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闇の帝国    作者: 大和 武
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 第 81 話。 情報を得る為には必要なのか。

 源三郎達が駐屯地を出発して一時半程行ったところで丁度、吉田と合流した。


「吉田さん、如何でしたか。」


「全員の死亡を確認しました。」


「左様ですか、其れで中隊の兵隊さんですが。」


「戦死者はおりませんが、十数名が負傷致しました。」


「大怪我をされたのでしょうか。」


 源三郎は幕府の残党は全員抹殺したが、中隊からも十数名が負傷して要ると聞き命の別状を聞く。


「命には別状有りませんが、全員が敵軍が放ちました矢を受けております。」


「ではまだ刺さったままなのですか。」


「私は先にこの地を離れる事が先決だと思いまして。」


 源三郎は負傷兵の元へと。


「大丈夫ですか。」


「はい、自分は大丈夫です。」


 と、兵士は気丈に答えるが、肩には矢が刺さった状態で。


「吉田さん、急いで大岩へ参りましょう。」


 源三郎は負傷兵の近くにおり、吉田が先頭を行き四半時程で大岩に到着した。


「さぁ~私の肩に手を。」


 源三郎は兵士を気遣いながら手を差し伸べた。


「小隊長、十数名が肩や腕に矢が刺さっておりますが何か出来るでしょうか。」


「数人で薬草を探せ、其れと直ぐにお湯を。」


 日光隊の兵士の動きは早く、数人が薬草捜しに、数人が火を起こしお湯を作る、だが日光隊の兵士は慣れて要るのか薬草は直ぐ集め、そして、薬草を煮る者、手拭を裂く者と。


「では矢を抜くぞ。」


 と、言った瞬間、中村が一気に矢を抜いた、兵士は一瞬。


「うっ。」


と、言ったが、余りの早業に痛みも感じないのかも知れず、中村はその後薬草を手もみし傷口に当て細く裂いた手拭いを巻き。


「後は薬草の煮汁を飲めばもう大丈夫だ。」


 と、言って兵士の肩を「ぽん。」と叩くと。


「痛い。」


 と、言うが、何故痛いのかも兵士にはわからない。


 その後、中村は次々と兵士の腕や肩から矢を抜き治療して行く。


「う~ん、其れにしても大したものですねぇ~、私は初めて見ましたよ。」


「此処ではこの様な傷を受けたとしても直ぐ城下に戻る事も出来ませんので自然と自分達が出来る様になったのです。」


 日光隊も月光隊も今まで何度と無く怪我をして要るが、城下に戻るには余りにも遠く何時頃かわからないが自分達で出来る様になったのだと言うが。


「他に怪我をされたお方はおりませんか、吉田さん、中隊の他にも兵隊さんが怪我をされておられないかを調べて頂きたいのです。

 此処には狼の大群が居りますので少しの怪我でも命とりになりますのでお願いします。」


 吉田は直ぐ中隊長に指示し全員を調べる様にと、いや指示では無く命令した。


「参謀長殿、自分がもう少し早く気付けば良かったので、申し訳御座いません。」


 中隊長は自身にも責任が有ると言うが。


「全てはわしの責任だ、何も中隊長が責任を取る必要も無いんだ。」


 上野は全ての責任は自分に有ると言う、だが其れよりも問題は源三郎が突然やって来た、だがその時に司令本部より資材の行き先を調査する武官が来たと報告すら出来なかったのだと。


「ですが自分にも。」


「其れよりもだ一刻でも早く司令長官官殿にお伝えしなければならないんだ。」


 上野は責任の所在を明らかにするより一刻でも早く源三郎にも知らせなければならないと。


「ですが、自分は司令長官殿の居られる連合国と言う国が何処に有るのかも知ら無いのです。」


「やはりか君もそう思って要るのか。」


 中隊長も源三郎には早く知らせるべきだと考えて要るが連合国と言う国が一体何処に有るのかさえも知らないと言うが、上野は何か思い当たる事でも有る様な顔をして要る。


「参謀長殿はご存知なのですか。」


「いや、わしも確信が無いんだ。」


 上野は確信が無いと言う。


「自分は高い山の。」


「中隊長、其れ以上は言うな。」


 中隊長は上野の表情が激変したのを知り、やはり参謀長も同じ様に考えて要ると思うのも当然の事で有る。


「其れよりだ、わしはあの方々が何時来られるのか、其れが今一番知りたいんだ。」


「其れは自分も同じですが、司令長官殿と来られました中隊長と兵士ですが全員が前回来られたので若しも同じ中隊が来られるとなれば、う~ん、三日、いや四日もすれば来られるのでは無いかと考えております。」


「やはりか、君も同じ様に考えて要るのか。」


「では参謀長殿もですか。」


 上野は中隊長も飯田達の馬車部隊は三日無いし四日も経てば来るのは間違い無いと考えて要る。

 源三郎と中隊が戻るのは二日も有れば十分だ、だが中隊が戻ったとしても直ぐ出発出来るものでは無く、兵士の休養も必要で最短でも五日、いや七日を見なければならない。

 上野は連合国軍の位置はわかっていても入口が何処に有るのかは知らず、果たして上野が考える四日や五日くらいで来る事は可能なのか。


「吉田さん、明日の早朝出立しましょうか。」


「私もその様に考えておりまして、中村さんも一度戻られますか。」


「私は日光隊と月光隊は残り、朝霧隊と夕霧隊は一度戻り若様に報告して頂きまして、数日後でもこの地に戻って頂ければ良いと思うのですが、私の独断で伊藤さんや笹野さん、時枝さんには何も相談しておりませんので。」


「私は中村さんの提案に賛成させて頂きます。」


 伊藤は中村の提案に賛成だと、笹野も時枝も承知だと頷き、源三郎と吉田と更に上田と松川より応援に来た各中隊は連合国に戻る為早朝出発し、山賀に戻って行った。


 飯田と吾助達は野洲へは戻らず、菊池に残り源三郎が戻って来るのを待っていた。


「源三郎様、作戦は成功の様で御座いますねぇ~。」


「まぁ~余り簡単とは申せませんが、一応全滅させて置きましたので当分の間は心配は無いとは思いますが、やはり警戒を怠る事は出来ませんのでねぇ~。」


「では数日後にと言う事で宜しいでしょうか。」


「私は其れで十分だと思いますよ、其れと漬け物と梅干しの樽ですが、駐屯地の職人さん達も大変楽しみしておられましたが、今どれだけ積んで要るのか調べて下さい。」


 兵士は馬車の荷台を調べ直ぐに戻って来た。


「五樽積んで有りましたが、あれでは全然足りないと思うんです。

 兵士は我慢出来ても職人さん達に我慢してくれって言えないですよ。」


「分かりました、私から総司令にお願いして来ますので待ってて下さいね。」


 護衛隊の中隊長も五樽では余りにも少ないと思って要る。


「総司令にお願いが有るのですが宜しいでしょうか。」


「何か不備でも有りましたか。」


 源三郎は正か漬け物と梅干し樽が少ないとは思ってもいなかった。


「実は漬け物と梅干しなのですが、駐屯地の職人さん達には次に来る時には沢山持って来ますので楽しみにして置いて下さいと。」


「左様でしたか、では何樽と申しましょうか、どれ程必要なのでしょうか。」


 だが中隊長はどれだけ必要なのか知らず言えないが源三郎は。


「では積めるだけ積み込まれては如何でしょうか、職人さん達の楽しみを奪ってはいけませんからねぇ~。」


「誠に有難う御座います、では早速に。」


 と、中隊長は安心したのか源三郎は喜びを隠せない中隊長の後ろ姿にほっとしたのも間違い無い。


「高野様、お城にはどれ程漬け物と梅干しの樽が残って要るのでしょうか。」


「どれ程と申されましても、私も一体どれ程残って要るのか正確には知らないのですが、何か有りましたのですか。」


 高野は源三郎が聞く意味が分からず、首を傾げた。


「先程ですが、馬車部隊の護衛をお願いしております中隊長が向こうの駐屯地には大勢の職人さんが居られ、我々の漬け物と梅干しを大変楽しみにしておられているそうなんですよ。」


「左様でしたか、では積めるだけ積んで頂いても宜しいかと存じます。」


「其れをお聞きし私もほっとしましたよ、実は高野様の許しを得ず勝手に決めたのですが、中隊長は大変な喜びようでしてね。」


「漬け物と梅干しを楽しみしてしておられるならば、私は十分で御座います。」


「お~い、総司令からお許しを頂きましたのでお城へ取りに行って下さい。」


「だけどなぁ~、あんまり沢山積むと。」


「総司令は積めるだけ積んで下さいと、やはり職人さん達の喜ばれるので有ればと申されておられますので何も心配は有りませんよ。」


「じゃ~今から行っても宜しいですか。」


 中隊長も兵士達の喜びようは理解出来る。


「其れよりも銃の手入れと、弾の補充を先にして下さいね、其れと馬具の点検もですよ、全てを終えたならば宜しいですからね。」


「じゃ~今から銃の手入れと弾の補充をしますんで、お~いみんな銃の手入れと弾の補充に掛かってくれ、其れが終わったら馬具の点検だ、全部終わったらお城へ行くぞ。」


「お~。」


 と、中隊の兵士が雄たけびを上げ、駐屯地へと戻って行った。


「高野様、あの兵隊さん達は向こう側に行かれるのを大変喜んでおられのですが、先日の一件も有りますので。」


「勿論全員が承知しておられます、ですが其れよりも資材の受け取りと、漬け物と梅干しの樽を届けると言う事に方が大事だと考えておられるのです。」


 高野も兵士達の気持ちは十分理解して要るが、この先は何が起きるやも知れないと言う不安が頭の中を過るので有る。


「私も高野様の心配されるのは十分理解しております。

 ですが兵士もですが駐屯地に居られる職人さん達に安心して頂けるには同じ兵士が向かわれ、其れが良い結果となるのでは有りませんでしょうか。」


 源三郎も同じ中隊の兵士が行く事で積み込み作業や他の事でも良い結果に結び付くと思って要る。


「私も立場が変わりましたならば同じ人物が来られると言うだけで安心出来るのは間違い御座いません。」


 その後、兵士達は銃の手入れや馬具の手入れを行い、その後、お城の蔵から大量の漬け物樽と梅干しの樽の積み込みが開始された。


「中隊長さん、漬け物樽ですが一体何樽積み込みされるのですか。」


「正直なところ私もわからないんですよ、総司令は積めるだけ積んで下さいとお許しを得ておりますので。」


 飯田と中隊長の話の最中でも兵士達は漬け物樽を馬車に積み込んで要る。


「中隊長殿、漬け物樽を五十樽と梅干し樽を十樽積み込みました。」


「えっ、漬け物樽だけで五十樽も積み込まれるのですか。」


「その通りでして、駐屯地の職人さん達が漬け物が一番嬉しいと言われまして、其れで兵隊さん達は出来るだけ多く持って行きたいと総司令にお願いしましたところ、直ぐ許可を得たのです。」


「左様でしたか、其れにしても大変な量ですねぇ~。」


「ですがお陰様で駐屯地の兵士からは色々な情報を得る事が出来るのです。」


 情報は上野や中隊長から得るよりも兵士達から得る事の方が多く、其れと言うのもお互いが同じ兵士同士ならば安心出来るのだろう。


「では同じ兵隊さんだと言うのが安心されるのですか。」


 飯田も漬け物が有るだけで多くの情報を得る事が出来るとは考えもしなかった。


「私も漬け物だけで情報を得る事が出来るとは考えもしておりませんでした。」


「自分もその様には考えておりませんでしたが、兵士からの話で多くの情報を得る事が出来るならば五十樽は安いと、其れで総司令にお願いし、許可を得たのです。」


 源三郎も正か漬け物で情報を得る事が出来るとは考えてもいなかった。


「中隊長さん、明日の出立ですが。」


「早朝に出立する予定にしております。」


「分かりました、では我々もその前に準備を終わりますので宜しくお願い致します。」


 さぁ~今回はどれだけの資材を受け取る事が出来るのか、げんたには一刻でも早く機織り機を動かす動力源を造って貰わなければならず、その為には多くの資材が必要だ。


 飯田もだが吾助達も早く機械を稼働させ、生地を作り洋服を着て欲しいと、ただ其れだけで有る。


 そして、明けた早朝、馬車部隊は再び駐屯地へと向け出発した。



      

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