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闇の帝国    作者: 大和 武
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 第 122 話。本来の目的は。

「私は日本陸軍の田村と申しますが、コリンズ氏にお招き頂きましたので寄せて頂いたので御座います。」


「はい、伺っております、ご主人様は直ぐ下の地下室でお待ちで、此処より参る事が出来ますので、どうぞそのままで。」


 と、門番か警備員なのかわからないが大男は丁寧な言葉使いで案内してくれた。


 大男が言った方へ行くと其処には隠し扉が有り、開けると地下へと通じる階段が有り下りて行くと、又も扉で重く厚みの有る扉だ。


「ギ~ット。」 軋み音で開いた。「やぁ~田村少佐。」


 其処にはコリンズが居た。


「突然のお招きで少し驚きましたが、この様な地下室で一体何用で御座いましょうか。」


「少佐、私は今度のロシア軍との戦争だけは何としても勝利して頂きたいのです。」


「其れは勿論でして、我が国もどんな事が有っても絶対に勝利しなければならないと考えております。」


 田村には随時本国から暗号で書かれた書状が届き、自ら解読し読む。


 だが今回だけは何の連絡も無く一体何用なのだろうか、何故ならば何時もは玄関から応接室に案内される、だが今回は何か特別な用件なのかも知れないのだと。


「少佐、さぁ~今から案内しますので。」


 と、コリンズが前を田村はその後ろから歩き、暫く行くと大きな空間の有る部屋に入った。


「此処は一体何ですか。」


 田村は恐ろしさを感じる程の大きさだ。


「わぁ~何と大きな部屋だ、だが一体何の為にこんな大きな部屋を造ったんだろうか。」


 と、コリンズに聞こえる様に呟いたが。


「田村、此処は特別に造られた射撃場なんだ、新型の銃が完成すれば此処で試し撃ちをする所で、今日は新式の銃が完成し此処で試し撃ちを行う事にしたんだ。」


「新式の銃ですか。」


 田村は目の前の机の上に置いて有る銃は何時もの連発銃では無く、長さも五寸以上も長く特別な造りをして要る。


「これなんですがね、数日前にやっと完成したんですよ。」


 だが何の為の新型の銃なんだ。


「成程ねぇ~、これが新式の銃なんですか。」


「この銃なんですがね連発銃では無いのですがね、弾丸は十発装填出来るんですよ。」


「何故に連発式では無いのですか、其れに銃身も長い様ですが。」


 田村が初めて見た新式の銃で有る。


「少佐、この銃は敵を其れも連発銃よりも遠くに飛び確実に殺す為の専用の狙撃銃なのです。」


「狙撃銃と申されましても、私も初めてお聞きしたので。」


 田村は狙撃銃と言う専用の銃を見たが。


「この狙撃銃は連発銃よりも重く、簡単には作れませんので時間が必要なのです。」


 コリンズは何の為に田村に説明するんだ、だが大よその見当は付いていた。


 特別に製造された狙撃銃を我が国の兵士に使えとでも言うのか、だが狙撃銃を使いこなせる兵士は今の日本陸軍にはいない。


「狙撃銃の性能ですが、私が見たところでは連発銃よりも遥かに遠くまで飛ぶと思うのですが。」


「ええ、正しくその通りでしてね、五百メ-タ―まで、まぁ~日本式で言いますと、三町半と言ったところですがね。」


「えっ、三町半もですと、そんなにも遠くまでも。」


「この距離ならば必ず命中しますが、弾丸はまだ先まで飛びますよ。」


「だったら狙った敵は確実に死亡するのですね。」


「正しくその通りですよ、弾丸は連発銃で使う弾の一倍半も有りますからねぇ~。」


 田村は何を聞いても驚きで、だが一体何丁製造するのだろうか、其れに何時我が国に届くのだろうかと思って要る。


「少佐は何丁と何時届くのか、其れと弾丸の数量ですね、それらを考えておられると思いますが、私の予定ですが専用の訓練には相当な日数が掛かりますので、出来るだけ早くお届けしたいのですが、一応、五十丁と二十万発の弾丸は必要だと考えておりますが、何せ特殊な作り方なので、今はこの1丁だけが完成して要るのです。」


「分かりました、其れで試しですが。」


「其れならば何時でも可能ですよ。」


 田村は狙撃銃の威力を早く見たいので有る。


「では宜しくお願い致します。」


「では早速に、宜しく頼みますよ。」


 コリンズが手を上げると、一人の兵士が現れ田村に敬礼すると狙撃銃を手に取り弾を込めて行く。


「何時でも宜しいですよ。」


 コリンズと田村は少し下がり兵士の動きを見て要るが、兵士は手慣れた動きで狙いを定め、五百メートル先の的に、そして、兵士が引き金を引くと、「バギュ~ン。」と、強烈な発射音がし、的の中心に命中したと合図が返って来た。


 その後は連続で撃ち、全てが命中した。


「物凄い威力ですねぇ~、お話しよりも遥かに凄い威力だと知りました。」


 だが狙撃手を育てる為の訓練ともなれば相当難しいと思ったが、だが何故にコリンズは狙撃銃が必要だと思ったのだろうか。


「私はねぇ~使用する兵器の差だと思いますが。」


「私も多分ですが同じだと思って要るのですが、ロシア軍の兵器も新しいのでしょうか。」


 田村はロシア軍の兵器が新しくなっていると思って要る。


「私に入った情報では以前に作った狙撃銃と同じ、いや其れ以上の性能を持って要ると聞きましたので、其れで何とか出来ないかと試行錯誤の結果完成したのが、この狙撃銃なのです。」


 やはりそうだったのか、と田村が思うのも当然で、ロシアはどんな方法を使ってでも日本国を植民地にし、金塊やその他の物がロシアの役に立つ物を略奪するのだと言う考え方で有ると言う噂が入って要る。


「私には若しかすればロシアは全ての物資を略奪するんだと言う噂が耳に入っていたのです。」


「少佐が聞かれた噂話ですが、実は噂話では無く本当の話でしてね、実を申しますと、私の工場で作ったのですが、有る時、何者かが工場に侵入し五百丁と弾丸の全てを奪ったのです。」


「其れはロシア軍の兵士だと考えられるのですか。」


「いいえ、私も痕跡を調べましたが軍の仕事では無く、窃盗団の仕業だと判明したのですが、もうその時にはロシア軍に売られておりまして、奴らのアジトには何も無く、その為に我々も諦めるしか無かったのです。」


 コリンズは新式の狙撃銃五百丁と弾丸の全てを窃盗団に盗まれ、全てをロシア軍に売られたと言うのだ。


「ですが何故に窃盗団の犯行だと分かったのですか。」


「其れはですねぇ~、何時の時代でも起きるのですが、其れが仲間割れでしてね、取り分で相当揉めた様で一番取り分の少ない者が警察に飛び込んで全てを話し、話を聞いた警察がアジトに突入したんですがね、もうその時には全てが搬出されておりまして何も残っていなかったんです。」


「じゃ~奴らは最初からロシア軍に売るつもりだったんですか。」


「警察ではその様に考えておりまして、捕まった奴らですが金の為ならば何でもすると言う奴らで、奴らは狙撃銃を高値で売る事を考え、其れでロシアの軍部に話を持ち掛けロシアは二倍払うと約束したそうですが、余りにも高額を受け取った奴らは分割を巡って仲間割れを起こし、今から数か月前に全員が捕まった、其れが真相なのです。」


 では狙撃銃と弾丸の全てはロシア軍の手に入ったと言う事なのか。


「ああ、何と言う事だ、新型の狙撃銃がロシア軍の手に渡ったとすれば、今でも状況が不利だと言うのにこれでは日本国は完全に勝利と言う二文字に見放されたのも同然では無いのか。」


 と、田村が独り言を言ったつもりなのだが。


「少佐のお気持ちは十分理解しておりますよ、其れで我々は奪われた銃よりも遥かに優れた性能を持った銃、其れがこの狙撃銃なんですよ。」


「では奪われた銃よりも性能は遥かに上だと申されるのですか。」


 田村は正かと思ったが、コリンズは相当苦労した様で、だが狙撃銃がロシア軍に渡ったとすれば、日本軍には思った以上に犠牲者が出る、だが其れ以上の性能を持つ銃が完成したとなれば、日本軍の兵士に特別な訓練をすれば犠牲者を減らす事も可能で有ると。


「ですが、ロシア軍に渡った狙撃銃とこの銃の性能ですがどちらが優れて要るのですか。」


「其れならば、勿論この狙撃銃ですよ。」


「ですが同じ狙撃銃では無いのですか。」


 田村は同じ狙撃銃だと思った。


「いいえ、其れは無いですよ、ロシア軍に渡ったのは連発銃を改造した銃でしてね、ですがこちらの銃は最初から狙撃を目的として作られたんですよ。」


「ではこちらの銃の方が有利なんですか。」


「ええ、勿論ですよ、ですから私は何も慌てる事も無くこの銃を作る事に時間を掛ける事が出来たと言う訳なのです。」


 だからコリンズは慌てる事も無く、ロシア軍に渡ったのは連発銃を改造した銃で、そして、今目の前に有るのがコリンズが狙撃を目的とした専用の銃で有る。


「少佐、私もですが、陛下もロシアが日本国を植民地にはさせたくは無いのです。


 歴史的から見ても、我が国と日本国は大変仲の良い関係だと認識しております。


 若しもロシアが日本国を植民地にすると、我が国もですが、欧州の国々が支配しております地域の国々もロシアの手に落とされ、結果的には今以上に強大な国家となり、下手をすると今後数百年間はロシアの思うがままとなり、我が国もですが、私も利益を得る事が出来ず、今其れを阻止出来るのは今の日本国だけなのです。」


 田村は日本陸軍の武官として欧州に渡り、今はイギリスに滞在して要る。


「よ~く分かりました、其れで狙撃銃は日本陸軍に送って頂けるのですか。」


「其れは勿論ですよ、ですが今はまだ十丁程しか完成しておりませんので、其れと弾丸も必要なので今直ぐに送る事が出来ないのです。」


 コリンズは自らが支配する地域も広大で、今の地球上では最大の資産家で有る事は間違い無く、若しもロシアが東南アジア諸国を征服する事にでもなれば大変な事態になる。


 勿論、本国の産業に付いては殆どにコリンズが関係しており、若しもロシアが日本国に勝利でもされるとコリンズに取っては大損害を被るので有る。


「其れと代価ですが如何ほどになるのでしょうか。」


「今回は無償ですよ、私としましてはロシアとの戦争に勝利して頂ければ其れだけで大満足なのですから。」


 コリンズは日本に勝利して欲しいので有る。


「私は本国に戻り次第政府と陸軍省に報告しますが、その前に書面を送る事にします。」


「私としては余り大騒ぎしたくは無いので、まぁ~適当に報告して下さいね。」


 田村と会話して要るコリンズとは一体何者なのだろうか、其れにしても新式の狙撃銃が日本国に届けば直ぐにでも人選に入り、訓練を開始出来るはずだ。


「少佐、実はですねぇ~、今日来て頂いたのは狙撃銃とは別のお話が有りましてね、そのお話しをする為に来て頂いたのです。」


 田村も予想はしていたが、其れが正かと思う話に驚きは隠せない。


「少佐にも情報は入って要るとは思いますが、確かにロシアは日本国を植民地にしようと必死ですが、その眼前にロシアの侵略を阻止する為に動き出した国が有るのです。」


「今のお話しとは正かとは思いますが清国では御座いませんか。」


「いゃ~流石に少佐ですねぇ~、私も少佐の事ですから多方面に渡り情報収集されておられるとは思いますが、先日も私に入った情報で清国が物凄い人数の兵士を集めて要るそうですよ。」


「大勢の兵士を集めて要るとは、私も耳にも入っております。」


 田村も清国の軍隊が兵士を集めて要るは聞いては要るが、問題は人数だ。


「少佐の耳に入った情報とは少し違うとは思いますが、私に入った情報では三十万、いや五十万人以上を、若しかすれば百万人、いや其れ以上集めて要るとも考えられます。」


「私に入った情報では五十万だと、其れにしても百万とは、ですがその人数でロシア軍の侵攻を止める事は出来るのですか。」


 田村は人数よりも問題は他に有るとは知らなかったのだろうか。


「問題は其れなんですよ、若しも、若しもですよ、ロシアと清国が裏で何やら協定を結んで要るかも知れないのです。」


 田村は正かとは思ったが、今まで入った情報を整理すると、ロシアは日本国を植民地に、だが清国は違った。


 ロシアが日本国を植民地にする事も了解して要る。


 其れと言うのも清国は半島を支配出来れば良いのだが、半島は清国が、いや清国よりも以前の国々が数百年も前から事実上の植民地で、其れが何故今頃になって数十万の、いや其れ兵士を集める必要が有るんだ。


「ですが、半島は数百年間も清国とは別に以前の国々が支配しており、事実上は清国の植民地だと伺っておりますが。」


「少佐が聞かされたお話しに間違いは有りませんが、今の清国に入った情報では日本国軍隊が半島に上陸すると言うのです。」


「ですが其れはロシア軍を撃滅させる為なのです。」


「少佐のお話しが正論だとは誰でも知っておりますが、清国はその様には理解していないのです。」


 田村に入った情報とコリンズに入った情報では全く違う。


「確かに日本陸軍は半島に上陸の計画は有りますが、其れは。」


「勿論、我々も理解しておりますよ、ですが清国にすれば日本陸軍が半島を清国から解放すると考えて要るのです。」


「今のお話しが事実ならば直ぐにでも本国に伝える必要が有りますねぇ~。」


「ですが今更日本国政府が清国と協議しても遅いと思いますよ。」


 コリンズは今更清国は日本国政府と協議には応じないだろうと考えて要る。


「では日本国は戦争に突入する可能性も有ると考えなければならないのですか。」


「其れは勿論ですよ、ですが問題は裏でロシアが画策して要ると聞いております。」


「実は私もロシアが動いて要ると考えておりましたがやはりでしたか。」


 ロシアが裏で動いて要ると言う事は、ロシアにすれば清国と日本国が戦争に突入すれば、ロシアは清国に武器を売り付けるだけで良い。


 日本国が負ければ何もする事も無く植民地に出来、そして、清国が負ければ清国を支配出来、其処から日本国に手を伸ばせば良いのだと、だが果たしてロシアの思う通りになるのだろうか。





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