉じ、頭の中で図面を描く
にで有る。
「どうだろう、オレも、今まで、気が付かなかったんだ、この場所を見
て、直ぐに場所は此処に決めた~と、ね。」
ロシュエの顔は何か楽しそうであった。
「将軍、城門と直結した通路に新しい門を作れば、外敵からも防ぐ事が出
来ますよ。」
技師長の頭の中では、既に図面は出来て要るようだ。
「じゃ~、司令官、今、森で切り出し作業を此処に集中させて頂きたいの
です。」
「将軍、了解しました、 直ぐに、移動を開始させますので。」
司令官は、大急ぎで、伐採地に向かうので有る。
「技師長、今回は、図面は必要無い様だね。」
技師長は二ッコリとした。
「そう見えますかねぇ~。」
ロシュエも頷き。
「この空き地を利用すれば、時間の短縮も出来そうだなぁ~。」
「いや~、将軍、之は、大変な短縮に成りますよ、私は、将軍から話を聞
いた時に、まず考えたのが空き地なんです。
此処の場所は、確か、初めの頃に伐採をした場所でしたねぇ~。」
「そうなんだ、初めは大変だったが、その場所を生かせるんだから、今
は、良かったと思うんだ。」
その時、別の場所で伐採作業を行っていた、元野盗達が着いたので有る。
「司令官、有難う。」
「様軍、良かったです、この場所が有るだけで、相当な時間の短縮が出来
るのですから。」
技師長は、早速、彼らに説明を行って要る。
「将軍、此処にも、今日到着した野盗チームも参加させようと思うんです
が。」
ロシュエは頷き。
「いい事ですね、彼らにも、此処で作業する事で、今までの事を忘れて、
普通の生活に入れると思いますからねぇ~。」
「確かに、此れから仕事が有ると、彼らも余計な事を考える暇も無く成り
ますから。」
「将軍は、何時も農民の生活が一番大事にと考えておられますから。」
「司令官、オレはなぁ~、何時も、何か有ると、一番、先に農民が迫害を
受け、犠牲に成るところを見てきたんだよ~、オレは、その迫害で農民は逃
げる事しか出来ないんだ、だったら、同じ逃げるんだったらね、遠くに行こ
うと、其れも、お城の無い場所に行こうとね。」
ロシュエの目は悲しそうだった。
「実は、私も、同じ様な場面を何度も見てきました。
私が、将軍に就いて行こうと思ったのは、この農場に入った時なんです。
私は、兵隊ですから、戦で命を落とす事は理解出来ますが、でも、農民に
何の罪が有るんでしょうか、何の罪も無い農民が何時も、一番に犠牲にな
る、私は、これに辛抱が出来なかったんです、でも、将軍にお会いし、其れ
で、決心がついたんです。
私は、将軍に感謝をしていますよ。」
ロシュエは、本当に嬉かったのだ、今まで、自分の行ってきた事に間違い
は無かったのだと。
「司令官、有難う、此れからも、宜しく頼みますね、では、一度、戻りま
すか。」
「そうですね。」
「お~い、技師長、オレと司令官は戻り、今日到着した野盗チームを送る
からなぁ~。」
技師長は、大きく手を振り、わかったという合図だった。
二人は、場内に入り、今日到着した野盗チームの居る場所に向かったの
だ。
「司令官、あの特殊武器作りの話しですがねぇ~。」
ロシュエは、早く武器の製造を始めたかったのである。
「あの武器でしたら、10人くらいで作ったと聞きましたので、私は、そ
の10人以外を切り離し、切り出し作業と壁構築に参加させようと考えて要
るのですが。」
「オレは、それでいいよ。」
「有難う御座います、私から、彼らに説明を行いますので。」
「済まない、それじゃ~、オレは、農民達に説明するよ。」
農民達には別に説明する必要は無かったが、会議に出席した代表が全ての
農民に説明をし、数百人規模の農民が準備を進めていたのである。
「将軍、話はきいたよ、後は、オレ達に任せろよ、ハ・ハ・ハ。」
一人の農民は、実に楽しげな笑い声だ。
農民達は準備が出来た者達から、手を振り場外の作業場に向かって行く。
ロシュエは、全員が場外に出るまで、手を振り続けた。
「おーい、みんな、事故だけには注意をしろよ。」
ロシュエは、それだけしかいえなかったので有る。
場門の上では、早くも、今まで以上の見張りが緊張した様子で周囲を見て
いる。
そして、この木造の壁構築は思いのほか早く完成し、通路では、数十台の
馬車が切り出された材木を場内に入れ、殆どの男達は蒔き作りを行って要
る。
これで、冬は乗り越える事が出来るのだと。
あれから、5年が過ぎ、農場では毎年、豊作に恵まれ、今年も豊作を期待
し、早くも、次の作物の苗を植えている頃であった。
「お~い、馬車がこっちに向かって来るぞ~。」
と、城壁の兵士が大声で叫んだ。
「よし、わかった、直ぐに司令官に知らせるからなぁ~。」
と、下の兵士も大声で叫んだ。
場内の兵士達は早くも武器を持ち配置に就いている。
「司令官。」
「わかった、直ぐに行く。」
司令官も大急ぎで場門に向かった。
「どうだ、何かわかったか。」
下の兵士が聞くと。
「数台の馬車の後方から、オイ、之は、大変だ、大軍が追いかけて来る
ぞ、兵隊だ。」
場壁の上では数千人の兵士が位置に就いて何時でも応戦出来る体制をとっ
ている。
「司令官、馬車は追いかけられている様に見えます。」
場内は慌ただしくなってきた。
ロシュエも、直ぐに場門に登って行った。
「司令官、あの馬車には女性が乗って居るよ、おーい、場門を開けろ。」
場門は、直ぐに開かれ、その直後、5台の馬車が飛び込んで来たので有
る。
場門は、再び閉じられ、馬車を追ってきたのは、やはり兵隊だった。
「今、場内に入った、馬車の者達を引き渡してもらいたい。」
兵隊の隊長を思われる人物だ。
「何故だ、今、入った人達は、逃げてきたように見えるが。」
「いや、そうでは無い、その者達は犯罪者だ。」
「犯罪者には見えないが。」
場門と場外のやり取りとは別に。
「どうしたんですか、訳を話して下さい。」
と、兵士は聞くのだが、彼女達は脅えて何も言わない。
「将軍が来られたよ、あんた達、我々の将軍だよ、将軍が、あんた達の見
方に成ってくれるからね、もう何も、心配は無いよ。」
兵士の側に来たロシュエは、二コ二コとしている。
其れは、馬車の中は全員が女性だった。
「あんた達、何も、怖がる事は無いよ、それに、此処はね、農場でお城で
は無いから何も心配ないよ、オレは、ロシュエと言って、一応、この農場で
は、え~と、何も出来ないけれど将軍なんだ。」
側の兵士や農民達が大声で笑い、其れを、見た女性達も少し笑ったので有
る。
「私達は、遠くの国から逃げてきました。」
「そうか、其れは大変だったね、おーい、誰か、熱いスープを持って来て
くれよ。」
「将軍様ですか。」
「オイ、オイ、オレは、将軍様じゃ~、無いんだよ。」
「お~い。」
と、言う前に、農場の女性達がスープを運んできたのだ。
「ホイ、将軍、熱いスープだよ。」
農場では、何時でも、熱いスープだけは作ってある。
「有難うよ、ところで、いったい、何人居るんだね。」
「全員で、20人です。」
農場の女性達は、二コ二コしながら、馬車から降りてきた若い女性達にス
ープを配る。
「そうか、逃げてきたんだね、それじゃ~、あんた達は。」
「私達は、元々、農民なんです。」
ロシュエの表情が変わったのだ。
「何、農民だと、だけど、君達の服装は違うと思うんだが。」
彼女達は、税を納める事が出来ない農民達が税金の代わりにお城に奉公と
言う名目で城に連れて来られたのだ。
「私達は、払う事が出来ない程の多額な税金が掛けられ、税金が払えなけ
れば、お城へ奉公に行くんです。」
「じゃ~、何か、初めから払えないとわかって、多額の税金を過して要る
のか、とんでも無い野郎だな、その城主って奴は。」
「そうなんです、私達は時には、城主の夜。」
と、言った途端、彼女の目に大粒の涙が零れてきたのだ。
「もう、心配は無いぞ、オレ達に任せろよ。」
「ハイ。」
と、女性は小さな声で言った。
「おーい、司令官、どうだ、外の様子は。」
ロシュエは、大声で叫び、城壁の上に向かうので有る。
「閣下、全く、話は出来ませんねぇ~。」
「よし、オレが相手になるから、全員、何時でも攻撃出来る様に。」
「閣下、配置完了しております。」
「わかった、オイ、其処の兵隊さんよ、今、入った女性達は戻りたくない
んだとよ~。」
場外では、隊長らしき男が部下に命令を出している。
「何故だ、その者達は、我が国を脱走したのだ。
我々は、脱走した者を、国に連れ戻す任務で、此処まで来た、早く引き渡
せ、で、無ければ。」
この隊長は、力で奪い返そうと考えて要る。
「オイ、無ければとは、どう言う意味だよ。」
ロシュエは、右手の森にも。多くの兵士が潜んでいる事を確認している。
「我々は、有る強国の軍隊だ、お前達に勝ち目は無い、早く門を開け、女
達を渡せ。」
側の司令官は場外の敵軍の動きを見ている。
「閣下、あの兵士達は相当な訓練を受けておりますが。」
「司令官よ~、奴らは、オレ達の事を甘く見ていると思うんだ。」
「閣下、その通りですね、森にも、既に、数百人が待機しておりますの
で。」
「わかった、オイ、じゃ~、やって見なよ、この城壁の中には、数万の兵
士がよ~、オレの合図を待って要るんだぜ。」
「そうか、あくまでも引渡しを拒否するのであれば、仕方が無い、全員攻
撃開始。」
言ったと同時に、森の中から、数百、数千の矢が飛んできたので有る。
場外の敵兵士は反撃すら出来ず、次々と馬から落下して行く、戦いは暫く
続くのだが、隊長と思われる男は最初に落下し、生き残りは数人だった、そ
の兵士は、手を上げたのだ。
「司令官、終わったなぁ~、被害を調べてくれよ。」
「わかりました、直ぐに。」
「オレはなぁ~、戦はしたくは無いんだ、出来る事なら。」
「わかっております、閣下、私も、今では、閣下と同じですから。」
ロシュエと司令官は、場門を出たので有る。
そして、生き残った兵士に。
「お前さん、国に戻って報告するんだなぁ~、今、此処で起きた事全部だ
よ、お~い、誰か、この兵士達に食べ物と水を渡してやってくれよ。」
兵士達は何も言わず、去って行ったので有る。
ロシュエと司令官は、女性達も所に戻り。
「済まないが、少し話を聞かせてくれないか。」
「はい。」
先程、話をした女性だった、彼女が一番年上だと見え、後の全員は、14
から15歳前後に見えたのだ。
「その前に、君の名前を教えてくれないか。」
「はい、私は、イレノアと申します、将軍様。」
「イレノアか、だけどなぁ~、オレは将軍様じゃ~、無いんだ。」
側では、司令官が二コ二コとしている。
其れは、ロシュエの顔が赤くなったからだ。
「オイ、司令官、何が、可笑しいんだよ~、司令官からも言ってくれよ、
オレは将軍様じゃ無いってよ。」
「はい、閣下、イレノアと言われましたね、将軍様では有りませんよ、ロ
シュエ将軍ですからね。」
司令官は、イレノアに二コットしたのだ。
「はい、わかりました、司令官様。」
司令官も顔色が変わり。
「私は、司令官様で有りません、イキノバと言いますからね。」
「そうだ、オレは、今まで、司令官と呼んでいたから、名前を知らなかっ
たんだ。」
其れは、ロシュエも聞かず、イキノバもあえて、名載らなかったのだっ
た。
「そうか、司令官は、イキノバと言うのか。」
「はい、閣下、さようで御座います。」
「司令官、だけどよ、君は本当に堅物だなぁ~、若い女性が目の前に居る
のによ~。」
「閣下、私は、軍人です。
それに、私の使命は、閣下をお守りする事で御座いますので。」
「わかったよ、だけど、司令官も少しは、柔らかくなれよ。」
ロシュエは、なんとしても、司令官に若い女性をと考えるのだが。
「ハイ、閣下、努力はいたしますが、余り自信は有りませんので。」
二人の会話を聞いていた、イレノア達は初めて笑ったのである。
「イレノア、君達は初めて笑ったね。」
イレノア達も気づいていなかったのだった。
「将軍様、すみません、将軍様、私達は此れからどうなるのでしょう
か。」
イレノアは、この先、何処に連れて行かれるの不安だったのだ。
「イレノア、何処にって、君達に行くあてでも有るのか。」
イレノア達は下を向き、何も言わず、首を振ったのだ。
「其れじゃ~、元も村に戻る事は出来ないのか。」
下を向いて頷いた。
「私達に戻るところは有りません。」
女性達は涙を流している。
「閣下、決まりですねぇ~。」
司令官は彼女達をこの農場に残す事を考えていたようで有る。
「司令官、決まりですよ。」
ロシュエも司令官も二コットした。
「将軍様、何が決まりなんですか、また、私達は何処かに連れて行かれる
のですか。」
イレノアの表情は硬く、脅えているのだ。
「うん、その通りだよって、言いたいがなぁ~、この農場に居たければ何
時まででも居てもいいんだよ、なぁ~、司令官様よ~。」
ロシュエは笑いを堪えているのだが、顔は笑っている。
「はい、その通りで、御座います、将軍様。」
と、言って、二人は大笑いをするのだ。
「本当に、本当によろしいのでしょうか、私達を此処に置いていただける
のですか。」
ロシュエと司令官は頷き、二人は二コ二コとしている。
「そうなるとだよ、司令官、彼女達が住む家が必要だよなぁ~。」
その時、技師長が着た。
「将軍、若い女性が来たと。」
「そうだよ、丁度、いいところにきた、技師長、突然なんだが。」
技師長も久し振りに見る若い女性だったので、顔はほころんでいる。
「将軍、この女性達が住む家ですよね。」
「良くわかってるねぇ~、さすが、技師長だ、今までは、野盗の男ばかり
だったが、あの集団以来だな、女性がこの農場に来るのは。」
「そうですねぇ~、今までは、家族の為の家造りでしたが、若い女性が、
これほど多勢は初めてなんで、どんな家を造れば良いのか、私もわからない
のです。」
「私達は、元々農民ですので、馬小屋でもいいのです。」
これだけ多勢の女性が住むと成ると、大きな家を造る必要が有るのだと。
「イレノア、そうは、行かないんだよ~、この農場にはねぇ~、オレを含
めてだが、狼が多いんだ、イレノア達は、その狼の中にいるんだからね、狼
から、君達を守る為には、早く家が必要なんだ。」
ロシュエは、笑みを浮かべている。
「将軍様、本当なんですか、この農場には狼がいるんですか。」
「本当だ、このオレが一番の狼だからねぇ~。」
司令官は笑っている。
「そうですね、此処には、一体、何人の狼が居るんでしょうかねぇ~、将
軍。」
「司令官も狼だからね。」
イレノアは、初め、本当の狼がいると思っていたのだ。
「狼って、将軍様や司令官様なんですか。」
女性達は本当に狼がいると思っていたので、顔はこわばっていた。
「イレノア、じゃ~、本物の狼が農場の中にいると思ってたのか、本物の
狼は場外にいるよ、済まなかったねぇ~、驚かせて。」
ロシュエは、正か、本気にするとは思わなかったので有る。
「将軍、彼女達は本気で脅えていますよ、冗談も、時と場所を考えて下さ
いね。」
技師長も言葉とは反対に、顔は笑っているのだ。
「イレノア、許してね、だけど、この農場からは、出ない事だよ、外には
本物も狼がいるからね、之は冗談じゃ無いからね。」
「はい、将軍様、わかりました。」
「それで、さっきの話だがね、女性達の家を何処に建てるかだが。」
技師長は周辺を見渡し。
「閣下、私は、閣下自宅の近くが最適だと思うのです。」
「司令官、なんで、オレの家近くが最適なんだ。」
「ハイ、閣下、私が思うには、閣下宅では、何時も会議が開かれていま
す。
本来ならば、数人の女性が居れば、閣下のお世話も出来ると思います
が。」
「将軍、私も、司令官の意見には大賛成ですよ。」
「司令官も技師長も、何を、行き成り言うんだ、オレの世話だって、オレ
は嫌だよ~。」
「ですが、閣下、何時も農場の女性達に、閣下のお世話をさせる訳には行
きませんから、この最です、若い女性のお世話が必要だと思いますが。」
「オレもなぁ~、農場の女性達には、申し訳ないと思ってるんだ、オレの
食事は別としてだよ、会議の準備も大変だしなぁ~。」
「では、この最ですよ、この女性達に任されては、如何でしょうかねぇ
~。」
司令官も、何か、楽しそうだ。
「だがよ、其れは、オレ達が勝ってに決める事じゃ無いよ、彼女達の意見
も聞かないとねぇ~。」
だが、彼女達はニコニコとして聞いて要るのだ。
「イレノア、済まないねぇ~、司令官の野郎は、とんでも無い事を言い出
すんだからなぁ~、許してくれよなぁ~。」
「いいえ、将軍様、私達でよければ、将軍様や司令官様が宜しければ、お
世話をさせて頂きたいのです。」
イレノアは、他のみんなを見る、彼女達の顔は喜んでいる様だ。
「ほら、見ろ、司令官も、お世話に成るんだよ~、ざまぁ~、見ろ、ハ・
ハ・ハ。」
ロシュエは大笑いをしたのだ。
「閣下、私は別に・・・。」
「司令官、別にとは、どう言う意味だよ、はっきりと言えよ~、私も、お
受けしますと、な、司令官が受けたら、オレも受けるからよ~。」
イレノア達は、二人の会話をニコニコとして聞いて要るのだ。
「閣下、わかりましたよ、私も、お受けいたしますので。」
「じゃ~、決まりだ、イレノア、済まないねぇ~。」
「いいえ、私達に出来る事は、何でもしますので、食事も、洗濯もお掃除
も、私達が手分けして、致しますので、何でも言って下さい。」
「将軍、これで、決まりですねぇ~、では、将軍宅と司令官宅を増築しま
すので。」
「技師長、一つ頼みが有るんだが。」
「なんでしょうか。」
ロシュエは、彼女達がゆっくりと過ごせる場所が必要だと考えて要る。
「この農場では、休み時間は、彼女達だけのために特別な部屋が欲しいん
だ。」
「将軍様、私達に特別な部屋は必要有りません。
それに、休みもいりません、寝る場所さえあれば、それで、十分なんで
す。」
「イレノア、其れが、駄目なんだなぁ~、この農場ではねぇ~、数日働く
と、必ず、1日は、家族の為に、そして、自分達の身体の為に、農作業は出
来ない事になってるんだ。」
イレノア達は驚いているのだ。
普通、農民に年中休みなどは無いと思って要るので有る。
「将軍様、この農場では、休みが有るのですか、私は、休みは無いと思っ
ておりましたので。」
「イレノア、此処ではなぁ~、農作業だけじゃ無いんだ、全てが、その決
まりなんだ。」
司令官も技師長も頷いている。
「将軍、では、特別室は、将軍宅や司令官宅にも有るのでしょうか。」
ロシュエは、返事に困った。
「オレの家か、オレの家はなぁ~、全てが特別室なんだ、大きな会議室も
有るからよ~。」
実は、将軍と司令官の自宅は農家よりも、小さく造られている、其れは、
二人が望んだ事だったからで。
「将軍、実は、将軍宅と司令官宅の増築は以前から考えておりました。
その増築の話は、代表達も大賛成しております。
それに、此処に、若い女性が来られたと言う事は、これも、何かの縁だと
思って頂きたいのですが。」
技師長は、早くから、材料も用意していたので有る。
「でもなぁ~、今から、材料の切り出しも必要だしなぁ~。」
「実は、材料も既に用意が出来ておりますので。」
「じゃ~、何か、後は、建てるだけの話かよ~。」
「そうなんです、これは、将軍だけの問題では無いんですよ。」
「何、オレだけの問題では無いと、オレの家が、そんなに問題なのか。」
ロシュエは、知らなかった、この数年間で、農場には、数万人も増えたの
で有る。
農民達の生活が安定を始め、子供も増え、数年前には、1万人の農民が、こ
の場壁内での生活に入り、今までは5人の代表が参加して会議を開いていた
が、其れが、20人まで増え、会議室が狭くなったのである。
その為に、以前から、ロシュエの家を建て直す話しが進んでいたのだ。
「将軍、今、此処で会議を開く時、何人が集まると思います。」
「そうだなぁ~、20人以上だなぁ~。」
「この会議室では、狭すぎるんですよ、私は、将軍の家を建て直す事を考
え、今度は、今までの、2倍以上の大きな家を建てるようにしたいんです
が。」
「何、そんなに、大きな家を建てるのか。」
「其れは、昨日までの話です。
今日、到着した女性達の部屋も含めると、3倍以上の広さが必要ですねぇ
~。」
「そんな、大きな家が必要なのか。」
「閣下、幾ら、閣下が反対されても、無理の様ですよ。」
司令官も賛成だ。
「技師長、司令官の家も建て替えるのか。」
「いいえ、司令官の自宅は増築します。
女性達の部屋と十人程度で会議が開けるくらいの会議室も必要に成ります
ので。」
「司令官、まぁ~、仕方が無い、諦めて、技師長に任せましょうかねぇ
~。」
女性達は、クス、クスと笑っている。
「イレノア、私は、笑い事じゃ~無いんですよ、お前さん達は、オレと司
令官の家で住む事に成るんだからね、でも、司令官、大変な事に成ってしま
ったなぁ~。」
「閣下、私も技師長の言う通りにしますよ。」
「では、明日から始めますので。」
「じゃ~、彼女達は。」
ロシュエは、何を心配して要るのだ。
「将軍、何も心配は無いですよ、50人や、百人くらいの人数は寝る所が
有りますので。」
「ああ、そうか、あの場所ね、オレはすっかり忘れていたよ。」
司令官も頷いている。
「イレノア、君達は、家が出来るまで、そこで生活が出来るよ。」
其れは、旅人のために、作られた部屋で、其処には、生活に必要な道具が
揃えて有る。
「えっ、私達は、馬小屋でも。」
「イレノア、其れは駄目だよ、此処では、兵士も農民も平等なんだ、だか
ら、此処では馬小屋では眠る事も出来ないし、食べる物も、みんなが、平等
なんだよ。」
「でも、私達は、皆さんに迷惑を掛けたのでは無いのでしょうか。」
「イレノア、一体、誰が、迷惑だと言ったんだ、誰も、そんな事は言って
無いぞ、其れよりも、君達は今までの事を早く忘れ、この農場で、新しい生
活に入る事だけを考えるんだ、それが、オレ達の気持ちだから、わかったか
よ~。」
イレノアは、何も言えず、ただ、涙が溢れ、頷くだけだった。
その時、農場から、数十人の女性が来た。
「将軍、この娘さん達は、此処で一緒に暮らすんでしょうね。」
「うん、そうだが、何か有るのかよ~。」
「あんた達、着替えは有るのかねぇ~。」
何時もの年配の女性である。
この女性は、農民女性の代表だと、自分では思って要るのだ。
「いいえ、有りません。」
確かに、数十日の逃亡生活で、服は破れ、この服では、此れからの生活で
は、使い物になら無い程だった。
「私達はねぇ~、農民だから、あんた達が着ている様なヒラヒラの付いた
服は無いけど、でも、この服はちゃんと洗濯して有るから、着替えなよ。」
イレノア達は、涙をぼろぼろ流し。
「本当にいいんですか。」
「本当にいいんだからさぁ~。」
農婦達全員が洗いたての服を渡したのだ。
「その前にさぁ~、私達の家においでよ、お風呂も用意して有るからね、
風呂から上がったら、みんなで食事だから、さぁ~、行った、行った。」
ロシュエは、側で二コ二コしているのだ。
「いいんだよ~、早く、行った。」
「将軍様、其れに皆さん、本当に有難う、御座います。
私達、初めてなんです、こんなに親切にされた事が無かったので。」
「そうか、此れからは、此処のみんなと、一緒に生活するんだ、みんなに
可愛がってもらえばいいんだからよ~。」
女性達は、涙を流しながら笑い、農家の女性達の家に向かったので有る。
「司令官、これで良かったんだ、これでね、だが、彼女達が話した城主は
領民をなんだと思って要るんだ、オレは、本当に腹が立つよ。」
「閣下、私も、今、その城主の事を考えておりました。」
ロシュエは、娘たちの話した城を調べる必要が有ると思ったのだ。
「司令官、どうだ、一度、その城の周辺を調べる必要が有ると思うんだ
が。」
「閣下、生き残った兵士達はどんな報告をするかわかりませんが、何れに
しても、我々には、相当な脅威になる事に間違いは有りませんから、私も、
偵察は必要だと思います。」
司令官もわかっているのだ。
「数日以内に出発させて欲しいんだが。」
「閣下、わかりました、では、娘達に一応の場所だけは聞く必要も有りま
すので。」
「そうだなぁ~、じゃ~、司令官、頼むよ。」
「はい、私は、偵察に行く兵士に説明します。」
「それでだ、相手に見つからずに調べるんだから、旅人の服装で行く様に
な。」
「そうですね、城下に入るのですから。」
「馬車には、何か荷物を積む必要があるな。」
「閣下、良い物が有りますよ。」
「此処の倉庫にか。」
「そうです、森で獲った猪の皮ですよ。」
「よし、それでいこう、後は食料だが、司令官、準備出来次第出発させて
くれ。」
「はい、閣下、では、私は、兵士の選びと説明に行きますので。」
司令官は、兵舎に戻って行くのである。
ロシュエも部屋に入り、彼女達が戻ってくるのを待つので有る。
それから、数時間後、イレノア達が部屋に来た。
イレノア達は、数十日振りのお風呂と、気持ちのこもった食事に大満足だ
ったようで。
「将軍様、イレノアですが、入っても宜しいでしょうか。」
「ハイよ、入ってくれ。」
全員が入ってきた。
「将軍様、本当に久し振りのお風呂と食事に、私達は感謝しています。
本当に有難う御座います。」
先程までのイレノア達とは見違えるほどの美人達でロシュエも驚いたの
だ。
「そうですか、其れは、良かったなぁ~、だけど、之は大変な事になった
ぞ。」
「将軍様、如何されたのですか。」
イレノア達は、不思議そうな顔つきだ。
「そりゃ~、そうだろうよ、君達が美人揃いだからよ~、兵士達に合わせ
ると大変な事になってしまうんだよ~。」
その中でも、イレノアは一番の美人で、しかも、美しいブロンドの髪だ。
ロシュエは気持ちを切り替え。
「イレノア、少し聞きたい事が有るんだが。」
イレノアは、まだまだ、聞きたい事が有ると思った。
「将軍様、何を知りになりたいのでしょうか。」
「失礼な事を聞くが、君はこの中で年長なのか。」
「ハイ、将軍、私は、20歳で、後は、17歳から18歳までですが。」
「えっ、本当か、驚いたよ、こんな若くて美人がだよ、狼の群れの中に入
れるのはよ~、オレは反対だなぁ~、其れこそ、兵士や農作業の若い連中は
君達を巡って恐ろしい、争いが始まるぞ~。」
ロシュエは、口調は反対に二コ二コとしている。
「将軍様、私達は何も心配しておりません。
あの城での生活の事を思えば、此処は夢の世界ですから。」
イレノア達も本当に嬉しそうだった、其れは、この将軍が居る限り、何も
心配する事は無いと確信して要るのだ。
「だけど、之は、本当に恐ろしい事になるぞ。」
ロシュエはニヤリとした。
「将軍様、本当なんですか。」
「何故、そう思うんだ。」
「だって、此処には、将軍や司令官が居られます。
それに、先程のおかみさん達が言われていましたよ。」
「なんて、言ってた。」
「この農場では、将軍様も司令官様も、私達の様な弱い者の見方だから
ね、何も心配する必要は無いって。」
「うん、うん、そうだよ、オレは特に、女と子供が大切だと思って要るか
らなぁ~。」
ロシュエは、気分が良くなってきたのだ。
「そうか、わかった。」
他の娘達も微笑んでいる。
「イレノア、話は変わるが、この農場から、君達が居た城まで、どれ位有
るんだ。」
イレノアは少し考えて要る、他の娘達も同じ様に考えて要るのだが。
「将軍様、実は、私達も此処に大きな農場が有るとは知らなかったんで
す。
だけど、私の記憶では、城を出てから50日以上は掛かっていると思いま
す。」
「何、本当か、その50日間、一体、何を食べていたんだ。」
馬車の中には食べ物らしき物は無かったのだ。
「私達は、出来る限り森の中を行ったんです。」
「えっ、なんて、本当か、森の中を、オレだって、行かないよ森は怖いん
だから。」
娘達が反対に驚いている、将軍にも怖いものが有るんだと。
「将軍様は、森が怖いんですか、そんなぁ~。」
イレノアが驚いたが。
「本当だよ、だけど、森も中で恐ろしい事は無かったのか。」
イレノアの顔は何度も恐怖に遭遇したのだが。
「ハイ、何度も有りましたが、でも、あの城での生活に比べれば。」
「わかった、じゃ~、何時頃、此処に農場が有るとわかったんだ。」
「ハイ、あれは、確か数日前でした。
大きなお城が見え、あのお城に行けば助かると思ったんですが。」
イレノア達は、その城に行く事に躊躇したのだ、あの城に行けば、また、
同じ様な運命が待って要ると。
「私達は相談したんです、あのお城に行けば、一度は助かるけれど、何
れ、同じ事に成ると、でも。」
「でも、どうしたんだ。」
「相談していると、お城の兵隊さんが見えたんです、私は、何も考えず、
此処まで馬車を飛ばしてきたんです。」
イレノア達が躊躇するもの無理は無かった。
この農場は外から見れば大きな城だ、イレノア達から見れば、お城といえ
ば、どの城でも悪い人間の集まりだと思って要る。
「そうか、それで、必死で、この農場に逃げ込んだのか。」
娘達は頷いた。
「だけど、其れは、私達の大変な間違いでした。」
ロシュエも当たり前だと頷き。
「そりゃ~、そうだよなぁ~、此処は見ての通り農場だからなぁ~。」
ロシュエの顔は笑っている。
「私達は、今、本当に安心しています。」
「当然だなぁ~、それで、君達に悪いんだが、さっきの話に戻るが、その
城を出てから、どう進んだか覚えているのか、別に全部でなくてもいいん
だ、例えば、太陽はどの方角だったとか。」
「確か、初めの数日間は後ろからでしたが、でも、途中から森に入ったの
で、はっきりとわからないんですが、私達の左側に有ったと思いますが。」
確かに、深く黒い森の中では日中でも太陽の陽が当たらないところが有
る。
その時、司令官が入ってきた。
「之は、皆さんお揃いで。」
と、言ったが、顔は驚きの表情だった。
「司令官、一体、何を驚いているんだよ~。」
「ハイ、閣下、この美人達は先程も女性達でしょうか。」
ロシュエはニンマリとして。
「そうだよ、と、言いたいんだが、本当は、オレも驚いたんだ、こんな美
人とはね。」
司令官はブロンドのイレノアを見て。
「貴女は、イレノアさんですか。」
イレノアは二コットして。
「ハイ、司令官様。」
「オイ、司令官、何を考えて要るんだよ。」
と、言ったが、司令官もやはり男なんだと。
「ハイ、閣下、私は、別に何も。」
「司令官も男だと言う事だな、こんな美人達を狼の中に入れる事は、オレ
は、絶対反対するぞ~。」
「閣下、何を言われているんですか、この農場では、一番の狼は閣下の事
では。」
司令官は、少し笑っている。
「オイ、司令官、其処まで言うなよ、ハ・ハ・ハ。」
と、ロシュエはご機嫌で有る。
「済まないね、話しが反れて。」
「別に宜しいんです、私は、本当に楽しそうな会話で、みんなも喜んでい
ますから。」
娘達も笑っている、今までの事を忘れには一番笑いが必要だった。
「そうか、オレも嬉しいね、君達の笑顔が素敵だからね、何度も話が変わ
って、済まん。」
ロシュエは舌を出し、頭をペコット下げたのだ。
「それで、さっきの話だが、その森は大きいのか。」
「将軍様、私達はその森を進んでいたんですが、30日くらいは進んだと
思います。」
「えっ、30日間も森の中をか、だが、何故、30日間も掛かったんだ
ね。」
「はい、でも、森の中には路も有りませんでしたので。」
司令官は何も言わず、頷くだけだ。
「そりゃ~、大変だったねぇ~。」
「閣下、以前、私が偵察に行った時ですが、10日位進んだところに森が
有りました。
その森を彼女達が通った森では無いでしょうか。」
「そうかも、知れんな、イレノア、森を出て、この農場まで、何日位掛か
ったんだ。」
イレノアは考えて要る。
「12日から13日は掛かった様に思います。」
「司令官の予想通りだね、森の中に路は無いそうだが、真っすぐで30日
間は掛かったそうだから。」
司令官は驚きの表情で有る。
「30日間も森の中を進むんですか、大変な話しですね。」
「だが、之は行くしか無いだろうよ、森を出ると、今度は太陽を前に見る
方に2~3日進むと、あの城が有るそうだ。」
「閣下、でも、方向としては簡単ですね。」
ロシュエも頷き。
「オレも、そう思うよ。」
「将軍、正か、あの城に行かれるのでは無いでしょうね。」
「オレか、オレは行かないよ、でも、数名の兵士が城の偵察に行くよ。」
イレノアは、ロシュエが城の行くものと思って要るのだが、ロシュエが行
かないと聞きほっとしたので有る。
「司令官様、気を付けて下さいね。」
司令官は、二コットして。
「イレノア、済まないですが、城の事や周辺の事を知って要るだけでいい
ですからね、教えて欲しいのですが、お願い出来ますか。」
「ねぇ~、みんな、私達は此処に着て、今は、将軍様や司令官様に感謝し
ていると思うの、それで、今、司令官様が言われた様に、私達の知って要る
事を話して欲しいのよ、お願いね。」
ロシュエは嬉しくなった。
「司令官、彼女達の話は、大変重要な話しだ、済まないが表の兵士に言っ
て、偵察隊を呼んできて欲しいんだ。」
「はい、閣下、勿論です。」
司令官は、部屋を出、表の兵士に伝えると。
「君、今直ぐに偵察隊を呼んでくれ。」
「はい、司令官。」
兵士は大急ぎで兵舎に行く。
「君達、直ぐに偵察隊が来るので、其れまで待ってくれないか。」
「はい」、司令官様。」
少しして、5人の偵察隊が来た。
「将軍、偵察隊です。」
「入ってくれ。」
偵察隊の5人は部屋に入り、ロシュエと司令官に敬礼をし、思わず。
「あっ。」
ロシュエは二コットして。
「何があったんだ、お前達はこんな美人を見るのは初めてなのか。」
兵士は緊張とは別に。
「はっ、はい、将軍、初めてです。」
「ウハ・ハ・ハ。」
と、ロシュエは大笑いするのだが、5人の兵士は何も知らなかった。
彼女達が兵隊の追跡を逃れて農場に入った女性達とは。
「この女性達だよ、あの軍隊の追跡を逃れ、この農場に入ったんだ、わか
ったかよ~。」
「はい、将軍、わかりました。」
「よし、その話は終わりだ。
君達は彼女達が住んでいた城、その周辺を偵察に行くのだが、その前に彼
女達に城と周辺の情報を教えてもらうので、良く聞くんだ、わかったか。」
「はい、将軍。」
兵士は大変な緊張をして要る。
「では、イレノア、頼むよ。」
「はい、将軍様、では、私達の知って要る事、覚えている事をお話ししま
す。
私達の住んでいました農村は、お城も近くに有ります。
私の村では百人程度が住んでおりました。」
イレノアは、思い出したのか、目に涙を浮かべている。
「イレノア、何も無理をする事は無いよ、話したくない事は話さなくても
いいからね。」
ロシュエは優しくなっていると司令官は思って要るが、其れは当然だっ
た、イレノア達は過去のいやな思い出を話す事になるのだから。
「いいえ、将軍様、大丈夫です。
その村だけでは無いのですが、殆どの村は生活が苦しいんです。」
「其れは、オレ達も知っているよ、どこでも、農民が一番苦しい思いをし
て要るんだ。」
「私の村では、大きな岩が辺り一面に有り、作物を育てる事も大変なんで
す、其れは、此処に居る彼女達の村でも同じだったと思います。」
娘達はうなずくので有る。
確かに、この農場でも、最初は大変な思いをして大小の岩を掘り出し、そ
の岩で城壁を造ったので有る。
「実はね、イレノア、それに、みんなも聞いて欲しいんだ、この農場の城
壁は農場を開墾する時に掘り出した大小の岩で造られているんだ。」
娘達は大変な驚きで。
「将軍様、其れは本当なんですか。」
司令官も兵士も頷き。
「本当なんだ、此処までに成ったのは、農民だけじゃ無いんだ、兵士達も
一緒になり、全員が必死で掘り起こし、今、やっとだけど、少し楽になった
のかなぁ~。」
「では、将軍様も大変な思いをされたんですね。」
「オレ達の話はいいんだ、イレノア達の話を聞かせてくれ。」
「はい、さっきも言った様に作物は簡単に出来ないのですが、それでも、
城からは税金を収めろと言われるんです。
私の親もですが、何処の農家にもお金なんて無いんです。」
「金も無い、作物も満足に出来ない、それで、どうして税金を納める事が
出来るんだ。」
「はい、将軍様、お城は、私達の様な若い娘が必要なんです。」
「何故だ、城には多勢の女性が居るはずだが。」
「はい、でも、王様は城の女性に余り興味が無かったと聞いています。」
「そうか、城主は素人の娘が欲しかったんだな。」
この城主はなんと言う男だとロシュエは思ったのだ。
「そうだと思います、私達はそんな事とは知らずお城に行かされたんで
す。」
「其れじゃ~、イレノアが行けば、税金を払う必要は無いのか。」
「私も、後で知ったんですが、二人の弟はお城の修理に取られ、父も行っ
たそうです。」
他の娘達も頷いている。
「そんな状態の村が、私の知って要る限りでも20は有ると聞いていま
す。」
「何、20の村では、領民が税金が払えないからお城で働かせているの
か。」
「はい、そうです、私の村でも逃げようとして掴まり、もっと苦しい仕事
をさせられていると聞きました。」
「其れじゃ~、領民という奴隷じゃ~無いか、なんと言う城主だ。
オレは、本当に、この城主を許す事が出来ないぞ、なぁ~、司令官。」
ロシュエの表情は怒りの表情となっている。
「閣下、私も、本当に許せないですよ、この城主は。」
偵察兵士も頷くのである。
「それで、城の周辺はどんな造りかわかりますか。」
「はい、お城は周りを高い石垣で造られています。
其れと、石垣と王様の居る所の間にはお堀が有ります。」
やはり、何処の城でも造りは同じだと、司令官は思ったので有る。
「偵察部隊、これ以上、何か聞く事が有るか。」
「いいえ、将軍、十分ですが、一つだけ教えて下さい。
城の周りに森か林は有りますか。」
「はい、有ります、お城の後ろは深い森になっています、この森には誰も
近づかないと聞いていますが。」
「将軍、この偵察では、必ず、良い報告が出来ると思います。」
「そうか、君達には済まないが、オレは、その領民の事を考えるなぁ~、
わかるだろう。」
兵士達も許せないと。
「将軍、私達は、前の森で色々な事を学びましたので、今回の偵察には必
ず役立てる事が出来ると思います。」
「そうですか、でもね、無理だけは止めて下さいよ、彼女達の話では、君
達が考えている以上に困難な任務ですからね、領民がどんな生活をして要る
かだけでもいいですよ。」
「はい、将軍、わかりました、それで、司令官、馬車には、何を積み込ん
でいけば宜しいんでしょうか。」
「先程、閣下にも申し上げたんだが、倉庫に猪の皮が有るはずです、その
皮を積んで行って下さい。」
「では、私達は猟師と言うわけですね。」
旅人では、反対に怪しまれるが、猟師なら、何処にいても不思議は無いの
だと。
「閣下、猟師なら武器を持っていても不思議では有りませんね。」
「その通りだな、5人の男達が旅人よりも、猟師であれば、直ぐにばれる
事もあるまい、よし、君達は猟師と言う事だ。」
「はい、閣下、では、私達は準備に入りますので。」
偵察隊はロシュエと司令官に敬礼し、部屋を後にしたので有る。
その頃、技師長は、早くも数十人の兵士達に、将軍宅の増改築に必要は材
料を運ばせているのだった。
「お~い、今日から、将軍の家を増改築するので、任務に就いて居ない兵
士も手伝って欲しいんだ。」
技師長の呼びかけに、新たに数十人が加わり、材料運びと改築作業に入る
ので有る。
「将軍、申し訳有りませんが、今から、増改築に入りますので、別の場所
に移動をお願いします。」
「えっ、もう始めるのかよ~、だけど、オレは、一体、何処の行けばいい
んだよ~。」
ロシュエも司令官も、更に、イレノア達も笑っているのだ。
「将軍、この作業ですが、20日も有れば完成しますので、例の場所で寝
泊りをお願いします。」
技師長は、話ながら、手でロシュエ達を追い出すのである。
其れを、百人近い兵士達が見たのだ。
「オイ、将軍の家から若い女の子が出てくるぞ。」
「本当だ、だけど、何時頃、あの娘達が着たんだ。」
「そんな事をオレが知るか。」
兵士達の話を聞いていた司令官が。
「お前達、今日、馬車が5台逃げ込んだ事も忘れたのか。」
「だって、司令官、私達は軍隊を見ていましたので。」
「そうか、わかった、この農場に5台の馬車が軍隊から逃れるために逃げ
込んだ事は知って要ると思う、その5台の馬車に乗っていたのが彼女達なん
だ。」
「じゃ~、あの時の馬車ですか、でも、美人ばかりで、司令官が羨ましいですよ。」
その時だった。
「オイ、お前達、この女性達に近づく事を禁止する。」
ロシュエは口調とは別に、顔は二コ二コとしている。
「将軍、了解しました、でも、その娘さん達はこの農場で、我々と一緒な
んですか。」
「そうだが、其れがどうしたんだよ~。」
笑い顔で言ったロシュエだった。
「お~い、みんな聞いたか、彼女達はオレ達と一緒に居るんだって。」
「本当かよ、俺達にもやっと運が回ってきたぞ。」
「よし、此れからだ、なぁ~みんな。」
「お~。」
と、兵士達の歓声が聞えたのだが。
「みんなの気持ちはわかるが、実はだ、彼女達はお前達が撃退した軍隊か
ら命がけで逃げてきたんだ、今は、はっきりと言っておく、彼女達は、兵士
を見るだけで城での辛い生活を思い出し、兵隊は恐ろしいと思って要るん
だ、別にお前達が悪いので無いが、彼女達の気持ちが本当に落ち着くまで、
静かにさせたいんだ、みんなわかったか。」
兵士達も納得したのだ。
その頃、農場では、農場の婦人達が集まり。
「ねぇ~、みんな聞いて欲しいの、さっきの娘さん達の事なんだけど、あ
の娘さん達は何も持って無いのよ、娘さん達の着てた服はボロボロなのよ、
私達も着る物も無いけど、あの一枚だけじゃ~、余りにも可愛そうだと思う
のよ。」
年配の女性は、この農場でも、一番積極的に物事を進める女性なのだ。
「そうよねぇ~、私達も着る物は無いけれど、あの娘さん達の話を聞く
と、私達も昔の事を思い出すからねぇ~。」
「みんな、私達は同じ女性として、あの娘さん達の着替えと、食器を用意
したいのよ。」
「其れじゃ~、私達の使っている服を出すの。」
「うん、仕方無いと思うのよ、あの娘さん達もわかってくれると思うの
よ。」
「そうね、そうだ、みんな、はぎれがあれば、それで新しい服を作ってあ
げると思うの。」
「だけどね、行き成りはぎれの服じゃ~、余りのもかわいそうよ。」
若い女性が一枚の服では余りにもかわいそうだと思ったのだ。
「そうね、そう言われれば、そうよねぇ~。」
「私達だけで、何とかして上げないと、将軍や司令官は男だからねぇ~、
わからないよ。」
「其れじゃ~、あっちの女性達にも声を描けてみようよ。」
「そうだね、私達は同じ女性同士なんだから、話をすればわかってくれる
と思うの。」
その後、女性陣は、別の農場に向かったのだ。
同じ頃、偵察隊は兵舎に戻り、準備に入っていた。
「オイ、さっきの娘達だけど、本当に美人だよなぁ~。」
「うん、本当に美人だ、だけど、あの時の馬車には男が居たと思うんだが
なぁ~。」
兵士達はやはりイレノア達が気になるのは、当然の話なのだ。
今まで、この農場に来たのは、殆どが農民と野盗達だけで、20人もの若
い娘達が来た事が初めてで、兵士達の気持ちも若い女性達に向いている。
「でも、あの娘達は将軍と司令官の側に居るけど、どうなるのかなぁ~、
気に成るよ。」
「オイ、オレ達は、今から、本当に重要な偵察に行くんだぞ、あの娘達の
事は、帰ってからにしろよ。」
「わかったよ、だけど、お前も本当は気になるんだ、そうだよなぁ~。」
其れは、本当だが、此れからは大切な任務が有る。
その任務を失敗に終わらせる事は出来ないのだ。
「オレもみんなと一緒だけど、我々に与えられた任務を成功させないと、
あの娘達だけじゃ~無いんだ、この農場に居る全員から、本当にそっぽを向
かれる事に成るんだぞ~、それでも、いいのかよ~。」
「そうだなぁ~、まぁ~なぁ、オレ達はあの美人を見たんだから、いい
か、ハ・ハ・ハ。」
と、他の兵士達も笑ったのだ。
「この事は、我々だけが知って要るんだから、誰にも言うなよ、内緒だか
らな。」
「お~、わかったよ、じゃ~、早く準備をするか。」
「そうだなぁ~。」
偵察隊は、何か、顔も心も弾んでいるので有る。
一方、ロシュエは娘達を連れて別の部屋に入って行く。
「どうだ、此れからは、暫く此処で、寝泊りをしてもらう事になるんだ
が。」
其れは、数人で1室と、部屋には自分達が農家に居た頃よりも立派なベッ
ドや家具がそろえて有る。
「将軍様、本当に、私達が使ってもいいのですか。」
「勿論だ、技師長が君達の部屋を造っている間だけどな。」
娘達は、声に出さないのだが顔は大喜びだった。
「イレノア、君が部屋を決めてくれ、其れと、後は、着替えと食器類だな
ぁ~、よし、何とか考えてみよう。」
ロシュエも楽しそうな顔だった。
「将軍様、本当に何とお礼を言って良いのか判らないのです。」
「イレノア、礼なんて、いらないよ、この農場にも、若い娘が来て花が咲
いたようだ。」
「司令官、娘さん達を早くみんなに紹介した方がいいと思うんだが。」
「ハイ、閣下、私もその様に思いますねぇ~、特に若い兵士達には毒です
から。」
司令官はニヤリとするので有る。
「其れじゃ~、今から行くか。」
ロシュエは、イレノア達を連れて農場の広場に行った。
この農場は、今では、広大な敷地に成った。
最初にロシュエ達ときた農民、次に司令官と一緒に来た農民、その他、元は
農民だった野盗から、この農場に入った農民、そして、司令官が引き入る、
兵士達、更に、この地を訪れ、そのまま、農民になった人達を合わせると、
今や、単に農場と言うよりも、類を見ない程の巨大農場と生長したのだ。
今では、数百箇所も農場が完成し、一年中、穀物や多くの作物が作られて
要る。
人口も、最初に、この地を開拓した時の10倍以上に成り、各農場でも責
任者を置き、数十日に一度会議を開いているので有る。
だが、此処の最高責任者が最高権力者なのかわからない。
今でもロシュエが将軍と呼ばれ、最初の頃と同じ、農場で働く人達でも城壁
の修理、その他、全てに対し平等に行われて要るので有る。
時には、仲間同士の争いも有るが、この農場の特徴といえば、外敵に対し
ては、兵士は勿論、全ての農民が一致団結し反撃すると言う事なので有る。
そんな、穏やかな生活を送っている時に、突然、若い娘、20人も飛び込
んで来た。
この農場に住みたいと言うのだ、将軍も司令官も、今回の様な出来事は、過
去に一度もなく、対処の方法がわからないので有る。
将軍は娘達を全員に紹介する事で、後々起こるかも知れない争いを避けたい
のだ。
最初に向かったところは、ロシュエと一緒に来た仲間達の農場広場であ
る。
久し振りにロシュエがきたので、仲間達はすぐに集まり。
「お~い、みんな話が有るんだ、聞いてくれないか。」
この農場では、娘達が来た事は全員が知っていたのだ。
「将軍、その娘さん達の事だね。」
「お~、そうだ、話しが早いね、では、簡単に説明するか。」
「将軍、何も説明なんか要らないよ、オレの嫁さんになるんだから。」
「あんた、何を言ってるんだよ、私が居るんじゃ無いか、このバカ亭主
が。」
「そうか、オレは独身じゃ無かったんだ。」
「そんな事を言ってると、食事は作らないよ。」
「ごめんよ、かぁ~ちゃん、許してね。」
全員が大笑いをするのだ。
「将軍、その前に、私達の話を聞いて欲しいのよ。」
農場のおかみさんが娘達に。
「お~。なんだ。」
「私達はねぇ~、別に将軍の世話がいやだとは思って無いのよ、だけどねぇ
~。」
「わかってるよ、何時も、此処のおかみさん達には大変申し訳ないと思って
んだよ~、済まないねぇ~。」
「それでね、その娘さん達によ、将軍と司令官のお世話をお願いが出来れば
と、私達も本当は助かるのよ~。」
司令官は側で二コ二コとして聞いて要るのだ。
「そうなんだ、実はね、司令官からも、それに、技師長からも言われたん
だ。」
おかみさん達は二コットして。
「それじゃ~、将軍決まりだねぇ~。」
「その前にだよ、この娘さん達は、この農場でみんなと一緒に居たいと言
ってるんだが、どうだろう、みんなの気持ちを聞かせて欲しいんだ。」
「将軍、今更、何を言ってるんだよ、娘さん達は、私達と一緒だから
ね。」
「有難うよ、じゃ~、いいんだな。」
最初の開拓に入った仲間達は全員が賛成したので有る。
「将軍様、司令官様、そして、皆さん、本当に有難う御座います。
私達も、元は農民です、ですから、少しでも皆さんのお役にたてる様にし
ますので。」
イレノアは、代表して言った、その娘達の全員が頭を下げたので有る。
「イレノア、何を言ってんのよ、あんたは将軍のお世話をするんだよ、
今、決まったじゃ無いのよ。」
年配の女性の口調は荒いが、顔を笑っていたのだ。
「そうなのよ、あんた達はね、私達の事よりも、将軍の事を心配して欲し
いのよ、それによ、なんたって、私達の将軍様なんだから、何かあったら、
私達が困るのよ、ねぇ~。」
イレノアは何もいえなかった。
あの城では、毎日が苦痛で、早く死にたいと思っていたのだから、其れ
が、此処ではどうだろう、あの城とは全く別の世界に居る様であったのだ。
「イレノア、みんなの気持ちを受ける事だよ。」
ロシュエは優しくなっている。
「みんな、有難うよ、じゃ~、此れからも宜しくな、オレ達は、他の農場
に行ってくるからなぁ~。」
ロシュエは、司令官とイレノア達を連れて全ての農場で、同じ様な話をし
たので有る。
何れの農場でも、みんなの気持ちは同じだった。
ロシュエも司令官も農場で働く人達が本当に優しい心の持ち主だと思っ
た。
そして、最後に行ったところが兵士達の居る所なのだ。
「兵士の諸君、全員集合して下さい。
将軍より大切なお話しが有りますので。」
司令官の口調は何時もと少し違っている。
暫くして、兵士全員が集合した。
「全員、揃いましたね、では、今から、君達に大切な話しがありますの
で、静かに聴いて下さい。」
「みんな、毎日の任務、大変ご苦労様ですね、今、司令官からも言われた
様に、みんなに今から、大切な話をするが、その前に、全員に紹介する、イ
レノア達、20人の娘さん達だ。」
その時、大きな歓声が上がった、其れは、イレノア達が将軍の紹介で礼を
したのだ。
「みんな、何故、此処に20人の美人が居ると思う。」
「将軍、一体、何処から誘拐してきたんですか。」
「オイオイ、このオレが、20人もの美人を誘拐すると思うかよ。」
「いや、将軍の事だから、わからないよ。」
全員が大声で笑ったのだ。
「うん、実はそうなんだよ、と、言いたいが、本当は違うんだな、之が、
残念な事に。」
ロシュエは兵士との会話を楽しんでいるとイレノアは思ったので有る。
「じゃ~、将軍、一体、何処から来たんですか、マジックでも使ったので
すか、その美人は次には消えるってかよ~。」
「其れじゃ~、今から本当の話をするぞ、今日の朝、突然、現れた5台の
馬車、其れを、追ってきた軍隊、その話は全員が知って要るよなぁ~。」
「将軍、そんな事は此処の全員が知って要るよ、なぁ~、みんな。」
「お~、勿論だ、知ってるぞ~。」
と、あちら、こちらから大声で叫ぶのである。
「5台の馬車は、農場に入れたなぁ~、そして、軍隊は。」
「将軍、決まった事だ、奴ら、全員を殺っつけた、其れがどうしたんだよ
~。」
「まぁ~、聞けよ、その5台の馬車は、今、何処に有るんだ。」
「将軍、何を言ってるんですか、今、馬車小屋に有りますよ。」
兵士達は、馬車から人が降りた事も知らなかったのだ。
「其れじゃ~、聞くが、その馬車から、人が降りた様子は。」
「オレは見て無いよ。」
「オレもだ。」
兵士達は、首をかしげ、不思議そうな顔をして要る。
「だけど、将軍、馬車には確か農民が乗っていたはずだよ、何処に消えた
んだ、オレ達に礼も無しによ~。」
その時、イレノア達が頭を下げるのだだった。
「うん、確かに馬車には農民が乗っていたよ。」
「その通りだ、みんな、あの5台の馬車に乗っていたのが、今、此処に居
る20人の美人達なんだよ。」
「え~、将軍、本当なんですか。」
兵士達が驚くのに無理は無かったので有る。
「でもよ~、あの時、オレ達は男だと思っていたからよ~。」
「確かに、みんなは男だと思っていたが、農場のおかみさん達がお風呂と
食事、それに、着る物を出してくれたんだ、お陰で、男から美人に変身した
んだ。」
「将軍、じゃ~、オレも、風呂と食事と着る物が変われば、美人になるか
なぁ~。」
「お前がか、だれが、そんな事を言ったんだよ、お前には絶対に無理だな
ぁ~。」
また、大笑いするのだ。
「それでだ、冗談は別にとして、この娘さん達は、ここから、30日間ほ
ど、行った所にある、大きな城で働かされていたんだ。」
「将軍、じゃ~、その美人さんは、お城のいたんだ、どうりで美人ばかり
だと思ったよ。」
「だけどな、本当の話は、此れからなんだ、この娘さん達は全員農家の娘
さんなんだ。」
「え~、其れじゃ~、初めからお城にいたんじゃ~、無いんだ。」
「その城の領民には、はじめから払う事の出来ない程も税金を掛けられ、
税金が払えない農家では、娘さんだけじゃ~無いんだよ、そのお城に連行さ
れ働かされているんだ。」
「だって、将軍、オレ達兵士と言うより、城主は領民のために命を掛けるん
だろうよ、そして、領民は、そのお陰で安心した生活を送っているんじゃ~
無いのですか。」
「そうだよ、其れが、普通なんだ、だがよ、この城じゃ~、どうも違うん
だ。」
「将軍、どう違うんだ。」
「この領民達は悪い城主のために苦しめられているんだ、この娘さん達も
税金が払えないので、お城に連れて行かれたそうなんだ。」
「お~い、娘さん達、今の話は本当なのか。」
イレノア達は全員がうなずき。
「本当なんです、私達、領民は逃げる事も出来ないくらい、いつも兵隊か
らは監視をされていました。
失礼しました、此処の兵隊さんは、そんな事は無いと、将軍様から聞いて
います。」
「当たり前だ、オレ達は、この農場の人達を監視などはしていないんだか
らなぁ~。」
兵士は少しだが反論はするが。
「でも、私達の村では、必ず、何処かに兵隊がおりました。
それで、税金が払えないと私達、若い娘達はお城に連れて行かれ、若い男
達はお城の修理の為に連れて行かれるのです。」
イレノアは涙を流し話すので有る。
「それでだ、オレは、娘さん達の話を聞き、偵察隊を送る事にしたんだ。
偵察隊、ちょっと来てくれ。」
偵察隊は前に出たので有る。
「彼らは、此れから、その城と城下を偵察に行くんだが、片道30日、偵
察に10日、帰りに30日と70日間も長い間、この農場を離れる事にな
る。
オレはなぁ~、娘さん達の村が今どうなっているのか、其れが、一番心配
なんだ。」
「将軍、なんで、直ぐにオレ達が行け無いんだよ、オレ達が行けば簡単に
終わるはずだ。」
「其れが、簡単にいかないんだ。」
「なんでだよ~、オレ達に命令すれば済む事なんだから。」
「みんなの気持ちはわかっているよ、其れじゃ~、みんなに聞くが、お前
達は、戦争をしたいのか、オレは嫌だねぇ~。」
「じゃ~、将軍は、命が惜しいのかよ~。」
「オレは、そんな事を言ってるんじゃ~無いんだ、お前や、お前の仲間
が、オレの目の前で殺られるのを見たく無いんだ。
それによ~、お前達が死んで、この農場の仲間が喜ぶとでも思うのか、誰
も喜ばないとオレは思って要るんだ。」
「じゃ~、将軍は、なんのために偵察に行かせるんだ。」
兵士達も本当に戦争になる事を望んでいるのか。
「さっきも言ったように、オレはなぁ~、城の事よりも、周辺に住んで居
る領民の事を知りたいんだ。
この娘さん達の話が本当だとすれば、何百、何千の領民が苦しい生活をし
て要ると思うんだ、オレはなぁ~、その領民を救えないかと考えて要るん
だ。」
「其れじゃ~、将軍、領民を救い出すときには戦争に成る事は有るんです
か。」
ロシュエは少し考え。
「オレは、みんなも知って要ると思うが、戦争はしたくは無いが、若し
も、そんな事に成ったら、オレは全力で挑む積もりだ、オレはなぁ~、オレ
が死んでも、苦しい生活をして要る領民だけは助けたいんだ。」
「将軍、なんで、将軍だけが死ぬんだよ、オレ達はなぁ~、いつでも、何
処でも行くぜ、なぁ~、みんな。」
ロシュエの気持ちは誰よりも知って要ると思う兵士達は、大歓声を上げた
のだ。
「みんな、有難う、戦争だけは避け、領民が助かるんだったら、其れが、
一番なんだが、娘さん達の話では、周辺の領民は恐怖の為に何も出来ないと
思うんだ、毎日、毎日脅され、其れは、いじめなんてもんじゃ~無いんだ、
毎日が脅迫だよ、オレは、そんな領民だけを救いたいだけなんだよ~。」
「将軍、早い話が領民を救い、若しも、その国が攻撃する様になったら、
このオレ様が先頭に立ちだ。」
「オイ、お前じゃ~、無い、オレがじゃ~無い、将軍として先頭に立ち、
オレは反撃をする、それだけだ。」
「将軍、わかったよ、じゃ~、オレ達は、いつでも反撃出来る様に準備を
するんだ。」
「オイオイ、まだ、戦争するとは決まって無いんだぞ、だけど、何時、ど
うなるかはわからんから、準備だけは頼むぞ。」
またしても、兵士達は大歓声を上げたのだ。
イレノア達は何も言えず、涙が溢れるのだ、この人達は自らの命をかけ
て、他人の為に領民を救い出すのだと、それに、今までの生活では、涙は悲
しい時に出る。
其れが、今では喜びと嬉しさのために涙が止まらないので有る。
「みなさん、本当に有難う、有難う御座います。
私もですが、私達の家族は、あの国で、本当に虐待を受け、毎日が恐怖の中
で生きています。
如何か、皆さんのお力で、私達の家族や他の人達も助けて欲しいんです。
でも、戦争だけは避けて頂きたいのです。
其れは、皆さんが、死んでも、私達は嬉しくなんか有りません。
あの城主の事ですから、領民は生かさず、殺さず、だと思っていますの
で。」
「お~い、娘さんよ、オレ達の事を心配するよりも、あんた達の家族の事
だけを考えな、其れによ、オレ様は独身で家族も居ないんだから、別に悲し
む人も居ないんだからよ~。」
「いいえ、私達が悲しいんです、如何か、みなさん、命だけは大切にして
下さいね。」
イレノア達は、兵士だけでは無く、誰も死んで欲しく無いのだ。
「其れと、話は違うが、娘さん達は、まだ、兵士の姿を見ると恐怖に襲わ
れるんだ、別にお前達の事を言ってるんじゃ~無いが、暫くは農場でのんび
りとさせたいんだ。」
「将軍、オレ達もバカじゃ~無いんだ、そんな事はわかってるよ、本当
に、将軍は何を心配してるんだよ~。」
兵士達からは、笑いが起きたのだった。
「其れじゃ~、みんな頼むぞ~。」
「おお~。」
と、兵士達からは歓声が上がったので有る。
兵士達への話は終わり、ロシュエと娘達は農場に戻って行くので有る。
残った司令官は全員に向け。
「みんな、有難う、偵察隊が戻ってから準備をしたのでは遅い、あの生き
残った兵士達が城に戻るのに30日、準備に3日、この農場の攻撃を仕掛け
るとすれば、65日後から70日後くらいと思う、其れまでは時間が有るの
で、急ぐ必要は無い。
但しだ、あの国からも、偵察部隊を送っていると考える必要があるので、
今日からは、見張りを増員する、以上で有る。」
「司令官、我々の準備は何時から始めるのですか。」
一人の隊長は準備を始めたいのだ有る。
「其れは、先程言ったが、急ぐ必要は無いが、君達に任せるが、すぐに始
めると思うが、今日と明日は休め、明後日からとする、其れと、各大隊に告
げる、食料の準備は行なうな、農場の人達に迷惑を掛けるからだ、其れと、
準備完了次第だが、各隊長は城壁の補修に入る様に、城壁の補修が全てで有
る。」
司令官は戦闘になれば、この城壁が農場を守ってくれると。
「司令官、私の隊も城壁の補修に入りたいのですが。」
司令官は嬉かった、この隊長もだが、兵士達も決して戦争を望んでいるの
では無い。
「君達の気持ちは大変嬉しい、では、城壁の補修と見張りなどが有るが、
全て君達に任せるので、宜しく頼みますよ、其れと、各隊長は準備会議に入
るので、私の宿舎に集合。」
各隊長は司令官室に向かうので有る。
それから、数時間の会議を終え、内容は将軍に報告され、偵察隊は、その
2日後農場を後にしたので有る。
此れからは、最低でも70日間は情報が無いのだ。
「司令官、偵察隊が戻るまで70日間は掛かるぞ、だがな、生き残った兵
士達は必死で戻ったとしてだ、早くて50日後には、この農場に大軍が押し
寄せて来ると考えないと。」
「閣下、私も同感です、各隊長にも同じ指令を出しておきますので。」
「司令官、じゃ~、宜しく頼む。」
「はい、閣下、了解しました。」
と、司令官はロシュエに敬礼をし、宿舎に戻って行くので有る。
「将軍様、私達は、本当に此処で、お世話に成っても宜しいのでしょう
か。」
イレノアは、まだ、信じる事が出来なかったのだろうが。
「イレノア、君は何時まで同じ事を言わせるんだよ、イレノア、それに、
みんなもな、此処で一生過ごすといいんだ。
だが、此処での生活がいやなら、いつでも、出て行ってもいいんだよ。」
イレノアの顔色が変わったのだ。
「将軍様、私は、何も不満を言っているんじゃ無いんです。
今までの生活を考えたら、今は、どう表現して良いかわからないんです。
余りにも幸せすぎて。」
ロシュエは二ッコリとして。
「イレノアも、君達も今までが普通の生活じゃ~、無かったんだ、この農
場での生活が、当たり前の生活なんだ。」
イレノア達も頷いたので有る。
「其れに、君達のご両親やお仲間達も救える事に成るかも知れんよ、あの
城での生活を何時までも思い出す必要も無いんだ。」
「私も、早く忘れたいんです、でも、夜に成ると思い出すんです。」
ロシュエは考え。
「其れじゃ~、どうしたいんだ。」
イレノアも考えて要る。
「あの~、将軍様、私達の部屋で一緒に寝て欲しいんです、でも、無理だ
とわかっています、それに、将軍様は男性ですし、私達はその~。」
と、言ったが、イレノアの顔は少し赤くなったので有る。
「よし、わかったよ、オレが部屋に居ればいいんだな、それで、君達の気
が済むんだったね。」
イレノアの顔を更に赤くなったのだ。
「将軍様、本当ですか、わぁ~嬉しい、これでやっと本当に眠る事が出来
ます。
無理な事を頼んで許して下さい。」
イレノアは、ロシュエの頬にキスをしたのだ。
其れは、余りの嬉しさで、咄嗟の出来事だった。
「オイオイ、オレは狼なんだぞ。」
イレノアは、何も言わず、二ッコリとするだけだった。
その夜からは、イレノア達は、本当に久し振りの深い眠りに入る事が出来
たので有る。