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闇の帝国    作者: 大和 武
180/288

 第 105 話。 奴らを殺せ、奴らをこの世から葬るんだ。

「隊長殿、誰かが近付いて来ます。」


「誰だ、若しや偵察隊では無いのか。」


「ですが、偵察隊にしては人数が、あっ、やっぱり偵察隊です。」


 連合国を無事出た偵察隊は二日後にようやく戻って来た。


「隊長殿、只今戻りました。」


「そうか、大変ご苦労で有った、で分隊長は。」


「はい、お二人はまだ残っておられます。」


「そうか、あの二人が残り、まだ調べて要ると言うのか。」


「隊長殿、其れにも関係しますが、大事な報告が有ります。」


 一人が隊長に耳打ちすると。


「当番兵、誰も近付けるなよ。」


「はい、承知致しました。」


 当番兵は何かを感じたが、かと言って聞き耳も立てられず歩哨に立った。


「よし、では聞こうか、その大事な話を。」


 部隊に戻った偵察兵は隊長の傍まで進み、外の者には聞こえない様に少し小声で話を始め、隊長は時々頷くが一切質問はせず一時程が経った。


「よし、分かった、当番兵、特攻隊の小隊長以上を呼んでくれ、君達も詳しく説明が必要だと思う時には頼むぞ。」


 隊長も特攻隊の言動と行動には日頃より苦々しく思っており、一日、いや一刻も早く部隊を離れと欲しいと考えており、今回は最高の条件だと思って要る。


 そして、暫くすると特攻隊の小隊長以上の全員が来た。


「隊長殿、先程偵察隊が帰って来たと聞きましたが、何か動きでも有りましたか。」


「実はそうなんだ、此処から北の方角に高い山が見えると思うんだが、彼らはその山から戻って来たんだが、分隊長は此処での偵察は二人で行うので、皆は戻り報告せよと、其れで彼らだけで戻って来たんだ.]


「そうですか、其れで我々を呼ばれた理由と言うのは。」


「まぁ~その話は彼らから聞いてくれ、じゃ~君達に任せたぞ。」


「承知致しました、では皆様方にご説明させて頂きます。」


 偵察から戻って来た兵士が詳しく話し始めた。


「なんだと、其れは誠か、其れで侍は多いのか。」


「いいえ、其れが全部合わせても三十人くらいだと思いますが、でも殆どが老人だと思われ、若い侍は全員幕府軍に加わり、今だ帰って来ないとの事です。」


 兵士から話を聞いて要る小隊長や中隊長達は腹の中で考えて要る事は皆同じで、全員顔の筋肉が緩んで要る。


「だが何故我々に説明するんだ、お前達が行けば良いでは無いのか。」


「勿論、その方法も有るのですが、城下の人達の話ですと、お城に残った腰元達全員が剣術も相当な腕前で、更に鉄砲の扱いにも慣れて要ると、其れを聞きましたので、我々の部隊では多くの犠牲者が出ますので、やはり此処は特別攻撃隊の方々に攻めて頂くのが最善の策では無いかと結論が出まして、其れでお話しをさせて頂いて要るのです。」


 兵士隊の話に彼らはすっかりその気に成って要るのだが、まだ何か疑問でも有るのか様な顔をして要る。


「腰元達の話しは分かった、其れで侍達の内儀はどうなんだ。」


 やはり、一番気になるのは侍達の妻で、侍の妻ともなれば中には腕の立つ妻も居ると考えて要る。


「お内儀達の全員が鉄砲も扱え、剣術も鍛えられて要ると聞いております。」


「成程なぁ~、其れでは我々が行かねばなるまいの~。」


 小隊長の中にはもう気持ちは山の向こう側に行って要る様な顔をして要る。


「其れで向こう側に入る所ですが、一番東側の海側と西側には峠が有るのですが、どちらも簡単に見付ける事が出来ないのですが、自分達が見付けましたのは東側で二又付近を過ぎますと有り、西側では大岩付近から登る事が出来るのです。」


 確かに東側は二又付近を過ぎると隧道が有り、西側にも正太達が登る為の階段が作られ、だが源三郎は両方を考えたのだろうか。


「では出入り出来るのはその二箇所だけなのか。」


「左様でして、若しもどちらかの一方から侵入者が発見されると半鐘が鳴らされますが片方からは逃げられると聞きました。」


 連合国には半鐘などは無く、やはり作り話で有る。


「では二箇所を同時に入らなければならないのか。」


「自分達はその様に聞きましたが。」


「よし、分かった、では両方同時に攻めた後は。」


「はい、中央部が少しですが低いので、其処ならば残りの部隊全員で登られては如何かと思いますが。」


「そうか、最初に東西の二箇所を同時に攻撃し、その後に中央突破するのか。」


「ですが、向こう側の女達は相当手強いとは思うのですが。」


「なぁ~に、所詮は女だ、我々特攻隊は今まで何処の国でも失敗した事は無い。」


 まぁ~要は特攻隊は何処に行っても無敵だと言いたのだ。


「ですが、やはり十分注意して頂きたいのです。」


「よし、分かった、では今から作戦を練るが、お前達はどうするんだ。」


「自分達の兵は全て農民や町民ですので、五日、いや六日後にでも出発すれば八日か九日後には着けると思うのですが、如何でしょうか。」


 八日や九日後に到着したならば、特攻隊の全員が狼の餌食になって要るのは間違いは無い。


「左様か、では我々は今から作戦を練るので失礼する。」


 と、特攻隊の全員が出て行った。


「まぁ~其れにしても見事だなぁ~。」


「いいえ、自分達は司令長官殿には本当の意味でお礼を申し上げねばならないので御座います。


 ですが、二度と山には近付くなと申されまして、私は一体どの様にすれば良いのかわからないので御座います。」


「まぁ~普通の兵士ならば二度とは戻らないとは思いますがねぇ~。」


「では自分は戻っても宜しいの御座いますか。」


「そんな事、わしの口から言えるとでも思うのか。」


「失礼します、隊長殿、少しお話しが有るのですが、宜しいですか。」


「何だ、君達もか。」


「ええ、其れと兵士達も参っております。」


「何だと、兵士達もなのか。」


「あの~隊長様、オラ達は隊長様にどうしても聞いて欲しい事が有りまして。」


「わしに相談と言うのは、正かお前達までもか。」


 兵士達はまだ何も言っておらず、何故にお前達もかと言われる意味が分からなかった、だが偵察に向かった仲間が隊長と話していたのはやはり同じ考えだと直ぐ分かった。


「よし、分かった、その相談って言う話を聞こうじゃないか。」


「隊長様、オラ達。」


「自分が話しますからね。」


「はい、じゃ~お願いします。」


「ほ~成程なぁ~、皆が同じ相談だと言う事だな。」


「自分達が戻ってから兵士達に話をしまして、ですが自分が話したのは、彼が隊長に話した内容と同じでして、その後も色々と聞かれまして、其れで全てを話したんです。」


 偵察から無事野営地に帰って来た兵士達が残っていた他の兵士に山の向こう側で起きた事を話したのだ。


「では全てを話したのか、まぁ~其れも仕方無いが、其れで兵士達は何と言ってるんだ。」


「隊長様、オラ達は元々が百姓なんで、田畑を耕して要る方がいいんです。」


「まぁ~なぁ~、わしも分からんでも無いが、其れで一体どうしたいんだ。」


「実は自分も向こう側に参りたと思って要るのです。」


 やはりだ、特攻隊は別として、本隊の兵士達は全員が農民や町民で幕府との戦で、村は焼かれ、その為に妻や子供達までもが犠牲になり、今となっては帰る家も無い。


「では偵察に向かった全員なのか。」


「いえ、其れが残っておりました自分達の仲間全員で御座います。」


「何だと、では特攻隊以外の兵は全員が向こう側に行きたいと言うのか、先程の話では、その何とか言うお方から二度と来るなと言われたのでは無いのか。」


 源三郎から官軍の偵察兵には二度と来てはならぬと言われて要る。


「左様で御座いますが、実は山を越えるには猟師さんの案内無くしては無理でして。」


「では君達が向こう側に行けたと言うのは奇跡だと言うのか。」


「猟師さんはその様に申しておりましたが。」


「だがさっき特攻隊に話した二箇所と言うのは。」


「確かに二箇所だけが向こう側に行ける所でして、ですが両方には絶えず監視されており、まず普通に入る事は不可能だと聞いております。」


 菊池の隧道には大木の上に監視所が有り、山賀には日光隊と月光隊を含め、四個小隊が監視しており、発見されず登るの不可能で有る。


「其れではまず向こう側に入る言うのは不可能では無いか。」


 隊長が思うのが普通で、では一体どの様な方法で連合国に入れると言う。


「実は猟師さんから聞いたのですが、司令長官殿と申されますのは農民や町民には非常に優しいのですが、極悪非道な者達に鬼より恐ろしいお方だと。」


「何だと、極悪非道と言えば。」


「左様で御座いまして、隊長のお察しの通りでして、今回の作戦も司令長官殿は特攻隊だけは生かしてはならぬと申されたのです。」


「まぁ~なぁ~、其れはわしも同じだが、司令本部は全く知らないだぞ。」


 隊長も日頃から苦々しく思っており、其れが今回の作戦でやっと離れてくれると、隊長にすればこれ程にも嬉しい話は無く、やっと今までの部隊に戻る事が出来る。


 だがやはり世の中はその様には甘くは無く、残る兵士全員が連合国に行きたいと直訴して来た。


 其れよりも猟師は一体どの様に言ったのか、いや若しや。


「だが一体どんな方法でその国に入るつもりなんだ。」


「猟師さんの話では東側に行くと海岸に出るので、若しも運が良ければの話ですが、人間ならば岩場を行く事は出来るが、其れに余程運が良くなければ山を越す事は出来ないとの事ですが、でも兵士全員が行くと。」


「隊長様、オラは百姓なんで戦は大嫌いなんで御座います。」


「隊長様、オラもです。」


「隊長様、オラはもう戦には絶対行きたく無いんで、ですから何とかお許しを。」


 農民や町民だと言う兵士達は戦に行くのだけは嫌だと言う。


「まぁ~少し待ってくれ、わしも少し考えるから、彼らが向こう側に行った後からでももう一度話を聞く、だから今日のところは。」


「隊長、誠に申し訳御座いません、自分達の我侭を。」


 だが今は特攻隊の全員を成敗、いや抹殺する事の方が余程大事で有り、全ては成敗が終わってからで、その後、兵士全員が戻り、やがて東の空が明けて来た。


「よ~し、では今から東西の端から攻めて行く、第一は東側へ、第二中隊は西側へ向かえ、そして、二日後には中央突破する、さぁ~掛かれ。」


 やはり、この特攻隊でも一人だけが指揮して要る様で、偵察隊の兵士が言った様に菊池川と山賀の北側へと向かった。


「みんな、朝の食事の準備に入って下さい。」


 農民兵は何も考えず火を起こした、だがこれが連合国への合図とは誰も気付かない。


「う、あれはやっぱり煙だ、煙が上がったぞ。」


 山賀では猿軍団が合図の煙が上がるのを待っており、鏡を利用し大岩付近で待機中の日光隊と月光隊と、更に菊池の監視所まで伝わり、連合国では工藤の指揮の下、山賀から菊池まで橘の部隊の兵士が柵の内側の配置に就いた。


「工藤さん、橘さんの部隊ですが、山賀から菊池まで配置されたのですか。」


「一応、若しもと言う事も考えられますので。」


「若しも申されますのは。」


「確かに山賀の北側に有る大岩付近には山賀の四個中隊が、其れと猿軍団、菊池の隧道の向こう側の大木の上からも監視しておりますが、その他は全く監視出来ず、更に連合国の山は緩やかな半円を描いており、其処から登って来ると言う事も考えられますので、まぁ~用心の為で御座います。」


 やはりだ、工藤は軍人で専門的な知識がこの様な時には必要で有る。


「いゃ~さすがに工藤さんですねぇ~、私は其処までは考えてはおりませんでしたよ。」


「総司令もお気付きだと思いますが、あの官軍兵が考える作戦ですが、菊池の隧道が有るとは知りませんので、多分ですが、二又付近からどちらに向かうのか、其れが奴らの運命の分かれ道になると思います。」


 二又付近から右に行くと連合国から離れ、だが左側の脇道を行くと菊池の隧道へと向かうが、官軍兵がどの様に伝えて要るのか、其れが全くわからない。


「では今回も林の中に中隊を潜ませるのですか。」


「菊池の中隊には合図から一日置き、二日目には林の中で待機をお願いしておりますが、やはり一番の問題は風向きでして、後は中隊長の決断に任せております。」


「まぁ~其れが一番妥当ではないでしょうか。」


 だが源三郎は何かを考えて要ると工藤は思った.


「総司令は何か考えておられるのですか。」


「工藤さんも聞かれたと思いますが、特攻隊とは別に農民や町民が一千人もおられるのですが、私の思った通りならば特攻隊には作戦通りの話で進めるでしょうが、残された農民や町民さん達には正直に話されると思うのです。」


 やはり、工藤の思った通りだ、源三郎の事だ特攻隊には悲惨な状況が待ち受けて要るが、問題は本隊でも有る農民や町民兵で官軍の偵察兵が正直に話しておれば必ずやって来るだろう、だが問題は一体何処から来るやもわからない。


「其れならば私も考えておりまして、私は農民さんもですが部隊の隊長がどの様に判断するかと言う事になりますが、普通ならば司令本部へ知らせるのは間違いは御座いません。」


「工藤さんも部隊の隊長がどの様に判断するのかと言う事になるのですねぇ~。」


 源三郎も工藤も農民兵や町民兵は別として、隊長がどの様な動きをするのか、其れが全くわからず、下手をすれば官軍が大軍を派遣するやも知れないと考えて要る。


「工藤さん、この問題は特攻隊を始末してからでも考えましょうかねぇ~。」


「ですが、やはり司令本部に知られますと。」


「まぁ~まぁ~、今更考えたところでどうにもなるものでは有りませんのでね。」


 源三郎は本当に特攻隊を始末してから動くつもりなのか、だが工藤は早く動かなければ後々大変な事になると思って要る。


「其れで工藤さんはどちらの方に向かわれるおつもりですか。」


「私は菊池に入るつもりで御座いますが。」


「左様ですか、では何卒宜しくお願い申し上げます。


 私は今から少し考える事が有りますので。」


 源三郎は一番気掛かりなのが野営地の隊長で、普通ならば数日の内に司令本部へ知らせるだろうが、果たして、源三郎は何を考えると言うのだ。


「お~あれが大岩か、では今夜は此処で泊まり、明日の朝寅の七つ半に出立する、みんな、明日は久し振りに味わえるぞ。」


「よ~し、明日は出し切るぞ。」


「お前、出すって、そんな元気有るのかよ~、昨日もあ~疲れたって言ってたぞ。」


「あれはなぁ~、お前らを騙す為なんだ。」


「ほ~成程ねぇ~。」


 と、早くも大岩付近に到着した特攻隊の兵士は明日の話に盛り上がっており、正か北の草地で待ち伏せされて要るとは全然知らない。


 その頃、菊池近くに達した特攻隊は間も無く二又付近に着く、だが菊池の中隊長は。


「よ~し、今朝の風は山からだ、全員今日は確実に殺せ、一人も逃がすなよ。」


 そして、中隊は林の中で特攻隊が近付くのを待ち伏せし何時でも撃つ事が出来る様に兵士は合図を待って要る。


 連合国軍兵士は誰にも言葉では無く、全て手の動きで自軍の兵士に伝え、後は中隊長の合図待ちで、兵士達は早く撃ち、そして、直ぐに逃げる、これが作戦で有る。


 特攻隊は何も知らず、二又付近を過ぎ、もう直ぐで全員が中隊の射程距離に入って行く。


「よ~し、そのままだ、もう少しだぞ、よ~し今だ全員一斉射撃開始。」


 と、中隊長の号令と共に連合国軍兵士の一斉射撃開始された。


「パン、パン、パン。」


「パン、パン、パン。」


 と、其れはまるで待っていたかの様で、官軍の、いや特攻隊と言う極悪非道な奴らに対しては特別で、今までならば殺す必要も無く、身体の足か腕に傷を付けるだけで良いと、だが今日だけは違い、工藤からは殺して良いとの許しで、いや全員殺せと命令が有ったのだと言うが、工藤は否定も肯定もせず、ニヤリとするだけで有る。


 連合国軍兵士の撃つ連発銃の弾丸は特攻隊の兵士には確実に命中させ、兵士は次々と倒れ、殆どが息絶えて要る。


 勿論、特攻隊も反撃を開始する。


「奴らを殺せ、全部打ち殺すんだ。」


 と、叫び。


「パン、パン、パン。」


 と、必死で応戦して要るが。


「よ~し、もう引き上げだぞ、さぁ~早く入るんだ。」


 連合国軍兵士は大急ぎで走り出した。


「何だ、一体何が有ったんだ、奴ら突然逃げ出したぞ、よ~し、奴ら殺せ、生かせるな。」


 と、兵士は大声で叫びながら連合国軍兵士を追い掛けながら撃つが、さすがに一発も命中しない。


「早く入れ、もう直ぐやって来るぞ。」


 特攻隊の兵士はまるで勝って要るかの様な顔付きで追い掛ける、だが特攻隊兵士にはこの世で最も恐ろしい悪魔が山から駆け下りて来るのも知らず。


「わぁ~狼だ、狼の群れが襲って来たぞ、みんな早く逃げろ、わぁ~。」


「ぎゃ~、助け。」


「助けてくれ、オレは。」


「ぎゃ~。」


 と、特攻隊の兵士が襲われて行く。


「ハァ~、ハァ~。」


「ハァ~、ハァ~。」


 と、息を切らす連合国軍兵士は辛くも隧道の中に逃げ込み助かった。


「小隊長は全員の確認と報告を。」


 小隊の兵士はゆっくりと隧道を出て整列し、小隊長が確認し、暫くして。


「中隊長、第一小隊全員無事です。」


「第二小隊、全員異常なしです。」


 その後、全員の確認作業が終わり。


「大佐殿、我が中隊の全員無事を確認しました。」


「そうですか、では皆さんに伝えて下さい、大変ご苦労様でした、と。」


「はい、承知致しました。」


 中隊長は全員無事の報告を済ませると、中隊は部隊へと戻って行く。


 だがその様な時でも隧道の外側では狼の大群が特攻隊の兵士を襲い、全滅し、狼の胃袋へと、その直ぐ近くには早くも猪が、更に烏の大群、今や遅しと餌を貰う為に待って要る様にも見える。


 同じ様な頃西の端に有る山賀でも悲惨な状況が起きようとして要る。


「今日は確実に仕留める様にして下さいね。」


 兵士達は声も出さず、頷くだけで有る。


「中隊長、山の熊笹が揺れてますよ。」


 中隊長は兵士が言う方を見ると、何時もと違う笹の動きに。


「あれは正しく特攻隊に間違いは無い、全員注意する様に。」


 その後、半時程で最初の兵士が現れたが。


「まだですよ、まだまだだ。」


 その後半時程で。


「よ~し、野郎ども、此処がオレ達に取っては最高の楽園だ、さぁ~行くぞ。」


 と、特攻隊の兵士は顔はにやけていたが、その直後。



「よ~し、今だ、一斉射撃開始、全員抹殺せよ、皆殺しだ。」


 と、中隊長は立ち上がり大声で号令すると。


「パン、パン、パン。」


「パン、パン、パン。」


 と、山賀の中隊が特攻隊の兵士に向かい、全て狙い撃ちの状態で有る。


 そして、四半時程した時で有る。


「よ~し、みんな馬に乗れ、大急ぎで早く乗って逃げろ、逃げるんだ早く。」


 中隊長は必死で叫び、中隊の兵士は次々と馬に乗りお城へと飛ばして行く。


 その直後。


「ウォ~、ウォ~。」


 と、狼の大群が兵士を襲い始めた。


「わぁ~狼だ、狼の大群が襲って来たぞ、早く逃げろ。」


 特攻隊の兵士はもう必死で逃げるが、牙を剥き出し襲って来る野獣から果たして逃げる事は出来るのだろうか。


「ぎゃ~、誰か助けてくれ~。」


「頼む、誰か、ぎゃ~。」

 

 と、狼の大群は特攻隊の兵士に次々と襲い掛かって行く、一体何頭の狼が来襲して要る。


 北の草地には特攻隊の兵士の死体に物凄い数の狼が群がり、肉を貪り食っており、その近くには菊池同様猪の大群が、そして、烏の大群が早く食い物をくれと言う顔して待って要る様にも見える。


 その少し前とでも言うのか、菊池の隧道を一人の男が出て行く、一体何処に向かう。


 工藤が菊池に来る少し前、源三郎は有る男に任務を与え、男は静かに頷き、翌早朝、誰にも告げる事無く野洲を立った。


 隊長殿、誰か分かりませんが近付いて来ます。」


「何、一体誰なんだ。」


 一体誰が野営地にやって来るんだ、そして、何の為にやって来る、其れが問題だ。


 男が野営地に来る一時程前、菊池と山賀に入って来た特攻隊の兵士全員が死亡、いや狼の餌食に、だが其れを野営地の兵士達は知らない。

 



            

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