第 73 話。奴らは生かしてはならぬ、皆殺しだ。
「参謀長殿、馬車部隊ですが無事に着かれるでしょうか。」
「わしも其れが一番懸念してるんだ、若しもだ、若しも幕府の残党か野盗にでも襲われた時が一番恐ろしいんだ。」
「ですが、中隊が護衛しておられますよ。」
「勿論、わしも承知しておる、中隊だけならば心配しないが、馬車には兵士では無い人達が乗ってるんだぞ、特に今回の護衛と言うのは考えるよりも遥かに大変なんだ。」
上野も飯田達が命懸けで来たと理解しており、勿論、中隊長も同じで何としても無事連合国に戻って欲しいと願って要る。
「参謀長殿は総司令長官殿が居られる連合国に参られたいのでは御座いませんか。」
上野は一瞬はっとした、其れよりも上野は中隊長に言われるまでは考えた事などは無かったが、やはり心の中の奥では連合国に行って見たいと願っていたのだろう。
「君は行きたいのか。」
「私は是非とも行きたいとは思いますが、ですが私の立場としては行く事など決して許されないと考えております。」
中隊長も源三郎の、いや工藤達の居る連合国と言う国へ行きたいと、だが上野も中隊長もれっきとした官軍の将校で有り、官軍から見れば連合国とは存在する事の無い国家で有る。
「わしはなぁ~、そんな事より官軍と、いや日本国と連合国には交えて欲しくは無いんだ、と言うのはこれから先の事を考えると同じ日本人同士が殺し合いをすると言うのは欧州の国々、特にロシアから見れば同じ民族同士の戦争とい言うのは国力が衰え侵略するには絶好の機会なんだ、わしが考えるには他の国も静観すると言うのは欧州の国々が日本国に対し、何時来襲するかもわからないんだ、若しもだそんな事にでもなれば日本と言う国はバラバラに割譲され、下手をすると親兄弟が別々の国に分かれ、そんな事にでもなったら其れこそ日本国は永久に植民地と言う地獄から逃げ出す事も出来ないんだ。
多分総司令長官の事だからその辺りまで考えておられると思うんだ。」
だが果たして源三郎は其処まで考えて要るのだろうか、確かに上野が考えるのは本当なのだろうか、ロシアが日本国を植民地にする為に他の欧州の国々よりも早く日本に攻撃しなければならないが、ロシアの大艦隊が日本国に来襲する為にはイギリスの大艦隊が大変な目障りで、今の国力と言うよりイギリスの大艦隊に勝利すると言うのは全く不可能で有り、ロシアとしてはイギリスの大艦隊よりも強力強大な軍艦を派遣しなければならず、その為にロシアは国を挙げ軍艦の建造を急ぐので有る。
「其れよりも私が理解出来ない事が有るんですが、海中からどんな方法でロシアの大艦隊を攻撃するのでしょうか」
「まぁ~確かに君の言う通りだと思うよ、わしも一体どんな武器で攻撃するのか、どんな武器なのかも知りたいんだ。」
「私は最初に海中でも大砲は撃てるのかと、其れはもう真剣に考えましたが、ですが其れは不可能なんだと、じゃ~一度海上に出て撃つのかと考えたんですが、幾ら海の忍者だと言っても海の上に出ると軍艦から一斉射撃を受け、潜水船は沈められると思うんですけど。」
げんたがどんな武器を作り出すのか其れは源三郎も知らない。
話は戻り、親子連れを乗せた飯田達の馬車部隊では女性達に話を聞きだして要る。
「お母さんに聞きたいのですが一体何が有ったんですか。」
「私達は綾野と言う宿場に住んでたんです。
其処で数日前の事なんですが、官軍がやって来て宿場に幕府の残党が逃げ込んだと言って宿場の隅々まで探し始めたんです。」
やはり官軍は幕府の残党狩りを行っていたのか。
「では残党が逃げ込んでいたのですか。」
「いいえ、宿場には綾野の陸奥五郎と言うやくざが仕切っていまして、浪人が数人おりましたが、官軍が言う幕府の残党なんていなかったんです。」
「ならば直ぐ宿場を出たのですか。」
「其れが反対で宿場に有る酒場に入りお酒を飲み始めたんですが、その時、陸奥五郎の子分と揉め事になり、兵隊が鉄砲で子分と何の関係も無いお客を殺したんです。」
「やはりですか、では酒場では何人かが撃ち殺されたのですか。」
「いいえ、其れが数人どころか全部殺したんですよ。」
「えっ、何ですと、全員を撃ち殺したのですか。」
「そうなんですよ、其れで陸奥五郎と子分が酒場に行って、今度は兵隊を切り殺し、其れからはもう大変で、子分たちは他人の家に逃げ込み、官軍は兵士を殺した犯人捜しだと言って次々と家に入り、私の家も同じ様に押し込んで来て探すんですが、見つからないと家に火を点け家から出て来る人を次々と撃ち殺して行くんですよ。」
何と言う話だ、官軍兵は酒の酔いに任せ、やくざを喧嘩で子分を撃ち殺したと、だが陸奥五郎とい言うやくざの親分は兵士を切り殺し、だが其れで終わる事は無く、関係の無い店の客まで撃ち殺し、其れにもまして子分が宿場に有る他人の家に逃げ込み、官軍兵は手当たり次第家に押込み犯人捜しをするが、やはり見つからずその為に家に火を点け、中から飛び出す家人を撃ち殺して行ったと、其れこそ何の関係も無い人達までも撃ち殺して行くと、其れは正しく虐殺で有る。
「では宿場は一体どうなったんですか。」
「あいつらは人間じゃ無いですよ、私は息子と裏から逃げたんですが、亭主は撃ち殺され、私は官軍兵を見ると殺したいんですよ、どんな事が有っても亭主の仇を撃ちたいんです。」
と、この母親は涙を流し、飯田に訴えている、だが官軍と言うだけで他は何もわからないのか。
「では官軍兵と言うだけなのですか。」
「そうなんですよ、私はもう悔しくて悔しくて、でもあいつらは何処に行ったのかもわからないんです。」
「ですが先程は野盗でしたよ。」
「あいつらは官軍の奴らが何処かに行った後に宿場にやって来たんです。」
だが野盗は一体何の為に女性達を連れていたのだろうか。
「ですが先程は野盗でしたよ、其れに何故野盗がお母さん達を連れていたのですか。」
「私は正直言って初めは助かったと思ったんです
でも其れが全然違ったんですよ、奴らは宿場が焼け何も残って無かったんで女は売り飛ばすって聞こえたんです。」
「ですがお母さんには子供さんもおられましたよ。」
「私も子供が一緒なんで少しは楽だったんです。」
野盗は何故子供も一緒に連れていたのか、今となっては解明も出来ない。
「では今生き残ったのは貴女達だけなのですか。」
「そうなんですよ、野盗が言ってましたが宿場で残ったのは私達だけだって。」
「其れと今一度お聞きしたいのですが、官軍兵は何処に向かったのか分かりますか。」
「えっ~っと、確か海が何とか言ってた様に聞こえたんですけど。」
「海ですか、えっ、正か、いやそんな事は。」
飯田は正か駐屯地に向かったのではと思ったが女性はただ海と、其れ以上はわからない。
「飯田様、先日の場所で野営に入りたいと思いますが。」
「中隊長さんにお任せしますので、宜しくお願いします。」
「では第一、第二小隊は野営の準備に入って、第三、第四小隊は付近の警戒に残りの小隊は馬の世話と女性達と子供達に毛布を渡して下さい。」
「中隊長さん、では明日には戻れるのですか。」
「明日の早朝に出発しますと夕刻には菊池に入ります。」
「左様ですか、あ~良かった、これでやっと安心出来るなぁ~、そうだ貴女方はこれからどうされるんですか。」
「私は何処にも知り合いがいないんで、多分他の人達も同じだと思うんです。」
「では我々の連合国に来られては如何でしょうか。」
「えっ、でも。」
女性は一瞬下を向くが。
「連合国でゆっくりとされては如何ですか、我々の国では誰にでも優しくしますからね。」
女性は返事もせずに頷くだけで有る。
その少し前、中隊と別れた二個小隊は日光隊と月光隊が待つ大岩へと急いでおり、一個分隊は先の偵察に向かった。
「中隊長、何処で野営するんですか。」
「第一小隊、第一分隊は野営する出来る場所を探せ。」
この中隊は一体何処に向かうか、このまま進むと軍港を建設中の駐屯地近くに行く。
「あそこに決めるとするか。」
「そうだなぁ~、まぁ~まだ夜も明けないから誰にもわからないだろうよ。」
第一分隊が野営場所と決めたのは駐屯地に行ける道の一里程手前に有る林で付近には農家も無く、其れに誰にも見付からないだろうと考えたのだが、数本の松明の灯りを偵察に向かった連合国軍の分隊は見逃さなかった。
「分隊長、怪しい松明が数本見えますが、どうしましょうか。」
「う~ん、若しかして官軍かも知れないぞ、よし探りに行くぞ。」
分隊は松明の灯りが見える方へと向かい、後半町の所で草地に身を隠した。
「オレが中隊長に知らせに行くから焚き火を起こしてくれるか。」
「任せろって、分隊長、この辺りで焚き木を探してきます。」
「頼んだぞ。」
「分隊長、奴らはやっぱり官軍でしたよ。」
「ではもう少し様子を見ましょうか。」
分隊はわかれ、官軍兵が来るのを待つ事に、暫くして中隊の兵士が着いた。
「皆も聞く様にあの宿場での出来事は絶対に口外するな。」
中隊長は宿場の出来事は口外無用だと、ではやはり宿場で虐殺を犯した官軍兵なのか。
「だけど惜しかったなぁ~、女も全部殺したからなぁ~、オレはもっと楽しみかったのによ~。」
「オレもだよ、だけど全部殺したのかなぁ~、若しも生き残りが有ったとしてだよ、他の部隊に知られたら其れこそ大変な事になるぞ。」
「まぁ~そんな事は心配するなって、全部殺し家も焼いたんだし、其れに証拠も無いんだから。」
「だけどオレ達は鉄砲で殺したんだぜ、若しも他の部隊にも発見されたら一体どうなるんだ。」
「其れは心配無いって、オレはあの飲み屋で聞いたんだ、野盗が小隊を襲って連発銃を奪って宿場や農村を襲ってるって。」
「ああ、其れだったらオレも話は聞いた事が有るぜ、其れに幕府の残党も官軍を襲い連発銃を奪ってるって。」
やはりこの中隊が宿場を襲い宿場の人達を殺し、そして、宿場に有る全ての家に火を点け焼き払ったと言うので有る。
「オレもその話は聞い事が有るぜ。」
「オレはなぁ~やくざの野郎を殺してすっきりしたんだよ~。」
「何でだよ~、じゃ~お前が飲み屋で殺したのは。」
「ああ、間違い無いよ、実はなぁ~、オレがまだ子供の頃に親がやくざ者に殺されたんだ、だけど役人は何もしなかったんで、オレは何時か幕府と戦になった時には必ず親の仇を、其れがあの時だったんだ。」
兵士は子供の頃に親がやくざ者に殺され、だが役人は不問にしたと、その為か何時の時が来れば敵討ちが出来ると、その為に官軍に入ったのか、だが飲み屋では関係も無い人達も殺されて要る。
「では他の部隊が知る事は無いのか。」
「だからさっきも中隊長が宿場での出来事は誰にも言うなって言われてるんだ。」
「そうか、じゃ~向こう側に着いても何も言わない方がいいのか。」
「お前って本当に馬鹿だなぁ~、そんなのって当たり前の話だ、だからオレ達は何も知らないんだよ、わかったのか。」
何と兵士は向こう側に着くと言った、一体何処に向かうんだ、分隊長も兵士も行き先を確かめたいのだ。
「だけど向こうに行って何をするんだよ。」
「オレが知るかよ、小隊長に聞けばわかると思うんだ。」
其処へ丁度小隊長が来た。
「皆もさっき中隊長殿が言われた様に駐屯地に着いても何も言ってはならんぞ。」
「小隊長、オレ達は絶対に何も喋りませんよ、絶対にね。」
「そうですよ、正かオレ達が宿場を焼き払ったとは誰も知りませんよ、全部殺したんですから。」
「小隊長、其れよりもオレ達は何処に行くんですか。」
「其れだったら軍港を建設してる所だ。」
「でも何で軍港に行くんですか、駐屯地だったら兵士も居ると思うんですが。」
「中隊長殿のお話しでは司令本部から送った資材の使い道を調べろと言われたんだ。」
「資材の使い道って、でも全部軍港で使うんでしょう、他にも使う所が有るんでしょうか。」
「其れを調べるのは我々の任務だ、司令本部では今まで殆ど発注されなかった駐屯地から急に、其れも大量の資材が必要だと目録が届き、発送部へ大至急送れと指示が飛んだと聞いて要る。」
「でも他の駐屯地からも大量に送れと書状が届いてるんだったら何も不思議じゃ無いと思うんですけどねぇ~。」
「分隊は静かに戻れ。」
との指示で草地の中をゆっくりと音もたてず野営地を離れて行く。
「大変だ、直ぐ小隊長に知らせるぞ。」
分隊は草地を抜けると大急ぎで小隊へと走って行く。
「小隊長、小隊長、大変ですよ、大変なんですよ。」
分隊の兵士は大慌てで息を切らして帰って来た。
「一体、どうしたんですか、そんなに慌てて。」
「小隊長、大変なんですよ。」
「まぁ~まぁ~、少し落ち着いて話して下さい。」
「小隊長、自分達はこの先一里手前で数本の松明の灯りを発見しまして。」
分隊長が詳しく説明すると。
「えっ、では宿場で罪なき人達を殺した官軍兵なのですね。」
「其れに間違いは有りませんが、其れよりも。」
と、又も話を続けると。
「では駐屯地で調査に入るのか、これは大変だ、手分けして大岩と小隊にも知らせて下さい。」
数人の兵士が大岩と別の小隊へ知らせるべく走って行く。
「では我々も急ぎましょう、其れで野営地と駐屯地は近いのですか。」
「あの場所からで有ればまだ二里半、いや三里は有るとは思いますが、其れと野営の場所ですが林の中で、その林の中を一町も行きますと、大きく開けてます。」
奴らを何としても止めなければ駐屯地で軍港を建設に就いて要る後藤達の命が危ないと分隊の兵士はまだ夜の明けない土手を小走りで行く。
「お~い。」
「小隊長、誰かが走ってきます。」
一体誰だ何が有ったのか。
「お~い待ってくれ、大変なんだ。」
兵士は息も荒く、直ぐには話せない程だ。
「何が有ったんだ。」
「小隊長、大変なんですよ。」
兵士は息を吐きながらも少し話すと。
「なんだと、では女性の居た宿場を襲ったとすれば若しかすれば。」
「其れで自分達の小隊も今大急ぎで野営地に向かっております。」
「よし分かった、で月光隊には。」
「はい、仲間が向かってますので。」
「分かりました、では集合場所で日光隊を待ちましょう。」
一方で大岩へ向かった兵士は月夜の明るい中を走って行き。
「小隊長、誰かが叫んで来ますが。」
「お~い大変なんだ。」
と、兵士は大声で叫びながらも必死の形相で走って行く。
「大変だ、大変なんだ。」
やっと大岩に辿り着いた兵士はその場に倒れた。
「大丈夫か。」
日光隊と月光隊の兵士が集まって来た。
「小隊長、大変なんですよ、駐屯地に。」
兵士は官軍兵が宿場を襲い、十数人の女性と子供以外全員を殺し、宿場に火を点け焼き払ったと話した。
「其れで女性と子供達は。」
「丁度馬車部隊が来られましたので全員を預けました。」
「後の話は途中で聞きましょう、全員完全武装で野営地に向かいます。」
日光隊と月光隊の兵士は大急ぎで装備を整え、直ぐさま向かった。
日光隊と月光隊の小隊長は兵士の話を聞きながらも作戦を考えて要る様で、半時程走っただろか。
「ご苦労様で。」
「早速ですが、官軍兵の人数は分かりますか。」
「多分ですが、一個中隊だと思います、兵士が中隊長と呼んでおりましたので。」
「ではやはり官軍は一個中隊ですねぇ~。」
「中村さんは作戦を考え付かれたんですか。」
「先程の話ですと、官軍兵は林の中で野営地しており、ですが一町も行くと開けて要ると、其れで私は日光隊と月光隊は開けた付近で待ち伏せし、朝霧隊と夕霧隊は後方から攻めますと挟み撃ちに出来るのではと考えたんですが。」
「では我々は二手に分かれるのですか。」
「ええ、其れも少し間隔を開ければ奴らを取り囲めると思うのですが。」
「私は其れで良いと思いますよ。」
「では我々も其れで行きますので。」
「では早速参りましょうか。」
と、日光、月光に更に朝霧と夕霧で官軍が野営して要る林の中へと向かい、日光、月光は駐屯地の方へと、別の二個小隊は官軍兵の後方へと向かうが、誰も声を出さず、足音も立てない様に進み、そして、二時程すると東の空が明けて来た。
「全員、準備を急げ、出発するぞ。」
中隊長は直ぐに出発すると言うが。
「何で中隊長はあんなに急いでるんだ、まだ夜も明けて無いんだぜ。」
「まぁ~何か考えてるんだろうよ。」
「其れよりもあの宿場の女は惜しい事したなぁ~。」
「ああ、そうだなぁ~、駐屯地に入ったら女は居ないんだぜ。」
やはり奴らで、間違いは無い。
「中隊長殿、準備が終わりました。」
「よしでは出発するぞ。」
中隊長が号令を掛け、中隊は駐屯地へと向かい、暫くすると林の中を抜けた。
「小隊長、奴らですよ。」
「分かりました。」
と、小隊長は手で合図を送ると日光、月光の兵士は狙いを定め、官軍兵の全員が林の中を抜けると後方の朝霧と夕霧も狙いを定め何時でも撃てると手を上げ、すると日光隊の小隊長が手を下げた瞬間。
「パン、パン、パン。」
「パン、パン、パン。」
と、四個小隊の一斉攻撃が開始され、官軍兵は次々と倒れて行く。
「応戦するんだ、応戦せよ。」
と、官軍の中隊長は大声を張り上げ官軍兵も応戦に入り。
「パン、パン、パン。」
「パン、パン、パン。」
と、撃ち始め、だが其処で大変な事態が起きた。
官軍兵は宿場で撃った後、弾の補充を忘れ、殆どが単発か二~三発も撃つと弾切れになり慌てて弾の補充を始めるが、連合国軍は補充を済ませており補充中の官軍兵に命中し、声も出せずバタバタと倒れて行く。
「パン。」
と、時々単発音が聞こえ、四個小隊の兵士は草地に伏せ、一人、又一人と確実に命中させていくが、官軍兵からは全く見えず、其れでも官軍兵は必死で応戦する。
やがて四半時が過ぎ半時が近付く頃。
「全員に告ぐ、全員に告ぐ、官軍兵は一人足りとも逃がしては駄目ですよ、全員を撃ち殺して下さいよ、全員を撃ち殺せ、全員を殺すんだ、全員をだ。」
月光隊の小隊長が激を飛ばし、官軍兵は全員撃ち殺せと。
「中隊長、一体何処から撃ってるんですか。」
だが中隊長は既に死亡して要る。
「残って要る兵士は仲間の死体を盾にするんだ。」
もう官軍兵も必死だ、だが間も連合国軍兵士はじっくりと狙いを定めてから撃ち、一発で確実に官軍兵を殺して要る。
そして、やがて一時近くになる頃には官軍兵からは殆ど撃って来ない、だがまだ油断は禁物だ、此処はじっくりと構え、全員を殺すまでは終わらない。
そして、一時半が経つと全く聞こえて来ない。
「よ~し、今から確認に入りますが、絶対に油断をしては駄目ですよ。」
日光隊と月光隊は林の中から銃を構えたままで官軍兵に近付いて行く、同じ頃には向こう側の林の中からも二個小隊が銃を構えたままで出て来る。
「一人、一人確認して下さいね、其れと銃と弾倉帯だけは集めて下さい。」
其れでも官軍兵の中には生きて居る兵士が数人、肩や腕を撃たれ、呻いて要る。
「おい、何でオレ達に撃って来たんだ、同じ官軍兵では無いのか。」
「いいや、我々は官軍では無い、其れよりもお前達は此処に来るまで有る宿場で町民を殺し、家に火を点け焼き払ったと聞いたが本当なのか。」
「何でお前達が知ってるんだ、全員殺しのはずなのに。」
やはりだ、官軍兵は宿場の人達を撃ち殺し、町に火を点け焼き払ったので有る。
「お前達は何の罪も無い人達を殺し、更に家に火を点け焼き払い逃げて出て来る人も殺した、お前達は人間では無く悪魔だ、だからお前達は此処で死んで猪や烏に食われ、一体誰なのかもわからず、其れがお前達の末路で有る。」
「小隊長、銃と弾倉帯の回収は終わりました。」
「そうですか、では我々も戻りましょうか、重いでしょうから、私も一丁持ちますよ。」
兵士の中には三丁、四丁と銃を持ち、弾倉帯も五本近く持っており、小隊長達も銃と弾倉帯を持ち大岩へと引き上げて行く、官軍の一個中隊は全滅し、勿論、駐屯地に行く事も出来ず、だが駐屯地からは離れており官軍と連合国軍との戦は知る者も居ない。
そして、この様にして一回目の搬送は無事終わるので有る。