第 115 話。欧州諸国の動きは。
「女王陛下、お呼びで御座いますか。」
「左様、其れで聞きたいのですが、あの国の動きですが、何か分かりましたか。」
「はい、確かに軍艦を建造して要るのは確かで御座いまして、先日の報告では五隻が建造中で、更に十隻の追加も有るとか。」
「で我が国から後何隻送るつもりなのですか。」
「一応、二隻の予定で御座いますが。」
この国は日本へ二隻送ると言う、だが一体何の為なのか。
「そなたは何も理解出来ておられないのですか、今の状態を考えれば誰が見ても日本は確実に負けますよ、その様な事態になれば我が帝国の存在感は失われ、更に世界中の笑い者になるのですよ、帝国の威信を掛け十隻以上を建造し送る事を命じます。」
女王陛下は一体何の為に軍艦を建造し日本へ送ると言う。
「陛下、誠に恐れ入りますが、其れでは我が帝国の防衛が手薄になり、他国から何時攻撃を受けるやも知れませぬ。」
「其れならば大丈夫ですよ、私が密偵を送り込んでおり、何か変化が有れば直ぐ報告する様に手配しておりますから。」
女王陛下は早くも密偵を送り込んだと言う、だが其れよりも他国は一体どんな動きをして要る。
「国王陛下、大変大事なお知らせが御座います。」
彼は海軍大臣の重責に有るが、何時もとは違う深刻な表情をして要る。
「一体どうしたと言うのだ、若しや海軍で反乱でも起きたのでは有るまいなぁ~。」
「いいえ、決してその様な事では御座いませんが、我が軍の密偵がロシア海軍の動きが恐ろしい程活発で今新たに数隻の大型艦の建造に入ったと知らせが入りました。」
「何と申した、ロシア海軍が数隻の大型艦の建造を開始したと聞こえたが、若しや我が国を攻撃するのでは有るまいなぁ~。」
国王はロシアが攻撃して来るのかと心配して要るが、海軍大臣は以前より数か国と秘密裏に協議しており、ロシア海軍の動きを監視させていた。
「国王陛下、左様では御座いませんでして。」
海軍大臣はその後、国王陛下に詳しく説明した。
「左様か、ではロシア海軍は、いやロシアは日本を植民地にすると公言して要るのか。」
「公言はしてはおりませぬが、問題は日本に行く途中に我々欧州諸国の植民地が有り、若しも日本が戦争に敗れでもすれば、北東に有ります艦隊も出撃し我々の植民地を攻撃し全てを奪い取るやも知れないのです。」
「何じゃと、では若しもその様な事態になれば我が国もじゃが、他国の損害はいか程、いや想像出来ぬでは無いか。」
これ程にも欧州諸国は世界中に、特に東南アジアの全てを植民地にし、多額の収益を上げており、その全てをロシアに奪われる事にでもなれば自国の経済は破綻するやも知れず、若しもその様な事態が起これば、欧州全体で大規模な反乱が起き、数百年間も続いた王国は崩壊し、其れに代わってロシアが全てを支配する、これがロシアの本当の目的かも知れない。
「国王陛下、私も他国と連絡を取り、ロシアと日本の戦争には日本を全面的に支援する方向で進めたいので御座いますが、国王陛下のご意見をお伺いしたいので御座います。」
この国の海軍大臣も同じ事を考えており、だがまずは国王陛下の意見を聞きたいので有る。
「海軍大臣は既に手配しておると思うが如何じゃ。」
やはり国王だけの事は有る、海軍大臣は以前よりロシアは欧州諸国が受ける利益を何としても奪い取る方法を考えていた。
欧州諸国も利益を守る為に結束しており、その為か直接攻める事が出来ず、そして、思い付いた作戦が黄金の国、日本を攻略し、其れを足掛かりに東南アジアに有る欧州諸国の植民地を奪い取る方法で、この国の海軍大臣もだが各国の大臣や海軍の将軍達はどんな方法を取ってでも日本に勝利して貰わなければ困るので有る。
「皇帝陛下への報告を忘れていたのでは有りませんが、各国の意見が一致し、新造の戦艦を数隻日本へ、勿論、弾薬は輸送船に乗せる事が決定致しました。」
「左様か、では各国の国王も賛成されたのだな。」
「其れは勿論で、特にイギリスは大喜びされて居られました。」
欧州の強国と言えども各国が協力しなければ、ロシアとの戦には勝つ事は出来ない。
表向きはロシアは日本国の金塊の略奪と植民地化だ、だが深層は東南アジアの植民地を奪い取る事で欧州の経済は破綻し、下手をすれば全ての国がロシアの植民地にされる可能性が有り、ロシアの計画を防ぐ為にも日本国に勝利して貰わなければならない。
だが日本は数百年間の武家社会が崩壊し、新たな政府が設立されて要るが、果たしてロシアと言う強大な国家との近代戦争に勝利する事が出来るのかと言えば、世界中の誰が考えてたところで日本国が勝利する事など全く不可能で有る。
欧州各国の元首を含め、首脳達は日本国を勝利させる為の方策を考えていたが、各国の思惑も有り簡単に纏まる事が出来ず、数年間に渡り協議を進めていた。
そして、最後は各国の事情は後回しに考え、今は日本国に勝利させる事が最大の問題の解決で有ると一致したので有る。
一方で日本も近代国家を確立させる為には何としてもロシアとの戦には絶対に勝利しなければならないので有る。
「陸軍には優秀な人物が居ると聞いたが。」
「陛下、一体何処からお聞きになられたので御座いますか。」
陸軍大臣は何故に陛下がご存知なのか、其れが不思議でならなかったが。
「余が何も知らぬとでも思っておったのか、余も馬鹿では無いぞ、余にも色々と教えてくれる者も居るのじゃ。」
「誠に申し訳御座いませぬ、私は陛下が何もお知りになられないと思っておりましたので。」
「いや、いいんだ、だが海軍だけではロシアに勝つ事は出来ぬぞ。」
海軍大臣もだが、いや近くに居る大臣達は驚きの表情で有る。
「陛下のお心を悩ませ、私は何と申し上げて良いのか分かりません。」
陸軍大臣は頭を深々と下げた。
「まぁ~その様に考えなくても良い、だが日本は欧州の戦の方法を知らぬのでは無いのか。」
「誠に陛下の申されます通りで御座いまして、近々、武官数人を欧州に派遣する予定で御座います。」
「今何と申した。」
「私の判断で若い武官を数名欧州に派遣し、欧州の戦闘方法を学ばせようと考えて要るので御座います。」
陸軍大臣は若き士官数名を欧州に送り、欧州の近代戦争が一体どの様な方法なのか、其れを学ばせるつもりで有る。
「実は余も戦の方法が違うのでは無いかと心配しておったのじゃ。」
「私は陛下にこの様な事までご心配をお掛けし誠に申し訳御座いません。」
と、陸軍大臣は深々と頭を下げた。
「もう良いのじゃ、して海軍は如何なのじゃ。」
海軍大臣はどの様な作戦を考えて要るのだろうか。
「実は私も陸軍同様に欧州へ若い武官を派遣する方向で今選考を行って要るので御座います。
実は海軍と申しましても、近代戦は全く知らず、戦の方法を学ぶ事が喫緊の問題で御座いまして、作戦の立案も学ぶ必要が有ると考えております。」
明示新政府になって初めての大戦がロシアとの海戦だが、日本海軍としては今まで全く経験が無く、海戦の方法も学ぶ必要が有り、その為には海軍の中から欧州の情報を得る為の武官も派遣の方向で考えております。」
日本は近代国家建設の為、欧州より有りとあらゆる技術を取り入れ次々と事業が開始されており、一刻でも早く近代国家となる様に進んで要るが、正かロシアとの大戦が行われ様とは、今の政府を設立した者達は全く考えておらず、だがロシアとの戦に勝利しなければ日本の未来は無い事だけは確かで有る。
日本政府とは別に欧州各国が日本とロシアが戦争に突入する事は間違いと日本支援に乗り出した事は明示政府は全く気付いていない。
「女王陛下にご相談が有るので御座いますが。」
「何を相談するのですか、若しやとは思いますが。」
女王陛下が若しやと言ったのは新型船の建造費用で、だが海軍と陸軍大臣の相談と言うのは全く違っていた。
「左様では御座いませぬ、実を申しますと、我が帝国の海軍と陸軍より優秀な士官数名を日本に派遣し、近代戦を伝授したくと考えて要るので御座います。」
「今近代戦と申しましたが一体どの様な方法なのですか。」
「我が帝国もですが欧州各国でも数百年間と言うもの多くの兵器もですが戦闘は近代戦とは全く違いましたが、今の戦では兵器も改良され、更に軍艦は帆船では無く全てが蒸気で動き、更に大砲は以前とは全く比べものにはならないくらいに砲弾を遠くへ飛ばし、軍艦は鉄で建造され大型化されて要るのです。」
「では日本は其れ以上に古い方法で戦を行って要るのですか。」
女王も多少の知識は有る、だが其れは欧州だけの事で、遥か遠方の日本の事などは交易で知り得た内容だけで其れ以上は知る必要も無かった。
「日本は数十年前までは武家社会でして、戦と言っても陸戦が殆どで御座いましたが、其れでも古い方法で、ですが近代戦ともなれば戦士の名は必要無く、兵士の数と兵器だけがものを言うので御座います。」
「では日本に武官を派遣しロシアとの戦に備えると言うのですか。」
「私の先祖は何度も日本へ参ったのですが、日本では侍だけが刀を持っており、戦と申してもお互いが名乗り上げ、ですが現在の戦は敵の顔は全く見る事も無く、遠方から大型の砲弾が飛んで来るのです。」
「其れならば私も聞いた事が有りますよ、我が帝国もですが、以前ではお互いの顔を知っており騎士としての誇りを持っておりました。
ですが近代戦では全く必要が無いと言うのです。」
「私も若しやとは思いますが、日本軍にも近代戦を身に付けて貰いたいと願っております。」
確かに日本も以前では顔を見ての戦で、だがこれからの戦ではお互いの顔を見る事も無く、ただ敵軍だと言うだけで戦が開始され、其れこそ無名戦士の多くが戦死して行くので有る。
「左様でして、我々の欧州でも以前の様に騎士同士の戦は全く無くなり、全てが無名の兵で兵士の数と兵器だけが勝利を導くのです。」
「其れでは今の日本ではロシアとの戦にはまず勝つ事は出来ないのですか。」
「はい、左様でして、私としましては何としても日本に勝利して頂かなければ、其れこそ我が帝国もですが、欧州諸国は大変な事態になるのです。」
海軍大臣が言う大変な事態になるとは一体どの様な事態なのだ。
「その方が述べて要る大変な事態とはどの様な事態なのじゃ。」
「我が国もですが各国は東南アジアの諸国を植民地にしており、その中でも我が国は年間数百億ポンドの利益を上げて要るのです。
若しも日本がロシアの植民地になりますと、東方艦隊もですが、黄海の奥に有ります旅順艦隊も増強され、東南アジアの各国が攻撃を受けますと、少数の艦船で防御しております艦隊は簡単に撃滅され全ての植民地が奪い取られので御座います。」
海軍大臣の説明では東南アジアの植民地全てをロシアに略奪されると言う、若しもその様な事態にでもなれば欧州諸国の経済は破綻する事だけは間違い無い。
「其れだけは何としても防ぐのじゃ、我が帝国に取っては生き残る為にも大変重要じゃ。」
「私も其れだけは何としても阻止しなければならないと考えております。」
「方法は全てその方に任せる、他国とは緊密に連絡を取り、何としても防ぐのじゃ。」
女王陛下はどんな方法を取ってでもロシアだけには勝たせるなと海軍大臣に命令し、その数日後、各国の海軍大臣達が集まり協議し、日本に勝利させる事で一致した。