第 93 話。 衝撃的な内容。
「鈴木様と上田様は地図を持ち後ろにお立ち下さい。
二人は畳で半畳、いや其れよりも大きな世界地図を持ち、皆が見える様に少し後ろに立つと。
「わぁ~なんだ、これが今の世界なので御座いますか。」
家臣達もだが工藤に吉田は声は出さないが大変な衝撃を受けて要る。
「皆様方、今から説明致しますので、決して大声を出さぬ様にお願いします。」
お殿様もご家老様も後ろを向き、決して大声を上げるなと、そして、説明が始まるのだが。
「この地図に関しましては私よりも工藤大佐殿にお願いしたいと思いますので、工藤大佐宜しくお願いします。」
工藤も突然の指名に少し驚くが、よくよく考えて見ると、今此処に居る者達の中で地図に関して説明出来る者など一人も居ない。
「総司令、私も全てを知って要るのでは御座いませんが、私の知る限りを説明させて頂きます。」
そして、工藤の説明が始まったが、最初は日本国と言う国が何処に有るかと言うと、全員が一瞬。
「え~。」
と、言う何とも説明の付かない声を上げた。
「工藤さん、この地図は間違い無いのでしょうか。」
「私も以前長崎に居りました頃ですが、何度か地図を見た事が有りますが、当時に比べこの地図は大変正確に書かれて要ると思います。」
「ではお伺いしたいのですが、日本国の地図で我が連合国と言うのはどの付近で御座いますか。」
源三郎は駐屯地で一度だけだがこれと同じ様な地図を見た事が有り、日本国の位置と、更に連合国の位置だけは知って要る。
「此処で御座いますが、後程、皆様方に見て頂けると思いますので。」
「何じゃと、其れでは米粒よりも小さいでは無いか、う~ん、余も初めて世界地図なる物を見たが、日本国も去る事ながら、連合国がこれ程にも小さいとは今の今まで考えもしなかったぞ、其れで、今問題となっておるロシアと申す国は一体何処なのじゃ。」
其れは何もお殿様だけで無く、上野の説明ではロシアと言う国と戦争になるやも知れず、今執務室に居る全員が知りたいと思うのも当然で有る。
「殿、そして、皆様方は決して驚かないで頂きたいのです。」
工藤は両手を使い、大陸の半分近くを占めるロシアと言う国を示した。
「え~、正か、其れは誠なのか。」
お殿様もだがロシアと言う国が余りにも巨大な国家だと知り、もう驚きを通り越し諦めにも似た表情をして要る。
「工藤さんの示されたのは間違い無いのですか。」
「はい、私の記憶に間違いが無ければ、この地図に有る表記は間違い御座いません。」
「何と言う事じゃ、日本国と言う国は誠ロシアと言う巨大な国と戦を始めるつもりなのか。」
「殿、これは正しく狂気の沙汰としか思えませんぞ、私も今初めて聞きましたが、何故に日本国はこの様に巨大な国と戦を始めなければならないのか、其れが全く理解出来ないので御座います。」
確かにご家老様の言われる通りだ、誰が考えても巨大な国家を相手に戦争に入れば、確実に日本国は負ける、だが連合国でも明示新政府でも何故ロシアと戦争する必要が有る、真の答えを知る者はほんの一握り人だけで有る。
「のお~源三郎、此処に居る者は何故にこの様な巨大な国家と日本国が戦争するのか、其れが全く理解出来ないと思うのじゃ、余も含め、源三郎の知る限りでよい話をしてはくれぬか。」
お殿様の言葉に家臣達の誰もが頷き。
「承知致しました、では私の知る限りを説明させて頂きますが、工藤さんは私が申します国家が何処なのかを示して頂きたいのです。」
「承知致しました。」
工藤は地図の横に立ち、源三郎の説明を待った。
「殿、そして、皆様方、何故に日本国がこの様な巨大な国家と戦に入るやも知れないと思われますか、私が聞いた話をさせて頂きます。
では最初に工藤さん、イギリスはどれでしょうか。」
やはり工藤の思った通りだ、源三郎の事だイギリスに関す話が入るだろうと、そして、工藤は何も言わず、源三郎が言ったイギリスの場所を示した。
「皆様方もご覧の様にイギリスと言う国家は驚くほどにも小さいのです。
ですがそのイギリスと言う国は現在の地球上で最強の軍事国家でして、日本国はイギリスから軍艦を購入し、その代価百万両を小判で支払ったのです。」
「何じゃと、百万両じゃと、それ程にもイギリスの軍艦は良いと申すのか。」
お殿様は小判百万両と聞き驚くが。
「殿、その軍艦には工藤さんとげんた、いや技師長も外部と内部の全てを見ております。」
「何じゃと、げんた、いや技師長も見たと申すのか、ではその軍艦を造ると申すのか。」
「殿、そのお話しは後程に、ロシアと言う国は日本国が軍艦の代価として小判で百万両を支払ったと言う情報を受け、日本国は黄金の国だ、何としても日本国を植民地にと考えたのです。」
「何じゃと、その植民地と申すのは。」
お殿様だけが発言して要るのでは無く、お殿様も源三郎から話を聞いており、多分家臣が聞きたいで有ろうと言う事をお殿様が代弁して要るだけで有る。
「では説明させて頂きますが植民地と申しますのは、幕府時代の比では有りません。
国家と言う存在では無く、植民地とした国からは略奪同然で物を自国へ持ち帰り、植民地になった地域の住民はただ生きて要るだけで他の事まで考える事など出来ないのです。
工藤さん、イギリスとロシアはどの様にして日本国に来るのでしょうか。」
「承知致しました。
皆様方、イギリスを含めた欧州の強国ですが、今、私が手を示して要る国々でして、イギリスを始め、欧州の強国はこの様にして日本国を目指して来るのです。」
工藤はまずイギリス本国から日本国に来るまでの航路を示し、途中で数か国で飲料水に食料、そして、石炭の補給地を示した。
「今示しました地域は全てイギリスの植民地でして全てを補給出来るのでして、又、他の強国もこの付近で補給し日本国に来る事が出来るのです。」
「工藤殿、今示された植民地の国々ですが日本国の様な幕府軍と申しましょか、軍隊は無いのですか。」
「ご家老様の申されます様な軍隊と言う組織はこの地域には全くと申しても良い程存在致しておらず、この付近から此処までは部族が支配しており、国家とは名だけで御座いまして、欧州諸国の様な武器は全く持っておらず、例え持っていたとしても欧州の強国が持つ武器には全く歯が立たず、全てが鎮圧され征服され、その後は植民地として支配されて要るのです。」
「では何故に日本国には襲って来ないのですか。」
「正しく其れが問題でして、先程も説明させて頂きましたが、欧州の強国は長崎には入って来るのですが、他の植民地にされた国々とは全く違いまして、日本国は国家として十分過ぎる程にも機能して要るので御座います。
私がまだ長崎に居た頃に聞いたのですが、数百年前の事ですが、大陸から数十万人と言う軍勢が襲来する聞き、時の幕府は全国の武将に呼び掛けこれを撃破したと、勿論、これはほんの一例で御座いますが、欧州の強国は絶えず日本国を植民地にすべく考えて要るのですが、お互いが牽制し今の今まで何れの国も植民地に出来なかったので御座います。」
工藤の話を聞いて要るお殿様やご家老様も家臣達も納得の表情をして要る。
「工藤さん、では何故にロシアは日本国に来れないのでしょうか、ロシアの軍艦はどの様にして日本国に来るのですか。」
「実はロシアには植民地は御座いません。」
「何じゃと、ロシアは植民地を持っておらぬか、では何処で水に食料を調達するのじゃ。」
「殿様の申される通りでして、其れよりもロシアの軍艦は簡単に港を出る事が出来ないのです。
其れと申しますのでは、イギリスを中心とした強国はロシアの軍港から出航出来ない様に直ぐ近くに数十隻もの軍艦が封鎖しておりまして、その為、ロシアの軍艦は全く出航する事が出来ないので御座います。」
「う~ん、それ程までにロシアと言う国は他の強国から疎外されて要るのか、じゃが何故に日本国に来る必要が有るのじゃ。」
「ロシアと言う国は金が不足して要ると伺っておりまして、外国と交易する為には金が無ければ取引は出来ないのです。
日本国と言う国は幸いにも小判に金塊も有り、外国から見れば金は豊富に有ると思っており、其れで外国と取引が出来ると、ですがロシアは金が不足しており、その金を求めて要るのです。」
「其れでは何も心配する事も無いと思うのじゃが、何故に軍備が必要なのじゃ。」
お殿様が思うのも当然で、ロシアの軍艦が港から出航する事も出来ずに、その様な状況では何も日本国は軍備を整える必要も無いと家臣達も思って要る。
「殿様が申される通りで、ですが日本国の近海にロシアの軍港が有るのです。」
「何じゃと、もっと近くに軍港が有るともうすのか、だがその様には見えぬぞ。」
「工藤さん、その軍港を示して頂けますか。」
工藤も全てを知って要るのでは無いが、源三郎は何故に知って要るのか、其れでも場所を示すと。
「何じゃと、そんなにも近くに有るのか、其処には多数の軍艦が有るのか。」
殿様もだが、吉永も昌吾郎も大変な驚き様で、工藤が示した所は日本国とは目と鼻の先では無いか、若しも今多数の軍艦が有るならば其れこそ日本国には大変な脅威になる。
「其れが現在のところでは数隻が有るだけでして、数隻だけで日本国を攻撃するのは、やはり無理なのですが、若しもですが先程も申しました軍港から数十隻もの軍艦がこの軍港に入る事にでもなれば、其れこそ攻撃に必要な物資を得て、その後は日本国を攻撃するのは誰の目から見てもわかると思うのです。」
「若しもじゃ、その軍港に多数の軍艦が入る様な事にでもならば日本国は一体どうなるのじゃ。」
お殿様は先程は軍艦が出航出来ないので有れば、日本国が軍備を整える必要も無いと思っていたが、だが其れも大間違いだとわかり、日本国は大変な事になると感じて要る。
「源三郎、だが何故にその様な遠くに有る国の情報が日本国の、其れもお主が知って要るんだ。」
ご家老様は地図上に有るイギリスを初め、欧州の強国の情報が日本国の、其れも源三郎が知る事が不思議だと思って要る。
「総司令、私から説明させていただきます。」
「申し訳御座いませんが、宜しくお願いします。」
この様な情報に関してはやはり工藤が詳しい。
「ご家老様が申されますのは当然で御座いまして、ですが幕府が幾ら鎖国だと強要しても、長崎の出島と申します所だけは特別に外国の船が入港を許されておりまして、多くの日本人が大陸に渡り、多くの情報を得て要るのも確かで御座いまして、特にイギリスや他の強国には多くの日本人が参って要るのです。」
「と、言う事は我々連合国だけが知らなかったと言う事なのですか。」
「そうでは御座いませんでして、日本国の領民の多くは殆ど知らないとは思いますが、後、数十年も経てば国民の全てに知らさなければならないと思うので御座います。」
「何故じゃ、軍艦にはそれ程にも多くの兵士を乗せる事が出来ると申すのか。」
お殿様もだがご家老様含め、今執務室に居る誰もが同じ様に思って要る。
「殿様、其れに皆様方、私が示しましたこの場所ですが、多分ですが、日本海軍には軍港を攻撃出来るだけの軍艦が無いと思います。
では一体どうすれば良いかと申しますと、軍港を望む高台を占領すれば良いのです。」
「其れでは多く兵士で攻めるのですか。」
「左様でして、今の軍隊の兵士は勿論ですが、私が思うには其れだけでは全く足りませんので、日本国中から兵士を集め大陸に送る事になると思います。」
「では我が連合国軍からも参ると申すのか。」
「殿様、左様では御座いませんでして、今の官軍もですが、明示新政府も我が連合国の存在は知りませんので。」
「では少し安心出来るの~。」
「左様では御座いませんでして、先程も私が示しました所の軍港ですが、此処に有るので御座います。」
工藤は蝦夷地に近い軍港を示すと、其処からは蝦夷地が直ぐ近くで、若しも多数の軍艦が入港する事にでもなれば、軍力では今の日本国は簡単に滅ぼされ、遅かれ早かれ全ての地にロシア軍に占領され、遂には植民地にされると言う。
「この地図で見て頂いてもわかる様に此処からは蝦夷地は直ぐでして、若しも蝦夷地にロシア軍が上陸する事にでもなれば直ぐに占領されます。」
「では何としても軍港に入らせてはならないと申すのか。」
「左様でして、此処の軍港は別としてと申せば日本政府は怒るやも知れませんが、其れよりもこちらの軍港には絶対に入らせてはならない、これが戦略上で最も重要で御座います。」
「先程と言うのか、最初に示された欧州の植民地ですが、ロシアの軍艦が入港する言う事は考えられないのですか。」
「ご家老様が若しも欧州の強国の領主で御座いますれば、ロシアの軍艦が入ると言うのをお許しになられますか。」
「いいや、その様な話ならば、わしが先頭に立ち、わしの命を捧げたとしても阻止する。」
やはりだ、ご家老様の事だ、命を懸けてでも阻止すると工藤は思った。
「左様だと思います、確かに欧州の強国は日本国の金が喉から手が出る程に欲しいのですが、お互いが牽制しており、今は何れの国も手を出して来る事は考えられないのです。
私が今申しました事を頭の中に入れて考えて頂ければ、若しもですがロシアの軍艦が港を強行突破して出撃したならば、其れこそ各国が連携しロシアの軍艦の入港を阻止します。
ロシアの軍艦は何れの港に入る事も出来ず、更に此処の軍港に入港出来ないとなれば一体何処まで進むと考えられましょうか。」
工藤はこの時、ロシアの軍艦は太平洋を行くのでは無く、連合国の沖を通過すると考えており、だが問題は九州に近い軍港で有り、この軍港に入港出来ない様にする事が一番大事で有ると考えた。
「工藤殿のお話しが誠ならばロシアの軍艦は西の端の軍港を出撃し、何れの港に入れず、此方の港に入る、其れならば、食料も底を付くのでは御座らぬか。」
「左様でして、此れだけの長い距離を進むとなれば丁度この辺りですねぇ~。」
工藤は九州近くの海を指した。
「私は此処に来るまでには食料もですが飲み水も、其れに石炭も底を付き此処から先程の軍港までの数日間は乗組員は何も口に入れる物も無く、此処ですが蝦夷地に近い軍港を目指すには我が連合国の沖合を通過するのは間違い御座いませぬ。」
執務室に居る誰もが余りにも衝撃的な話に驚きを通り越し啞然としており、執務室には重い空気が漂い、皆が沈痛な表情をして要るが、話はこれだけで終わる事は無い。
「皆の中でわからぬ事が有れば聞いて頂いても宜しいですよ。」
源三郎はお殿様やご家老様以外からも質問させようと、其れは家臣達ならば別の考えが有るだろうと思ったのだ。
「あの~少しお伺いしたいのですが宜しいでしょうか。」
「宜しいですよ、でどの様な事を知りたいんですか。」
やはりだ、源三郎の思った通りで、若い家臣も聞きたいので有る。
「先程のお話しの中で日本国に一番近いと思うのですが、大きな半島はどの様なお国なのですか。」
「良い事を聞かれましたねぇ~、私も其れを知りたいのですが、工藤さん、如何でしょうか。」
「半島は本来ならば独立国でなければならないのですが、こちらの国ですが、大きな大陸の中でもロシアに次ぐ二番目に巨大な国でして、清国と申しまして、この清国が半島の国の領民を奴隷の如く扱い、収穫される作物の殆どを自国に持ち帰るのです。」
「今、奴隷の如くと申されましたが、私は奴隷と申されます意味が申し訳御座いませんが、全く理解出来ないでの御座います。」
「左様でしたね、日本国には奴隷の様なお人は居りませんが、奴隷と申しますのは人間としては全く扱われず、牛や馬、いいえそれ以下に扱われ、先程の強国もですが、奴隷に与える食べ物は何とか生きて行けるだけを与え、領民は何も考える事も出来ず、其れに少しでも反抗的な態度でも見せ様ものならば死の寸前までも打ちのめされるです。
其れで先程の質問ですが、清国も我が日本国を狙っておりまして、ですが、先の軍港にはロシアの軍艦が停泊しており簡単には日本国にも行けないのです。」
「其れではロシアと清国が半島近くでお互いが牽制しているんですか。」
「左様でして、ですが若しも軍港を守る為に大軍を送り込めば、清国も手出しする事も出来ないので、その様な事にでもなれば、今度はロシアが半島を占領し、半島の港を基地とし日本国を攻撃する事も可能になるのです。」
「若しもじゃ、若しもじゃがロシアが清国と言う国を攻撃する事になれば、其れこそ日本国は直ぐに攻撃され、日本国は全滅するやも知れぬぞ。」
やはりだ、お殿様は見るところが違う、確かにロシアが清国を破れば半島の港から多数の軍艦を出撃させる事も可能で有る。
「お殿様の申されます通りで御座いまして、私が日本国の司令官ならばロシアよりも先に清国を滅ぼし、その後は半島にも日本国の軍隊を駐屯させれば、ロシアとしては簡単に動く事は出来ずになり、後は此方の軍港から出撃する大艦隊だけが相手になるのですが、清国の次に此処にある軍港を使用不可能にする事が大事で御座います。」
「じゃが、その様な事が上手く行くとは限らぬのでは。」
「左様で御座いまして、多分ですが、政府と軍はどの様な策を執れば日本国が植民地にならずに済むのか、皆が必死で策を考えて要ると思うので御座います。」
「工藤さんにお伺いしたいのですが、先程からのお話しで随分と詳しいと思いますが、何時その様な情報を得られたで御座いますか。」
「えっ、あっ、そうか、私は何と言う事を、総司令、殿様、ご家老様、そして皆様方、誠に申し訳御座いません。
今までの話は全て官軍に居りました時に得ておりまして、実を申しますと、私も今まで全く忘れておりまして、お殿様やご家老様からの質問を受け思い出したので御座います。
皆様方、その様な訳で御座いまして、誠に申し訳御座いませんでした、この通りで御座います。」
と、工藤は土下座しようとした。
「工藤さん、私も殿も疑って要るのでは御座いませんので、其れならば私にも多大な責任が御座います。
工藤さんと最初に来られました兵隊さん達には何時も大変なご無理を申しまして、更に今までどれ程連合国が官軍や幕府の残党、更に野党と、次から次へと攻撃を受け、工藤さんには休む事も出来ず、其れこそ、今思い出して頂いた事の方が幸いだと思っておりますので、今後も思い出して頂ける様に休みを取って頂きたいのです。」
「総司令、誠に有難う御座います。」
その後も地図だけで話は続くのだが、源三郎にすれ正かこの様な事態になるとは全く想像しておらず、もう一通の封書の中身を見るのが恐ろしく感じるので有る。
だが何時までも続ける訳に行かないと源三郎は思い。
「殿、皆様方、誠に申し訳御座いませんが、一度中断したいと思うのです。
其れと申しますのは、この中で一番疲れが有るのは工藤さんだと思うのです。
皆様方はもっと知りたいと思われるでしょうが、私としてはもう一通の封書を開けるのが恐ろしく感じて要るのですが、このお話しは菊池や上田、松川に山賀の方々にも知って頂けなければと思いますので、次からは皆様方には失礼かと思いますが、他の方々への説明を優先したいと思いますので、どうかご容赦下さい。」
源三郎は頭を下げるが、やはりこの問題は責任有る人物を優先して説明しなければならず、お殿様もご家老様も頷いて要る。
「源三郎の申す通りじゃ、余も含め、皆も理解するのじゃぞ。」
やはり、この様な時にはお殿様の言葉が一番効果が有り、その後、源三郎は高野、阿波野、斉藤と若様に書状を送り、三日後改めて説明会を開く事になった。