間違って、前後を間違い投稿しました。 第 14 話 思い掛けない情報。
ロシュエ軍の勝利は、その日の昼頃に伝令の報告で、農場の人達は大喜び
だ。
特に、ウエス達によって大変な苦しみを味わった人達にとっては、人生最
大の喜びと成ったので有る。
「ねぇ~、みんな聞いて。」
テレシアは、喜びを抑えている。
「ねぇ~、お願いだから。」
「テレシア、どうしたんだ~、こんなに嬉しい事が有ると思うか。」
「うん、私も、分かってるのよ、だけど、みんな、夕方には、将軍や、兵
隊さん達が帰って来るんだよ、今から、今夜の食事の用意をしたいんだ。」
「よし、分かったよ、お~い、お風呂部隊も大集合だ。」
子供達は、大歓声を上げた、其れは、何時も、この農場に来て遊んでくれ
る兵士達が、全員無事に帰ってくると言う、最高の喜びだった。
イレノアは、何とも言えなかった、今にも泣き出しそうな顔だが、やはり
嬉しかった。
其れは、フランチェスカも一緒で、二人は抱き合って涙を流し、喜びを表
していた。
もう、二度と、こんな苦しい時間だけは欲しく無いと思う二人だ。
「お~い、将軍達が帰ってきたぞ~。」
城壁の上から大きな声が聞こえた。
「わぁ~。」
子供達が、一番に飛び出し、其れからは、次々と広場に集まってくる。
ロシュエは、城門をくぐると、最初に、イレノアを探した。
イレノアは、城門の直ぐ側にいたので、ロシュエは、馬を降りると、イレ
ノアを強く抱きしめ。
「今、帰ってきたよ。」
「はい、大変、ご苦労様でした。」
その時には、イレノアの眼には大粒の涙が頬をつたっている。
「心配掛けて済まない。」
ロシュエは、イレノアに熱いキスをする。
城門では、狼犬部隊を先頭に、第1番大隊から、第5番大隊までの兵士達
は、手を大きく振り、喜びを表している。
「全部隊、整列完了しました。」
司令官の合図で、広場に集まった農民達は静かになり。
「全員、大変、ご苦労であった、数日間はのんびりと過ごし、また、城壁
を大池造りに入る、以上だ。」
「全部隊、解散せよ。」
司令官の号令が終わると。
「全員、馬を放牧場に放ち、後は、自由にしてくれ。」
其れからは、各部隊毎に、全ての馬を放牧場に放ち、兵士達は、ホーガン
を武器庫に戻すと、子供達がやって着た。
「おにいちゃ~ん。」
兵士に飛び付く子供達の様子が広場全体で始まった。
「将軍。」
「お~、テレシア、済まなかったなぁ~。」
テレシアも涙が止まらなかった。
「なんだよ~、テレシア、泣いているのか。」
「何を、バカな事を言ってやがんだ、目にほこりが入ったんだよ。」
ロシュエも、嬉しかった、テレシアや、イレノア達に、元気な姿を見せら
れる事が、その時、あの母親が近づき。
「将軍様、お聞きしました、本当に、ありがとう、御座いました。」
「お~、あんたか、全部、終わったよ、此れからは、安心して、この農場
で、みんなと、一緒に住めばいいんだ。」
「おじさ~ん、お帰り、何処に行ってたの。」
「うん、おじさん達はね、悪い奴らをね、退治してきたんだよ。」
「ふ~ん、じゃ~、またね。」
幼い子供の無邪気な顔にも安堵の表情が表れている。
「司令官、済まんなぁ~、解散させたのに、悪いが、小隊長以上だけを集
めて欲しいんだ。」
ロシュエは、最初、帰還報告を行なうつもりは無かった。
既に、多くの兵士達は、子供達と遊ぶ者、また、風呂に入っている者、今
は、農場の人達と、和やかな状態に戻っている。
「はい、閣下、私の独断で、申し訳御座いません。」
「いいんだ、何も、気にしなくても。」
「では、早速に。」
司令官は、兵舎に向かい、その直ぐ小隊長以上が集合した。
「司令官、ありがとう、じゃ~、全員整列。
農場の人達に伝える、我々は、あなた方を苦しめた者達を全滅させた。
だが、その者達の手引きで、新たに、2万人以上の軍隊が、我々の言うよ
り、皆さんの農場を乗っ取る準備を行なっている。
勿論、この軍隊は、直ぐこの農場を攻撃する事は無い、だが、30日、5
0日後には、この農場近くに到着するだろうと思われる。
我々は、2~3日の休みを取るが、その後は、全員の団結で、工事に入っ
て欲しい。
だが、何も急ぐ事は無い、急ぐ余り、事故にあっては、全てが駄目になる
からだ。
どうか、農場の皆さん、手助けをお願いする、以上。」
ロシュエは、帰還報告と言うより、城壁造りの手伝いを頼むので有る。
「将軍、今は、農場で、何もする事は有りませんので、我々は、明日から
でも入る事が出来ますよ。」
「本当に、有り難い、だが、此れからは、全員で行なう方が良いと思う、
だから、農場の人達も、少し待って欲しいんだ、其れよりも、これから先の
事も考えて、みんなの意見を聞きたいので、農場の代表は、10人か、20
人くらいで、男女を問わず集めて欲しい、明日、オレの執務室に来て欲しい
んだ。」
「将軍、分かりました。」
「此れで、報告は終わる、農場の皆さん、本当に、ありがとう、では、解
散する。」
その時、農場の人達から大きな拍手が起きたので有る。
小隊長以上と、兵士達は、農場の人達に改めて敬礼し、小隊長以上は再び
兵舎へと戻って行く。
その日の夜、小隊長以上は、大食堂の中で、兵士達は外で、農場の人達を
交えて全員で食事を取る事が出来た。
兵士達は、仲良しの子供達と、一緒に食べている。
大食堂の中は、笑い声の渦で。
「閣下、本当に良かったです、私も、少し肩の荷が下りた様な気分で
す。」
「うん、オレもだよ、だがよ~、ウエスが、どんな話をしているのか、其
れが、今は、分からないんだ。」
「じゃ~、あの二人から、出来る限りの情報を聞き出せれば良いのです
が。」
「まぁ~、オレは、そんなに期待はしてないんだ。」
「将軍。」
「ホーガン、どうしたんだ、もっと、ゆっくりとすればいいのによ~。」
「はい、ありがとう、御座います。
それで、あの二人から話をしたいと言ってきましたので。」
「よし、分かった、じゃ~、行こうか。」
ホーガンは、若い二人の農民を連れてきた。
「司令官、済まないが、誰かに、隊長達を呼ばせて欲しいんだ。」
「はい、承知、致しました。」
司令官は、隊長達の宿舎に向かい、ロシュエ達は、執務室に向かうので有
る。
暫くすると、5人の隊長達がやって着た。
「じゃ~、みんな、座ってくれ。」
二人の若い農民は、大変な緊張感に包まれ、少し震えている。
「じゃ~、君達、済まないが、最初から話をして欲しいんだ、隊長達も知
って置く必要が有るんでなぁ~。」
「はい、私は。」
一人が、ロシュエに話した内容を、最初から話し、一応、終わると。
「問題はだ、城から、その先の事なんだ、君達は、どんな方法で、ウエス
が、その軍隊と接触したのか知ってるのか。」
「はい、私の知る限りですが、以前からの知り合いの様でした。」
「じゃ~、此処から、5日かの所に城が有るのは知っているのか。」
「いいえ、其れは、知りません。
私達は、まだ、山を二つ越えた所が平原になってるんです。」
「えっ、本当かよ、司令官、知ってたのか。」
「いいえ、私も、今、初めて知りました。
確かに、大きな山が有りますし、この山から、太陽が昇りますので、で
も、その山へは、2日以上掛かりますので、行く必要が有りませんでし
た。」
司令官が、居た城からは、太陽が昇る山に見えたが、2日も掛けて行く様
な所では無いと、城主から言われていたので有る。
「じゃ~、その山の先に山を越えたのか。」
「はい、超えたと言うよりも、その付近ですと、狼も少なく、私達にとっ
ては楽な所でしたので、其れに、山と言っても、大きな山では無かったので
す。」
「司令官、之は、オレ達が考えていた以上に川を渡るのが大変だって事だ
なぁ~。」
「はい、その様に成りますねぇ~。」
「其れで、ウエス達は、全員、馬なのか。」
「はい、そのとおりで、馬だったら、一つ目の山の麓から、川を渡る事が
出来ますが、でも、私達の渡った川も流れが速く、人間が渡るのは無理だと
思います。
ウエスの部下、数人が、馬から落ち、そのまま流されて行くのを見ました
ので。」
「じゃ~、聞くがよ~、その敵軍はどうして渡ったんだ。」
「はい、私は、行った事は有りませんが、ウエスが、中隊長達に話してお
りました。
二つ目の山の向こうに、川幅もなく、流れの緩やかな場所が有るって。」
「じゃ~、敵軍は、その場所を渡ったんだ、だがよ~、隊長達も考えて欲
しいんだ、オレだったらよ~、そんなに日数を掛けてだよ、対岸に渡る必要
は無いと思うんだ。」
「ですが、其処に行くまで、村も無く、食料が調達出来なかったと考えれ
ば。」
「閣下、私も、隊長の話は納得出来ますが、君達は、その川を渡るまで
に、お城も見なかったのか。」
「はい、私は、見ておりません、ウエスの話では、この農場から、一番近
いお城は、農場近くに有る、お城で、後は、30日程行った所に大きなお城
が有るって言っておりましたが。」
「司令官、一番近い城は、司令官の城だ、で、30日程離れた城は、多分
だが、ウエス達が居た城じゃないか、其れは、ホーガンの居た城の城主の収
める国ってのは川の辺だよなぁ~。」
「はい、でも、あの城に近づくのは大変危険が伴いますので、私達も国王
の弟が治める城でなければ見つける事は出来ないと思います。」
「と、言う事はだよ、司令官、その城は、まだ、発見されてないって事な
のか。」
「其れは、私も、分かりませんが、敵軍が対岸沿いに進みますと、発見さ
れる可能性は有ると思いますが。」
ホーガンは深刻な顔付きになってきた、その城の城主も多くの兵士達も知
っている、だが、今は、何も分からない。
「其れでだよ、君達は対岸から、我々の居る場所は分かったのか。」
「はい、対岸からは、多勢の人達が働いているのが分かりました。」
「だがよ~、その場所から、この農場に着くまで何日掛かったんだ。」
「はい、はっきりとは覚えてないのですが、あの時は、30日前後は掛か
ったと思います。」
「じゃ~、敵軍の殆どは歩兵だと言ったが。」
「はい、間違いは有りません。」
「歩兵じゃ~、君達が渡った所は無理だ、では、渡れる所まで行くとすれ
ば、何日掛かるんだ、其れに、全員が川を渡るまでに数日は必要だしなぁ
~。」
ロシュエは、独り言を言っているのだが、何かを考えて要る。
「司令官、30日間も離れた所に城が有るって、だが、その間に村も城も
無いってのは、何か変だとは思わないか。」
「はい、私も、その様に思いますねぇ~、私のおりました城は別としまし
ても、10日前後も歩けば、村も城も有るとは思いますが、では、閣下、ウ
エスは、付近の城や村々を次々と。」
「いや、それにしても変だよ、ウエスの部隊だって、5千人程だ、城を襲
えば、必ず、双方に犠牲者が出るはずだ、じゃ~、一体、誰が。」
「閣下、若しかして、敵軍と言うのは、正規軍では無いのでは。」
「うん、オレも、そう思うんだよ、だがよ~、正規軍も居るはずなん
だ。」
「将軍、私も、今、考えたんですが、正規軍は、馬で移動し、各地で捕虜
にした兵士達を引き入れたと言うのは、考えられませんか。」
「将軍、我々も、若しかすれば、その軍隊に引き込まれた可能性もあった
と思います。」
ホーガンも、各地を回り、ウエス達を追撃していたのだ。
「うん、そうかも知れないぞ、只、ホーガン達は、ウエスの軍を追ってい
たのと、運が良かったのか、其れは、別としてだ、正規軍と遭遇しなかった
と言う事なのか。」
「君達は、その場所に着くまでは、その軍隊と言うのか分からないが、会
って無かったのか。」
「はい、一度も会っていません。」
「だが、よ~く考えて見てもだよ、2万人の軍勢だ、何処かで、遭遇して
も当たり前だと思うんだが。」
「閣下、其れは、考えられますねぇ~、一度も会って無いと言いました
が、偵察隊の様に少ない人数の兵士を見掛けた事は。」
「はい、其れは、何度か有りましたが。」
「やはりだ、ウエスは、最初に詳しく説明し、ウエスは、別の所を進み、
大軍は正規の場所を進んだと言う事も考えられるだよ、だって、何の必要が
あって、二つの山を越えるんだ。」
「将軍、ウエスは、頭が切れると思うんですよ、ウエスは、表面上、その
軍隊に入ったと思わせ、その軍が、我々の農場に近づくのを止めたので
は。」
「う~ん、其れも考えられるなぁ~、だがよ~、あの時のウエスには武器
は隠して有るんだ、そうか、ウエスは、急ぐ必要も無かったんだ、毎日、大
池や、堤防造りで、食事は十分に有る、だからだよ、堤防か大池が武器の隠
し場所にだよ、徐々に近くなる、護衛の兵士だって、一日中は集中出来ない
と、ウエスは分かっていたんだ、兵士だって、疲れて来るんだよ、その時を
待ってたんだ、幾ら、大隊だってよ~。不意を突かれりゃ、負けると思うん
だ。」
「ですが、閣下であれば、武器は何処に隠されますか。」
「将軍、私で、あれば、堤防の土の中に隠しますねぇ~。」
「うん、其れも考えられる、じゃ~よ、その敵軍ってのは本当に居るのか
よ~。」
ロシュエも、迷い出した、二人の農民も見た事が無いと言う、だが、2万
人の軍勢が移動すれば、何かが残っているはずだ。
「将軍、私は、川の対岸に何か分かりませんが、有った様に思えるんで
す。」
「だがよ~、対岸だって、木は有るんだろう、木の陰から見れば、我々の
動きも解ると思うんだが。」
「ですが、時々ですが、馬の嘶き聞こえた様に思えるんですが、でも、は
っきりとした事は解らなかったんです。」
馬の嘶きが聞こえる、其れは、誰かが森の中に隠れ、対岸の様子を見てい
たと言う事に成る。
「そうか、やはり、居るって話なのかよ~。」
ロシュエは、敵軍は存在しないだろうと考えていたのだが。
「閣下、私も、ウエスの芝居だと考えていたのです。」
「将軍、私は、絶えずウエスの動きを見ていたのですが、此れと行った合
図らしき事はしなかったと思いますが、只、対岸から見ても、ウエスなの
か、其れは解らないと思いますが。」
「だがよ~、オレ達は、全隊が横一列に並べば、対岸からだって軍隊だっ
て事は解るだろうよ、其れにしても、わからない事が多すぎるよ。」
「将軍、偵察に行っては如何でしょうか。」
ホーガンは、何か、理由を付けて、弟が治めている城に行きたいのだ。
「いや、ホーガン、少し待てよ、お前の気持ちは、オレだって同じ気持ち
だからわかるが、その前に、我々には、する事が有るんだ、わかっているは
ずだ。」
ホーガンは、何も言わず、頷くだけで有る。
「司令官、この話は、誰にも言うなよ、隊長達もだ、ホーガン、わかった
なぁ~、其れと、君達もだ、今の話は、例え、どんな事があってもだぜ。」
司令官もだが、全員が頷くだけだ。
「だがよ~、隊長達は、若しもの時を考える必要が有るんだ、其れじゃ
~、休みに入ってくれ、ありがとうよ、で、司令官は、残って欲しいん
だ。」
5人の隊長と、ホーガン、二人の農民は静かに部屋を出て行く。
「司令官、どうだ、今の話だが。」
「私は、彼らも、本当の事を言ってと思います。」
「司令官、もう一人の、今、吊るし上げている奴を尋問するか。」
「閣下、何か、お考えでも、浮かんだのですか。」
「うん、お~い、当番兵。」
「はい。」
「城門に吊るし上げている、ウエスの部下を連れて来てくれ。」
「はい、直ぐに。」
司令官は、多分、何も言わないだろうと考えたのだが、ロシュエは、一
体、どんな方法で聞き出すのだろうか。
「将軍、連れて着ました。」
「うん、表で待たせろ。」
ウエスの部下は、一体、何を聞かれるの、答えなければ、拷問が待ってい
ると思い、身体が震えている。
「おい、お前、今から聞く事に正直に答えれば、命だけは助けるがどう
だ。」
だが、彼は、何も言わない。
「お前が、何も言いたく無いのはわかる、じゃ~、今から、本当の話をし
てやるからよく聞くんだ、お前、先日、ウエス達の前に、足が無い男と、腕
な無い男を見たか。」
男は、頷き。
「あの3人はだ、狼に襲われ、噛まれた所が腐りだしたんだよ、其れで
だ、オレの奥さんがな、この人達の足と腕を切り落とさなければ、命は、無
いと言ったんだ。」
この男、足や、腕を切り落とすと言う話だけで、身体は震え、顔は白く、
まるで、地の気の無い顔付きになってきた。
「だがよ~、この話には、まだ、続きが有るんだ、オレ達は、兵士で、敵
を殺す事は出来ても、仲間の足や、腕を切り落とす事は出来ないって、みん
なが言ったんだ、するとだ、オレの奥さんが、じゃ~、私が、切り落としま
すって、実に簡単に言うんだよ。
オレはなぁ~、その時に思ったよ、女ってのは、本当は、一番恐ろしい生
き物だって、其れでだ、お前も見た様に、3人の足と腕を切り落としたんだ
がよ~、オレの奥さんは顔色も変えずに、終わりましたって言うんだよ、お
前が、オレの質問に対し、正直に答えるんだったよ~、命だけは助けてやる
が、どうだ。」
男は、恐怖心からなのか、身体の震えが止まらない。
「どっちなんだよ~、オレは、どちらでもいいんだぜ、正直に答えるか、
それとも、嘘を言うのか、おい、はっきりと答えるんだ。」
「はい、全部、言います。」
「本当だな、一つでも答えが違ったら、オレは、奥さんと呼ぶよ。」
傍では、当番兵が聞いている。
「言ってやれよ、オレの言う事が本当だって。」
「はい、あんた、将軍のお話は本当だよ、あんたが、正直に答えたら、将
軍は、約束を守る人なんだからね。」
「はい、解りました、自分の知っている事は、全部言いますので、命だけ
は。」
「よし、解った、じゃ~、聴くぞ。」
ロシュエは、その二人の農民から聴いた話をすると、農民の言った事は事
実で有る。
「そうか、よくわかった、だがよ~、最後に聞くが、ウエスは、どんな方
法で、知らせるつもりだったんだ。」
「其れが、堤防を5百ヒロになれば、作戦は実行すると。」
「だがよ~、対岸を出発して、何日で、この農場に来るんだ。」
「はい、其れは、自分にも解りませんが、あの時の話では、全ての兵を集
合させるまで、90日は掛かるだろうと言ってました。」
「そうか、90日か、司令官、90日だと。」
「閣下、90日もあれば、十分、城壁は出来ますが。」
「じゃ~、今、堤防は何ヒロまで出来ているんだ。」
「はい、3百ヒロまでは、出来たんですが、この寒さで、作業は進んでお
りません。」
「よ~し、解った、お前を解放する、但しだ、オレ達の城壁を見て行くん
だ、其れを知らせるんだ、其れとだ、お前が、狼の攻撃を受けても、我々
は、知らないから、お前の力だけで生き残れ、それだけだ。」
「えっ、でも、自分も、元はと言えば農民です。
それに、今まで、誰も殺していません。」
「お前、いい加減な事を言うなよ、オレが、農民だと聞けば助かるとでも
思っているのか。」
「本当なんです、自分の仕事は、司令官と、隊長の食事を作るのが仕事な
ので、馬車に乗り、何時も後ろの方に居ました。」
「また、また、何処まで嘘を言うんだ、もう、諦めるんだなぁ~、司令
官、今夜にでも、外に放り出してくれ、後は、狼に任せて。」
だが、この男は必死だ、この男が、司令官や、隊長達の食事を作ると言う
のは、本当なのだろうか。
「将軍様、本当なんです、あの二人に聞いて貰えば解ると思います。
その人達は、何時も、馬車の近くにいたと思いますので。」
「何だと、あの二人に聞けと、じゃ~よ、なんで、今まで言わなかったん
だ。」
「先日、川で、ウエス達が沈んで行くのを見て、この将軍に何を言っても
無駄だと思って、それに、自分の家族も全部殺され、もうどうにでもしてく
れと思ったんです。」
「よし、解った、じゃ~、あの二人が知らないと言ったら、終わりだ
ぜ。」
この男は、真実を言っていると、ロシュエは、感じていた、それでも、今
は、簡単に認める訳には行かない。
「誰か、あの二人を呼べ。」
少しは安心したのだろうか、顔色が戻ってきた。
「だがよ~、最初に聞いた時、お前は、ウエスの部下だと言ったが。」
「はい、でも、其れは仕方有りません、自分は、ウエス司令官や、隊長達
の食事を作っていましたし、あの二人よりも、早く、あの軍隊におりました
ので。」
「将軍、二人を連れて着ました。」
「ありがとうよ、あんた達に聞くが、この男は、何時も、馬車に乗ってた
のか。」
「はい、馬車に乗っていました、それで、ウエスや隊長達の食事を作って
いました。」
「それで、この男は、どんな様子だった。」
「はい、私達は、何時も、後ろの方ですたけど、ウエスや隊長達に、何時
も殴られていました。」
「何だと、何時もなのか。」
「はい、はっきりとした事は解りませんが、味がどうのとか。」
「お前は、料理は、出来るのか。」
「いいえ、自分に出来るのは、スープを作る事は出来ますが、何時も、肉
の焼き方が悪いと、殴られていました。
でも、辛抱するんだ、と、自分に言い聞かせていました。」
「だがよ~、料理が出来ない、お前がどうしてなんだ。」
自分の家族を殺され、何箇所かの村に着いた時、食べ物が欲しくて、必死
で作り、食べた事が有りまして、ウエス達の軍隊に見付かった時、有る隊長
に料理が出来ますって嘘を言ったんです。」
「おい、おい、そんな嘘が通じるとでも思ったのかよ~。」
「はい、将軍様、自分でもわかっていましたので、でも、あの時は、どう
にでもなれと思ったんです。」
「じゃ~、聴くが、お前の国は何処なんだ。」
「はい、でも、もう、その国は有りませんが、此処から、まだ、北の方に
向かって50日以上は掛かると思いますが、とても、寒い所です。」
「何だって、50日以上も掛かるんだと、そんな遠い所から何で、ウエス
達の中に入ったんだ。」
「其れは、自分でも解りませんが、途中で、死んだ兵隊さんの服を盗ん
で、其れと、ナイフもです。」
「お前、ナイフは使えるのか。」
「いいえ、ナイフは、捕まえた動物の皮を切り、肉を食べる為です。」
「だがよ~、料理も出来ないお前が。」
「自分でも、はっきりとは知りませんが、何処かの戦で、料理の人が死ん
だって、それでだと思います。」
「そうか、だがよ~、オレは、まだ、信用していないが、司令官はどう
だ。」
「閣下、暫くの間、様子を見ると言う事で如何でしょうか。」
「よし、司令官から、少しだが、お前の様子を見ると言う事だ、だが、司
令官、この3人だがよ~、どんな仕事をさせるかだ。」
ロシュエも、司令官もこの3人の処遇を考えるのだ。
「閣下、この男ですが、お前は蒔き割りは出来るのですか。」
「はい、何時も、食事を作るために、蒔き割りをしておりましたので。」
「閣下、この男ですが、お風呂部隊で使えば如何でしょうか。」
「あ~、そうか、何時も、兵士と子供達が作っているからなぁ~、お前、
此処に大きなお風呂が有る、その風呂用の蒔き割りをやるんだ。」
「はい、どんな事でもします。」
「よし、司令官、誰かに。」
「はい、閣下、承知、致しました、で、後の、二人は。」
「う~ん、そうだなぁ~、君達の事は、少し考えるからよ~。」
「当番兵、こっちに。」
「はい。」
一人の当番兵が来た、当番兵は、顔で、良かったなぁ~、と、いう表情
だ。
「この男を、お風呂部隊の所へ、それで、仕事の内容を教えてくれない
か。」
「はい、承知、致しました、じゃ~、行きましょうか。」
兵士は、彼を、風呂場に連れて行く。
「良かったなぁ~、我々の将軍は、兵士もだけど、農民の事を何時も考え
ておられるんだよ。」
「はい、でも、まだ、信用出来ないと。」
「もう、心配は要らないよ、将軍が、仕事を与えると言うのは、信用され
たからだ。」
「はい、ありがとう、御座います。」
男は、本当に、嬉しかったのだろう、涙を流している。
「自分は、これから、皆さんのために、一生懸命に仕事をします。」
「うん、それで、いいんだよ、この農場の人達は、ウエスに対し、絶対に
許す事は出来ないと思ってるんだ、だからね、此れからは、敵軍の事を少し
でも思い出した時には、将軍でも、司令官でもいいから報告するんだ。」
「はい、小さな事でも。」
「そうだ、後は、将軍や、司令官が判断されるからね。」
「はい。」
やはり、この男は農民だと、当番兵は思った。
兵士ならば涙を流す事などは有り得ないからだ。
「此処だよ、君の事もみんなに紹介したら、私は、戻るからね。」
「はい。」
「みんな、聞いて下さい。」
当番兵は、この男を紹介し、どんな仕事をさせるのかを伝えて戻った。
「あの~、自分は。」
「おじさん、僕達は、お風呂部隊ですが、僕も含めて、みんな子供なんで
すよ、色んな事を教えて下さいね。」
男は、驚いた、子供達は、自分が、何処の誰かを聞きもしない。
「いいえ、自分こそ、よろしく、お願いします。」
男は、頭を下げた。
「おじさん、紹介するよ。」
男は、紹介された、3人だが、一人は、片足を、二人は、片腕の中程から
先が無い。
「あっ。」
思わず、叫んでしまった。
「貴方は、あの時の。」
3人の男達は、優しく微笑み。
「やぁ~、此処は、最高ですよ。」
「はい、自分は。」
「いいんですよ、貴方の事は知ってますよ、で、此処での仕事は聞いてお
られますか。」
「いいえ、まだ、何も。」
「じゃ~、貴方には、そうですねぇ~、蒔き割りをお願いします、出来ま
すか。」
「はい、喜んで、させて頂ます。」
「此処では、子供達が、蒔き割りをしているんですがね、やはり、子供の
力では。」
「はい、自分も、良く分かります。」
「此処に、道具が、そうだ、私は、足がこんな状態なので。」
「私が、場所を教えますよ。」
「そうですか、じゃ~、よろしく。」
片腕の先が無い男が、蒔き割りの現場へと案内すると、其処では、子供達
が、大きな木を必死で割っているのだが、子供の力では、簡単割れない。
「やぁ~、みんな、今日からね、このおじさんが、蒔き割りを手伝ってく
れるんだよ。」
彼が、紹介すると、男は、深々と頭を下げ。
「今日から、皆さんのお手伝いをさせて頂ますので、よろしく、お願いし
ます。」
その時、男の目に涙が滲んできた。
彼の、頭の中に、殺された家族の姿が浮かび上がった、幼い娘と、妻の笑
顔で有る。
「ねぇ~、おじさん、どうしたの。」
この子供を見ると、娘や、息子を思い出した。
「うん、何でも無いですよ。」
まだ、あどけない表情の子供ばかりで、息子が生きていれば、同じ様に年齢になって
いたはずだと。
「此れからは、自分が蒔き割りをしますので、皆さんは、少し休んで下さい。」
男は、子供から鉈を受け取ると、やはり、大人の男だ。
「おじさん、凄いねぇ~。」
子供は、感心するのだ。
「其れと、どれだけ作ればよいのですか。」
「だが、彼は、この風呂大きさを知らなかった。
「でも、おじさん、お風呂を見たの。」
「まだ、見てなので。」
「じゃ~、一緒に見に行こうよ、とっても、大きいんだから、」
男は、子供言う事だ、大きいと言っても、それ程とは考えて無かった。
「おじさん、此処だよ。」
「えっ、之が。」
男は、大変な驚きで、其れは、お風呂と言うよりも大きな池の様で。
「おじさん、此処と、もう一つ有るんだよ。」
「えっ、こんなに大きなお風呂がまだ有るの。」
「うん、だって、男用と女用だよ。」
子供は、自慢そうな顔で、之は、大変だ、のんびりと蒔き割りは出来ない
と思い。
「じゃ~、何時頃、皆さんが入ってくるの。」
「うん、そうだねぇ~、お日様が、あの山に来る頃かなぁ~。」
其れは、西の方角に有る、大きな山に太陽が沈む頃なのだ。
「じゃ~、早く、蒔き割りをしなくてはいけないですねぇ~。」
「うん、だけど、何時も、兵隊のお兄ちゃん達が作ってくれるんだ。」
将軍の言った事は本当だ、この農場では、兵士達も、農場の仕事も手伝
う、農民達は、兵士達のためにと、作物を育てていると。
「じゃ~、兵隊さんが、何時も作ってくれているの。」
「うん、そうだよ。」
兵士達も、本当は、疲れているはずなのに、みんなのためにと、子供達が
行なう蒔き割りをしている。
「では、何時も、蒔き割りは。」
「僕達がするんだけど、僕達じゃ~、力が弱いから、大きな木は割れない
んだ。」
「解りました、では、今から、おじさんが大きな木を割りますからね。」
「うん、ありがとう。」
彼は、蒔き割りの現場を離れ戻って行き、其れからの彼は、大きな木を運
び、蒔き木を作り始めた。
一方、残った二人は。
「あの~、私達には、何かお手伝いを。」
「う~ん、今、考えて要るんだがよ~。」
その時、ホーガンが来た。
「将軍。」
「お~、ホーガン、どうしたんだよ~。」
「いいえ、別に、で、この二人は、何を。」
「今、考えて要るんだ、どんな仕事をして貰うか。」
「将軍、じゃ~、将軍と、司令官宅で仕事が有ると思うんですが。」
「えっ、だってよ~、オレにはイレノアが、司令官だって。」
「はい、勿論、解っておりますが、この二人に蒔き割りでも、よろしいか
と、今、思い付いたんですが。」
「将軍様、蒔き割りであれば、得意ですので。」
「だってよ~、オレが勝手に決めたと、イレノアに。」
「将軍様、心配要りませんよ、だって、蒔き割りは、農家じゃ~、男の仕
事だと思っておりますので、それに、将軍様や、司令官様の奥様が蒔き割り
をされますと。」
「だがよ~、イレノアってのは、本当に恐ろしいんだぜ。」
ロシュエは、舌をペロット出し、苦笑いをするのだ。
「将軍が、怒られるのでしょう。」
「ホーガン、お前、イレノアはねぇ~、あ~、考えただけでも、恐ろしい
よ。」
ロシュエは、笑っている。
「じゃ~、二人に頼むとするか。」
「はい、私達は、喜んでさせて頂ますので、よろしく、お願いします。」
二人の顔が明るくなった様な気がした、この二人と、風呂場に行った男
も、やはり、ウエスの犠牲者なんだと、ロシュエは、思うので有る。
「閣下、彼も、やはり、ウエス達の犠牲者ですねぇ~。」
「司令官、オレも、今、其れを考えていたんだ、ウエスは、此処に来るま
で、村民達もだが、小さな国の人達を殺していたんだなぁ~。」
「はい、私も、その様に感じております。」
「だからよ~、オレは、堤防と大池造りに入った奴らの考え方が、変わっ
たと思いたいんだ。」
「私は、3番大隊のフランド隊長が話をしたと聞いております。」
「そうだなぁ~、オレが、考えてる事は、此処のみんなが知ってからなぁ
~。」
「閣下の思いを、フランド隊長が、ウエスに話をしてから変わった。」
「うん、オレは、その様に思ったんだよ。」
「ですが、何故、他国の軍隊と共謀する必要があったのでしょうか。」
「問題は、ウエスが居た、城主だったと思うだが、でも、オレには、理解
出来ないよ。」
「ウエスは、本気で他国の軍隊と共謀したのでしょうか。」
「だがよ~、本当に、その敵軍ってのは居るのだろうか。」
「そうですねぇ~、ホーガンも見た事が無いと言ってますし、この3人も
知らないと、見た事が無いと言うのか、本当ならば、我々が、勝手に思い込
んでいたのでは。」
「う~ん、其れが、解らないんだ、だがよ~、司令官、その軍隊がいない
としてもだ、オレ達には、狼の大群と言う、恐ろしい敵がいるんだよ、城壁
だけは、完成させないと、農民が危険だって事なんだ。」
「全くですねぇ~、他国の軍隊よりも遣り難い敵軍ですよ。」
「将軍、よろしいでしょうか。」
「ああ、いいよ。」
「我々、狼犬部隊が、偵察に行けば、何かが分かると思いますが。」
「そうだなぁ~、狼犬部隊は、之から、偵察任務を主にやって貰うか。」
「閣下、私も、狼犬部隊が偵察任務が良いかと。」
「ホーガン、どうだ。」
「はい、勿論、喜んで。」
「じゃ~よ~、一度、城に行って、その城を基点に偵察任務に就いて貰う
か。」
「えっ、城にですか、でも、あの城は、司令官の。」
「ホーガン、よろしいんですよ。」
「司令官が許してくれるんだよ、其れにだ、偵察任務の前に、城の内部を
調べてくれ。」
「閣下、では、私も。」
「そうだなぁ~、中隊とい同行させれば。」
「はい、では、3番大隊から。」
「うん、其れは、任せるよ。」
「司令官、まぁ~、準備も有る事だし、どうだ、二日後の朝ってのは。」
「そうですねぇ~、では、その様に致しますので。」
この二日間が、その後に大きな変化を齎すとは、この時、ロシュエも、司
令官も、考えもしなかったので有る。
其れは、風呂場で、仕事を始めた、彼が、思い出した事が原因と成ったの
で有る。
男は、必死で、蒔き割りをし、最後の人が、風呂を上がると、自らは風呂
場の掃除を行なうので有る。
大きな風呂場を掃除は簡単に終わる事は無いが、男は、時々、つぶやいて
要る。
「将軍様、本当にありがとう、御座います。
天国の母ちゃんと、二人の子供には、済まないと思っています、でも、此
れからは、一生懸命、この仕事に打ち込みますので、よろしく、お願いしま
す。」と、独り言を、一人の掃除は大変だが、男は喜んでいる。
掃除は、数時間掛かり、夜中にやっと終わった、そして、男は、お風呂部
隊の子供達が休憩する所で眠る、今は、天国だ、此処で仕事も有り、食事も
取れる、だが、何よりも嬉しいのは、安心して眠る場所が有ると言う事で、
男は疲れから、直ぐに眠ったが、数時間もすれば起きて準備に入らなければ
成らない。
その数時間ご、夜明けに鳥の鳴き声と共に起き、早速、風呂釜に火と入
れ、次に向かったのは、大食堂だ、男は、大きな鍋に水を入れ、火を入れ、
大食堂に有テーブルを拭き終わる頃には、大きな鍋は湯気を挙げていた。
火を落とし、男は、風呂場の焚き口に戻ってきたが、まだ、湯気も上がら
ず、暫くは考え事をするので有る。
何処か、何かを忘れていないか、真剣だ。
やがて、二箇所の大釜から湯気が上がり出し、男は、水を入れる筒を大釜
の上の置き、水は少しづつ出るので、沸騰したお湯は、二つの大きな風呂場
の湯船に入って行く。
男は、蒔き木を数本入れると、何かを思い出そうとしている。
一方、大食堂では、テレシアが驚いている、テレシアは、目覚め、何時も
と同じ様に大きな釜戸に行くと、既に、大釜は湯気を出している。
「えっ、一体、誰だろうか。」
テレシアは、まだ、知らなかった、風呂場の男が、大釜に水を入れ、釜戸
に火を入れた事を、今は、各家庭で食事を作っていない、農場の全員が、新
しい農場を造るために早朝から出掛けるので、幾ら、テレシアでも、朝早く
からパンを焼く時間が無い、だが、スープだけは作れると、その頃になる
と、農場の女性達が大食堂に集まり、スープと、昼食用のパン作りに入るの
で有る。
「ねぇ~、誰か、大鍋に水を入れ、火を入れた。」
女性達も知らない
「テレシア、私達じゃないよ、だって、みんな、今、着たんだから。」
「うん、そうよねぇ~、じゃ~、誰なのかしら。」
テレシアが、知るのはその後に成ってからで、昼近くになると、大きな風
呂場でも、少しづつだが、お湯が溜まりだした。
男は、何度も、何度も、薪木を入れ、水を調整している、だが、昨日の疲
れか少しうとうとと始めた、その時だった。
「あっ、大変な事を思い出した。」
この頃には、あの3人もいるので。
「あの~、申し訳有りませんが、将軍様にお話をする事が有りますので、
暫くの時間、此処を離れてもよろしいでしょうか。」
「はい、宜しいですよ、其れと、少し休みを取られては、如何ですか。」
片足の無い男が言うが。
「いいえ、お話が終われば、直ぐに戻って来ますので。」
「じゃ~、任せますが、この農場ではねぇ~、休みを取る事も大切ですか
らね。」
「はい、ありがとう、御座います、では、行ってきます。」
男は、ロシュエの、執務室へと走って行く。
「なんで、こんな大事な事を忘れていたんだ、将軍様に怒られるかも。」
独り言を言いながらも大急ぎで向かった。
「あの~、将軍様は。」
当番兵は、急用だと思い。
「将軍は、今、執務室におられますが、何か急用でも有るのですか。」
「はい、自分は、ジェスと申します、風呂場で仕事をさせて頂いておりま
すが、大事な事を思い出しましたので、将軍様に、お知らせしようと思い、
大急ぎで来ました。」
彼の息は、まだ、激しかったが。
「分かりました、少し待って下さいね。」
当番兵は、部屋に入り、ロシュエに伝えに行き、暫くすると。
「ジェスさんですね、将軍が、お待ちです、どうぞ。」
「はい、ありがとう、御座います。」
執務室に入ると。
「あ~、あんたの事か、オレは、あんたの名前を知らなかったんだ、済ま
ないねぇ~。」
「いいえ、自分の様な者に仕事をさせて頂き、大変感謝しております。」
「まぁ~、座りなさい、で、思い出したと言うのは、何ですか。」
「はい、実は、ウエスの事なんですが。」
「ウエスの、で、一体、何を思い出したんですか。」
「はい。」
ジェスは、その後、ウエスの兄が、軍勢を率いて対岸に居た事を話すので
有る。
「其れは、本当なのか。」
「はい、でも、自分は、あの当時のウエス司令官と、隊長達の話を近くで
聞いただけですので。」
「いいんだよ、あんたが、ウエス達の話を思い出した事の方が大事なんだ
からよ~、少し待っててくれよ、当番兵。」
「はい、ご用事で。」
「うん、大至急、司令官と、各隊長と、ホーガンも呼んでくれ、大急ぎだ
からなぁ~。」
「はい、では。」
当番兵は、大急ぎで、司令官や隊長達の宿舎に走って行った。
「それでだ、え~と、あんたの名前は。」
「はい、ジェスと申します。」
「うん、ジェスは、ウエスの料理人だと言ったなぁ~。」
「はい、そのとおりです。」
「じゃ~よ~、ウエスと、隊長達の食事中に言ったのかよ~。」
「はい。」
「で、其れは、何時頃の話なんだ。」
「済みませんが、はっきりと覚えていませんが、この農場に来る、10日
位前だったと思います。」
「閣下。」
司令官が飛び込んで着た、その後、隊長達と、ホーガンも息を切らせて飛
び込んで着た。
「お~、みんな、着たか、大変な話が有るんだ。」
「閣下、この男は、ウエスの。」
「そうなんだ、ジェスって言うんだが、実はよ~。」
ロシュエは、ウエスの兄が、大軍を対岸で待機していた事を話すので。
「えっ、其れは、誠なのですか。」
司令官も、隊長達も大変な驚き様なのだ。
「ジェス、君が思い出した事を、全員に話をしてくれ。」
「はい、分かりました、実は。」
ジェスは、その後、知ってる限りの事を話し、その話を聞くと、やはり、
敵軍が居ると、言う事が判明し、数十日後には、攻撃に入る可能性が有ると
判断したので有る。
「其れでだよ、ホーガンが偵察に行き、城の内部も調査する話に成って、
司令官が、一個中隊を連れ、明日、出発する事に成っていたんだが、今の話
で、偵察が重要な役目だと言う事になったんだ。」
「閣下、偵察は、重要ですが。」
司令官が、何かを言いたいのだろう、ロシュエは、城の事だろうと思うの
だが。
「司令官、これじゃ~、一個中隊では、少ないぞ~。」
「はい、私も、その様に思っているのですが。」
「じゃ~、大隊で、城に行くんだ。」
「ですが、敵軍の動きが、全く分からない状態では。」
「ジェス、他に、思い出した事は無いのか。」
「はい。」
返事はするが、急に思い出せと言われても、ジェスは困った。
「将軍様、少しお待ち頂けますか。」
「いいよ、今は、あんたが頼りなんだから、其れに、まだ、時間は、有る
んだから、まぁ~、ゆっくりと思い出してくれよ。」
ジェスは、今まで話した内容を思い出して行く。
「将軍、今回の偵察ですが、最初から考え直して、数人づつで、行けば、
何処かで、その敵軍を発見出来ると思いますが。」
ホーガンは、偵察達を広範囲に渡る方法を考えていた。
「ホーガンの言う、数人づつで行くと言うのは、どんな意味なんだ。」
「将軍、ウエス達を全滅させたのは、ほんの数日前です。
仮にですが、敵軍が、その様子を見たとして、直ぐに出発しても、大軍で
は、そんなには進め無いと思います。」
「ホーガンは、出発していると思うのか。」
「いや、仮の話です、其れでも、上流地点に有る浅瀬に着くのは、30日
は掛かると思います。」
「うん、そのとおりかも知れないなぁ~、其れで。」
「はい、小人数だと発見するのは難しいと思います。
仮に、浅瀬を渡るとしても、一日では無理だと思いますが。」
「うん、其れは当然だろうよ、其れに、此の頃は、寒いから、兵隊は濡れ
た軍服では動けないだろうから。」
「はい、我々の軍は全員馬に乗っていますので、その浅瀬を渡っても大し
た濡れ方はしないと思いますが、其れでも、多少は濡れますので、服が乾く
までは動けないのです。」
ホーガンは、この寒い中で、川を渡るのは大変な思いをすると。
「じゃ~、ホーガンは、大軍が、川を渡っても、直ぐには動く事は出来な
いと。」
「はい、仮に移動を開始したとすれば、歩兵の体力は落ちますので、更
に、動きは鈍く成りますから、当然、進みは遅く成ると思います。
其処で、私は、広範囲で偵察する事で、仮に発見されても逃げる事は可能
だと考えたんですが。」
「うん、分かったよ、だが、ホーガンには、大切な任務が有る事を知って
いるのか。」
「えっ。」
ホーガンは、一瞬の事で、分からなかったのだが。
「あっ。」
「そうだよ、奴らに見つかる事も考えたで、その人達を助けるんだ。」
「はい。」
「司令官、今、馬車は何台有るんだ。」
「はい、確か、120台は有るかと、では、閣下は。」
「おお、そのとおりだ、村民を助けるんだよ。」
「はい、承知、致しました。」
ホーガンは、嬉しかった、その小国と村民を助ける事が出来れば、任務を
果たす事が出来ると。
だが、まだ、問題が有る、その小国の城主は、ホーガンを知っているが、
司令官は知らないのだ。
「将軍、ですが、あの城の城主は、司令官を、ご存知有りませんが。」
「ホーガンも、司令官と、一緒に行くんだよ~。」
「はい、ありがとう、御座います。」
「なぁ~、偵察は大事だ、だがよ~、村民は、もっと大切なんだ、だか
ら、どんな事が有っても、全員を助け出すんだ、分かったのか。」
「はい、必ず。」
久しぶりに、ホーガンは、ロシュエに怒られた気分だが、其れでも、嬉か
ったのだ。
「其れでだ、城と村民には伝えろ、服だけは、全部持ち出せと、他の物は
必要無いと。」
司令官は、ロシュエの言った事は理解出来たのだが。
「将軍、ですが、城の人達が、家財道具も必要だと言った時には。」
「馬鹿者が、家具よりも、命だぜ、其れと、城の兵士達にも同じ様にだ、
後は武器は必要だからなぁ~、城の女性達が着けている飾り物は全部置いて
行けと。」
司令官の思ったとおりで、服は、どんな物でも良かった、この農場には、
服が不足している。
「将軍、村民が使う農具は。」
「う~ん、之は、別物だなぁ~、司令官、百台の馬車には、帰りの食料だ
けを積め、この農場に着くよりも、司令官の城に連れて行く様に。」
ロシュエは、一刻も早く、村民を助けたいと思っている。
「あの~、将軍様。」
「どうした、何か、思い出したか。」
「はい、確か、ウエスから聞いた様に思いますが。」
「何を聞いたんだ。」
「はい、兵隊の人数を聞いた様に思いますが。」
「うん、そうか、で、兵隊の人数は、思い出したか。」
「はい、確か、その隊長が、3万人だと言った様に。」
「3万人か、こりゃ~、大軍だなぁ~。」
「ですが、将軍様、隊長の話では、1万人は混成軍だと。」
「何だ、その混成軍ってのは。」
「将軍様、自分も分かりませんが、隊長は、その混成軍が先頭だと言って
ました様な。」
「そうか、じゃ~、1万の混成軍で、2万人の正規軍は後方か。」
「閣下、その混成軍の事ですが、ウエスの兄が、多くの城を攻撃した時に
脅かしをかけたのでは無いでしょうか。」
司令官は、何と言う発想なのか、他国を攻め、生き残った兵士を自軍の兵
士に、其れも、脅かしをかけてなのか、其れとも、甘い言葉に乗せられたと
言う事も考えられないだろうか。」
「司令官、オレはよ~、若しかして、ウエスの本隊とは、その兄と言う人
物じゃ~、無いかと思うんだ。」
隊長達も、ホーガンも、正かと言う様な顔付きだが、司令官は違った。
「閣下、私も、ウエスの兄を言うのが一番の悪党だと思います。
其れに、甘い言葉をどの様に使ったのか分かりませんが、仮にですよ、城
の女性や、村の女性達を犯し、その後、殺したのは、混成軍では無いでしょ
うか。」
「うん、実は、オレも同じなんだ、之は、仮の話だが、城を攻め落とした
後は、お前達の好きに出来るとでも言ったのだと考えればだ、ホーガンや、
あの親子の言う全員を殺す事が出来たのは、ウエス達ではなく、その兄貴っ
て事に成るんだ。
兄弟だったらよ~、顔付きも似ているから、母親が見たのは、兄貴の軍隊
だと、オレは思うんだが。」
「あの~、将軍様、宜しいでしょうか。」
「うん、いいよ。」
「自分は、何時も後方にいましたので、はっきりは分かりませんが、ウエ
スの軍隊に、その兄の部下が居た様な気もするんです。」
「えっ、何で、分かるんだ。」
「はい、何時も、村人を殺すのは、決まってましたので。」
「じゃ~、ウエスの部下は。」
「自分もはっきりと見てませんので。」
「よし、分かった、ありがとうよ、司令官、ホーガン、問題は、その混成
軍だと思ってだ、発見次第戻る様に、人数を調べる必要も無いと伝えろ、其
れと、ホーガンは、何としてもだ。」
「将軍、必ず、助け出します。」
「お~い、当番兵。」
「はい。」
「直ぐに、鍛冶屋を呼んでくれ、大急ぎだ。」
「はい、了解しました。」
ロシュエは、突然、鍛冶屋を呼びに行かせた、一体、鍛冶屋に何の用事が
有ると。
「閣下、何か、鍛冶屋に作らせるのですか。」
「いや~、何でも無いよ、簡単な話だよ、司令官は、第5番大隊を引き連
れ、ホーガンの言う城に行き、城主と、城の全員を、其れと、村民の全員を
城まで連れて行く事、ホーガンは、司令官と、一緒だ、他の狼犬部隊は、少
人数で手分けし、敵軍を探し、発見次第戻る事だ、分かったか。」
「はい、閣下、承知致しました。」
「はい、勿論です。」
その時、鍛冶屋が入って着た。
「将軍、何か。」
鍛冶屋は、ロシュエや、司令官達の顔付きで解ったのか。
「済まんがよ~、ホーガン矢を、今から作るとしてだ、50日で、何本、
作れるかなんだが。」
「えっ、一体、何本、要るんですか。「
「う~ん、まぁ~、2万、いや、1万は欲しいんだが、済まんなぁ~。」
「将軍、その前にですが、ウエス達の弓矢なんですが、2万本以上有るん
ですが。」
「えっ、だって、あの矢じりは。」
「ええ、本当は、別の物を作る事を考えてたんですねぇ~、オレ達も、こ
れから先の事を考えて残していたんですよ。」
「じゃ~、矢は残ってるのか。」
「ええ、全部残していますよ。」
「済まんが、其れを、ホーガン矢にするってのは、簡単に出来るのか。」
「まぁ~、簡単と言えば、簡単ですが、但しですよ、ホーガン矢よりも、
少し細いんでねぇ~。」
「だがよ~、使えるんだろう。」
「勿論ですよ、で~、実はね、将軍の事だ、また、何か無理を言うと思っ
てましてね、オレが、考えたんですよ、じゃ~、今、一番必要な物は何かっ
てねぇ~、其れが、これなんですがね。」
鍛冶屋は、十数本の矢を見せると。
「あっ。」
ホーガンが、思わず叫びそうになった、其れは、少し細いが、正しく、ホ
ーガン矢で。
「おい、おい、鍛冶屋さんよ~、オレの考えてる事が分かってくれるのは
よ~。」
ロシュエは、嬉しかった、其れは、ホーガンが叫びそうな見事なホーガン
矢だった。
「こんな物、何時、作ったんだ。」
「えへん、本当はね、数日前だったんですよ。」
「え~、数日前だって、じゃ~、あの後かよ。」
あの後とは、ウエス達を川に投げ入れた日だった。
伝令から伝え聞いた、鍛冶屋は、将軍の事だ、ホーガン矢が必要だと言っ
て来るだろうと考え、作ったので有る。
「なんだよ~、じゃ~、オレの出る幕が無くなったじゃないかよ~。」
と、言ったものの、ロシュエは、笑っている。
「だがよ~、今、簡単だと言ったが。」
「ええ、其れはね、同じ長さに切るんですがね、之は、本物じゃないん
で、一度、試して欲しいんですが。」
「ホーガン、どうだ、試しに。」
「はい、では、ホーガンを取りに。」
「ホーガン隊長、これでしょう。」
「えっ、なんで、鍛冶屋さんが。」
「まぁ~、其れは、よろしいじゃないですか、其れよりも、頼みます
よ。」
「はい、では、放って見ますので。」
ホーガンも、ロシュエも全員が外に出て、鍛冶屋が偽物だと言う、ホーガ
ン矢を試し打ちを行なうので有る。
「将軍、試し打ちですが、実戦と同じ様に遠くを狙って見ますので。」
ホーガンは、2百ヒロ離れた大木を狙いを定め、引き金を引くと、ホーガ
ン矢は、狙ったところに命中した。
「将軍、この矢は偽物では有りませんよ、本物ですねぇ~。」
ホーガンは、二コリとした。
「そうか、其れは、何よりだ、じゃ~よ、鍛冶屋さん、済まんが、之を5
0日を目途に作って欲しいんだが。」
「将軍、直ぐに出来ますんでねぇ~、じゃ~、今から取り掛かりますん
で。」
鍛冶屋は、ホーガンと、ホーガン矢を持って、仕事場に戻って行く。
「将軍、鍛冶屋さんが、持って来られた、ホーガンなんですが、私が、
今、使っているホーガンとは違いますねぇ~。」
ホーガンは、新しいホーガンだと思った。
「あれは、今までよりも、強力ですよ、其れは、持って分かりますが、構
えても安定していましたから。」
「そうか、あの鍛冶屋は、何かを考えて作ってるんだなぁ~、大した男達
だよ。」
ロシュエは、感心している。
「ジェス、他に、何か、思い出したか。」
「いえ、今は、何も、済みません。」
「そうか、大変、ご苦労だったなぁ~、今日は、ゆっくりと休め。」
やはり、風呂場の人が言ったとおりだった。
将軍は、休む事も大切だと、だが。
「自分には、まだ、仕事が残っておりますので。」
「いや、いいんだ、其れと、少し聞きたいんだがよ~。」
「はい、何でも。」
ジェスは、一瞬、何か、怒られる事をしたのだろうかと考えるが、分から
ない、いや、思い出せないので有る。
「ジェス、今日の早朝、大食堂の大鍋に。」
「えっ、正か。」
「やはり、ジェスだったのかよ~。」
ロシュエは、笑っている。
「済みませんでした、自分は、少しでもと。」
「テレシアが、怒ってたぞ、こんな事をされたら、私の仕事が無くなるっ
てなぁ~。」
「申し訳、有りません。」
ジェスは、頭を下げると。
「テレシアは、別に怒ってなんかいないんだよ、本当は、喜んでいたんだ
よ、だって、冷たい水を入れ、火を点けても、時間が掛かるって、何時も、
之が、一番、大変なんだって、其れと、テーブルも有難うって言ってた
よ。」
「本当に、済みませんでした、自分が勝手にして事で、皆さんに迷惑を掛
けて。」
「いいんだよ、だがなぁ~、之だけは言って置くぞ、絶対に無理はするな
よ、この農場じゃ~、お互いが助け合うんだ、身体が疲れたと思う時には、
休め、之は、誰にでも言ってるんだ。」
「はい、有難う、御座います。
では、少し休ませて頂ます。」
「そうだ、ジェス、昨日、何処で眠ったんだ。」
「はい、実は、誰にも断らずに、お風呂部隊の休憩室を使わせて頂まし
た、申し訳、有りません。」
ジェスは、必死で謝ったのだが。
「だがなぁ~、あの部屋は、何も無いんだぞ、寒かっただろうに。」
「いいえ、そんな事は有りません、自分は、屋根の有るだけでも、十分で
すので。」
「ジェス、其れが、駄目なんだよ、後で、テレシアに言って、部屋を用意
して貰うからよ~、今夜からは、その部屋で眠るんだぞ、之は、オレの命令
だ。」
ロシュエは、大笑いをするが、ジェスは。
「将軍様、本当に、自分の様ま人間によろしいのでしょうか。」
「オイ、何時までも、奴らの所に居た事を考えるな、今は、お前が、お風
呂部隊では大事な仕事に就いているんだぞ、子供達も喜んでいたぞ、まぁ
~、これからも頼むぞ、今日は疲れただろうから、今は、悪いが、我慢し
て、休憩室で休んでくれよ、じゃ~、良いぞ、戻って。」
「はい、では、自分は、失礼します。」
「閣下、良かったですねぇ~、之は、大変、重要な情報ですにで、作戦を
練り直しに。」
「うん、そのとおりだ、じゃ~、司令官と、第5番大隊の任務は分かった
なぁ~、其れと、狼犬部隊もだ、さぁ~、これからが大変だなぁ~、どんな
方法で、奴らを迎え撃ちするかだなぁ~。」
「将軍、でも、本当に、奴らは攻撃して来るでしょうか。」
「其れは、分からんよ、だがなぁ~、最悪の事を考えて行くのも、我々の
任務なんだ。」
「はい、将軍。」
「いいんだよ、オレだって、今は、半信半疑なんだからよ~、じゃ~、今
から、作戦を考えて行くんだが、一番の問題は、ホーガンの言う城なんだ、
奴らが、対岸に行く時に見過ごしたか、それとも、既に、攻撃を受けたかと
言う事なんだが、司令官の意見はどうだ。」
「私は、ホーガンの言う事が正しければ、攻撃は受けてはいないと思いま
す。」
「じゃ~、ホーガンは。」
「はい、私も、本当は、攻撃を受けていないと考えたいのですが、確信が
有りません。」
「じゃ~よ、攻撃は受けて無いと考えてだ、ホーガン、村は、何箇所有る
んだ。」
「はい、でも、私は、一体、何ヶ村有るのか知らないんです。」
「ホーガン、だがなぁ~、村が、全く、無いとは考えられないと思うんだ
が、どうだ。」
「はい、私も、3ヶ村有るのは知っておりますが。」
「じゃ~、3ヶ所で、村民は何人位居るんだ。」
「1ヶ所で、50人位だと思いますが。」
ロシュエは、村が、何ヶ所で、村民が何人暮らしているのか、其れに、正
確な場所が分かれば、尚、良いと思うのだが、ホーガンも、正確な人数まで
は知らないと。
「司令官と、ホーガンは、何か計画でも考えたか。」
「将軍、私は、城の住民ですが、果たして、我々の説得を聞いてくれるで
しょうか。」
「う~ん、其れは、オレにも分からないんだ、ホーガンが、どんな風な説
得をするかだなぁ~。」
「はい、今、私も、考えているのですが、城主は、理解していただけると
思いますが、問題は、警備隊だと思いますが。」
「その城の警備隊の人数は。」
「はい、2百人程なので、奴らの攻撃を受ければ簡単に全滅すると思いま
す。」
「ホーガン、では、今まで、警備隊に戦の経験は。」
「司令官、其れが、問題なんです。
私の知る限りでは、過去に、一度も、戦の経験が無いと思います。」
「えっ、正か、其れが本当ならば、閣下。」
「司令官よ~、こりゃ~、大変だぜ、多分、訓練は、行なっているだろう
が、訓練と実戦は、全く、別物だからなぁ~。」
「閣下、ですが、説得しましても、簡単に応じない事も考えられます
が。」
「う~ん、そうだなぁ~、自分達は、日頃、訓練をしているので、心配は
無いと、変な自信を持っていそうだなぁ~。」
ロシュエも、司令官も、正かを思ったのだ、何処かの国では、過去に、一
度も、経験した事が無いと、噂話は聞いた事があったが、其れが、今回、救
出に向かう国だとは。
「将軍、今、私が、考えた作戦なんですが。」
リッキー隊長は、何か、特別な作戦が必要だと考えたのだろうか。
「お~い、その顔は、何か、とんでもない事を考えているようだなぁ
~。」
ロシュエでも、考え付かない作戦だ。
「私は、5番大隊で、一度、城に向かい、城の周囲を包囲しようと思った
んですが。」
「えっ、何じゃと、5番大隊で、城を攻めるのか。」
「いいえ、別に、城を攻めるのではなく、私達が、城の兵士達の腕前を調
べ、その後、司令官と、一緒に、警備隊長に説明するのですが。」
「閣下、私も、正かとは思いましたが、5番大隊が、相手の武器の射程距
離の外で待機すれば問題は無いと考えますが。」
「オレも、今までそんな作戦は聞いた事が無いよ。」
「ですが、城の兵士達の技量を知るのも、良い機会だと考えるのです
が。」
「リッキー隊長、じゃ~、攻撃はしないのか。」
「勿論ですよ、だって、我々の武器はホーガンなんですよ、普通の矢の倍
以上は飛ぶんですから。」
「その技量を如何されるんですか。」
「ホーガン隊長、城の兵士達は、戦を知らないと言うのは致命的ですよ、
では、隊長ならば、どの様にホーガン矢を放ちますか。」
「其れは、当然で、矢が届かない範囲で待ちますよ。」
「でもねぇ~、城の兵士は、訓練を行なっていると言うでしょうが、訓練
の的は動きませんよ、其れに、反撃もしませんから、狙いを定め矢を放て
ば、的に当たりますよ、でも、隊長なら、ご存知でしょう、敵は、必ず、全
身を見せ、動かないと言う事は有り得ない話だと思いますが。」
「では、隊長は、矢の届く外に待機し、城の兵士が、どの様な状態で矢を
放つのかを見られるのですね。」
「ええ、そのとおり何ですよ、でも、最初、我々の姿を見れば、直ぐ敵だ
と思うでしょうねぇ~。」
「私も、同じですねぇ~、多分ですが、何も考えずに矢を放つと思いま
す。」
「う~ん、リッキー隊長の考えた作戦は、誰も考えた事が無かったからな
ぁ~、だが、その後、司令官と、ホーガンが、城で、城主と、警備隊長に説
明するんだろう。」
「閣下、私は、リッキー隊長の作戦も必要かと思っております。
城の警備隊長には、この様に、何も考えず、無駄な矢を放つと言うのは、
全滅までの時間は早くなりますと、説明するだけが、今の方法では無いか
と、後は、ホーガンが、どの様に説得するかだと思いますが。」
「よ~し、分かった、リッキー隊長は、馬車百台の準備に、だが、兵士達
の馬も一緒だ、馬車には、ホーガン矢を1万本積み込み、準備が完了次第出
発する。
リッキー隊長の作戦で行くが、城の兵士たちは、驚きで、何も考えずに矢
を放って来ると思うので、十分に注意する事だよ。」
「はい、将軍。」
「リッキー隊長、それと、他に問題が有るんだ。」
「将軍、食料では。」
「うん、そうなんだ、城には食料を残す必要も無いが、途中で、狩りを頼
みたいんだ。」
「はい、私も、先程から考えておりましたので、向こうに着くまでには、
私が、責任を持って必要な肉は確保したいと思います。」
「司令官、今度の任務は、今まで以上に厳しくなると思うが、城の全員
と、村民全員を救出してくれよ。」
ロシュエは、司令官達が到着し、城の全員と、村民が救出されまで、敵軍
が来ない事を願うので有る。
「閣下、では、我々は準備に入りますので。」
「司令官、よろしく頼むよ。」
司令官、リッキー隊長、ホーガンも執務室を出、出発準備に入るの有る。
一方、話は、少し戻り、執務室を出た、ジェスは、大食堂の前で、運命的
な出会いをするので有る。
「あの~、貴方は、若しや。」
ジェスに声を掛けたのは、サムだった。
「はい、自分に何かご用でしょうか。」
ジェスは、全く気付いていない、其れは、最もな話で、ジェスは、ウエス
の料理人だが、ウエス達が襲った村でも、後方に居るため、村でどの様な虐
殺が行なわれているのか、全く、知る事も無かった。
サムは、覚えていた、サム母娘は、サムの主人と、村民の死体の下に隠れ
ていた。
ウエス達が去ったと思い、主人の死体を動かせた時、丁度、ジェスの馬車
が通り掛かり、ジェスは気付き、首を振り、まだ、出るなと合図を送ったの
で有る。
「いいえ、自分は、貴女を見るのが、今日、初めてなので。」
其れは、当然だ、死体の血を浴び、其れが、サムだとは判断出来ない。
「でも、私は、はっきりと覚えているんです。
貴方のお陰で、私と、娘は助かり、今、此処で、皆さんと、ご一緒に生活
が出来ております。
本当に、あの時は、ありがとう、御座いました、何と、お礼を言って良い
か分かりませんが。」
「どなた方と、お間違いでは有りませんか、自分は罪人と同じです。
どうか、自分を一人にして置いて下さい、お願いします。」
ジェスは、足早に風呂場に向かって走って行く。
「ママ、どうかしたの。」
サミーも、何かを感じたのだろう。
「サミーは、覚えているかなぁ~、ママと、一緒に、パパや、他の人の下
にいた時の事を。」
「うん、覚えてるよ、ママがね、起き様とした時、馬車に乗った人がね、
出たら駄目だって言われて、ママが、言ったの、だから、私は、外に出なか
ったのよ。」
「サミー、今の、おじさんがね、その馬車に乗ってた人なのよ。」
「えっ、じゃ~、ママと、私を助けてくれた人なんだね。」
「そうなのよ、ママがね、そのおじさんに、お礼を言ったらね、ママの事
は知りませんって、言われたの。」
「でも、ママ、あの時、おじさんが言ってくれなかったら、ママも、私
も、あの悪い兵隊に殺されたって言ってたもの、じゃ~、ママ、今から、私
が、おじさんに言ってくるからね、おじさん、ありがとうって。」
サミーは、まだ、幼い女の子だが、あの時の記憶だけは鮮明に覚えてい
る。
サミーは、走って、ジェスのところに行き。
「おじさん。」
「うん、何ですか。」
ジェスは、女の子が、何を言いに着たのか直ぐに分かった。
「ねぇ~、おじさん、ママの事を覚えてる。」
「おじさんは、何も、覚えてないんだよ。」
「だけど、ママは、はっきりと覚えてたよ、ママと、私を助けたのは、あ
の馬車に乗ってたおじさんだって。」
ジェスは、何も言えなかった、サムが言う様に、あの確かに、首を振った
事は有るが、その時の人が、サムとは、わからない。
「ねぇ~、おじさん、本当に、ありがとう。」
サミーは、幼いながらも、あの恐怖だけは、忘れる事は出来ないだろう
と、ジェスは、思ったので有る。
サミーは、ピョコンと頭を下げ、手を振りながら、母親の元へと戻った。
「ねぇ~、サム、一体、何が、あったの。」
サムの顔付きで、何かがあったと思ったのだろう。
「あっ、テレシアさん、実は、私達、母娘を助けてくれた人を見付ける事
が出来たんですよ。」
「えっ、サム、其れは、本当なのかい。」
「はい、今、会った人なんですが、風呂場の方に行かれました。」
「あ~、あの人ね、あの人だったら、将軍の命令で、お風呂部隊の手伝い
をしている人だよ。」
その時、テレシアは思った、正か、その人が、朝早く、大鍋に水を入れ、
火を点けた人では。
「えっ、正か。」
其れは、サムとは、別の事で言ったのだが。
「本当なんですよ、私は、はっきりと覚えているんです。
私は、兵隊が、行ったと思い、主人の遺体を動かし、顔を出したんです
が、馬車に乗った兵隊さんが、首を横に振って、まだ、出ては駄目だと言わ
れたんです。」
「じゃ~、あの人が、サムと、サミーを助けたんだね。」
「ええ、そうなんですが、さっき、その事を言ったんですが、人違いだ
と、でも、私は覚えているんです。
あの人が、私達を助けたんだと。」
サムは、母と、娘を助けた人物に会った事に感激したのだ、正か、この農
場で会う事になるとは思いもしなかったのだ。
その頃、ロシュエが、大食堂に向かっていた。
ロシュエは、大食堂に、イレノアも、フランチェスカも居るのを知ってい
た。
「サム、じゃ~、何か言ったのかい。」
「私は、何と、お礼を言って良いか分からなかったんですが、本当に、あ
の時の事は、一生、忘れる事は出来ないんです。」
「其れは、当たり前だよ、だって、その人のお陰で、命が助かったんだか
らねぇ~。」
「ええ、でも、あの人は、知らない、覚えて無いって。」
「サム、今は、何を言っても駄目だと思うのよ、だって、行き成り、女性
から、其れもよ、自分は全く知らない人からよ、貴方は、命の恩人ですって
言われ、だから、無理も無いのよ。」
サムは、悲しいのだろう、涙を流しているが。
「ママ、おじさんに言ったよ、ありがとうって。」
サミーも、何か、悲しげな顔をしている。
「そうなの、おじさんは、何か言ったの。」
「うう~ん、何も、覚えて無いって。」
「そうだったの、でもね、何時かは、おじさんも、思い出してくれると思
うのよ。」
「うん、そうだね。」
「お~、テレシア、何か、あったのかよ~。」
「あっ、将軍様だ、ママ、将軍様だよ。」
サムが、涙を拭くと。
「将軍様、実は、私。」
「どうかしたのか、えっ、正か、誰かにいじめられたのか。」
「あのねぇ~、将軍、サムは、まだ、何も言ってないんだよ、本当に早、
とっちり何だから。」
「あ~、済まんねぇ~、で、一体、どうしたと言うんだ。」
「はい、私、先程、命の恩人に出会ったんです。」
「えっ、命の恩人だって、そりゃ~、一体、何処の誰なんだよ~。」
ロシュエは、驚いた、余りにも突然の話に、今まで、多勢の人達を助けた
事は覚えてはいるが、個人が、命の恩人だとは初めて聞く話だ。
「はい、実は、その人は、風呂場の人なんです。」
「何だって、あの風呂場には、足と、腕の無い。」
「将軍、違うんだよ、将軍が、お風呂部隊の手伝いを命じた人だよ。」
「あ~、ジェスの事か。」
「えっ、ジェスって、言われるんですか、あの人の名前は。」
「そのジェスが、命の恩人だって言うのか。」
「はい、将軍様に、お話をしたと思いますが、私が、主人の死体の下に入
って。」
「うん、それなら、聞いたよ、其れで。」
「私は、兵隊が、全部行ったと思って、主人の遺体を動かし、顔を出す
と、馬車に乗った兵隊さんが、首を振って、今、出ては駄目だって言ったん
です。
でも、あの人に、何も、知らないって、覚えて無いと言われたんです。」
またも、サムの目から涙が零れてきた。
「分かったよ~、だがなぁ~、ジェスもだ、ウエスの部隊にいた事を、今
も後悔しているんだ、それにだよ、ジェスも、奥さんと、子供を殺されてい
るんだよ。」
「やはり、そうだったんですか、でも、私は、あの時、私と、娘を助けて
下さった馬車の兵隊さんの顔は、はっきりと覚えているんです。」
だが、サムも、分からなかった、あの時、何故、サムは、主人の遺体を動
かしたのか。
「うん、其れは、オレも理解は出来るよ、だがよ~、その時、サムの身体
は血塗れの状態じゃ~、無かったのか、身体も、顔も血だらけだったらよ
~、今のサムを見たって、ジェスだって分からないよ。」
「ねぇ~、サム、私だって同じだからね、ジェスには、時間を掛けるしか
無いと思うのよ。」
「うん、テレシアの言うとおりだ、そうだ、テレシア、話が有るんだ、そ
のジェスなんだが、子供達の休憩所で、昨夜は眠ったらしいんだ。」
「あいよ、任せなって、部屋が要るんだろう、それと、寝袋も。」
「えっ、その寝袋って、一体、何だよ~。」
「そうか、将軍は、知らなかったんだね、私がね、狼の毛皮でね、大きな
袋を作ったんだよ、内側にすれば、毛皮だから暖かいんだよ、じゃ~、ジェ
スに渡して。」
テレシアは、余計だと思われる事を考えていた。
「テレシア、今、何か考えているだろう。」
「あら、解ったのかい、嫌な、男だねぇ~、将軍って、人は。」
テレシアは、大笑いしながらも考えている。
「まぁ~、後の事は任せるよ、其れと、フランチェスカは何処なんだ。」
「あ~、要るわよ、フランチェスカ、将軍が呼んでるよ。」
テレシアは、大声で呼ぶと。
「は~い、直ぐに行きま~す。」
フランチェスカも、同じ様に大きな声で、すると、イレノアも、一緒に来
た。
「将軍、何か、ご用でしょうか。」
「フランチェスカ、今から、直ぐ宿舎に戻ってくれ。」
「えっ、突然に、何かあったのでしょうか、司令官に。」
「いや、そうじゃないんだ、実は。」
ロシュエは、司令官達が、農場の存亡を掛けるかも知れない作戦のため
に、出動する事を説明すると。
「フランチェスカ、そう言う訳で、30日か、40日は、この農場に戻っ
て来れないんだ、しかも、今回は、特別、明日の早朝に出発予定なんだ、だ
から、少しの時間しか無いので、申し訳ないが、至急、戻って欲しいんだ、
頼む。」
ロシュエは、フランチェスカの手を握った。
「はい、分かりました、ですが、私も、司令官の、いえ、一人の軍人の妻
です。
司令官と、ご一緒になった時から覚悟は出来ております。」
傍の、イレノアも、頷いている、イレノアといい、フランチェスカとい
い、あの20人の女性達は、本当に、農場の娘達なのだろうか、いや、何処
か、他国で、兵士でも、上官クラスの娘達では無いのか、それで、無けれ
ば、之だけ肝の据わった女性はいないはずだと、ロシュエは、思った。
「フランチェスカ、わかったよ、だが、今回は、別なんだ、頼むから、帰
ってくれよ。」
「はい、分かりました、では、将軍、帰りますが、将軍、お気遣い、誠
に、ありがとう、御座います。」
フランチェスカは、顔色も変えず、静かに、司令官の要る宿舎に戻って行
く。
「将軍、今度の作戦って、そんなに大事なのかねぇ~。」
「テレシア、之は、オレ達、軍人の任務なんだ、此れだけは見逃す事が出
来ないんだ。」
「だって、ウエス達は全滅したと聞いたのよ、それが、今になって、一
体、どう言う事なのよ。」
「テレシア、今は、何も聞くな、其れよりも、この話は、誰にもするな、
聞かれたら、何も知らないって言うんだ。」
何時に無く、険しい表情のロシュエに、テレシアは、それ以上聞く事は無
かった。
「あの~、将軍様、あの人も行かれるのでしょうか。」
サムは、ジェスも行くものだと思っている。
「いや、其れは無いよ、だってよ~、ジェスは、風呂場の責任者なんだ
ぜ。」
「えっ、そんな大切なお仕事と、あの人がされているのですか。」
イレノアは、この時、このサムと言う女性は、命の恩人ではなく、恋心を
抱いていると思った。
「うん、だからよ~、ジェスを外す事は出来ないんだよ、だが、今、テレ
シアに言った様に、今の話は、誰にもするんじゃないぞ。」
「はい、将軍様、誓って、何方にも言いませんので。」
「うん、それで、いいんだ、じゃ~、オレは戻る、イレノア、話が有るん
だ、一緒に来てくれないか。」
「はい。」
イレノアは、直感した、先程、フランチェスカに見せた態度の事で聞かれ
るだろうと、ロシュエと言う人は、この様な勘は鋭い、何時までも隠し通せ
るものでは無いと思った。
宿舎まで、ロシュエは、何も聞かず、二人は、そのまま、宿舎に戻り。
「まぁ~、座ってくれないか。」
ロシュエの表情は硬く。
「はい、将軍、お話とは、どの様な事でしょうか。」
イレノアは、この時には開き直っている。
「今から聞く事に正直に答えて欲しいんだ。」
イレノアは、やはりだと思い。
「私に、分かる事であれば、何でも、お答えします。」
「なぁ~、イレノア、君達は、本当の農民なのか。」
「いいえ、違います。」
ロシュエの思ったとおりだった。
「じゃ~、何処の国から来たんだ。」
「はい、私達は、この農場より、遥かに遠い北の国からです。」
「何、遥かに遠い北の国だって、じゃ~、イレノア、本当に君は、一体、
何者なんだ。」
「はい、私は、北国に在りました、国で、お城では、侍女の仕事を致して
おりました。」
「やはり、そうだったのかぁ~、じゃ~、他の女性は。」
「はい、フランチェスカ様は、その国のお姫様です。」
「道理で、肝が据わっていると思ったよ、其れじゃ~、残りの女性達もな
のか。」
「はい、全員が、その国ではでは、侍女の仕事を勤めておりました。」
ロシュエは、今まで、何度も、見てきた、だが、まだ確信が無かった。
だが、あの時、其れは、3人の手や足を切り落とした時に確信した。
「その、お姫様が、一体、どうして、この農場に来る様になったんだ。」
「はい、私達の国で、内乱が起きたのです。」
其れは、何処の国でも起きる事なのかも知れないので有る。
「内乱って、正か、跡目争いじゃ、無いだろうなぁ~。」
「はい、実は、そのとおりで、フランチェスカ様には、上、二人が男の兄
弟で、その兄弟が跡目争いを起こし、国中が戦争状態になったのです。」
ロシュエの故郷でも同じだった。
「それで。」
「はい、私は、兄弟の争いから、姫様を守るために、18人の彼女達と一
緒に故郷を逃れたのですが、数十日後、ウエスの城主が要る近くを通り、其
処で捕まったのです。」
「じゃ~、その時、ウエスが中心だったのか。」
「いいえ、ウエスには、兄がいるのですが、この兄と言うのが、争い事が
好きで、絶え間なく、何処かの小国や村を襲っていると聞いています。」
「だがよ~、フランチェスカって女性は、お姫様なんだろう、其れが、知
られると困るんじゃないのか。」
「はい、でも、あの人は、子供の頃から、お城を出て、野山を走り、農村
の子供達とも、よく遊んだと聞いております。
其れに、大変、適応力が素晴らしい女性で、直ぐ、その場に溶け込むと言
いますか、少々の事では、お姫様言葉を使う様な人では有りませんので。」
「じゃ~、司令官も知らないと思うのか。」
「はい、私も、心配でしたが、私は、どの様な事があっても、この先、一
生、お姫様言葉は使わないと言っておられました。」
「じゃ~、一応、表面上は、イレノアが、女性達の纏め役と言う事になっ
たのか。」
「はい、そのとおりです。」
イレノアは、何故、ロシュエが、自分達の身分を知ったのか、其れが、不
思議だった、今でも、フランチェスカは、お姫様言葉は、一切、使っていな
かったのにと。
「将軍、何故、私達が農民では無いと知られたのですか、フランチェスカ
様も、今の、今まで、一度も、お姫様言葉は使った様には見えないのです
が。」
「イレノア、オレはよ~、伊達に司令官を引き継いだんじゃないよ、オレ
も、子供の頃から、お城の女性達を知ってるんだよ。」
やはり、身のこなし方が違うのか、いや、其れだけでは無いはずだと、イ
レノアは、考えるのだが。
「其れにだ、この農場の女性達みりゃ~、直ぐに、この女性は、農民だっ
てわかるよ、其れに、比べ、イレノアや、フランチェスカ、それに、他の女
性だってよ~、他の人にはわからないが、オレは、女性の身のこなし方や、
言葉使いが農村の女性とは違うと、早くから分かってたんだよ。」
「でも、今まで、聞かれませんでしたが、其れが、何故、急に、一体、何
があったのですか。」
「そりゃ~、簡単だよ、だってよ~、イレノア達のあの度胸、あの度胸
は、農村の女性には真似は出来ないよ、だと言って、兵士の妻でも無理だ、
だとすると、之は、かなり、上官の娘達だろう、で、無ければ、あんな足の
切断なんて事が出来る訳が無いと、あの時に確信したんだ、其れとだ、さっ
きの、フランチェスカの言葉使い、あれは、平民の言葉使いじゃ無いん
だ。」
やはり、ロシュエは、見抜いていた。
「そうでしたか、私も、あの時、フランチェスカ様の言葉使いが、若しや
と思ったのですが、やはり、将軍ですねぇ~。」
イレノアは、あっさりと全てを認めてしまうので有る。
「イレノア、だが、今の話は、之で終わりだ、フランチェスカにも言うな
よ、この話は、二度と、其れは、墓場まで持って行くんだ。」
「はい、分かりました、ありがとう、御座います。」
イレノアは、涙が出てきた、其れは、ロシュエの優しさだった、二人は、
この夜、久し振りだった。
そして、狼犬部隊を先頭に、第5番大隊が、司令官の下に出発する、朝を
迎えた。