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闇の帝国    作者: 大和 武
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 第 91 話。何を作ればいいんだ。

「あんちゃんに頼むぜ。」


「えっ、一体何をですか、私は何も聞いておりませんが。」


 げんたは蒸気発生装置に最初の火入れは、やはり連合国最高司令長官でも有る源三郎に頼むつもりで有ったが、何も言わずに、ただ来る様に伝えていた。


「あんちゃんはオレ達連合国の最高司令長官なんだぜ、だからオレは今度の火入れにはあんちゃんにやって貰うって決めてたんだ。」


 げんたが考案した蒸気発生装置はその後別の意味で活躍する事になるので有る。


「ですが、そんなにも重要なお役目なのですか。」


「あんちゃんは何にもわかって無いのか、この装置が完成し機械が動き出して機織り機が動き出せば兵隊さんの軍服も新しく作れるんだぜ、其れが全部作り終わったら、今度は連合国の人達が着る洋服を作るんだ、其れでいいんだね、吾助さん。」


 連合国軍兵士の軍服は連合国の中でも一番ボロボロで、やはりげんたは気付いていた、吾助は其れが一番嬉しかったので有る。


「源三郎様、技師長さんの言う通りなんですよ、兵隊さんは私達を守る為に必死で訓練し、官軍や幕府の残党に野盗と戦ってられその為に軍服はもうボロボロなんです。


 私もですが、職人達全員で兵隊さんの軍服を一番最初に作らせて貰いたいんです。」


「左様でしたか、皆さんのお心遣いに私は今最高に嬉しいです。

 げんた、では私が連合国全員を代表して巨釜に火を入れます。」


 げんたは火打石を打つと源三郎が持つ紙に火が点き。


「では宜しいですか、今から火を入れます。」


 源三郎は火の点いた紙を入れると、小枝に火が点き、次第に火は大きくなり、そして次第に大きな木を入れると火力が増して来た。


「よ~し、石炭を入れて。」


 石炭を入れ暫くすると巨釜の中で石炭は勢い良く燃え、火力が増して来る。


「技師長さん、この分だったら一時か一時半もすれば蒸気が噴き出しますよ。」


「だったら其れまでは暫く休むとするか。」


 げんたはこの数十日間は殆ど休む事も無く、蒸気発生装置造りに没頭しており、今久し振りに休めるので有る。


 そして、一時半程過ぎる頃。


「技師長さん、技師長さん、起きて下さいよ、技師長さんってば。」


 げんたはやはり相当疲労が溜まって要るのか直ぐには起きて来る事が出来なかったが、其れでも目を開けた。


「うん、わかったよ。」


 げんたは起きて巨釜に来た。


「だいぶ溜まって来たなぁ~、だけどまだ噴き出し方が弱いなぁ~、もっと勢いが要るんだ、思いっきりシュ~ってな。」


 その後、四半時過ぎ。


「シュ~。」


 と、先程の数倍も有る音がした。


「よ~し、これで行けるぞ。」


 げんたはもう一度鉄の筒の穴を閉め、その後、暫くして。


「よ~し、今だ行くぞ。」


 げんたは先程閉めた元栓を開けた、すると巨釜の左右に取り付けた鉄板の内部に大量の蒸気が噴き出して行く。


「シュ~、シュ~。」


 と、大きな音を立てて要るが何も起きない。


「まぁ~最初だからなぁ~、直ぐには動かないよ、もう少し待って見ようか、其れと適当に石炭を入れてよ火力をもっと上げるんだ。」


 吾助と一緒に来た職人達はげんたの言う通りに石炭を入れるが、やはり直ぐには反応しない、だが火力が強まると蒸気の噴き出す音も次第に大きくなり、何かが動き出し横に突き出して要る太い鉄の棒が回り出し、歯車も回り出した。


「よ~し、これからだ。」


 と、げんたは一気に栓を開くと、歯車は段々と回る速度が早くなっていく。


「吾助さん、これが機織り機の動力源だよ。」


「わぁ~物凄いよ、こんなのってオレ達も初めて見たよ、あの時とは全然違うよ。」


「わぁ~本当だ、あの技師長さんって物凄いなぁ~、こんなものを考えてたなんて。」


「技師長さん、本当にありがとう御座います。

 これで私達も生きる望みが出て来ましたよ、これからは一生懸命生地を作らせて貰います。」


「飯田様、上田様、森田様、そして、吾助さん達が命懸けで運んで来られました機織り機が稼働すると思いますので、この先皆さんは生地を作って頂きまして、軍服を、そして、連合国の皆さんにも洋服を着せて頂きたいのです。」


「私達三名は源三郎様のお陰で今日までこの様に生かして頂きまして、私達はどの様に感謝しても感謝仕切れないので御座います。


 今後は兵隊さんの軍服と連合国の人達に洋服を着て頂ける様にさせて頂きます。」


 飯田達三名は改めて源三郎に頭を下げた。


 その一時半程後、げんたは草地で粘土の搬出作業を行って要る現場近くに居た。


「ふ~ん、此処が粘土の搬出現場か、其れにしても広い入口だなぁ~。」


 げんたは一体何の為にやって来たのだろうか。


「あっ、技師長さん、こんな所に一体何の用で来たんですか。」


「う~ん、まぁ~ちょっとね。」


「まぁ~ちょっとって。」


「其れよりも聞きたい事が有るんだけど、此処の場所の粘土を全部取ったら次も探すんですか。」


「そんなの勿論ですよ、だって連岩って、後何個作ればいいのか全然わからないんですよ。」


「と、言う事は幾ら作っても追い付かないって言う事ですか。」


「そうなんですよ、この下にも物凄く要るって若様も言ってられるんですから。」


「若様か、じゃ~何か考えるか。」


「技師長さんは一体何を考えるんですか。」


「其れがわからないから考えるんだ、まぁ~その内にわかるからなぁ~。」


 げんたは其れだけを言うと戻って行った。


「う~ん、あれをもう一台、いや何台か造る必要が有るなぁ~。」


 げんたは一体何を作ろうとして要るんだ、その後、夕刻前には松川へ戻って行った。


「吾助さん、調子はどうですか。」


「技師長さんが造られた機械ですが、其れが物凄いんですよ、其れがまぁ~何て言うのか説明が出来ない程なんですよ。」


「物凄いって、一体何が物凄いんですか。」


 げんたは吾助が言う物凄いって言われても意味がさっぱりわからない。


「其れが、あれからも物凄い速さで回ってるんです。」


「物凄い速さで回ってるって、オレが考えたんだぜ、でも一体どんなに凄いのか見せてよ。」


 げんたも正直どれ程の速さで回って要るのかも知らないと言うのか、いやげんたは蒸気の力で回転させ、其れがどれ程まで行けば限界なのか、其れを知らなかったので有る。


「蒸気の出る量を調整すれば回転を整える事が出来ると思うんだけど、でも本当は何処まで回るのかも全然知らないんだ。」


「えっ、技師長さんが知らないんですか。」


「だってオレも初めて造ったんだぜ、其れにまぁ~いいか。」


 げんたは最初に潜水船を造った時の事を考え、空気の取り入れ装置を作った時を思い出し、今の装置を考案したので有る。


「ねぇ~技師長さん、機械を回した蒸気ってまだまだ熱いんで、何かに使う事は出来ないんでしょうか。」


「えっ、そんなにも熱いんですか。」


「だってほら、まだあんなに湯煙を上げてるんですよ。」


 職人が指差す方を見ると、まだ湯気がもうもうと舞い上がって要る。


「其れに若しもですよ、何にも知らない人が巨釜や鉄の筒を触ったら大火傷すると思うんですよ。」


「えっ、大火傷するって。」


 げんたの造った機械は巨釜もだが鉄の筒がむき出しで、若しも何も知らない領民が近付けば大変な事になる。


「あっ、オレって何も考えずに造ったのか。」


「技師長さん、オレ達はこの機械がどれだけ大事か知ってるんですよ、でも城下の人達はみんな珍しいのかあれから大変だったんですよ、だってみんな巨釜の周りに集まり、手で触ろうとするんで、オレ達がみんなに注意するんですよ。」


「オレが親方に頼んで見るよ。」


 げんたは何も知らない人達が大怪我をする前に巨釜の周りに囲いを作る様に依頼し、やっと民衆が集まるのが収まった。


 その頃、源三郎は官軍や幕府の残党に野盗が押し寄せて来るのを早く発見する方法を考えていた、確かに日光隊と月光隊が偵察に行けば早く発見出来る、だがその為には大岩から駐屯地近くまで行かなければならず、早くても二日間は必要とし、やはり何か解決策を考えなければならない、だが一体どの様な方法が有ると言う。


 源三郎は数日間考えるが全く浮かんで来ず。


「そうだ、一度山賀に行って見なければならないなぁ~。」


 そして、明くる日の早朝に鈴木と上田を連れ山賀へと向かった。


「若、誠に申し訳御座いませんが、猿軍団を呼んで頂きたいのです。」


「義兄上は如何されたので御座いますか、突然に来られまして。」


「まぁ~まぁ~その話は猿軍団が来られてから詳しく説明しますのでね。」


「はい、承知致しました。

 高木さん、大至急猿軍団を呼んで下さい。」


 高木は大急ぎで猿軍団の居る山へと向かい、半時程で猿軍団が来た。


「源三郎様が大至急だって聞きましたんで来ましたが、一体何が有ったんですか。」


「では少しお伺いしたいのですが、先日、官軍が登って来ると、ですがどの様な方法で官軍兵を発見されたのでしょうか。」


「源三郎様が名前を下さった猿軍団ですが、オレ達は奴らを見張る為木の上に登ってるんですよ、其れも出来るだけ大木の上にです。」


「では何時も大木の上に登り敵軍と申しましょうか、官軍や野盗の動きを監視されておられるのですか。」


「そうなんですよ、大木の上だったら遠くまで見渡せますんで。」


「まぁ~ねぇ~、大木の上ならば早く発見出来ると思いますが、移動はどの様にされておられるのですか。」


 源三郎も猿軍団が大木の上から別の大木の上まで移動する事まで思い浮かばなかったのだろうか。


「オレ達は大木と大木の間に太い縄を張ってるんで、オレ達は滑車を使いますんで物凄く早く動けるんですよ。」


「では滑車を利用されておられると言うので大木から大木への移動は早いと言うのですか。」


「だって敵を発見して次の大木に行くのに下に降りてるんじゃ、敵を見失う事にもなるからって、オレ達の仲間が考えたんです。」


「では一度上がると当分の間は降りて来れないのですか。」


「そうなんですよ、降りるのは簡単なんですが、やっぱり登るとなると簡単じゃないんで。」


 そうか、猿軍団は大木の上から監視する、これならば下を行く官軍や野盗の動きは直ぐにわかる、だが下りは簡単だが山の下に有る大木から上に有る大木への移動するのは簡単では無いはずだ。


「ですが大木の上に居られるとなると。」


「オレ達の仲間が枝と枝の間に板を置いてますんで休む事も出来るんですよ。」


 その後も猿軍団との話は続き、源三郎は何かを得たので有ろうか。


「皆さんからは大変貴重なお話しを頂き、私はこの先も我が連合国の人達を守る為の新たな策を見付ける事が出来ました、誠に有難う御座います。」


 源三郎は一体どの様な策を見付けたと言うのだ。


「源三郎様はオレ達に取ってはこの世で一番大切なお方なんですよ、其れが。」


「いいえ、私はその様な人間では有りませんよ、貴方方の方がもっと大切なお方なんですからね、これからも私の片腕と申しましょうか、特別な仲間になって頂きたいのです。」


「そんなのって当たり前ですよ、オレ達は源三郎様の為だったら何でもしますんで。」


「左様ですか、有難いお話しを、私はこれから少し考える事が有りますので、其れと後日また皆さんにお願いする事が有りますので、その時には宜しくお願いします。」


 この後、源三郎は駐屯地へ向かい橘とも話、野洲へ戻る途中今一度洋服の生地を作っている工場へ立ち寄った。


「吾助さんにお伺いしたのですが宜しいでしょうか。」


「勿論で、私が知って要る事ならばどんな事でも。」


「では、生地と言う物はどれ程長く作れるのですか。」


「どれ程と言われますと、例えば一町とかでしょうか。」


「えっ、一町もの長い生地が作れるのですか。」


「勿論でして、作ろうと思えば二町の長さでも作れますが、其れが何か。」


「では細く長い紐の様な物も作れるのですか。」


「源三郎様は何を考えておられるのですか、お話し頂ければ私達も何か出来ると思うのです。」


「左様ですか、ではお話しを致します。」


 源三郎は吾助に詳しく話した。


「其れならば、私達にお任せ下さい。」


「皆様方には大変申し訳有りませんが、連合国の人達を守る為に何としても必要かと思うのです。」


「勿論で、兵隊さんの軍服を作るよりもその方が先だと思いますので、じゃ~明日から早速始めますので。」


 源三郎は何の為に、いやそれ程にも急ぐので有ろうか、明くる日から吾助と仲間の職人たちは機織り機を使い何かを作り始め、数日後には長く細い生地が出来上がった。


「なぁ~吾助さん、源三郎様から言われた紐の話なんだけど、元々が服の為の糸だから一寸や二寸の太さにしても直ぐ擦り切れると思うんだけどなぁ~。」


「そうか、やっぱり無理か。」


「其れにだよ、滑車には人を乗せる籠の様な物を吊り下げるんだよ。」


 吾助は一寸の太さの紐を作れると思ったが、元々が服を作る為の糸で有り、少々太くしたところで柔らかく直ぐ伸び切れ、更に日に数十、数百と重い籠を吊り下げ移動させるには無理が有る。


「私が明日にでも行って源三郎様にお話しするよ。」


 職人達は作るのを反対して要るのでは無く、やはり強度不足だと、其れならばどの様な物で作ればいいのか、吾助達だけが考えても解決出来る様な問題では無い。


 そして、明くる日の早朝、吾助は野洲へと向かった。





        

        

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