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闇の帝国    作者: 大和 武
141/288

第 66 話。 早く欲しいんだ。

「あの~、正太さんは。」


 大工の親方が突然北の草地近くで粘土を搬出して要る現場にやって来た。


「正太ですか、ちょっと待って下さいね、直ぐに呼んで来ますんで。」


「わしも一度洞窟の中を拝見させて頂きたいんですが宜しいでしょうか。」


 親方は野洲の洞窟ならば知っており、だが山賀の洞窟は知らないも同然で有る。


「じゃ~オレと一緒に行きましょうか。」


 親方と別の仲間が一緒に洞窟の中に入って行くが。


「う~んこれは物凄いですが、大きさですが。」


「え~っと、確か幅が五間で高さが三間だと思うんですが。」


 親方は入り口から積み上げている連岩をじっと見て要る。


「其れにしても連岩が少し小さい様な気がするんですがねぇ~。」


「やっぱりですか、親方さんも同じですか、実はオレ達も小さいと思ってるんで、持ち運びは楽な

んですけどでも積み上げが大変なんですよ。」


 やはりそうだったのか、これだけ大きな洞窟の中の内側に連岩を積み上げて行くと言うのは大変

な重労働で、更に小さな連岩ならば尚更で有る。


「連岩の作りを変えてもいいんだったたら一度窯元さんに相談してはどうでしょうかねぇ~。」


 その時、丁度 正太と出会った。


「親方、どうしたんですか、何か有ったんですか。」


「いや~別にこれって用事も無いんですがね、今大きな機械を入れる建物の床に連岩を使いたいと

思いましてね、其れで一度くらいは洞窟の中を見るのも大事かなぁ~って思ったんですが、其れに

しても洞窟の中に使われてる連岩ですが少し小さいと思うんですが。」


「やっぱり親方も同じですか、じゃ~どれくらいの大きさにすればいいんでしょうか。」


「正太さん達が此処で粘土を搬出してるんだったら下の部分って言いますか、床って言いますかそ

の部分を補強しなければ直ぐに連岩が崩れますよ。」


「えっ、そんなにも危ない作り何ですか。」


「まぁ~今直ぐにとは思いませんがね、でも今からでも遅くはないんで連岩の下に親指くらいの小

石を徹底的に押し込むんですよ。」


「じゃ~小石だけでいいんですか。」


「まぁ~一番いいのが土と小石を混ぜるんですがね。」


「分かりました、今からでもやりますんで。」


 正太は洞窟の先端部分で起きた落盤事故で十数名の死者を出した事故を思い出し、若しも此処で落盤事故が起きれば其れこそ大変な事態になると思った。


「其れとですが、わしが窯元さんと相談して別の連岩の型枠を造りますから、これからはその連岩

を使って貰えますか。」


「じゃ~次の連岩が出来上がるまでには補強を終わる様にしますんでお願い出来ますか。」


 その時、若様がやって来た。


「親方さん、何か有ったんですか。」


「いいえ、別に、若様こそどうされたんですか。」


「私も親方が洞窟に正太さんを訪ねて来られたって聞きましたので。」


 親方が今頃正太を訪ねるというのは、やはり何か有ったと若様は考えたので有る。


「実は機織り機を設置する建物なんですが、松川で粘土を搬出された場所ですが土地が柔らかいんで基礎を作るだけでも物凄く大変でして、でも下手な基礎でしたら機織り機の重みで、いや其れよりもげんたが建物を建てるのは待ってくれって言ってきたんですよ。」


「技師長がですか、でも何故なんですかねぇ~。」


 若様も建物を建設は既に始まって要るものだと思っていたが、何故にげんたが建設開始を止めた

のがわからなかった。


「其れなんですがね、げんたは吾助さん達から大きな動力源が必要だって、でも動力源をどんな物

にするのか、其れがまだ決まって無いって、其れでわしらも加工だけは進めてるんです。


 其れとなんですが、あんな大きな馬車に機織り機が二台しか乗せて無いって事は機織り機を動かせるのほもっと大変だって言うんですよ。」


「じゃ~水車では無理なんですか。」


「わしらも水車では動くとは思って無かったんですがね、吾助さんの話だったら機織り機は何台も

連ねるんだって、其れだったら水車の力じゃ絶対に無理だってわかったんですよ。」


「水車じゃ使い物にはならないと言うので有れば、一体どの様な方法が有るんでしょうか。」


 今の山賀に有るのは空堀に造られた鉄の塊を作り出せる大きな炉の様なものは有るが、其れに風

を送るのは水車を利用し歯車を使い、風車型を回すだけで大きな動力源では無い。


「其れが全然わからないんですよ、わしらもげんたがどんな機械を作るのか、其れも出来るだけ早

く作って欲しいんですがね、でも今は待つしか何も出来ないんです。」


 やはり親方も早く決めて欲しいと願って要るんだと若様は思うが、直接話を聞いても良いのだが、

果たしてげんたは答えを出す事が出来るのか、いや其れよりも若しも理解出来ない様な機械を作り

かも知れない。


「若様、何れにしてもげんたが作る機械が完成するまでは何も出来ないって話なんですよ。」


「まぁ~其れも仕方有りませんねぇ~、技師長がどの様な機械を作るのかは今は待つしか無いので

すからねぇ~。」


 その頃、浜に戻って来たげんたは腕組みし何かを考えており、机の上に有る白い紙には何も書か

れておらず、果たして何を作るのか今は誰にもわからない。


「あの~技師長は居られますか。」


 と、飯田、上田、森田、そして、吾助達店の職人数人を含め。げんたに会いにやって来た。


「げんたでしたら隣の作業場に居りますからどうぞ。」


「ではお邪魔します。」


 と、横に有る作業場に入った。


「技師長さん、お忙しいところ誠に申し訳御座いません。」


「えっ、一体どうしたんですか。」


「其れが機織り機を入れる建物もですが、機械を動かす動力源の事でお伺いしたいんですが。」


 飯田達は野洲に戻って着てから源三郎や他の人達と技師長で有るげんたとのやり取りを何度も聞

いており、下手な話は出来ないと思って要る。


「動力源か、オレも今その方法を考えてるんだ、まぁ~もう少し待って欲しいんだ、有る物が手に

入ったらオレの考えた機械が作れると思うんだ。」


「有る物って、でも一体何が手に入れば技師長の考えておられる機械を作れるんですか。」


 飯田達はげんたが何を待って要るのかもわからないのだが。


「鉄の筒なんだ。」


「鉄の筒って、一体何を作られるんですか。」


「水車だよ。」


「水車って、でも水車を回すって、でも水車の力じゃ機織り機は動きませんが。」


「其れはオレもわかってるんだ、まぁ~簡単に言うとね蒸気で水車を回すんだ。」


「蒸気で水車を回すって、じゃ~陸蒸気を造られるんですか。」


「オレは陸蒸気は造らないんだ、まぁ~今説明してもわからないと思うんだ。」


 飯田達もだが吾助達も蒸気で水車を回すと聞き、陸蒸気を造るものと思ったが陸蒸気を造るので

は無いと、では一体何を造るのか、げんたは今説明しても多分理解出来ないだろうと思って要る。


「先程申されました鉄の筒ですが、私達が受け取りに参っても宜しいのですが。」


「でもまだ届いたって連絡が、あっそうか連絡なんか来ないんだ、う~ん参ったなぁ~。」


「技師長、何処まで行けば宜しいんですか。」


「其れが、山賀の北の向こう側に有る官軍の軍港なんだ。」


「官軍の軍港って、では其処に届いて要るのですか。」


「今は其れがわからないんだ。」


 げんたは鉄の筒が何時届くのかも知らないのか、実は上野も何処に知らせれば良いのかもわから

ない、いや源三郎も連合国の位置は知らせていなかった。


「其れで有れば私達が行っても宜しいですが。」


 飯田は鉄の筒を受け取りに行っても良いと言うが、果たして、げんたが望んでいる鉄の筒が届い

て要るのか、何れにしても向こう側の駐屯地に行かなければわからない。


「だけど若しも届いていなかったら無駄足になるんだぜ。」


「技師長、今突然ですが閃いたのですが。」


「飯田殿は一体何を閃かれたのですか。」


 森田も上田も飯田が東京に行ってからは人間が変わったと、野洲の時代では全く無かったが、菊池の山を越えてからというものは何事に置いても積極的になり、何か大きな問題が起きた時には何

かを突然閃いたと言う、今回も其れと同じなのかも知れない。


「森田殿、我々の恰好ですよ。」


「えっ、恰好と申されますのは我々の着ております洋服で御座いますか。」


「ええ、正しくその通りでしてね、あの時も我々の姿を見られた工場長が勝手な解釈で我々を新政

府の役人だと勘違いされたと思うのです。」


「まぁ~確かにあの時も我々は何も申しておりませんが工場長もですが、佐野さんや掛川さんも新

政府の役人だと勘違いされたと思うのです。」


「上田殿、今回もその方法で。」


「飯田殿は余りにも急ぎすぎでは御座いませんか。」


「そうですよ、私も飯田殿は一体何を急がれておられるのかがわからないのです。」


 上田も森田も飯田が急ぐ理由がわからないと言うが。


「私は一日でも早く工場が完成し一刻も早く生地を作り、皆さんの洋服を作りたいのです。」


「勿論ですよ、私も同じですが、昔より急がば回れとか、急いては事を仕損じると申しますよ、其

れに技師長にも段取りと言うものが有ると思うのですが。」


「確かに上田殿の申される通りだと思いますよ、私も早く洋服を作り皆さんに着て頂きたい、その

気持ちは誰にも負けませんよ。」


 飯田は何も言わず二人の話を聞き、其れでも暫く考え。


「上田殿、森田殿、私は又勇み足をし、お二人には大変ご迷惑をお掛けし申し訳御座いません。」


「ねぇ~、飯田さんが考えた方法ってどんな方法なんですか、オレにもわかるように話して欲しい

んですけど。」


「ですが、今も上田殿と森田殿が申された通りでして、私は余りにも急ぐ余り失敗した時の事を全

く考えていなかったのです。」


 げんたは飯田が考えた方法を聞きたいと、だが若しも上野に見抜かれた時の事も考えなければな

らず、飯田は少し引いた様にもげんたは感じている。


「技師長は急いでおられるのですか。」


「まぁ~ねぇ~、急いでって言えば急いでるんだけど、でもまだ図面も出来てないんだ。」


「ですが、頭の中では出来上がっておられるのでは御座いませんか。」


「ああ、其れだったらとっくに出来てるよ。」


「源三郎様からもお伺いしましたが、技師長は潜水船を造られた時には図面も無しでされたとか、

其れならば今度も同じ様に考えられては如何でしょうか。」


 上田は潜水船の時と同じ方法で造れと言うが。


「だけど、オレは陸蒸気の大きさも知らないんだ。」


「其れならば我々も知っておりますのでお手伝いさせて頂きますので。」


 森田は手伝うと言う。


「さっきも言ってた方法なんですが、今度も上手く行くと思うんですか。」


「我々には陸軍省と海軍省のお墨付きが有りますので大丈夫ですよ。」


「でも、そのお墨付きって巻き糸を受け取る為に書いて貰ったんじゃないんですか。」


「勿論でして、その通りですが内容と申しますのはこの書状を持参した者が必要とする品は全て出

せと書いて有るだけで品名は何も書いておりませんよ。」


「えっ、其れって本当なんですか。」


「ええ、間違いは有りませんよ、私は何度も読み返しましたのでまぁ~その時は余りにも簡単な内

容で、ですが私達が言ったのは巻き糸が大量に必要なので、何とかお願いしますって、ただそれだ

けでして他には何も申してはおりません。


 ですが今度は技師長が必要だと思われる以外は品を見てから追加出来ればと思うんです。」


「じゃ~巻き糸だけではまだ足りないんですか。」


「全て揃っておりますが、私は同じ行くので有れば吾助さん達数人も一緒にもと考えてるんです。


 吾助さん達は機械の事は詳しいので少しでもお役に立てると思うのです。」


 吾助達は農民ながらも文字を覚え、機織り機の組み立てから今では修理も出来る様になった。


「そうか、其れだったらオレも大助かりだなぁ~。」


 げんたも品物を早く見たいのは間違いは無い。


「後は我々にお任せ頂ければ宜しいかと思いますが。」


 早くも飯田はその気になって要る。


「飯田殿が此処まで乗り気になっておられるのですから、きっと大丈夫ですよ。」


「分かったよ、じゃ~吉田さんには護衛をして貰ってと。」


 と、やっとげんたも決心が付いたのか兵隊の護衛を頼むのだと。


「ですが問題は何台分の品が有るかと言う事だと思いますが。」


「あんちゃんは数台分は要るって言ってたよ。」


「数台分ですか、ですが数台分と申されましてもねぇ~。」


「まぁ~オレだったら五台分くらいかなぁ~って思ってるんだ、でもあんちゃんは陸蒸気の構造を

知る為にも全部揃えてくれって。」


 源三郎も陸蒸気の実物を見たいのだ、だがげんたは陸蒸気は造らないと言うが、やはり造りたいとは思って要るはずだ。


「技師長は陸蒸気は造らないと申されましたが勉学の為にも一台くらいは造っておられては如何で

しょうか。」


「そうだなぁ~、まぁ~オレも勉強の為にも一台くらいは組み立てて見るか。」


 げんたもその気になって来た。


「正しくその通りですよ、私は今後の為にも一台くらいは組み立てる必要が有ると思います。」


 更に上田がげんたに組み立てろと追い打ちを掛けた。


「では馬車ですが大型にするとしましょうか。」


「そうですねぇ~、一応五台分だとして二十台は必要かと思います。」


「えっ、あんな大きな馬車が二十台も要るんですか。」


「勿論ですよ、細い管が入る大きな筒ですが、長さが三間以上で幅も一間は有るんですよ、其れに

他の品物も合わせますと、私は二十台では少ないと思うのです。」


 大型の馬車が二十台以上も必要だとなれば大変なことになる、若しも往復の時に官軍や幕府の残

党、更に野盗が襲って来ないとも限らない。


「陸蒸気は全て鉄で造られておりますので、私は想像以上の重量が有ると思います。」


 飯田は重さに関しては巻き糸以上だと考えて要る。


「じゃ~今からあんちゃんに会って頼んで見ようよ。」


 げんたと飯田達は源三郎に会う為お城へと向かった。


「総司令、以前ですが陸蒸気を造る為の品物をお頼みされたと思うのですが、何時頃向こう側に参

られるのでしょうか。」


「そうでしたねぇ~、私はすっかり忘れておりましたよ。」


 源三郎は上野に頼んだ陸蒸気の部品と言うのか資材はあの時には何時頃に成れば届くのかも聞い

ておらず、果たして向こう側の駐屯地に届いて要るのかもわからない。


「其れよりも品物の大きさや重さが全く分かりませんので受け取りに行くにしても何台の馬車が必

要なのかもわからないのです。」


「では如何でしょうか、私が向こう側に参りまして調べたいと思うのですが。」


 鈴木は駐屯地に向かうと言うのだが。


「そうですねぇ~、品物が届かなければ機織り機を設置する建物も建てる事が出来ないですから

ねぇ~。」


「私が思うには飯田様達は相当いらいらとされて要ると思うのです。」


「その様に申されますと、私は何と申し開きすれば宜しいのか考えなければなりませんねぇ~。」


「鈴木殿は正かお一人で向かわれるおつもりでは。」


 上田も行きたいと思っており、源三郎も一人よりも良いと考えて要る。


「私だけならば、山賀の北側から入るのも簡単だと思っておりますので。」


「いいえ、其れは駄目ですよ、総司令、私も一緒に参りたいと思います。」


「左様ですか、ではお二人で参って頂けますか、其れで資材が届いて要るならば直ぐに戻って頂き

たいのです。」


 源三郎も今頃一番苛立って要るのは飯田達を含めた店の人達だろうと、其れだけは理解出来る。


「あんちゃんは。」


「今ならば居られますよ。」


 げんたと飯田達がやって来た。


「あんちゃん。」


「げんた、久し振りですねぇ~、其れに今日は飯田様達もご一緒だと言う事はやはり陸蒸気の資材

の事ですか。」


「あんちゃんは何でわかるんだ、あっそうか飯田さん達と一緒にに来たからか、やっぱりなぁ~、

そうだったら何時になったら向こう側に行くんだよ、オレも早く造りに掛かりたいんだ。」


 源三郎の思った通りで、一番焦って要るのはげんたで有る。


「実は今もねその話をしておりましてね、数日の内に鈴木様と上田様に行って頂きまして調べて下

しとお願いしていたのです。」


「あんちゃんもそんなまどろこっしい事なんかしないで明日でも行けるんだからな、オレも行くぜ、其れに吾助さん達も数人一緒に行って貰うんだ。」


 げんたは明日にでも行くんだと決めており、源三郎は少し慌てさせた。


「げんたはそんなにも早く行く必要が有るのですか。」


「そんなのは当たり前の話だよ、だって先に動力源を何処に決めるのか、其れがわからないから親

方も。」


 げんたは動力源の設置場所を決められず工事が全く進まないと言う。


「では一体何台の馬車が必要なのか考えて要るのですか。」


「オレはなぁ~、二十台から二十五台くらいは要ると思ってるんだ、其れも大型の馬車が、其れと護衛の兵隊さんも。」


「わかりましたよ、大型の馬車ならば八頭立てになると思いますが、途中で馬も交代させなければ

ならないと思いますよ、其れと護衛の兵隊さんですが最低でも二個中隊が必要で全員が馬を必要としますからね、まぁ~其れだけでも四百頭から五百頭以上の馬が必要になるのですよ。」


「成程なぁ~、オレはやっぱり大馬鹿者だなぁ~、そんな事までも考えて無かったよ。」


「私はねぇ~、げんたが馬鹿だと思っておりませんよ、まぁ~簡単に計算しても六百頭の馬が必要

になるのですから、若しもその様な話になれば集めるだけでも大変でしてね、私もげんたや飯田様

に吾助さん達のお気持ちはよ~く分かりますが、その前に準備が必要ですから明日直ぐには無理だと思います。」


「そうかオレはもっと簡単に考えてたんだ、あんちゃん、ごめんなさい。」


 げんたは源三郎や鈴木と上田に頭を下げた。


「鈴木様、吉田さんを呼んで下さい、其れと上田様は各国に書状を認めて頂くのですが、今何頭確

保して要るのかを大至急知らせて頂きたいと。」


 鈴木は部屋を飛び出し、上田は部屋の後ろで書状を認め始めた。


「総司令、実は私達が技師長の家に押し掛け何時になれば建物が完成するんですかと問い詰めてま

したので何も技師長が悪いのでは御座いません。」


 源三郎も飯田達の気持ちは痛い程理解しており、だが今は準備を急ぐ必要が有ると思って要る。


「飯田様に上田様、森田様、一番悪いのは私でして、先程も鈴木様に申されるまで忘れておりまし

て、誠に申し訳御座いません。」


 と、源三郎は深々と頭を下げた。


「その様な事は御座いません、実を申しますと、私達は技師長よりもっと簡単に考えておりまして、

技師長には大変ご迷惑をお掛けしたと思っております。


 技師長、誠に申し訳御座いません。」


 飯田ら三名がげんたに頭を下げた。


「そんな事は無いんですよ、本当はオレがもっと早く気付いてれば良かったんだ、だけど。」


 げんたは言葉を止めた、今のげんたは他にも多くの問題を解決しなければならず、どれが最も急

ぐのかもわからない時も有り、だがげんたは言い訳などしない。


「総司令が大至急だとの事ですが。」


 と、吉田が息を切らせ飛び込んで来た。


「吉田さんにも大変ご迷惑は話なのですが。」


 と、今までの経緯を話し。


「以上が向こう側の駐屯地でげんたと私がお願いしました資材が、多分ですが届いて要ると思うのです。

 其れでその品物を数日中にも受け取りに行かなければならないのですが、其れも大型の馬車が二十台以上が必要で、更に兵隊さんにも護衛をお願いしなければならないのですが。」


「総司令、少しお待ち下さい、今簡単に計算しても千二百頭もの馬が必要で御座いますが、其れに

若しも行き帰りの時に別の官軍か幕府の残党、更に野盗に襲われますと我々だけでは防ぎ様が御座

いません。」


「やはりですか、では吉田さんならばどの様に考えられますか。」


 この様な時には軍人と言うのは計算が早く、げんたも飯田達は何も言わず、ただ聞いて要るだけ、


その後、吉田は暫く考え。


「私ならば一回で使うのは五台の馬車で向かいます。」


 そして、その後、吉田が詳しく説明すると。


「其れならば馬の負担も少ないようですねぇ~。」


「私も陸蒸気がどれ程の重量が有るのかも分かりませんが、絶対に一度で運ぶ必要が無いので有れ

ば馬もですが、皆様方の負担も少なるなのでは御座いませんか。」


「技師長、其れに飯田様もこれは吉田さんに作戦を練って頂きましょう、其れならば無事に戻って

来れると思いますよ。」


「オレは吉田さんに任せるよ、だけどオレも行くからな。」


「私もで、全てお任せ致しますので何卒宜しくお願い致します。」


 改めて飯田達は吉田に頭を下げた。


「技師長、飯田様、森田様、上田様、自分は全員の安全を最優先に考えましたので余計な事を申し

上げ申し訳御座いません。」


「では決まりましたね、吉田さんには大変申し訳有りませんが、私も一体何台分を手配されたのか

も分かりませんので。」


「自分も其れは十分に考えておりまして、向こう側に着けば全てわかると思います。」


「技師長も飯田様達もこれで宜しいでしょうか、吉田さんに作戦を練って頂きまして、後日連絡が

頂けると思いますので、其れまでは少し辛抱して頂きたいのです。」


「総司令、私は隊に戻り作戦を練りますので失礼します。」


 さぁ~吉田が作戦を練ると言う、げんたも飯田達は何も反対する事も無いと考えており、そして、

吉田は数日間懸けて作戦を練る事にした。



     

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