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闇の帝国    作者: 大和 武
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 第 111 話。 果たして試みは成功するのか。

 げんたを乗せた小舟はゆっくりと大筏へと向かうが、げんたよりも漁師の元太の方が一番緊張した様子で、何時もならば簡単に行けるはずが、やはり最初に野洲で行った時の試みが脳裏から離れないないのかもしれない。


「なぁ~げんた、本当に大丈夫なのか、オラはまだあの時の事が頭から離れないんだ。」


「そんなの絶対に大丈夫だよ、だってあんちゃんは連合国の漁師の中でも一番の腕を持つんだぜ、だからオレが言った方法でやってくれれば絶対に成功するって。」


  げんたは元太の気持ちを一番知っており、其れはこの様な危険を伴う仕事は野洲の漁師で、その中でも元太と言う漁師の腕は最高だと、其れだけでは無く、漁師と言う仕事は年中死を伴い、何時嵐に遭遇するかも知れず、考え方を変えれば、侍、いや連合国軍の兵士以上に度胸が有る。


「オラは何も爆裂弾が恐ろしいんじゃ無いんだ、野洲の時でも大騒ぎになったのを覚えてるんで、若しもだよ、若しも木片や爆裂弾の破片が飛んで来て浜に居る誰かが怪我をするんじゃ無いかって、其れを一番心配してるんだ。」


「オレも其れは考えたんだ、だけど本当の威力を知らせる為には誰かが怪我する方がいいと思ってるんだ、まぁ~そんな事今考えても仕方が無いから、其れよりも早く終わらせたいんだ。」


 げんたは怪我人が出る事も必要だと思って要る。


「分かったよ、で何処まで行くんだ。」


  元太も大よその見当は付いて要るが、やはり確認が必要だと思って要る。


「そうだなぁ~、まぁ~この辺でいいよ、じゃ~舟を浜に向けてよ。」


「の~源三郎、二人は何をやっておるのじゃ。」


「多分ですが、細かい部分で話し合って要ると思います。」


  野洲のお殿様も他のお殿様方もげんた達は一体何を話して要るのかが余程気になる様だ。


 元太はゆっくりと舟を浜に向け、何時合図が有ったとしても良いと準備を終わらせて要る。


「よ~し、行くぜ。」


  と、げんたは海中爆裂弾を大筏に向け、爆裂弾はゆっくりと、だが確実に進んで行くのを確かめると。


「あんちゃん、思いっきり漕いで欲しいんだ。」


  だが元太は返事をよりも早く、漕ぎ始め、浜でも漁師の元太の動きにお殿様方は。


「元太、早くじゃ、もっと早く漕ぐのじゃ、早く致せ。」


  と、野洲のお殿様は立ち上がり大声を出し、必死で手を振る、他のお殿様方もだが、浜に居る大勢の人達は誰もが必死で叫んで要る。


 そして、暫く行くと。


「あんちゃん、此処でいいよ、身体を隠してよもう爆発するから。」


  と、げんた言った瞬間。


「ど、どっか~ん。」


  と、源三郎もだが工藤も今まで聞いた事の無い程の大爆発音が鳴り響き、入り江が大きく揺れて要ると思われる程の大爆発で、浜に有る漁師達の家も揺れて要る。


「わぁ~なんて大きな爆発だ。」


「あっ、波が押し寄せて来るぞ。」


「大変だ、みんな早く逃げろ。」


 浜に居る人達が一斉に逃げた。


「あんちゃんは大丈夫か。」


「オラは大丈夫だ、げんたは。」


「オレも大丈夫だ、其れよりも早く浜に行くんだ。」


  げんたは大筏の破片が飛んで来ると、いや其れよりも恐ろしいのは爆裂弾の破片が飛んで来る、爆裂弾は鋳物で作られており、大爆発で粉々に壊れ、破片は鋭利な刃物と同じで、当たり所が悪ければ死亡する事も有る。


  元太も必死だ、前回の試しでも恐ろしさを十分過ぎる程知っており、其れでも暫くすると浜に戻って来た。


「技師長も元太さんも大丈夫ですか。」


「オレと元太あんちゃんは何とも無いけど、大筏や爆裂弾の破片が飛んで来るからみんなも気を付けてよ。」


  やはり、げんたは心優しい。


「で、あんちゃんに聞きたいんだけど、海中爆裂弾の試しは成功したのか。」」


「其れは勿論ですよ、ほら見て下さい、銀次さん達に苦労して作って頂いた大筏が見事にと申しましょうか、姿も形も残っておりませんでね、今は海上に木片として空から落ちて来るんですよ。」


「えっ、本当か。」


  げんたが振り返ると巨大な筏は無く、辺り一面に木片が上空から落ちて来るが、その時。


「あの~源三郎様、こんな物が落ちて来たんですが。」


  と、漁師は先が鋭利に尖った一寸程の鉄の破片を持って来た。


「あっ、これは。」


   げんたの顔から血の気が引いた。


「げんた、いや技師長、如何致しのじゃ。」


「ねぇ~、これを何処で拾ったんですか。」


「其処の波打ち際で。」


「あんちゃん、大変だ、みんなを直ぐ後ろへ行かせてくれ、早く。」


 げんたの形相に源三郎も直ぐ理解し。


「みんな早く下がるんだ、早く、危険だ、早く致せ。」


  げんたの顔は青ざめており、源三郎を含め、工藤達も一斉に行動を開始し領民を下げて行く、やはりげんたの思った通りで、大爆発で爆裂弾は粉々に、殆どは海中に、だが一部は空中に舞い上がり、其れが今浜に落下して来た。


 其れでも四半時程経つと鉄の破片は落下する事も無く、少し落ち着いたのか。


「あんちゃん、もう大丈夫だよ。」


「そうですか、やはりあれは爆裂弾の破片でしたか。」


「そうなんだ、オレが一番心配してたのは爆裂弾の破片が飛んで来る事だったんだ、其れにしてもオレが思った以上に恐ろしかったなぁ~、ふ~。」


 と、げんたが心なしか、其れでも安心したのか一息吐いた。


「そうでしたか、私もこれ程にも威力が有る武器だとは全く分かりませんでしたよ、ですがこれ程にも威力の有る海中爆裂弾ならば一撃でロシアの軍艦は確実に沈没すると思いますがねぇ~。」


「あんちゃんはまだ何もわかって無いんだなぁ~、あんちゃんもあの時官軍の軍艦を見た時何も感じなかったのか。」


「えっ。」


  源三郎はげんたの言葉に何も言えず、やはりげんたは全てを知っていたのだろうか、確かに今見た通りで海中爆裂弾の破壊力は今までの爆裂弾とは桁違いで、銀次達が作った大筏は今までの爆裂弾では簡単に破壊出来なかっただろう、だが今回げんたが考案した海中爆裂弾の一撃で大筏は木っ端微塵に砕かれ木片となり次々と空から落ちて来る。


  だが其れ以上に恐ろしいのは爆裂弾の破片は鋭利な刃物となり飛来するが、果たして源三郎が言う様にロシアの軍艦を一発の海中爆裂弾で本当に沈める事が出来るのか。


「あんちゃんも見た通りだよ、海中爆裂弾は今までの爆裂弾とは訳が違うんだ、だけど一発の海中爆裂弾でロシアの軍艦を沈める事は出来ないと思うんだ。」


「技師長、何故じゃ、何故に一発で沈める事が出来ぬのじゃ、余にもわかる様に説明してくれぬか。」


「技師長殿が考案された海中爆裂弾一発で何故にロシアの軍艦を沈め事が出来ないのですか、我々にも説明して頂きたいのです。」


  工藤は知って要るはずだ、だが他の者達はロシアの軍艦がどれ程にも頑丈に造られて要るのかも知らないと思い、この際、技師長に説明させれば、お殿様方も軍の関係者もだが上田の領民達も理解するで有ろうと考えたので有る。


「分かったよ、じゃ~今から説明するからね。」


  げんたはゆっくりと、其れと言うのもこの場には工藤の様に軍艦を詳しく知る者だけで無く、殆どが素人だと思っても間違いは無く、その為には誰にでも理解出来る様に話す事が必要で、げんたは半時以上も掛け説明した。


「技師長の説明だとロシアの軍艦を沈める為には一度に数本の海中爆裂弾を命中させなければならないと、ですが其れは相当高度な技量が必要では有りませんか。」


  やはり吉田だ、彼は最初、官軍の軍艦を沈める為に今でも語り草になって要る程にも厳しい訓練をしたが、その時の状況とは全てが桁違いで、全てが鉄で造られた頑丈な軍艦をどの様な方法で沈没させる事が出来るのか、其れが勝敗の行方を左右して要ると考えて要る。


「そうなんだ、あの時官軍の軍艦は木造船だから一升徳利の爆裂弾でも十分だったんだ、だけど今では全部が鉄で造られた頑丈な軍艦は簡単には沈まないと思うんだ、だけどさっきの海中爆裂弾だったら沈める事は出来る、だけど最低でも四本くらいは全部命令させなければ駄目だと思うんだ。」


「源三郎殿はロシアは一体何隻を来襲させるのかご存知なのですか。」


「上田様、これは私の推測で、他からの情報も入っておりますが、四十隻前後だと考えておりますが、まだ正確には把握出来ていないのが本音で御座います。」


 源三郎は四十隻だと言ったが、だが一体何処からの情報なのだ。


「何じゃと、四十隻じゃと、鉄の軍艦四十隻で来襲すれば、我が連合国もじゃが、日本国は戦う事は出来るのか。」


 野洲のお殿様は四十隻で来襲すれば、連合国もだが日本国に勝利は無いと考えて要る。


「まず簡単に敗れると考えられますが、私が信頼出来るお方からの情報ではロシアの大艦隊は必ず日本国を攻撃し、植民地にし全ての小判と金塊も全て自国へ持ち帰り、更に金の採掘には領民を駆り出して行くので御座います。


 日本の軍隊は、いや日本政府は何としても阻止しなければならないと考えております。」


「源三郎殿はその官軍のお方は信頼出来ると申されるのですか。」


 上田のお殿様は官軍は信用出来るのかと、やはりまだ何処かで官軍は信用出来ないと思って要るのだろうか。


「確かに上田のお殿様の申されます通りやも知れませぬ、ですがよ~く考えて頂きたいので御座います。


  今此処に居られます工藤さんや吉田さんもそうですが、連合国に居られます兵隊さんの全員が元官軍の兵隊さん達でした。


 ですが今は連合国軍として日夜我が連合国の為にと命懸けで野盗や旧幕府軍、そして、一部では御座いますが、悪辣な官軍兵から守って頂いて要るのです。


  更にと申し上げますが、私は官軍とは呼ばずに日本国軍と呼ばせて頂きたいのです。


  私の知るお方も今は旧幕府軍では無く、ロシアの大艦隊を迎え撃つ為に一日でも、いいえ、一刻でも早く軍港を完成させようと働いておられるのです。


「私は何もそのお方が信頼出来ぬと申して要るのでは御座いませぬ。」


 上田のお殿様も本当は知っており、やはり領民にも聞かせる為の作り話なのか。」


「ねぇ~源三郎様、だったらオレ達も官軍の、いや日本国軍を信用していいんですか。」


  領民は連合国の外は知らずにおり、果たして源三郎の言う通り官軍、いや日本国軍を信用しても良いのか迷って要る様にも聞こえる。


「確かに皆様方のご心配は私も理解しております。」


 源三郎はその後、山賀の西側に有る大きな湾で建設中の軍港に吉三組も参加して要る事や、上野から最新の情報を得ており、今や一部を除き官軍はもはや敵軍では無いと一時以上も掛け説明した。


 やはり源三郎が説明すると領民達も納得したのか、その後は新たな質問も出る事は無かった。


「なぁ~あんちゃん、オレさっきから考えてた事が有るんだけど。」


 げんたは一体何を考えていたのだろうか。


「技師長は若しや新たな兵器を考えておれたのですか。」


  吉田にすれば、又も突飛な兵器でもと思い、発言したと思ったが。


「いや其れが違うんだだ、オレは海中爆裂弾を使った訓練方法を考えてたんだ。」


  正かげんたが訓練方法までも考えて要るとは工藤も思ってはおらず、其れは源三郎もで有る。


「義兄上、技師長が訓練方法までを考えて要るとは余程の事では御座いませぬか。」


  勿論、若殿様も専門家では無いが、技師長が考えると言うのは余程事態が切迫して要ると思うので有る。


「確かにその通りですねぇ~、では技師長から説明して下さい。」


  源三郎は何も其処まで事態が切迫して要るとは考えていないが、やはり領民を納得させる必要が有ると考えたので有る。


「分かったよ、じゃ~今から話すけど、オレは訓練には松川の窯元さんの協力が欲しいんだ。」


  げんたは何故に松川の窯元の協力が必要だと考えたのだろうか。


「技師長、何故じゃ、何故に松川の窯元の協力が必要なのじゃ。」


  その疑問は何も野洲のお殿様だけでは無かった。


「誠ですぞ、海中爆裂弾は鋳物では御座いませぬか、其れが何故に焼き物を作られる窯元さんの必要なのか全く分かりませぬが。」


  菊地のお殿様は本当に理解していないのか、其れとも惚けて要るのか、領民達にはさっぱりわからない。


「じゃ~今から説明するよ。」


  その後、何故に偽物の爆裂弾が必要なのかを説明すると。


「左様か、今の説明で分かった、だがなぁ~、漁師達は外海には行かないと聞いておるぞ。」


「其れはオレも十分にわかってるよ、だから今度は銀次さん達にお願いしようと思ってるんだ。」


  傍に居る銀次達は別に驚く様子も無く。


「親分、嬉しいですねぇ~。」


「まぁ~そう言う事だ、オレ達はげんたに信頼されて要ると言う事だ。」


「銀次は何故に嬉しいのじゃ、命懸けの訓練だと思うのじゃが。」


  野洲のお殿様ならば銀次達の気持ちは十分過ぎる程知って要る。だが上田の領民達は何故一番危険な訓練に参加する事が嬉しいのかもさっぱりわからない。


「そんなのって簡単な話ですよ、オレ達の様な者の命を助けて下さったのが源三郎様なんですよ、其れでオレ達とげんた、いや技師長は一番の子分でしてね、今度の訓練では漁師さん達にはやって貰いたく無いんですよ。」


「何故じゃ、海の事ならば漁師達の方が詳しく知っておるぞ。」


「お殿様、そんなのって当たり前の話ですよ、でもオレ達が漁に行ってもまず魚を取る事は出来ませんし、其れにお殿様の大好物の片口鰯は絶対に取れないんです。


  でもオレ達だったら外海に出る事も出来るし、技師長が言う訓練に参加する事が出来るんです。」

 

  野洲の漁師達もだが外海に出て漁は行わず、だが銀次達ならば外海に出る事が出来、技師長が考える訓練の手伝いが出来ると言うのだ。


「技師長が考えて要る訓練ですがどの様な方法なのですか。」


  源三郎も銀次達に任せるつもりで訓練方法を知りたいので有る。


「オレはロシアの軍艦をのどてっぱらに四本か五本の海中爆裂弾を命中させて沈めたいんだ、其れで考えた方法が。」


  源三郎や工藤達にも詳しく説明した。


「何と申した、銀次達が小舟を操り、大木を引き、其れに命中させると言うのか、う~んこれは大変な訓練になるぞ、工藤も出来ると思うのか。」


  工藤はげんたが考えた訓練方法が果たして実現可能なのか考えて要るが、この浜に集まった中隊長や小隊長達は別の考えだ。


「技師長は爆裂弾に火薬を詰めるんですか。」


  ある中隊長は聞くが、誰もが同じ考えで訓練に使用する海中爆裂弾に火薬を詰めるものだと思っており、下手をすれば銀次達は爆発に巻き込まれ死亡する危険な訓練だと思って要る。


「火薬なんか入れないよ、でも連発銃の弾は要るんだ、と言うのは大木か筏かは別にして銀次さん達が引くのはロシアの軍艦で命中すれば爆発はするけど、本物じゃないから大きな爆発は無いんだ、だけど外海の荒れた状態で確実に命中させなければロシアの軍艦は絶対に沈まないんだ、だから鉄じゃ無く、焼き物で作った爆裂弾で訓練するんだ。」


  げんたは確実に命中しなければロシアの軍艦は絶対に沈まないと言う、工藤は暫く考え。


「総司令、お殿様方、私は技師長が考案された海中爆裂弾でロシアの大艦隊を撃破したく思い、技師長が考えられた訓練を実行したいと思います。」


  工藤はその後も技師長が考えた訓練を実行する為には軍からも選抜すると、だが其れまでに一体何隻の潜水船が、いや潜水艦が建造出来るのか、其れが全くわからない。




   


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