第 14 話 成功なるか、説得作戦。
早朝、司令官は、狼犬部隊と、第5番大隊を引き連れ、ホーガンの言う小国
へと出発したので有る。
「将軍。」
「お~、何だよ~、一体、どうしたんだ、4人の隊長が、何の用事だ。」
4人の隊長達も知っていたので、農場の人達に知られない様にと、有る作
戦を考え付いたので有る。
「将軍、1番、2番、3番大隊は、2号農場と4号農場の間に有る柵を早
く完成させ、馬と鹿の放牧に入りたいと思います。」
ロシュエは、感づいていた、彼らは、司令官達が出発した事を聞かれると
思い、そのための理由として、柵を早く完成させるのだと。
「分かったよ~、君達の考えて要る事は、全て任せる、だがよ~、第1農
場に岩石を積み上げるのもやるのか。」
「はい、勿論ですよ、柵を完成させれば、第4番大隊が、第5番大隊が偵
察で見つけた馬を放牧場に入れる予定ですので。」
「だけど、本当に手回しがいいなぁ~、オレなんか、何も考えて無かった
よ~。」
「其れが、将軍の、将軍らしいところなんです。」
「おい、おい、そんな事を言うなよ、じゃ~よ、頼んだぜ。」
「はい、了解しました、それでなんですが、我々も、久し振りに狩りに行
きたいのですが。」
フランド隊長の眼は、どんな事があっても行くぞ~と、言う眼をして要
る。
「分かったよ~、お前達の好きにすればいいんだ、じゃ~、今夜は鹿の肉
でも食べられるのかよ~。」
「まぁ~、其れは、私が帰るまでの、お楽しみにと言う事で。」
「オレは、久し振りに、鹿の肉が欲しいんだが、ダメか。」
ロシュエも、何か、楽しそうな顔をして要るのだが、頭の中は、数十日後
に迫っている、敵軍の事でいっぱいなのだ。
「では、全員、昨日、打ち合わせたとおりで行く、作戦開始。」
ロレンツ隊長の号令が掛かった。
「ウォ~。」
と、雄叫びを上げ、1番、2番大隊は、大工部隊の元へ、柵の材料を受け
取りに、4番大隊は、各種の道具を積んだ馬車を、3番農場へと走らせて行
く。
「隊長さん、一体、如何したんですか。」
「おやっさん、申し訳ないが、3番農場で作る柵の材料は。」
「ええ、今の作ってるんですがね、其処に山積みになってる板と、此方の
丸太ですが。」
「ありがとう、じゃ~、いただいて行きますよ。」
「えっ、隊長さん達が作られるんですか。」
ロレンツ隊長は、二コットして。
「おやっさん、私達ではダメですか。」
「いや~、そんな事は有りませんがね、でも、予定じゃ~。」
「いいんですよ、じゃ~、みんな、馬車に積み込んで運べ。」
「は~い、了解で~す。」
兵士達も、ニコヤカな顔をして要る。
「さぁ~、行くぞ~。」
馬車、数台に積み込まれた材料を、3番農場に運び、材料を降ろすと、ま
た、引き返し、何度か往復すると、全ての材料を運び終えたので有る。
「じゃ~、みんな、頼みましたよ。」
第4番大隊は、狼を警戒する任務に就いて要る。
丸太を積んだ馬車と、板を積んだ馬車は、一定の間隔で、兵士達が材料を
降ろして行く、其れは、やはり、軍隊と言う組織なのだろうか、与えられた
責務と言うのか仕事と言うのか、其れは、別として、一度、作業に掛かると
見事な動きを見せている。
数人の兵士は、図面に書かれている、最初の場所に目印を入れると、その
目印を基点として、次は、同じ間隔で目印を入れる、その目印が丸太の入る
ところなのだ。
別の兵士達は、その目印を堀、その作業は次々と進んで行く。
やはり、軍隊と言う組織だからなのか、兵士達は、何時もと違う作業にも
戸惑いは無く、それどころか、何か、楽しそうなのだ。
「おやっさん、一体、どうなってるんですか。」
「いや~、オレも分からないんだ、だって、この柵を作るのは、まだ先だ
と聞いていたんだからなぁ~。」
「じゃ~、少し、我々も頑張って柵の材料を、早く作り上げましょう
か。」
「うん、其れが、いいと思うんだ。」
「じゃ~、みんなに言ってきます。」
「済まないが頼むよ。」
大工部隊も、柵の材料を早く作り上げるために、全員で取り掛かるので有
る。
「テレシア、兵隊さん達が何処にもいないんだが、一体、何が有ったん
だ。」
「いや~、私も、知らないよ、だって、早朝から、全員が大声を上げて、
農場の現場に向かったからねぇ~。」
テレシアは、司令官達が出動する事は知ってはいたが、他の大隊が、何処
に行ったのかは知らなかった。
数人の農夫が城門を出ると、兵士達が乗った馬車が、大工部隊の現場へと
向かって行くのを見たので、大工部隊の現場へと走って行く。
数台の馬車に、丸太や板を次々と積み込んでいるところに着き。
「ねぇ~、兵隊さん、一体、何があったんですか。」
「いや~、何でも無いですから。」
兵士は、二コ二コしながら、丸太や板を積み込んでいる。
「おやっさん、一体、何があったんですか。」
「うん、其れがねぇ~、さっき、第1大隊のロレンツ隊長さんが来られ
て、3番農場の柵を作る材料は聞くんでね、其れですよって言ったら、馬車
に次々と積み込んで行くんですよ。」
「えっ、じゃ~、兵隊さん全員で、3番農場の柵を作り始めたんです
か。」
「うん、そうなんだ、だから、オレ達も早く材料を作りたいと思ってね、
今、全員で作ってるんですよ。」
その間でも、兵士達は、材料の積み込みが終わると、馬車に乗り込み、3
番農場へと走らせて行く。
3番農場の建設予定地の中には、数十ヶ所も林が有り、其処には、鹿や猪
をはじめ、数十種類の動物がいる。
その動物達も、一体、何が起きはじめたのかわからず、四方八方へと逃げ
惑い、4番大隊は、狼だけを注意している。
一方、大食堂では、早朝から、イレノア達が来て、兵士達の昼食を準備し
ている。
「ねぇ~、イレノア、兵隊さん達は、一体、何を始めたの。」
「兵隊さん達は、3番農場の柵を作ってるんですよ。」
「えっ、じゃ~、全員なの。」
「私も、詳しい事は知らないんですけど、昨日、1番大隊のロレンツ隊長
さんが来られて、将軍に話されていましたので、私達も、将軍にお願いし
て、兵隊さん達の昼食を作ってるんです。」
「そうだったの、いえね、何時もは居る兵隊さん達がいないでしょう、そ
れで、気になったのよ。」
「私も、全部は知らないんですが、でも、私達に出来る事は、この食事を作
る事くらいなんです。」
「分かったわ、じゃ~、私達も、手伝うからね。」
数人の女性達が加わり、昼食の準備も終わり、現場へ運ぶ事になった、す
ると、数台の馬車が大食堂の前に止まり、兵士達が大食堂に入ってきて。
「あの~、済みませんが、今から、我々の食事を作りたいと思いますの
で、大鍋を使ってもよろしいでしょうか。」
「だってら、もう、終わっているので、此れを積んで下さい。」
イレノアは、ニコヤカな顔で言うと。
「えっ、でも、其れは、農場の人達の。」
「いいんですよ、だって、次の分も、今、作っていますから。」
「本当にいいんですか。」
「はい、本当に、よろしいですよ、だって、兵隊さんも待っておられるで
しょうから。」
「はい、ありがとう、御座います。
其れじゃ~、馬に、鹿、5頭と、大きな猪を、10頭を乗せていますので
降ろします。」
数人の兵士達は、多分、当番の兵士なのだろう。
「わぁ~、大きいんですねぇ~、じゃ~、之は、農場の人達と、今夜の分
として、今から、準備に入る事にします。」
立派な角を生やした、大鹿、5頭だ、兵士は、大鹿をイレノア達が指定し
た場所に置くと、大鍋を馬車に積み込み、作業現場へと向かって行く。
「じゃ~、みんな、大鹿と、猪の解体をお願いします。」
イレノア達の女性陣は、手馴れたもので、次々と解体して行く。
その頃、ロシュエは、久し振りに城門の上に上っていた。
「どうですか、何か、変わった事は有りませんか。」
「はい、此の頃は、何も有りません。」
ロシュエは、農場から城へと続く、大木を利用した城壁を見ていた。
「だけど、この城壁は頑丈そうだなぁ~。」
「はい、私も、建造を見ていましが、此処の大工さん達は、本当に素晴ら
しいですねぇ~、上から見ると、よ~く、分かりますので。」
「うん、そうだなぁ~、此れで、後は、岩石を積み上げて行くんだからな
ぁ~、其れの方が大変な作業になると思うよ。」
その時、ロシュエは、城壁の内側を見たのだ。
「う~ん、あれは、一体、何だろうか。」
ロシュエが、見たものとは、城壁の内側に、幅広く、屋根が付けられてい
るのが見えたので有る。
「えっ、将軍は、ご存知無かったのですか。」
「うん、そうなんだ、君は、知っていたのか。」
「将軍、あの中は、馬車と、兵士達移動専用の通路なんです。」
「えっ、移動専用の通路って。」
「はい、私も、詳しい事は知らないのですが、新しい大工さん達が、作ら
れたと聞いていますが。」
「だがよ~、一体、何のために必要なんだろうか、知ってるのか。」
「はい、私も、説明を聞きましたが、普段は使わないのですが、敵軍が来
た時、この内側が有るので、敵軍に見つからずに移動が出来ると聞きました
が。」
「あ~、そう言う事か、我が軍が、移動した事もわからずに内側を通る事
で、兵士達の犠牲も出ないと言う事なのか。」
「はい、私も、之があれば、早く、戦闘地に向かえると思います。」
「そうか、よ~く、分かったよ、じゃ~な、よろしく、頼みますよ、オレ
は、あの中に入ってくるからよ~、何かあれば、中に入ったと言ってくれな
いか。」
ロシュエは、城門を下り、城門を出、新しい城壁の内側に入って行く。
「う~ん、こりゃ~、大した作りだ、此れだけの幅があれば、馬車のすれ
違いも十分出来るなぁ~。」
そして、城壁の上に上って行くと、更に、驚きの連続だ。
之は、技師長の考えじゃ無いなぁ~、大工さんが、考えたんだなぁ~、だ
が、よくもまぁ~、此れだけ頑丈で、大きな城壁を造ったもんだ、うん、素
晴らしい。」
と、独り言を言っている。
ロシュエは、この木造の上に岩石を置けば、少々の事では大丈夫だと思っ
た。
城壁を出て、大工部隊の現場へと向かって行くと、数台の馬車が近づいて
来る。
「あっ、将軍。」
数台の馬車に乗った兵士が馬車を止め、敬礼し、ロシュエも、答礼をし
た。
「やぁ、みんな、ご苦労さん、で、何処に行くんだ。」
「はい、柵の材料を取りにです。」
「そうか、無理はするなよ。」
「はい、ありがとう、御座います。」
ロシュエは、大工部隊が、柵の材料を全員と言っても良いほどの人達が作
っているのを見て。
「おやっさん、どうだ。」
「将軍、驚きましたよ、まだ、先だと思ってましたんでねぇ~。」
「いや~、オレは、何も言ってないんだぜ、隊長達が、勝手に決めたんで
よ~。」
「でも、お陰で、早く出来そうですよ。」
「そうか、其れと、聞きたい事が有るんだが、さっき、城壁の内側を見た
んだが、ありゃ~、大したもんだよ、オレは、まぁ~、本当に驚いたよ。」
「あ~、あれですか、あれは、大工さん達が考えたんで、後、少しです
よ。」
「じゃ~よ~、このまま、城まで行くのか。」
「そうなんですよ、だって、あの大工さん達は、オレ達よりも、早く仕上
げますのでねぇ~、やっぱり、専門の人達は素晴らしいですよ。」
「うん、そうだなぁ~、じゃ~、全部が完成してから、家の方を。」
「いや~、其れがねぇ~、あの大工さん達は別に始めてるんですよ。」
「えっ、じゃ~、あれも、これもと、やってるのか。」
「そうなんですよ、オレ達が見たって、どれが、どれなのか、全く分かり
ませんよ。」
「ふ~ん、じゃ~、オレが見たって、全く、訳が分からんと、言う事にな
るなぁ~。」
「そうかも知れませんよ。」
「じゃ~、オレは、余計な事は言わない事にして、大工さんに任せる
よ。」
「はい、その方がいいと、思いますので。」
「じゃ~、オレは、戻るから、オレが来たって言うなよ。」
「はい、わかっております。」
「じゃ~、なっ。」
ロシュエは、大工部隊を後にして、柵を作っている現場へと向かい、暫く
見ていると、兵士達の動きが違うの見て。
「よ~、隊長、ご苦労さん。」
「将軍、何か、ご用でも。」
「いや~、何でも無いんだが、兵士の動きがなぁ~。」
「はい、そうなんですよ、実は、今回も、我々が言ったんじゃ無いんで
す。」
「何だって、じゃ~、兵士からなのか。」
「はい、残った兵士達は、司令官や、5番大隊の任務を知ってたんで
す。」
「誰か、話したのか。」
「まぁ~、兵士同士ですから、誰かとは分かりませんが。」
「まぁ~、なぁ~、全員に口止めする事は不可能なんだから、でもよ~、
なんで、急に柵を作ると言い出したんだ。」
「じゃ~、お話しますが、今回、司令官が向かわれた任務は、大変、重要
だと、之は、私もですが、兵士全員が理解しております。」
「うん、そうか、其れは、本当にありがたいと思ってるんだ。」
「兵士達は、小隊長達を、小隊長達は、中隊長達に対し、自分達が何も出
来ないと言うのは、大変、苦しいと。」
残った、兵士達全員が、司令官達、全員が無事に戻って来る事を信じては
いるのだが、それでも、数十日後だと、では、その数十日間、何もしない」
で、黙って待つのかと言う事に成り。
「じゃ~、何か、兵士達は、今、出来る事を早く掛かりたいとでも言った
のか。」
「はい、でも、少し違うんですよ、兵士達の話では、この農場の建設は大
事だと認識して要るのですが、その作業でも、必ず、狼からの襲撃を防ぐた
めに、一個大隊が警戒に当たっている、其れは、無駄な人員だと考えたので
す。」
「何だって、狼の警戒は無駄な人員だと、一体、その兵士達は、何のため
に警戒に入っているのか知った上での話しなのか。」
「将軍、私の、説明が悪かったのです。
兵士達は、3番農場に馬を放牧する事も知っています。
それで、彼らは、その3番農場を早く閉鎖すれば、1番、2番、3番農場
は警戒する必要は無くなると考えたんです。」
「う~ん、まぁ~、其れは、分かるがよ~、じゃ~、城までの城壁は。」
「はい、其れも、分かった上での話しなんです。
「今、申しました、1番、2番、3番の農場が閉鎖出来れば、全員で、最
後の城壁に取り掛かれると言うんですよ。」
ロシュエも、少し分かってきた。
「う~ん、話は、少しだが分かってきたぞ、じゃ~、さっき言った、警戒
用の人員は最後だけに集中出来ると。」
「はい、そのとおりです、兵士達の考えた作戦は、お城までの城壁が完成
すると、内側の通路に取り掛かれると。」
「じゃ~よ、内側の通路が完成すれば、城に行くのは楽になると言う訳な
んだ。」
「はい、そのとおりです。
其れが、完成すれば、今、此処に居ます、木こりさん達と、大工さんの半
分を通路を利用して行く事で、最大の難関とも言えます、お城の裏側の城壁
造りに入れると考えたんです。」
「こりゃ~、参ったよ~、オレなんか、其処まで考え無かったよ、だっ
て、1番農場の事ばかり考えてたんだぜ、だがよ~、兵士達の考えは、一気
に城までの事を考えてたって訳なのか。」
「将軍、その全てを、この数十日間でやるって、兵士達が言ったんです
よ、この話を聞いた、私も、驚きましたよ、我々の兵士達は、将軍と、同じ
事を考えて要るんだと。」
「いや~、隊長、彼らは、オレ以上だよ、だってよ~、オレなんか、目先
の1番農場の事だけだよ、其れがよ~、オレの、遥か前を考えてるんだよ、
本当に参ったよ~、じゃ~、あの時、3番隊のフランド隊長が言った、久し
振りに狩りにでもと言ったのは。」
「はい、この柵が完成すれば、全員で狼退治に入ると言う意味なんで
す。」
「わぁ~、こりゃ~、本当に参ったなぁ~、オレの仕事を兵士達に取られ
るたかも、じゃ~、1番、2番農場の狼を退治すれば、警戒する必要が無いと
言う事になるんだ。」
「はい、全く、そのとおりです、その様になれば、農場造りに、誰でも入
れると言うのです。」
「じゃ~、その2番と、3番の間に柵を作り、狼退治をすれば、後は、男
だけでなく、子供達も安心して入れるって事なんだ。」
「其れとですが、3番、4番の柵も作れば、以前、リッキー隊長が言われ
ました、馬を此処に放牧する事も出来るんです。」
「じゃ~、一気に3番まで行くと、残りは。」
「はい、今、4番の通路と、5番ですねぇ~、城と直結する最後の農場だ
けとなりますので。」
「そうか、じゃ~、司令官達が戻って来るまでに何とか、城まで直結させ
たいと言う事なんなぁ~。」
「はい、それで、兵士達が、大工さんにお願いをしたらしいんです。」
「其れでか、大工さん達が、別の仕事と平行していると言うのが、今、や
っと分かったよ。」
「兵士達は、その様な意味で、何とか、一日でも半日でも早く柵を完成さ
せるんだと、私達に直訴して来たと言う訳なんです。
それに、あの時の眼は真剣だったんです。」
「ふ~ん、そうか、それに、君のところの第1小隊は素晴らしいよ。」
「えっ、将軍、何故ですか。」
「君の第1小隊だろうよ、あの小隊長の部下だ、彼らは、何時も、何かを
考え行動していると思ったんだが。」
やはり、知られたか、之は、将軍に怒られるぞと思う、ロレンツ隊長だっ
たが。
「君の部隊は、やはり、最高の部下を持ってるなぁ~。」
ロシュエは、1番大隊と、2番大隊は、他の部隊とは違うと知っていた。
「私は、将軍と共に、この地にやって来たんですよ、将軍の、お考えは部下も知っておりますので。」
「じゃ~、最後に言ったのか、責任は、自分が取るって。」
ロシュエは、ニヤリとした。
「はい、勿論です、ですが、将軍の事だ、何も聞かれずに許可されると思っておりましたので。」
「おい、おい、オレの頭の中を読むなって。」
ロシュエは、笑っている。
「で、話は、戻るが、その柵って、一体、何日掛けて作るんだ、正か。」
「ええ、その正かですよ、片方を、5日ですから、4番農場側は、10日後には完成させるんだと。」
「えっ、本当かよ~、じゃ~、その後の城壁には。」
「はい、1番、2番、3番の中の狼を退治出来れば、直ぐに取り掛かると言ってましたが。」
「ロレンツ、えっ、本当に出来るのか。」
「はい、私は、出来ると思いますよ。」
「だがなぁ~、作業が終わり、食事するには。」
「将軍、3番の内側には、部隊から大鍋を持って来ておりますので。」
「えっ、じゃ~、今夜から内側で野営するのか。」
「はい、その様ですねぇ~。」
「ロレンツの話を聞いていると、お前が考えたんじゃないなぁ~。」
「はい、そのとおりですよ、私は、全く知りません。
各大隊の中隊長と小隊長が念入りに作戦を練っておりますので、私は、全く、何も、させて貰えないんですよ。」
やはりだった、ロレンツ隊長の話を聞くと、内容は、中隊長から話だけで、実際の作戦計画は、中隊長と小隊達が考えたのだと。
「じゃ~よ~、ロレンツの仕事は。」
「はい、全く、何も有りません。
此処で、部下の仕事を見ているだけで、何も、参加させて貰えません。」
「じゃ~、何時もの、オレと一緒なんだ。」
「私は、待っているのが、こんなに辛いとは思っておりませんでした。」
「ロレンツ、やっと、オレの気持ちが分かったか。」
「はい、今回、初めて、将軍の辛さが分かった様な気がします。
自分も、一緒に入って仕事がしたいですよ。」
ロレンツ隊長は、笑ってはいるが、最高指揮官ともなれば、後方で、作戦
を練るのと、結果を待つのが任務と言えば簡単な話なのだが。
「だからよ~、あの時の司令官の嬉そうな顔、本当は、オレが行きたいん
だ、だがなぁ~、直ぐに司令官が、閣下は駄目ですってよ~、だけど、たま
には、オレも前線に出して欲しいって言いたいんだ。」
「今回、私も、将軍と同じですから、私達は、何もする事が有りませんの
で、今は、仕方なく、司令官が、戻られてからの事を考えて要るんです。」
「そうか、ありがとうよ、じゃ~、今回の作戦を成功させるためには、遅
くなっても、10日以内に、いや、片方を5日以内に、柵を完成させる事
が、最低の条件だと。」
「はい、3番農場の柵が、一日でも早く完成させる事が、作戦成功の鍵を
握っている事に間違いは無いと、私は、思っております。」
ロレンツ隊長は、将軍と話をしながらも、部下の動きを見ている。
其れは、事故が起きない様にと、絶えず、目視して要るのだと、ロシュエ
は思った。
その部下達は、ロシュエが居る事に全くと言って良いほど無視をして要る
かの様に動き回っている。
「ロレンツ、じゃ~、オレは、戻るが、別に報告は必要無いぜ、全て彼ら
に任せるが、決して無理はさせるなよ、其れと、事故にだけは十分に注意す
るんだぜ、じゃ~な。」
ロシュエは、手を振り、農場へと戻って行く。
ロシュエが、現場で、ロレンツ隊長と話をしていた頃、農場でも変化が起
きていた。
其れは、早朝から、一人も兵士がいないので、農民達に少しだが動揺する
者も表れ。
「おい、知ってるか、兵隊さんがいないって。」
「うん、知ってるよ、でも、一体、何処に行ったのか分からないんだ。」
「じゃ~、テレシアさんに聞いて見ようか。」
「うん、其れがいいよ、じゃ~、此れから、みんなで、大食堂に行って、
テレシアさんに聞いて見よう。」
そうして、十数人の農夫達が、テレシアのいる、大食堂に向かって行く、
だが、その前から一人、一人と大食堂に次々と農夫達が集まり。
「なぁ~、テレシアさん、兵隊さん達は、一体、何処に行ったんだ。」
「私はねぇ~、何も、知らないのよ。」
「でも、テレシアさんだったら、兵隊さん達の事を一番良く知っていると
思って。」
「でも、本当なのよ、何処に行ったのか知らないのよ。」
「あの~、皆さん。」
イレノアだった。
「そうだ、奥様だったら知ってると思うんだよ。」
「うん、そうだよ、きっと、知ってると思うよ。」
「皆さん、静かに聴いて下さい。」
其れでも、話が出来る状態では無かった。
「見んな、静かに聴くのよ。」
テレシアの一括で、静かになった。
「私も、本当の事は知りませんが、昨日、1番大隊のロレンツ隊長さんが
来られまして。」
イレノアは、農場の人達が、何かの原因で不安な表情に成っていると感じ
た。
「其れで、隊長さんは、3番農場に柵を作ると、将軍に伝えられたんで
す。」
「えっ、3番農場って。」
彼ら、農夫達の中でも詳しい事を知らない者達もいる。
「では、ご存知無い方もおられると思いますので、簡単に説明しますが、
今の農場から、5日程行ったところに、お城が有ります。
そのお城まで城壁を造られている事は、ご存知だと思いますが。」
「うん、其れは、知ってるんだけど。」
数人の農夫は頷いている。
「ですが、皆さん、この農場付近一帯には、狼の大群がいる事も知ってお
られますよねぇ~、兵隊さん達は、狼からの襲撃に対し、皆さんを守るため
に、何時も、警戒されているのです。」
農夫の全員が、狼の大群の存在を知っている。
「今、この農場と、お城までの城壁が完成すると、この中に、五つの大き
な農場を作る事に成っているのですが、丁度、3番目の農場を放牧地として
考えられているのですよ。」
「イレノアさん、オレ達が入る農場ってのは。」
「其れは、私も聞かされておりませんが、3番目の放牧地に馬や、鹿を放
牧するそうなんです。」
「なんで、放牧地が必要なんですか。」
「今、質問された方に聞きたいのですが、農場では、馬と言う生き物は、
大切な働き手だと言う事をご存知でしょうか。」
「いや~、知らないんだ。」
「そうですか、私も、農場におりましたが、大きな農場になると、馬車も
必要です。
其れに、馬が一頭いれば、人間の数倍は働きますよ。」
「へぇ~、馬って、オレ達よりも働き者なんだ。」
「はい、で、その馬を育てるには大きな放牧場が必要なのですよ、その場
所が、3番農地なのです。
その3番農地に木製の柵を、この城壁から、川まで作ると言うのは、兵隊
さん達が行かれた本当の訳なのです。」
「じゃ~、柵が出来ると、その1番と、2番農地には誰でも入れるんです
か。」
「う~ん、でも、私は、其処までは知りませんが、少なくとも、1番か
ら、3番農場迄の狼は退治されると、私は、思っているのですが。」
さすがにイレノアだ、1番大隊のロレンツ隊長が、ロシュエに言った話の全
てを理解している。
其れが、お姫様の侍女で有ると言う証拠なのだ、だが、その様な事を知る
者はいない。
「なぁ~、みんな、聞いて欲しいんだ、兵隊さん達は、何時も、オレ達、
農民の味方なんだ、オレ達のために、朝、早くから、全員で柵を作りに行っ
て下さってるんだ。
オレは、明日からでも行って手伝うよ、だって、兵隊さんは本当に仕事じ
ゃないんだ。」
彼は、何れ、新しい農場に入って、好きな作物を育てる事が出来るんだと
思った。
其れを、兵隊が、早朝から、其れも、全員で柵作りに入っている。
本当ならば、農夫自身が行なう仕事なのだと思っている。
「オレも行くよ。」
「うん、オレもだ。」
其れからは、次々と農夫達が柵作りに行くと言うのだ。
「でも、皆さん、少し待って下さい。
まだ、狼の大群がいるんですよ、私は、皆さんが、行かれる事に反対はし
ませんが、皆さんが、行けば、今度は、皆さんを狼から守るために、兵隊さ
んが必要になると思いますが。」
イレノアが言った言葉に、農夫達は、何も言えなかった。
「私は、皆さんのお気持ちは分かりますが、其れよりも、皆さんには、
今、出来る事を考えて欲しいと思います。」
「えっ、イレノアさん、オレ達に出来る事って、一体、何が有るんです
か。」
「其れはねぇ~、皆さんが辛抱する事だと思いますよ。」
「えっ、辛抱って、何時までですか。」
「皆さんは、この農場に来られるまで、何度と無く、辛い思いをされ、そ
の度毎に辛抱されてきたのだと思います。」
其れは、イレノア自身も同じだった、今までの苦い思いが、イレノアを此
処まで強くしたのだろうか。
「今、此処で、数日間の辛抱する事は出来ると、私は、思いますが、如何
でしょうか。」
農夫達は、静かに聴くだけなのだ。
「ねぇ~、イレノアさんの言うとおりよ、だって、今、あんた達が行くと
ね、兵隊さん達も迷惑するのよ、だって、そうでしょう、今度は、あんた達
を守るために、兵隊さんは、仕事を止める事になるのよ、此処は、一番、我
慢する事ね、そうだ、仕事は有るよ、みんなで手分けして、お風呂に使う薪
木を作るってのは、どうかしらねぇ~。」
テレシアの発想だが、風呂場の薪木はは、ジェスが作っている。
「そうだよ、大工部隊の現場に行って、余り木の持って帰り、手分けして
薪木を作ろうや。」
「皆さん、本当にありがとう、その変わりに、1番、2番、3番から狼が
いなくなったら、その時は、皆さん方の出番ですから、お願いしますね。」
イレノアと言う女性は大した女だ、将軍と、ロレンツ隊長が、どの様な話
をしたのか分からないが、柔らかく農夫達を納得させたのだから、やはり、
将軍の妻に相応しいと、
テレシアは、思うので有る。
ロシュエは、大食堂で、その様な話し合いが合ったとも知らずに入って着
た。
「あ~ら、将軍、一体、何処に行ってたのよ~、こっちは大変だったんだ
から。」
テレシアは、何故か、笑いながら言った。
「えっ、何でだよ~、オレは、今、外から戻ってきたんだぜ。」
「将軍、あんたが、一番悪いんだよ、だって、何も言ってくれないか
ら。」
「テレシアさん、もう、よろしいですよ、全て終わった事ですから。」
イレノアは、テレシアを止め様とするのだが。
「イレノア、あんたは、優し過ぎるんだ、だから、将軍が、其れに甘える
んだよ。」
「なぁ~、イレノア、一体、何があったんだよ~、話してくれよ。」
「はい、実は。」
イレノアは、ロシュエに、今、さっきまであった事を話した。
だが、ロシュエからは、何も聞いて無かったの想像の中で、話したと。
「そうだったのか、オレは、別に話す必要は無いと思ってね、だから、イ
レノアには、何も言って無かったんだ、御免な、イレノア。」
ロシュエは、イレノアを、強く抱き締めた。
「いいえ、私は、大丈夫ですから。」
イレノアの目からは涙が溢れていた。
「あ~あ、イレノアは、将軍のこういうところに弱いんだねぇ~。」
テレシアは、笑っているが、心の中では、嬉しかった。
この二人は、最高の夫婦だと、傍のフランチェスカも思ったので有る。
「其れで、将軍、その柵ってのわ、何時頃までに終わるのよ。」
「さっきの話じゃ~、2番農場側を5日間で作るって聞いたんだ、」
「えっ、5日間で作るって本当なのかい。」
「オレも、其れは無理だろうと思ってるんだが、だから、みんなに聞かれ
た時には、オレに連絡が入る事に成ってるって言って欲しいんだよ。」
「分かったわよ、じゃ~、今から、今夜の食事の準備に入るとするよ。」
「テレシア、実は、其れが必要無いんだよ。」
「何故なのよ~、兵隊さんだって、お腹が減るじゃないの。」
「うん、オレも、そう言ったんだが、兵士達が、兵舎から大鍋を持って行
ったんだ、其れで、食事を作るんだって。」
「だって、お肉もいるでしょうから。」
「いいんだって、あの付近には、まだ、大鹿や猪がいるんだよ、其れに、
狼の大群だってな、兵士は、元々、戦に行くと、各隊が、現地で食料を調達
し、調理するんだよ、だから、何も心配する事も無いんだ。」
「そうかい、だけど、一体、何日、帰って来ないのよ。」
「う~ん、オレは、最低で、5日、6日だと思っているんだ、其れは、2
番側の柵が出来るまではと。」
「じゃ~、其れまで、兵隊さんは、この寒い中で。」
「其れも、心配無いんだ、テレシも見ただろう、城壁の内側を。」
「あ~、知ってるよ、大きな通路が出来たと聞いたんだけど。」
「そうなんだ、その通路の中じゃ、何も心配する事も無いんだから。」
「な~んだ、だったら、もう、心配するのは辞めた~と。」
テレシアは、笑うのは安心したからだ。
「じゃ~、みんな、分かってくれたか。」
「まぁ~、仕方無いね、みんな。」
フランチェスカ達も頷いた。
「じゃ~、オレは、考える事が有るからよ~、戻るぜ。」
ロシュエは、宿舎に戻って行く。
其れから、5日経った昼頃の事に数台の馬車の後ろから、1番、2番、3
番、4番隊の全員が戻ってくる。
「中隊長、全員が戻ってきま~す。」
「分かった、下の当番兵に告ぐ、将軍に、お知らせだ、全員が、無事戻っ
てきますと。」
「はい、分かりました。」
当番兵は、大急ぎで、ロシュエの宿舎に走って行った。
その様子を、大食堂のテレシアも見ていた。
「さぁ~、みんな、忙しくなるわよ、だって、全員が戻って着たんだも
の。」
「わぁ~、本当に良かったわ。」
大食堂の女性達は、大喜びしている。
「今夜はねぇ~、お肉をたっぷりと食べて貰うからねぇ~、みんな、頼む
わよ。」
女性達全員に笑みが帰ってきて、夕食の準備に入った。
「将軍、将軍、全員が戻って着ました。」
「よし、分かった、直ぐ、テレシアに言ってくれ。」
「はい。」
当番兵の顔も嬉しかったのか、喜びを爆発させ、大急ぎで大食堂に向かい、
ロシュエは、全員を迎えるので有る。
「みんな、大変だったろう、本当にご苦労だったなぁ~。」
「将軍、最初の柵が完成しましたので、一度、戻って参りました。」
ロレンツ隊長も、嬉しそうな顔で報告をした。
「そうか、そりゃ~、良かった、で、全員無事なのか。」
「はい、全員、すこぶる元気です。」
丁度、その時、第1小隊が、ロシュエの前に着た。
「おい、おい、お前達は、大した兵士だよ、オレも飽きれ果てて、もう、
怒る気がしないんだ、だけど、本当にありがとうよ。」
小隊長は、直ぐわかり。
「将軍、申し訳、有りませんでした、私達は。」
「あ~、分かってるよ、君の小隊は、何時も、何かを考えてるって、分か
ったよ、さぁ~、疲れただろうから、ゆっくりとするんだぜ。」
「いいえ、我々は、見てのとおり、大変、元気ですよ、だって、あの猪
は、本当に旨かったですから。」
「えっ、何だと、猪の肉を食べたのかよ~、そりゃ~旨かったと思う
ぜ。」
ロシュエは、我が事のように嬉しかった。
「そうだ、将軍に、土産が有るんですよ。」
「お~、一体、何をくれるんだ。」
「後ろの馬車、50頭ほどの猪をね。」
「本当か、そりゃ~、嬉しいなぁ~、まぁ~、其れよりもだ、みんな疲れ
ただろうから、今から、順番に風呂にでも入ってくれよ。」
「やったぁ~、お~い、みんな、お風呂に入れるぞ。」
風呂に入れると聞いた兵士達は、大喜びで。
「みんな、その前に、馬の放牧だ。」
「は~い、了解で~す。」
少し、元気な声が落ちたが、其れでも、何日振りかの風呂なので、兵士達
は、元気を取り戻したかの様で、その時、多勢の農民達が出て着た。
「皆さん、本当に、ご苦労様でした。
オレ達が、何も出来なかったので、申し訳無かったです。」
ロレンツ隊長と、他の隊長達も集まり。
「その様な事は有りませんよ、我々が好きでしましたのでね。」
ロレンツは、二コットした。
「で、隊長さん、明日にでも、狼の退治はされるんですか。」
「あ~、狼ねぇ~、その狼でしたら、後の馬車に、何頭、いるのか分かり
ませんがね、全部、片付けましたよ。」
「えっ、本当なのか、だって、柵を作るのに、5日間はいるってよ~、そ
れに、今日は、5日目だぜ。」
兵士達は、笑っている。
「将軍、其れですが、3番隊の兵士達がね、それはも~、大変な騒ぎで、
次々と狼を仕留めるんですよ。」
「えっ、だがよ~、柵を作っている間の護衛は。」
フランド隊長は。
「いや~、それがですねぇ~、みんなで柵を作るのにガンガンとするでし
ょう、其れに、多勢の兵士が来るもんでね、狼が逃げ出したのでね、兵士達
は、もう、護衛どころでは無くなったんですよ。」
「じゃ~、何かよ、3番大隊は、護衛をする事も無くなったのかよ~。」
「はい、そのとおりで、3日目には、狼の姿が見えなくなったんで、3番
大隊も一緒に柵を作りに入りましたので、予定よりも、早く終わったと言う
のが本当なんです。」
「隊長さん、じゃ~、オレ達は、何時でも入って農場作りの作業に入れる
んですか。」
「勿論ですよ、明日からでもいいですよ。」
「みんな、聞いたか、兵隊さん達が、狼を退治されたんで、何時からでもい
いよって。」
「わぁ~、やったねぇ~、オレは、明日から入って、農場作りに。」
「みんな、聞いて欲しいんだ、明日から入るのはいいんだが、1番、2番
には大量の岩石が有るんだ、それで、今度は、みんなで岩石を掘り起こし、
城壁の外側に積み上げて行って欲しいんだ。」
「将軍、やっと、オレ達の出番ですよ、岩石の掘り起こしも、城壁造りも
全員でやりますよ、なぁ~、みんな。」
「お~、そうだよ、だって、オレ達は、何日も辛抱してたんだから、身体
が、早く、仕事を入れって言ってますよ。」
其れを、聞いた、兵士達も集まって着た農民達も、暫くは、大笑いをす
る。
「将軍、聞いてもいいですか、以前、技師長が言ってました大池作りは、
誰もしないんですか。」
「いや~、済まんなぁ~、その大池の事なんだがよ~。」
その時、フランド隊長と、フォルト隊長が、ロシュエの前に着た。
「将軍、実は、報告を忘れておりました。」
「う~、一体、何の話だ。」
「将軍、申し訳、御座いません。」
二人は、ロシュエに頭を下げたので、全員が、一瞬、静まり返った。
「あ~、あの事なのか、大木の切り出し部隊の事なんだろう。」
二人の、隊長は、驚いた、二人は、ロシュエに許可も得ず、ウエス達の中
で、大木の切り出し作業の偽者達を戻していた事も、ロシュエは、知ってい
た。
「将軍、我々、二人が。」
「いいんだよ、お前達の判断でやったんだろうから。」
「でも、何故、知っておれたんですよ。」
「おい、おい、あの時、ウエス達の部下は、全部で、5千人程なんだよ、
確かに、大木の切りの作業現場から着たと思うんだが、お前達、二人は、大
木の切り出しも大事だと判断して戻したんだ、で、無ければ、あの時の人数
が、足りない事くらい、オレにだって直ぐに分かるんだぜ。」
「申し訳、有りませんでした。」
「お前達の判断が間違って無かった証拠にだよ、大木も予定通り切り出し
たじゃないかよ~。」
「はい、そのとおりです。」
「其れにだ、二人が、どんな話をしたのかは、大体、見当は付いているよ、
で、最後の決断は、奴らに任せたってね。」
やはり、将軍だ、あの時、ウエスの本当の部下は全員死亡した。
だが、大木の切り出しを行なっている偽者は、隊長の言葉を信じ、今は、
必死で、堤防と、大池造りに入っている。
「私は、今でも、判断に間違いは無かったと思っております。」
「だからよ~、3番大隊も4番大隊も戻って着たんだろう。」
将軍には、全てを見抜かれていると。
「お~い、みんな、今も、堤防と、大池作りは、続いているのからよ~、
何も、心配はいらないよ。」
「えっ、でも、ウエス達は、全員。」
「ああ、そのとおり、ウエスの部下は、全員、川に沈んで行ったよ、だ
が、同じウエスの部下でも、ウエスのやり方には付いて行けない兵もいるん
だ、その兵士達が、今、堤防と、大池作りに入ってるって事なんだ。」
「でも、将軍、その兵隊さんは、大丈夫なんでしょうねぇ~。」
「まぁ~、其れは、心配無いって、フランド隊長と、フォルト隊長が言っ
てるんだからよ~、オレも心配して無いんだ、だって、一体、何処に逃げる
んだ、そうだろう、川のところまで柵が出来るまでは、狼の大群がいたんだ
よ、誰が、好き好んで、狼の餌食になりたいと思う、オレだって、嫌だぜ、
だから、何処にも行って無いって事だよ、でも、奴らは、今も、まだ、狼が
いると思ってるんだから、此れからも、心配は必要無いって事だ、そうだ
な、ロレンツ隊長さんよ~。」
「はい、そのとおりです。」
二人の隊長もやっと、肩の荷が下りたのだろうか。
「ふっ~と。」
息をはいた。
「そうだ、各隊長は、休憩が終われば、執務室に来てくれ。」
「はい、了解しました。」
兵士達は、各小隊が、順番に馬を放牧すると、大食堂の裏側に有る、お風
呂に向かって行き、その風呂場では。
「皆さん、兵隊さん達が戻って来られましたよ。」
「ねぇ~、おじさん、僕の知ってる兵隊さんがね、お風呂に入ろうって言
ってくれたんだけど、行ってもいい。」
「ああ、いいよ、じゃ~、兵隊さんと、お風呂に入る人はね、兵隊さんの
背中を洗ってね、其れから、流して欲しいんだ、兵隊さんもきっと喜ぶと思
うよ、じゃ~、行っていいよ。」
「わぁ~い、行こうよ。」
小さな子供達は、兵士達とは久し振りなので、本当に嬉しそうな顔で走っ
て行く。
「じゃ~、残った人は、蒔き木をどんどん入れて、お湯を作って下さい
ね、自分は、大きな木を割りますのでね、」
「あんた、実に嬉しそうだね。」
「はい、今は、心の底から良かったと思っています。
其れも、みんな、将軍様のお陰です。」
「うん、オレ達も、よ~く、分かるよ、この農場の人達は、本当に親切な
人達が多いんだ、オレなんか、足の片方が無いんだけど、みんなは、優しく
してくれるんで、何も言う事が無いんだ。」
「そうですねぇ~、今は、自分も言われる事が身に沁みていますよ。」
暫くすると、風呂場からは、子供達の元気な声が聞こえて着た。
そして、大食堂ではまるで戦場の様で有る。
「テレシアさ~ん、会いたかったで~す。」
若い兵士が、母親に甘える様で。
「今更、何を言ってるのよ、私はねぇ~、あんた達、全員が農場に戻って
きて、本当に嬉しいんだよ。」
テレシアの目には、涙が溢れている。
「おっ、テレシアさんが泣いてるよ。」
「何を言ったんだ、私が、泣いてるって。」
「だって、涙が。」
「このバカが、眼にほこりが入ったんだよ。」
テレシアは、涙を拭くと。
「そうか、やっぱり、テレシアさんは、オレの事を。」
「バカな事を言ってないで、早く食べてよ、みんなが待ってるんだか
ら。」
「は~い、了解で~す。」
若い兵士達も、何時もの様に、テレシアから、怒られるのが楽しみなのだろ
うか、兵士達は、嬉そうな顔で食事をしている。
「ねぇ~、イレノアさん、お代わりは。」
「勿論ですよ、何杯でも、だけど、他の人も待ってるの、御免ね。」
イレノアは微笑むと。
「は~い、分かりました、イレノアさんが二コリとすると、何も、言えま
せ~ん。
じゃ~、ありがとう、御座いました。」
イレノア達も、次から次へと、食器を運び、裏では、数十人の女性達が食
器を洗い、あのジェスは、食器を洗うところに、お湯を流れる様にと簡単な
工事をしたので、冷たい川の水を使う事も無く、温かい。
その頃、休憩が終わった、四人の隊長達は、ロシュエの執務室に入って行
く。
「将軍。」
「お~、もういいのかよ~、もっと、ゆっくりとすれば良かったのに。」
「いいえ、私達には、もう、十分です。
何しろ、あの現場では、何もさせて貰えなかったものですから。」
「よ~し、分かった、じゃ~、話と言うのは、今、司令官達が、有る小国
と、付近の村民を助けるために向かっている事は知ってると思うんだが。」
「はい、勿論です、で、司令官は、何時頃、戻られる予定なんでしょう
か。」
「う~ん、其れが、分からないんだ、多分だが、50日前後だと思ってるんだ。」
「えっ、そんなに長い期間なんですか。」
「其れでなんだが、オレが勝手に思っているんだが、城までの城壁の事な
んだが。」
「将軍、其れは、私達も、承知致しております。
兵士達も、疲れておりますので、2~3日後に出発する予定に成っている
んです。」
「えっ、そんな早くにか。」
「はい、その頃には、大工さん達も加工は終わるって言っておられました
ので、全部運び、一斉に取り掛かる予定なんです。」
「で、何日位の予定なんだ。」
「其れは、まだ、大工さん達と打ち合わせが終わってませんが、10日~
20日も有れば、出来るだろうと言われてましたので。」
「じゃ~、司令官が、戻る頃には、一応、完成するんだなぁ~。」
「はい、遅くても、30日は掛からないと思っております。」
「そうか、そりゃ~、嬉しいねぇ~、其れで、その後なんだがよ~。」
「はい、私達も考えまして、一応、4番大隊が城に入ります。」
「4番大隊の全員か。」
「はい、其れで、次なんですが、3番大隊が、5番と、4番農場に、2番
大隊は、3番と、2番農場と、1番農場に配置の予定です。
我々、1番大隊が、各大隊の物資補給と、この農場を守りに就く予定に成っ
ているのですが。」
「じゃ~、各大隊も承諾を。」
「将軍、今度は、全軍配置と考えておりましたので、各隊長が自ら志願さ
れました。」
「えっ、隊長自らが志願って事は、第4番大隊は、城の守りに入るの
か。」
「はい、私は、此れを待っておりました。
元々、あの城は、司令官が居られましたのですが、私も、その一員でした
ので、私から、任せて欲しいと。」
「う~ん、其れは嬉しいんだが、補給は大変だぜ。」
「はい、勿論、承知しておりますが、私は、1番大隊の隊長として、4番
と、5番には、まだ、いるだろうと思う大鹿や猪、其れと、狼を仕留める
と、補給も楽に成るのではと思っておりますので。」
だが、ロシュエは、それだけでは無いと思ったのだ。
「ロレンツ隊長、話はそれだけなのか、まだ、何か隠しているだろう。」
ロレンツ隊長は、ニヤリとして。
「やはり、ばれましたか。」
「大体、お前さんが、補給部隊だって言った時に分かったんだ、だって、
オレと何年に成るんだ、オレを騙せるとでも思っていたのか。」
ロシュエは、笑って、傍の、オーレン隊長もで、フランド隊長と、フォル
ト隊長は、私達は知りませんと言う顔付きだ。
「将軍、実はですねぇ~、此れを考えたのが。」
「分かってるよ、1番小隊の連中だろうよ。」
「えっ、何故、分かるんですか。」
「オレは、どうも、彼らじゃないかと思ったんだ。」
ロシュエの勘は当たっていた。
「はい、全く、そのとおりで、小隊長は、あの時の戦法を使いませんか、
と言ってきたんです。」
「何だよ、あの時の戦法って。」
「将軍、お忘れですか、ウエス達の国が。」
「あ~、あの時のか。」
「はい、でも、あの時は、この農場だけでしたが、今回は、農場から、城
までは頑丈な城壁が有りますので、其れに、城までは長い直線です。
其れと、農場から、城までは右側が森ですので、今回の敵軍は、この道を
来ると考えたそうなんです。」
「だがよ~、森の中に入ると見付けるのは大変だぜ。」
確かに、ロシュエの言うとおりで、その森には、狼の大群が今もいる。
その狼の攻撃から守るか、逃げるか、二つに、一つの選択しか無い。
「小隊長が言うには、森の中には、狼の大群がいます。
其れは、今回も同じだと、ですが、仮に敵軍が森に入れば、狼の大群がい
るので、入るなと言っておれば、敵軍は、この道を通らなければ成らない
と。」
「そうか、森にも入れず、前には、城壁が有り、城壁の内側からは、ホー
ガン矢が飛んで来る、されど、森の中には、1番大隊が、敵の軍勢に襲い掛
かる、此れだろう。」
「はい、全く、そのとおりで、私も、その戦法は使えると思ったので
す。」
「だがよ~、1番大隊が、一番、危険な任務に就く事になるんだぜ。」
「将軍、我々も考えましたよ、森の中と言っても、今回は、深く入る事は
有りません。
其れに、あの時の戦法は、今でも大変有効だと考えました。」
「う~ん、確かに有効だと思うんだが。」
「将軍、我々は、狼が、其れも、大群がいるんだと言う事を最大限に利用
しようと思ったんですよ、だって、ウエス達の軍隊は何も知らず、森に深く
入り、我々が殺すよりも、狼の犠牲者の方が多かったんですよ、ですから、
ウエスの事ですから、どんな事が有っても、森の中に深く入るなと、きっと
言ってますよ。」
「其れは、分かるよ、だって、あの時、敵軍の兵士達の叫び声で、その後
は入って来なかった聞いたんだ。」
「将軍、仮にですよ、入ってくれば、我々は、逃げる道を知ってるんです
よ、でも、敵軍が入れば、我々が切り倒した大木で、前に進む事が出来ない
のですから、そうなれば、我々は、数十人か、数百人を殺って、直ぐ移動す
るんです。
敵軍が、道に出れば、城壁から攻撃を受ける、その様になれば、敵軍は逃
げ道を失い、何処にも行けなく成るって、之が、小隊長の話なんです。」
「じゃ~よ、他の大隊は。」
「将軍、城壁の内側は、我々専用と言っても良い、幅の広い通路が有りま
す。
この通路は外からは見えませんので、次々と移動し攻撃出来ますから。」
「いや~、だけど、本当に、そう上手く行くのかよ~。」
「将軍、でも、この戦法しか有りませんので、我々に任せて下さい。」
「今、我々と言ったが、じゃ~、オレは。」
「将軍は、この農場でお待ち下さい。」
「え~、また、オレは、何も出来ないのかよ~、オレにも行かせてくれ
よ~。」
「其れは、駄目です、将軍、有っての農場ですから、この農場を出て頂く
事は出来ません。」
ロレンツ隊長も、他の隊長達も、二コ二コとして、何か喜んでいる様な顔
で有る。
「お前達は、オレをいじめて、楽しんでるのかよ~。」
「将軍、之は、我々の総意ですので、此処でお待ち下さい。
戦は、我々の任務ですので。」
「オレは、不満が溜まって爆発するぞ。」
「はい、其れが、将軍の任務ですので、戦は我々が、将軍は、此処で、此
れで、全員が納得し、大喜びしております。」
「お前達には負けたよ、あ~あ、今度も、オレは、待つだけなのか、オレ
は、寂しいよ~、誰か、助けてくれよ。」
「将軍、ところで、話は変わりますが。」
「何だよ、突然に、言い出すんだ。」
「ええ、我々も色々と考えたんですよ、将軍、この農場の城壁の上から、
2番農場が見えるでしょうか。」
「一体、何を言い出すかと思えば、そんなの、オレに見える訳が無いだろ
うよ~。」
「将軍、其れなんですよ、我々も、其れが、一番、苦労したんですよ。」
「えっ、一体、何を苦労したんだ、え~。」
「はい、城の上からですよ、敵を発見した、でも、城の上からも、4番農
場が見えないとしますと、城から、敵軍発見したと、知らせる方法なんで
す。」
「そんな事簡単な話だ、馬を飛ばせば終わりだぜ。」
「我々も、はじめは、将軍と同じだったんです。
でも、其れじゃ~、時間が掛かるんです。」
「何だって、時間が掛かるたって、其れが、一番、早い方法だろうよ。」
「はい、でも、もっと早い方法が有るんですよ。」
「え~、その方法って、一体、どんな方法なんだよ~。」
「はい、其れが、此れなんですよ。」
「な~んだ、只の布切れじゃないか。」
「はい、でも、此れで、知らせるんです。
この布を、棒に括り、其れを振る、この方法だと、直ぐに分かるんで
す。」
「だがよ~、5番から4番農場は見えないんだぜ、其れを、一体、如何す
るんだ。」
「はい、其れも、考えまして、見えるところに監視の兵士を配置するんで
す。
その監視兵は、常に、4番であれば、5番農場の方を見るんです。
でも、それだけでは駄目なんです。」
「そりゃ~、そうだろうよ、だって、遠いんだから。」
「で、我々も、見えるところに近づき、その場に監視兵を、で、同じ様
に、この農場まで配置する事で、馬よりも早く伝達出来ると言う訳なので
す。」
「分かったが、その監視兵ってのは、どれくらい必要なんだ。
「はい、其れは、出発してから決める事に成っておりますので、各大隊か
ら農場内に配置するのは、どれだけの小隊が必要になるのか、此れだけは分
かりませんが。」
「だがよ~、監視兵も大変だよ。」
ロレンツ隊長が、フラッグ方式を考えたのだが、最初、どの様な方法が、
一番、早いのかを考え、フラッグの大きさまで考えたので有る。
「ロレンツ、じゃ~、その布だが、どれ程の大きさなんだ。」
「はい、一ヒロです。」
「えっ、一ヒロだって、その布ってのは。」
「はい、我々が使用していました、寝る時の物です。」
「だがよ~、あの布は、一ヒロ以上は有るぜ、其れを振るって大変な力が
要るぞ。」
「其れは、大丈夫ですよ。」
ロレンツ隊長は、兵士達の体力は相当有ると知っている。
それに、布を一日中振るのではなく、相手に伝わればよいのだと考えた。
「まぁ~、大体は分かったよ、オレが、余計な事を考える事も無いって話
なんだ。」
「はい、申し訳有りませんが、そのとおりです。
で、最後に、この農場の当番兵が確認すれば、将軍にお知らせ出来ると、
それで、如何でしょうか。」
「分かったよ~、じゃ~、2~3日後、順番に配置しながら、城まで行く
と言うのか。」
「はい、ですから、当日は、この農場が基準に成りますので、一人ではな
く、数人で確認して頂たいのです。」
「よし、オレが最初に確認しよう、それからは順番にだ、それでいいんだ
ろう。」
「はい、我々も、最初は、将軍にと考えておりましたので。」
ロシュエにも、やっと任務なのか、仕事なのか、分からないが、其れが回
ってきたので、本人は喜んだ。
「よし、此れで、決まりだ。」
「では、将軍、よろしく、お願い致します。」
「うん、分かった。」
「では、我々は、失礼します。」
4人の隊長は、ロシュエが納得したので、後は、出発準備だけとなり、宿
舎に戻って行く。
話は、変わり、司令官を先頭に狼犬部隊と、第5大隊は、今、どの辺りを
進んでいるのだろうか。
「ホーガン、そろそろ、君の言われておりました、城に着くのでは有りま
せんか。」
「そうですねぇ~、今のままで進みますと、残りが2日位だと思います
が。」
「でも、思ったよりも早かったですねぇ~。」
「司令官、そろそろ、野営する場所を。」
其処へ、リッキー隊長が来た。
「司令官、この近くに程よい場所が有りましたよ。」
「そうですか、では、今夜は、その場所に、ホーガン、先頭をお願いしま
す。」
「はい、承知しました。」
ホーガンが、先頭になり、今夜の野営地に向かった。
「隊長、ホーガンの話では、残りが、二日位だそうですよ。」
「いや~、それにしても、以外と早かったですねぇ~。」
「ですが、それだけ近くに来たと言う事は、今夜からは、警戒は厳重
に。」
「司令官、了解しました。」
リッキー隊長は、下がり、中隊長達に伝えに向かう。
やがて、ホーガンは、森の手前を曲がり抜けた所に広い草地に着いた。
直ぐ横を川が流れている、其れは、あの大きな川だが、川の手前は、林
で、対岸からは発見される事は無い。
「司令官、この場所であれば、対岸からは発見される事は有りませんので
安全です。」
「分かりました、では、全員、下馬、此処で野営に入る、順次準備に入っ
て下さい。」
兵士達は、役割分担通りに野営の準備に入っている。
「ホーガン、今日からは警戒を厳重にしますので。」
「はい、承知しました。
私も、何時、敵が現れるかも分かりませんので、それで、司令官、あのジ
ェスの話では、馬車が多いと言っておりましたので、音で分かると思うので
すが、其れに、この付近には狼も多いので夜に動くのは危険だと思います。
敵も、今頃、何処かで野営していると思います。」
「私も、その様に思いますよ、ですが、この道は、何時から知ってたので
すか。」
司令官も、知らなかった道で、城を出て、半日も進むと、この道とは別の
方向に行く。
ホーガンは、迷いもなく、道を外れ、この場所に着た。
「はい、実は、私達だけが知っております目印が有りまして。」
「やはり、そうでしたか、ですが、敵も、この道を行ったのでしょう
か。」
「いいえ、其れは、有りません、この道に入る前ですが、数百ヒロです
が、林の中をとおりましたが、あの林の出口は誰にも分からないのです。」
「では、ホーガンは、その場所にも目印が。」
「はい、そのとおりですが、今から行きます城ですが、特別の目印が有り
ますので、その目印が見つからないと、全く、方向違いの場所に出ます。」
「それでは、敵も入ってないと。」
「はい、その周辺の草や木も倒れておりませんので、大軍が通ってないと確
信します。」
「そうですか、其れは、良かったですねぇ~、それで、その国なのです
が。」
「はい、私は、警備隊長も城主も知っておりますので、入る事は簡単だと
思いますが。」
「そうですねぇ~、城主が、何処まで理解して下さるか、其れが、一番の
問題だと思いますねぇ~。」
「私は、何も心配しておりませんが、其れよりも荷物だと思います。
我々が、敵が来るんだと言っても、荷物は必要だと言ってきますから。」
「ホーガン、私に、考えが有りますよ。」
「では、司令官にお願いします。」
「ホーガン、要するに、余計な物は必要無いと言う事ですよ。」
「余計な物ですか。」
「そうですよ、其れはね、農場では、必要の無い物と言う事です。
必要な物は服ですね、私は、閣下に、もう少し将軍らしい服を着ていただ
きたいと思って要るのです。」
「ですが、将軍は、必要無いと言われますよ。」
「はい、勿論、承知しておりますよ、其れよりも、大切な物ですよ、ホーガ
ンも見たと思いますが、イレノア様が。」
「はい、私も、その場おりましたので。」
「私は、あの時に思ったのは、負傷した時に使う布が欲しいのです。」
「確か、あの時も布が不足していましたので、イレノアさんが、自分の服
を。」
「そうですよ、ですから、どの様な服でも良いのです。
テレシアさんや、他の女性に任せればいいのですから、私はねぇ~、城に
有る服は全て積み込む必要が有ると考えております。」
ホーガンも、足を切断した時、イレノアは、自分の服を引き裂き熱湯で消
毒し、傷口に当てたのを見ている。
「じゃ~、子供時代の服もですか。」
「はい、服であれば、どの様な物でも良いのです。
之は、村民にも同じ事を話すつもりですよ、後は、食器と兵士達の武器だ
けです。」
「では、女性達が身に付けています、宝石類ですが。」
「ホーガン、宝石は何の役にも立ちませんよ。」
「はい、そのとおりですが。」
ホーガンは、城の女性達は宝石を持って行くと言うだろうと思ったが。
「ホーガン、私も、女性が美しい宝石を着けられているのが悪いと思いま
せんよ、ですが、宝石よりも、命の方が大切なのですよ、命さえあれば、そ
れでよいと思われておられるのが農場の人達なのです。」
「はい、私も、其れは、十分理解しております。」
「ホーガン、私もね、美しい女性は好きですよ、ですがね、農場の女性達
は皆さん輝いておられますよ、今はね、生き残る事の方が大事だと思いま
す。
ホーガンは、城の人達と、村民を助けに来たのですからね、それだけは忘
れないで下さいね。」
「はい、よ~く、分かりました。」
司令官の言う事は、最もな話で、今は、生き残る為に必要な物だけを持っ
て行く、其れが、大事なのだとホーガンは、思ったので有る。
「司令官、ホーガン隊長、お食事です。」
「ありがとう、で、兵士は。」
「はい、皆、食べていますので。」
「そうですか、ありがとう、で、少し聞きたいのですが、帰りの食料です
が。」
「はい、今は、少しですので、明日は、第1、第2小隊が狩りに行く様に
成っているのですが。」
「では、良い所が有りますよ。」
ホーガンは、大鹿のいる場所を知って要る。
「先程、入ったところを覚えていますか。」
「はい、確か、あの場所には二ヶ所に岩が有りましたが。」
やはり、兵士だ、ホーガンが置いた岩を見つけたのだ。
「その岩です、その岩をですね、曲がって此処に来ましたが、あの岩を曲
がらずに行くと、広い草地に出ます、その草地には、物凄い数の鹿がいます
ので、出来れば獲れるだけ獲ってきて欲しいのですが。」
「はい、では、馬車も一緒にですね。」
「それで、良いと思います、但しです、狼もいますので、十分に注意をし
て下さい。」
「はい、ありがとう、御座います。」
当番兵は、何やら、口の中でぶつぶつと言って戻って行く。
そして、明くる日の早朝、二個小隊が大鹿の狩りに行くので。
「ホーガン隊長、私達は、どの道を進めば良いのですか。」
「簡単ですよ、林の傍を川が流れています、その川は見えますので、川沿
いに進んで下さい、やがて、大きな岩が見えますので、その岩が見えました
ら、左に川が見えますので、そのまま進むと、また、大きな岩が二つ有りま
す。
丁度、その辺りが昼頃になると思いますので、その二つの岩を過ぎて、1
0ヒロか、20ヒロも進めば草地に出ますので、多分、その草地で休みに入
っていると思います。」
「はい、了解しました、では、司令官、行ってきます。」
二個小隊は、大鹿の狩りに向かった。
「ホーガン、その草地までですが、敵は。」
「まず、この道に入るところが分からなければ、見つかる事は有りませ
ん。」
「でも、草地だけでは。」
「司令官、見て下さい、左に大きな川ですが、右は、何処までも森が続い
ています。
この森は、城まで続いていますので、正か、敵も、狼の大群が要る森に入
る事は無いと思います。」
「では、このまま進むと、ホーガンの言われる城が有るのですね。」
「はい、私も、数年振りですが、正か、大きな岩が動く事は無いと思いま
す。」
二個小隊が狩りに出発した後、司令官達も出発し、昼頃、ホーガンの言っ
た、大きな二つの岩が見え、20ヒロ進と、大きな草地に出た。
「司令官、ホーガン隊長。」
大きな声がする、其れは、狩りに行った二個小隊だった。
「皆さん、ご苦労様です。」
司令官が、馬車を見ると、大鹿が、一体、何頭か山の様に積み上げられ要
る。
「之は、大収穫ですね。」
ホーガンも、驚いている。
「司令官、ホーガン隊長の言われたとおりでした、本当に大群ですよ。」
「そうですか、じゃ~、此処で、休憩し、少ししてから出発しますの
で。」
「はい、では、私達は、後に行きますので。」
「いや~、貴方方は、私の後について下さいよ、之からは、狼がおります
ので、皆さん、気を引き締めて下さいね。」
ホーガンは、知っている、これから城までは、狼が大群を成していると。
そして、二日目の早朝、最後の野営地を出発した、司令官達は、昼前に、
ホーガンの言っていた国に到着したので有る。
「オ~イ、警備隊長を、大至急呼んでくれ、他国の軍隊が来たぞ~。」
「何、他国の軍隊だと、全員配置に就け。」
城壁の兵士達は、大声で叫び、城壁の上では、数十人の兵士達が、大騒ぎ
している。
「警備隊長、大変です、他国からの攻撃です。」
「何、よし、分かった、直ぐ行く、陛下にも、お知らせするんだ。」
「はい。」
城内は、まるで、蜂の巣を突付いた様に大騒ぎになっている。
其れは、この国が、出来て以来、初めてなのだろうか、他国の軍勢が来る
と言う事が。
「オ~イ、我々は、この国を攻撃に来たのでは無い。
私は、ホーガンと言います、国王に伝えて下さい。」
城壁の下で、ホーガンは、大声で言ったのだが、ホーガンの姿を見た兵士
達は驚いている。
ホーガンは、狼の毛皮を着て、何処から見ても、野盗の姿なのだ、だが、
横一線に並んだ、正規軍の中心には、司令官が構えている。
「ホーガンだと、お前は、野盗なのか。」
「いや、違う、私は、有る国の警備隊長の頃、このお城に何度か訪れてい
る。」
その時、警備隊長が、城壁の上に来て、兵士が何やら伝えている。
「えっ、ホーガンだって。」
「はい、あの狼の毛皮を着た男です。」
「分かった。」
「ホーガンだと申されましたが、若しや、あのホーガン隊長ですか。」
「そうだ、私は、ホーガン隊長だ、大至急、陛下に、お伝えしたい事が有
り、我々の軍隊と、司令官と、一緒に来たんだ。」
「直ぐに開門するんだ。」
警備隊長は、大急ぎで、下に降り、大きな城門が開くと、警備隊長が飛ん
できた。
「ホーガン隊長、お久しぶりです。」
「君は。」
「私ですよ、お忘れですか。」
ホーガンは、警備隊長の顔をじ~っと見ている。
「君は、若しや、警備隊長の。」
「はい、あの時の洟垂れ小僧ですよ。」
「じゃ~、隊長の息子。」
「はい、そのとおりです、隊長、其れよりも、皆さんを。」
「ありがとう、このお方は、我々の司令官です、そして。」
「隊長、お話は後で、どうぞ、皆さん、お入り下さい。」
「警備隊長、ありがとう、全員、下馬、静かに入城する事です。」
第5番大隊の全員が、城門の外で、下馬し、静かに城門をくぐり入って行
く。
そのころ、城主が出て来た。
「おや、ホーガン、ホーガンでは無いか、一体、何が、あったのかね。」
「陛下、御久し振りで、御座います。
私の隣が、我が軍の司令官で、その横が、第5番大隊の隊長です。」
「ホーガン、私は、君の元気な姿を見て、一安心したぞ。」
「はい、ありがとう、御座います。」
「で、一体、どうしたと言うのだ、其れよりも、司令官殿、隊長殿、どう
ぞ、キムラッチ隊長、ご案内して下さい。」
「はい、陛下、では、皆さん、ご案内致しますので、ホーガン隊長、兵士
の方々は。」
「はい、隊長に任せますので。」
「はい、了解です。」
警備隊長は、他の兵士に命じ、大隊の兵士達を案内させ、司令官と、ホー
ガンは、警備隊長の案内で、奥の会議室へと案内した。
部屋に入ると、数人の女官達が、忙しく動き回っている。
「さぁ~、お座り下さい。」
司令官達が座ると、女官達が飲み物を運んできた。
「ありがとう。」
城主も座り。
「ホーガン、本当に懐かしいなぁ~、何年振りだ。」
「はい、確か、10年振りかと思いますが。」
「で、一体、どうしたと言うのですか、出来れば、詳しく話して下さ
い。」
「はい、分かりました、では、お話をします。」
ホーガンは、この後、城主と、警備隊長に対し、詳しく説明し、そして。
「では、ホーガン、その軍隊が、我が国を攻撃するので、その前に、我々
を助けに来られたと、申されるのか。」
「はい、陛下、我々の農場は、このお城から、30日程の所に有ります
が、其処に入っていただければ大丈夫です。」
「何じゃと、30日も行くのか。」
「はい、お城の皆様と、村民の全員を連れて行きますので、その様な日数
が掛かるので御座います。」
「国王陛下、我々の農場ですが。」
「えっ、農場なのですか、司令官殿。」
「はい、我々の将軍は、農民を一番大事にされますので、全てが、農場と
なっております。」
司令官も、説明に困っている、お城で生活する者達には、農場の生活など
は想像も出来ないのだ。
「国王陛下、農場と申しましても、端から端までは、5日も掛かりますの
で。」
「えっ、何ですと、端から端までが、5日も掛かると、何と言う大きさな
のです。
私には、想像も出来ない大きさですが。」
「はい、ですが、中は、農場と申しましても、城壁は、私が、どの様に説
明申し上げましても、ご理解が出来ないと存じます。」
「では、お聞きしますが、国王は、どの様なお方なのですか。」
之は、大変だ、説明しても、簡単には理解出来ないだろうと、ホーガン
も、リッキー隊長も思うので有る。
「私達の農場には、国王はおられません。」
「えっ、国王は、いないと、では、貴殿が。」
「いいえ、私では、御座いませんが、我々の農場では、全員が、将軍と、
お呼びしております。」
「う~ん、私には、全く、理解が出来ません。
その様な大きなお城に、国王がおられないと申されるのが。」
「ですが、之は、事実で、御座いますので、でも、我々の将軍は、このお
城の皆様と、村民の全員を、お助けする様にと、命令を下され、今、此処に
私達が参ったので、御座います。」
「では、お聞きしますが、先程のお話のなかで、敵の軍隊が、この城に来
ると申されましたが、ホーガンも知ってのとおり、私も、貴殿達が来られた
のが、最初と言う訳で、この城の周りには、大きく深い森が有り、外部から
侵入する事は、容易では有りませんが。」
「陛下も、ご存知でしょう、兄上様のお城を、敵軍は、あの頑丈なお城を
攻撃し、城の者達も村民も全員殺した軍隊です。
私は、どうしても、皆さんを助けたいと思い、将軍に直訴し、司令官に
も、ご無理をお願いして、此処に来たのです。」
「だがねぇ~、ホーガン、この城や、村の存在を知る者などはいないと、
私は、思っているんだよ。」
「国王陛下、其れが、大変な間違いだと、私は思います。
国王が、ご存知無いだけだと思いますよ、何時の時代でも、旅人はおりま
す、このご城下にも、既に、数十人の旅人が来ていると思いますが。」
「えっ、旅人が、この城を知っていると。」
「はい、そのとおりで、御座います。
旅人と言うので、何処に、どの様な国が有り、どの様に栄えているのかを
知っておりますので、その旅人の話を聞いた者達の中で、先程から申し上げ
ております、軍隊も、このご領地を探していると、私は、思うので、御座い
ます。」
司令官も、早く、この城から出る必要が有るとは思っているのだが、この
城主は、まだ、決断が出来ないでいる。
「警備隊長殿、このお城の兵士は、何人でしょうか。」
リッキー隊長は、兵士の人数が少ないと考えて要る。
「はい、5百人ですが。」
「司令官、此れでは、簡単に落城しますね。」
「うん、確かに少な過ぎる。」
「隊長、兵士は、実戦も知らないのは致命的ですよ、あの軍隊は、3万人
の精鋭部隊ですので、失礼だとは思いますが、よく持って、午前中です。
その後は、奴らによって惨殺が始まりますよ。」
「えっ、そんな事が起きるのですか。」
警備隊長も、理解出来ていない。
「如何されますか、我々は、一刻も早い決断を願っておりますが。」
この後、暫くの沈黙が続き、ホーガンは、思い切った作戦に出る。
「司令官、もう、帰りましょうよ、この城主は、何も理解出来ませんし、
理解する気持ち、いや、村民の事などは一切考えておりませんよ。」
司令官も、リッキー隊長も、ホーガンの大芝居だとわかっている。
「司令官、私も、ホーガンの言う事が正しいと思いますよ、だって、そう
でしょう、我々の、大きな農場でも、奴らからの攻撃に備え、巨大な城壁と
造っているんですよ。」
「う~ん。」
「隊長、私も、考えております。」
「司令官、我が、5番大隊でも、この城を攻撃すれば、簡単に陥落させる
事が出来ますよ。」
「司令官、将軍には、将軍には、我々が到着した時には、既に遅かったと、
報告すれば、宜しいかと思います。」
ホーガンの大芝居は続き。
「分かりました、では、我々は、早急に引き上げましょう、国王陛下、大
変、お騒がせ致しました、リッキー隊長、大至急、この城を離れ、安全な野
営地に向かう、全員に伝えて下さい。」
「はい、了解しました。」
司令官は、立ち上がり、3人が部屋を出ようとした時。
「司令官殿、隊長殿、ホーガン隊長、私が、間違っておりました、申し訳
無い。」
城主は、3人を引き止め。
「えっ、正か、我々と、一緒に行かれるのですか。」
司令官も惚けている。
「ホーガン、許してくれ、私は、この城が、正かと思っていたんだ。」
「国王陛下、私も、わかっております。」
「では、早速、準備に入りたいのですが、我々は、この地を去るために、
最低必要だと思われる物だけの持ち出しを考えております。
その前に、警備隊長は、お城の兵士全員と、大隊の兵士を連れ、領民に説
明に向かって下さい。」
「はい、承知、致しました。」
「警備隊長、詳しい事は、部下が知っておりますので、心配される事は有
りませんよ。」
警備隊長の顔も緊張感が漂っている。
「はい、ありがとう、御座います、では、早速に。」
「まぁ~、少し待って下さいね、今から、大切なお話が有りますので
ね。」
司令官は、柔らかく話すと。
「えっ、ですが。」
「隊長は、どんと構えるのです。」
「でも、私が、先頭に。」
警備隊長は、早く行けばと思っているのだが。
「之からが大事なのですよ、最初に、警備隊の全員が理解する事です。」
この後、リッキー隊長が説明するが、その間にも。
「陛下、警備隊には、我々の大隊が同行しましので、其れよりも、このお
城の人達を集めて下さい。」
「えっ、全員ですか。」
「はい、そのとおりで、私が、全員にお話をしますので。」
「ですが、司令官、私が、命令を下せば、済む事では無いでしょうか。」
「はい、其れが普通ですが、我々の将軍の考えは、全員が知る事、之が、
一番大切だと申されております。
何故かと申しますと、何も分からずに行きますと、必ずと言っても良いほ
ど、不平不満が出るのですよ、全員が、納得すれば、何事も簡単に終わりま
すので。」
「はい、分かりました、では、早速に。」
城主だけが納得すればよいと言うものでは無い、全ての人達、其れは、城
内の者達も、領民にも納得させる事が一番の早道なのだ。
其れは、司令官も経験済みで有る。
「隊長、この領地に何カ村有るのですか。」
「はい、5カ村有ります。」
「そうですか、では、村民は何人でしょうか。」
「はい、確か、5百人くらいだと。」
「5百人か、じゃ~、この城に何台の馬車が有りますか。」
「はい、20台です。」
「その20台の内、荷馬車は。」
「はい、15台です。」
「分かりました、では。」
この後も、警備隊長に細かく聞いて行く、暫くすると、城内の全員が集ま
り。
「皆さん、今から、大切なお話が有りますので。」
司令官も、この後、説明を始め、最初は、質問らしき事も無く、順調に進
むが。
「あの~、質問ですが。」
「はい、どの様な事でしょうか。」
「私達は、一体、どうなるのですか。」
司令官も、予想はしていた、この城内で、今まで、大きな争いも無く、全
てがのんびりとした生活、其れが、一瞬で変わり、城での優雅な生活に慣れ
た者達には、先の生活に不安を抱くのも当然で有る。
「はい、本当の事を申し上げますが、私も、どの様になるのか、まるで分
かりません。
ですが、我々の将軍の事ですから、皆さんの不安を少しでも解消される様
に考えられますので。」
この質問をしたのは、多分、この城主の娘だろう、今までは、お姫様と言
われ、何不自由なく生活をしていたのだろう、だが、その生活も今日で終わ
りに成る。
「では、全ては、その将軍が決定されるのか。」
「大変、失礼ですが、貴女は。」
「司令官、申し訳有りません、私の娘で、名を、ハーナと申します。」
「ありがとう、御座います。
では、ハーナ姫とお呼びしたいところですが、今からは、ハーナさんと呼
ばせて頂ます。」
「えっ、何を急に、私は、この城の。」
「はい、勿論、十分、承知しておりますが、ハーナ姫と呼ばれるのは、こ
の城内での事で、今から参ります農場では、お姫様は不用です。」
「まぁ~、何と失礼な。」
「我々の農場では、子供から、大人まで何らかの仕事に就いておりますの
で、ハーナさんにも、仕事に就いて頂きます。」
「何故です、私は、その様な事は致しません。」
やはり、城で生活している、お姫様だ、仕事などは出来ないと言うのだ。
「では、お食事は有りません。
我々の農場では、働かざる者、食うべからず、と、言いますから、仕事が
出来ないのでは無く、したく無いと言う事は、食事も無いと言う事になって
おりますので、陛下も、その覚悟だけはお願いしますね。」
「司令官、お聞きしたいのですが、農場の一部に、お城が有ると聞きまし
たが。」
「はい、有りますが、元は、私のおりました城で、今は、誰もこの城には
おりません。」
「では、そのお城に住むと言う事は、可能でしょうか。」
「まず、其れは、無理だと思って下さい。
全ては、将軍が決められますが、この城は、私の城です。
外の方々に、お渡しする事は出来ません。」
司令官は、この城を渡しても良いと考えていたのだが、其れは、城主や、
他の者達の考え方次第なのだ。
「では、話を進めますが、隊長、どの中隊がよろしいですか。」
「はい、予定では、第2中隊かと。」
「分かりました、では、第2中隊を呼んで下さい。」
「はい、承知、致しました。」
リッキー隊長は、司令官が、何を考えて要るのか分かっている。
「この城内に有る、全員の服を持ち出します。」
「えっ、司令官、其れは。」
警備隊長は、意味が分からない。
「我々の農場では、布が不足しておりますのでね、其れと、女性の服です
が、下の物は、2~3枚にして下さいね。」
その時、第2中隊の全員が来た。
「第2中隊は、城内に有る、全ての服と、布ですね、其れを箱に詰める作
業に入って下さい。」
第2中隊の兵士達の動きは早く、其れは、まるで、強奪するかの様だ。
「司令官、一体、何事ですか、行き成り。」
「之は、失礼しましたね、敵軍が迫ってますので、我々は、時間との戦い
なのです。
其れと、今夜の食事ですが、何時のも様な食事は出来ませんので。」
「えっ、では。」
「はい、明日の早朝には、この城とはお別れになりますので、中隊長、馬
車は全て出して下さいね、其れと、馬は、まだ。必要有りませんので。」
「はい、了解です、第3小隊は、馬車を中央に集め、必要な物の積み込み
を開始せよ。」
「第3小隊、了解しました。」
「司令官様、私達は、このお城の料理人ですが、私達が使用しておりま
す、食器などもでしょうか。」
「はい、一応、全て、馬車に載せますが、その前に、料理長、大鍋はあり
ますか。」
「はい、大きな鍋が10個、その他にも、色々と有りますが。」
「第4小隊、今から、今夜の食事の準備に入って下さい。
この場所では狭いので、中央広場で、料理長のお手伝いをお願いしま
す。」
「はい、了解しました、では、料理長、準備を始めましょうか。」
「えっ、今からですか、でも、まだ、時間が早いと思いますが。」
料理長は、城内の人達だけの準備だと思っていたのだが。
「其れはね、この城内だけの時間ですよ、間も無く、領民も、この広場に
来られますので、その人達も含めてなので、今から準備する必要が有るので
す。」
「では、陛下や、お姫様も、ご一緒にと言われるのでしょうか。」
「はい、勿論ですよ、我々が、大鹿や、猪の狩りを行なっていたので
す。」
料理長は、どう返事して良いか分からない。
「隊長。」
「うん、如何したんだ。」
「はい、窓に付けて有る物ですよねぇ~。」
「勿論だ、其れと、城の中に有るベッド周りの物だよ。」
「隊長、ベッドは、如何します。」
「う~ん、ベッドか、司令官、如何します。」
「ベッドか、農場の人達の中で、幼い子供や、誕生して数ヶ月の赤子も居
るしなぁ~、まぁ~、その人達のためにも、全部回収して下さい。」
「はい、では、直ぐに。」
「少し待って下さい、では、我々は、一体、何処で、眠るのです。」
城主も理解はしているが、正か、自分達の眠る場所までが、持って行かれ
るとは思ってなかったのだ。
「どの様なところでも眠る事は出来ますよ、明日からは荷車か、テントで
眠る事になるのですからね。」
「隊長、大鍋の設置は完了ですが、薪木が在りません。」
「分かった、では、ベッドを解体して使用して下さいよ、あっ、其れを使
うと。」
「隊長、眠るだけならば、マットがあれば、農場の赤ちゃんや、お腹の大
きな女性は大丈夫だと思います。」
「よし、マットは回収し、外枠は解体して下さい。」
「じゃ~、直ぐに、始めま~す。」
リッキー隊長も、兵士も、何が楽しいのか分からないが、次から次へと服
の回収と、布地の回収も行なっている。
「お父様、私は、もう、耐えられないわ。」
「いや、今は、辛抱する事だ、敵軍が来れば、私も、他の全員が殺される
んだ、今は、とにかく辛抱する事だ。」
「でも、もう、嫌。」
この姫様は、とうとう、泣き出した。
「お姫様、私達が居りますので、何も、ご心配は有りません。」
彼女は、侍女らしい。
「ねぇ~、二キータ、一体、どうして、私は、この様な屈辱的な扱いを受けなければならないの。」
侍女は、賢い女性だろう、で、なければ、お城のお姫様の侍女にはなれな
い時代なのだろうか。
「お姫様、私も、よく分かります、ですが、少し私の話しを聞いていただ
けますか。」
「うん、いいわよ。」
「お姫様、今、此処に居られる、司令官や、他の兵隊さんは、お姫様や、
私達を助けに来ていただいているのです。」
「二キータ、私も、それは、わかってるのよ、でもね。」
「ですが、姫様、私達は、このお城の事だけは分かっておりますが、其れ以上、他の事などは、全く知らないのです。
でも、私は、ホーガン隊長様は、姫様の叔父上様のお城で、隊長をされて
おりました頃を知っております。
そのホーガン隊長様が、今、居られる大きな農場の将軍様に直訴され、私
達を助けるために、30日も掛けて来ていただいたのです。
私達は、司令官様や、他の人達に感謝しなければならないと思うのです
が、如何でしょうか。」
「二キータ、私も、わかってるのよ、でもね、正か、私の使っているベッ
ドまでも解体するとは思わなかったのよ。」
二キータと言う侍女は、姫の気持ちを理解するが、此処に残れば、遅か
れ、早かれ、敵軍が攻めて来る、その様になれば、正に、生き地獄を味わう
事になる。
其れを、二キータは知っている。
「はい、勿論、私も同感ですが、今、来られている兵隊さんは、皆さん、必
死で、私達を助け様とされておられます、其れは、兵隊さん達の将軍様が命
令されたのでは無いと、私は、思いますよ、姫様、あの兵隊さんをご覧下さ
い、言い方は悪いですが、兵隊さん達は、私達が、此処にいる事には、全く
と言ってよいほど関心が無いのです。
姫様の様に、お美しい女性が居れば、姫様を見ようとしますが、どの兵隊
さんを見ても、ほら、全く、此方を見ないでしょう。」
「そうねぇ~、あの兵隊は、私達が見えないの。」
「姫様、そうでは、無いと、私は、思います。
司令官様も、私達が、いる事には全く気にされていない、之は、私の考え
なのですが、将軍様は、部下を信頼され、また、部下の兵隊さんも、将軍様
には、期待通りの人達だと言う事では無いでしょうか。」
「二キータ、わかったわ、では、私は、これから、一体、どうすればいい
の。」
「はい、まず、司令官様や、隊長様達の言われる事を素直に聞いて頂たい
のです。
私が、傍におりますので。」
この姫様は、二キータと言う侍女を信頼していると、近くで話しを聞いて
いた司令官は思った。
「司令官、衣服類の回収は終わりました。」
「小隊長、ありがとう、では、中央広場に行って、食事の準備を手伝って
下さい。」
「はい、了解です、で、今夜は、鹿肉ですよねぇ~。」
「うん、多分、そうだと思いますが、そうです、今、残っています鹿の解
体をお願いしますね。」
「は~い、司令官、了解しました、では、みんな、ナイフは。」
「小隊長、何時でも行けますよ。」
「じゃ~、みんな行こうか。」
この小隊は、今から、一体、何頭の鹿を解体する事になるのだろうか、そ
の後、暫くは、各小隊が、次々と仕事をこなし、夕刻近くになる頃。
「隊長、最初の村民が到着します。」
「分かった、直ぐに行きますので。」
司令官と、リッキー隊長は、中央広場へ向かう。
幾ら、小さなお城でも、城主の広間から、中央広場までは遠い。
「いや~、ご苦労さんでしたねぇ~。」
その村民達は、城から、一番遠くの村から着いたのだ。
「皆さん、お疲れでしょう、今夜は、此処で食事と取り、明日の早朝に出
発しますので、他の人達が到着するまで、暫く、待って下さいね。」
司令官は、にこやかな顔付きで話しをする。
「兵隊さん、本当に、来るんですか、その何とか言う敵の軍隊ですが。」
「其れは、間違いは有りませんよ、ですから、我々が、此処に来て、皆さ
んを、我々の大きな農場に来ていただくのですから。」
リッキー隊長の話し方も、村民に恐怖心を持たせない様にと、柔らかくし
ている。
「隊長、続けて着ます。」
「じゃ~、皆で、準備に入って下さいね。」
手の空いた兵士達は、荷車に積み込んだ、食器類を出し始めている。
だが、その中で、まだ積み込みを行なっている馬車も有る。
「隊長、城主達と、城内な人達全員を呼んで下さい、お願いします。」
「はい。」
リッキー隊長は、走って、城の広間に向かった。
「警備隊長、大変、ご苦労様でした。
戻られて直ぐで、申し訳ないですが、馬を休ませて下さい。
其れが、終われば、全員、この場所に集合をお願いします。」
「はい、司令官殿。」
「隊長、その殿は、止めて下さいね、お願いしますね。」
「えっ、でも。」
「よろしいのですよ、まぁ~、其れよりも、馬を。」
「はい、了解しました。」
その頃、城の中から、城主を初め、次々と、中央広場に集まって着た。
「警備隊は、まだですが、始めます。
お城の全員と、領民の人達に、お話が有ります。
簡単に終わりますので、では、領民の中で、お腹に、子供さんが居られる
女性は居りませんか。」
「はい、私です。」
一人の女性が手を挙げると、更に、もう一人と、二人が妊娠している。
「はい、では、そのお二人は、城の馬車に乗って下さい。」
「えっ、私達は農民ですので、お城の馬車に乗るなんて事は出来ません
よ、だって、お姫様が。」
「彼女は、他の馬車に乗りますので、心配は要りませんよ、次に、小さ
な、そうですねぇ~、3才未満の子供さんが居られる女性の中で、一番、小
さなお子さんをお持ちの女性は。」
「はい、私です、二人の女の子が。」
「では、貴女は、先程の妊婦さんの馬車に、子供さんと乗って下さい。」
「えっ、でも、二人の女性は、妊娠されているのでしょう。」
「まぁ~、3人は、女性ですから、私は、心配しておりませんよ。」
その馬車は、城主と后が乗っているのだが、城主は、何も言わず、静かに
聴いている。
「では、次に、3歳から、5歳までの子供さんをお持ちのお母さんは。」
「はい。」
と、次々に10人が手を挙げた。
子供達も小さく、残り4台に乗せ様と。
「では、その中で子供さんが二人の人は。」
「はい。」
と、二人の女性が手を上げ、残りの女性の中で、一人だけが、3人の子供
が居ると分かり、前の二人の内、一人は、男の子だったので、別の馬車に、
そして、3人の子供が居る女性が、その馬車に乗る事になった。
残りの女性達は、子供が一人なので、1台に3人が乗り、子供達も一緒に
乗れる事に成った。
「皆さん、申し訳有りませんが、之は承諾して下さいね、他の馬車には、
女性と子供が乗りますが、10歳以上の子供さんは、全員、馬に乗って頂ま
す。」
「あの~、司令官様、オレは、男だから、何も文句は無いですので、歩き
ますので。」
「いいえ、領民の皆さんは、全員、馬に乗って頂ます。」
「そんな事をすれば、兵隊さん達が歩く事になりますが。」
この時、兵士の一人が、立ち上がり。
「司令官、よろしいでしょうか。」
「はい、よろしいですよ。」
司令官も、直ぐに分かった、この兵士は、大芝居をすると。
「司令官、実はねぇ~、昨夜なんですがね、私の、足が話をするんです
よ、オイ、お前、何時まで馬に乗ってるんだ、オレ様は、お前の足だが、何
日も馬に乗ってるんで、歩き方を忘れそうになってきたんだ、明日からでも
いいから歩いて欲しいんだ、で、無ければ、オレ様は、歩き方を忘れて転ん
でしまうからよ~って言うんですよ、そんな訳ですので、私は、足の言う事
を聞きまして、明日からは歩きたいのです。」
其れに続けとばかりに。
「何だ、お前もか、実は、オレも言われたんだよ、だって、転ぶと怪我を
するからって言われたんだよ。」
其れからは、次々と、兵士達が言い出すので。
「ねぇ~、皆さん、聞いてのとおりですからね、我が、第5番大隊の兵士
全員は歩きま~すので、司令官、許可をお願いします。」
リッキー隊長は、舌をペロット出すのだ。
「はい、分かりましたよ、実はね、私もなのでねぇ~、足の怒られました
ので、私も参加しますからね。」
この兵隊達は、一体、何を考えて要るのだろうか、子供でも分かる様な大
嘘を平然とした顔で言っている。
だが、その言葉使いからは、誰の命令でもなく、自らの意思で、其れに、
司令官も同じで、兵士達全員が大笑いしている。
今まで、こんな軍隊が有るなどとは聞いた事が無いと、城主は、思い、で
は、司令官達が言った様に、将軍と言われる人物は過去には、殆ど命令のし
なかったと言うのは事実なんだろうが、全く理解に苦しむが、この様な、兵
士達であれば、全てを任せ様と、其れが、自分達や、領民が生き残れる手段
なのだ。
「兵隊のお兄さん、そんな話、僕は聞いた事が無いよ、だって、足が話し
をするなんて、嘘だよ。」
小さな子供も首をかしげているが。
「本当なんだよ、だって、お兄さん達兵士はね、此処に着くまでず~っ
と、馬に乗ってたんだよ、だからね、足が歩いて欲しいってね。」
「兵隊さん、本当に在り難い話で、オレは、何てお礼を言っていいの
か。」
「いや、別に、お礼なんていりませんよ、其れよりもね、農場に着いたら
ね、皆で、農場造りに就いて下さいね、そして、私達に、美味しい食べ物を
ね、私達は、それで、十分なんですから。」
「隊長、私も、こんな姿を初めて見ました。」
「そうですか、だから言ったでしょう、我々は、何時もこんなバカな連中
と楽しく仕事をしているんですよ。」
警備隊長も、初めて見る光景だった。
「では、その様な訳ですから、領民は、我々、第5番大隊の馬に乗って下
さい。」
「今、リッキー隊長から聞かれたとおりですので、領民の皆さんは、何も
遠慮する事は有りませんので、城主も馬に乗って頂ます。」
「司令官、私も、歩かせて下さい。」
「いいえ、其れは駄目ですよ、其れと、ハーナさんも、荷車ですが、我が
隊が御者を勤めますので、その横に座って下さいね。」
「はい、司令官様。」
いやはや驚いた、さっきまでとは、全くの別人の様だ、侍女の話と、兵士
達の話が、ハーナの気持ちを動かせたのだろうか。
「侍女の方々も、各荷車の御者の隣に座って下さいね。」
二キータを初めとする侍女達は、実に素直だ。
「じゃ~、皆さん、食事にしましょうか、長い間、申し訳無かったです。
第1、第2中隊は、女性と子供、領民の食べ物を、領民の皆さん、お腹が
破裂するまで食べて下さいね。」
「本当にいいの、お代わりしていいの。」
「うん、いいよ。」
「わぁ~い、ねぇ~、お父さん、お兄さんが、食べていいよって、言ってくれたよ。」
「うん、良かったね、さぁ~、食べな。」
「うん。」
子供が、口に入れると。
「お父さん、大きなお肉が入ってるよ。」
「えっ、本当か。」
父親も一口入れると。
「本当だね。」
「僕、こんな大きなお肉、初めてだ、わぁ~、何個も入ってるよ。」
兵士達は、領民には、大きな肉を選り分けて入れている。
「姫様、如何ですか、私は、あの人達が本当に信頼出来る様の成りました
が。」
「うん、そうねぇ~、だって、私も、今まで、この様な美味しい食べ物っ
て、初めての様な気がします。」
その傍に、警備隊長が来た。
「姫、先程は、失礼しました、お許し下さい。」
と、頭を下げると。
「いいえ、私が、間違っておりました。
私は、あの人達が、自分達を犠牲にしてでも、領民の事を考えておられま
す。
其れに、先程の兵隊さんの言葉は、誰の命令でもなく、兵隊さん自身の言
葉だと思い、私も、考え直す事にしたの。」
「其れは、在り難い話しです、姫も、暫くは辛いと思いますが、司令官や
大隊長、其れに、ホーガン隊長の言われる話は本当だと思います。」
「はい、今、私は、何か分かりませんが、幸せな気持ちです。」
その時。
「司令官、狼犬部隊が到着します。」
「そうですか、皆さん、元気そうですか。」
「はい、全員が、手を振ってま~す、今から、入ります。」
城門を入って着た、狼犬部隊の姿を見て、城の全員が、大変な驚きだ。
其れは、誰が見ても異様な姿で、全身を狼の毛皮で包まれているのだから
当然で有る。
「お~、みんな、久し振りだなぁ~、それにしても、よくもまぁ~、この
場所が分かったなぁ~。」
リッキー隊長は、知らなかったが、ホーガンが、教えていた、其れに、最
後の目印も。
「リッキー隊長、我々は、狼犬部隊ですよ、何処に隠れても見つける事が
出来ますのでねぇ~。」
狼犬部隊の全員が、狼の真似をするので大笑いに成っている。
「ねぇ~、兵隊さん、何故、あの人達は、なんで、狼の毛皮を着ている
の。」
子供達も、大変な驚きで、中の、幼い子供は泣き出している。」
「お~い、子供が泣くから止めろ。」
「はい、申し訳有りません。」
「あのねぇ~、あの人達はね、我々の農場にいる、軍隊の中でも、一番、
強いんだ。
其れに、あの狼の毛皮はね、明日出発して、行く農場で、数百頭の狼の大
群をやっつけたんだ、其れでね、将軍がね、名前を狼犬部隊って付けたんだ
よ。」
「じゃ~、兵隊さんでも勝てないの。」
「そりゃ~、そうだよ、だって、あの狼犬部隊の隊長がね、あの人なんだ
よ。」
「へぇ~、じゃ~、あの狼人間が一番強いんだね。」
「う~ん。」
兵士も答えられない、子供は素直な気持ちで言った。
其れよりも、狼犬部隊が最強だと言った、その隊長が、ホーガンと分かれ
ば、子供にすれば、ホーガンが、一番強いと思うのが自然なのだ。
「でもねぇ~、あの人の上には、もっと強い人が居るんだよ。」
「だって、今、あの人が隊長だって、隊長さんって、一番、強いんでしょ
う。」
「うん、其れが普通なんだけどね、お兄さんの居る、農場じゃ~、将軍な
んだよ、だって、将軍の軍服はね、黒狼の毛皮なんだ。」
「わぁ~、本当なの、お父さんがね、黒狼が、一番、怖いって。」
「うん、そのとおりなんだ、だからね、将軍が、一番強いんだよ。」
一方。
「で、収穫は、どうでしたか。」
「はい、司令官、見て下さいよ、山積みなんですよ。」
「之は、また、大量で。」
「でも、もう、骨と内臓は取って有りますので、正味、肉だけなんです
よ。」
「此れで、何頭分なのですか。」
「分かりませんよ、だって、荷車の全部が、これですからねぇ~。」
其れは、大変な量で、それだけ有れば、数日間は、大丈夫だと思い。
「それで、偵察は。」
「はい、今の所は、大丈夫です、帰りもですから。」
と、言ったが、暫く考える振りをし、彼は、小声で。
「司令官、出発は、明日の早朝ですよねぇ~。」
「うん、分かりましたよ、明日、少しですが、分かった、任せますよ。」
小声は普通に戻り。
「司令官、明日の早朝、私達へ、北に向かい、敵の動向を調べますの
で。」
「はい、分かりました、では、よろしく、お願いします。」
リッキー隊長も、ホーガンもわかったのだが、城主や、他の者達には、一
体、何の話なのか、分からないが、其れからも、四方で、同じ様な話があっ
た。
「領民の皆さんは、今夜、兵士達の兵舎で眠って下さい。
5番大隊と警備隊は歩哨に、火は消さずに朝まで、では、皆さん、警備隊
の案内で兵舎に、第1、第2中隊は、後片付けをお願いしますね。」
さて、明日は、この城ともお別れで有る。
城主も、姫や侍女達も、何時もとは別の所で眠る事になったが、やはり、
直ぐには、眠れ無かったのだろう、その内、空が明るくなり始め、出発の時
が来た。