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闇の帝国    作者: 大和 武
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 第 99 話。さぁ~山賀から始めるぞ。

「司令長官殿、誠に申し訳御座いませんが、昨日届きました資材を持ち帰って頂く訳には参りませんでしょうか。」


 そうだったのか、其れで中隊長は朝早くから荷馬車に資材を積み込んでいたのか。


「では中隊長はその為に早朝から積み込みをされておられたのですか。」


「申し訳御座いませんでした、先にご相談すれば良かったのですが、昨日中隊で来られましたので人数的には十分だと、私が勝手に判断しまして、申し訳御座いません。」


「吉田さんは如何でしょうか。」


「承知致しました、其れで一体何台有るのですか。」


「はい、二十台で御座います。」


 二十台の荷馬車に積み込まれて要るのは、げんたが頼んだ品と平八郎が積ませた目録以外の品が有る。


「総司令、確かロープが必要だと伺っておりましたが。」


「あっ、そうでしたねぇ~、中隊長、申し訳有りませんが軍艦で使用されているロープは御座いませんでしょうか。」


「確か予備のロープが倉庫に有りますので全て積み込みます。」


「左様ですか、申し訳有りませんが次に依頼して頂く時にロープもお願いしたいのですが宜しいでしょうか。」


「勿論で、其れで長さと本数ですが。」


「長さと申されますと。」


「使用する場所で長さを調整しますので、何でしたら巻いて有る物で宜しければ。」


「えっ、あの太いロープが巻かれて要るのですか。」


「左様でして、使う時に切断すれば宜しいので、その方が使い勝手が宜しいかと思います。」


「では、申し訳有りませんが一巻をお願いしたいのですが。」


「中隊長殿、この際です、五巻、いや十巻を私の名で依頼して頂いても宜しいので。」


「えっ、十巻と申されますとどれ程の重量になるのですか。」


「さぁ~、実は私も知らないんですが、まぁ~短いと使い物になりませんので。」


「では、自分は倉庫に行きロープを積み込んで置きますので。」


 もうこの様な状況になれば、連合国で潜水船を建造するのが決定されたのも同然で有る。


「後藤さん、此処は砂よりも岩が多いですねぇ~。」


「確かに此処から見ても石ばかりで、これも大変ですねぇ~。」


 海底が砂で有ればそれなりに大変だが、其れよりも石、いや岩ならばもっと大変だと、後藤と吉三が乗った小舟は沖へ向かうが。


「これは大変だ、こっちの方が遠浅ですよ、でも一体何処まで有るのかなぁ~。」


「う~ん、確かにこれは大変ですねぇ~。」


 海底は岩ばかりでこれを全て取り除くのか。


「此処もですが、半島の方にも行きましょうか。」


 後藤と吉三は相当苦労すると思って要る。


「本藤さん、上野さん、私は岸壁がどれ程出来て要るのか見たいのですが。」


「ではご案内しますので、そうだ平八郎も一度見て置いた方が良いぞ。」


「はい、承知致しました。」


 源三郎達は上野の案内で建設中の岸壁を見る事にした。


 その頃、山賀に入ったげんたと親方に大工達、更に銀次達は。


「げんたは此処に有れと同じ機械を据え付けるのか。」


「うん、そうなんだ、此処と地下の洞窟にも要ると思うんだ。」


「地下って、この下を掘ってるのか。」


「そうなんだ、絶壁の端から端までと海側からは二町も有るんだ。」


「へぇ~そんなにも大きいのか。」


「なぁ~げんた、この下で掘ってるんだたっらあんまり重い物は無理じゃ~。」


 親方も銀次も北側が掘削して要る洞窟に入った事も無く、ましてや今聞いた限りでは相当な大きさで、そんなにも大きな洞窟の上に巨釜を載せると天井部分が落盤すると思って要る。


「親方も銀次さんも其れは大丈夫なんだ、だって、天井って言っても入り口から相当下に行くんだぜ、其れに此処は海水で浸食されたんじゃないから、洞窟の天井もそんなには高く無いんだ、其れに此処から絶壁までどれだけ有ると思うんだ、まぁ~よっぽどの事が無い限り落盤する事は無いよ。」


「其れを聞いてほっとしたよ、で此処にするのか。」


「そうなんだ、どっちかに片寄ると鉄筒を繋ぐにも大変だと思うんで、まぁ~中間くらいが一番だと思うんだ。」


「よし分かった、その前に土がどれだけ固いのか、其れと設置するのに一番いい所を探すよ。」


「じゃ~親方に任せるからな。」


「げんたは何処に行くんだ。」


「此処に水を引くんで、川の有る所を探すんだ。」


 川は以前空堀で鉄の塊を作りだす高炉に空気を送る為の水車を作った所が有り、その付近で池を造るつもりで有る。


 源三郎達はその日の午後、荷馬車二十台と共に駐屯地を出発した。


「工藤さん、馬の負担を考えますと、私も降りて歩こうと思うのですが。」


「確かに、では私も、少佐。」


 吉田は何故に馬から降りるんだと言う顔をして要る。


「何か御用で。」


「済まんが、総司令と私は歩くよ。」


「えっ、では自分も、第一小隊は前を第二小隊は後ろを、其れと第三小隊は各分隊に分かれ、この先と付近の偵察に、其れで宜しいでしょうか。」


「ああ、其れで十分だ、馬の動きを見て要ると荷物は相当な重量が有る、人間よりも馬を大事にしなければ菊池までは持たないかも知れないんだ。」


「承知致しました、では中隊長に指示して来ますので。」


 吉田は直ぐ中隊長に指示し、中隊長も直ぐ行動に移した。


「其れにしても大変な量ですねぇ~。」


「私も驚いてるんですよ、昨日の話では十隻以上だと申されましたが、例え十隻だとしても一体どれだけの資材が必要なのか、其れに色々な道具や工具も届くのですから、工藤さんはどれ程の量になるのか想像出来るでしょうか。」


「其れならば入り江に有ります軍艦の半分くらいだと思います。」


「其れには何か根拠が有っての事なのですか。」


「左様でして、潜水船もですが海中を進むのですから余計な物、これには大砲や艦橋など甲板より上部に有ります物は必要有りませんので、其れと全長も幅も軍艦に比べますと、まぁ~半分くらいかと思っております。」


 そうか、昨日、平八郎は全長が半町程だと言った、其れに今の話では海中を進む為には少しでも抵抗を減らす為には太身よりもやはり細身の方が良いのに決まって要る。


「今度の潜水船と言う船は全てが鉄を使用して造られますので、親方の仕事は減ると思いますが、反対に鍛冶屋さんの仕事は大変な事になると思うのです。」


「では鍛冶屋さんのお手伝いされる方を集めなければならないのですか。」


「其れに付きましても戻り次第、技師長と鍛冶屋さんも含め話し合いをしなければならないと考えております。」


 げんたが考案した潜水船は一号船だけは、全てげんたが造り上げ、だが二号船以降は大工に銀次と仲間が、其れも全てげんたが一人で頼み込み承諾を得たので有る。


 だが今度は全く違い源三郎が、いや今度ばかりは工藤が前面に出て活躍する事になるで有ろうと、源三郎は考えて要る。


 その頃、昌吾郎は三人の仲間と松川の大手門にやって来た。


「私は野洲の源三郎様から。」


「源三郎様の命を受けられたならば、そのままどうぞ、若殿様は門を入りますと直ぐ左側に建物が有りますので、其処に居られますよ。」


「左様で御座いますか、では失礼します。」


 と、昌吾郎もだが仲間の三人も其れはもう大変な緊張で、昌吾郎は国に居た頃を思い出し、国では他国の者がお城に入ると言うのは簡単では無く、調べも受けるが、連合国に来てからはと言うものは菊池の時は別として、野洲のお城に入る時でも銀次は簡単に挨拶するだけで、昌吾郎は何も言う事も無く入れた。


 そして、今度は松川のお城でも源三郎の名を出せば門番は何も聞かず入れてくれ、だが昌吾郎はこれで本当に良いのだろうかと、先日も源三郎から言われた密偵を探し出すと言うが、門番は何の疑いも持たず城内に入れた。


「失礼します、私は。」


「昌吾郎さんですね、どうぞお入り下さい。」


「はっはい。」


 と、やはり相当緊張して要ると感じた。


「早速で御座いますが、後ろの三人は。」


「昌吾郎さん、連合国ではねぇ~、義兄上とご一緒に来られたお方ならば仲間ですからね、余り堅苦しい挨拶は抜きなんですよ。」


「左様御座いますか、先程も大手門の門番さんは源三郎様のお名前を申しますと、何も聞かれずそのまま通して頂きまして、私は余りにも簡単なので恐ろしさを感じたのです。」


「まぁ~昌吾郎さんも大変でしょうが、松川もですが、菊池から山賀の大手門に居られる門番さんは城下の人達全部の顔を知っておられますから、昌吾郎さんも二度か三度も来られますと、門番さんはもっと簡単に入れてくれますよ。」


 それ程までに連合国の門番は優れて要るのかと、昌吾郎は感心するが、若しも知らない者が来た時には一体どうなるんだと思った。


「若殿様、ですが若しも知らない者が来ればどの様になるので御座いますか。」


「其れならば実に簡単ですよ、門番さんは領民以外の者には、その前から動きを見ており、大手門に来る前に中に有る詰め所の家臣に伝えておりましてね、多分先程も門番さんが早くから見ており、私にも報告されまして、私も多分昌吾郎さんだと思いましたのでね、其れを伝えておりましたので、簡単に入る事が出来るんですよ。」


「では源三郎様の名をお出しすると。」


「そうですよ、連合国の領民さんならば義兄上を知らない者は居られませんのでね。」


「左様で御座いましたか、私は余りにも簡単に入れて頂きまして、ですが何故だが少し不安を感じまして、誠に申し訳御座いませんでした、余計な事をお伺い致しまして。」


 昌吾郎も若殿様より詳しく説明を受け納得したので有る。


「若殿様、早速で御座いますが。」


「ロープでしたね、荷馬車に乗せて有りますから持って来させますか。」


「ですが、私達は。」


「連合国と言うのはね、誰もが何をするにしても一生懸命にされますから、だからと言って何も気にする事は無いのですよ、昌吾郎さん達は連合国に来られてまだ日も浅いですが、何が何処に有るのかも知られないので知る者が手助けする事になって要るのです。」


「誠に有難う御座います。」


 と、話の最中に執務室の前に荷馬車が着き。


「其れでは私達は山賀に参りますので、若殿様、誠に有難う御座いました。


 ではこれで失礼致します。」


「山賀に入ったら先にお城に行って下さい。」


「はい、承知致しました。」


 昌吾郎と三人の仲間は若殿様にお礼を言って松川を後にした。


「昌兄~い、オレはもう冷や汗で。」


「オレもですよ、其れにお江戸じゃ~あんなに偉そうな顔で歩いていたお侍が、でも連合国てっところはお侍の方が腰が低いと思ったんです。


 其れに若殿様も源三郎様も誰もが作業着姿で、その方が一番驚いたんですよ。」


「其れは言えると思いますよ、貴方方はご存知有りませんが、私と親分と源三郎様にお会いし、数日後に再び来る様に申されましてね、其れで寄せて頂いたんですが、此処連合国では源三郎様もですが、どなた様も命令は出されないって。」


「えっ、じゃ~昌兄~いは源三郎様から命令されたんじゃ無かったんですか。」


「ええ、その通りですよ、源三郎様はねぇ~、私にお願いしますって、頭を下げられたんですよ。」


「えっ、源三郎様がすか、でも源三郎様ってお方は連合国の中で一番お偉い方なんでしょう、そんなお偉いお方が、何でお願いしますって頭を下げられるんですか、そんなのって絶対に考えられないですよ。」


「貴方方は親分から何も聞かれなかったんですか。」


「そりゃ~聞きましたよ、でもこの話は親分の作り話だって、その時は思ったんですよ。」


「ですが、親分の話は全部本当ですよ、さっきも若殿様を見られたと思いますが、お城のお侍全員が作業着で、これはね農民さんの作業着なんですよ。」


「でも何で若殿様もですが、源三郎様やお侍が農民の作業着を着られてるんですか、オレ達はお江戸での着物は。」


 昌吾郎は野洲に来てからと言うものは浜よりも執務室で源三郎の話を聞く方が多い。


「それはねぇ~、源三郎様が私にも申されましたが、侍と言うのは多少剣術が出来、其れに読み書きが出来る、だけど腰に付けた二本の刀を取り上げると全く何も出来無い。


 其れに比べ農民さんは天気の変化が分かり、其れよりも作物の出来具合までも知り、私達に分けて頂ける、だから生きて行けるんですよって、私も其れは本当だと思います。


 親分も連合国に来られ、源三郎様に助けて頂き、これで人生が変わったと申されて居られましたからねぇ~。」


 確かに銀次は源三郎を命の恩人だと、ただそれだけで人生観が変わるものでは無いだろうが、やはり日頃から源三郎から色々な話を聞き、其れで変わったのも確かで有る。


「其れでオレ達は一体何をやるんですか、こんなにも太い物を。」


「ロープですか、これで兵隊さんの命を守れるんですよ。」


「兵隊さんの命って、何で兵隊さんの命を守るんですか、兵隊って戦をする為に。」


「私からお話ししましょうか。」


 昌吾郎はその後、仲間に何故太いロープを使って兵隊の命を守る必要が有るかを説明した。


「源三郎様はねぇ~、侍は領民を守る為に居るんだと、だが連合国の兵隊さん達は殆ど官軍の甘い言葉に騙され、故郷の家族は殺され、今は連合国軍の兵士として、領民の為に命を懸けて要るんですがね、其の殆どが農民さんや町民で戦が無ければ、今頃は農作業をされ、城下で暮らして要るはずだと、だから此処の兵隊さんは日頃農作業をされ、其れで農民さんには一番信頼されて要るんですよ。」


「だったら兵隊さんは一日中農作業をされてるんですか。」


「その通りでしてね、まぁ~時々ですが巡回の任務が有り、その時だけは兵隊さんの仕事をされておられるんです。


 農民さんや町民さん達の姿を見ると気軽に声を掛けられ、兵隊さんも気軽に声を掛けられるので、何か有った時には直ぐわかると言う訳なのです。


 其れで話は少し戻りますが、私達が菊池の浜に着いた時、山賀に、松川に菊池まで官軍が攻めて来たんですがね、官軍との闘いで山賀の兵隊さん二十五名が戦死され、その時、一番悲しまれたのが農民さんや町民さんで、誰でも知って居られる兵隊さんで、その時に官軍の殆どが狼の大群に襲われましてね、源三郎様は連合国の兵隊さんも何時狼に襲われるかも知れないと申されたのです。


 其れで考えられたのが狼が襲って来ても大木の上に居れば大丈夫だと、其れに大木の上からならば敵の動きもわかるので、其れで私に兵隊さんを、まぁ~空中を移動出来る様にして下さいと、これが私達の仕事なんですよ。」


 だが昌吾郎は彼らにはまだ本当の任務を別に有ると伝えていない。


「じゃ~源三郎様は連合国軍の兵隊さんを狼から守るのと、敵をやっつける為に太いロープを使って、何て言うのか分かりませんが、其れを作ってくれって言われたんですね。」


「ええ、正しくその通りでしてね、山に行けば兵隊さんから話を聞いて何処に作ればいいのか相談しながら作って行こうと考えて要るんですよ。」


「でもオレ達は刺青が入ってるんですよ。」


 やっぱりだ、彼らも身体に刺青が入っており、町民や兵士には受け入れて貰えないと思って要る。


「其れならば何も心配する事は有りませんよ、銀次親分もですが、銀龍の仲間もですが、連合国では刺青が入って要る事は全く関係が無く、仕事でも軍隊の任務でも刺青を入れた人達の方が一生懸命にされておられ、一番信頼されているんです。」


「だったらオレ達も一生懸命にやらないと駄目なんですね。」


「其れと此処ではやくざ者が使う言葉は駄目ですよ。」


「そんなのって直ぐには無理ですよ、だって。」


「私も十分にわかっておりますので心配は有りませんが、まぁ~みんなで気を付けてやりましょうか。」


 昌吾郎も直ぐには直らないぐらいはわかっており、だが何時までも江戸に居た気分では領民から信頼を得る事は無理だとわかって要る。


 松川を出て一時半程で馬車ならばやはり早い。


「もう直ぐですよ、先にお城へ向かいますので。」


 昌吾郎は山賀のお城へ向け馬車を走らせた。





     


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