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闇の帝国    作者: 大和 武
18/288

第 18 話     作戦会議なのか、それとも、単に雑談なのか。

 4日目の朝、ロシュエ将軍の執務室兼、会議室には、各大隊の隊長と、中隊長


が集まり出した。


 だが、司令官は、早くに着て、既に何やらを考えている様子で、ロシュエが入


り。


「全員。」


 「いや、いいんだよ、司令官、みんな、座ってくれ、じゃ~、作戦会議に入ろ


うかと言いたいんだが、実はよ~、オレは、全く、何も考えていないんだよ。」


 其れは、ロシュエの大嘘で、何時もならば、ロシュエが、先に考えを言うのだ


が、今回は、何故か、何も、考えていないと言った。


 「将軍、よろしいでしょうか。」


 やはり、先陣を切ったのはロレンツで有る。


 「何だよ~、ロレンツは、何か作戦を考えていたのかよ~。」


 「いいえ、ですが、私は、」その前に、各大隊の配置を提案致します。」


 「何だと、ロレンツ、また、オレの頭の中を見たのかよ~、え~。」


 「いいえ、私は、その様な事は致しません。」


 だが、ロレンツは、ニヤリとした。


 「分かったよ~、じゃ~、お前の提案から聴こうか。」


 「はい。」


 ロレンツは、先日、オーレン隊長に説明した内容を話すので有る。


 「以上ですが。」


 「お前って奴は、何時もオレの頭の中を読みやがって、だから、オレは、何も


言えないんだよ~。」


 ロシュエは、笑っているが、司令官が、考えていた内容と殆んど同じだった。


 「よし、分かった、ロレンツ、お前の大隊と、ホーガンの狼犬部隊は、一体、何処に配置になるんだ。」


 ロシュエは、分かっている、ロレンツの事だ、どんな事があっても、自分が、


一番危険な場所に行くと。


 「私ですか、私はですねぇ~、勿論、森に入りますよ。」


 「やはりか、ロレンツ、お前、正か。」


 「いいえ、私は、将軍の考えている様な事は絶対に考えてはおりませんか


ら。」


 「何が、考えておりませんだ、ロレンツ、絶対に許さんぞ、それだけは、どん


な事があってもだ、忘れるな。」


 司令官の考えたとおりだ、ロシュエも、ロレンツの性格は知っている。


 だが、どの様な作戦を使っても、ロレンツを死なせる事は出来ないと。


 「じゃ~、ロレンツの1番大隊は何をするんだよ~。」


 「将軍、その前に、狼犬部隊ですが、私は、今度の戦では、狼犬部隊が、勝敗


の鍵を握っていると思うのですが、如何でしょうか。」


 「うん、其れは、オレも考えたよ、狼が自由に動くのが最善だと思っているん


だ。」


 「あの~、よろしいでしょうか。」


 「何だよ、ホーガン、何か、文句でも有るのか。」


 「いいえ、それどころか、私は、ロレンツ隊長に感謝しているのです。」


 「え~、一体、何を感謝する必要が有るんだ、まだ、何も決まってないのによ


~。」


 「いいえ、そうではなく、私は、今回の戦の勝敗の鍵を握るのが、狼犬部隊だ


と言われましたので。」


 「なぁ~だ、そんな事か、じゃ~、ロレンツ隊長、聴かせてくれるか。」


 「はい、では。」


 ロレンツは、その後、狼犬部隊が、今回の作戦の鍵を握っていると、詳しく説


明すると。


 「おい、ロレンツ、お前、何時から考えてたんだよ~。」


 「はい、先日ですが。」


 「この野郎、大嘘だ、先日ってのは、司令官と、5番大隊、其れに、狼が一緒


に行った頃なんだろうよ。」


 「はい、やはり、分かりましたか、残念ですねぇ~。」


 ロレンツは、舌をペロリと出して、ニヤリとした。


 「なぁ~、司令官も、同じ事を考えてたんだろうよ~。」


 「閣下、誠に申し訳御座いませんが、そのとおりで御座います。」


 司令官も、口調とは反対に笑っている。


 「よ~し、分かったよ~、そこでだ、話を少し変えたいんだが、あの警備隊


は、一体、どうするつもりなんだ、え~、司令官さんよ~。」


 ロシュエは、司令官の顔を見て、分かった。


 「閣下、私は、リッキー隊長の下で、新しい中隊をと考えておりますが。」


 「ふ~ん、それでなのか、彼が、此処に居るのはよ~。」


 ロシュエは、警備隊長の顔をわざと睨む様にして見ると、警備隊長は、ロシュ


エが、恐ろしくなったのか下を向いてしまった。


 「だがよ~、ホーガンを使うための訓練が必要だと思うぜ。」


 「はい、勿論、承知致しておりますので、ホーガン隊長に任せようと思ってお


ります。」


 「えっ、狼にかよ~、おい、お前、死ぬ覚悟は出来ているのか。」


 ロシュエは、警備隊長を脅かした、彼以外の全員は分かっているので、笑いた


いところなのだが。


 「えっ、死を覚悟ですか。」


 「あ~、そうだよ、だってよ~、今まで、何人か、何十人かが、狼の訓練で死


んでるんだぜ。」


 ロシュエは、笑っている。


 「閣下、もう、そのくらいで。」


 「お~、分かったよ、心配するなって、冗談、冗談なんだからよ~、だがなぁ~、狼犬部隊の訓練は、本当に厳


しいぞ、全てが実戦訓練だから、怪我だけは覚悟するんだぜ。」


 「はっ、はい。」


 やはり、司令官の言ったとおりだ、将軍は反対はしないと。


 「じゃ~よ~、リッキー隊長、彼らを頼むぜ。」


 「はい、承知しました、なっ、言ったとおりになりましたでしょ、これが、


我々の将軍なんですよ。」


 「はい。」


 彼は、返事するだけだ。


 「じゃ~よ~、農場は、オーレンの2番大隊になるのか。」


 「はい、そのとおりで、先日も、オーレン隊長には、お願いをしましたの


で。」


 「え~、何が、お願いだよ、なぁ~、オーレン。」


 オーレンは、ニヤリとするだけだ。


 「ホーガン、お前は、最後になるんだろうよ~。」


 「はい、勿論です、私は、出来る限り敵を引き付けたいと思っておりますの


で。」


 「それじゃ~、敵軍から集中攻撃されるぞ。」


 「はい、勿論、承知しておりますが。」


 「ホーガン、敵軍の武器がどんな物かも分からないんだぜ、それじゃ~、殺し


て下さいって言うのと同じじゃないかよ~。」


 「私は、何も殺して下さいとは言ってはおりませんよ、ただ、同じ引き連れて


行くのであれば、危険は覚悟しております。」


 「じゃ~、鎧を着けろ、それも、鉄のなっ。」


 「えっ、鎧って、何故、鎧が必要なんですか、其れに、鉄の鎧を着ければ、動


きに、其れにですよ、今からじゃ~、鎧なんて作れないと思いますが。」


 ロシュエは、ニヤニヤとして。


 「ホーガン、残念だがなぁ~、それが全部出来ているんだよ~、だから、狼専


用なんだぜ。」


 出席した全員が驚いている、今の鍛冶屋に鉄の鎧を作る時間は無かったはずな


のに。


 「オレはよ~、随分前に頼んでたんだ、だがよ~、途中で、荷車の車輪が必要


だ、やれ、ホーガン矢が大量に必要だって言うからよ~、出来上がるのが遅れて


たんだ、だがよ~、鍛冶屋も分かってたんだ、必死で作ってくれたんだ、だが、


鉄の鎧は、狼の物だけしか作れなかったんだ、みんなには済まないと思っている


んだ。」


 「閣下、私は、閣下のお気持ちだけで十分で御座います。


 此処に出席した者も、兵士の全員が、閣下のお気持ちは分かっております、あ


りがとう、御座います。」


 司令官が礼を言うと、出席した全員が頭を下げた。


 「なぁ~、ホーガン、オレは、狼に死なれたら困るんだよ~、さっきも、ロレ


ンツが言った様に、今回は狼が鍵を握ってるんだ、そのためにも、全員が鎧を着


けて行んだ、これは、オレの命令だ、分かったのか。」


 「はい、承知致しました。」


 「よ~し、それでいいんだ、で、話しは戻るが、狼が引き連れて行くのは分か


ったよ~、それで、1番大隊だが、どんな配置にするんだ。」


 「はい、私は、5番農地付近から、横一列で、大木、1本に、一人を配置する


方法を考えております。」


 「大木って、切り倒した大木か。」


 「いいえ、それでは、中に入り過ぎますので。」


 「だがよ~、狼が引き連れて来るのは歩兵では無いと思うんだが。」


 「多分、騎馬だと思いますが、歩兵では狼犬部隊の追撃は出来ませんので。」


 「じゃ~、目の前に来るじゃないか、大木以外に何も身体を隠す物が無いって


事に。」


 「はい、その様になりますねぇ~。」


 「そんな方法じゃ~、ロレンツ、下手をすりゃ~、全滅するんだぞ。」


 「はい、ですが。」


 「おい、ロレンツ、お前は、最初の作戦を使うつもりなんだろう、其れだった


らよ~、木こりさんに頼んでだ、身体を隠すのと、騎馬が混乱する様に大木を切


り倒せ。」


 ロシュエも、ウエスの城主達が襲って来た時の事を思い出した。


 あの時、敵軍は、狼の恐怖も手伝い大混乱を引き起こしたので有る。


 「ロレンツ隊長、私も、閣下の申される事に賛成致しますよ、大木の倒し方に


よっては、馬は通れない様に出来るのでは無いでしょうか。」


 「うん、そうだよ、騎馬兵さえ全滅すりゃ~、残りは歩兵だけなんだぜ。」


 ロレンツも考えている、司令官の言うとおりだ、大木の立ち木だけでは、動く


事も出来ず、騎馬の動きに惑わされ大隊の兵士は無残な戦死となる。


 「ロレンツ、其れよりも、少しだけでも中に入れないのか、奴らは、ウエスか


ら聞いてはずだぜ、森の中には入るなって、狼の大群がいるってよ~。」


 「ロレンツ隊長、この森には今も狼はおりますが、其れは、奥に行かなければ


大丈夫だと思いますよ、だって、狼犬部隊が相当殺したんですから。」


 「分かりました、じゃ~、2ヒロくらい、後ろに下がり、大木は、簡単に乗り


越えが出来ない様に、木こりさんに頼みますから。」


 「うん、それでいいんだ、敵は、ウエスの情報を信じて奥に入っては来ない、


だが、1番大隊は、敵が簡単に踏み込む事の出来ない距離からホーガン矢を放


つ、其れにだよ、城壁の内側には、3番、4番大隊が、小さな穴からホーガン矢


を放つんだ、其れが成功すりゃよ~、騎馬兵も相当減ると思うんだがなぁ~。」


 「閣下、ですが、私達が聞いた話では、正規軍が2万ですから。」


 「うん、其れなんだ、狼が引き連れて来るとしてもだ、まぁ~、多く見ても2


千ってところだろうからなぁ~。」


 「ですが、2千の正規軍が減ると、残りは2万8千ですよ。」


 「だがよ~、まだ、2万8千も残ってるんだぜ。」


 残りが、2万8千の言葉で、その後、暫くの間沈黙が続くので有る。

 

 その2千の兵士も全部が死亡したのでは無く、まだ、戦闘能力が残っている者も多く残っていると考えなければならない。


 「閣下、この戦ですが、敵の騎馬兵はどの様な方法を取ってでも全滅させなけ


れば。」


 「うん、そうなんだ、オレ達は、敵に、一体、どれだけの騎馬兵が居るのかも


知らないんだ、だが、奴らは、ウエスから詳しい話を聞いていると、オレは思っ


てるんだ。」


 「閣下、では、早急に偵察を出すのは如何でしょうか。」


 「だがよ~、今度の偵察は、今まで以上に厳しい事になるんだぜ。」


 「はい、ですが、騎馬の実態だけでも分かれば、我々の作戦も立てやすいので


は、御座いませんか。」


 「そうだなぁ~、だが、今、狼を出すのは。」


 「将軍、私の、第1小隊が適任だと思いますが。」


 やはり、来たか、ロレンツの第1小隊、彼らは、何度と無く偵察を経験し、何


が重要なのかもわかって偵察に向かうので、調べ方も独特なのだ、別に、狼犬部


隊で出来ないのではなく、ロレンツは、第1小隊ならば、詳しく、それに正確な


のだ、今までも、何度か、第1小隊が調べた結果、あのウエスの軍を全滅に近い


状態にしたのも、第1小隊が集めた情報によるもので有る。


 「よ~し、分かった、直ぐに第1小隊を。」


 「はい、直ぐに。」


 ロレンツは、表に待たせていた、第1小隊に指示し、第1小隊は、狼犬部隊に


敵軍が居るであろうと思われる場所を聞き、直ぐに向かったので有る。


 「ロレンツ隊長、何故、第1小隊なんですか、我々でも。」


 「ホーガン隊長、第1小隊はねぇ~、偵察に向かう時には、我々が着ている軍


服は着ないのです。」


 「えっ、軍服は着ないって、じゃ~、何を着て行くんですか。」


 ロレンツも、最初は知らなかった、だが、第1小隊が偵察から戻ってくると、


軍服ではなく、農民の作業服を着ており、その服も森の中に入ると、見分けが付


かないほど、森の色に合わせている。


 「でも、農民の服装では直ぐに分かりますよ。」


 「まぁ~、其れがねぇ~、彼らは、服を染めているので、だから、遠くから見


ても見分けが付かないんですよ。」


 「えっ、本当なのか。」


 驚いたのは、ロシュエだ。


 「ええ、ですから、あの時も、奴らの目前まで行っても知られる事は無かった


んです。」


 「だがよ~、馬で近くまで行くんだろう。」


 「まぁ~、私には分かりませんがね、小隊の中に特殊な能力を持っている兵士


が居るそうで、その兵士が騎馬がいると分かった時点で、馬を降り、後は歩いて


近づくそうですが、まぁ~、何れにしても、彼らが戻ってくればはっきりとした


事が分かると思いますので。」


 「うん、分かった、じゃ~、第1小隊が戻るのを待つ、だがよ~、其れまで


は、一応の作戦は立てて置く必要が有るんだ。」


 「将軍、私は、木こりさんと打ち合わせをします。」


 「うん、其れは、お前に任せるよ。」


 「閣下、私からの提案なのですが。」


 「お~、いいぜ、まぁ~、司令官の事だが、一体、何を考えているんだ。」


 「はい、これは、多分、ロレンツ隊長も考えられていると思いますが、4番


と、5番の内側に、農場の馬車を全て集めて置きます。」


 司令官の話で、ロレンツも、ニヤリとし、頷くので有る。


 「え~、馬車を全部か。」


 「はい、敵の騎馬が入ったところで、馬車を出し、逃げ場の無い状態に封鎖す


るのです。」


 「ほ~、封鎖をねぇ~、だがよ~、馬車だったら、馬は飛び越えるぜ。」


 「はい、其れは、普通の並べ方では、簡単に飛び越えますが、馬車を横にせ


ず、縦に並べると、馬でも簡単には飛び越える事は出来ませんから、其れも、ジ


グザグに並べるので、馬はまず進みはしません。」


 「よ~し、その方法だが、何度か試してくれ、それで、これで大丈夫だと分か


れば、その方法で封鎖するんだ。」


 「はい、閣下。


 「将軍、私も、よろしいでしょうか。」


 「お~、フォルト隊長、いいぜ。」


 「はい、私は、歩兵ですが、確かに、相手が歩兵だと、簡単に行けそうに思え


ますが、仮にですが、騎馬兵が、5千だとしても、残り、2万5千が歩兵です。 


 奴らの本隊は歩兵だと、私は考えたのですが、2万5千の歩兵を全滅に持って


行くには、相当苦労すると思うのですが。」


 「そうだなぁ~、2万5千の歩兵部隊か。」


 「はい、将軍も言われましたが、我々は、奴らが、どんな武器を持っているの


か知りません。


 先程、ロレンツ隊長の指示で、第1小隊が偵察に向かったのですが、私は、歩


兵に対し、何か、有効な方法が無いか、それを考えたのです。」


 「ほ~、面白そうじゃないか、で、一体、どんな方法なんだ。」


 「はい、先程、ロレンツ隊長は、木こりさんにお願いして、大木を切り倒すと


言われましたが、私は、この大木を利用すれば、敵軍には大きなダメージを与え


ると思いましたのです。」


 「へ~、大きなダメージか、で、どんなダメージなんだ。」


 「はい、私が、考えた方法ですが、道の方向に、まぁ~、城壁に向かって大木


を倒すんです。」


 「城壁に向かってかよ~、じゃ~、歩兵は、大木に押し潰される者も出ると言


うのかよ~。」


 「はい、以前ですが、1番農地に有る大木の切り出し作業中に、ウエスの部


下、50人が、大木の下敷きになりましたので、私は、歩兵の全員にホーガン矢


を放つ必要も無くなり、其れよりも、次々と倒れる大木の下敷きになり、その無


残な姿を見れば、歩兵の戦闘意欲も半滅すると思いますが。」


 「そうか、仮に、大木から逃げられても、城壁の内側からはホーガンで狙い討


ちが出来ると言う事なのか。」


 「はい、私は、その様に思いますが。」


 「フランド隊長、その大木が倒れ、ウエスの部下が下敷きになった時だがよ


~、どんな風だったんだ。」


 「はい、あの時、私も、一体、何が起きたのかも分からなかったのですが、他の者に聞くと、其れは、もう、今まで


に無かった恐怖だったと聞きました。


 大木の下敷きになった者達の姿ですが、何とも説明にしようが無いとしか言え


ないほどに無残な死に方でした。


 今、フォルト隊長の提案ですが、敵軍にすれば、正か、森の中から、其れも、


大木が次々と倒れてくると、我々が考える以上の大きなダメージになる事は間違


いは無いと、私は、思います。」


 「まぁ~なぁ~、オレも想像しているんだが、考えただけでも恐ろしい光景だ


ぜ。」


 「将軍、それにですが、敵軍の歩兵の進み具合も、一気に落ちると思いますね


ぇ~、大木を乗り越えるか、城壁に向かって隙間を通るか、まぁ~、何れにして


も進み具合は一段と落ちるのは間違いは有りません。」


 「うん、そりゃ~、そうだろう、だがよ~、大木をどんな方法で倒すんだよ


~。」


 「はい、大木の上部ですねぇ~、馬に乗っても手の届かないところにロープを


打ち付け、城壁の中に入れ、其れを引くと言うのは。」


 「おい、おい、そんな簡単に倒れるのか。」


 「はい、大木の切り方で、人間、一人の力で十分倒せる事は出来ますが。」


 「おい、其れは、本当なのか。」


 「将軍、あの時は、誰も、大木には触れてはいないと聞いておりますので。」


 「よ~し、その方法も検討しようか、まぁ~、木こりさんと、よ~く相談する


事だなぁ~。」


 今までの模様を聞いている警備隊長は、呆れているのか、それとも、呆れ果て


て口も利けないのか、だが、これが、本当の作戦会議なのかと疑問に思い、それ


よりも、余りにも簡単に決めているのが、不思議でならなかった。


 「お~い、其処の新米の中隊長さんよ~、何か言う事でも有るのかよ~、有る


んだったら言ってもいいよ。」


 突然、ロシュエの声掛けに、彼は驚き。


 「はっ、はい、私は、本当の作戦会議を見たのが初めてなので、今は、驚くば


かりで、作戦って、こんな簡単に決まるものなのかと思ったんだす。」


 「ほ~、成るほどねぇ~、いや、本当の作戦会議ってのは、こんなもんじゃな


いんだよ、もっと、慎重に、かつ、真剣に検討するんだが、オレは、全てが、現


場主義なんだよ~。」


 「えっ、全てが現場主義と申されますと、現場の意見を大事にされると申され


るのでしょうか。」


 「お~、そうだよ、だって、現場の人間が、今、一番、必要な物、一番先に何


をするべきか、今、何が、重要なのか、その全てを知ってるのが、現場の人間な


んだよ、オレなんか、現場には入った事が無いんでよ~、本当の現場が、今、ど


うなってるのか知らないんだよ。」


 「ですが、将軍は、何時も現場に行かれていると聞きましたが。」


 「お前って、本当にバカな奴だなぁ~、オレが、行ってだよ、少しの時間で、


一体、何が分かると思ってるんだ、確かによ~、オレは、何処の現場にでも行く


ぜ、だがよ~、本当の現場ってのはだ、その現場に、何日も、いや、数十日間も


居れば分かるが、オレが、そんな事をして見ろよ、現場の責任者に怒られるんだ


ぜ、将軍は邪魔だってよ~、その意味が分かるのか。」


 「はい。」


 彼は、本当に分かっているのだろうか、と、ロシュエは思うのだが、多分、何


も理解は出来ていないと思った。


 「今日の、作戦会議だって同じなんだ、オレの頭で考えるよりもだ、各隊長


や、中隊長達が考える事の方が大事なんだよ、其れはなっ、オレが考え、発言す


るとだ、誰も、本気では相手にしないって事だ、其れは、悪い意味でだよ、だが


よ~、さっきから、各隊長は思い付きで発言してるんじゃないんだ、何日も、何


日も、真剣に考えてだよ、そして、今、話をしているんだぜ、其れだけ、此処の


隊長達も、中隊長達も、日頃から真剣に話し合ってるって事なんだ。」


 彼は、少しでも理解出来たのだろうか。


 「はい、私も、これからは、何事に置いても真剣に考えて行きます。」


 「なぁ~、新米さんよ~、其れが、此処の方式なんだ、分かるか。」


 彼は、頷くだけだが、少しづつ分かり始めた。


 「さっきも、第1小隊の話が出ただろう、彼らだって、最初から、全てが成功


してた訳じゃ無いんだ、何度も、何度も失敗を繰り返し、失敗した原因を部下と


言うよりも、仲間達と、他に、何かよい方法は無いかって話し合ってるんだぜ、


オレが、最初に言った言葉を覚えているか、ロレンツ、お前は、オレの頭に中を


読んでるって、其れはだ、オレは、ロレンツを、子供の頃から知ってるんだ。


 オレは、何時も、ロレンツをいじめていたんだ、オレは、司令官の息子だから


言う事を聞けって、だがよ~、このロレンツって奴は、一度も、うんと言った事


が無いんだ。」


 「えっ、では、将軍と、ロレンツ隊長は、幼馴染なのですか。」


 「お~、そうだよ、ロレンツって奴は、何とかして、オレを負かそうって何時


も考え、オレが、何を考えているのかを考えているんだ、だから、オレは、ロレ


ンツの考えが分かるし、ロレンツは、オレの考えが分かる様になったんだ。」


 「では、皆さんは、何時も、何かを考えておられるのですか。」


 司令官をはじめ、全員が頷き。


 「なぁ~、新米さんよ~、オレの仲間はよ~、全員が最高に優秀なんだ、だか


らよ~、オレは隊長だから、オレの言う事が正しいんだって、誰も、言わないん


だ、末端の兵士も、オレに対し平気で反論するよ、其れはだ、みんなが、自分の


考えをしっかりと持っているからなんだ、だからよ~、此処じゃ~、誰が、隊長


になったって不思議でも無いって話なんだ、其れによ~、現場に出ると、考える


時間が無いんだ、オレは、みんなが現場で必死になってる時によ~、考える事が


出来る、ただ、それだけの事なんだ。」


 「はい、私も、これからは、部下、いや、仲間と話し合いをする様に、それ


に、皆さんともですが。」


 「うん、うん、それで、いいんだ、それから、まぁ~、何度も失敗する事で、


次に進めるんだからよ~。」

 

 「はい、将軍、ありがとう、御座います。」


 「じゃ~、もう一度確認するぞ、ロレンツと、フォルト隊長は、木こりさん


と、よ~く相談してくれよ、新米さんよ~、狼犬部隊から、ホーガンの使い方を


教えて貰え、但しだ、今日から、10日間で全て覚えるんだ。」


「えっ、10日間でですか。」


 彼は、出来ないと思ったのが、ロシュエの怒りに。


 「何だと、そんなもの、本気になりゃ~、簡単だ、直ぐ出来る、ホーガン、本


気でやるんだ、一人や、二人死んだところで、オレは、何とも思わないからよ


~。」


 「本当にですか。」


 「おい、新米、お前達が本気じゃなかったら、誰かが死ぬって事だ、其れが嫌


だったら、狼を殺せ、其れも出来ないと言うんだったら、オレが、お前達を殺し


てやる、今度は、冗談じゃ無いぜ、オレが、本気だって、此処に居る全員が分か


ってるんだ、だが、オレは簡単には殺さないぜ、苦しんで、苦しんで、死ぬ事に


なるぞ、おい、新米、分かったのか。」


 「はい。」


 彼の顔は恐怖で引き攣っている。


 「ホーガン、10日間だけだ、その後は、オレが決断する。」


 「はい、承知しました。」


 ホーガンも、真剣な顔付きで有る。


 「それで、残りの3大隊に付いては、自分達の考えで準備を進めてくれ、じゃ


~、今日は、これで終わる、以上だ、解散する。


 ホーガン、リッキー、司令官は、少し話しが有る、残ってくれ、終わり。」


 司令官は、ロシュエの話す内容は分かった、だが、他の二人は、まだ、分から


なかった。


 「まぁ~、3人とも座ってくれよ。」


 「閣下、彼は、如何でしょうか。」


 「うん、それで、残って貰ったんだ、ホーガン、余り、厳しくするなよ。」


 「はい、其れは。」


 「オレの言った事を本気にするなって事だ、だってよ~、あの新米、オレの話


を聞いて、身体が震えていたんだ、だがよ~、その前に、警備隊と言ってもだ、


其れは名目上で、戦争を一度も経験した事が無い子供にだ、お前は最前戦に行け


って言えるかよ~。」


 「将軍、ですが、戦になれば何としてでも使える様にならなければ。」


 「リッキー隊長、其れは、後の話だよ、ホーガンは、あの新米さん達に、ホー


ガンと言う武器がどんなに威力の有る武器なのかをしっかりと教え込んでれ。」


 「はい、其れならば、2~3日も有れば。」


 「いや、違うんだ、オレの言って事はだよ、ホーガンと言う武器がどれほど強


力で、どれほど、恐ろしい武器なのか、其れを、分からせるためには、実戦訓練


をやるんだ、わかったのか、オレの言ってる意味が。」


 「はい、今度は分かりました、では、早々に始めるとしますか。」


 「うん、それでだよ、狼犬部隊から、選りすぐりを、特に、あらぽっい奴をだ


ぜ。」


 ホーガンは、ロシュエの言う意味が分かった、ロシュエは、別に、元警備隊、


5百人を期待しているのでは無い。


 其れよりも、使い方を間違えれば、味方に対し、ホーガン矢を放つ事も有り得


ると考えたので有る。


 「それから、リッキー隊長、狼犬部隊の訓練は直ぐ終わるが、その後は、君の


ところに預けるから、訓練を続けて欲しいんだ。」


 「はい、私も、続けるつもりでしたので、ですが、この短期間で、実戦に入れ


るでしょうか。」


 「其れは、オレにも分からないんだ、だがよ~、若しもだ、無理だと思った時


の事を考える必要が有るんだ。」


 「閣下、彼らの配置は大変難しいですねぇ~。」


 「うん、オレも、多分だが無理だと思うんだ、城に配置すれば、敵の的になる


だけだ、其れと言って、城壁に配置すると、森に入っている、ロレンツ達に向か


って矢が飛ぶ可能性も有るんだ。」


 「将軍、今回は、私達も覚悟を決めておりますので、多少の犠牲は仕方無いと


思いますが。」


 リッキーは、彼らを、城に残す方が得策だと考えている。


 今までの様には行かないと考えれば、彼らの中からも、犠牲を払う事も有り得


る、其れが、戦を言うもので有る。


 「よし、分かった、リッキーに任せるぜ、其れと、話が変わるんだが、司令官


が連れて来た、元城主達なんだが。」


 「閣下、私も、実は、そちらの方が問題が大きいと思っております。


 あの城主も、今は、城主では無いと、申しておりますが、でも、私は、何かの


形で、城に残す方法は無いかと考えているのですが。」

 

 司令官も、考えていた、本人が幾ら、今は、城主では無いと言ってもプライド


だけは残っている。


 「司令官、城主が、今は、城主では無いと言ってもだ、プライドだけは残って


るんだ、オレは、其れが、問題だと思ってるんだ、プライドだけでは、この農場


の開墾は出来ないんだぜ。」


 「はい、私も、其れは、十分に考えているのですが、城主もですが、私は、あ


の姫ですねぇ~、一番問題になるのは、今までは、何の苦労も無く生活出来た、


其れが、有る日、突然、別の世界に入れられ、その生活する場所が農場だとなれ


ば、この先、何度と無く、大きな問題を引き起こすのでは無いかと考えておりま


す。」


 「う~ん、やはり、そうか、まぁ~、口では簡単に言えるが、余りにも、生活


環境が大きく変わり、心の中が付いて行けないと思うんだ、それでだが、オレの


考えた方法なんだが、まぁ~、いいか、この話しは作戦とは全く関係が無いから


よ~、それよりもだ、司令官、第1小隊が、どんな情報を持って帰るか、オレも


楽しみなんだが、奴らを、一体、どんな方法で、此処に連れ込むかだ、オレはよ


~、ロレンツの考えた作戦がだよ、悪い意味では無謀だと思っているんだ、だが


なぁ~、オレでも、同じ方法を考えると思うんだ。」


 「閣下、私も、同じ様な方法になるだろうと思っておりました。


 ロレンツ隊長は、閣下の頭を読まれておられます。


 閣下ならば、この様な無謀だと思える作戦も考えておられるだろうと。」


 「司令官、やはり、城で、お話したとおりになりましたねぇ~。」


 「リッキー隊長、何だよ~、じゃ~、ロレンツの考えた方法と言うのか、作戦は


知ってたのかよ~。」


 「いいえ、ただ、多分、ロレンツ隊長が切り出すだろうと、司令官も言われて


おりましたので。」


 「な~んだ、じゃ~、オレだけか、知らなかったのは。」

 

 「閣下、ロレンツ隊長の事だから、死に場所を求めて、一番で、最前戦に行く


だろうとは予想はされておられてのでは。」


 「司令官は、其処まで読んでたのか。」


 「私は、別に読んではおりませんが、ロレンツ隊長は、早く戦死する事を望ん


でいると、ですが、閣下の事ですから、絶対に許さんと、申されるでしょうと、


私は、思っておりましたが、やはり、私の考えは合っておりましたよ。」


 「じゃ~よ~、ホーガンも、リッキーも分かってたのか。」


 二人は頷き。


 「将軍、司令官も、同じ様な配置を予想されておられましたよ。」


 「う~ん、じゃ~、ロレンツの言った配置が妥当だと言う事なのか。」


  「はい、私も、ロレンツ隊長の提案に賛成致します。」


 「よ~し、じゃ~、其れに決定するか、だがよ~、リッキー隊長は大変だ


ぞ。」


 「はい、其れは、承知しております、奴らは、城の攻撃にどれだけの重要性を


置いているのか、其れが、分かれば、私も、別の方法も考えるのですが。」


 「閣下、如何でしょうか、4番大隊も城に配置しては。」


 ロシュエも、同じ様に考えてはいたのだが、その方法で行くと、4番、5番農


地には、全く兵士が居なくなる。


 だが、此処で、一人でも多く殺す事が出来れば良いのだ。


 「う~ん、オレも、其れは、考えたんだ、城で、どれだけの時間が稼げるの


か、一人でも多く殺せればなんだが、オレはだよ、奴らの騎馬兵を集中的に攻撃


が出来ないかと考えているんだ。」


 一方、会議を終えた、ロレンツと、フォルトの二人は、木こりの人達に相談す


るので有る。


 「木こりさん。」


 「はい、隊長様が、オレ達に何か。」


 「実はねぇ~、相談が有りましてね、聞いていただきたいのですが、よろしい


でしょうか。」


 「はい、オレ達に出来る事であれば、何でもさせて貰いますよ、だって、隊長


様は、オレ達の命の恩人ですので。」


 木こり達は、フォルトを知っている、1番農場を造るために、大木の切り出し


作業で、ウエス達から、引き離してくれたと、其れを、命の恩人だと思ってい


る。


 「私は、別に命の恩人では有りませんよ、我々の農場では、農民さんが、一番


大事だと、何時も、将軍が言われておりますのでね、其れよりも、この方は、将


軍の右腕だと言っても過言ではないお方で、ロレンツ隊長と、申されます。


 ロレンツは、ニコニコとしながら、数人の木こりと握手し。


 「まぁ~、少し、座って話しませんか。」


 ロレンツと、フォルトも座り、木こり達も座った。


 「ところで、お願いと言うのではですねぇ~、今、皆さんが居られるこの場所


から、お城まで続く森の大木を切り倒したいのですが。」


 「えっ、此処の大木をですか。」


 ロレンツと、フォルトは、今度の戦では、道沿いの大木を切り倒し敵軍を全滅


させたいと言うので有る。


 「隊長様、オレ達は、木こりですから、隊長様が考えたところに倒す事は簡単ですが。」


 「では、私からのお願いですが。」


 ロレンツは、森の中から攻撃するので、騎馬兵と、歩兵が簡単に進めない様に


したいと、説明する。


 「では、隊長様の希望は、この場所からでなくても良いと思うのですが、オレ


達は、お城から、半分までもはいらないと思うんですが。」 


 「えっ、では、一体、どの付近まで切り倒せばよいと考えられるのですか。」


 「あの~、隊長様、大変、失礼な事を言って怒られるかも知れませんが、よろ


しいでしょうか。」


 木こり達は、ロレンツを知らないので、怒られる思っている。


 「いいえ、私は、何も知りませんので、教えて頂きたいのですよ、実はね、皆


さんが、此処に来られる以前にも同じ様な方法を取ったんですが、あの時とは、


今回は、敵軍の兵士の人数が全く違うので、今回は、果たして出来るのか、其れ


に、私も、将軍に言った手前、なんとしても、全滅させたいと思っています。


 私は、皆さんから、何を言われても、怒るなどとは決してしませんので、心配


せずに、お話下さい。」


 ロレンツは、ニッコリと微笑むので有る。


 「はい、隊長様、オレ達は、前の事は知りませんが、その前にお聞きしたいん


ですが、この森の中にも、狼の大群が居ると聞きましたが、本当なんですか。」


 「狼の大群ですか、まぁ~、いるのは、いますが、この付近にはおりません


よ、我々が、殆んど退治し、農場の人達と、我々のお腹の中に入っています。」


 ロレンツは、ニコッとし、木こりは、安心したのか。


 「そうでしたか、ありがとう、御座います。


 隊長様、オレ達は、大木を選んで、倒す事を考えますが。」


 「えっ、大木を選ぶとは、何故、大木を選ぶんですか。」


 「はい、隊長様、此処からですが、前の大木を見て欲しいんです。」


 二人は、目前の大木を見るが、木こりの言う選ぶと言う意味が分からない。


 「隊長様、此処から見ても、分かると思いますが、同じ様な大木でも、枝の多


い大木と、枝の少ない大木が有るのは分かっていただけると思いますが。」


 「あ~、成るほどねぇ~、それであれば、私でも、分かりますよ。」


 ロレンツは、指を指すので有る。


 「隊長様の言われた騎馬兵と、歩兵の進み方を遅くすれば良いのですね。」


 「はい、そのとおりですよ、其れと、我々が隠れるところですねぇ~。」


 「隊長様、この森は、今でも、大木が多いんですが、何処まで、中に入られる


のですか。」


 「そうですねぇ~、じゃ~、一度、行きましょうか。」


 ロレンツと、フォルト、其れに、数人の木こりが、森の中に入り、どの様にす


れば防ぐ事が出来るのか聞くと。


 「隊長様、この森は、大変、深いので、オレ達の様な者でも、歩くのが困難で


すねぇ~。」


 「そうですねぇ~、私も、今までは、全く、考えていませんでしたが、う~


ん、これは、簡単に進む事は出来ないですねぇ~。」


 「隊長様としては、敵軍をこの中に引き込む方が良いのか、それとも、入らせ


ない方が良いのか、どちらなんでしょうか、其れによっては、切り倒す方法も変


わってきますので。」


 「う~ん。」


 ロレンツは、考え始め。


 「う~ん。」


 と、溜め息を付き。


 「私としては、引き入れたいのですが、多く兵士を引き込む事で、敵軍に迷い


を生じさせたいのですがねぇ~。」


 「隊長、でも、余り、多く引き込むと、大隊も作戦の変更が。」


 フォルトも、考えるので有る。


 「隊長様、オレ達だって、奴らを全滅させたいんです。


 オレ達は、戦は分かりませんが、仮にですよ、お城から入って来るとすれば、


森に入り口を作るのはどうでしょうか。」


 「森の入り口ですか、初めて聞きましたねぇ~。」


 「はい、お城近くに、森の中に誘い込む入り口を作るんです。」


 「森に誘い込むのですが、で、一体、どんな方法で。」


 「はい、隊長様達が、森に隠れていると思わせるんです。」


 この後、彼ら、木こりは、ロレンツに対し、森に入り口を作り、敵軍が侵入し


ても、有るところから先は行き止まりにすると、敵軍は、元に戻ろうと思うが、


その時、既に遅く、森に入った敵軍は半滅し、森と、城壁の中央を進む事になる


と言うので有る。


 「ですがねぇ~、森に侵入した敵に対し、我々の隠れるところですが。」


 「隊長様、我々は、どんな大木を切り倒せばいいのか分かってますよ、兵隊さ


んが隠れ、敵軍からは簡単に見えない方法が有るんですよ。」


 「えっ、簡単に見つからない方法が有るのですか。」


 「ええ、隊長様も見ていただいたと思いますが、全部、大木でなかっても良い


と思うんです。


  枝の多い大木を切り倒せば、その先が見えないんですよ。」


 「そうですか、私も、少しですが、分かりましたよ、大木に沿って進むと、行


き止まりの様に見せて、敵に攻撃を加えると言われるのですね。」


 「はい、そのとおりなんですよ、でも、余り、奥に入ると、後ろからの敵軍


が戻るか分かりませんので。」


 「よ~く、分かりましたよ、私は、最初の攻撃で、5百前後を倒せば上出来だ


と思っておりますので。」


 「じゃ~、隊長様、オレ達に任せていただけるんですか。」


 「はい、勿論ですよ、貴方方も仲間ですからね、お任せしますよ、私達も楽し


みにしておりますので。」


 ロレンツは、木こりに任せる方が良いと判断したので有る。


 「ロレンツ隊長、でも、一体、どんな仕掛けになるのか、楽しみですねぇ


~。」


 「そうなんですよ、我々は、森の事は分かりませんので、木こりさん達に任せ


るのが、作戦としては楽になると思いましたので、で、フォルト隊長が、提案さ


れた大木を倒し、敵軍の出口を封鎖すると言われた話ですが。」


 「はい、木こりさん、実はねぇ~、私も、将軍に提案しましてね、後は、ロレ


ンツ隊長と同じで、木こりさん達と、よ~く、相談する様にと。」


 「はい、隊長様は、どんな封鎖を希望されておられるんですか。」


 「私はね。」


 その後、フォルトも、木こり達に説明した。


 「じゃ~、敵軍の全員が入ってからなんですか。」


 「う~ん、そうですねぇ~、私も、本当は、簡単に考えていたのですが、先程


から、ロレンツ隊長との話を聞いていますと、私が、簡単に考えていただけで、


大変な作業になると、今は、思っているのですよ。」


 「隊長様の希望では、出口を完全に封鎖したいと言われましたが、森と、前の


城壁に届く様な大木は無いと思うのです。」


 「う~ん、確かに、そのとおりですねぇ~、私が見ても相当短い様に思えるん


ですが。」

 

 「隊長様、どの大木を切り倒しても、半分くらいにも届かないと思います


よ。」


 「じゃ~、何か、方法は有りますか。」


 「はい、勿論、有りますよ。」


 「えっ、じゃ~、どんな方法が有るのか、教えていただけますか。」


 「はい、其れは、森の大木を切り出し、城壁の前に出して置きます。」


 「ですが、其れは、大変じゃないのですか。」


 やはり、専門家だ、兵士の考えでは、其処までの事は考えれない。


 彼ら、木こり達は、城壁の前に封鎖が行いやすくするため、事前に大木を切り


出し、城壁から、森に向けて大木を置くと言うので有る。


 「隊長様、オレ達だって、何かの役に立てれば、それでいいんですよ。」


 「分かりましたよ、じゃ~、お任せしますよ、ですが、森の大木は。」


 「はい、其れも、別に難しい事は有りませんよ、最初に、切り倒す大木に切り


口を入れておきますので。」


 「えっ、最初に切り口を入れると、何時、倒れるか分からないのでは。」


 「隊長様、オレ達も行きますので。」


 「行くって、何処にですか、正か、戦の最中にですか。」


 木こり達は、ニコットして。


 「さっきの隊長様も言われたでしょう、オレ達も仲間だって、仲間と言う事


は、オレ達も行って良いと思うんでが。」


 「いや~、其れは、大変な戦になるので、其れに危険ですから。」


 「でも、じゃ~、隊長様、最後、倒す時、一体、誰が、切り口に斧を入れるん


ですか、兵隊さんが、オレ達のために命を掛けて戦ってるんですよ、兵隊さんを


助けるのは、オレ達、木こりだけなんですよ。」


 「ですが、3万人の敵軍から矢が放たれ、何時、命を落とすか分かりません


よ。」


 「隊長様、オレ達の住んでた村じゃ~、奴らは、女や子供を平気な顔をして殺


したんですよ、でもね、オレ達は、何も出来なかったんです。


 オレ達も戦争してるんですよ、オレ達の武器は、この斧で、大木を切り倒すん


です。


 隊長様、オレ達にもさせて下さい、お願いします。」


 付近の木こり達、全員が、意思表示をしたのである。


 「分かっておりますが。」


 「隊長様、この仕事は、オレ達、木こりにか出来ないんですよ。」


 「う~ん。」


 フォルトも、ロレンツも、今回だけは、簡単に答えを出す事は出来ないと思っ


た。


 「隊長様、兵隊さんだけが、死んでもいいと思ってるんですか。」


 「私達は、兵隊ですから戦になれば、当然、戦死は覚悟の上ですよ、ですが、


貴方方は別ですよ。」


 「隊長様、何が、別なんですか、オレ達のかあちゃんや子供達は、戦争で死ん


だんじゃ無いんです。


 奴らに、殺されたんですよ、でも、オレ達は戦争で死んで行けるんですよ、オ


レは、奴らを、5人でも、10人でも、殺して死んでもいいと思ってるんです


よ、殺されたんじゃ無い、戦争で死んだ、戦死だって、天国のかあちゃんや、子


供達に自慢してやるんですよ。」


 「ですが、将軍は、許可されませんよ。」


 「隊長様、将軍様も、オレ達の気持ちは分かって貰えると思うんですよ、隊長


様、オレ達にしか出来ないんですから、オレ達に任せて下さいよ、お願いしま


す。」


 この熱意は止める事は出来ないと、彼が、言う事は、誰でも理解出来る、むざ


むざと殺されるのでは無く、其れは、戦死と言う名誉のためなのか、いや、違う


だろう、何れ、天国に行った時には、自分達が死んだ事で、全員が助かったんだ


と、天国の妻や子供、仲間達にも自慢が出来るのだ。


 「よ~く、分かりました、私からも、将軍にお願いして見ますが。」


 フォルトも、木こり達の熱い気持ちに負けたので有る。


 「フォルト隊長、私からも、将軍にお話しますので。」


 ロレンツも、今回の作戦には木こり達の参戦は願っても無い事だと思ってはい


るが、どんな事をしてでも、彼らを死なす事は出来ないのだと、ロレンツは、部


下達にも話をする事を考えたので有る。


 「其れと、話しは変わりますが、二人の提案を受けていただき、本当に有難い


と思っております。


 それで、私と、フォルト隊長の提案した、大木の切り倒しの準備にどれだけの


日数が掛かるのでしょうか。」


 「隊長様、そんなの簡単ですよ、だって、オレ達、全員でやれば、5日、い


や、10日もあれば、全部出来ますよ。」


 「えっ、そんな簡単に出来るのですか。」


 「だって、決めた大木を切るだけですからねぇ~、簡単な事ですよ。」


 ロレンツは、驚くのだが。


 「ロレンツ隊長、あの人達の腕前は素晴らしいですよ、私も、1番農場で、大


木を切り倒す作業を見ておりましたので、よ~く、知っております。」


 フォルト隊長は、ウエスの部下、50人が死んだ後、残った仲間と、大木の切


り倒しを見ていたのだ。


 「フォルト隊長、では、木こりさん達に任せるとして、今から、将軍に会っ


て、先程の話をする必要がありますので、貴方方も、一緒に来ていただけます


か。」


 一瞬だが、木こり達の顔色が変わった。


 「どうされたのですか。」


 「オレ達も、将軍様にお会いするんですか。」


 「ええ、そうですよ、だって、貴方方も参加するとなれば、将軍の許可も必要


ですから。」


 「ですが、将軍様って、大変、恐ろしい人だと聞きましたので。」


 木こり達も知っている、ウエス達の最後が、どれ程、残酷な死に方をしたか。


 「あ~、分かりましたよ、貴方方は、ウエス達が死んだ時の話を聞かされたの


ですね。」


 ロレンツは、木こり達に話すのだが。


 「ええ、確かに、将軍は、私達でも恐ろしく見える時が有りますよ、でもね、


其れは、ウエス達の様な、極悪人に対してだけですよ、貴方方や、農民さん達に


は、最高の味方ですからね、何も心配される事は有りませんよ。」


 ロシュエも、何度か、木こり達の作業場に行き、彼らも一応、表面上は知って


いるが、それでも、まだ、不安は有るのか。


 「オレ達も、何度か、お話はしましたが、其れと、今回の話は別だと思ってま


すので。」


 「まぁ~ね、でも、私達の説明だけでは許可はされませんよ、貴方方自身で、


将軍に伝えて下さいよ、私達も、応援しますからね。」


 「はい、じゃ~、行きますが、本当に、大丈夫なんですね。」


 「勿論ですよ、さぁ~、皆さん行きましょうか。」


 ロレンツは、ニコッとして、フォルトと、数人の木こりと、ロシュエの執務室


へと向かうので有る。


 その頃、ロシュエは、司令官と、今後に付いて話し合っていた。


 「司令官よ~、ロレンツが考えた方法なんだが。」


 「はい、第1大隊が森に入ると言う話ですね。」


 「うん、そうなんだ、確かに、ウエス達の時には成功し、今の1番農場で、奴らは全滅に近かったんだが、今回も、同じ作戦が成功すると思うか。」


 ロシュエは、ウエスが、どの様な報告をしたのか分からない、だから、余計に


同じ作戦が成功するとは思っていない。


 「閣下、私も、同じ作戦が成功するとは考えてはおりませんが、ロレンツ隊長


が、木こりさん達と、どの様な話し合いをされているのか、其れによっては、作


戦の一部変更も有り得ると思っております。」 


 やはり、司令官も同じ考えだ。


 「だがよ~、あのロレンツって奴はだ、一度、決めたら、オレが何と言おう


と、絶対に引く奴じゃないんだ、だから、オレは困ってるんだ。」


 「其れは、閣下も同じでは。」


 司令官も、ロシュエが、頑固者だと知っているので、ニヤリとした。


 「司令官よ~、オレって、そんなに頑固者なのかよ~。」


 「はい、其れは、もう。」


 司令官は、知っているが。


 「まぁ~、閣下の部下と言うよりも、閣下の、お仲間は、誰もが頑固者ばかり


で、この私もですがねぇ~。」


 ロシュエと、司令官は、大笑いするが、その時、ロレンツと、フォルトの両隊


長と、数人の木こりが来た。


 「将軍、よろしいでしょうか。」


 「お~、ロレンツ隊長にフォルト隊長、で、木こりさん達か、一体、何だよ


~。」


 「はい、先程の作戦会議において、私が提案しました、森の中に入る話で、私


と、フォルト隊長の二人で、木こりさん達に相談した結果、木こりさん達の承諾


を得ましたので、報告に。」


 「お~、そうか、そりゃ~、良かったじゃないか、で、それだけの事を報告す


るために来たんじゃないよなぁ~、ロレンツ。」


 やはり、ロシュエは、感じたのか、ただの報告だけならば、木こり達を連れて


来る必要も無いはずだ。


 「はい、実はですねぇ~、是非とも、作戦に参加したいと。」


 「えっ、何だと、戦争に木こりさんが参加したいってかよ~、そんな事を、オ


レが許可するとでも思ってるのか、え~、ロレンツ、絶対に駄目だ、オレは、ど


んな事があっても、木こりさんが、参加する事は許可出来ない。」


 ロシュエは、本気で怒った、ロシュエの持論では、戦と言うものは、軍隊と、


軍隊の殺し合いなのだ、兵士ならば別の話だが、木こりは、兵士では無い、兵士


で無い者を戦の、其れも、最前戦に行かせる話しなど、聞けるものでは無い。


 「将軍、私も、最初は反対しましたよ、ですが、木こりさん達の言われる事


が、最もだと思ったんです。」


 「何だよ~、その最もな話ってのは。」


 「はい、実は。」


 「隊長様、オレが、話をしてもよろしいでしょうか。」


 「はい、よろしいですよ。」


 「はい、有難う、御座います。」


 彼は、木こりの中でも、中心的な存在で、仲間達の中では、名人と呼ばれてい


る人物なのだ。


 「将軍様。」


 「おい、おい、その様ってのはよ~、まぁ~、いいか、話を聴こうか。」


 「はい、将軍様、オレ達は、木こりです、木こりの仕事は、森に入り、大木を


切り倒すんですが、ただ、何でも、切り倒せばいいんじゃないんですよ。」


 「うん、其れは、オレだって知ってるが、だがよ~、何故、なんだよ、木こり


さん達が、最前戦の、其れも、一番危険な場所に行く必要が有るんだ。」


 「将軍様、じゃ~、お聞きしますが、兵隊さんが、其れも、一番難しい場所


に、1回で、大木が倒れる様に、斧を当てる事が出来るでしょうか、オレ達だっ


て、喜んで行きたいと思ってませんよ、だけど、兵隊さん達だけで、出来るほ


ど、簡単な事じゃ無いんですよ。」


 「だがよ~、その時って、敵に背中を向けてるんだろうよ。」


 「はい、そのとおりですよ、其れは、オレ達だけじゃ無いんですよ、兵隊さん


だって同じじゃ無いですか、オレ達だって、戦争は恐ろしいですよ、でも。」


 「でも、何だよ、オレはよ~、何も、あんた達、木こりさんが無理する必要は


無いって思ってるんだぜ。」


 「将軍様、オレ達は、何も無理をするんじゃないんですよ、これは、オレ達だ


けが出来る仕事なんです。


 ですから、オレ達に任せて下さい、お願いします。」


 木こり達は、まだ、本気になっていないと、ロレンツは、思っていた。


 「オレはよ~、木こりさんが、有る程度まで、切り込みを入れて、後は、兵士


が出来ると考えているんだ。」


 「将軍様、じゃ~、お聞きしますが、兵隊さんだけが、死んでもいいと言われ


るんですか。」


 「兵士はよ~、農民を守るためには、死も覚悟してるって事なんだよ、オレは


なぁ~、兵士が戦死しても良いとは思ってないよ、だがよ~、木こりさんや、他


の人達は別なんだよ。」


 「将軍様、何が別なんですか、兵隊さんも、オレ達、木こりも同じ人間じゃな


いですか、オレ達は、何も、兵隊さんのためにだけ行きたいと思ってるんじゃな


いんですよ、この農場全員のためなんです。」


 「うん、其れは、、オレも分かってるよ、そのためにも、今度の戦は、どんな


方法を使ってでも、負ける訳には行かないんだ。」


 「将軍様、今、言われましたよ、どんな方法を使ってでもって、ですから、オ


レ達が行くんです。」


 「だがよ~。」


 ロシュエは、まだ、迷っている、本当ならば、大喜びしたいところなのだ。


 「将軍様、オレ達のかあちゃんや子供達は、奴らに残酷な方法で殺されたんで


すよ、将軍様や、隊長様は、話で聞かれても、その殺されたかあちゃんや、子供


の姿を見て無いと、オレは思ってるんです。


 若しも、若しもですよ、仮に、そんな事は絶対に無いと思いますが、此処の兵


隊さんが、全員殺されて、残ったのは、オレ達見たいな人間だけになったと考え


て下さいよ、奴らは、どんな方法で殺すと思いますか。」 


 「う~ん、其れは、想像も出来ないなぁ~。」


 「仮にですよ、仮に、オレが、大木を切り倒す時に殺されたっていいんです


よ、だって、天国のかあちゃんや、子供達に自慢出来るんですから、なぁ~、か


あ~ちゃん、オレは、オレを助けてくれた人達のためにもだけど、オレは、かあ


ちゃんや、子供達の仇を取ってやったんだぞ、ほら見ろ、と~ちゃんの背中、矢


が5本も刺さってるだろう、これが、と~ちゃんの勲章だってね、其れにです


よ、オレ達だって、何もしないで殺されるより、少しでも、兵隊さんや、この農


場の人達のために役立つんだったらそれでいいんですよ。」


 まだ、気迫が足りない、と、ロレンツは思っている、それでは、将軍が決断出


来ないんだ。


 「将軍、私達が、全力で防ぎますので、其れに、彼が言った様に我々では、木


こりさん達の様には出来ないと思っています。」


 「閣下、今回の戦は、どんな方法を使ってもと、先程、申されました。


 私は、ロレンツ隊長が、提案された作戦が成功するか、否かで、この農場の将


来が決まると考えております。」


 司令官が、理解を示したと言う事は、後、少しで、将軍は許可するだろう、だ


が、押しが足りない、何か、良い方法は無いかと、考えるロレンツだったが、木


こりの一人がついに思い切った。


 「将軍様が駄目だと言われている事も分かりますが、じゃ~、オレは、この農


場のみんなに言いますよ、将軍は、日頃、オレ達、農民の事が一番大切だと、だ


けど、あれは、大嘘だって。」


 「何が、大嘘だ、オレは、嘘は言ってないぞ、今でも、みんなが、大切だと思


ってるんだ。」


 「じゃ~、聞きますが、さっきも言ったと思いますが、兵隊さんは、戦争で戦


死されますが、オレ達は残り、農民の全員が、奴らに虐殺されてもいいと思って


るんですか、将軍、農民が虐殺されるんですよ。」


 すると、別の木こりも。


 「将軍様、オレは、天国に行っていいますよ、将軍様は、オレ達が、虐殺され


ると分かってながら、オレ達だけを残したんだって。」


 「おい、おい、オレを脅迫するのかよ~。」


 「だって、そうでしょう、オレ達は、奴らに、殺されるために行くんじゃない


んですよ、オレ達は、虐殺された家族の仇も討ちたいんです。


 オレは、天国に行っても、子供達に自慢するんですよ、お前達を殺した奴ら


は、と~ちゃん達も協力して、全員を地獄に送ってやったよってね、其れに、隊


長様も、オレ達を守るって言われたじゃないですか、将軍様が、許可しなかって


も、オレは、絶対に行きますよ、だって、そのために、隊長様が、来られたんで


すよ、オレ達と、隊長様達は死んで、天国に行きますが、将軍様は、オレ達にや


らせてくれなかったって、天国のみんなに言いますからね、将軍様は、天国には


来れないですよ。」


 「よ~し、分かったよ、お前達には負けたよ、この大バカ野郎達が。」


 「皆さん、閣下が、許可されましたよ。」


 「えっ、でも、まだ。」


 「今、閣下が申されましたね、大バカ野郎って、これが、許可したと言う事な


のですよ。」


 ロシュエも、傍で頷いている、其れを見た木こり達は。


 「やった、やったよ、将軍様が、許可されたんだ、よ~し、みんなで作戦を練


るぞ。」


 「お~。」


 木こり達は、大喜びするので有る。


 「おい、ロレンツ、お前、正か。」


 ロシュエは、分かっている、簡単には許可しないだろう、だが、木こりの迫力


に負けた、その策を、ロレンツが授けたのだと。


 「いいえ、私は、何も言っておりませんが。」


 ロレンツも、ニヤリとした。


 「いや、お前の事だ、まぁ~いいか、お前の事だ、どんな事をしてでもやるだ


ろうからよ~。」


 ロレンツも、ロシュエの考えは読めている、だが、木こり達の真剣な話が、将


軍の気持ちを動かしたのは間違いは無いし、大胆な発言が、ロシュエには相当応


えたのかも知れないので有る。


「だがよ~、ロレンツ、ウエスの事だ、どんな話をしたのかも分からないんだ


ぜ。」


 「はい、私も、其れは、十分承知していましたのですが、木こりさん達の考え


方は全く違っておりました。」


 「え~、だってよ~、下手をすりゃ~、1番大隊は全滅するんだぜ。」


 「将軍様、オレ達は木こりですので、隊長様達が、隠れる場所は考えていま


す。」


 「何だって、あんな大木の一体、何処に隠れるって言うんだよ~。」


 「将軍様、同じに見えても、枝が多い大木もあれば、少ない大木も有りますの


で、オレ達は、枝の多い大木だけを切り倒すんです。」


 「じゃ~何か、その枝の後ろに隠れるのか。」


 「はい、別に、太くなくても、枝が多いと、相手からは見えないですから。」


 「だがよ~、我々だって、見えないと思うんだが。」


 「其れは、オレ達に任せて下さい。


 兵隊さんの顔の部分の小枝は切り落としは直ぐに出来ますので。」


 「おい、おい、直ぐに出来るって言うが、一体、どんな風に作るんだ、少しだ


けでも教えてくれよ。」


 ロシュエは、頭の中で想像するのだが。


 「はい、倒した大木の付近にも、小枝が有る様にすれば、勿論、馬に乗って


も、その先が見えない高さの小枝ですが、馬でも、人間でも、先が見えないと、


前には行けないと思います。


 でも、木こりって仕事は、木の状態を見てますので、少しくらい先が見えなく


ても、前に行けるんです。」


 「じゃ~、引き込みが成功すれば、どうなるんだ。」


 「はい、隊長様にも申し上げましたが、有るところから先は行き止まりにすれ


ば、多勢の人は、戻る事も大変困難になるんです。」


 「じゃ~、何か、行き止まりを作るのか。」


 「はい。」


 「だがよ~、1番大隊の兵士が左右に分かれて攻撃すりゃ~よ~、仲間に向か


って撃つ事になるぜ。」


 「将軍様、大木を斜めに切り倒して置けば、大丈夫だと思いますが。」


 「よ~し、分かった、ロレンツ、木こりさん達に任せてやれ、其れとだ、兵士


達の配置も考えてくれよ。」


 「はい、私も、木こりさん達の考えには賛成しておりますので、各中隊長を交


えて、直ぐにでも検討に入ります。」


 「よし、其れとだが。」


 「はい、十分、承知しております。」


 「あのなぁ~、ロレンツ、オレは、まだ、何も言ってなんだぞ~、オレの頭の


中を見るなって。」


 ロシュエは、笑っている。


 「其れと、フォルト隊長の提案だったが、大木を切り倒し、兵隊が、後戻り出


来ない方法って言った様な気がするんだがなぁ~。」


 「はい、私は、城の前から、5番農場付近に敵軍の全員が入った時に、森の大


木で、封鎖し、後戻りが出来ない方法をと、木こりさんに提案したんです。」


 「其れは、分かるがよ~、敵の兵隊、全部が入らない事も考えられるんだ


ぜ。」


 「はい、其れも、十分に考えましたが、主力の殆んどが入った時で十分だと思


います。」


 「じゃ~、有る程度は仕方が無いと言うのか。」


 「はい、私も、全員が来るとは考えておりませんので。」


 「まぁ~、何だ、入った敵には、全てに攻撃し、殺すると言う事なのか。」


 「はい、そのとおりです。」


 「だがよ~、森と、城壁は相当離れているぜ、どんな方法で大木を切り倒すん


だよ。」


 「将軍様、よろしいでしょうか。」


 「ああ、いいよ、聴かせてくれよ。」


 「はい、オレは、城壁から、中へと斜めに大木を並べ様と考えております。」


 「其れじゃ~、先に城壁から始めるのか。」


 「はい、オレは、城壁側ですが、50ヒロから、百ヒロで、1本を並べてはと


考えてるんですが。」


 「うん、それで。」


 「はい、奥の方ですが、最初の兵隊が入った頃から、城壁側から、順番に大木


を切り倒せば、兵隊は、前にも行けず、戻る事も出来ないと思うんですが。」


 「だがよ~、封鎖するって事はだ、奴らは、何をしでかすか分からんぞ~。」


 「じゃ~、少しですが、逃げ場を作れば。」


 「うん、其れが、いいよ、だって、人間もだが、騎兵だって入って来るんだか


らよ~、見方の損害を減らす事も大事なんだ、じゃ~、木こりさん達は、大木に


切り込みを入れて、最後は、1回で倒れる様にするんだなっ。」


 「はい、オレ達は、木こりですから、どれくらい切り込めばよいか分かってま


すので。」


 「だがよ~、本当に、ロレンツ隊長が考えたとおりに行くのかよ~。」


 「はい、一応はですが、狼犬部隊が、どれくらい引き連れて来るかですねぇ


~。」


 「だがよ~、敵軍は、ウエスの兄貴ってのが、どうやら大将と見て、間違いは


無いが、奴らの戦法を全く知らないからなぁ~、うん、そうか、お~い、当番さ


ん、フランド隊長を大至急呼んでくれ、大至急だ。」


 「はい。」


 ロシュエは、一体、何を思い付いたのだろうか。


 「ロレンツ隊長、フォルト隊長、相談なんだがよ~、さっきの話しで、大木を


道に並べるって言ったなぁ~。」


 「はい、敵兵の侵入を確信しましたらですが、其れが、何か。」


 「うん、今、考えたんだがよ~、木こりさん達には、先に切り倒して貰うんだ


よ~。」


 「えっ、先にですか。」


 ロレンツは、ロシュエの作戦が分かった。


 「将軍、じゃ~、初めから侵入口を狭くするんだすか。」


 やはりか、ロレンツの頭の中には、ロシュエが、次に、何を考えているの分か


りだした。


 「将軍様、じゃ~、オレ達は。」


 「うん、何も、無理をして戦の中に入る必要は無いって事なんだ、少しだがよ


~、作戦を変えるんだ、ロレンツ、森から、城壁の下は。」


 「はい、十分に狙う事は可能です。」


 「閣下、正か、森から、城壁の下を進む敵兵を。」


 「さすがに、司令官だねぇ~、その正かだ、ホーガン矢だったらよ~、仕留め


る事も可能だって話しなんだ。」


 「では、木こりさん達が危険に会う事も無いと申されるのですか。」


 「お~、そうなんだ、そのためにはよ~、城壁の下を歩ける程度の間を空ける


必要が有るんだ。」


 「では、木こりさんが、切り出した大木の並べ方ですが。」


 その時、フランド隊長が、息を切らせて入ってきた。


 「将軍。」


 「将軍。」


 「お~、済まんなぁ~、まぁ~、座ってくれよ。」


 「はい、で、何か、大至急のお話しが有ると聞きましたが。」


 「うん、そうなんだ、今、まぁ~、作戦会議の様な話しになってよ~、作戦を


少し変更しようと思ってるんだ。」


 「作戦の変更ですか、で、一体、何を変えるのでしょうか。」


 「まぁ~、その前にだよ、フランド隊長、例えばだ、フランド隊長がだ、城壁


から攻撃を受けた、じゃ~、一体、何処へ逃げるんだ。」


 「将軍、私であれば、何も考えず、城壁の下に逃げますよ、森に入れば、狼で


しょう、城壁の真下ならば、誰でも安心出来ますから。」


 「其れは、城壁にホーガン矢を放つ穴が有ると知っての事か。」


 「いいえ、何も、知らなければですよ、普通、城壁の矢口から、真下に狙いを


付ける事は出来ませんから。」


 「うん、普通は、フランド隊長の様に考えるんだ、そうなるとだ、森の中から


は、狙い討ちが出来るんだよ。」


 「でも、でもですよ、城壁から、有る程度離さないと、歩兵は集まりません


が。」


 「うん、それでだよ、オレは、城壁の傍には、大木を置く必要が無いと思うん


だよ、だってよ~、森に入られると、少し困るんだ。」


 「閣下、何故で、御座いますか、森の中には、1番大隊が。」


 「だから、困るんだ、歩兵は、騎馬兵よりも、遅れてくる、だが、騎馬兵は死


んでいる、じゃ~、一体、何処から討たれたんだ、考えるられるのは城壁からだ


と思わせるんだ。」


 「将軍の考え方は分かりますがねぇ~、そんなに上手く行くとは思いません


よ。」


 ロレンツは、この計画には無理が有ると思ったので有る。


 「う~ん。」


 ロシュエは、考え込むが。


 「将軍様、大木の置き方を変えれば。」


 「大木の置き方を変えるってかよ~。」


 「はい、さっきの話しでは、斜めにと言われましたが、森の方は斜めでも良い


と思います。


 それで、城壁の方ですが、枝の少ない、大木を選び、同じ方向で、互い違いに


並べるんです。


 枝の少ない大木の上の方は切り、森側に置けば、森側は枝で、内側の様子は見


えませんが、城壁側は、枝が無いので隠れるところは、大木の内側だけになり、


動きは取れないと思うんですが。」


 「じゃ~、何か、全ての大木を同じ方向に向けるのか。」


 「はい、入り口は広く、出口は狭くなると思いますが。」


 「まぁ~、人間だから、広いところから、狭いところへ、行くだろうからよ


~。」


 「将軍、ウエスの情報は、森の中には、狼の大群がいると伝えているでしょう


から、木こりさんの言う方法が良いと思いますねぇ~。」


 「ロレンツ、分かったよ~、後は、彼らだ、何処まで大木を並べるかだなぁ


~。」


 「閣下、私は、3番農場付近までであれば十分だと思いますが。」


 「だがよ~、敵は、3万だぜ。」


 「勿論、承知しておりますが、3万の兵が全部行くとは思えないのです。


 城でも、数百は倒せますので。」


 「じゃ~、一応、敵が侵入すれば、城付近は大木で封鎖するんだなっ。」


 「はい、その様にすれば、少なくとも、数千は侵入出来ないと、その敵は、城


からと、一部は、森の中から攻撃を加えれば問題なく倒せると思います。」


 「じゃ~よ、3番農地から、城まで入れて、其処に集中攻撃すると言う方法な


のか。」


 「はい、私は、その方法でよいかと。」


 「よ~し、分かった、だがよ~、大木の切り出しに何日掛かるんだ。」


 ロシュエは、最初、時間の余裕は無いと考えていた。


 「将軍様、オレ達、全員で行けば、10日もあれば十分ですよ、オレ達が切り


倒しますので、森側に動かす必要は無いですが、城壁側に並べるのは兵隊さん達


にお願い出来ればと思いますが。」


 「よ~し、分かった、其れは、司令官、頼むぞ。」


 「はい、勿論で、御座います。」


 「じゃ~よ、それで決まりだなぁ~、で、何時から取り掛かれるんだ。」


 「はい、直ぐにでも始めますので。」


 「よ~し、分かった、司令官、全員、出動だぜ。」


 「はい、承知、致しました、では、早速に。」


 「うん、頼むぜ、そうだ、狼は、新米さんの訓練に入っていると思うんだ


が。」


 「はい、全て、承知しておりますので、狼犬部隊を除く全部隊の出動で。」


 「お~、済まんが、よろしく頼むぞ。」


 「では、私達は、これで、失礼します。」


 司令官をはじめ、全員が、兵舎へと、木こり達は現場へと向かうので有る。


 「お~い、みんな、集まってくれないか。」


 千人の木こりが集まった。


 「今、将軍様と、話をしたんだが、今日から、10日間で、大木を切り倒し、


敵をやっつけるんだ、オレ達の仲間や、家族を殺した、奴らを全滅させるため


に、オレ達の出番がやってきたんだ、これは、殺された人達の敵討ちにもなるん


だ、みんな、やってくれるか。」


 「お~、当たり前だぜ。」


 「オレは、どんな事でもやるぜ、殺されたかあちゃんのためになぁ~。」


 「みんな、有難う、で、3番農場から始めるんだけれど。」


 彼は、その後、詳しく説明し、千人の木こりが、3番農場へと向かうので有


る。


 「だけど、よくもまぁ~、お前、戻って来れたなぁ~、オレ達は、きっと、将


軍様に。」


 「うん、オレも、だけど、あの時、隊長様が言って下さったんだよ、。」


 「へ~、隊長様が、助けるって事か。」


 「いや、違うんだ、最初に、隊長様が、大木を切り倒し、封鎖するって話をさ


れ、将軍様が、オレ達、木こりと、よ~く、相談する様にって、で、隊長様は、


将軍だって、人間だから、オレ達が真剣に話せば、きっと分かって下さるっ


て。」


 「だけど、駄目だって言われたんだ。」


 「うん、そうなんだ、で、オレは、最後に、もうどうにでもなれって思って


ね。」


 「えっ、一体、何を、言ったんだ。」


 「うん、オレ達は、天国に行けますが、将軍様は、天国には来れませんよって。」


 「えっ、お前、そんな事を言ったら。」


 「うん、だけど、それでも、将軍様は、駄目だって、話になったんだ。」


 「そんな事当たり前の話だ、だって、オレ達へ兵隊じゃないんだぜ。」


 「其れが、何と、オレ達にしか出来ないって分かって下さって、許可されたん


だ。」


 「じゃ~、オレ達は、全員で戦に行くんだ、奴ら、驚くぜ、だけど、まぁ~、


オレ達は、木こりなんだから大木なんて倒すのは簡単な仕事だよ、任せろよ。」


 「まぁ~、だけど、将軍様って、最後まで、オレ達の事を心配して下さったん


だ、だから、最初、隊長様に言われた方法と変わったんだ、だけど、将軍様は、


オレ達、木こりは、大木を切り倒すだけで、兵隊さん、全員で大木を移動させる


って。」


 「う~ん、其れにしても、やっぱり、将軍様だねぇ~、オレ達に任せりゃ、大


丈夫だって分かって下さったんだ。」


 木こり達は、大声で笑い、3番農地へと向かうので有る。


 一方で、各大隊も、3番農地へと向かうので有る。


 「閣下、では。」


 「えっ、司令官も行くのかよ~。」


 「はい、私は、現地での確認作業が必要だと思いましたので。」


 「じゃ~、オレも行くぜ。」


 「えっ、閣下は残られると。」


 「誰が、残るって言ったんだよ~、司令官、木こりさん達の仕事を見るんじゃ


ないんだ、オレは、次の作戦を考え様と思ってなっ。」 


 「閣下、私もで、御座います、では。」


 司令官が、先頭になり、各大隊は、馬車数台にロープを数十本積み、木こり達


の現場へと向かった。


 その少し前、狼犬部隊は、元の警備隊の訓練に入っていた。


 「みんな、よ~く、聞くんだ、このホーガンって武器は、今まで、使ってて弓


をは全く違うんだ、まず、飛ぶ距離だが、弓の倍以上は飛ぶ。」


 「え~、そんなに飛ぶ武器なんですか。」


 「隊長、いや、5番大隊に入って、中隊長だったねぇ~、この武器は、弓とは


全く違うんだ、だから、弓くらいの距離だったら、狙ったら、まず、確実に命中


する。」


 「ホーガン隊長、じゃ~、5番農場から、森の方に放つと、全部、命中するの


ですか。」


 「ああ、そうだよ、その分だけ威力も、弓の数倍は有ると思っても間違いは無


い、今から、我々、狼犬部隊が見本を見せるから、全員、よ~く見る様に、じゃ


~、狼、始めてくれ。」


 ホーガンの合図で、狼犬部隊が、一斉にホーガンの引き金を引くと、放たれた


矢は、真っ直ぐに飛び、的の中心に命中して行く。


 「お~。」


 と、元警備隊の全員が、何とも言えない声を出すので有る。


 「みんな、今、見てのとおりだ、次は、君達が同じ様にやって貰うが、狼は適


当に散らばって、教えてくれ、じゃ~、始め。」


 狼犬部隊が中隊の中に入り、説明と、身振り手振りで教えている。


 「じゃ~、次は、順番に討つんだ、狼は、そのままで、教えてくれ。」


 中隊は、5人、10人と並び、的に向かって引き金を引くと、数人が放った矢


は命中したので。


 「お~。」


 と、声を上げる兵士も居た。


 「お~い、みんな、よ~く、聞けよ、仲間が、命中させたんだ、自分達も命中


させるんだ、言いか、よ~く、聞けよ、この訓練は、今日で終わりなんだ、明日


からは本格的な実戦訓練を開始するが、実戦訓練に入ると、怪我人が出る事も有


るんだ。」


 「えっ、怪我人って、本当に、相手に向かって放つんですか。」


 「バカ野郎が、そりゃ~、当然だ、戦争になったらだ、敵は、相手が少しでも


躊躇すれば、殺しに来るんだ、待ってはくれないんだ、戦ってのは、殺すか、殺


されるかなんだ、其れに、反撃もしない的に命中したって同じなんだ、動く相


手、其れが、敵軍なんだ、分かったのか。」


 「はい。」


 返事は良いが、果たして、本当に理解しているのか疑問で有る。


 「さぁ~、訓練開始だ、今日のうちに、ホーガンに慣れるんだ、分かっている


のか。」


 それでも、この新しい中隊も、ホーガンの扱いに慣れてくるだろうと、ホーガ


ンは思う。


 「あれは、将軍様だ、みんな、将軍様が来られるぞ~。」


 ロシュエは、司令官達よりも早く、3番農地付近に着いたので有る。


 「お~、みんな、ご苦労さんだなぁ~、よろしく、頼むぜ。」


 「将軍様。」


 「お~、あんたは、さっきの木こりさんだなぁ~。」


 「はい、先程は、どうも。」


 「いいんだよ、もう、終わったんだから、其れより、みんな、作業を進めてく


れよ、オレが、邪魔だったら帰るからよ~。」


 木こり達は、頷き、早くも大木の選別に入っている。


 「あれは、何を。」


 「はい、今、選別に入ってるんですよ、切り倒す大木をですが。」


 「じゃ~、あの大木は、城壁側にかよ~。」


 「はい、倒してから、上の方も切り、枝を無くせば、兵隊さんの隠れる場所


は、大木の内側になりますので。」


 「ふ~ん、じゃ~、森側は。」


 「はい、其れも、今、選別に入り、終わった順番で、城壁側の大木から切り倒


して行きます。」


 「だがよ~、こんな大木を、一体、何人で引き出すんだよ~。」


 ロシュエは、大木を引き出すと思っている。


 「将軍様、こんな大木は引き出す必要も無いんですよ、こちらの根元の方を引


けば、方向転換しますので。」


 「じゃ~、城壁側の次は、森側と言うのか。」


 「はい、そのとおりで、この方法が、一番早いと思いますので。」


 「じゃ~、さっき、言った、切り落とした枝は。」


 「はい、森側で、枝木の無いところに置けば、敵からは見えないと思います


が。」


 「よ~し、分かったよ、有難うよ、みんな、頼むぜ。」


 「はい、有難う、御座います。」


 「で、少し、話が変わるんだがよ~。」


 「はい、何でしょうか。」


 「1番大隊のロレンツ隊長は、森の中から攻撃するんだが。」


 「はい、オレ達、全員で動けば、直ぐに終わりますが。」


 「うん、其れは分かってるんだ、だがよ~、オレは、あれから考えたんだ。」


 その時、司令官と、ロレンツ隊長が来た。

 

 「あっ、司令官様と、隊長様、さっきはどうも。」


 「いや、よろしいんですよ、其れよりも、大木の移動方法は。」


 「はい、では、簡単に説明しますので。」


 木こりは、司令官と、ロレンツ隊長に説明し。 「隊長様、オレ達は、直ぐに


はじめますので、兵隊さんは、近くには行かない様にお願いします。」


 「分かりました、では、私は、行きますので。」


 ロレンツは、各大隊長に説明に戻って行く、その直後から、木こりが斧で、切


り込みを開始した。


 数十ヶ所、いや、数百ヶ所以上から切り込みの音が、森の中に響き渡り始め、


暫くの間、音が続き。


 「お~い、倒すから、みんな、離れろよ~。」


 木こりの声が響き。

 

 「よ~し、行くぞ~。」


 号令なのか、直後、大木は軋む音を出し、最初は、ゆっくりと、やがて、大き


な音と共に倒れ、其れからは、次々と選別された大木が倒れて行く。


 「だけど、こりゃ~、恐ろしいなぁ~。」


 「将軍様、オレ達は、決めた場所に倒して行くんですよ。」


 その頃、早くも、木こり達の半数は、森側の大木に斧を入れ始めた。


 「だがよ~、大丈夫なのか、さっき倒れた大木の処理も終わってないんだ


ぜ。」


 「将軍様、大丈夫ですよ、森側の大木は、直ぐには倒れませんから。」


 「えっ、本当なのかよ~。」


 ロシュエは、木こり達の手際のよさに驚いている。


 半数の木こりは、枝を落としに掛かっている。


 「隊長様、枝を切り落とす前に、森側の大木を倒しますので。」


 「えっ、もう、倒れるのか。」


 ロレンツも、余りにも手際のよさに、驚きよりも呆れている。


 「閣下、私達が考えておりましたのとは、全く違いますねぇ~。」


 「うん、そうなんだよ、オレは、何も知らなかったから、もっと、時間が掛か


ると思っていたんだ、まぁ~、其れにしてもだ、見事なほどの手際のよさに、オ


レは、呆れているんだ。」


 「隊長様、倒しますので、皆さん、離れて下さい。」


 彼の、合図で、次々と、大木が倒れて行く。


 「隊長様、もう、大丈夫ですから。」


 「よ~し、分かった、では、城壁側の大木を移動させる。」


 兵士達は、大木にロープを巻き付け、隊長の合図で引くのだ、だが、人数不足


で、大木はびくともしない。


 「後、2個中隊も入れ。」


 再び、隊長の合図で、ロープを引くと、さすがの大木も動き出す、その後、所


定の位置に止めた。


 「さぁ~、これからが大変だよ、各大木には、各大隊で引く様にして下さい。


 その後、全ての大隊も手際よく、大木を所定の位置まで運び、終わった頃。


 「隊長様、城壁側の大木が倒れま~す。」


 「全員、離れろ。」


 この様に、大木は、次々と切り倒されて行き、その日のうちに、3番農場に


は、全ての大木が並べられた。


 「こりゃ~、凄い事になったぜ、こんな太い大木じゃ~、人間が簡単に乗り越


えるのは無理だなぁ~。」


 「閣下、これは、私が、考えていた以上になりましたねぇ~。」


 「これが、成功すりゃ~、奴らを全滅させる事も出来るぜ。」


 「はい、その様で、御座いますねぇ~、閣下、森側ですが、此処から見ても、


枝が有るので、内側の様子は、全く分かりませんねぇ~。」


 「まぁ~、この大木も、戦が終われば、家を建てる材料になるんだからよ


~。」


 「そうですねぇ~、大食堂も、お風呂も造らなければなりませんので。」


 「将軍様、如何でしょうか。」


 「全くだよ、だって、オレ達が考えた以上なんだからよ~、本当に有難うよ、


で、残りは。」


 「はい、2日もあれば、終わりますので。」


 「お~、そうか、有難うよ、じゃ~、今日は、一応、終わった事になるんだな


ぁ~。」


 「はい、まだ、その先も有りますので。」


 「お~、そうだったなぁ~、で、相談なんだが、ロレンツ隊長の話じゃ~よ、


入り口は、広く、奥で、行き止まりって話なんだが、よ~く、考えて見るとだ、


入り口の左側ってのは、森だ、で、右側は、城壁だ、オレはよ~、左側には必要


無いと思うんだが、どうだ。」


 「はい、将軍様の、おっしゃるとおりで、オレも、此処に着て、別に必要無い


と思ったんですが、如何でしょうか、その分、左側からは逃げ道の無い様にする


ってのは。」


 「ほ~、逃げ道に無い様にか、するとだよ、左側に、ロレンツの部隊を配置す


るだけで十分だって事にするんだなっ。」


 「はい、オレ達も、森の中には出来るだけ入りたくは無いのです、助かります


よ。」


 「よ~し、それで行くぞ、後は、あんた達に任せるからよ~、頼んだぜ。」


 「はい、分かりました。」


 その方法は、ロレンツも考えていたのだが、ロシュエの決断が早く、3日後に


は、早くも、森の中で、大木の切り倒し作業が開始され、それから、3日後に


は、全ての作業が終わった。


 あの中隊の訓練は、5番大隊に任せ、狼犬部隊は、何時でも、出発可能とな


り、2日後、第1小隊が戻ってきた。


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