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闇の帝国    作者: 大和 武
17/288

第 17 話  司令官の凱旋帰国。

 そして、明くる日の早朝。


 「皆さん、出発の準備は終わりましたか。」


 「狼犬部隊完了しております。」


 「司令官、第5番大隊、出発準備完了です。」


 「分かりました、では、農場に向かって、しゅっぱ~つ、全体進め。」


 司令官の号令で、狼犬部隊を先頭に城門を出、一路、最終目的地の農場へ


と向かった。


 最後の警備隊が城門を出ると。


 「ホーガン、早足で、3番農場まで行って下さい。」


 「はい、了解しました。


 「狼犬部隊、早足で進め。」


 何も知らない、領民達は、何故、急ぐのかわからなかったが、其れは、余


りにも農場まで距離が有るために、今のままで進むと、今日の昼どころか、


今日中には、農場には着かないのだ。


 それでも、4番農場の前を通り過ぎると。


 「ホーガン、これからは、少し緩めて下さいね。」


 ホーガンもわかっている。


 そして、2番農場の付近を通り過ぎると、全体の進み方が変わり、やが


て、懐かしの農場が見え、農場の城門は開いている。


 「全体、気を付け、司令官に対し、敬礼。」


 其れは、ロシュエが、手を回していた、城門を入ると、第1、第2番大隊


の兵士全員が左右に分かれ、一斉に敬礼し、先頭の司令官、次に狼犬部隊、


左右に分かれ、領民を守る、第5番大隊、最後の警備隊が通り過ぎるまで続


くので有る。


 其れは、正しく、司令官の華々しい凱旋帰国で有る。


 話は、少し戻り、城での話しに。


 「司令官、宜しいでしょうか。」


 「リッキー隊長、其れに、ホーガン隊長も一緒でしたか、どうぞ、宜しい


ですよ。」


 「司令官、さっき、ホーガン隊長とも、話をしてたんですが、良くもまぁ


~、この城まで帰って来れたと思いますねぇ~。」


 「ええ、私も、其れは、実感していますよ、ウエスの兄と言うのは、通り


道に有る、全ての国を滅ぼし、住民を虐殺して行くのですからねぇ~。」


 「司令官、私も、本当に、あの国が残っていたとは、今も、信じられない


んです。」


 「ホーガン隊長の気持ちはよく分かりますねぇ~、確かに、普通で考えれ


ば、城主も、領民の人達全員が無事で、生き残っている事の方が不思議です


からねぇ~。」


 「本当ですよ、奴らは、殺戮を繰り返し、自らの軍隊を巨大化して行った


のでしょうからねぇ~。」


 「リッキー隊長、私は、今更ですが、私のおりました城が襲われなかった


のが不思議なくらいですよ。」


 「司令官、私もですよ、だって、ウエス達が、何故、攻撃しなかったの


か、其れが、今でも、分からないんですがねぇ~。」


 「リッキー隊長、私もです、やはり、この城に誰もいなかったと言う事に


なるのでは。」


 「ホーガン隊長、私達が、この城を離れる前なんですよ、あの当時、この


城の城主は、この付近一帯を治めておられたのですがね、この付近では、十


年間以上も作物が不作で村民は、他の土地へと移って行ったのです。」


 「司令官、其れは、本当なんですか。」


 司令官は頷き、ロシュエ達が、この地に来る以前の事を思い出していた。


 城の者達は、領民が、村を捨て、他の土地に向かうのも止める事も出来ず


に、その様な時に、ロシュエ達が、この城より離れた所に農場を造り、豊か


では無かったとしても、多くの人達が生活している事を知り、司令官に、領


民と、兵士達の面倒を託し、自殺したので有る。


 「ホーガン隊長、本当の話ですよ、私もね、この付近一帯が、それこそ、


岩石だらけでね、多くの村人が作物は作れないと、村を離れて行くのを止め


る事も出来ませんでしたからねぇ~。」


 「じゃ~、今の、1番から、5番農地だったんですか。」


 「そうですよ、何処を見ても、岩石ばかり、それに、周りは深い森、その


森には、狼の大群ですよ、村民が村を捨てる気持ちも、今では理解出来ます


よ。」


 「ですが、何とか、出来なかったんですか。」


 「ホーガン隊長、私もねぇ~、随分と考えましたよ、でも、閣下の様には


行かなかったのです。」


 「はい、私も、将軍のパワーには驚かされますよ、私もねぇ~、実は、有


る国の軍隊で警備隊長を務めていましたが、その国の城主も、大変なパワー


の持ち主でしたが、今の将軍とは、比べものにはならないですから。」


 「閣下は、並みの軍人では有りませんからねぇ~。」


 「司令官、ですが、この城から、農場までとは反対方向に広い草地が有り


ますが、その土地に農地を作ろうとは考えられなかったのですか。」


 「ホーガン隊長、私も、この城に居た頃は思いましたよ、でもね、あの草


地には狼の大群が、其れも普通の数では無いのです。」


 ホーガンの指摘は最もな話で、だが、現実は、狼の大群が、常に数十も、


草地にいる。


 その草地から、付近の森に入り、餌となる動物の狩りに来るので、村民


は、恐れて、草地の開墾も出来ず、かと言って、森に入る事すら出来なかっ


たので有る。


 「ホーガン隊長も知っているはずですよ、農場前に有る深い森、その森に


は、一体、何頭の狼がいるのか分からないのですよ、我々、兵士でも恐ろし


いと思っているんですからねぇ~。」


 「はい、其れは、私も、実感しています。


 私達も、狼の恐ろしさは、嫌と言うほど知っていますので。」


 「閣下が、その恐怖を一番良く知っておられると思いますよ。」


 「司令官も、よく知っておられるのでしょう。」


 司令官自身、この地に、狼の大群が生息しているのは知っている、だが。


 「ですがねぇ~、閣下達が経験された事に比べれば、今回、私達の任務な


んて、楽だったと、私は、思っておりますよ。」


 「其れは、何故ですか、我々も、狼と、敵が何時、襲って来るのか、其れ


を監視しながらの任務だったと。」


 「ホーガン隊長、それは、私もわかっておりますよ、ですがね、今回、私


達のは目的も有りましたし、其れに、帰る場所も有りました。


 ですが、閣下には、その目的地も無く、只、只管、追っ手から逃げるため


だけの旅だったと思いますよ。」


 「将軍から聞かれたのですか。」


「ホーガン隊長、それに、リッキー隊長も、よ~く聞いて下さいね、閣下


は、その様な話はされませんよ、私は、有る女性から聞いたのですよ。」


 ロシュエが、何も話さなかったとしても、最初、この地に着き、ロシュエ


が司令官として居た駐屯地近くの村々から数千人の農民達が、今の農場地に


着くまで味わった苦労を知っているため、最初の農民からも話も聞く事が出


来る。


 「其れは、テレシアさんですか。」


 「テレシアさんも言われませんよ、あの人は、閣下が、どれ程苦労して、


数千人の農民をこの地に導いてきたかを、一番、知っておわれますからねぇ


~。」


 「司令官、で、我々が、城を出、この農場に来た時、将軍は、司令官だっ


たと思いますが。」


 「そのとおりですよ、あの当時、閣下は、村民からも、兵士達からも、司


令官と呼ばれておられましたよ、同じ、司令官でも、私には、到底出来ない


話です。」


 「でも、将軍は、何故、その様な苦労されてまで、この地に来られたので


すか。」


 「今、我々の敵は、此処の農場に狙いを付けているので、兵士達もです


が、何としてでも防ぐんだと、全員が頑張っていますが、閣下の時は違って


いたと聞きました。」


 「えっ、敵軍の攻撃から逃げるためでは無かったのですか。」


 「ええ、今の我々には想像も出来ませんがね、まぁ~、お家騒動だと聞き


ましたよ。」


 「えっ、お家騒動って。」


 ホーガンには、想像も出来ない。


 勿論、司令官も、リッキー隊長も、それに、ホーガン隊長も経験した事も


無かった。


 「私が、聞いたところでは、閣下のおられた国の国王が亡くなられたので


すが、国王には、お二人の皇太子がおられ、そのお二人が、次の国王の座を


巡っての争いだったそうですよ。」


 「二人の皇太子がですか、でも、私の感覚では、長男が引き継げば問題は


無いと思いますが。」


 やはり、全く経験の無いと言うのは、この様な、跡目問題に関しては想像


出来ないのだろうか。


 「ホーガン隊長、私も、同じ様に考えますが、でも、国王になるとです


よ、亡き、国王の領地は勿論、全ての権限は、国王の与えられますからね、


国王になると言う事は、二人の皇太子にとってもですが、問題は、二人の皇


太子に付く家臣達だと思いますよ。」


 国王の家臣となれば、後々の代までも安定した権力もだが、自らも含め、


家族達も華やかな生活を約束されたも同然で有る。


 「司令官、その国王の家臣って言うのは、特別な待遇でも有るのです


か。」


 「まぁ~、今の我々には全く関係は有りませんがね、一番にですよ、国王


直属の家臣ともなれば、権力が手に入るのです。」


 「でも、権力って、そんなに大事なものなんですかねぇ~。」


 「閣下は、私達に対して、オレは、将軍だ、だから、将軍の命令を聴けと


は、一度も申された事が有りませんよ。」


 「はい、私も、聴いたのは、一度か、二度、有るか無いかですよ、あのウ


エスの時でも、命令は出されませんでしたから。」


 「ええ、そのとおりですよ、我々も同じで、殆ど、命令と言うものを出す


必要が無いのですからねぇ~。」


 「そりゃ~、司令官、私もですが、我々の狼犬部隊だって、全員が、将軍


の気持ちを知っていますから、命令なんて出す必要が無いんですよ。」


 「其れなのですよ、ホーガン隊長が言われるとおりなのです。


 我々、全兵士が、閣下が、何を言わんとするかを知っている、之が、一番


大切だと、私は、思っているのです。」


 「では、国王になればと言うよりも、家臣は、自分達の権力と富を得る為


に、お家騒動を引き起こしたと言われるんですか。」


 「ええ、私は、その様に思っております。


 多分ですがね、二人の皇太子は、家臣達の甘い言葉に誘われたのだと思い


ますよ。」


 「じゃ~、将軍は。」


 「閣下は、どちらにも付きたくは無かったのでしょう、ですから、近隣の


村々の人達も、閣下と、同じ思いなので、閣下と、共に駐屯地を離れ、新し


い農場を造るために、国を捨てられたと、私は、今でも、その様に思ってお


りますが。」


 「でも、何故、追って来たんですか、国を捨てる村民に、その先、どんな


苦難が待っているかも分からないのに。」


 ロシュエもだが、司令官も、リッキー隊長も城を去ると言う決心する事の


重大さを知っている。


 「司令官、私も、本当の事を言えば、城をと言うよりも、国を去ると言う


事には簡単には、決心が付かなかったのです。」


 「リッキー隊長も、随分と悩まれたと思いますねぇ~。」


 「ええ、あの時、国王から、命令を受けた時には、全く信じる事が出来ま


せんでしたからねぇ~。」


 「其れは、私も、同じですよ、ですから、閣下が、決断された事が結果的


には良かったのですがね、でも、この地に辿り着くまで百日間と言う、今


の、我々では想像も出来ない程の苦難の連続だと聞きましたよ。」


 「えっ、百日間もですか。」


 「そうですよ、それに、国を離れた頃から、日暮れも早くなり、日が経つ


毎に、寒さも増してきたそうです。」


 「では、寒くなる頃から百日間ですか。」


 「そのとおりですよ、村民は、家財道具と、持てるだけの食料、でもね、


問題は、村民ですよ、我々、兵士は、日頃訓練を行なっていますから、暑


さ、寒さも、ある程度の我慢はするものだと思っています。


 ですが、農民は、暑い、寒いは分かっていても、寒い中を、何時まで続く


のかも知れない旅をするんです。


 我々でも、目的地が分かっていれば、少々の苦しい事も我慢は出来ます


が、今、我々の農場を襲うと考えている、敵と同じで、目的地も分からない


旅です。


 ホーガン隊長は、その様な、果てしない旅を続ける事は出来ますか。」


 ホーガンは、考え込んだが、答えは簡単、何の目的も無く、苦しい旅に、


一体、何処の誰が好き好んで行きたいと思うだろうか。


 「司令官、私でしたら、絶対に無理ですよ、目的地も分からない、それに


ですよ、寒いとなれば、私は、行きませんからねぇ~。」


 「其れが、当然の考え方だと、私は、思いますよ、でも、閣下は、決断さ


れたのです。


 良かったのは、閣下に付いて来られた村民が、閣下を信頼されたのだと思


います。」


 「ですが、何故、寒くなる時期を選ばれたのですか、私ならば、少し待っ


て温かい時期になってから国を出ますが。」


 「ええ、私も、その様に思いますよ、ですがね、若しも、若しもですよ、


当時の閣下、司令官に対してですね、司令官を追い出せば、自分の権力で、


村民から作物を取り上げる事を考える様な人物がですよ、司令官もですが、


村民に迫害するのは直ぐに分かりますよ、閣下はね、村民の迫害を恐れたの


です。」


 「何故、迫害をするんですか、村民を上手に使えばよいと思いますが。」


 「ホーガン隊長も、その様に思われるのは、この農場に来られ、農場の人


達を知り出したからでは無いですか。」


 「あっ、そうか、分かりましたよ、その家臣達は、村民を恐れていたんで


すねぇ~、村の人達を恐怖の中に入れて置けば良いと。」


「まぁ~、其れは、分かりませんが、あの敵軍も同じだと思いますよ、どの


国や、村を襲っても、一番に必要な物は、食料です。


 その次に、国の人達が、自分達の思い通りになるからです。


 其れが、思い通りにならないので、全員を殺して行くのですよ。」


 「じゃ~、将軍は、其れを恐れ、国を捨てたと言うのですか。」


 「私には、出来ませんが、閣下は、その様に決断され、村民を連れ、長く


苦しい旅を続けられたと聞きましたが。」


 「じゃ~、寒さや、暑さは関係無かったんですか。」


 「私は、その様に思いますよ。」


 「司令官、私達が、将軍に、お会いした時には兵士も少なかったと思った


のですが。」


 「でも、其れが、大変だったそうですよ。」


 「でも、私が見たところでは、多くおられる様に思えるのですが。」


 でもね、この地に来られた時には、半数近くになったそうですよ、それ


に、農民も減ったそうです。」


 「司令官、やはり、食料が無かったと言う事が最大の原因なんですか。」


 「其れも有ると思いますが。大半は、そうでは無かったそうですよ。」


 「じゃ~、何が、原因で、兵士も減ったんですか。」


 「其れが、狼だそうです。」


 「えっ、狼がって、狼がそんなにいたんですか。」


 「閣下は、追ってから逃れるために、大きな道を避けて、少し狭い道を選


ばれたのですが、その道と言うのは、片方が、切り立った山で、片方が、崖


になっているところなのですよ、で、その道と言うのは、雪が多く積もり、


歩くにも困難な道だったそうです。


 食料不足よりも、険しい山道で、体力の無い年配の人の中には、自分の食


べ物よりも、他の人達のために、と、自ら深い谷へ飛び降りたと。」


 「えっ、じゃ~、自分がいなくなれば、他の人が助かると考え、自分の命


を、何故、そんな馬鹿な事を。」


 「そうですよ、其れにもましてね、村民の中には、自分から、狼の群れに


飛び込み、狼を殺して、みんなの食料にと言われた人達も多勢いたそうです


よ。」


 司令官は、村民達の壮絶な死に方を話すのだ。


 「でも、兵士が、狼を殺すんですから、何も、そんな事までする必要は無


かったと思うのですが。」


 「其れはね、今の私達ですから、その様に考えますがね、仮にですよ、ホ


ーガン隊長が、狼の大群に襲われたと考えて下さいね、自分も負傷してい


る、傷付いた身体で、険しい山道を、其れも、雪の降る中を歩く事が出来な


いと判断すれば、どの様な行動を取りますか。」


 「其れは、勿論、自分の命を絶ちますよ。」


 「そうだと思いますよ、兵士の多くも負傷しているんですよ、勿論、村民


もですがね、その人達は、他の仲間を助けるために、自分の意思で、狼の群


れに飛び込むので、兵士に頼んだそうですよ、もう、自分は駄目だから、自


分の命と引き換えに、狼を殺して、食料にして欲しいと。」


 「じゃ~、兵士や、村民は、自分の命と引き換えに、狼を殺せと、そんな


無茶な事が。」


 ホーガンも、リッキーも、初めて聞く、ロシュエ達の壮絶な戦で有る。


 だが、その時、ロシュエは、止める事は出来なかったのだろうか、だが、


負傷した人達は、みんなについて行く事も無理だったようで、其れが残った


人達に、今でも残る、忘れる事の出来ない、一番の出来事なのだ。


 「司令官、将軍は、何も出来なかったのでしょうか。」


 「其れはね、今だから言える事だと思いますよ、其れに、数百人か、其れ


以上の人達の中には、自分の子供のためだと、谷へ身を投げた人達も多くお


られたそうです。


 テレシアさんの母親もそうだと。」


 「えっ、テレシアさんのお母さんもですか。」


 「ええ、その様に聞いていますよ。」


 「司令官、それで、私達が着いた時には、若い人達ばかりで、では、年配


の人達の大半は、自分の命を絶たれ、また、狼の犠牲にと言うよりも、囮に


なられたと言うべきでしょうねぇ~。」


 「そうですねぇ~、犠牲と言う言葉では無理ですよ、我々が、出陣する時


に、お風呂部隊のリーダーが言った言葉を覚えておられると思いますが、彼


も、また、他の人達のために、囮になられた人達の事を覚えているのです


よ。」


 「じゃ~、あの言葉は、彼自身の思いのこもった文言だったと言うのです


か。」


 「ええ、私は、そうだと思いますよ、閣下が、この地に辿り着くまで、ど


んなに苦労されたかは、誰から聞いても、同じ答えだと思いますよ。」


 「では、何時も言われています、兵士は農民を守るのが任務だと。」


 「私も、兵士の一人ですから、兵士が、戦で戦死するのは、言い方は悪い


ですがね、仕方は無いと思っております。」


 ホーガンも、リッキーも頷き。


 「司令官、私もですよ、私は、兵士になった頃の事を思い出しましたが、


我々、兵士は、戦争で戦死しても悔いは残りませんが、相手が狼だと、例


え、死亡しても浮かばれませんよ、私の、身体に数本の矢が刺さるのは覚悟


していますが、之が、狼の牙となれば、死んでも死に切れません。」


 司令官も、リッキー隊長も戦争で、戦死するのは納得出来ると言うのだ、


だが、狼に噛み殺され、天国に行って、仲間にどんな説明をしても笑われる


と思うので有る。


 戦死は諦めるが、相手が、狼だと、諦めは着かないのだと。


 「リッキー隊長、私もですよ、だって、天国か、地獄に行くのか、其れは


分かりませんがね、ホーガンは、狼に殺されたって言われたら、一体、私


は、何処に行けばよいのですか。」


 ホーガンの話に、笑いも出来ない、司令官と、リッキー隊長で有る。


 「では、将軍は、狼に対しては特別な。」


 「いや、其れは、無いと、私は、思っていますよ、狼も、生きる為に、他


の生き物を餌にしていますがね、人間は、全く違いますよ、私もですが、正


か、殺した人間を食べる事が出来ますか。」


 「司令官、私だって嫌ですよ。」


 「閣下はねぇ~、狼に対しては、特別な憎しみは持っておられないと思い


ますがね、之が、相手が人間となれば別だと思いますよ、特に、あのウエス


達に対してはね。」


 「私も、初めてでしたよ、将軍の、あの恐ろしい顔が、今でも思い出す


と、ぞっとしますからねぇ~。」


 ホーガンは、ロシュエは、本当に優しい将軍だと思っていたのだが、ウエ


ス達に対する憎しみ方は、異常な程だと感じたので有る。


 「私もですねぇ~、正か、あの様な方法を取られるとは思っても見なかっ


たですから。」


 「そうだと、思いますよ、私も、閣下の事ですから、簡単には終わらない


と思ってはおりましたが。」


 「はい、私も、突然、奴らに、石を投げろって言われた時は、本当に驚い


たんですよ、だって、そうでしょう、私達が投げる小石で、人間が簡単に死


ぬ事は有りませんから。」


 「勿論ですよ、でもねぇ~、一番、驚いたのは奴らだったと思いますよ、


中には、早く殺してくれって言っておりましたからねぇ~。」


 「身体中に石を投げられれば痛いですが、でも、将軍は、奴らを簡単に殺


すのでは無く、苦しんで、苦しんで、最後には、冷たい川に放り投げろっ


て、川に掘り出されても直ぐには、死ねなかった思いますよ、だって、何度


も浮き上がってきましたからねぇ~、あの時、将軍は、本当に恐ろしい人だ


と分かりましたよ。」


 「リッキー隊長、ですからね、今度の戦は、壮絶な戦いになると覚悟して


下さいね、ホーガン隊長もですよ、私を含めてですが、我々の仲間からも相


当な犠牲者が出ると、考えておりますので。」


 司令官は、今度の戦は、ウエス達の攻撃よりも、激しいと考えている。


 幾ら、歩兵が寄せ集めだと言っても、寄せ集めの兵士ほど、恐ろしい者は


いない。


 其れは、仮にでも、敵軍の隊長、いや、将軍を殺したとなれば、その兵士


は、一躍、英雄扱いと成、軍の中では、上級幹部になるとでも、言葉巧みに


言っているはずだ。


 その為、歩兵、特に寄せ集めの兵士達は、何も考えず、突進して来るので


有る。


 「司令官、私達、狼犬部隊も、覚悟を決めておりますので。」


 「ですが、閣下が、どの様な作戦を考えておられるのか分かりませんが、


戦法で、我々が負ける様な事は無いと思っていますよ。」


 「司令官も、作戦会議には、勿論、出席されるのでしょうねぇ~。」


 「私は、閣下の事ですから、隊長も含め、全員の意見を聞かれると思いま


すよ。」


 「じゃ~、我々もですか。」


 「勿論ですよ、狼犬部隊もですよ。」


 「では、司令官も、作戦を考えておられるのですか。」


 「私ですか、まぁ~、其れよりも、外に出ましょうか。」


 司令官も、改めて見直す必要が有ると考え、今であれば、城外に出て、リ


ッキー隊長と、ホーガン隊長にも説明と、言うよりも、作戦を考えれるので


ないかと思った。


 「そうですねぇ~、私も、外に出て見れば、何か、思い付くかも知れませ


んので。」


 この後、3人は、城外に出るのだが、その時、丁度、警備隊長もきた。


 「司令官殿、どちらへ。」


 「やぁ~、貴方ですか、いえねぇ~、城外に出て、作戦でも練ろうかと思


いましたのでね。」


 「では、私も、参加させていただきたいのですが。」


 「ええ、よろしいですよ、では、行きましょうか。」


 「司令官殿と、お二人の隊長と、私が、外に出ますので、門を開けて下さ


い。」


 大きな城門が音を立てて開き、4人は、外に出る。


 「では、今から、聞きますがね、その前に、リッキー隊長も、ホーガン隊


長も、守るのでは無く、この城を攻め落とす側、即ち、敵の立場で考えて下


さいね。」


 「じゃ~、私が、敵の大将と言う立場で、この城をですか。」

 

 「ええ、そのとおりですよ。」


 「司令官殿、私も、参加させていただいても、よろしいでしょうか。」


 「ええ、勿論、よろしいですよ、では、考え方を変えて下さいね、ウエス


が、あの時、城主の軍隊と、農場へ攻め込んだ時ですねぇ~、あの時は、ま


だ、城と農場の間には、城壁も無かったと思いますよ。」


 「私も、覚えていますよ、この付近一帯が、草原で、大きな岩が点在し、


狼も、大群をなしていましたから。」


 「ええ、でも、今は、農場から城まで、城壁が完成していますねぇ~、さ


ぁ~、ホーガン隊長は、どの様な作戦で、城から、農場まで続く城壁を攻め


られますか。」


 「う~ん、でもねぇ~、之は、本当に、大変ですよ、でも、私で有れば、


前の城壁から攻めますねぇ~。」


 「リッキー隊長は。」


 「はい、私も、城壁の方が攻めやすいですねぇ~、城は頑丈に造られてい


ますので。」


 「じゃ~、警備隊長は。」

 

 「はい、私も、お二人の隊長と、一緒ですが、ただ、中の様子が全く分か


りませんので。」


 「そのとおりなのですよ、ホーガン隊長も、リッキー隊長も、決して間違


いでは無いと、私は、思います。


 ただねぇ~、2人は、中を知っておられます、其れとは反対に、警備隊長


は、中の事は全く知らない、其れだけですよ、先程も言いましたが、ウエス


は、城から農場までは、草原だと報告していますよ。」


 「ですが、警備隊長の様に全く知らなければ、この城壁に中に、一体、何


人の兵士が隠れているのか、其れが、分からないと言う事ですよ。」


 「では、仮にですが、司令官であれば、何処から攻められますか。」


 「ホーガン隊長、私であれば、ウエスの言葉を信用して、城壁と、森の間


を進みますねぇ~。」


 「其れは、森に沿ってですか、それとも、城壁に沿ってでしょうか。」


 司令官自身は、まだ、何も考えておらず、思い付きで答えた。


 「う~ん、実を言いますとね、私は、何も考えて無かったのです。


でも、之は、本当に、難しいですよ。」


 「でも、私は、森に沿って進めば大丈夫だと思いますが。」


 「その考え方が普通だと思いますよ、城壁から攻撃を受ければ、森の中に


隠れる事も出来ますからねぇ~、ですが、森の中には、狼の大群がいるんだ


と報告していると思いますよ。」


 「あの~、司令官殿、私の考えですが、城壁の真下を通ると言うのは駄目


でしょうか。」


 「う~ん。」


 司令官も考え込んだ、普通の城壁では可能だが、この城壁には特殊な造り


になっている事を警備隊長は知らない、それに、上部は、屋根が付けられて


いる。


 「警備隊長は、城壁の構造を知っているのですか。」


 「其れが、全く知りませんので、でも。」


 「そうでしょうねぇ~、この場所から見ても、矢を射る場所が見えません


が、でも、よ~く、見て下さいね、所々に小さな隙間が有るのが見えると思


いますが。」


 3人は、城壁を見ると、僅かにだが、小さな穴が開いている様に見える。


 「司令官、でも、あの小さな穴から矢を放つのですか、其れは、無理です


よ。」


 「司令官、あの内側は、一体、どうなってるんでしょうかねぇ~。」


 リッキー隊長も、ホーガン隊長も、実は知らなかった。


 「あの穴であれば、ホーガン矢を放つ事は可能ですよ。」


 「司令官殿、ですが、あんな小さな穴から、本当に矢を射る事が出来るの


ですか。」


 警備隊長は、ホーガンと言う武器の特殊性を知らなかった。


 「私は、あれで、十分だと思いすよ。」


 リッキー隊長は、可能だと思った。


 「其れが可能であれば、敵が、城壁の真下を通ると考えればですが、あの


穴から少し横を向けば、ホーガン矢を放つ事は出来ますよ、ですが、其れ


も、成功するのは最初だけでしょうねぇ~。」


 「司令官、作戦を立てると言うのが、これほど、困難な作業とは考えもし


なかったですよ。」


「ホーガン隊長、閣下はね、其れを、お一人で考えられているのですよ。」


 「ですが、司令官も考えておられるのでは。」


 「勿論ですよ、只ね、私と、閣下の違いは、閣下は、敵、味方の両方を考


え、それに、私や、各隊長の意見も入れながら、全てを考えておられるので


すよ。」


 「でもですよ、将軍も、間違いは有ると思いますが。」


 「ええ、其れは、当然有りますよ、ですがね、結果的には、私の考え方


も、閣下の考え方も、殆ど、一緒だと言う事ですよ。」


 「司令官殿、私が、先程、考えました、城壁の真下を行くと言う事も間違


いでは無いのでしょうか。」


 「そうですねぇ~、普通の城壁ならば考え方としては、間違いでは有りま


せんが、多分、多分ですがね、造る時、その事まで考えて造られているのな


らば、敵は、大損害を受けると思いますよ。」


 「私が、敵軍であれば、森の中を進みますねぇ~。」


 「まぁ~、其れも一理有りですが、ウエスの軍は、森に入って大打撃を受


けておりますので、森の中には入らないと思いますよ。」


 リッキー隊長は、思い出した、森の大木を切り倒し、馬でも、兵士でも簡


単には進め無い様にされている事を。


 「司令官、思い出しましたよ、確かにそうでした。


 だって、森の中に入っても簡単に進む事が出来なかったと思います。


 所々の大木を切り倒して有りますので、馬は進めず、兵士は、大木を乗り


越えるので、でも、其処には、あの時は、1番大隊だったと思いますが、待


ち伏せされたと思いましたが。」


 「えっ、この前の森にですか。」


 「そうですよ、1番大隊と、2番大隊は、将軍の考えておられる事は、分


かっているのですよ、特に、二人の隊長はね、ですから、我々が正かと思う


様な作戦を実行されますよ。」


 「う~ん、之は、私の頭では分からなくなってきましたよ、だって、城壁


の真下も、森に入る事も困難だとすれば、後は、道の中央を通って正面の農


場に突撃する方法しか残って無いですよ。」


 「ホーガン隊長、それですよ、私はねぇ~、奴らを中央に引きずり出した


いのです。


 之はねぇ~、多分、閣下も、同じ考えだと思っているのですがねぇ~。」


 「ですが、司令官、中央をですよ、騎馬隊が突っ込むとなれば、直ぐに農


場の正面ですよ。」


 「其れですよ。」


 「えっ、でも、そんな事になれば、防ぎ様が。」


 「ホーガン隊長、考え方を、今度は、我々側に置いて下さいね、中央を騎


馬隊が突進すれば逃げ道は。」


 「あっ、そうか、農場まで行かなくても、城壁と森の間に入れば、逃げ道


は無いと言う事になりますねぇ~。」


 やっと、ホーガンもわかったのだが、まだ、警備隊長は理解出来ない。


 「司令官殿、中央を進んで、農場に着かれたら終わりですよ。」


 司令官も、二人の隊長も二ヤリとした。


 「警備隊長、我々の農場ですがねぇ~、前に有る様な城壁では有りません


よ、狼を防ぐために造られた城壁ですからね、人間が城壁を登る事は出来ま


せんよ、ですから、何も心配する事も無いのです。」


 「えっ、狼が登れないって。」


 「そうですよ、前の城の様な構造ならば以外と登る事は出来ますがね、狼


が登れないと言うのは、壁の岩石が全て自然のままですから、全てが丸みで


角が無いのです。」


 警備隊長は、全ての城壁が大木で造られていると思っていた。


 「私は、全てが大木で造られていると思っていましたので。」


 「いや、よろしいですよ、警備隊長と同じ様に、敵は大木の城壁だから、


簡単に落城するだろうと思うでしょうが、まぁ~、私に、言わせれば、大変


な間違いで、気付いた時には、前後をふさがれ、逃げ場の無い状態になりま


すねぇ~。」


 「ですが、司令官の思い通りに行くでしょうか。」


 「其れなのですよ、私はねぇ~、なんとしても、奴らを誘い込む方法は無


いかと考えているのですが、其れが出て来ないんで、困っているのです。」


 司令官も、最後の詰が出来ないと悩んでいる。


 「少し話題を変えましょうか。」


 「そうですねぇ~、私は、頭が混乱を始めましたので。」


 「ホーガン隊長も、作戦会議に出るのですからね、これからの数日間は真


剣に考えて下さいね。」


 「はぁ~。」


 ホーガンは、本気で考え様と思うのだが、作戦を練ると言うのが、これほ


ど大変だとは思っても見なかった。


 「司令官、配置でしょうねぇ~。」


 リッキー隊長も少し楽になったのだろうか。


 「そうですねぇ~、各大隊の配置は重要ですよ。」


 「では、私の考えですが、私は、城に入ります。」


 「うん、其れは妥当ですね、それで、4番大隊は。」


 「フォルト隊長には、4番、3番農地に、フランド隊長には、2番農地


に、オーレン隊長には農場本体に入っていただければ、よろしいかと。」


 「では、ロレンツ隊長は。」


 「はい、今度の作戦では、私の勘ですが、森に入られる様な気がするので


すが。」


 其れは、司令官が、考えたと同じ配置だ。


 「リッキー隊長、私達は、どうなるんですか、今回の作戦には必要無いと


でも。」


 司令官は二ヤリとした。


 「ホーガン隊長、狼犬部隊の任務はですねぇ~、でも、大変ですよ、一番


厳しい任務を、閣下は、下されると思いますからねぇ~。」


 ホーガンは、司令官が言った意味が分からない。


 「司令官、その一番厳しい任務って、一体、どんな任務なんですか。」


 「まぁ~、閣下の事ですから、今度は、間違いは許されないと覚悟された


おりますのでねぇ~、狼犬部隊の任務は、敵軍を誘い込む任務で、まぁ~、


簡単に言えば、囮になると言う事ですよ。」


 「司令官、囮って事は、敵軍を上手に奥まで誘い込むと言う任務です


か。」


 「司令官殿、その任務、私達では無理でしょうか。」


 警備隊の隊長は、狼犬部隊の任務で、作戦の是非が決定するとは考えず、


単に敵軍を誘い込めば良いと考えている。


 「今の警備隊の能力では無理ですよ、この作戦は狼犬部隊だからこそ出来


る可能性が有るのですよ、貴方の気持ちは分かりますが、作戦には、時と場


合によっては経験が必要なのですよ、貴方の警備隊は、農場に入って下さ


いね、閣下も、同じ答えを出されるとおもいますので。」


 「はい、承知、致しました。」


 警備隊長は、今回の作戦が初陣なのに、その様な素人に厳しい判断を要求


される任務に就かせる事は出来ないと。


 「ですが、将軍が、果たして、我々の狼犬部隊に栄誉を与えて下さるでし


ょうか。」


 「う~ん、この判断は大変難しいですねぇ~、ですが、リッキー隊長は、


狼犬部隊を何処に配置すれば良いのか纏まったと思いますよ。」


 「はい、其れは、もう、狼犬部隊は、即適応出来る部隊ですから、最初


は、偵察にと考えておりましたが、でも、我々の中で、偵察任務の上手なの


が、第1大隊の第1小隊だと、私は、思っておりますので、多分、その様に


なると、じゃ~、狼犬部隊はと考えた時にですが、ロレンツ隊長の事ですか


ら、最前戦を希望されると思います。


 その最前戦とは、森の中に隠れ、一斉攻撃に入られると、では、その仕掛


けはと考えた時に、やはり、狼犬部隊が最適だと考えました。」


 「あの~、よろしいでしょうか。」


 「はい、よろしいですが、何か。」


 「今、言われました、ロレンツ隊長ですが、何故、最前戦を希望されるの


でしょうか。」


 警備隊長が、疑問を持つのも仕方が無い。


 「そうですねぇ~、何も、知れされていないのですからねぇ~、じゃ~、


説明しましょうか、まぁ~、簡単に言いますとね、1番大隊も、2番大隊も


死に場所を求められているのですよ。」


 「えっ、死に場所を求めるって、本当なんですか。」


 警備隊長にすれば、大変な驚きで有る。


 確かに、兵士で有るならば、戦死は覚悟の上なのだが、それにしても、何


故、死に場所を求める必要が有るのだと。


 「ええ、そうなのですよ、貴方は、驚かれるかも知りませんがね、其れ


が、本当の話なのですよ。」


 「ですが、司令官殿、兵士と言うのは、戦争になれば、戦死は覚悟してい


ると思いますが、何故、態々、死に場所を求める必要が有るのか、私には、


全く、理解出来ないです。」


 その後、司令官は、明日、到着する農場の経過に付いて説明した。


 「いかがですか、分かっていただけましたでしょうか、貴方が言う様に、


我々兵士は、戦争になれば、戦死は覚悟しています。


 兵士も戦死するのであれば、言い方は悪いですが、少しは納得出来ます。


 でもね、彼らは、納得出来ないのですよ、戦死ではなく、狼の牙に殺され


たと言う事もですが、兵士や、多くの村民が、狼の群れに飛び込んだ、お陰


でと言いますか、それで、多くの人達が生き残れたと言う事も事実だと、其


れは、最初、この地に到着された全員が、理解されておられます。」


 ロシュエ達が、どんなに悔しい思いをしてきたのか、其れが、結果的に


は、兵士達が死に場所を求めていると言う表現になっている事も事実だ。


 「司令官殿、では、1番大隊と、2番大隊は、会えて、1番危険な場所に


向かわれるのですか。」


 「そうですねぇ~、閣下も、同じ気持ちだと思いますよ、私は、閣下が、


1番、其れを求められていると思いますよ。」


 「では、将軍が、1番先に戦死したいと思われておられるのですか。」


 「私ならば、その様にしますよ、閣下も、何時までも生き恥を晒したくな


いのです。


 特に、閣下は、今度、確実に起こるで有ろうと言う戦争にはですねぇ


~。」


 司令官も、同じ体験をしたので有れば、ロシュエと、同じ行動を取ると言


うので有る。


 「私は、今まで、本当の戦の経験が無いのですが、司令官殿の申されま


す、今度の戦争と言うのは、どの様になるのですか。」


 「其れは、私にも分かりませんよ、願わくば、戦になって欲しく無いと言


うのが本音ですがねぇ~。」


 「まぁ~、何とか回避する方法は無いのでしょうか。」


 「其れは、無理と言うものでしょう、敵は、正式に言いますと、国の軍隊


では有りませんよ、今では、3万人と言う巨大な大野盗なのです。


 今の時代、大きな国が、小さな国を滅ぼし、領地を拡大しておりますが、


其れは、国と国との戦争ですからね、戦争を回避する方法は、全く無いと言


う事は有りませんが、其れが、野盗ともなれば、話をしても、無理だと言う


ものですよ。」


 「警備隊長、実はねぇ~、我々、狼犬部隊も少し前までは野盗だったんで


す。」


 「えっ、ホーガン隊長がですか。」


 「ええ、そのとおりですよ、でもね、野盗になる前ですが、先日まで、貴


方のおられた国の陛下の兄でも有る、陛下の下で、私も、警備隊長を務めて


いましたので。」


 警備隊長も、正かと思ったのだ、ホーガン隊長が、野盗だとは、だが、今


では、狼犬部隊と言う正式な軍部隊で有る。


 「実はねぇ~、私も、将軍の居られる農場を襲ったんですがね、今の1


番、2番大隊は、本当の戦士集団ですよ。」


 「1番大隊と、2番大隊は、戦士の集まりですか。」


 「はい、そのとおりですよ、その大隊が、今度の戦には、全員が戦死を望


まれていると、私は、思っているのですが。」


 「私は、何としてでも、1番から、5番までの大隊と、狼犬部隊の全員


が、生き残って欲しいと、今、改めて思っています。」


 「警備隊長の言われるように、全員が、生き残れるようにと、今から、


色々な作戦を考えているのですよ。」


 「司令官殿、私にも、何か、お役に立てる任務は無いでしょうか。」


 司令官も、二人の隊長も、彼の気持ちは理解している。


 だが、今まで、一度も、戦争の経験が無い、5百人の部隊を戦闘に出す事


は、全員の戦死を意味するので有る。


 ロシュエも、今は、防御のために城壁の強化を急ぎ、其れとは、別に、数


種類の作戦を考えている。


 「司令官殿、敵の攻撃を防御は出来るのでしょうか。」


 「防御するのは、農場の人達のためで、我々のためでは有りませんよ、リ


ッキー隊長、警備隊を、第5番大隊に編入して、新しい中隊を作ると言うの


は可能ですかねぇ~。」


 リッキー隊長も予感はしていた、彼らを、最初から見ていると言う思い


と、他の大隊に編入しても、今回の戦には使えないと。


 「司令官殿、本当ですか。」


 「ええ、でも、最終決断は、閣下ですが、私の進言と、リッキー隊長の助


言があれば、閣下も、承諾して下さると思いますが。」


 「私は、別に問題は無いと考えておりますが。」


 「警備隊長、戦までの時間は有りませんので、訓練は厳しいですよ、それ


でも、よろしいですか。」


 「はい、勿論です、有難う、御座います。」


 「司令官、訓練ですが、実戦訓練が良いと思いますが。」


 「リッキー隊長、実戦訓練ならば、我々に任せていただきたいのです。」


 「そうですねぇ~、でも、狼犬部隊の訓練は、其れは、本当に恐ろしいで


すよ、数人の死者は覚悟して下さいね。」


 「えっ、訓練で、死者が出るのですか。」


 「狼犬部隊は、我々の中でも、3番目に恐ろしい部隊ですからねぇ~、そ


れだけの覚悟が無ければ、今度の戦に勝つ事は出来ませんよ、隊長が死亡す


る可能性もありますからねぇ~。」


 司令官は、本気で言っているのか、それとも、単なる脅かしなのか、其れ


は、別として、実戦訓練と言う言葉が、現警備隊を早急に戦える部隊に育て


挙げる必要が有る。


 その為には、訓練が本気でなければ、この新しい部隊の全員が戦死する事


になる。


 「分かりました、私から、全員に伝えますので、何卒、よろしく、御願い


致します。」


 彼は、司令官と、二人の隊長に頭を下げる。


 だが、ホーガン達は、どの様な訓練を行うのか、司令官も知らない。


 「ホーガン隊長、時間の余裕が有りませんので、特別に厳しく行なって下


さいね。」


 司令官も、一安心したいと思うのだが、果たして狼犬部隊の訓練に耐える


事が出来るのか、だが、幾ら、厳しい訓練を受けても、実戦ともなれば、彼


らは、混乱するだろう。


 「司令官、先程の囮作戦ですが、何処まで引き連れて来ればよいのです


か。」


 「う~ん、其れは、私にも分かりませんが、敵軍が、どの辺りまで来るか


ですねぇ~。」


 「では、4番農地まで引き連れて来れば如何でしょうか。」


 「問題は、4番大隊の配置ですが、大変、難しいのです。」


 一方で、農場の1番大隊隊長、ロレンツと、2番大隊の、オーレンも話し


合っている。


 「オーレン、私は、今度の戦では、多分、死ぬと覚悟しているんだ。」


 「ロレンツ隊長、私もですよ、私も、戦死すれば、あの世でも言い訳が出


来ますので。」


 「うん、そうなんだ、将軍には、申し訳ないと思っているんだ、其れで


ね、私は、部隊の全員と話し合ったんだが、全員が、理解してくれたよ。」


 「ですが、隊長は、一体、どんな作戦を考えておられるのですか。」


「君も、本当は分かっているはずだ、私はね、全員に聞いたんだ。」


 「隊長の事ですから、森に入るつもりなんでしょう。」


 やはり、この二人は、戦死を望んでいる、其れも、壮烈な戦死を、早く天


国に行って、先に戦死した仲間達に会いたいと願っているので有る。


 「君も入りたいだろうが、君には、将軍と、農場を死守して欲しいん


だ。」


 「隊長、私は、将軍と、農場を死守する事に反対では有りませんが、何


か、隊長だけが、目立つ様な気がしますが。」


 「いや、君が、この農場を死守するのは、他の誰にも出来ないからでは無


いんだ、私の気持ちを分かって欲しいんだ。」


 「勿論、分かっておりますが、じゃ~、将軍が許可出来ないと言われた


ら、如何されるんですか。」


 「いいや、それでも、私は、行くよ。」


 「そんな無茶な、何か、他の方法は無いのですか、隊長と、大隊の全員


が、最前戦に向かいたいと思われるのは、私も、分かりますが。」


 「うん、だがね、森に入ると言う事は、狼と、敵軍の両方を相手にすると


言う事だ。」


 「はい、勿論、分かっておりますが。」


 オーレンは、他の方法を考えている、どんな事をしてでも、ロレンツ一人


を見殺しにする事は出来ない。


 だが、ロレンツは、強引なと言うのか、強気の性格で、一度、決めると、


例え、それが、ロシュエでも止める事が出来ない作戦を考える男なのだ。


 「隊長の計画を聞きたいのですが。」


 「私の計画か、実に簡単だよ、城は、多分、第5大隊に受け持たせるだろ


うからね、5番農地と、4番農地の境目くらいから、横に配置するんだ。」


 「でも、森の中に入るのでしょう。」


 「いや、入ると言っても深くは入らないよ。」


 「では、大木の陰からですか。」


 「う~ん、其れがねぇ~、大変、難しいんでねぇ~、1本の大木に、一人


の兵士と考えているんだ。」


 「ですが、其れは、隊長自身の考えでしょう。」


 「うん、そうなんだ、だけど、今度は、ウエス達の時と違い、簡単には、


我々の作戦が成功するとは思ってはいないんだ。」


 「じゃ~、目前に敵が居ると言う事も。」


 「勿論だよ、あの時でも、我々が、森の中に誘い込んだからなぁ~、今度


も、同じ、その作戦は使えると思っているんだ。」


 「ですが、立ち木だけでは、そうだ、隊長、大木を切り倒しては。」


 「う~ん、その方法か。」


 「あの時は、歩兵も居ましたよ、今度も、先頭は歩兵だと思いますよ。」


 「歩兵か、だが、騎馬兵も多く居るんだよ。」


 「隊長、歩兵さえ殺せば、騎兵は、簡単には森には入れませんよ、あの時


も、最初だけでしたよ。」


 「じゃ~、大木を切り倒し、森に引き込むか。」


 「大隊の兵士は、あの時、放っては隠れ、放っては隠れと言う戦法で、ウ


エスの軍を混乱させたと思いますが。」


 「じゃ~、君は、あの時と同じ戦法を。」


 「私は、隊長の兵ならば出来ると思いますよ。」


 ウエスの軍を引き込み、歩兵も騎馬も混乱し、何処から飛んで来るのか分


からないと、其れに、狼の餌食になり、大混乱を引き起こしたで有る。


 「だがねぇ~、ウエスが、どの様に説明しているのか分からないんだ


よ。」


 「でも、其れを説明したとしましょうか、我々ならば、全員が理解するで


しょうが、敵軍が果たして、末端の歩兵まで説明しているでしょうか。」


 オーレンの言う様に、農場の軍ならば、末端の兵士にまで説明はする、其


れが、ロシュエの考え方なのだ。


 果たして、敵軍は、末端の歩兵まで説明がなされているとは考えられない


ので有る。


 其れは、今や、軍隊では無く、野盗の大集団となって、功績を挙げる事し


か考えない歩兵と、騎馬兵なのだ。


 「そのとおりかも知れないなぁ~、ウエス達も、軍隊と呼べないほどだっ


たからなぁ~、野盗になった以上は、虐殺と、略奪だけが、奴らの本性だか


ら、何も考えずに突撃して来るだろう。」


 「隊長、私も、奴らは説明なんか聞く耳を持たないと思いますよ。」


 オーレンの言うとおりだ、奴らは、正規の軍隊では無い。


 野盗は、最初から、虐殺と、略奪だけが目的で、それで有れば、戦法も変


わる。


 「では、我々も、戦法を変更する必要が有るなぁ~。」

 

 「そうですよ、隊長は、野盗に殺されたって、天国に行って話しをするん


ですか。」


 「私はねぇ~、正か、野盗に殺されましたって、そんな事、恥ずかしくっ


て言えないよ、よ~し、分かった、戦法を変更するか。」


 「隊長、その前にですが、配置の方法に寄っては、換わるのでしょう。」


 「配置か、其れは、簡単だ、私は、将軍に直訴するつもりだ。」


 「えっ、直訴って。」


 「配置をだ。」


 「じゃ~、隊長の考えておられる、配置を教えていただけますか。」


 「じゃ~、まず、城だけど、之は、5番大隊だ、4番大隊は、4番農地に


だ、3番大隊は、3番農地に決まりだ。」


 「じゃ~、1番と、2番農地は。」


 「うん、特に必要は無いんだ。」


 「じゃ~、私の、2番大隊が、農場本体だと言われるのですか。」


 「そのとおりだ。」


 「何故、1番と、2番農地は必要が無いんですか。」


 「だって、考えて見ろよ、敵が深く入り込めばだよ、3番と、4番大隊を


移動させるんだから。」


 「では、将軍の居られる農場本体には近付けば、3番大隊と、4番大隊が


移動し集中攻撃するのですか。」


 「勿論だ、君の、2番大隊は、本体からの攻撃、3番、4番大隊は、城壁


から集中攻撃に、それで、我々の1番大隊は、森の中から攻撃する、まぁ


~、3方からの集中攻撃になるんだ。」


 本当に、ロレンツの考えた様に上手に行くのか、問題は、後方は、何処か


らの攻撃は出来ないのだろうか。


 「でも、隊長、後方からの攻撃が無いと、敵軍は逃げる可能性が。」


 「其れが、私の考えの違うところなんだ、4番農地と、5番農地に有る、


全ての馬車で封鎖するんだ。」


 「じゃ~、二箇所を封鎖するのですか。」


 「うん、そのとおりだ、一箇所目は突破出来たとしても、二箇所目に行く


までに殆どの歩兵は死んでるよ、まぁ~、歩兵は全員殺されているから、僅


かに残った一部の、騎馬兵だけが、突破出来るかだかだろうねぇ~。」


 「でも、封鎖だけであれば、突破されますよ。」


 「其処には、勇猛な狼犬部隊が待っているからねぇ~。」


 「では、狼犬部隊の任務は最後の封鎖の時にですか。」


 「何を、言ってるんだ、狼犬部隊は、最初から活躍して貰うよ。」


 「えっ、活躍って、一体、何を任務とされるのですか。」


 「狼犬部隊には、敵軍を引き連れて来る、一番危険な任務が有るんだ。」


 「えっ、引き込みですか。」


 「そうだよ、だが、一番危険なんだ、だけど、この任務が出来るのは、狼


犬部隊だけなんだ、誰が、見ても、普通の部隊では無い事は、姿を見て直ぐ


に分かるんだ、私はね、多分ですが、敵は、狼犬部隊を見れば、偵察部隊な


のか、野盗なのか判断が出来ないと思うんだ。」


 「じゃ~、狼犬部隊の全員にですか。」


 「勿論だ、だけど、部隊で偵察とは普通では考えられないから、野盗だと


判断するだろう、だから、見方によっては、狼の毛皮を着た正規軍にも見え


るんだ、それで、敵軍が、後者の方、其れが、狼の毛皮を着た、正規軍だと


判断し追撃する様ならば、狼犬部隊の任務は成功したも同然なのだ。」


 「では、全軍で追撃させ、我々の方に誘い込むと言うのですか。」


 「そうだ、だけど、そうなれば、追撃するのは、敵の騎馬兵だ、之が、敵


の正規軍だ。」


 「では、この正規軍を全滅させれば、残るは、歩兵だけと言う事になるの


ですね。」


 「分かってきました、そのとおりですよ、騎馬兵は、正規だから、狼犬部


隊の追撃で深く入り込めばだ。」


 「隊長、分かりましたよ、後から来る歩兵は、問題は無いと言う事です


ね。」


 「まぁ~、其れが、答えですねぇ~、歩兵1万人で、1番と、2番大隊が


行けば全滅させる事は出来るが、やはり、問題は、騎馬だ、だから、私は、


森に入って、狼犬部隊を追撃して来る騎馬に攻撃すると考えているんだ。」


 「では、狼犬部隊には相当な犠牲者が出るのでは。」


 「其れは、間違いは無いでしょうねぇ~、ホーガン隊長は、一番、最後尾


に就けると思いますから。」


 「やはりねぇ~、それで無ければ、隊長は務まりませんから。」


 「でも、それだけでは無いですよ、ホーガン隊長ですが、私の見たとこ


ろ、元々が、何処かの国で軍隊の隊長だったと思いますからねぇ~。」


 「はい、其れは、私も、感じておりました、じゃ~、ホーガン隊長も、


我々と、同じで、死に場所を求めていると。」


 「ええ、私は、その様に見ていますが、ですから、何時の時でも、最も危


険な任務を選んで行かれるのですよ。」


 ロレンツ隊長と、オーレン隊長の話は、司令官の予想通りだ。


 一方、ロシュエは、城壁の内側を通って戻るのだが、内側の穴から外を見


て、作戦を考えている。


 だが、今度の戦では、自分達の兵からも、多くの犠牲者が出るであろうと


考え、それでも、他に、特別な作戦は無いか、それだけを考えている。


 今、内側では、内部の補強を行なっているので、大工さんが多勢作業に就


いている。


 勿論、大工だけでは無い、兵士達も、農場の人達もだ、だが、中には入れ


ない者達も居るのだ、彼らは、他の作業に入っている。


 お風呂部隊は、子供だけなので、薪木が作れない時もあり、其れを補って


いるのが、父親達で、それでも、誰からも不満は起きず、農場の全員が、お


互いを助け会っている。


 その様な光景を、ロシュエは、知っている、ロシュエは、農場の人達のた


めに、何としても死守するつもりだ。


 今は、誰もが苦しい、だが、その苦しみの先には、必ず、みんなが喜びを


味わえる時が来ると、農場の人達の誰もが信じて作業に入っている。


 数時間後、ロシュエは、農場の門を潜り、そのまま、執務室に入った。


 「お~い、イレノア。」


 「は~い、只今。」


 「済まんなぁ~、忙しい時に。」


 イレノアは何も言わず、首を振り、二コットする。


 「君も、既に知っていると思うんだが、この先、20日か、それとも、3


0日もすれば、3万人と言う大軍が、オレ達の農場を奪い取るために、攻撃


して来ると思うんだ。」


 この時、イレノアは、ロシュエは、死を覚悟していると思い。


 「はい、私も、十分知っております。」


 「うん、それでだよ、若しもだが、オレが。」

 

 「その先は、言わないで下さい、御願いします。


 私は、どんな事があっても、お待ち申し上げております。」


 イレノアの眼には、涙が溢れ、一筋、二筋と、頬を伝い、イレノアは、涙


を拭く事も忘れ、ぐっと、堪えている。


 「イレノア、本当に、申し訳ない、オレの様な男を一緒になったために、


君には辛い思いばかりをさせて、今は、なんて言っていいか分からないん


だ、だがよ~、オレは、イレノアを天国、いや、オレは、地獄かな、其処に


行っても、お前の事だけは決っして忘れないぜ、有難うよ。」


 ロシュエは、イレノアを強く抱きしめ、長いキスをした。


 「私は、貴方様と、一緒になれて本当い幸せ者です。


 これから先、どんな苦難があったとしても、貴方様のお傍に居させて下さ


い、御願い致します。」


 イレノアは、ロシュエの胸で、大きな声を上げて泣きたいのを我慢してい


る。


 「私は、お待ち申します、貴方様がどの様なお姿になっても、命有る限


り、私は。」


 もう、イレノアは、其れ以上、何も言わず、ロシュエの胸で泣き続け、ど


れくらいの時が過ぎたのか、イレノアは、ロシュエの胸から、そっと離れ、


何時もの所に行った。


 ロシュエは、その後姿を見ながら。


 「オレは、何と言う罪作りな男なんだ、この世で、たった一人の女性を、


一生、同じ屋根の下で、暮らす事もさせてやれないとは、イレノア、本当に


申し訳ない、許して欲しい。」


 ロシュエは、心の中で、叫び、大食堂へと向かった。


 「将軍、元気かよ~。」


 農夫達も、精一杯の気持ちで話掛けてくる。


 「お~、オレは、何時も元気だぜ、あんたも、元気そうじゃないか。」


 「まぁ~、将軍より、少しだけ疲れているんだが、それでも、まだ、大丈


夫だ。」


 「そうか、だがなぁ~、無理はするなよ。」


 「はいよ~。」


 農夫は、手を振り、作業現場へと戻って行く。


 その様なやり取りが何度か有り、終わる頃、大食堂に着いた。


 「お~い、テレシアは居るのか。」


 「なぁ~んだ、あんたか。」


「オレで、済まなかったなぁ~。」


 「で、一体、何の用事なのよ、私はねぇ~、今、物凄く忙しいんだから


ね。」


 「お~、そうだったなぁ~、それでだ、明日の用意なのか。」


 「当たり前でしょうが、今更、何を寝ぼけているのよ。」


 「うん、分かった、それでだが、明日の昼頃過ぎかも知らないんだが。」


 「私は、何時でもいいよ、だって、司令官が戻って来るんだろう。」


 「うん、そうだ、其れも、全員が無事で、此処に戻って来るんだぜ。」


 「あんた、本当に、嬉しそうだねぇ~。」


 「当たり前だろうが、前の時には、狼犬部隊からけが人を出したんだぜ、


だがよ~、今回は、全く違うんだ、オレはよ~、全員が無事に戻ってくれり


ゃ~、其れ以上、何もいらないんだから。」


 「そんな事は分かってるわよ、でも、本当に良かったわよ、私もね、本当


に心配してて何日も眠れなかったんだから。」


 「やっぱり、テレシアだよ、オレは、あんたが大好きなんだからよ~。」


 「何よ、今頃、寝ぼけた事を言ってるのよ~、あんたには、イレノアっ


て、大切な奥さんが居るんだからね。」


 「ああ、勿論だよ、オレは、イレノアを心から愛しているんだから。」


 「あんた、どんな事が有っても、イレノアを、泣かしちゃ~駄目だよ、イ


レノアって娘はねぇ~、あんたの事を何時も心配してるんだからね。」


 「当たり前じゃないか、オレが、そんな男に見えるか。」


 「ねぇ~、今度は、避ける事は出来ないのかねぇ~。」


 「うん、オレも、本当は避けたいんだ、だがよ~、ウエスの兄ってのが、


ウエスの上を行く悪らしいんだ。」


 「じゃ~、仕方ないのかねぇ~。」


 テレシアも、わかっている。


 そして。


 明くる日の早朝、子供達は、何時になく、元気で、城の周りを走り回って


いたが。


 「さぁ~、みんな、今からね、大きな農場へ行くからね、みんなは馬車に


乗ってね。」


 司令官は、優しく子供達に言って微笑んだ。


 「さぁ~、皆さん、出発の準備は出来ましたが、この城から、私達の農場


までは、少し距離が有りますのでね、途中までは飛ばしますよ、ホーガン隊


長、出発して下さい。

 

 最後の警備隊が城門を出るまではゆっくりですよ。」


 「はい、承知しました、では、しゅぱ~つ。」


 ホーガンの大声で出発し、最後の警備隊が城門を出ると。


 「では、早足で行きま~す。」


 ホーガンは、早足と言っても、馬の調子を考え、農場には、昼過ぎに到着


出来れば良いと考えている。


 4番農場を過ぎ、3番農場を過ぎると。


 「司令官、此処からは、速度を落とします。」


 「はい、お任せします。」


 そして、1番農場に近付くと、正面には大きな城門が見えてきた。


 農場の大きな門は開いている。


 「将軍、司令官の姿が見えてきました。」


 「よし、分かった、では、みんな頼みましたよ。」


 農場の門を潜ると。


 「第1番大隊は、司令官に対し、敬礼。」


 司令官も答礼し。


 「第2番大隊も、司令官に対し、敬礼。」


 其れは、1番大隊から、4番大隊までの全兵士が左右に並び、最後の警備


隊がとおり過ぎるまで続き、其れにもまして、農場の中は大変な騒ぎだ。


 兵士達の後からは。


 「司令官、お帰り。」


 「狼も、お帰り。」


 次々と、大きな声が、司令官や狼犬部隊、其れに、5番大隊に対し、飛ん


で来る。


 「あっ、お兄さんだ、おにいさ~ん、お帰り。」


 子供達は、兵士の前に出て、大きな声と、両手を振って迎えるので有る。


 その様な迎え方に、司令官も、兵士達も手を振って。


 「今、帰ったよ、有難う。」


 司令官達を迎える歓喜は、暫く続き。


  「今まで、この様に、兵士達を出迎える光景が有ったか、いや、見た事


も、聞いた事も無い、これほど、農民や子供達が心の底から兵士達を出迎え


ると言う事は、やはり、司令官が言っていた様に、将軍と言う人物が、この


農場、いや、帝国と言っても過言では無い城で尊敬されている。


 その様な帝国に、私は、国王だとはとてもじゃ無いが言えるものでは無


い。」


 と、城主は思ったので有る。


 日頃のロシュエは、農作業服で過ごしているが、さすがに、今日は、特別


なのだ。


 立派な軍服を着て、司令官達を待っている。


 司令官は、手を上げ、全体が止まると、狼犬部隊、第5番大隊の兵士全員


が整列し。


 「将軍、只今、全ての任務は成功し、全員、無事に帰国しました。」


 その時、農場の全員と言っても良いほどの農民達が。


 「司令官。」


 あちら、此方と叫び声が上がった。


 「司令官、大変な任務を成し遂げ、ご苦労でした。


 狼犬部隊、並びに、第5番大隊の全員もご苦労様でした。


 私から、命令する、本日より、3日間の間は、何もせず、のんびりと過ご


す事、以上で有る。」


 「遠征隊、全員、閣下に対し、敬礼。」


 司令官の号令で、全員が見事な敬礼をし、之に対し、ロシュエも、答礼


し。


 「よ~し、みんな、楽にしてくれ、大食堂に入って下さい。


 以上、之で、終わる。」


 ロシュエの話が、終わるか、終わらないうちに、農場の子供達が、兵士達


に駆け寄って行く、その様になれば、農場の人達も、狼犬部隊や、兵士達に


駆け寄り。


 「お兄ちゃん、本当に良かったねぇ~。」


 「うん、有難う、明日から、3日間は休みだから、みんなと遊べるよ。」


 小さな子供達は、喜びを爆発させている。


 「さぁ~、皆さん、入って貰うのよ、食事をするのも、お風呂に入るのも


自由だから。」


 テレシアと、イレノアも、フランチェスカも、農場の女性達は笑顔で迎え


るのだ。


 「何も、遠慮する事は無いからね、今から、みんなは仲間だよ、さぁ


~、入って。」


 此処でも、子供達が、一番先に大食堂に入って行く。


 「わぁ~、なんて、大きな家だ。」


 子供達は驚き、親達も、今まで見た事も無い様な建物ばかりで、驚きと言


うよりも、唖然とした表情なのだ。


 「皆さん、お風呂場には、ボロだけど、全部、綺麗に洗濯した服が有るか


らね、古い服は、その場に置いていいからね。」


 テレシアは、何時もと同じだ。


 「あの~。」


 「なんだい。」


 「私達も入っていいのですか。」


 女性は、お風呂と言うものを知らないのだろうか。


 「ええ、勿論よ、此処はねぇ~、男性用と、女性用に分けて有るからね、


みんな、聞いて欲しいのよ、お風呂の湯船に入る前に身体を洗ってね、それ


から、ゆっくりと湯船に入るのよ、で、今までの事を全部忘れるのよ、いい


わね。」


 イレノアは、20人の娘達に、何かを指示し、娘達は頷き、風呂場へと向


かった。


 「お父さん、僕は、お風呂なんて知らないんだ。」


 「うん、お父さんもだよ。」


 「みんな、何も心配無いよ、男性用にも教えてくれる人達が居るから


ね。」


 「は~い。」


 子供達は、早い、父親の手を引っ張って行く。


 風呂場に入ると、数人の兵士が色々な事を教え、領民達は、教えられた


後、身体を洗い、湯船に入ると。


 「お父さん、気持ちがいいねぇ~。」


 「うん、本当だ、お風呂って、本当に疲れが取れるよ。」


 「皆さん、このお風呂場は、農場の子供達が掃除し、その後、お湯を作っ


て入れるのですが、皆さんの近くに熱いお湯が流れていますので、火傷をさ


れない様にして下さいね、其れと、子供達の中で、お風呂部隊に入ってくれ


る人を探していますので、良かったら、子供さん達に手伝って欲しいんで


す。」


 「お父さん、僕、お風呂部隊に入りたいんだ。」


 「うん、其れがいいね、でも、みんなの話をよく聴くんだよ。」


 「うん、分かってるよ。」


 巨大なお風呂に入った、親子達は、この数年間の疲れが取れる様な気持ち


になったのだろう。


 一方、ロシュエは、軍服を着たままで大食堂に居た。


 「将軍。」


 「うん。」


 「でも、全員が無事に戻って来たのが一番ですねぇ~。」


 「そうなんだ、オレもよ~、司令官達が行ってからなぁ~、毎日が地獄だ


ったんだぜ、こりゃ~、オレが行った方が良かったんじゃ無かったのかなぁ


~ってよ~、だから、何度も、嫌な、夢を見たよ。」


 「はい、私も、同じでしたよ、自分が行く方が楽ですよ、待つのが、これ


ほど辛いとは、本当に苦しいとは思いませんでしたから。」


 「ロレンツ、今度は、オレが行くぜ、誰が、何と言おうとなっ。」


 「でも、多分、無理でしょうねぇ~。」


 「なんでだよ~、オレは、もう待つのか嫌なんだからよ~。」


 ロシュエも、ロレンツ隊長も、思いは一緒だ、この農場に残った、ロシュ


エや隊長達、其れに、兵士達も、待つのが嫌になるのも当然で有る。


 「其れは、数日間では無い、30日、いや、40日間以上も待たされ、敵


軍が、果たして、何処にいるのかも分からない状態で、ホーガンの言う小国


の住民を、それに、その住民達が生きていると言う証も無いまま向かったの


だから。


 其処へ、あの姫と言う女性と、二キータをはじめとする女性達がやってき


た。


 「将軍様。」


 「えっ、あんた達は。」


 「はい、将軍様。」


 「おい、おい、その将軍様ってのは辞めてくれよ、なぁ~、このオレがだ


よ、将軍様って顔か。」


 「でも。」


 傍では、司令官や、ロレンツも笑っている。


 「済まんがよ~、将軍ってのは、まだ、いいんだが、その様ってのは、辞


めてくれよ、なっ、このとおりだから。」


 ロシュエは、手を合わせ、怒るでもなし、顔は笑っている。


 「そのとおりですよ、閣下はねぇ~、最近、やっと、将軍と呼ばれるのに


慣れたのですから。」


 「えっ、でも、将軍様って、呼ばれないのでしょうか。」


 「う~ん、こりゃ~よ、なんとも答えが分からないんだが、まぁ~、そん


な事はどうでもいいんだよ、オレはよ~、その様ってのが、一番嫌いなん


だ、特に、将軍様って呼ばれるのが。」


 「はい、申し訳有りません。」


 「で、一体、オレに、何の用事なんだ。」


 「はい、私は、二キータと申します。


 其れで、この方が。」


 「二キータ、駄目よ。」


 「はい、この女性は、ハーナと申しますが、将軍。」


 「いいんだよ、お姫さんなんだろう、其れで、どうしたいんだ。」


 「はい、ありがとう、御座います。


 将軍、私達は、あの城では、姫様の侍女でした、でも、今は、普通の女性


として、この農場で、お仕事をしたいのですが、何をすればよいのか、分か


らないのです。」


 「二キータって言ったね、君達は、城の事を忘れる必要は無いんだ、それ


よりも、今、さっき、この農場に着いたばかりじゃないか、まぁ~、数日間


は、のんびりとして欲しいんだ、オレだって、まだ、先の事なんか、何も考


えてないんだ、あんた達も、ゆっくりと、これから先の事を考えてくれよ、


何も、急ぐ事は無いんだからよ~、オレも、これから考えて行くからよ


~。」


 「はい、ありがとう、御座います。」


 「但しだよ、この農場じゃ~、全員が、何かの仕事に就いて貰ってるん


だ、其れはなぁ~、別に、農作業だけじゃないんだ、何でもいいからよ~、


あんた達に出来る事を考えてやってくれればいいんだから。」


 「では、別に仕事の内容は。」


 「そんなの、別に関係は無いんだ、小さな子供の世話だって、立派な仕事


だと、オレは思ってるんだから、だからなっ、何も急ぐ必要は無いからよ


~、で、あんた達の相談に乗ってくれると思うぜ、テレシアって女性がよ


~。」

 

 「では、数日間考えてからでも、よろしいのでしょうか。」


 「別に、数日間なんて思わずに、あんた達は、まず、この農場での生活に


慣れて行く方が大切だと思うんだ、仕事は、其れからでもいいから、まぁ


~、これからが大変だと思うけど、あんた達も仲間になったんだから、のん


びりとする事だぜ。」


 ハーナも、ニキータ達も戸惑うのも当然で、数十日前までは、城で、何の


不自由も無く生活していたのが、突然、別の世界に入り、生活も変わり、戸


惑うも無理は無いと、ロシュエも分かっている。


 ロシュエは、のんびりと過ごし、農場での生活に慣れてからでも遅くは無


いと考えた。


 「はい、では、その様にさせていただきます。」


 女性達は、ロシュエに礼を言って戻って行く。


 「司令官、あのお姫さんよりも、ニキータって、女性だが、彼女は賢い


よ。」


 「はい、私も、その様に思います。


 城で、説明をしておりましたが、あのニキータが女性達を纏めていると思


います。」


 「やはりか、其れでだ、司令官も疲れているだろうからよ~、敵軍の話は


後にするぜ。」


 「ですが。」


 「いいんだって、別に急ぐ事も無いと思うんだ。」


 「はい、では、後程にと言う事で。」


 「其れよりもだ、フランチェスカにも寂しい思いをさせたんだ、之からの


数日間は、彼女のために時間を作って欲しいんだ。」


 ロシュエが、待っている時間が長いと感じるのだから、フランチェスカ


は、どれ程長く感じたのか、其れを、何の不満も言わずに、ただ、じっと、


我慢をしていた事を思うと、3日間と言うのは、余りにも短い様な気もする


が、其処は、司令官と言う特別な指揮官で有る辛さなのかも知れない。


 「将軍。」


 「お~、ホーガン、大変だったなぁ~。」


 「いいえ、私は、将軍や、司令官に感謝致しております。


 本当に、ありがとう、御座いました。」


 「オレはよ~、ホーガンの気持ちは分かるよ、だってなぁ~。」


 「私も、最初、説明しましたが、私達の話を信用して貰えず、本当は、途


中で諦め様と思ったんですが。」


 「閣下、ホーガン隊長の芝居を見せたかったですよ。」


 「何だと、ホーガンが芝居をかよ~。」


 「はい、司令官、でも、あの時は、半分は本気でしたよ。」


 「はい、でも半分は芝居だと思いますよ。」


 「はぁ~、まぁ~、芝居に間違いは有りませんが、そう言えば、リッキー


隊長も、私の話に乗って来られましたよ。」


 「えっ、リッキーがかよ~、へぇ~。」


 「ですが、閣下、私も、ホーガン隊長の芝居では無く、あの時、本気で、


あの国を去っておりましたら、と、今になって恐ろしくなってきました。」


 「うん、其れは、オレにも分かるよ、だって、現に、奴らは、川の対岸で


待機していたんだから、仮に、国の存在が知れたら、5百人の警備じゃ~、


簡単にやられていると思うぜ。」


 「本当にですねぇ~、城は攻め落とされ、女性達は犯され、殺され、其れ


を未然に防いだんだらか、ホーガン隊長を辞めて、役者でもなれますよ。」


 ロシュエは、笑うが、ホーガンは真剣で。


 「将軍、私は、役者では有りませんよ、狼犬部隊のホーガンです。」


 ロシュエは、冗談のつもりだったが。


 「ホーガン、済まんなぁ~。」


 と、手を合わせ。


 「だがよ~、考え方を変えりゃ~、ホーガンは、彼らにとっては英雄なん


だ、なぁ~、司令官。」


 司令官も頷き。


 「将軍も、その様に思われますか。」


 「うん、そりゃ~、そうだろうよ、あの時にはよ、ホーガンが、半分とは


言え、芝居を打ったんだ、其れがだ、結果的には、城主もだが、領民の全員


を助ける事になったんだからよ~、ホーガンは、英雄なんだよ。」


 「ホーガン隊長、閣下の申される事が正しいと、私も、思いますがねぇ


~。」


 「はぁ~、でも、役者では有りませんので。」


 ホーガンは、余程、役者と言われたのが不満なのだろう、だが、ロシュエ


は、違った、ホーガンは、頭の切れる、回転が速いと言う意味だと言い掛け


たのだが。


 「で、ホーガン、敵の動きは分かるのか。」


 「いいえ、其れが、全く分からないのです。


 我々も、本当は、近くまで行けば良かったのですが。」


 「閣下、私は、敵は、必ず来ると思います。」


 「うん、オレも、来るとは思ってるんだがよ~。」


 「将軍、狼犬部隊が、偵察に行きますので。」


 「うん、ありがとうよ、だがよ、3日間は駄目だぞ。」


 「はい、では、4日目の早朝に出発出来ますが。」


 「う~ん、でも、まだ早いと思うんだ。」


 「でも、敵が、どの付近にいるのかを調べるんですよ。」

 

 「分かってるよ、だがなぁ~、まだ、遠くにいるよ、オレはなぁ~、10


日後でもいいと思っているんだ、その10日間で、作戦を考えるんだ。」


 「ですが。」


 ホーガンは、早く行きたい、だが、ロシュエは、作戦を練ってからでも遅


くは無いと考えている。


 「なぁ~、ホーガン、休む時は、休むんだ、で無いと、いざと言う時に


は、何の役にも立たないって事なんだから、分かったか。」


 「はい。」


 ロシュエも、ホーガンの気持ちは痛い程分かっている。


 だが、ホーガン達、狼犬部隊は、往復、40日以上も任務を続け、神経は


疲れ切っていると、ロシュエは、見た、そんな身体や神経が、僅か3日間と


言う短い休みで、疲れが取れるはずが無い、だから、合えて10日間と言っ


たので有る。


 其れに、ロシュエも、作戦を練ると言ったが、今は、何も浮かばない、其


れならば、いっそうの事、10日間を掛けて、司令官や、隊長達と、作戦を


考える方が良いと考えたので有る。


 「ホーガン隊長、閣下が、何故、10日間と申されているのか、分かりま


すか。」


 「はっきりとは。」


 「閣下はねぇ~、狼犬部隊が、40日以上も任務を続け、神経も身体も悲


鳴を挙げていると知っておられるのですよ、さっき、閣下が、申された休め


と言う意味はねぇ~、今度の偵察任務は、今まで寄りも、遥かに危険だと、


少しの疲れが、取れて無かったために、狼犬部隊が全滅でもすれば、全ての


作戦が失敗に終わり、其れは、この農場の全てが、敵軍に奪われると言う事


なんですよ、ホーガン隊長は、それでも行くと言われるのですか。」


 司令官は、何時に無く、ホーガンを怒った。


 「じゃ~、狼犬部隊の任務は、農場が残るか、奪われるのかを決める偵察


なんですか。」


 「ホーガン、オレも、あんたの気持ちは、一番良く知ってるつもりなん


だ、だがよ~、今度の偵察ってのは、今までとは、全く違うんだよ、だか


ら、休んで、神経も身体も最高の状態になって、任務に就いて欲しいん


だ、之は、オレの命令だ。」


 「私が、バカでした、将軍の気持ちを分かったつもりでした。


 じゃ~、本当に、10日間、休ませて頂ます。」


 ホーガンは、心の其処から、ロシュエに、感謝をするので有る。


 「じゃ~よ、司令官も、同じだ、3日間は完全休養して、4日目の朝か


ら、作戦会議を開く、出席者は、中隊長以上だよ。」


 「はい、閣下、了解しました。」


 司令官も、ホーガンもやっと戻って行く。


 其れからの3日間と言うものは、兵士達は、子供達と遊び、司令官は、フ


ランチェスカと、のんびり過ごし、其れは、ロシュエも同じだった、狼犬部


隊と言えば、ホーガンと一緒に話し合いをする毎日で。


 そして、4日後の朝になり、本格的に行動開始となり、まずは、作戦会議


が始まった。




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