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闇の帝国    作者: 大和 武
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第 117 話。やはりだ、げんたは造り始めた。

 潜水船の建造が開始された数日後。


「なぁ~あんちゃんは一体何隻造るつもりなんだ。」


 と、執務室に入るなり言った。


「一体どうしたんですか、突然に。」


「オレはただ何隻造るのか知りたいんだ。」


 正かとは思うが、げんたは新しい武器を考え付いたのではと源三郎は思ったが。


「私の計画では乗組員の人数と訓練も必要なので、一応最低限二十隻は建造出来れば良いと考えて要るのですがねぇ~。」


「ふ~ん、二十隻か、まぁ~其れが妥当なところだなぁ~。」


やはりげんたは何かを考えて要る様にも思えるのだが表情を見ても何時もと何も変わらずに要る。


「げんたはまた何かを考えて要るのですか。」


「いいや、オレは何も考えて無いよ。」


 と、あっさりと否定したが、げんたの胸の内には別の計画が進められておりだが、今は誰にも話すつもりは無い。


 同じ様な頃、ロシアでも新たな動きが有った。


「みんな聞いて欲しいんだ。」


 有る造船所で一人の責任者が作業員に話し掛けた。


「なぁ~みんな、主任さんが何か話が有るって、みんなを呼んでるぞ。」


「えっ、何か有ったのかなぁ~。」


「まぁ~一度くらいは主任さんの顔を立ててだ話しだけでも聞こうや。」


「まぁ~そうだなぁ~、じゃ~行くとするか。」


 と、作業員が食堂に集まって来た。


「主任さん、何か大事な話なんですか。」


「そうなんだ、実はこれはみんなの為なんだが、我々の国が大変な危機なんだ。」


「大変な危機って一体何の話なんですか、オレ達は何時も食べる物が足りずに、子供はお腹を空かして一日中泣いてるんですよ、其れってオレ達の責任なんですか、聞くところでは皇帝や皇族、其れに役人ばかりが裕福な生活してるって話なんですよ。」


「其れは私も聞いて要る、だけど一番の原因と言うのが、我が国には金塊が不足しており、他国から食料を買い入れる事が出来ないんだ。」


 工場の作業員達は主任と言う人物を信頼しており、だがその上の幹部達は全く話を聞く耳も持たず、ただ皇帝の命令だからと言うばかりで、代価と言っても少しの賃金と少量の食料だけで作業員達の不満は高まるばかりで有る。


「ですが、何でそんなに軍艦が要るんですか、オレ達は何も聞かされて無いんですよ。」


 工場長は作業員達に軍艦の建造は皇帝からの命令だと言うが、全く説明しておらず、作業員達にすれば何時も工場長の言葉に騙されており、今回も同じだと思って要る。


「私が聞いた話では軍艦数十隻で黄金の国へ向かい、その国を植民地にすれば未来は明るい、だが黄金の国は遥か遠く離れており、しかも途中には我が国以外の欧州の国々が治めて要る植民地が有り、其処に駐屯する艦隊とも一戦を交える事になるんだと。」


「じゃ~オレ達の国は世界中の国を相手に戦争するんですか。」


 作業員達が思うのも当然で、だが


「我々は欧州の国とは戦争するんじゃ無いんだ、ただ黄金の国を植民地にすれば我々の生活も豊かになる事だけは間違いないんだ、私も。」


「オレ達は主任さんの事は信用してるよ、だけどそんな夢の様な話は一体何処から聞いたんですか、正か工場長じゃ。」


「まぁ~其れが違うんだ、先日も此処に役人が来られ話を聞いたんだが、欧州の有る国が軍艦を売った代金が全部金塊で、その国は昔から交易をしており、何時も支払いは金塊なんだと、其れで我が国の海軍大臣を含め、全ての大臣が黄金の国を植民地にすれば我が帝国は千年以上続くんだと言って、其れで黄金の国を攻めるには大きな軍艦が必要で建造する事になったんだ。」


「だったら工場長も知ってるんですか。」


「ああ、其れは勿論だ。」


 やはり作業員達が考えていた通りで、工場長は全てを知っており、だが工場長は資材の納入業者から賄賂を取り、安く仕入れ、それを横流しし二重の利益を得ていたので有る。


「じゃ~主任さん、今から工場長の所へ行って話を聞いてもいいんですか。」


「勿論だ、だけど全員は入れないので数人を選んでくれ。」


 その後、主任と数人の作業員が工場長の部屋に行く事になったが、その時、政府の役人が数人やって来た。


「これは主任さん、何処へ行かれるのですか。」


「実は作業員さん数人と工場長の所で行くのですが、お役人こそ何故こちらに、何か用事もで有るんですか。」


 主任は役人が来た理由はわかっており、其れよりも作業員達に役人から直接話を聞かされれば自分が話した話は本当だと信じてくれるだろうと考えたのだ。


「実は海軍大臣から勅命が有り、各造船所や工場の進捗状況を調べる様に、其れと遅れて要るならばその理由も調べる様にと、其れで今日はこの造船所に来たんですよ。」


 役人の話で作業員達は少し納得した様だが。


「お役人様、今のお話しだと海軍大臣様が言われた様に聞こえたんですが。」


「ああ、本当だ、海軍大臣は皇帝陛下から命令を受けられ、皇帝陛下も今回の戦争だけは全て国民の為にどんな方法を取ってでも勝利しなければならないと申されたと伺って要るんだ。」


「でも其れだったら、何で工場長は何も言わないんですか、オレ達にはただ働け、軍艦を建造するんだって言うだけなんですよ。」


 主任は何も知らない様子で、だが役人から驚くべき情報を聞かされるのだ。


「主任さん、其れと皆も聞いて欲しいんだが、此処の工場長は納入業者から賄賂を取り、品物を安く仕入れ、そして、他の業者には高く売り付けて要ると噂話が有って、今日、我々が直接話を聞きに来たんだ。」


「えっ、其れって本当なんですか。」


「ああ、本当だ。」


 主任も作業員達も大変な驚き様で、工場長には以前から黒い噂話が流れており、今日は噂話が本当なのか調査しに来たと言う、そして、役人の傍には搬入業者が要るが、彼らは静かに話を聞くだけで、話をする事も無い。


「お役人様、其れが若しも本当だったら工場長は一体どうなるんですか。」


「まぁ~其れならば我々に任せて下さい。」


 役人は何か含みが有るのかニヤリとするが。


「でもなぁ~。」


 作業員達は役人が任せろと言う言葉には全く信用しておらず、反対に見逃すものだと思って要る。


「ねぇ~、主任さんが一層の事工場長になればいいのに。」


「えっ、私がですか、其れはとても無理な話ですよ、だって郡の最高責任者が決める事だから。」


 この国ではどうやら工場や造船所などの最高責任者は郡の責任者が握っており、其処でも賄賂を届けなければ出世する事も出来ないと言う仕組みなのだ。


 そして、主任や作業員になるにしても賄賂が必要で、だがこの主任は賄賂を届けた記憶が無い。


 暫くして工場長の部屋に来ると、工場長は物凄い驚き様で。


「主任、一体何の真似だ、其れにお前は、えっ、何でお役人が、若しやお前達が。」


「工場長は我々が来ると何か不味い事でも有るのか。」


「いいえ、正かその様な事は。」


 工場長の顔は驚きで青白くなって要る。


「では少しお伺いしたいんだが、工場長は業者から賄賂を取り、更に納入品を安く仕入れ、他の業者には高く売り付けて要ると聞いたが、其れは誠なのか。」


「いいえ、飛んでも御座いませんよ、私が賄賂を受け取って要るとは一体何処の誰が申して要るのですか。」


 やはりだ、工場長は簡単に認めようとはしない。


「そうか、ではこの書面は全て嘘だと言う事なのか、業者の全てが賄賂を出さなければ納入はさせないと言われたと書いて有るが、其れに納入品が余りにも安いと思うが、どうだ。」


「いいえ、其れは何かの間違いで、私は決して賄賂などは受け取ってはおりません、本当です。」


 工場長は其れでも白状しない。


「よし、分かった、其処まで言うのならば信用しよう。」


「あ~ぁ、やっぱりなぁ~、そんな事だろって最初から分かってたんだ。」


 作業員達の態度には役人の言葉に物凄く不満だと言う。


「お前達は一作業員の癖に、何だその態度は。」


「工場長には今の言葉をそのまま返す、工場長が其処まで白らを切るなら仕方無い、皆さん入って下さい。」


 納入業者が十人以上入って来た。


「皆さんに賄賂を要求した人物ですが、この中に居りますか。」


「勿論で、お役人様このお方で、絶対に間違いは御座いません。」


「私もこのお人に間違い御座いません。」


 と、業者全員が賄賂を要求した人物は工場長だと指を差し証言した。


「工場長もこれで分かったと思うが、工場長は皇帝陛下の命令により極刑と致す。


 其れで代わりの工場長ですが、皆さんはどなたが宜しいのでしょうかねぇ~。」


 何と、役人は工場長までも決定すると言い出した。


「そんなのって決まってますよ、主任さんが一番ですよ、お役人様、主任さんは何時もオレ達の事を心配して、其れに色々と工場長にお願いして頂いてるんですが、工場長は何を言っても聞いてくれなかったんです。」


 「そうですか、では今日から貴殿が此処の工場長ですからね、頑張って下さいね。」


「ですが郡の。」


「其れならば心配無用、海軍大臣の書状を見せて有り、郡のお方も全て任せると申されました。


 其れと皆さんが取られた賄賂ですが返金したいのですが、何処に隠して有るのか分かりませんので、少しだけ猶予を頂きたいのですが、宜しいでしょうか。」


「其れならば全部お任せしますので。」


 これで業者も納得したのだが、問題は賄賂を何処に隠したのかだ、だが暫くして。


「お役人様、工場長ですが、何時も椅子の後ろの方で何かを動かしてましたよ。」


 役人が本棚を動かすと、やはり隠し金庫が有った、だが開ける方法がわからない。


「工場長はこの金庫を開けなさい、そうすれば我々も考えますので。」


 と、言うと工場長はあっさりと金庫を開け、其れに役人は考えると言ったが、一体何を考えるのだろうか。


「お役人、これで私の罪は少し。」


「工場長は一体何を勘違いして要るんだ、我々も考えると言ったのは、減刑するとは一言も言っていない、ただ苦しまずに済む様にと考えただけだ。」


 その後、金庫を開けると受け取った金額と品物の差額まではピタリと合い、業者にはその場で返金し、差額で流された資材を買い戻す事が出来た。


 その後、工場は稼働するが、やはり遅れた日数を取り戻す事は簡単では無く、この工場は鉄板と鉄板を繋ぎ合わせる為の鋲を作っており、遅れた日数が最終的にロシアの軍艦の建造を遅らせる事になり、やがて一大海戦にも支障をきたす事になるとは、皇帝も海軍大臣達もこの時には全く考えもしなかったので有る。


「う~ん、やっぱり要るかなぁ~。」


 一体何が要るのか、げんたはこの頃、作業部屋に籠もり切りで何かを考えて要る。


「だけどやっぱりこの方法しか無いのかなぁ~。」


 と、独り言を、だがその数日後、早くも作業場に入り、鉄の板を打ち始め、鉄の板は先端が少しへこみ、それに少し浅く、そして、細長い、その後、同じ様な物を作った。


「源三郎様、この数日間ですが、げんたさんのお顔を見ておりませんが何か有ったのでは。」


「まぁ~大丈夫ですよ、げんたの事ですから、何かを考えて要るのだと思いますよ。」


 雪乃の心配性が始まった、いや何時もの事だが、実は源三郎も少し気になっていた。


「では明日にでも様子を見て参りましょう。」


 次の朝、浜へと向かった。


「そう言えば、私も随分と来ていなかった様にも思えるなぁ~。」 


 と、独り言を言いながらものんびりと歩いて行くが。


「あっ、源三郎様だよ、何か有ったのかなぁ~。」


 浜では源三郎が来ると言うだけで大騒ぎで有る。


「げんた、源三郎様が来られるよ。」


「えっ、お城で何か有ったのかなぁ~。」


 と、げんたもお城で何か有ったと思って要る。


「お母さん、げんたは。」


「今作業場で何かを作ってますが。」


「では。」


 と、源三郎は作業場に入ると、長さが二尺も有る大きなしゃもじの様な鉄の板が数十枚も有り、げんたは一体何を作って要る。


「なぁ~んだあんちゃんか、ねぇ~ちゃんに何か有ったのか。」


 やはりだ、げんたは源三郎が来ると言う事はお殿様か雪乃に何か異変が有ったと思って要る。


「いいえ、別に何も有りませんよ、ただ雪乃殿がげんたが来ないので見て来て欲しいと、それだけですが、其れよりも一体何を作ってるのですか。」


「あ~これか、水車の羽根だよ、其れが何か。」


「水車の羽根ですか、其れにしても変な形をしていますが、一体何に使うのですか。」


「これか、これで陸蒸気を造るんだ。」


「えっ、陸蒸気って、本当に陸蒸気を造るんですか。」


 源三郎は驚き聞き違いでは無いかと思ったが。


「あ~本当だよ、あんちゃんはオレが作り話をしてるとでも思ってるのか。」


「ですがあの時には造らないと申したのでは無かったのですか。」


「確かにオレは言ったよ、だってあの時はあれと同じ陸蒸気は造れないって思ったんだ。」


 源三郎はげんたの言う言葉の意味を理解出来ていない。


「あの時は造れないが、今回は造れると言うのですか。」


「あ~そうだよ、オレが作り方を変えたんだ。」


 やはりだ、げんたは造る方法を考えていた。


「ですが、何故あの時は造れないって分かったのですか。」


「他の物は連合国の鍛冶屋さんでも十分に造れるよ、だけど蒸気で動く物、あれはどんなに腕のいい職人さんでも絶対に無理なんだ、其れでオレは他に方法が無いかって考えてたんだ。」


 げんたは相当長い間考えていたのは間違い無い、だがこれで陸蒸気を造る目途が出来たと源三郎は思うが。


「まぁ~あんちゃんの事だからこれで陸蒸気は造れると思ってるんだろけどね。」


 相変わらずげんたは鋭い、だがげんたが言わずとも源三郎もわかって要る。


「私も其処まで愚かでは有りませんよ、他にも色々と問題が有る事も理解しておりますよ、ですが陸蒸気が走ると言うだけで、菊池から山賀まで相当な日数も稼げると考えたのです。」


 確かに今までならば菊池から山賀まで歩くか、馬でも行ける、だが荷物を運ぶとなれば大量の荷馬車が必要で、だが陸蒸気が開通する事で大量の荷物も、兵士達の移送も大いに発揮する事には間違い無い。


「まぁ~あんちゃんも大変だと思うんだけど、陸蒸気が走れば菊池から山賀までは今まで以上に往来が楽になるし、色々な荷物もだけど兵隊さん達の移動にも使う事が出来ると思うんだ。」


 やはりだ、げんたは色々と使い道が有ると考えて要る


「分かりました、げんたは陸蒸気を完成させて下さい。」


「まただ、あんちゃんは簡単に言うけど、陸蒸気を造るって簡単じゃ無いんだぜ、今は此処で作業出来るけど、その内に大きな作業場が必要になるんだからな。」


「其れも全てげんたに任せますからね。」


 と、源三郎は其れだけど言うと戻って行った。


 源三郎はこれから先の事までも考える必要が有り、その為には一度戻り工藤とも相談する必要が有る。




  

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