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闇の帝国    作者: 大和 武
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 第 112 話。 一方ロシアでも動き出した。

「陛下。」


「如何致しのじゃ。」


「はい、実は。」


「なんじゃと、はっきり申せ。」


 ロシアの皇帝は戦費が不足して要るとは全く考えていない。


「陛下、実を申しますと、軍艦の建造費が不足しておりまして、外国から資材を購入する事が出来ないので御座います。」


「では民からもっと徴収するのじゃ、厳しく取り立てるのじゃ、其れとじゃ、外国からも戦費を調達すれば良いでは無いのか。」


 皇帝は自らの生活費も民衆から搾り取った税金で賄って要る事など全く考えておらず、民衆がどれ程厳しい生活をして要るのかも全く気にも留めておらず、日本との戦争は必ず勝てると考え、他国より大量の資金を調達せよと簡単に言う。


「承知致しました。」


 とは答えたものの大臣は其れ以上何も言わず引き下がった。


「閣下、如何致せば宜しいので御座います。」


「各地に役人を派遣し直接税金を徴収させるんだ。」


「ですがもう限界では。」


「わしも承知しておる、だが日本国を植民地にすれば大量の金塊が手に入り、我々の生活も楽になるんだ、海軍と陸軍の将軍を呼べ。」


 彼は大臣の秘書とも言う人物で、やはり小役人で、だが大臣の言う事が最もだと、大臣にしても小役人にしても日本との戦争に勝たなければ将来は無いと思って要る。


 大臣が部屋に戻ると、暫くして海軍と陸軍の将軍が入って来た。


「大臣が大至急来る様にとの事ですが、一体何が。」


 将軍は大臣が皇帝から責められて要るとわかって要る。


「将軍にお伺いしたいのだが、日本を植民地に出来るのですか、皇帝は一刻も早く勝利させよと申されておられます。」


「大臣閣下にまず申し上げたいのですが、戦地は此処よりも数万里以上も遠くに有りまして、伝令を出し戻って来るまでは数十日以上も要しまして。」


 だが陸軍の将軍は一度も戦地に、いやまだ本当のところは戦などは始まっておらず、その為に伝令を出した事も無く、其れよりも兵士を集め、戦地になるで有ろう東の果てへ送って要るだけで、何の報告も受けていない。


「海軍は軍艦の建造ですが如何でしょうか。」


「資材の調達に戸惑っておりまして、と申しますのは他国も我が国の足元を見ておりまして、今までの二倍、いや三倍の値を付けており、更に支払いも金貨で無ければ応じないと、其れはもう大変強硬で御座いまして、ですが問題は支払う為の金貨が必要なのです。」


「金貨で無ければ取り引きは出来ないと言うのですか。」


 欧州諸国、特にイギリスと同じ様に世界中に植民地を持って要る国はロシアが本気で日本に向かう事にでもなれば、下手をすれば多くの植民地を奪われ、自国の経済にも多大な影響を与える事になり、その為にはロシアとの取り引きは簡単に応じる事が出来ないので有る。


「大臣閣下、皇帝陛下に何卒執り成して頂きたいので御座います。」


 皇帝が居住する巨大なお城の地下金庫には大量の金貨と金塊が隠されており、其れは自国はもとより、多国から奪い取った金塊も同じ様に隠されて要る。


「何だと、では皇帝陛下に金貨の拠出をお願いせよと申されるのか。」


 勿論、大臣自身も理解しており、だが国家を維持させる為には何としても日本と言う地球の東に位置する小国が持つ金貨と金塊が必要なのだ、欧州諸国は数百年以上も前から日本と交易し、其れでも日本だけは簡単に植民地には出来ないと、其れをロシアは軍事力で奪い取ると言うので有る。


 ロシアの経済は今や破綻寸前、いや破綻して要ると言っても過言では無く、ロシアの民衆が何時暴動を決断するやもわからず、大臣としても我が家族の安全の為には皇帝陛下に嘆願するしか無く、今は一刻でも早く決断するしか無いので有る。


「大臣閣下、我々も同行しお願い致す所存で御座います。」


 将軍達も皇帝に拝謁しお願いすると言う。


「分かった、だがその前に民衆の動きはどうなってるんですか。」


「確かに随分前から不穏な動きが有るとは聞いておりますので、我々軍でも調査して要るのですが、奴らは地下に潜ったのかまだ実態が掴めていないと言うのが現状で御座いまして、誠に申し訳無いと感じております。」


 陸軍の将軍は民衆の中に居るだろう首謀者の名前も所在も掴めておらず、何時頃、何処で大きな反政府暴動が、いや現在の皇帝に対する不満が何時大爆発するのかもわからず、若しも現体制が崩壊すれば我が身の命さえも危ないと考えており、今も必死で捜索して要ると言う。


 だが大臣の考え方は少し違う、現体制は近い内に崩壊する、かと言って民衆を含めた全ての民が死亡するとは考えられず、かと言って現体制が別の体制になったとしても経済は破綻しており、崩壊する前は東の小国で有る日本を植民地にし多くの作物を含め、日本人が作った品物を利用することで他国との交易が可能になる、その為には何としても日本と言う国を植民地にしなければならないと考えて要る。


「分かりました、ですが今直ぐに行くよりも作戦を考えましょう。」


 その後、大臣と将軍達は時間を掛け、皇帝陛下に金貨を拠出する様に持って行く為の作戦を練り始めた。


 一方連合国ではロシアとの大海戦を勝利する為にげんた技師長の提案を受け、まず最初に連合国軍兵士の中から潜水船の操作を行う兵士を募る事になったが、今回は最初の頃よりも大幅に増員されるのだが、其れでも多くの兵士が志願し、選考作業も大変で有る。


「大佐殿、各部隊から大勢の兵士が志願しておりまして、其れはもう収集が付かないのですが。」


「一体何人が志願したんですか。」


「はい、其れが一千人以上でして、誰もが今回は引き下がらないと申しており、中には腕づくでも潜水船に乗るんだと申しております強者も居りまして。」


 工藤も正かとは思ったが、一千人以上の兵士が潜水船の訓練を受けると言う。


「如何でしょうか、今回は特例として応募された兵隊さん全員を潜水船の訓練を受けさせては。」


「私も大賛成ですねぇ~、まぁ~その中で本当の意味で何人が残るのかも分かりますので良い方法だと思いますよ。」


「其れで訓練ですが、最初は内海で行い、其れが終われば外海での訓練に入ると言う事で。」


「ですが問題は一体誰が外海の訓練を行うかと言う事ですねぇ~。」


 工藤も外海での訓練はロシアとの海戦の成功に導く為には、何としても訓練を実施しなければならないと思うのだが、技師長が銀次達に依頼すると言うが、果たして銀次達に外海で小舟を自由に操る事は可能なのか、漁師達は外海に出る事は無理だと言う。


「源三郎様。」


 元太を始めとする野洲の漁師達全員が執務室に入って来た。


「元太さんも皆さんも一体何が有ったのですか、皆さんが来られたと言う事は余程大変な事でも起きたのですか。」


「あの時ですが、げんたは銀次さん達に頼むって聞いたんで、でも銀次さん達は本物の漁師じゃ無いんです。

 

 其れでオラ達みんなで集まって外海の訓練に行かせてくれってお願いに上がったんです。


 確かに銀次さん達だったら内海の中では十分ですよ、でも外海は内海とは全然違うんで無理っだってみんなが言うんですよ。」


 確かに銀次達の腕前は漁師達も驚く程で、だが其れは入り江と言う内海での話で、外海は内海とは全く違い年中大きな波が立ち、本物の漁師から見れば余りにも危険だと感じたので有ろう。


「ですがねぇ~、元太さん達漁師さんは外海は恐ろしいので行きたくないと伺っておりますが。」


「其れは今も同じ何ですよ。」


「でもオラは先日夢の中で天国に居るおやじやご先祖様に言われたんですよ、お前達は其れでも野洲の漁師なのか、野洲の漁師は意気地なしだって。」


「オラも言われたんですよ、お前達は其れでも野洲の漁師か、野洲の漁師はなぁ~、いざとなった時に本領を発揮するんだって。」


 元太を始めとする野洲の漁師は日頃どんな理由が有ろうとも外海には出ない、だが今回ばかりは全く違い、素人同然の銀次達が外海に出て訓練に参加すると言うのは余りにも無謀で、元太や仲間はこのままでは天国にも行けないと言って、そして、訓練に行かせてくれと志願したので有る。


 だが其れは何も野洲だけの話では無く、やはりだ、連合国の領民はいざとなった時の決断は早く、菊池から松川までの漁師達が海中爆裂弾の訓練に参加すると言う、だが外海での訓練中に小舟が横波を受け転覆すれば漁師達は溺れ死ぬ可能性が有り、源三郎は簡単に承諾する事は出来ないと考え、暫く日にちを欲しいと言って高野や阿波野達にも相談した。


「あんちゃん、何か有ったのか、元太あんちゃん達が小舟を漕ぐって聞いたんだけど。」


「えっ、やはりですか、これは困りましたねぇ~、何か策を考えなければ大変な事になりますよ。」


「なぁ~あんちゃん、一体何が有ったんだ話してくれよ。」


「実はねぇ~、げんたが今回の訓練に銀次さん達に参加をお願いすると言ったのは、最初元太さん達野洲の漁師さん達は外海に出ないって申され、其れが今回の訓練に参加して兵隊さん達のお手伝いをするって。」


「えっ、じゃ~外海に出るって言うのか。」


「その通りでしてね、先程まで高野様が来て居られましてね、菊池や上田に松川の漁師さん達までもが参加されると伺いましてね、あっ、そうか、若しも大嵐が起き、横波でも受ければ小舟ですから簡単に転覆し、漁師さん達もですが、銀次さん達も命が失われると思いますねぇ~、其れで元太さん達にも少し待って下さいと言って高野様にも相談し、其れで先程お国へ戻られたばかりなんですよ。」


「其れでか、元太あんちゃん達は何も言わないけど、でも外海は恐ろしいからって言うんだぜ、其れでオレは銀次さん達にお願いしようって思ったんだけど、そうか、じゃ~何か方法を考える必要が有るなぁ~。」


 げんたは一体何を考えると言う、その頃、松川でも窯元達はげんたが考案した海中爆裂弾の訓練に使用する為の焼き物を作っており、完成するまではまだ日数が掛かる。


 げんたは数日考え。


「親方、オレが考えた方法なんだけど。」


 げんたは数枚に書かれた下絵を見せ。


「なぁ~げんた、一枚の方はわかるけど、こっちに書いて有る物は一体なんだ。」


 親方は竹筒がたくさん書かれたのが不思議だと。


「これはなぁ~、元太あんちゃんや漁師さん達の身体に着け、若しも海に投げ出されても沈まない様にする為の物なんだ。」


「う~ん、竹筒をねぇ~、じゃ~これを人数分作ればいいのか。」


「うん、そうなんだ、頼むよ、オレは元太あんちゃん達の身体が心配なんだ。」


 げんたは一体何を頼んだと言う。


「皇帝陛下、誠に申し訳御座いませんが、実はお願いが御座いまして、本日お伺い致しました。」


 将軍達が何かを決意した様子に皇帝にも理解出来る。


「その方達は一体如何致したのじゃ、海軍と陸軍の将軍と大臣が来ると言う事は余程の事だと思うのだが。」


「皇帝陛下、実は海軍で建造しております軍艦と陸軍が調達した弾薬や兵器の支払いに困って要るので御座います。」


「何と申した、弾薬や兵器、更に軍艦の建造に使う資材の支払いが出来ないと申すのか。」


「左様で御座いまして、その支払いが出来なければ次の資材は納入出来ないと。」


「では日本との戦争は一体どの様になるのじゃ。」


「はっきりと申し上げますが、我がロシア帝国が勝つには少し不安が有ると申し上げます。」


「何じゃと、何故に不安だと申すのじゃ、今の兵力と武装では不足だと申すのか。」


「確かに我が軍の兵力と武器は充実しておりますので、正か負けるとは思いませぬが、ですが敵国で有る日本がどの様な武器を持って要るのかも全くわからないので御座います。」


 欧州では一部のイギリスやポルトガルなどを除き、殆どの国は日本と言う国家などは知らず、ロシアも殆ど知る事は無かった。


「だが何故に日本国に黄金が大量に有ると知ったのじゃ。」


「数年の前の事ですが、日本国がイギリスより購入致しました軍艦の支払いに数万枚と言う大型の金貨と更に金塊を大量に出したとの報告が有りまして、日本国は黄金の国だと、他の欧州の国々は申しております。」


「何と申した、日本と言う国は黄金の国だと、では国中に金貨や金塊が溢れて要ると申すのか。」


 まぁ~何と言う話だ、彼らは日本では金貨や金塊が溢れてと言う話を信用してるとでも言うのか。


「我が陸軍と海軍は陛下と国の為にはどの様な策を講じましても勝つ所存で御座いますが、その為にはまずは支払いを済ませ無ければならないので御座います。」


「ではその支払いの為に余に出せと申すのか。」


「陛下には誠に申し上げにくいのですが、我々が今持つ金貨では全く役に立たず、先方も皇帝陛下がお支払い下されば、直ぐ次の弾薬や兵器、更に資材も納入すると確約を取っております。」


 だが皇帝陛下は直ぐには返事する事はせずに暫く考え。


「して、その値は幾らなのじゃ。」


「はい、両方合わせまして二百万ルピカで御座います。」


「何じゃと、二百万ルピカじゃと、何時にその様な高値になったのじゃ。」


 皇帝は政治や経済の事などには全く無知で、更に言えば民衆の暮らしなどは全く知らない。


 この国では庶民の生活費は三十日で一ルピカも有れば十分以上で、民衆に二百万ルピカと言っても庶民の感覚では全く想像出来ないので有る。


「戦争に勝利したならば、数倍の、いや数十倍にもなりまして戻って来るので御座います。」


 と、大臣が話すと皇帝陛下の顔付きが一瞬で綻び、やはり数十倍になり手元も戻って来ると聞けば、何処でも同じだが、投資した、いや戦費に出した金額の数十倍となり戻って来ると聞けば、誰でも顔が綻ぶのも理解出来る。


「では聞くが、他国より戦費調達は上手くに行ってると申すのか。」


「其れに付きましても早くから願いでて要るので御座いますが、今だにはっきりとした返事を頂いておりませぬ。」


「何じゃと、では全く調達出来ていないと申すのか。」


「左様で御座いまして、各国には何度も催促して要るのですが、返事と申しますのは本国より今だ返事が無いと申しておりまして。」


「まぁ~多分じゃが、各国とも口裏を合わせて要ると思って要ると間違いは有るまいの~。」


 各国ともロシアの考え方を承知しており、戦費の調達依頼が有ったとしても本国からは何の返事も無いと答える様にして要る。


 更に今更各国に聞いたところで同じだと大臣は思い、皇帝は暫く考え、其れでも戦費として二百万ルピカを拠出に承諾し、そして、数日程には全ての支払いも終わり、数十日後には資材や弾薬が納入され、ロシアの軍艦建造は再び開始された。




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