第 65 話。英才教育の開始か。
話は少し戻り。
「輝之進、宜しいですか。」
「母上様、何様で御座いますか。」
「輝之進に少し話が有りますが、その前に輝之進は父上様のお役目をご存知ですか。」
「はい、父上は連合国の総司令長官と申される重責のお役目に就いておられると伺っております。
ですが私は連合国とか総司令長官とお伺いしても全く理解出来ないので御座います。」
確かに輝之進が言うのも最もな話でも有る。
「では祖父様のお役目はご存知ですか。」
「はい、勿論で野洲の筆頭ご家老様で御座います。」
「良くご存じで、母も安心致しました。」
「母上様、ですが御祖父様は野洲のご家老様で父上様は連合国の総司令長官とお伺いしましても私
は何が違うのかが全くわからないです。」
「では母がお話ししますね、御祖父様は野洲のご家老様で間違いは有りません。
そして、連合国と申しますのは野洲の両隣に有る菊池と上田、そして、母が生まれました松川、
更に叔父上様が居られる山賀と申します国、この五つの国を統合されたのが父上様で最高司令長官、
又は総司令長官と呼ばれて要るのです。」
「其れでは父上様は御祖父様よりもお偉いのですか。」
正しく輝之進が思うのも無理は無く、父で有る源三郎は連合国の最高司令長官だ。
だが祖父は野洲の筆頭家老で誰が考えても父で有る源三郎が上で有ると思うのも当然で有る。
「輝之進は勘違いしてはなりませんよ、御祖父様のお役目は野洲では大変大切なお役目でしてね、
誰にでも出来るお役目では無いのです。」
「其れでは父上様のお役目はどなた様にも出来るのですか。」
「今は多分どなた様にも無理だと思いますよ。」
「筆頭家老とはお国では一番お偉いお方だと伺っておりますが、父上様のお役目は最高司令官と申
されても、私は父上様か御祖父様のどちらが上なのかもわからないのですが。」
輝之進にすれば父が連合国最高司令長官が一番上なのか、其れとも祖父の筆頭家老が上なのか疑問に思うのも当然で有る。
雪乃は輝之進の疑問に答える事が出来るのか、輝之進が言う様に今まではお殿様の次が筆頭家老
で、だがこの先筆頭家老と言う役職名は廃止されるのか、其れとも自然消滅するのか其れは雪乃に
もわからない。
確かに現在は筆頭家老と司令長官と言う両方の役職が存在するするも殆どが家老では無く司令長
官と言う立場の役職に就いた高野や阿波野達が前面に出ており、家老と言う役職で殆ど出向く事は
無い。
「輝之進は現在の元号は知って要るのですか。」
「はい、確か明示だと伺っております。」
「明示と言う元号は今まで数百年間も続いた武家社会と決別した新しい時代の元号なのです。」
「では武家社会は二度と戻っては来ないのですか。」
輝之進は武家社会と言っても全く記憶が無い。
「母も父上様も、其れに御祖父様もその様に考えておられます。
明示以前からも外国との交易は行われておりましたが、殆どが一部の限られた国と地域だけでし
たが、今後は多くの国々と日本国中の港で交易が盛んになると思われますよ。」
「母上様は今日本国と申されましたが連合国の間違いでは御座いませぬか。」
「いいえ、間違いでは有りませんよ、連合国と申しますのは日本国の一部でしてね、連合国の数十
倍の大きさが有るのです。」
「えっ、其れは誠で御座いますか、では母上様は連合国より外に向かわれた事が有るのですか。」
輝之進が驚くのも無理は無い、連合国の外の国を知って要るは家臣の田中と連合国にやって来た
元官軍の兵士達だけで有る。
「母も連合国の外に出た事は有りませんよ。」
「其れでは何故日本国は連合国の数十倍も有るとご存知なので御座いますか。」
「其れは父上様のお役目上時々ですが父上様を尋ねられた方々のお世話をさせて頂いて要るのです。
その様な時に父上様とのお話しの中で日本国や外国に付いても話され、母の耳にも自然と入るの
です。」
「其れでですか、時々ですがご家中の方々がお話しをされておられるのは、ですが父上様のお話し
はどなたが聞いても宜しいので御座いますか。」
輝之進は日中の殆どが城中で過ごしており、家臣達の話し声も聞こえるので有る。
「父上様は一切秘密にはされませんよ、ですが余りにも難しいお話しには一部の方々以外は全く理
解出来ないのです。」
「父上様はそれ程にも難しいお役目に就いておられるのですか。」
「正しくその通りですよ、特に技師長のお話しはさすがの父上様でも全く理解出来ないと申されて
おられますよ。」
雪乃も連合国が置かれて要る現状の全てを知って要るのでは無く、輝之進の質問に全てを答える
のは難しいと考え、話の途中で技師長げんたの事に振ったので有る。
雪乃もげんたの事ならばまだ答える事が出来ると思ったのだろうか。
「母上様は技師長様をご存知なので御座いますか。」
やっぱりだ、雪乃が思った通り技師長げんたの事ならば聞くだろうとその通りになった。
「技師長と申されるお方ですが名をげんたさんと申しましてね、我がお殿様が野洲の、いや連合国
の宝だと申されましてね、父上様が技師長と名称を付けられたのです。」
「ですが、私はまだお見受けした事は御座いませんがどの様なお方なのですか。」
「げんたさんはね、幼い頃より城下で小間物屋を営まれておられる母の手助けで小物の注文を受け、
全てを作られておられたのです。」
「幼い頃と申されますと今の私と同じ年頃なのですか。」
「ええ、多分同じだと思いますが、げんたさんの噂を聞かれたのが父上様でしてね、げんたさんに
お願いされたのが海の中で息が出来る物を作って欲しいと、ただそれだけだと伺っておりますが、
輝之進ならば一体どの様な物を想像しますか。」
「えっ、私にですか、う~ん。」
と、輝之進は暫く考えたのだが。
「私は全く想像すら出来ませぬ、水の中で息が出来るとは理解出来ないので御座います。」
輝之進が言うのが普通で有り、げんたが考案した潜水具とは誰もが思い付く様な物では無い。
「輝之進の答えが普通なのですよ、ですがげんたさんは試行錯誤の後に潜水具と言う海の中で息の
出来る道具を作られたのです。」
「潜水具と申されましても私には全く理解不可能で御座います。
母上様は潜水具なる道具をご覧になられたので御座いますか。」
「勿論ですよ、野洲の浜で試されたのですが、潜水具を被られた方が四半時以上経っても海中におられ余りにも長いので心配されたお仲間が無理矢理舟に引き上げられたのです。」
「そのお方は生きておられたのですか。」
「ええ、勿論ですよ、でも反対に怒られましたよ、海の中は美しいですよ、魚が目の前を泳いで行
くのを見ましたと、其れはもう大変興奮されてましたから。」
「連合国には他に技師長様は居られないのでしょうか。」
「其れが今のところ誰も見付かりませんが、その時、お殿様が連合国の宝だと申されたのです。」
「今の私と同じ様な年頃にその様に誰もが考え付かない道具を考え作られると言うのは、私に取り
ましても理解出来る以前の話で御座います。」
輝之進が理解する以前に既に諦めたのかも知れないので有る。
「輝之進が理解出来ないのが当然ですよ、父上様は簡単に水の中で息が出来る道具を作って欲しい
と申されましたが、父上様でさえ全く想像出来ない道具だと申されておられ、連合国ではどなた様
も想像出来ないと申されておられるのですよ。」
げんたですら潜水具を思い付くまでに一体何日掛かったのだろうか、そして、完成するまでは数
回、いや数十回もの失敗の連続の末にやっと完成したので有る。
「私が技師長様にお会いする事は可能で御座いましょうか。」
「今はとても無理ですよ、技師長は今連合国の為、いいえ日本国の為に何としても必要な物が有る
と聞きましたが、其れを今考えて要る最中ですから。」
「では何時頃来られるので御座いますか。」
「其れは父上様も母もわからないのですが、この問題の解決には是非とも技師長の頭脳が必要だと
思われた時には父上様は技師長を呼ばれますが、それ以外は何時来られのか全くわかりません。」
げんたは鉄で造る潜水船を思考中で、其れこそ今までの潜水船とは違う造りになるのかも知れず、だがげんたは潜水船だけに終わらず新型の武器も、その為今は下手に呼び出す事も出来ず、げんたが来るのを待つしかないので有る。
「私も今までは御祖父様より色々なお話しを伺っております。」
日頃の子供達は源三郎の父で有るご家老様と一緒に帰り、普段は祖父母が子供達の面倒を見てお
り、雪乃も義父母には大変な迷惑を掛けて要ると、心の中では常に感謝している。
義父で有るご家老様は輝之進には一体何を話して要るのだろうか。
「御祖父様はどの様なお話しをされておられるのですか。」
「御祖父様のお話しは大半が父上様の事で今は連合国にとっては一番大事な時でも有り、輝之進も
辛抱するのだと申されておられます。」
「輝之進は連合国がどの様な状態なのかを知っておりますか。」
「先日にもお話しをして頂きまして、連合国の海の遥か先に大きな大陸が有り、大陸の中にロシア
と言う強大な国家が有り、我が国に攻撃を懸けて来るかも知れないと申されました。」
ご家老様も輝之進が幼く、説明するにしても難しい言葉は使えず大変な苦労をして要る様で有る。
「輝之進はロシアと聞かれましたが、何故日本国に攻撃を仕掛けるのかわかりますか。」
「御祖父様が申されておられましたが、其れは日本国の小判を含め金塊だと。」
「母もその様に思いますねぇ~、日本国はイギリスと言う国から軍艦を購入したのですが、その支払いが全て小判でして欧州の国々では金が最も高価で有ると言われており、ロシアは日本国の小判に目を付け、そして、佐渡にも目を付けたのです。
「ですが、何故ロシアは日本国の小判に目を付けたので御座いますか。」
「其れはねぇ~、欧州の国々の金貨と申しますのは小判の半分以下の大きさで、ロシアは日本国で
は大量の金貨が流通しており、更に佐渡と言う所の金鉱山では金塊が大量に搬出され、日本国とは
黄金の国で有ると錯覚して要るのです。」
「ですが何故錯覚するのでしょうか、私は理解出来ないのです。」
「其れはねぇ~、世界中で最も高価なのが金でしてね、イギリス政府には全て小判と金塊で支払っ
たのです。」
「其れではロシアは日本国では金塊が大量に有ると思ったので御座いますね。」
「母も同じように思いますよ、ですが問題はロシアが金塊だけが目的ではないのです。」
「何故で御座いますか、金塊だけがそれ程までに欲しいのならば交易で得る事が出来ると思うので
すが。」
普通で考えるならば交易で支払われるのは小判だ。
だがロシアは交易するにしても一体何を売る、売る物が無ければ小判や金塊は手に入らないのだ、其れならばと一層の事日本国を植民地にして全ての小判と金塊を奪えば事は終わると考えたのだろうが、果たして結果は思う様に行くのか、其れは今もわからない。
「輝之進が思うのが誰でも考える方法なのです。
ですがロシアが交易するにしても日本国に売る品物が無いのです。
其れで思い付いたのが日本国を植民地にすれば全ての小判と金塊は手に入る、ですが欧州の国々
ではロシア以外にも多くの強国が有ると聞いており、この強国がロシアの軍艦を通せないのです。
其れに若しも通過したとしても途中で必ず飲料水、其れと燃料の石炭を補充しなければなりませ
んが、途中の国の全てが他の強国の植民地なのです。」
「では何処にも寄る事が出来ないのですか。」
「ロシアが其れではと考えたのが今よりも大きな軍艦を建造すると言う方法なのです。」
雪乃が知る情報のすべたが源三郎の傍に居る時に聞いた話で有り、其の殆どが元官軍兵からの情
報で有る。
「母上様はロシアが何時攻めて来るのかもご存知なので御座いますか。」
「其れは母にもわかりませんよ、多分ですが父上様もご存知では無いと思います。
ですが何れにしても連合国は備えだけは怠る事は有ってはならないのです。」
雪乃も源三郎より聞いて要るが、果たして二十年後なのか三十年後なのか、其れだけは何とも答
えの出しようが無く、其れでも刻一刻と危険が迫って要る事だけは確かで有る。
「輝之進もこれからは色々なお方のお話しを聞く事ですよ、勿論 母や父上様 御祖父様からもお
話しをお伺いする事が一番大切ですが城下にも参り城下のお人達がどの様な生活をされておられる
か、そして、城下のお人達からもお話しをお聞きする事も大事なのですよ。」
「父上様はご城下に良く参られるので御座いますか。」
「勿論ですよ、父上様の事を知りたければ城下のお人達に聞けば良いと思いますよ、特に野洲のご
城下で父上様の事を知らないお方は一人も居られないと思います。」
連合国の中でも野洲は特別なのかも知れないが、菊池や上田、松川でも其処までとは言えないが
野洲では家臣達は城下で源三郎や雪乃の事を下手に伝えると後が恐ろしく、家臣達は今まで何度と
無く領民に詰め寄られた事が有り、今では余程の事が無い限り城下の人達には伝えないのだと、そ
れ程までに野洲の領民は源三郎と雪乃に関しては敏感で有る。
「では私もご城下でお伺いしても宜しいのでしょうか。」
「まぁ~輝之進が聞かずとも誰からでもお話しして頂けますよ。」
「では下手に聞く事は避けた方が宜しいのでしょうか。」
「ええ、正しくその通りで、何も聞く必要は有りませんよ。」
「母上様、私は今からでもご城下に参りたいのですが宜しいでしょうか。」
「勿論ですよ、ですが腰のものは必要有りませんからね。」
「はい、承知致しました。」
その後、輝之進は目を輝かせ大手門を飛び出したが驚いたのは大手門の門番で有る。
「源三郎様、先程 輝之進様がご城下へ向かわれました。」
「左様ですか、ご苦労様です。」
源三郎は何も言う事も無く、輝之進が何の為に城下へ行くのか大よその見当は付いており、幼鳥
が巣を飛び出したのだと、暫く何も言わずに見守るだけで十分だと思って要る。
「源三郎様。」
「雪乃殿、先程 輝之進が城下へ向かいましたが何か申されたのでしょうか。」
「いいえ、私は何も申しましてはおりませぬが。」
「左様ですか、では幼鳥が巣を飛び立ったのですね。」
「はい、私もその様に思います。
私は輝之進が自分の耳と目で世の中の動きを確かめれば良いと思っております。」
「私も同じですねぇ~、輝之進自身が目と耳で見聞きする事の方が大事でして、何も知らずに知っ
た振りをすれば何れ知れる事になり、信用を無くす事になると思うのです。」
「私は輝之進には源三郎様の様に誠実な人物になって頂きたいのです。」
雪乃も源三郎の誠実な人柄に惚れたので有る。
「私は輝之進の将来は自ら決める方が良いのでは考えております。」
「私も源三郎様と同じで御座います。
この先が昔の様な武家社会では無く、身分の関係無く開かれた社会が訪れるのではと思って要る
ので御座います。」
雪乃も何れの時が来れば身分の関係が無い時代が訪れると思い、輝之進には自らの力で将来に向
かって欲しいと願って要るが、果たして源三郎と雪乃が願う様に行くのだろうか、其れは誰にもわ
からない事だけは確かで有る。
その頃、城下に入った輝之進は興味深々で左右をきょろきょろと見ながらも目だけは輝いて要る。
「あれ~、あの子供は源三郎様の。」
「そうだよ、確かに輝之進様だよ、だけどやっぱりだよ源三郎様のお子様だけ有って物凄く凛々し
いねぇ~。」
城下の人達は輝之進を見ながらも羨望の的だ。
「そうだよ、だけど一体何の用事なんだろうかなぁ~、聞いて見ようか。」
「あの~、申し訳御座いませんが。」
「輝之進様で御座いますよねぇ~。」
「はい、私は輝之進で御座います。」
「やっぱりねぇ~、源三郎様のお子様だけの事は有るよ、オレ達とは全然違うよなぁ~。」
「お前って本当に馬鹿だなぁ~、そんな事は初めから判り切った事なんだ、其れで輝之進様は何かのご用事で城下に来られたんですか。」
「私は連合国の為、いいえ、日本国の為に今から色々な事を学ばなけれならないのですが、その為
には野洲の事をもっと知りたいので御座います。」
「ですが輝之進様は御幾つのなられたのですか。」
「私はもう五歳で御座いますが、技師長様は五歳の時には素晴らしいお仕事をされておられたと伺
いまして、私も今からでは少し遅いとは思うのす。
ですが少しでも技師長様に追いつきたいので御座います。」
「えっ、技師長様って、正かげんたの事じゃなかったのか。」
「そうだよ、げんたの事だよ、まぁ~確かに五歳の時には小間物を作ってたからなぁ~。」
「ねぇ~輝之進様、げんたはねぇ~普通じゃないんですよ、あいつの頭の中は特別なんで、源三郎様も技師長の頭の中を見たいって。」
「お殿様がねげんた技師長は連合国の宝じゃ、他の者達の代わりは居るが、技師長の代わりなる人物は何処を探しても見付からないって。」
輝之進は目を輝かせながら領民の話を聞いて要る。
「そんなにも凄いお方なのですか技師長様は。」
「そうだよ、げんたが小間物屋に居た頃はねぇ~、毎日お客が順番待ちしてたんですよ、で有る時
なんか夜の明ける前から順番待ちするんで、げんたは一日五人と決めたんだ、げんたはお客の話を
じっくりと聞いてから作るんで一人に一時も掛かるって。」
「まぁ~げんたの作る物は野洲の、いや~、連合国では真似して作れないんだぜ。」
輝之進は母で有る雪乃の言った通りで、城下で領民から聞くこれが一番で有ると。
「ねぇ~輝之進様、源三郎様は知っておられるんですか。」
「多分 ご存知だとは思いますが、今日は私の意志で参ったので御座います。」
「其れはオレもわかりますが、輝之進様はまだ幼いので一応源三郎様には城下に参りますと言われ
た方がいいと思うんですよ。」
「其れは何故御座いますか、教えて頂きたいので御座いますが。」
源三郎も雪乃も教えてはいないのでは無く、輝之進自身が直接領民から教えを受ける事の方が良
いのだと考えたからで有る。
「其れはねぇ~、輝之進様がまだ元服されておられないからですよ、勿論 元服されたらいいんで
すがね、その前って言うのは親に許しを得る事が大事なんですよ。」
「そうですよ、わしらでも子供の頃には親の許しが無かったら遠くには行けなかったんですよ、そ
んな時にですよ、輝之進様が何処に行ったのか誰も知らなかったら其れこそ源三郎様も雪乃様も大
変困られると思うんです。」
「私の勝手な行動が父上様や母上様に迷惑が掛かるのですね。」
「まぁ~今日はいいですが、明日からは何処に行かれ、何時頃帰るか、其れだけは必ず言われた方
がいいと思いますよ。」
「はい、承知致しました、明日からは必ず父上様か母上様のお許しを得てから参りますので、皆様方にも大変なご迷惑をお掛けし誠に申し訳御座いません。」
と、輝之進も源三郎と同じように手を付き頭を下げた。
「う~ん、やっぱりなぁ~、源三郎様のお子様に間違いは無いよ。」
「まぁ~其れは言えるねぇ~、やっぱり蛙の子は蛙だって言う事だねぇ~。」
「まぁ~そっくりだって事だなぁ~。」
「では私は戻りますので、皆様方、誠に有難う御座いました。」
輝之進は戻って行くが、城下に初めて来て何も注意を受けたのでは無く、教えて貰い、其れが将
来輝之進には役立つかも知れないのだと、輝之進は大手門の門番に礼を言って城内へと入った。