表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闇の帝国    作者: 大和 武
184/288

 第 108 話。遂に完成した新型海中爆裂弾。

「ドッカ~ン。」 と、其れはまるで天地をひっくり返す程の激しい爆発音だ。


「あんちゃん、大丈夫か。」


「ああ、オラは大丈夫だ、だけど今のは一体何だ。」


「あれか、あれはオレが考えた新型の海中爆裂弾だよ。」


「海中爆裂弾って、でも火は点いて無かったよ。」


「そんなの当たり前だよ、水の中だから火は点かないよ。」


 浜の漁師達もだが、家の中に居た妻や子供達、其れに洞窟内に居た潜水船の乗組員達も大変な驚き様で、何時の間にか浜に集まって来た。


「源三郎は、源三郎は何処に居るのじゃ。」


 お殿様は必死で源三郎を探して要る。


「鈴木様は大至急馬を、上田様は吉田さんに中隊と一緒に浜に大至急です。」


 鈴木と上田は部屋を飛び出し馬屋と駐屯地へと向かった。


「大佐殿、今の爆発音は。」


「吉田、浜だ、直ぐ兵と浜へ、私は総司令の所へ行く。」


 駐屯地でも大騒ぎで吉田は中隊の兵士と共に馬を飛ばした。


「大佐殿、今総司令が。」


「上田様、吉田と中隊が浜に向かい、私は。」


「総司令は浜に向かわれました。」


「分かりました、若しもの事を考えて。」


 工藤は更に一個中隊を引き浜へと馬を飛ばした。


「源三郎は何処に居るのじゃ。」


「もう浜に向かわれました。」


「殿。」


「権三か、若しや浜に官軍が攻めて来たのでは有るまいのぉ~。」


「私も正かとは思いますが、馬を出せ、わしも行くぞ。」


「よし、余も参る。」


 と、お殿様とご家老様も直ぐ馬に跨り浜へと飛ばして行った。


「なぁ~げんた、海中爆裂弾って、でも何処で使うんだ。」


「オレはあんちゃんが言ってたロシアの軍艦を沈める方法を考えてたんだ。」


「だけど源三郎様の話しじゃロシアの軍艦は全部が鉄で造られてるって。」


「だから考えてたんだ。」


 源三郎は上野を脅迫でもしたのだろうか、だがあの時は。


「げんたは今考えて要る新型の武器を大至急完成させ、官軍の軍艦を撃滅するんだ。」


 と、ではげんたはあの日からその武器だけを考えていたのだろうか、いや其れだけでは無い。


 飯田達が必死の思いで東京から持ち帰った機織り機を稼働させ、更に山賀の洞窟内に空気を送る機械作りと設置など考えれば限りなく仕事が多く、その様な超過密な日程の中でも海中爆裂弾を考えていた、やはり源三郎に言われたからなのかで有ろうか、いやそうでは無い。


 げんたの頭の中にはロシアと聞かされても、いやロシアの軍艦はどんな卑怯な手段を取ってでも撃沈させなければならないと思い、もう此処まで来れば強迫観念で構想を練り、そして、第一号弾とも言うべき武器が完成し最初の試みも成功を収めた。


「はいよ~。」


 もう源三郎は何も考えられず必死に馬を走らせ、馬も何かを感じて要るのか必死だ。


「お~い、技師長、今何が起きたんですか。」


 潜水船の兵士達は何が起きたのかもさっぱり分からず上がって来た。


「分隊長さん、やっと出来たんだ。」


「はぁ~でも一体何が出来たんですか。」


 分隊長はもっと訳が分からずキョトンとして要る。


「オレが考えた新型の海中爆裂弾の事だよ。」


「ねぇ~技師長さん、何ですか、その海中爆裂弾って、自分にはさっぱり分からないんですが。」


 其の時、遠くから馬の蹄の音が聞こえて来る。


「お~い、げんた、げんたは。」


「えっ、あんちゃん 何か有ったのか。」


「何か有ったのかって、えっでは。」


「あんちゃんは何でそんなに慌ててるんだ。」


「さっきですが、物凄い爆発音が聞こえましたので、若しや官軍の軍艦が。」


「もう~あんちゃんは何てあわてんぼうなんだ、あれはなぁ~オレが考えた新型の海中爆裂弾を爆発させた爆発音なんだぜ。」


「えっ、今何と言ったのですか、新型の海中爆裂弾と聞こえたのですが。」


 源三郎もげんたの言う新型の海中爆裂弾と聞いてもさっぱり分から無い。


「ああそうだよ、さっき元太あんちゃんと一緒に試したんだ。」


 げんたは涼しい顔で言うが。


「みんな急げ、早く走れ。」


 吉田も必死で馬を走らせ。


「お~い、えっ何が。」


 と、吉田はまるで狐に騙されたかの様な顔をし、兵士達も唖然として要る。


「お~い。」 と、今度はお殿様とご家老様が、其の直ぐ後から工藤と一個中隊が必死でやって来た。


「何が有ったのじゃ、源三郎。」


「私も今来たばかりでして、今聞いたのですが、げんたが、いや技師長が新型の海中爆裂弾を試み、見事に大成功だと、ですが私もさっぱり分からないので御座います。」


 何時もの源三郎では無い、源三郎程の人物を大慌てさせる程の強烈な海中爆裂弾の成功で、源三郎でさえも、いや誰が聞いてもさっぱり分からない程にも難解な新型の海中爆裂弾で有る。


「余はのぉ~、源三郎の様な頭は持ってはおらぬ、じゃが一体どの様な方法で海の中で爆発させるのじゃ、水の中では火は点かぬ事ぐらいは誰でも知っておるぞ。」


「だったら今から説明するからみんな座って欲しいんだ。」


 其の時、雪乃、加世、すずが、そして、後から城下の領民が包丁を始め、手には色々な物を持ちやって来た


「何処だ、えっ何だ。」


 と、領民達も官軍が攻めて来たと思って要る。


「オレはあんちゃんから一刻でも早く新型の武器を作れって言われて。」


 と、その後、げんたは何故海中爆裂弾を造る事になったのかと話しに入り、そして、海中爆裂弾とは一体どの様な爆弾なのかを出来るだけ誰にでも理解出来る様に説明した。


「技師長は連発銃の弾丸を利用したと言われますが。」


「ああそうだよ、でもオレの片腕は信太朗さん達なんだ、あんちゃんも知ってると思うけど、信太朗さん達は上方では有名な細工物師なんだぜ。」


 げんたはあえて信太朗達を上方では名の通った細工物師で、今回の海中爆裂弾を完成させたのは彼らだと持ち上げた。


「まぁ~そうは言ってもオレにはまだまだ及ばないけどなぁ~。」


「のぉ~技師長、海中爆裂弾を造ると言うのは簡単ではないと申すのか。」


「そんなの当たり前だよ、オレは身体一つなんだぜ、山賀で蒸気を造る機械を作り、機織り機を動かせ、他にも色々とやる事が山ほども有るんだぜ、だけど海中爆裂弾は信太朗さん達に手伝って貰わないと次の事が出来ないんだ。」


 げんたが言う次の事とはやっぱり鉄で造る潜水船なのか。


「なぁ~げんたって一体どんな頭をしてるんだ。」


「そんな事、オレが知るか、だけどあいつは小さい頃から苦労してるからなぁ~。」


 城下の人達はげんたが小間物を作り生計を立てていたと知って要る。


「のぉ~技師長が考えたと申す海中爆裂弾とは一体どの様な物なのじゃ。」


 お殿様もだが源三郎や工藤に吉田は海中爆裂弾を一番見たいと思って要る。


「有るよ、だけどなぁ~。」


 げんたは見せたくないのだろうか。


「だけどなぁ~って、何か問題でも有るのですか。」


「まぁ~なぁ~。」


「技師長さん、もう一本出来上がってますから、持って来ましょうか。」


「じゃ~頼むよ。」


 信太朗達は作業小屋に入り直ぐ出て来たが。


「何じゃ。」


 と、お殿様はもう大変な驚き様だ、信太朗達は戸板に一本の黒い筒を乗せて要る。


「技師長さん、此処でいいですか。」


 戸板を皆が集まって要る中心に置いた。


「お殿様、あんちゃん、これが海中爆裂弾だよ。」


「何じゃと、これが海中爆裂弾だと申すのか。」


 お殿様の目の前には直径が八寸程で、長ささが三尺以上は有ろかと言う黒い筒で有る。


「お殿様もあんちゃんも丸くなった先は絶対に叩いちゃ駄目だからな。」


 げんたは先端部だけは絶対に叩いてはならないと。


「何故ですか、其れに全てが鉄で造られて要るのですから、少々の事では壊れないと思いますが。」


「オレが造ったんだからそんな事は当たり前だ、だけどなぁ~これが爆発したら、まぁ~そうだなぁ~此処に集まった人は全員が粉々になって誰かも全然分からないし、浜にもそうだなぁ~直径が十間以上で、深さも一間も有る大きな穴が出来るんだぜ。」


 もうそんな話しになると、お殿様もご家老様も腰を抜かす程の驚き様で、ふと周りを見ると兵士と領民達は半町程も離れ、領民の中には身体を震わせて居る人もいる。


「工藤さん、これが二本も有れば入り江に有る軍艦は沈没すると思うよ。」


 げんたは簡単に言うが。


「では技師長はロシアの。」


「そうなんだ、オレは赤鬼からみんなを守りたいんだ。」


「なぁ~げんた、赤鬼って、何処に居るんだ、オラも子供の頃に爺様から北の国には赤鬼が住んでるって聞いた事が有るんだ、赤鬼は人間の肉を食らうんだって。」


「其れだったらわしも聞いた事が有るぜ、赤鬼って人間の顔をしてるそうなんだ。」


 漁師や城下の人達は赤鬼の言い伝えが有ると話して要るが、げんたは作り話をしただけで、だが野洲には大昔から赤鬼が時々山を下りて来て人間を食べると言う伝説が有る。


「だったら、オレ達も赤鬼に食われるって言うのか。」


「よ~しオレは絶対に赤鬼から母ちゃんと子供は守るぜ。」


「よし、オレもやるぜ。」


 と、城下の人達は口々に赤鬼から家族を守ると言うが。


「のぉ~げんた、いや技師長、この海中爆裂弾じゃが、他の者は知って居るのか。」


「他の者って。」


「高野や阿波野達の事じゃ。」


 お殿様は高野や阿波野に斉藤らは知って要るのかと聞くが。


「そんなの誰も知らないよ、だってオレは誰にも言って無いんだぜ。」


「そうか、源三郎は高野達にも知らせる必要が有るのではないのか。」


 お殿様は高野達にも知らせるべきだと、若しや日を改めて今一度試せとでも言う様に聞こえる。


「殿は海中爆裂弾を今一度試せと申されるので御座いますか。」


「やっぱりなぁ~、あんちゃんもお殿様も同じ事を考えてるんだろう。」


 源三郎もお殿様と同じ事を考えており、だが一体何処で試すと言うのだ。


「お殿様は簡単に言うけどなぁ~、爆裂弾の試しは何処でもいいんじゃ無いんだぜ、山賀は無理だし、松川では官軍の駐屯地に近いし、まぁ~後は上田から菊池までのところって話しになると思うんだけどなぁ~。」


「何故に松川では駄目なのじゃ。」


「みんなは知らないけど、さっき試した爆裂弾はこれの半分の大きさも無かったんだぜ。」


「何じゃと、これの半分も無かったと申すのか。」


「本当だよ、半分以上の大きさであれだけの破壊力と爆発音だ、若しも松川の入り江でやったとしてだ、爆発音が官軍の駐屯地にでも聞こえたら一体どうなると思うんだ。」


「殿、其れだけでは御座いませぬ、駐屯地には定期的にと申しましょうか、九州より大量の資材を積んだ馬車部隊が到着し、直ぐには帰る事は有りませんので、若しもその者達に爆発音を聞かれますと、官軍は大部隊を送り込み、周囲を警戒させ、更には海上からは軍艦が入り江に入るやも知れないのです。」


 源三郎は凄まじい爆発音が駐屯地に来る馬車部隊の兵士に知られると連合国の存在が明らかになるのを一番懸念して要る。


「う~ん、確かに源三郎の申す通りじゃのぉ~、では此処以外には無いと申すのか。」


「総司令、菊池も駄目で御座います。」


「何故じゃ、何故に菊池も無理と申すのじゃ、やはり官軍の駐屯地が有るのか。」


「左様では御座いませぬ、菊池には以前昌五郎殿達が漁師から小舟を譲り受け漂着しており、近くには官軍が駐屯して要るものと思われますので。」


 工藤は官軍が駐屯して要るのではと考えて要るが、其れよりも鹿賀の国が近く、若しも鹿賀の国にでも知られるとなれば、官軍以上に厄介な事に成る、では残るは野洲と上田だけだ。


「其れでは上田では如何じゃ。」


「殿、ですが上田にも聞かねばなりませんので、其れよりも山賀に松川、菊池へも知らさなけれなりませんので。」


「其れも仕方有るまい、では源三郎に任せるぞ。」


 野洲の漁師もだが城下の領民は胸を撫で下ろした。

 

 やはり先程の爆発音を聴いた者には倍以上の破壊力と爆発音が有ると聞けば躊躇するのも当たり前で有る。


「技師長、火薬の分量を調整すると言うのは如何でしょうか。」


 工藤は軍人としての考えだが。


「其れはオレだって分かるよ、だけど海水が浸みこまない様にするだけでも大変なんだぜ、其れにもう火薬は入ってるんだから。」


 げんたは何も出来ないと思っていない、だが信太朗達がどれ程苦労してロウ付けしたのか、其れを今更火薬を抜けとは言えず、其れよりも実物の破壊力を知らせる為にも現状の爆裂弾で試みる事の方がよっぽど皆が理解出来るはずだと。


「よ~く分かりました、私が上田に参り、殿様と阿波野様にお話ししますので。」


「あんちゃんは上田でやると言うのは、やっぱりなぁ~。」


 げんたもやっと納得した様で有る。


「では上田で行ことしてじゃ、菊池に松川、山賀にも知らせねばならぬが。」


「勿論で御座いますが、私が。」


「いや今回は余が直接参る、権三は菊池へ参り菊池殿と高野殿に、余は松川に参り、義兄上に説明致す。」


 今までならば源三郎が直接参り説明しており、だが今回の海中爆裂弾だけは特別で有る。


「殿がご説明に参られるので御座いますか。」


「何じゃと、余が参るのが気に食わぬと申すのか。」


「いいえ、そうでは御座いませぬが。」


「そうじゃ、雪乃も一緒に参るのじゃ、工藤と吉田は駐屯地の中隊長、いや小隊長も含め見学せよと伝えるのじゃ。」


 お殿様が直接指示を出すのを初めて見るげんたは目を白黒させて要る。


「なぁ~あんちゃん、お殿様って爆裂弾の爆発音で気が変になったのか。」


「私も初めてなので物凄く驚いて要るのですがね、まぁ~全て殿にお任せしましょう、工藤さんは小川さんと潜水船の乗組員の全員を参加させて頂きたいのです。」


「承知致しました、手配致します。」


 その後、お殿様とご家老様はお城に戻り、馬を飛ばして向かった。


「あんちゃんは何時頃やるつもりなんだ。」


「そうですねぇ~、工藤さんは何時頃が宜しいでしょうか。」


「私は四日、いや五日後で宜しいかと存じますが。」


「鈴木様と上田様は至急書状を認め、五日後に上田の浜で海中爆裂弾の試しを行ないますと伝令を出して下さい。」

 

「あんちゃんはこれをお城に持って行くのか。」


「私は其の方が良いと思いますが。」


「まぁ~なぁ~、オレも持って行ってくれる方が助かるんだ、若しも此処で爆発でもしたら、其れこそ大変な事に成るしなぁ~。」


「吉田さんは兵隊さんと四人で城の倉庫に運ばせて下さい。」


 其れを聴いた兵士達は少し後退りして要る。


「まぁ~心配するなって、若しも爆発したら半径十間以内の兵隊さんの身体はバラバラになるだけだから、そうだなぁ~鉄砲で撃たれるよりも楽ちんだぜ。」


 げんたは一人で大笑いするが。


「技師長さんは平気で言うんだからなぁ~、でもオレ達は本当に恐ろしいんですよ。」


「そうかなぁ~、でも今までで一番恐ろしかったのは信太朗さん達なんだぜ、だってちょっとでも弾の後ろに何かが当たれば、三人共、いやオレ達全員がバラバラになってたんだから、其れこそ三人は冷や汗の連続だったんだ、まぁ~其れに比べたらこの部分だけに気を付けて運べばいいんだ、寧ろにくるんで戸板に縄で固定するば大丈夫だよ。」


「技師長、爆裂弾はこの一本だけでしょうか。」


「信太朗さん、まだ有ったと思うんだけど。」


「はい、後二本有りますのが。」


「工藤さん、全部で三本だよ。」


「分かりました、では第一小隊は前を、第二、第三小隊は爆裂弾の周りを、残りは後を警戒しお城まで運んで下さい。」


 兵士達は城下の領民を先に行かせ、三本の海中爆裂弾を中隊全員の護衛でお城まで輸送する事になったが、兵士達もだが工藤や吉田は冷や汗を掻いて要ると感じており、それ程まで海中爆裂弾は恐ろしいと思うので有る。


「高野様、大変で御座います、野洲のご家老様が。」


「えっ、野洲のご家老様が。」


 高野は慌てて執務室を飛び出したが、ご家老様はもう部屋の前に来て要る。


「ご家老様が直々とは、えっ若しや総司令に。」


 高野が早合点するのも無理は無く、野洲のご家老様が一人で、しかも馬を飛ばして来ると言うのは過去には一度も無かった。


「高野殿、申し訳御座らぬ、源三郎では有りませんので、其れよりも殿様の所へ。」


「承知致しました、では。」


 高野はご家老様を殿様の、いや菊池でもお殿様は執務室に居る事の方が多く、何か有れば直ぐ対処ができる為で有る。


「殿、野洲のご家老様が。」


「何じゃと、若しや源三郎殿に。」


 やはりお殿様も同じ様に思うのだが。


「左様では御座いませぬ、実は今日、いや先程まで。」


 この後、ご家老様は野洲の浜で行なった新型の海中爆裂弾の試しに関する話しをすると。


「えっ、其れは誠で御座いますか、其れにしても技師長殿は何と恐ろしい武器を考案されたのでしょうか。」


 菊池のお殿様もげんたが考案した新型の武器にもう呆れる他に無いのだろうか。


「其れにしても源三郎殿も慌てさせる程の武器を考えられる頭脳を、いや私は何とも理解しがたいのです。」


「殿、其れで後日、上田の浜で試みる事に成って要るのですが、其れが最初の数倍も有る破壊力と爆発音だと言うのです。」

 

 ご家老様の話はげんたが言っただけで実際のところは浜に居た漁師達が知って要るだけで有る。


「ご家老様、浜とお城までは相当な距離が有るのでは御座いませぬか。」


「ですが、お城が揺れた様にも感じたのです。」


「えっ、お城が揺れるのですか、う~ん其れにしても私はどの様に申されましても全く理解出来ないので御座いますが。」


 同じ様な頃、松川ではもっと大騒ぎになって要る。


「若殿様、大変で御座います、野洲のお殿様が。」


「一体どうしたんですか、そんなに慌てて。」


「竹之進。」


「えっ。」


 若殿様が驚くのも無理は無い、野洲のお殿様が馬を飛ばして来た、直後には雪乃も一緒で、其れが余計慌てされるので有る。


「姉上、正か。」


 やはりだ、若殿様も雪乃が家臣よりも先に執務室に飛び込んで来れば、誰が考えても源三郎に何かが起きたと考えるのが普通で有る。


「大殿様、大変で御座います、野洲のお殿様と雪姫様が馬を飛ばしてお越しになられました。」


「何じゃと、其れは誠か、若しや。」


 やはりだ、大殿様も勘違いした、何時もならば伝令が先に来る、だが今回の様な事は今まで一度も無く、大殿様も源三郎に異変が起きたと思い、執務室へと向かった。


「竹之進は何か勘違いしておりませぬか。」


「ですが、叔父上様だけでなく、姉上様も馬を飛ばして来られたのですよ。」


「源三郎殿に何か有ったのか。」


 大殿様は執務室に入るなり大声で言った。


「義兄上、源三郎では御座いませぬ、其れよりもげんたがまた飛んでもない兵器を造ったので御座います。」


「父上、技師長で御座います。」


「何じゃと、してその飛んでもない武器とは。」


「実は今日、いや遂先程の事で御座いまして、技師長が新型の海中爆裂弾なる恐ろしい武器を完成させたので御座います。」


 野洲のお殿様が浜で起きた事件とでも言うべき事柄を話すと。


「海中と申したが、水の中で火は点かぬぞ。」


 大殿様も同じで誰が考えても水中で火薬に点火するのは不可能だと、それ程にもげんたが考案した新型の海中爆裂弾とは理解出来ない武器なのだろうか。


「私も技師長が話された内容は理解出来ないのですが、私もお城におりましたがお城がゆれた様にも感じた程の破壊力で御座います。」


「姉上様はお城におられ、ですが浜で行なわれた試みでお城が揺れたと、ですが技師長は何故にその様な破壊力の有る海中爆裂弾を考えられたので御座いますか。」


 近くには斉藤や家臣達もおり、だが全く理解出来ないと言う表情で半ば呆れかえって要る。


「竹之進は源三郎様より詳しくお話しを伺っておられたのですか。」


「全てお伺い致しておりますが、やはりロシアの軍艦を沈める為にはそれ程にも破壊力の有る武器が必要なので御座いましょうか。」


「私は軍艦と聞かされてもどの様に想像しても理解出来ないのですが、源三郎様のお話しでは長さが一町以上で、更に全てが鉄で造られ、連合国が持っておられる連発銃では全く通じないと、其れではと言う事で以前より技師長が必死で考えておられ、其れが今回要約完成したと伺いましたが。」


 げんたが新型の海中爆裂弾を完成させるまでは長い期間が掛かり、其れがやっと実った、其れもげんたの頭脳が有ればこそ成し得た武器で有り、他の者達では全く想像すら不可能な武器で有る事に間違いは無い。


 


       


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ