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闇の帝国    作者: 大和 武
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 第 83 話。 官軍兵が上陸したのは。

源三郎は松川で馬を乗り継ぎ山賀へと飛ばし一時半程で着いた。


「源三郎様が。」


 と、門番が言った時には早くも大手門を潜り執務室に入った。


「吉永様。」


「若は小川隊長と山に向かわれました。」


「左様ですか、では正太さんを呼んで頂けますか。」


 やはりだ、源三郎は正太を呼べと、だが何を指示するのだろうと吉永は思うが。


「若はどの様なお話しをされたのですか。」


「領民全員をお城に避難させよと申されまして。」


 源三郎も若様の事だ、官軍兵が来る前に領民をお城に避難させるだどろうと、だが源三郎の考え方は全く違う。


「では今はお城に居られるのですか。」


「はい、先程全員がお城に入ったのを確認しております。」


「左様ですか、では私がお話ししますので参りましょうか。」


 源三郎は領民の殆どが大広間に居るだろうとわかっており、足早に大広間へと向かい、吉永も、そして、高木と数人の家臣も源三郎と一緒に大広間へと向かった。


「高木さん、他の部屋にも城下の人達が居られるならば呼んで下さい。」


 高木達は大急ぎで領民の居る部屋へと向かい、そして、源三郎が大広間に入ると。


「あっ、源三郎様だ、みんな源三郎様が来られたぞ。」


「えっ、本当だ、やっぱりなぁ~、オレは絶対に源三郎様の事だ必ず来て下さると思ったんだ。」


 山賀の領民達は源三郎が来た事を別に特別だとは思っておらず、この様な時にこそ必ず来るとわかっており大騒ぎにはならず、其れでも最初こそざわついていたが直ぐ静かになった。


「皆さんは官軍が攻めて来ると聞かされたと思いますが、我が連合国軍の兵隊さんは全員がどんな事が有ったとしても一人足りとも官軍兵を城下に入れる事は絶対に有りません。」


 源三郎は何を持って官軍兵は一人足りとも城下に入れる事は無いと断言したのだろうと高木達は思って要る。


「でも正太は官軍兵が攻めて来るって言ってましたよ。」


「まぁ~ねぇ~、正太が言う事も間違いじゃ無いとは思うんだけど、源三郎様は官軍兵は城下に入れる事は無いって、でも何でそんな事がわかるんですか。」


 領民が思うのも間違いでは無く、今は連合国軍だと言っても以前は官軍として幕府軍と戦を行っていた、だが何故源三郎は一人足りとも城下に入れる事は無いと断言出来るのだ。


「今の連合国軍の兵隊さんは皆さんも知っての通り、我々の国に来られるまでは官軍兵でして幕府軍と戦っておられましたよ、ですが官軍の上層部は兵隊さんを人間として見ておらず、馬や牛と同じ様に考えていたのです。

 ですが馬も牛も私達が優しくすると言う事を聞いてくれると思うのです。」


「そんなの当たり前の話ですよ、オレも馬に頼むんですよ、この仕事が終わったら川に行って身体を洗ってやるからな、其れと餌もたっぷりとやるからなって、すると馬の顔が変わるんですよ、分かったよって言ってる様に見えるんですよ。」


 連合国の農民は馬や牛にもだが兵士達にも優しく接して要る。


「其処なんですよ、私が幾ら言葉で皆さんは以前の様に官軍の兵隊さんでは有りませんからねと言いまして、我が連合国軍の兵隊さんですからねと言うよりも、皆さんが兵隊さん達にも優しく接して頂いておられますが、でも兵隊さん達は今まで官軍では人間の扱いはされて無かったのです。


 でも連合国の皆さんからは何時でも優しく、其れに何時も気軽に声を掛けて頂き、命を大切にして下さいねと言われ、これからは連合国の人達の為にも命を懸けても良いと言われているのです。」


「ねぇ~源三郎様、じゃ~オレ達は何をすればいいんですか。」


 山賀もだが連合国の領民達は源三郎の事だ何かを頼むのだと直ぐにわかるので有る。


「では皆さんに私からのお願いですが、女性達は家に帰って頂きまして、お米を炊いておむすびを作って頂きたいのです。」


「私達はねぇ~、源三郎様の言葉を待ってたんですよ、でも若様が。」


「皆さんも若様の気持ちはわかって頂きたいのです。

 若様はねぇ~、皆さんの中から一人の犠牲者も出したくは無いのです。

 

 皆さんは何か誤解されておられるのではと思うのです。


若様はねぇ~、兵隊さんも皆さんも同じだとわかっておられるのです。

 ですが皆さんに兵隊さんと同じ様に官軍と戦えとは言えないんです。


 兵隊さんはねぇ~、日頃から訓練をされておられますが、皆さんにその様な訓練をさせる事は出来ませんのでね、皆さんも其れだけははわかって頂けると思うのです。」


 源三郎は連合国の領民の事だ必ず兵士を擁護する発言が有ると知っており、其れを利用している。


「じゃ~私達は家に帰っても大丈夫なんですか。」


「勿論ですよ、私は嘘は申しませんよ、其れとお米ですが。」


「問屋さんに行けばいいんですよね。」


 この頃になると女性達は早くも家に帰るんだと気持ちが変化して要る。


「じゃ~オレ達は何をするんですか。」


「男の人には薪木を作り城下を明るくして欲しいんですよ、其れはねぇ~、山の上から兵隊さんが見られても城下の人達がかがり火を点けてくれてると其れが一番の励みになるんですよ。」


「そうか、兵隊さんは山に、でも城下が暗かったら何の為に戦ってるのかわからないんだなぁ~。」


「よ~し、みんな今から家に帰って始めるぞ、オレ達も兵隊さんも一緒だ、そうだ荷車も要るぞ。」


 その後、源三郎は領民の動きを見るだけで何も言う必要は無いと思い。


「高木さん達は倉庫からかがり火に使用する用具を全て出して下さい。」


 高木達も直ぐ行動を開始した。


「義兄上、義兄上は何処ですか。」


 と、若様が大声を出し源三郎を探し、大広間に居た領民達が城下へ戻って行くのを見た。


「えっ、何か有ったのですか。」


「今、源三郎様が来られまして女性達には家に帰りご飯を炊き、おむすびを作って下さいと、其れと男達には城下から山の麓までかがり火を点けて下さいって言われて、其れでみんなは今急いで帰るところなんですよ。」


「左様ですか、では皆さん宜しくお願いします。」


 若様も其れ以上聞く事も無く大広間に入った。


「義兄上が来て頂けましたので私は安堵致しました。」


 若様も源三郎が来た事により安心したのも間違いは無かった。


「若、私の勝手で領民さんは自宅に帰って頂きました。」


「いいえ、私は義兄上にして頂きました事に感謝しております。」


「其れで詳しくお伺いしたいのですが、まぁ~其れよりも戻りましょうか。」


 と、源三郎と若様と小川隊長は執務室へと戻って来た。


「やっとですが、少し落ち着きましたねぇ~。」


 と、源三郎はゆっくりと腰を下ろし。


「では詳しくお話しを聞かせて下さいますか。」


「若様、私で宜しければご説明させて頂きますが。」


「そうですねぇ~、ではお願いします。」


 若様が説明出来ないのでは無く、戦略的に考えると、やはり此処は小川隊長に任せる方が良いと判断したのかも知れない。


「総司令、実は猿軍団が山を登って来る十人程の侍を発見し、別の場所で監視任務に就いて要る小隊長に報告し、私と若様は小隊長と途中で合流し話を聞きましたところ。」


 小川は出来るだけ詳しく説明すると。


「では官軍兵に間違いは無いと言う事ですねぇ~、ですが若しもですよ六百人近くの特攻隊が攻めて来るとなれば、我が軍にも多くの犠牲者が出ると覚悟しなければなりませんよ。」


 やはり源三郎も六百人近くの特攻隊が攻めて来るとなれば多大な損害を受ける事は間違い無いと考えて要る。


「先程ですが駐屯地から全員が出撃し配置も完了しております。」


 山賀では何時でも迎え撃つ体制は整って要ると言う。


「もうこの様な時刻ですので山を登ると言う事は有りませんが、何時、何処で何が起きるやも知れませんので警戒だけは怠らぬ様にお願いします。」


 山賀では小川に全てを任せて要るが。


「小川さんは何か作戦でも思い付かれたのでしょうか。」


「いいえ、其れが何も思い付か無いのですが、一応全員には三銃士で備えて下さいとだけ指示を出しております。」


「ほ~成程ねぇ~、三銃士作戦ですか。」


 小川隊長が言う三銃士で迎え撃つ方法が作戦だと源三郎は思った。


「小川さんは三銃士と申されましたが、其れは他の部隊でも取り入れておられるのですか。」


「多分其れは無いと思います、何故ならば三銃士なる方法を考え付かれたのは大佐殿でして、其れはまだ少佐の時に部隊の兵士が生き残る為に考え付かれ、他の部隊は知らないと思います。」


 工藤は部隊が出撃し幕府軍との戦闘に置いても独特の作戦を考え、其れが三銃士で有り幕府軍を倒し、そのお陰とでも言うのか、他の部隊からは多くの犠牲者を出して要るが、工藤の部隊では負傷する兵士はいても戦死者は一人も出なかったと言うので有る。


「其れでは今回も大丈夫で御座いますねぇ~。」


 若様は戦死者は出ないだろうと思ったのだが。


「其れは分かりませんよ、普通の官軍ならばいざ知らず、今度の敵は官軍の中でも特攻隊と言う特別な部隊ですので、どの様な攻撃を仕掛けて来るやも全く予想出来ないのです。」


「自分も通常の官軍ならばどの様な作戦で攻めて来るのか予想は出来ますが、特攻隊とは初めて聞く部隊でして、更に通常の官軍ならば統制は取られており問題は無いのです。」


 小川は草地で迎え撃った時の特攻隊殲滅作戦には参加しておらず、特攻隊と言う官軍兵が到着するまではまだ日数も有り余裕も有った。


 だが今回は突然の出来事で連合国軍には全く余裕すら無いので有る。


「其れでは義兄上も作戦は考えておられないのですか。」


「私も直ぐ飛んで参り、先程お話しを伺ったばかりでして、まぁ~今のところは小川隊長の申される三銃士で迎え撃つ方法しか無いと思われます。

 其れに敵軍の配置が全くわからない状態では作戦の立て様も無いのです。」


 源三郎も小川の報告で官軍兵の全員が連発銃だけで武装して要るとだけ聞いて要る。


「昌兄~い、奴らって飛んでも無い野郎の集まりですねぇ~。」


「其れは私もわかってるんだ、だけど今はどうにも出来ないんだ。」


 奴らとは一体何者の集まりなのか、そして、この男達は一体何者なのだ。


「兄~い、さっきからですが海が見えてるんですが、何処かで小舟を調達して参りましょうか。」


「そうだなぁ~、だが絶対に奪う様な事はするなよ、そうだみんな懐の物を出してくれるか。」


 男達は懐から袋を出すと。


「全部出すんだ、全部だ。」


 と、言って昌と言う男が全員から袋を取り上げ。


「まぁ~どれだけ入ってるかわからないが、これで全員が乗れる小舟を調達してくれるか。」


「分かりました、じゃ~オレ達が行って来ますんで、兄さん達は何処かに隠れてて下さい。」


 と、数人の男が海の方へと向かった。


「其れにしても親分は何処に居られるんでしょうかねぇ~、でもなぁ~正かあの時に。」


「おい、そんな事は言うな、親分の事だ絶対何処かに隠れていなさるんだ、きっと生きてられるんだ、きっとだからな。」


 親分とは一体誰の事だ、其れにしてもこの男達は何処から来たのか、そして、暫くして男達が戻って来た。


「兄さん、漁師から三艘の小舟を借りる事が出来ました。」


「そうか、だがもう二度と此処に戻る事は出来なんだぞ、其れをわかってるのか。」


「あっ、え~、オレは其れをすっかり忘れてました、じゃ~今から。」


「だけど今更お借りした小舟を返す事は出来ませんって言えないんだぞ。」


「じゃ~どうするんですか、小舟にも乗れないって事は、奴らに見つかるかも知れないんですよ。」


「そうですよ、今度見付かったらオレ達は絶対に殺されますよ。」


「そうですよ、オレ達は此処で死ぬ訳には行かないんですよ、だって親分に会えるかも知れないんですからねぇ~。」


 昌と呼ばれる男は腕組みしじっ~と何かを考えて要る。


「昌兄~い、もう此処まで来たらオレ達は引き下がれないんですよ。」


 其れからも男達は昌と呼ばれる男に言うが、やはり直ぐには答えを出せないのだろう、其れでも答えを出さなければならず暫く考え。


「よ~し明日の朝早くみんなで行くぞ。」


「あ~ぁ、良かったよ、これでやっと奴らからも離れる事が出来るんだなぁ~。」


「ああ、そうだよ、これで親分と会えるかも知れないんだからなぁ~。」


「兄さん、其れと漁師の話じゃ外海に出たら突然潮が変わる事が有るって言ってましたよ。」


「何だと、じゃ~下手に出ると何処に行くのかもわからないって事か、う~ん。」


「そうなんですよ、だから漁師は絶対に外海にも出ないって言うんですよ。」


「あ~ぁ、やっぱりなぁ~、じゃ~小舟に乗っても下手すりゃ~オレ達は官軍兵の要る浜に着く事も有るって事なのか。」


「でも漁師は官軍なんか見た事も無いと思うんですよ。」


「何でそんな事がわかるんだよ。」


 昌と言う男は仲間の男達が次第に気持ちが落ち込んで来るのもわかる、だが今更どうすればいいのかも判断が出来ないのか、じ~っと考えて要る。


「オレ、軍服を脱ぐのを忘れてたんですが、でも漁師は全然驚か無かったんですよ。」


「そうか、じゃ~此処には官軍兵は来て無いって事か、だが油断は出来ないぞ、陽が暮れたら小舟を取りに行くんだ、だけど漁師達には絶対に見付かるなよ。」


「兄さん、分かりましたんで、じゃ~オレ達が行きますんで。」


 と、数人の男が小舟を取りに行くと言う、だが何故この地に官軍兵は来ていないのだ、確かに官軍は全てを制圧して要るのでは無かったのか。


「其れとだ、明日の朝は早いからみんなもそのつもりでな。」


 男達は一体何処に向かうのだ、其れにしても今何処に居るのかもわからないのだろうか。


「小川さん、橘さんの部隊ですが、どの様な配置になって要るのですか。」


「野洲から来られました中隊も全員が三銃士隊形は出来るのですが、橘さんの部隊はどなたもご存知有りませんので人数は三人づつとし、三銃士の間隔を通常よりも広く取り三軒としその間に通常配置しております。」


「ですが橘さんの部隊は。」


「勿論承知しておりますので、そのまま行けば多分ですが松川の部隊と被る事にもなりますが、自分は其れでも良いと考えております。

 其れと特選隊ですが、彼らは一番前に出られると申され、其れで三段構えで、第一段が特選隊、第二段が山賀の中隊、これも三銃士の陣形で御座います。


 そして、最後の第三段が野洲と橘さんの部隊の混成部隊で御座います。」


 小川は山賀だけは三段構えで迎え撃つ作戦を取ったので有る。


 其れと言うのも十人程の侍達は山賀から登り、其れを官軍が見て要るならば誰が考えても、いや山賀に集中するだろうと、小川は山賀に集中して来ると考え三段構えで迎え撃つと言うので有る。


「小隊長、さっきから大きく左に曲がりましたが何処まで行くんでしょうか。」


「このまま進めば菊池に着くが、もう少しで陽が落ちた頃に菊池に入れると思うので中隊長に知れせてくれ。」


「では自分の分隊が行きます。」


 と、一個分隊で菊池に知らせる事になった。


「私は此処から菊池までどれくらい有るのかもわからないんだ。」


「其れは自分達に任せて下さい。

 実は自分達も分かりませんが、何としても阻止しなければなりませんので。」


 菊池に近くなると陽が落ちるのが早く感じ、だが其れよりも官軍兵には絶対知られてはならない。


 そして、明くる日の早朝 東の空が少し明るくなるのを待った男達は早くも海に小舟を出し外海へ向かい、だが外海に出るとやはり漁師達の話しが正しく潮の流れが違うのか北へ北へと向かい始め、男達は手を使い必死で水をかくが其れでも自然の力にはとても歯が立たず次第に北へと向かい、其れでも男達の執念が実ったのか一時程して少しだが南の方と、そして、その後一時程すると。


「昌兄~い、さっきの入り江を通り過ぎましたよ。」


「よ~しもう少しだ、みんな頑張ってくれ。」


 その後、一時半程すると。


「あっ、あそこに小さな入り江が見えて来たぞ。」


「よ~し入ろう。」


 数艘の小舟に乗った男達は小さな入り江に入り、やっと安心したのか全員が疲労と空腹の為なのか小舟に乗ったまま眠ってしまった。


 辿り着いた小さな入り江とは一体何処なのか、そして、男達は一体何者なのか、次第に運命の時が来るとは男達は思いも知らずただ只管眠って要る。



     

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