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闇の帝国    作者: 大和 武
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 第 70 話。何事も起きずに、だが。

「分隊は付近の五里以内の偵察に向かって下さい。」


 二個分隊の兵士は官軍の軍服から擬装用に着替え、早くも草木を身体中に付け擬装を完了し、そ

して、早くも草地に消えて行った。


「中隊長さん、やっぱり官軍兵が潜んで要るのでしょうか。」


「正直申しまして潜んでいては欲しくないんですが、これだけは私自身も確信が無いのです。」


「あっ、あれは若しや。」


 駐屯地で歩哨中の兵士が見たものは官軍兵に護衛された数台の大型の馬車で有る。


「中隊長に伝えてくれ、官軍兵が。」


 と、言った時は別に兵士が飛んで行った.


「飯田殿、どうやらあれが総司令の申されました官軍の駐屯地の様ですねぇ~。」


「承知しました、上田殿、森田殿、到着しましたよ。」


 と、飯田が振り向き言った。


「飯田様、最初は私が話しますので。」


「ではお任せします。」


 中隊長は馬を降り、歩哨兵の前に行き何やら伝えたが飯田達には何も聞こえないが暫くすると中

隊長が飛んで来て歩哨兵がなにかを言った、すると。


「では皆様方は軍令部の方々で御座いますか。」


「あちらの方々がその人達で軍令部から書状を持参されておられますので、基地の司令官殿に会わ

せて頂きたいのです。」


「左様で御座いますか、ではそのままお進み下さい。」


 中隊長は礼をし戻って来た。


「飯田様、そのままお進み下さいとの事で駐屯地の司令官殿も直ぐ来られると思います。」


「中隊長さんは何かを申されたのですか。」


「私は何も申してはおりませんが、歩哨兵が勘違いされましてね、勝手に軍令部の、いや政府の役

人だと思ってるんですよ。」


「左様で御座いますか、では皆さんも参りましょうか。」


 飯田が後方に合図し馬車部隊は駐屯地へと入って行く。


「其れにしてもあの馬車は物凄くでかいなぁ~。」


「わぁ~本当だ、オレも初めて見たよ、12頭立ての馬車なんて。」


「でもあの人達は何を着てるんだろう、わしも初めて見たよ。」


「其れに頭の毛もなんだか見た事も無いよ。」


 駐屯地の兵士達も飯田達の姿を見て驚いて要る。


「全体、止まれ。」


 と、中隊長の合図で駐屯地の広場と言うのか倉庫群の前に止まり、飯田殿が馬車から降りて来た。


「飯田様で御座いますか、私はこの駐屯地で一応隊長の任に就いております上野と申します。」


「左様で御座いますか、私が飯田で、こちらが上田、そして、隣が森田と申します。」


「其れでは先程、歩哨兵から聞きましたが政府の方々で軍令部からの書状をお持ちだとか。」


「はい、これが海軍省と陸軍省ので、ですが今回は海軍省から命令を受けまして陸蒸気の資材と、その他の資材が届いて要ると聞きましたので受け取りに参りました。」


「えっ、ですが、今回届きました資材は。」


「勿論、全て承知致しておりまして、其れよりも司令本部から検閲官は参られて居られませんで

しょうか。」


「司令本部から検閲官ですか、中隊長は何か聞いていないのか。」


「私は何も伺ってはおりませんが、司令本部から検閲官が来られるの御座いますか。」


 上野も中隊長も内心穏やかでは無く、だが話は違った。


「左様で御座いますか、其れならばお話しをさせて頂きますが、今からお話しをする内容は全て内


緒にして頂きたいので如何でしょうか。」


 源三郎が若しもの事を考え、中隊長も兵士達も前回とは別の中隊に変更したが、其れも全て解決

したと飯田は上野と中隊長に全てを話した。


「左様で御座い御座いましたか、実は今申されました資材が何故政府の、いや其れよりも軍令部が

知られたのかが不思議でして、其れに資材も簡単に渡す事も出来ないと思いましてどの様に説明す

れば良いのか、私は内心穏やかでは無かったのです。

 ですが今のお話しを伺いましてほっとしたのも間違いは御座いません。」


 上野は飯田の説明を聞くまではどの様な説明されても資材を渡せないと思ったが、其れも源三郎の指示だと聞かされ安堵したので有る。


「あ~本当に良かったです、私は内心穏やかでは無かったので、ですが今お話しを伺いまして安堵致しました。」


 中隊長も飯田の話を聞くまでは一体どの様になるのか、其れよりも全ての資材を持って行かれる

と連合国から引き取りに来た時は一体どの様な言い訳をすれば良いのだ考えていた。


「上野様にも中隊長さんにも大変なご迷惑をお掛け致しまして、誠に申し訳御座いません。」


「いいえ、決してその様な、ですが一瞬どの様な言い訳をしてお断りすれば良いのか、其れだけを

考えておりましたが、飯田様のお話しを伺いましてやっと安心したのも本当で御座います。」


 上野も中隊長も飯田の説明を聞くまでは源三郎にはどの様な釈明をすれば納得して貰えるのか其

れだけを考えていたが飯田の説明を聞き、全てが吹っ飛んだ。


「飯田様、これでやっとお土産を渡す事が出来ますねぇ~。」


「そうでした、上野様、実は源三郎様から吉三組と他の人達にもと連合国で作りましたお漬物と梅

干しを持参しております。」


「其れは大変有難い、実は我が駐屯地の兵士達も殆どが町民なので漬物は一番喜ぶのです。」


「では我々が降ろしますが、中隊長さん、何処に置けば宜しいでしょうか。」


「其れならば兵士達にも手伝って貰いますので、当番さんを呼びますので、少しお待ち下さい。」


 中隊長は部屋を出て行き。


「飯田様は持ち帰る資材をご存知なのですか。」


「いいえ、私は何も伺っておりませんが、技師長が管と源三郎様は陸蒸気を造る為に必要な資材や

機械だけだと、其れと鉄の板とは伺いましたが、其れ以上詳しくは。」


 上野はやはりかと思った、源三郎は何時も何に関する事でも詳しくは説明せず、今回の受け取り

でも同じで有ると。


「やはりで御座いましたか、私も司令長官殿の事ですから品目や数量の事など詳しくは説明されて

はおられないと思いまして、技師長と司令長官殿からご依頼頂きました品目と、其れに関する品目

なども控えておりましたので大丈夫で御座います。」


「私も其れならば大変有難く存じます。」


 と、飯田に上田、そして、森田も改めて頭を下げ、やはりだ源三郎のやり方は駐屯地以外でも同

じだと上野は思った。


「如何でしょうか、積み込みは少し休みを取られてからでも宜しいのでは御座いませんか。」


「私は宜しいのですが、吾助さん達には休みを取って頂いてもと思っております。」


「其れではと申しましても、此処には食堂が有るだけなのですが其れでも宜しいでしょうか。」


「私達は其れで十分でして、その時を利用して吾助さん達と話をさせて貰いますので、実を申しますと、我ら三名は機械の事に関しましては全く分かりませんでして、吾助さん達が居られなければ何をどの様にすれば良いのかも全くわからないのです。」


「其れではこの目録は吾助さんにお渡ししまして積み荷を調べて頂き、その後に積み込みされては

如何でしょうか。」


「私達もその様にさせて頂きたいと思います。」


「では中隊長さん、皆さんを案内して、そうだこの目録も渡しておきますので。」


「上野様、中隊長さん、誠に有難う御座います。」


 飯田達は中隊長の案内で駐屯地内に有る食堂へと向かった。


「其れにしても源三郎様の取り越し苦労で良かったですねぇ~。」


「私も森田殿の申される通りですが、あの時は仕方無かったと思いますよ、若しもですよ、若しもこの地に来た時に官軍の司令本部から調査に来られ、その時に我が連合国を知られる様な事にでもなれば、其れこそ取返しの付かない事態になるやも知れませんからねぇ~。」


「私は正直申しまして、あの時は源三郎様が考えられた様な事などは全く考え付く事も無かったのですから改めて源三郎様と言うお方には敬服致しますよ。」


「確かに飯田殿の申される通りだと思います。

 と、言う事ですよ、若しもあの時に源三郎様が居られず、我々が最初の計画通り来たと、その時

には既に遅く、後の祭りだと言う事になるのか。」


 飯田も森田も改めて源三郎は先々の事までも考えて要るのだと、確かに今回は何事も無く終わる

で有ろう、だが少しの間違いで大変な事態になったのかも知れず、其れは何も飯田達に責任を取ら

せると言うのでは無く、あの時は源三郎が行ったのだから全てが安全だと思い違いしたのでは無い

のだろうか、だがその中でも源三郎だけが冷静さを失う事も無かったと言うのか、其れともまだ官

軍は信用出来ず、其れが源三郎で有り、何事に置いても深く考える、だが飯田達は別として工藤や

吉田は上野と言う人物は官軍時代の上官で有り信用していると、其れよりも飯田達は工藤が言う話

を信用し、何も考えずにと言えば飯田達には悪いが、やはり其処まで考えていなかったと言うのが

本当なにも知れない。


「飯田様、此処ならば全員で使用する食堂ですが宜しいでしょうか。」


「勿論でして、私達は今から吾助さん達と話し合いに入りますので。」


「其れでは何か御用が御座いましたらお呼び下さい。」


 中隊長は其れだけを言って戻って行った。


「社長様、目録を見てるんですが、陸蒸気用と数種類の鉄板、其れと関連する道具類に、これは鉄板に使用するのでしょうか大量の鋲が有ります。」


「では陸蒸気関連の資材は技師長で、鉄板はやはり源三郎様ですかねぇ~。」


「其れとさっき倉庫の前に陸蒸気の巨釜を乗せたままの馬車が有りました。」


「巨釜を乗せた馬車ですか、と言う事は巨釜は重く降ろす事では出来ないと思いますが、吾助さん

はどの様に思われますか。」


「私は社長様の言われる通りだと思います。

 其れでさっきから考えてたんですけど巨釜をこちらの大馬車に乗せ換えたいんですけど。」


「吾助さんは全部持って帰られるつもりなんですか。」


「いいえ、二台分だけで、ですが管と其れに関係する部材だけは全部持って帰りたいんです。」


「分かりました、では陸蒸気は二台分だけに、管などの部材は全部持って帰ります。」


「社長様、鉄板はどうされますか。」


「鉄板ですか、う~ん。」


 飯田は考え込んでしまった,源三郎が依頼した鉄板ならば全て持ち帰るべきなのか、だが駐屯地

でも吉三組が使用するかも知れないと思うだけで簡単に全部持って帰りますと言えない。


「社長様、私で良ければ聞いても宜しいですが。」


 吾助が聞きに行くと言う。


「吾助さんが聞いて頂けるのですか。」


「社長様方には本当の失礼かと思うんですが、社長様が行かれますと吉三組さん達も何か分かりま

せんが、違和感を感じられるんじゃないかと、これは私が勝手に思ってますので、本当に申し訳有

りません。」


 やはり吾助はわかるのだろうか、飯田達には元が侍だと言う雰囲気と言うのか、気持ちとでも言

うのかが漂って要るのかも知れないと思うのは吾助だけなのかも、その点、吾助は元農民で有り、

吉三達も元々が農民で有り、話し合いは以外と簡単に終わるのではないかと飯田は考えた。


「上田殿、森田殿、此処は一番吾助さん達にお願いしましょう、我々が参りますれば、やはり言葉

使いも固くなりますので。」


「私も大賛成ですよ、吾助さんの申される通りで我々三名は元が侍ですから幾ら服装を変えたとし

ても雰囲気や物腰、其れに何と言っても言葉使いだけは簡単に直せない、これが我々三名に取りま

しては最大の欠点だと思いますので、私はむしろ有難いと思っております。」


「私は自分自身が情けなく思いますよ、本来ならば我らが行くべきなのでしょうが、我々が行き話

をする事で返って吉三組さん達に不信感を与える事になるやも知れませんからねぇ~。」


 例え源三郎が依頼した鉄板で有ろうと、駐屯地に派遣された吉三達は知る由も無く、反対に自分

達が必要だと言う思いの方が強いだろう、其れを飯田達が全ての鉄板を持って帰るとなれば、やは

り衝突が起きる可能性が有るだろう、其れを吾助が行く事で円満に解決出来るだろう、此処は吾助

に任せる方が得策で有ると、飯田達は快く承諾したので有る。


「吾助さんには誠に申し訳御座いませんが吉三組さん達との話し合いの全てをお任せしますので、

何卒宜しくお願い致します。」


 飯田、上田、森田の三名は吾助に頭を下げた。


「社長様、私は其処まで深く考えてはおりませんので、何故か分かりませんが、吉三組さんとの話

は私が行けば上手く纏まる様な気がしただけなんです。」


「そろそろ陽が西の空に掛かりますので積み込みは明日の朝から始めては如何でしょうか。」


「えっ、もうその様な刻限になったののですか、私は全く知りませんでした。」


 駐屯地に着いた時は陽が西に向いていたが、彼らは全く考えていなかった。


「私も上田殿の提案に賛成で御座いますよ、まぁ~今更慌てたところで同じですからねぇ~。」


「私はその前に各資材が置かれている所だけでも見て置きたいのですが。」


「私も森田殿の申されます通りで、其れにまだ明るいので明日の朝には少しでも早く取り掛かれる

様にと思いますが。」


「社長様、私達も一緒にさせて頂き、明日中には積み込みが終わりましら明後日の朝にもで出発出

来るのではないかと思います。」


「吾助さんの申される通りだと思いますので、吾助さんには申し訳有りませんが、皆さんと一緒に

お願い出来るでしょうか。」


「では私からみんなに知らせて来ますので。」


 と、吾助は部屋を出て仲間の所へと向かい、飯田達も倉庫へと向かい、暫くして全員が揃った。


「なぁ~吾助さん、あの巨釜を積んだ馬車だけど多分四頭立てだと思うんだ、出来る事なら自分達

が乗って来た大型の馬車に積み込みたいんだけどなぁ~。」


「そうだなぁ~一平さんの言う通りだと思うんだ、あの馬車でもいいんだけど、四頭立てだと下手

すると馬がへばって動けなくなる事を考えれば積み替えた方がいいと思うんだ。」


 彼らは陸蒸気の巨釜の重さは知らないが、今目の前に有る巨釜は全て鉄で造られており、四頭立

ての馬車では危険が生じると考えたので有る。


「吾助さん、櫓を組んで巨釜を吊り上げ馬車だけを入れ替える、これが一番だと思うんだ。」


「分かりました、私は他にも聞く事が有りますので今から吉三組さんの所へ行ってきます。」


「其れと下にかます木と縄も要ると思いますのでお願いします。」


「じゃ~誰か一緒に行って下さいませんか、私も話をしたいお人が居られますので。」


 吾助と数人が吉三組の所へと向かった。


「参謀長殿、飯田様と一緒に来られた人達が何かを始めましたが。」


「う~ん、だが一体何を始めるんだ、吉三組にしても今日来た人達も動きが早いなぁ~。」


「先程と申しましても一時半以上前から店の人達と話し合いをされておられましたが、其れにしても吉三組さんと言い、今日来られた人達と言い行動開始まではしっかりと話し合われ、其れが終われば早いですねぇ~。」


「確か以前源三郎殿が申されてましたが何も知らない人達から見れば、一体何の為に事前協議をし

て要るんだと、だが連合国の人達はと言うと、事前協議よりも現場に入ってからの協議が重要だと

考え、事前協議よりも現場での協議を重要視して要るんだと、だが今度ばかりは事情が違い、事前

協議が長く掛かったと思うんだ。」


「私もその様に思いますが、問題は巨釜を積んだ馬車ですがあれでは四頭立てでしたが、乗って来

られた馬車は大型で八頭立てでしたので、多分乗せ換えられると思いますが。」


「まぁ~我々は何も出来ないが協力できるところは協力して行く事だ。」


 吾助は手配を終わり戻って来た。


「みんな、管なんですが、長い物と短い物をわけ、五本で一括りとして下さい。」


 その後も吾助が先頭になり、明日の積み込み作業が早く終わるようにと準備を始め、二時以上も

掛かり、やがて陽が山の向こうに沈む頃終わり、明日の朝から積み込みを始める事になるので有る。



    


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