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闇の帝国    作者: 大和 武
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第 113 話。皇帝の思惑。

 松川ではげんたが考案した海中爆裂弾を焼き物で作り訓練に使用する為殆どの窯元が焼き物で海中爆裂弾作りに参加して要る。


「なぁ~其れにしてもあの技師長って一体何処からこんな訳の分からない物を考え付くんだろうかなぁ~。」


「まぁ~我々の頭では考えられない事だけは間違いは無いよ、其れにしても飛んでもない物を考えたもんだなぁ~。」


「だけど本当にこんな物でロシアの軍艦を沈める事が出来るのかねぇ~。」


 と、窯元の作業場ではこんな話をして要るが、其れは信太郎達も同じで有る。


「なぁ~信太郎、技師長さんって一体どんな頭をしてるんや。」


「お前はあほか、そんな事オレが知ってる訳がないやろが、でもなぁ~、やっぱり物凄い頭してると思うんやで、其れに源三郎様も物凄いと思うんや、だけど技師長さんは何か特別な頭してると思うんやけどなぁ~。」


「やっぱり信太郎もそう思うんか、せやけどどんな時に思い付くんやろかなぁ~、オレには全然わかれへんよ。」


 信太郎達も同じでげんたの頭の中を知りたいと思って要るが、やはり誰が思う事も一緒なのかも知れない。


「げんたに聞きたいことが有るんだけど、こんな物を付けるって何処で思い付いたんだ。」


「これはねぇ~、何時かは忘れたけど、元太あんちゃん達が二艘の小舟を長い棒で繋いだのを思い出した、其れだけの事だよ。」


 げんたは何時もの事ながら実に簡単に説明するが。


「え~、だけどオラは覚えて無いよ。」


 元太は忘れたと言うが。


「あの時、あんちゃんはこれで大量の魚が網に掛かって横波を受けても転覆しないって、其れをオレは別のやり方に考えただけなんだ。」


「まぁ~其れにしてもげんたは物凄いなぁ~、オラは其処までは考えなかったよ、たった其れだけの事であんな物を考え付くんだから。」


「オレは何時の時でも考えてるんだ、今目の前に有る物を何かに利用出来ないかって、まぁ~其れだけの事なんだ。」


 げんたは何時も考えて要ると、それ程までにロシアとの一戦は近付いて要るのだろうか、その頃、大きな湾で進む軍港建設現場では吉三組が岸壁の建設に入っており、三ヶ所まで大量のセメントが投入され次第に港の形が形成されて来た。


「参謀長さん、石灰が大量に必要なので誠に申し訳有りませんが、大至急手配をお願いしたいのですが、宜しいでしょうか。」


 後藤は石灰が大量に必要だと言う。


「確か今日か明日には百樽以上が到着すると伺っておりますが、更に追加の発送をお願いして置きます。」


 上野は在庫が半分になれば発送依頼をする様に命じており、其れでも近頃では現場で大量に使用する為直ぐ在庫が減って来る。


「後藤さん、少し相談が有るんだけど。」


「吉三さんも皆さんもお揃いで来られるとは一体何が有ったんですか。」


 後藤の執務室に吉三を含め十数人がやって来た。


「オレもだけど、仲間は後藤さんのやり方は間違って無いって言うんだ、だけど岸壁を造る為に全部にセメントを入れるのは物凄く大変なんだ。」


「そうなんだ、オラ達も後藤さんが考えた方法だから大丈夫だと思うんだ、だけど吉三が言う様に大量の石灰と砂を混ぜるって、後藤さんが思ってる以上に大変なんで、混ぜるだけでもオラ達はもうへとへとになるんだ。」


 後藤は気付いていなかったのだろうか、全ての箱にセメントを投入するとなれば大変な作業になる事だけは間違いは無く、吉三も仲間も他の方法を考え付いた。


「実は私も他の方法を考えて要るのですが。」


「だったら掘り出した砂を入れたらどうですか。」


 吉三が何気なく言った言葉に。


「そうか、分かりましたよ、確かに今まで砂の置き場に困ってたんですよねぇ~。」


「オラは詳しくは無いんですが、砂を入れ押し固めたら大丈夫だと思うんですが。」


「よ~く分かりましたよ、では吉三さん達に全てお任せしますので。」


「だったら今からでも始めますんで。」


 と、言って吉三達は執務室を出て行き、早速砂の投入を開始した。


「技師長さん、一体何が有ったんですか。」


「其れがですねぇ~、吉三さん達は少しでもセメントの使用を減らす方法を考えられましてね、その方法を今から始められるのです。」


「セメントの使用を減らす方法ですか。」


 上野も正かだと思っていたが、連合国と言う国は上位下達では無く、どの様な作業でも現場での意見を大切にし、其れが作業員のやる気を起こさせるので有る。


 吉三達にすれば何故海水が浮き上がって来るのか不思議でならず、水と言うのは上から下へと流れるものだ、実際に川と言うのは高い所から低い所へと流れて要る。


「其れならば簡単でして、吉三さん達は砂を押込み、砂は少しでも隙間が有れば入ろうとする為、隙間に有った海水が砂の圧力に負け行き先が無くなった為に上へと避難したんですよ。」


「でも海水が避難するって笑える話ですよねぇ~。」


 と、仲間は大笑いするが。


「オラは難しい事は分かりませんが、でも何で海水が上がって来るんだと、あの時は思ったんですよ。」


 その様な疑問は何も吉三だけでは無かったが、後藤は全てを理解出来なくても少しは分かってくれたと、やはり現場での対応が最適だと思って要る。


 日本国内では新政府は勿論だが連合国でも動きが活発になり、やはりロシアとの戦争は避ける事は出来ないと考え、海中爆裂弾の生産と訓練も開始されて行く。


 同じ様な頃、ロシアでも新たな動きが有った。


「誰でも良い、財務大臣と陸海軍の将軍を呼ぶのじゃ、大至急じゃ早く行け。」


 家臣達は大慌てで財務大臣と陸軍と海軍の将軍を呼びに走った。


 皇帝は一体何を思ったのか関係する者達に大至急来る様に言ったが、一体何が起きたと言う、正か蓄財の拠出を拒否するつもりでは無いのか、その後一時間程して彼らは大慌てで執務室に飛び込んで来た。


「皇帝陛下、大至急来る様にとの仰せで御座いますが、一体何が有ったので御座いましょうか、若しやとは思いますが。」


 大臣の顔は少し青ざめ、将軍達も同じ思いで有る。


「いや、何も無い、まぁ~その方達が考えておる事だけでは無い事だけは確かじゃ。」


 皇帝の言葉を聞いた彼らは何故かほっとした様子で、では何の為に呼んだと言う。


「その方達は余が費用を拠出するのを拒否するとでも思ったので有ろう、だが余も馬鹿では無いぞ、あれからも色々と考え、其れで出す事に決めたのじゃ。」


 大臣も将軍達も皇帝から思いもしなかった答えを聞き安堵した。


「皇帝陛下、誠に正しきご判断をして頂きまして、私はロシア国民を代表し御礼を申し上げます。」


 大臣は深々と頭を下げ、将軍達も同じ様に頭を下げた、だがまだ少し不安が残って要る、其れは拠出する金貨と金塊がどれくらいになるのかもわからず、大臣は恐る恐る聞かなければならなかった。


「皇帝陛下、誠に恐れ入りますが、いか程拠出して頂けるので御座いましょうか。」


 大臣は下手をすれば、その場で首が飛ぶかも知れず、恐怖心を抱きながら聞いた、だが大臣達の不安をよそに皇帝は一体何を考えて要るのか、顔は微笑みを浮かべて要る様にも見え。


「そなた達は何故にその様に怯えて要るのじゃ。」


「飛んでも御座いませぬ。」


 と、言う大臣は冷や汗を拭って要る。


「余は先日その方達が申した支払いと新しい武器の為に、両方合わせて二倍出すと決めたのじゃ。」


 やはりだ、其れは数日前に大臣が言った、日本を植民地に出来れば、今後数年間で拠出した数十倍、いや百倍以上もの金貨と金塊が、そして、その他の品が全てロシアのものになると皇帝は計算したので有ろう、だが今回拠出される金貨と金塊は国民が数百年間も要して収めて、いや略奪同然で収められたもので、だが其れと同等の、いや其れ以上を拠出し日本との戦争に勝利すれば全ての物が手に入ると結論を出したので有る。


 だがロシアは日本国と言う国を全くと言っても良い程国情を知らず、入って来る情報はイギリスやポルトガルと言う欧州の国々から入って来るのだが、イギリスやポルトガルと言う国が果たして正確な情報をロシアに与えて要るのか、其れだけは疑問で、更にとでも言うとロシアの財政は今や完全に破綻して要る。


 ロシアでも金貨や銀貨は流通して要るが、其れはロシア国内だけにしか通用せず、他国との交易では金貨としての価値では無く、延べ板としなければならず、皇帝は全く知らないと言うのか、全てを知りながらも無視して要るかの様で、だが今回だけは特別だとでも言うのか、いや其れ以上に恐ろしいのはロシアの全土で町民を含め、農民達も食料難で毎日満足に食べる事さえ出来ず、多くの領民には不満が溜まり、何時大爆発が起きるやも知れず、各地の領主は領民に対し、日本との戦争に勝てば全てが解決すると説明して要る。


「皇帝陛下、ロシア全土の民衆は大喜びする事は間違い御座いませぬ。」


「うん、そうか、そうか、じゃが旧式の武器では誠、戦に勝てるとは思わぬが、何か良い策でも見付からぬのか。」


 皇帝は今まで数度、兵士達の持つ武器を見た、だが銃は旧式で、その様な旧式の鉄砲で果たして日本との戦争に勝利出来るのが可能なのかと考えて要る。


「実は有るところで新式の銃の調達に成功したので御座います。」


 陸軍の将軍は新式の銃の調達に成功したと言う。


「何じゃと、今何と申したのじゃ、余は陸軍に新式の武器が入ったと聞こえたが、其れは誠なのか、して一体どの様な武器なのじゃ、詳しく申して見よ。」


 と、皇帝は身を乗り出し新式の武器とは一体どの様なのかを知りたいと言うが。


「実はで御座いますが,その人物とは旧知の仲で御座いまして、彼は武器商人でその者が新式の武器が売れ残ったので安くするので買って欲しいと申したので御座います。」


「何じゃと、その武器だけが売れ残り、安くするから買えと申したのか。」


「はい、左様で御座います。」


 と、将軍は言うが、だが何故に売れ残ったのかが問題で有る。


「武器商人は他国に売りに参ったのですが、価格が余りにも法外な為に何れの国も購入出来なかったので御座います。」


 将軍は価格が高く、どの国でも売れずに、だが将軍は何としても購入したいと考えて要る。


「だが何故にその様に高価なのじゃ。」


 皇帝は他の事よりも早く新式の鉄砲の価格が知りたい。


「陛下、価格で御座いますが、我が軍の兵士が持つ銃の百倍もの値が付いて要るので御座います。」


「何と申した、百倍もの値が付いて要ると申すのか、じゃがその新式の銃とは一体どの様な物なのじゃ、余は早く見たいのじゃ。」


 将軍の作戦なのか、皇帝は一刻でも早く新式の武器を知りたい、いや見たいと思い、次第にいらつき始めたが。


「陛下、其れに付きましては代価が必要で御座いまして、まだ支払いが出来ないので御座います。」


 将軍は未払いだと言ったが、其れは何としても皇帝の口から購入せよとの言葉が欲しいので有る。


「その方は未払いだと申すが、一体どれ程必要なのじゃ。」


 よ~し、此処まで来れば後もう少しだと将軍は胸の内で確信し。


「陛下、誠に申し訳御座いませぬが、五十万が必要なので御座います。」


「何じゃと、五十万じゃと、だが何故にそれ程にも高いのじゃ。」


 皇帝は価格が余りにも高いと言うが、胸の内では新式の武器が有れば、日本との戦争に勝利出来ると考えて要る。


「陛下、新式の武器で御座いますが、弾薬も付いておりまして、一万発入りの箱が百個も付いて要るので御座います。」


 将軍は普通ならば弾薬は別売りで、だが今回は売れ残りなので特別に弾薬の箱も一緒だと言う。


「う~ん、五十万か、其れにしても余りにも高いの~。」


 皇帝は新式の武器は欲しい、だが五十万と聞いて少し気持ちが揺らいで要る。


「陛下、この武器が有れば日本軍との戦には勝利したも同然で御座います。」


 皇帝も将軍の言葉に間違い無いと思って要るが、其れにしても五十万とは、皇帝は鉄砲一丁が五十万だと思って要る。


「陛下、日本との戦に勝利すれば、日本は我が陛下の植民地として今後百年、いや永遠に続くので御座います。


 陛下、何卒ご決断の程宜しくお願い申し上げます。」


 財務大臣は何やら確信したかの様な発言に皇帝の心は揺れて要る。


 財務大臣からは軍艦建造資材が未払いで、その為に多額の金貨と金塊の拠出を決めたばかりで、更に新式の鉄砲の支払いに五十万が必要だと、だが日本との戦争に勝利すれば、我が帝国は今後数百年間は安泰で、今まで以上の豪華、いや好き放題の生活が出来るのだと考えて要る。


 さぁ~果たして皇帝が思う夢の様な話は実現するのだろうか、そして、陸軍の将軍が言う新式の鉄砲を手に入れ日本を植民地にする事が出来るのだろうか、大臣や将軍の思惑と、皇帝の思惑が一致出来るのか最後の決断を待つだけで有る。



       

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