第 79 話。源三郎は一体何を考えて要る。
「分隊長、やっぱり三十人でして、武器は弓が十人程で残りは槍と刀だけです。」
「そうですか、其れで何処へ向かうとか言っておりませんでしたか。」
分隊長は武器や人数も去る事ながら行き先を知りたいが、野盗と思われる集団がこのまま戻り橋の方へ向かうのか、其れとも土手を北へと向け菊池へ向かうのか行き先によっては伝令を出さなければならないと考えて要る。
「それがはっきりわからないんですよ、奴らは食べながら喋ってますので。」
「まぁ~其れも仕方が有りませんねぇ~、でも食べ終われば移動を開始すると思われますので、其れまではこの場で監視を続けます。」
朝霧隊の分隊が監視続行に入った頃。
「分隊長、我々が交代しますので戻って頂き報告して下さい。」
「そうですか、では今から戻り報告しますので、其れと奴らは今食事中でして、其れが終われば移動するものと思われますので宜しくお願い致します。」
分隊長はその後大岩へと戻って行く。
一方で日光隊にも同じ様な動きで分隊が戻って行く。
「伝令、伝令で~す。」
と、分隊は隧道へ入り抜けると。
「君は中隊長に一個中隊を派遣して下さいと、其れと君は高野司令に野洲へお越し下さいと伝えて下さい。
私達はそのまま野洲へ向かいますので。」
と、分隊長と兵士は馬を換え野洲へと飛ばして行く。
「中隊長殿、中隊長殿、大変です、大変な事が起きました。」
菊地の駐屯地に飛び込んだ兵士はその後中隊長に説明し、其れから半時程して一個中隊が隧道を出て行く。
菊地から野洲へ向かった分隊長は四半時程で野洲に着いた。
「君は大佐殿と少佐殿に大至急執務室に来て頂きたいとお願いして下さい。」
兵士は駐屯地へ、分隊長は執務室へ飛び込んだ。
「総司令、大変で御座います。」
分隊長は事件と言うべき事態を説明すると。
「工藤さんと吉田さんを。」
と、言った時二人が飛び込んで来た。
「今、お二人をお呼びしようと思っておりまして。」
「伝令兵が大至急執務室に来るようにと、其れで一体何が起きたのですか。」
「分隊長、申し訳無いですが今一度説明して頂けますか。」
分隊長はその後、工藤と吉田にも説明すると。
「吉田は二個中隊を編成し直ぐ現地へ向かえ。」
吉田は頷くよりも早く執務室を飛び出して行く。
「分隊長の説明ならば今は四個小隊だけで監視されておられるのですか。」
「その通りでして、大岩からも山賀へ向けておりますが、早くても本日の夕刻には着けると思うのですが。」
「工藤さん、上田と松川から各一個中隊を山賀へ向けましょう、馬で参りそのままで上まで参れると思いますので。」
「承知いたしました、私も戻り直ぐ手配し、私も一緒に参ります。」
今回の様な事件ならば工藤の動きは早く、やはり軍人だけの事は有ると源三郎は思って要る。
「分隊長はどちら方が早いと思われますか。」
「私ならば菊池を出て参ります。」
「左様ですか、では私も参りましょう、鈴木様は殿とご家老に説明して頂き、上田様は私と分隊長の馬を手配して下さい。」
「総司令、私達はどの様に致せば宜しいのでしょうか。」
「お二人は残り何時ものお役目を続けて下さい。
さすがだ、今回だけは二人には残れと、だが不満だと言う顔をしているが、源三郎の顔を見ると言うのは無理だと諦めるしかなかった。
「では分隊長、参りましょうか。」
源三郎は分隊長と駐屯地から出て来た兵士と共に菊池へと向かった頃、駐屯地から上田と松川へと向かう伝令兵は馬を飛ばして行く。
「吉田、今回は覚悟してくれるか。」
「大佐殿、私は今武者震いしておりまして、今度ばかりは覚悟致しております。」
「そうか、私も行くが、多分総司令も向かわれるぞ、其れと予備の弾薬だが炊事班も同行させ別の馬車で持って行くんだ。」
「では一本だけ携帯すれば宜しいのですか。」
「馬の負担を考えなければならんのだ。」
「承知しました。」
「少佐殿、二個中隊の出撃準備が整いました。」
「中隊長、済まんが弾倉帯は一本に残りは馬車に積んでくれ。」
「承知致しました、では後四半時だけお待ち頂けますか。」
「本当に済まんなぁ~、其れと今度ばかりは覚悟して欲しいんだ。」
「大佐殿、自分もですが中隊の兵士全員が連合国に参加させて頂きまして、これ程幸せな事は御座いません、と、申しておりまして、自分はやっと死に場所を与えて頂きましたところを大変感謝しておりますので、どうかご心配無く。」
と、中隊長は官軍に在籍した頃よりも今の方が晴れ晴れした表情だと工藤は思った。
「大佐殿、先程総司令が菊池に向かわれました。」
と、駐屯地正面の歩哨兵が飛び込んで来た。
「あ~やっぱりか、総司令が早くも向かわれたのか、吉田も急いでくれよ、私の馬も頼む。」
「大佐殿も参られるのですか。」
「勿論だ、今回は今までとは違い連合国の一大事になるやも知れんのだぞ。」
工藤はその後、吉田よりも早く駐屯地を出て源三郎を追い掛けて行く。
「お~いみんな駐屯地から兵隊さんが大勢出て行くぞ。」
「わぁ~本当だ、だけど一体何処に行くんだ。」
「よ~し、お城に行って聞いて見るか。」
城下の人達数十人がお城へと向かい、源三郎が何の為に鈴木と上田を残したのか、やはりこの様な時の為にで有る。
「門番さん、源三郎様は居られるんですか。」
「いいえ、先程馬に乗られ菊池へと向かわれましたが、私も何処に向かわれるのかも知らないんですよ。」
「そうか、じゃ~鈴木さんと上田さんは。」
「お二人は残っておられますよ。」
「じゃ~聞きに行こうか。」
と、城下の人達が執務室に向かうが、鈴木と上田も今はおらず、お殿様とご家老様に説明して要る頃で有る。
「殿とご家老にお伝えする事が御座います。」
「そうか、で源三郎も向かったのか。」
「はい、先程向こう側に向かわれました中隊の伝令兵が戻って来まして。」
と、鈴木は執務室で聞いた話をすると。
「何じゃと、では人数も武器の種類もわからぬと申すのか、其れにじゃ、馬車部隊はそのまま向かっておるのか。」
「馬車部隊は只今菊池へ戻る様になっておりまして、山賀の分隊長と一緒に向かわれておられます。」
「殿、今回ばかりは山の主の手助けも御座いませんので兵士からは相当数の犠牲者が出るやも知れませぬぞ。」
ご家老様も今度ばかりは狼の援助も無く、相当数の兵士が犠牲になるのではと考えて要る。
「う~ん、じゃが何とかならぬのか。」
「殿、源三郎も今回だけは覚悟して参ったと考えております。」
「何じゃと源三郎もなのか、う~んこれは大変な事じゃ、余は何も出来ぬのが誠悔しいのじゃ。」
「殿、拙者もで御座いますが、我々もこの数百年間と言うもの本当の戦に出会う事も無く、今日まで来て要るのです。
幕府が崩壊し、今は新しい政府が日本と言う国を統一しておりますが、幕府も数百年間も続き、中にはその時の味を忘れる事が出来無い多くの侍が居るのも確かでして、その様な者達は今後も出て来ると考えなくてはなりませぬ。」
「余も源三郎から話は聞いており理解して要るつもりじゃが、今の政府では何とも出来ぬと申すのか。」
「全てを調べると言うのは無理で御座いまして、奴らはその様な隙間をすり抜け出没すると思うのですが、明示政府も馬鹿では御座いませんので。」
明示政府も何も出来ない程馬鹿では無いが、まだ新政府が発足して数年で全てを終えるのは無理でまだまだ年月が掛かるので有る。
「其れで雪乃も知っておるのか。」
「はい、お部屋に居られまして、全てをお聞きになっておられます。」
「そうか、では余が余計な話をする必要も無いの~。」
雪乃は常に源三郎の傍におり、伝令兵が飛び込んで来た時もおり、全てを聞いて要ると。
「そうか、では何か報告が有ったなのば余にも知らせるのじゃぞ。」
「承知致しました。」
と、鈴木と上田は執務室へと戻って行くが、執務室では城下の人達が家臣に詰め寄り、家臣は何も言えない状態で有る。
「皆さん、一体どうされたんですか。」
鈴木は惚けるつもりで、だが今の領民達には全く通じない。
「じゃ~鈴木様にお聞きしたいんですが駐屯地から大勢の兵隊さんが、其れに源三郎様も馬で菊池に向かわれたんですよ、其れにですよ、その前に大きな馬車も連ねて行った、これで何も無いって言われても、オレ達が信用するとでも思ってられるんですか。」
もうこうなっては鈴木は何と返答すれば良いのか冷や汗をかいて要る。
「鈴木様、私で宜しければお話しをさせて頂きますが。」
と、雪乃が入って来た。
「ねぇ~雪乃様、一体何が起きたんですか、大勢の兵隊さんもですが、源三郎様も馬で行かれたって。」
「皆様方には私がお話しさせて頂きますが、皆様方、どうかお静かにして頂きたいのです。」
やはりだ雪乃が言うと領民達は一瞬で静かになり雪乃の話を聞くと言う。
「ではお話しをさせて頂きますので。」
と、雪乃は先程、分隊長が話した内容を領民達にも理解出来る様に話すと。
「じゃ~まだ何にもわからないんですか。」
「その通りでしてね、大勢の兵隊さんが向かわれたのもその為なのです。」
「そうか何にもわからないから、源三郎様も馬で行かれたのか。」
「その通りでしてね、まぁ~その様な訳ですので、皆様方もご心配される事も有りませんよ。」
雪乃は領民には心配するなと、だが一番心配して要るのは雪乃自身で有る。
「じゃ~何かわかったらオレ達にも知らせて下さいよ。」
「勿論ですよ、私も早く知りたいので、皆様方は戻って頂いても宜しいので。」
「じゃ~雪乃様、お頼みしますよ。」
と、やはり領民達は納得したのだろうか、城下へと戻って行く。
「雪乃様、誠に申し訳御座いませぬ、私の不手際で。」
「いいえ、何も鈴木様に責任が有るとは思っておりませんよ、先程も源三郎様が申されました様に何時ものお役目をされては如何で御座いましょうか。」
鈴木と上田は雪乃の言葉に安堵したのか、源三郎が戻るまでは何時もの役目を果たす事を考えた。
その頃、向こう側に有る大岩から山賀のお城に向かった兵士が大手門に辿り着いた。
「若様に大至急お伝えする事が。」
と、言って兵士は倒れ込んだ。
「しっかりして下さい、誰か若様に大至急お越し下さいと。」
大手門の門番は大急ぎで執務室へと。
「若様、大変で御座います、直ぐ大手門にお越し下さいませ。」
門番も大慌てで、だが若様にすれば一体何が起きたのかも聞けないが、直ぐ大手門へ向かうと兵士が倒れており、家臣が必死で話し掛けて要る。
「水を持って来て下さい。」
家臣は慌てて部屋へ。
「さぁ~お座り下さい。」
若様と兵士が座ると水が運ばれて来た。
「さぁ~もう大丈夫ですよ、ゆっくりと息をして下さい。」
若様は話を聞くと言うよりも、兵士を安心させる事が先だと思った。
「若様、大変で御座います。」
兵士は息も絶え絶えの状態で有りながら向こう側で発見された野盗と思われる集団と幕府の残党と思われる大集団の事を説明すると。
「誰か隊長を呼んで下さい。」
家臣も大急ぎで駐屯地へと向かい、兵士も少し落ち着いてきたのか立ち上がり若様と一緒に執務室へと入って行く。
「では少し落ち着てからでも宜しいのでゆっくりとお話し下さい。」
その後、日光隊と朝霧隊の兵士が詳しく話して要ると。
「若様が大至急との事ですが。」
と、小川が飛び込んで来た。
「小川さん、今もお話しを伺いましたが、向こう側で大変な事態が起きて要るのですが、兵隊さんも今一度お話しして頂けますか。」
若様は小川にも最初から話す様に言うと、兵士も頷き最初から話した。
「では今も四個小隊が監視されて要るのですか。」
「左様でして、ですが多分別の分隊が馬を飛ばし菊池と野洲に向かわれておられ、自分達よりも早く着かれて要ると思います。」
「其れならば今頃は菊池と野洲からは二個中隊が馬で向かって要ると思います。」
やはり小川だ、源三郎で無くても工藤も吉田も居るので直ぐ手配され、今頃は菊池を出て要るだろうと思って要る。
「では義兄上は手配を終わられて要るのでしょうか。」
「総司令で無くとも大佐殿でも同じ方法で手配されると思います。」
「では義兄上も向かわれて要るのでしょうか。」
「多分間違い無いと思いますが、私も参りたいと思うのですが、若様はどの様に判断して頂けましょうか。」
小川は直ぐに行くと、だが最後の判断は若様に有ると言うが、この時の若様は何時もとは違い、何故か考え込んでおり、小川も多分向かえと命令されると考えていたが。
「小川さんには大変申し訳御座いませんが、向こう側には二個中隊が馬で参られるので有れば、若しも事を考えまして、小川さんには山賀に有る登り口の監視をお願いしたいのです。」
やはりか、小川は別に驚きもせずに、山賀には向こう側に何時の頃からか定かではないが旅人が登り口と思われる所に木造りで目印となる物を作り打ち込まれており、更に幕府の時代から知って要る者達も要るだろう、若しもその者達の呼び掛けで大勢の野盗、若しくは幕府の残党が集まって来ると大変な事態を引き起こすのだ、小川には向こう側に集結して要る野盗や残党なのかはわからないが、一人たりとも入れてはならないと決意した。
「今からでも猿軍団を動員し警戒に当たり、我々も出撃致します。」
若様も猿軍団と小川に任せるのが最善だと決断し、小川は直ぐ駐屯地に戻り兵士達に説明し、中隊は山の麓へと向かった。
その頃、隧道を出た源三郎に高野と分隊長は中隊が待機中の川原に着いた。
「総司令が直々のお出ましで。」
「中隊長も大変で御座いますねぇ~、其れで今はどの様な状況なのですか。」
「私にも正確な情報は入っておりませんが、菊池からの応援部隊の到着後移動する予定で御座います。」
その四半時後に菊池を出発した吉田は三個中隊を連れて来た。
「総司令、遅くなり誠に申し訳御座いません。」
「いいえ、私も先程着いたばかりでしてね、其れよりも菊池の中隊は高野さんの指示で待機して頂きたいのです。」
「我々は待機するのですか。」
「高野さんには大変申し訳御座いませんが、私が説明しますので。」
源三郎は何故高野と菊池の中隊に待機せよと言うのかを説明すると。
「やはり、総司令もその様に考えておられたのですか、私もこれには他に何か有るのでは無いかと考えておりましたので承知致しました。
では此処で待機させて頂きますが宜しいでしょうか。」
「誠に申し訳御座いませんが、吉田さん、炊事班ですが菊池隊の為に食料と弾薬を残して頂きたいのです。
吉田さんと一緒に来られた一個中隊は分隊長と一緒に参って頂き、朝霧隊と合流して頂き、吉田さんは一個中隊と、私と一緒に、其れと中隊長の分隊も一緒に来て頂きます。」
源三郎は今の場所で高野と菊池隊に待機せよと、吉田と一緒に来た中隊は朝霧隊と合流させ、残りの一個中隊、そして、馬車部隊の護衛に就いていた中隊は一緒に来るようにと指示を出し、各中隊は直ぐ行動を開始したが、何故護衛隊の中隊が源三郎と一緒に行くのか護衛隊の兵士には全くわからない。
その後、一時半程すると。
「総司令、朝霧隊はこの川原にて監視しております。」
「では分隊長、宜しくお願いします。
中隊は朝霧隊の指示の下で動いて頂きたいのです。」
源三郎は現在の状況を最も知って要る朝霧隊の指示が最適だと、勿論、中隊長も兵士達も納得しており、分隊長と中隊は源三郎達をわかれ、朝霧隊と合流するので有る。
「吉田さん、この付近で休みを取りませんか、馬も休ませてくれと言っておりますので。」
吉田も休みは必要だとわかっており。
「承知致しました、中隊は川原にて休みに入る、馬に水を与えて下さい。」
兵士達も休め、馬も休めるとわかって要るのだろうか、喜んで要る様にも見える。
「吉田さん、休みが終わりましたならば、大岩へ参りましょう、多分、日光隊も月光隊、其れに朝霧隊と夕霧隊の小隊長も居られると思いますので、今後の作戦を考えねばなりませんので。」
源三郎もだが吉田も四個小隊の小隊長から詳しく聞きたいと思って要る。
果たして、源三郎はどの様な作戦を考えて要るのだろうか、源三郎は目を閉じ、何かを考えて要る様だ。
そして、半時程して源三郎達は大岩を目指して出発した。