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闇の帝国    作者: 大和 武
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 第 63 話。 聞かされた話は事実かと上野が思うのは。

「なぁ~あんちゃん、飯田さん達が東京から持って帰って来た中で陸蒸気の模型が有ったと思うん

だけど今何処に有るんだ。」


「その模型ならばお城の倉庫に有りますよ。」


「だったら見れるんだね。」


「宜しいですよ、鈴木様、倉庫に案内して頂けますか。」


 鈴木はげんたを城中に有る倉庫へと連れて行き。


「この中は見れるのかなぁ~。」


「私はどの様して開けるのか分かりませんが、飯田様ならば知っておられると思いますよ。」


 その飯田達は吾助や店の人達は工場と他に必要な建物を何処に建てるのか最終の答えを出さなけ

ればならないが、源三郎が松川で粘土の採掘を終えた場所を指定したが、やはり粘土が搬出された

土地では余りにも柔らかな土地の為に大きな工場を建てるには不都合だとわかり、山賀の北に有る

草地に目を付け調査に入っており、何時になれば戻って来るのかもわからない。


「でも今は山賀で土地を調べてると思うんだけど。」


「そうですよ、工場を建てる場所を何処に建てるのか、其れを調べておられ直ぐには戻って来られ

ないと思いますが。」


「そうか、やっぱり駄目か。」


「技師長は何を知りたいのですか。」


「オレが知りたいのは丸い筒の中がどんな作りになってるのかを知りたいんだ。」


「其れならば工藤大佐の方が詳しいと思いますよ、軍艦の基本を考えられたのですから。」


「そうか、だったら今から駐屯地に行ってくるよ。」


 げんたは何を知りたいのかわからない鈴木だが、げんたは勢いよく大手門を飛び出し駐屯地の工

藤の所へと向かった。


「工藤さんは。」


「今は居られると思いますよ。」


「有難う、じゃ~。」


 と言って又も走り出した。


「工藤さん。」


 と言って部屋に入ると吉田も居た。


「技師長、一体どうされたんですか。」


「少し教えて欲しいんだけど、陸蒸気はどんな方法で蒸気を作るんですか。」


「其れならば実に簡単でして、丸い筒の中には細い管を通し管の中には水が入っておりまして、そ

の管を石炭の火力で熱すると中の水は蒸気となり、其れが陸蒸気の動力源となるのです。」


「でもなぁ~、細い管は山賀では作れないんでしょ、う~ん、何か方法は無いかなぁ~。」


「技師長は何を考えておられるんですか。」


 工藤もげんたが何の為に陸蒸気の動力源を聞きに来たのかもわからない。


「飯田さん達が持って帰って来た機械を動かす方法を考えてるんだ。」


 飯田達は東京から十数台の機織り機を持って帰って来たが、今の連合国には機織り機の動力源が

無く、今のままでは宝の持ち腐れで何時まで経っても洋服の生地を作る事は出来ない。 


「ですがあれだけの大きな機械を動かす為には強力な動力源が必要でして、我々の連合国にはその

様な強力は力を出す機械は有りませんが。」


「だけどなぁ~、何か有ると思うんだ、う~ん。」


 と、又もげんたは腕組みし考え始めた。


「大佐殿、確か軍艦にも同じ方法で作られるて要ると聞きましたが。」


「そうだったなぁ~、だがあれでは管が余りにも太すぎるからなぁ~、そうだ参謀長殿にお願いし

て見ようか。」


「えっ、一体何を頼むんですか。」


「製鉄所では陸蒸気の部品も作っておりますので、上野参謀長に陸蒸気の管を。」


「オレは陸蒸気を作りたいんじゃ無いんだ、だけど管と、そうだ陸蒸気は要らないけど別の物を作

るから管や其れに関する物が手に入ればいいんだ。」


 げんたは陸蒸気は作らないと、だが関連する物は必要だと言う。


「そうだあんちゃんも一緒に連れて行こう、向こうの状況も知りたいと思うんだ。」


 源三郎が山向こうの軍港建造現場を離れ一体何日経ったのだろうか、あれから後藤達は何処まで

造れたのか確認する必要が有り、源三郎も承諾し数日後、げんたと工藤と数人を連れ北側を上り、

上野が居る軍港建設現場の駐屯地に入った。


「総司令長官殿が突然来られると言うのは余程の事だと思うのですが。」


「実は上野様に大変なご無理をお願いしたい、いやその前に軍港の建設状況は如何でしょうか。」


 源三郎は本題に入る前に後藤達の様子を知りたいと思った。


「いや~其れが、あの方々は物凄い人達の集まりですねぇ~。」


 上野が言う物凄い集団と一体何を意味して要るのだろうか。


「私は上野様が申されます物凄いと言う意味が理解出来ないのですが。」


 だが源三郎もわかって要る、後藤は官軍に入る前は先祖から続く治水工事の家計で、だからと

言って連合国で行って要る狼の侵入除けの柵や大小の池作りは後藤にとっては何とも普通の仕事の

はずで有る。


「総司令長官殿はご存知ないのですか、吉三組さん達ですよ、あの人達は本当に農民の集まりなの

でしょうか、私から見ればあれだけの工事をされるのですから特別な技術を持っておられる様に見

えるのですが。」


「吉三組の殆どが農民さんに間違いは有りませんが。」


 源三郎は其れが一体どうしたのだと言いたいのだが。


「実を申しますと、私も最初は多少の不安を持っておりまして、この人達は本当に出来るのかと

思っておりまして、ですが最初海底の砂を取り除く作業に入られたのですが、其処で話し合いが始

まったのです。」


 そうか、上野が不安を抱いたのは直ぐ作業に入るのでは無く、現場に入ってから話し合いが始

まった事なのだ。


 上野にすれば話し合いと言うのは作業に入る前に行うのが普通だと思っており、だが吉三組はそ

の反対で現場に入ってから話し合うと言う方法で有る。


 確かに何も知らない者達からすれば何故今頃になって話し合いをするんだと思うだろうが、吉三

達は何も事前の話し合いを無視して要るので無く、事前の話し合いと言うのは現場を見ずにされて

おり、だが実際現場に入ると思わぬ所から問題が発生し、問題解決の為に余計な手間が掛かる、其

れを吉三達は連合国の柵作りで体験し、その苦い経験から現場に入ってから最終の話し合いをする、

これが彼らの手法で有る。


「其れが吉三組の方法だと私も聞いております。


 吉三組は我々の連合国で狼の侵入除けの柵作りに入られたのですが、吉三組も山に入る前に何度

と無く話し合いを持たれ、そして、いざ現場の山に入ると、其処には予想もしなかった問題が次々

と発生し、作業を続けるどころでは無かったのです。


 其れで吉三さんが考えられ現場に入ってから最終の話し合いを行うと、これが吉三組の方法でし

て、確かに余計な話し合いだと思われるかも知れませんが、全ての話し合いが終われば吉三組の動

きは全く別ものの様になり、結果は予想よりも早く終わるのです。」


「私も今やっと納得出来ましたよ、確かに今申されました様に何故だと思ったのですが、其れが終

わり作業に入られてからは恐ろしい程の動きでして、私は驚いて要るのです。」


「吉三さんは確かに農民さんですが、官軍の頃より上官達の話を聞き其れを仲間に伝えておられ、

吉三組では代表になられましてね、後藤さんの指示を伝える役目ですが、吉三さんは後藤さんの単

なる手伝いでは無く、後藤さんにとっても吉三組の仲間にしても無くてはならない存在の人物でし

てね、作業内容により人数、いや適材適所と申しましょうか全て吉三さんが決めて行かれるのです

が、仲間の人達も吉三さんには全幅の信頼を置いておられますので、今申されました現場での話し

合いが最終的な決定なのです。」


「其れでは吉三さんは後藤さんが出される作業内容により配置する人達までも決めて行かれるので

すか。」


「吉三さんが決めるのでは無く仲間との相談、其れが現場での話し合いなのです。」


「成程ねぇ~、よ~く分かりました、私も今後どの様にされて行くのかを楽しみにしております。


 其れで本日の用件ですが総司令長官殿が直々来られたと言うのは余程大事な事柄だとは思います

が、私は一体何を致せば宜しいのでしょうか。」


「詳細に付きましては技師長から聞いて頂きたいのです。」


「オレはげんたって言うんで、其れでこれだけの品物が欲しいんです。」


 と、げんたは調達する品物の一覧表を渡した。


「ほ~成程ねぇ~、ですが、これだけでは陸蒸気は造れないですよ。」


「オレは陸蒸気を造る気は無いんだ、でも有る人達が大変な苦労して大きな機織り機を十数台も

持って帰って来たんだ、だけど機織り機を動かす為の動力源が要るんだ、でもなぁ~オレ達の国に

は動力源を作る為の道具も無いんだ、其れでオレが考えた方法で動かせればと考えたんだ。」


「承知致しましたが少し日数が掛かりますが其れで宜しいでしょうか。」


「本当ですか、あんちゃん、これで機械は動く様になるぜ、あ~良かった、これでオレも少しだけ

ど安心出来るなぁ~。」


 上野は技師長が陸蒸気を造らないと、だがこれから時代に陸蒸気は最も必要な交通手段で、今ま

での様な馬で物や人間を運ぶのとでは大きな違いで、だが何故陸蒸気を必要としないのか、やはり

別の乗り物を考えて要るのだと思うのだが。


「ですが一台分では若しもの時には修理も出来ませんので数台分を調達しましょう。」


「其れなら尚更助かりますよ、オレは修理が下手だからなぁ~。」


「技師長は其れだけでよいのですか、専用の道具も必要となると思いますよ。」


 源三郎はさり気なく言うと。


「そうだったなぁ~、専用の道具もお願い出来ますか。」


「勿論で手配しますが、司令本部にも報告しなければなりませんので調達方法は私に任せて頂きた

いのです。」


「あんちゃんも何か要る物が有るんだろう。」


 やはりだ、げんたは源三郎が何故駐屯地に来たのかを理解して要る。


「総司令長官殿も何か必要な物が有るのでしょうか。」


「う~ん。」


 と、源三郎は何かを考えて要る様で、だが直ぐには答えないのか、其れとも他に何か有るのか。


「総司令長官殿は私を疑っておられるのも無理は御座いません。


 あの時も私のご無理を田中様にお伝えし、その話に答えて頂き、私は何と御礼を申し上げて良い

かもわからないのです。 


 私は総司令長官殿が何処から来られたのかをお伺いするつもりも御座いませんし、例え伺ったと

しても司令本部や政府に報告するつもりも御座いません。


 其れは何故かと申しますと、総司令長官殿は自らの命と引き換えにしてでも領民だけは守るお方

だと考えたのです。


 此処に居る者達は全て私の直属の部下で、私も信頼も信頼しておりますのでどうか必要な品を教

えて頂きたいのです。」


 其れでも源三郎は暫く何も話さず、やはり何か有るのかと上野は思った。


「大変失礼致しました、私は何もご貴殿や皆様方を信用していないのでは御座いません。


 私が本当に知りたいのは日本国がロシアと言う国と戦をして果たして勝利する事が出来るのか、

其れが一番知りたいです。」


「総司令長官殿も皆様方も良く聞いて頂きたいのですが、私が収集した情報から考えたのですが、

日本国がロシアと戦ったとしても、百に一、いや万に一つも勝利する事は不可能だと考えておりま

す。」


 上野も日本国がロシアと戦争しても絶対に勝つ事は不可能だと考えて要る。


「私は日本国がどれ程の国家なのかも、ましてやロシアと言う国などは、上野様のお話を伺うまで

は全く知りませんでした。」


「確かにその様にも思えるのです。


 私も官軍が幕府との戦に勝利し、新国日本が誕生し、その後にロシアと言う欧州の強国が有ると

しり、そのロシアが日本国は黄金の成る国だと勝手に思い込み、日本国を植民地にすれば全ての金

をロシアが奪うと情報が欧州に派遣した武官から入り、日本政府は何としても植民地にされる事は

避けたい今軍備を整えて要るのです。」


「ですが以前のお話しでは他の欧州の国がロシアの大艦隊が向かうのを止めて要ると伺いました

が、其れは誠なのですか。」


「其れは誠だとは思いますが、欧州の国々でも日本国を植民地に加えれば日本国の金は全て祖国に


送る事が出来、祖国は今以上に栄えると、ですがお互いが牽制しておりまして何れの国も日本国へ

軍隊を出撃させる事も出来ず、ですがロシアが何れかの国を手を組む事にでもなれば、今までの緊

張していた糸が切れ、一気に状況が変わり、ロシアと手を組んだ国が一気呵成に日本国に攻め込ん

で来る、其れは政府も承知しており、其れだけは何としても止めねばと欧州に派遣された武官も同

じ考えで欧州の国々にも最新の情報提供を働き懸けて要ると聞いております。」


「ですが其れも何時まで続くのかわからないのですね。」


「正しくその通りでして、総司令長官殿もご存知だと思いますが、日本国と言う国は周りを海に囲


まれており、その海も年中穏やかでは無く、目の前の海もですが南の海も大きな流れが有り、その


流れに乗れれば良いのですが其れが意外に簡単では無く、欧州の国々は大陸に有る国々を植民地に


出来たのですが、其れは殆どが陸続きでして、ですが日本国に行き着くには大きな海の流れに勝た


なければならないのです。」


 元太も言ってたが、野洲の、いや連合国の前に有る海は強い流れで漁師達も余程の事がなければ外海には出ないと言う、やはり元太を含めた多くの漁師達の先祖にも強力な流れが有ると知っていたのは間違いは無い。


「ですが当時の船は帆船で、ですが今は殆どが蒸気船で少々海が荒れていたとしても操船技術で進

める事が出来るのです。


 更に木造船とは桁違いで鉄の板を骨組みに鋲で止めますので、大きさも違いまして二倍近くまで

造る事が出来るのです。」


「なぁ~あんちゃんは何を迷ってるんだよ、此処まで何の為に来たと思うんだ、まぁ~考えるのは

オレに任せればいいんだからなっ。」


 げんたも何が要るのをはっきりと言いたい、だが源三郎が切り出すまではこれ以上は言えない。


「総司令長官殿は私を信用して頂きたいのです。


 若しも、若しもですが総司令長官殿が必要とされる品物に付いて行き先が知られる様な事態にな

りますれば私の命を取って頂いても宜しいのです。」


 源三郎はそれからも何かを考えて要る様子で暫くの沈黙が続いた。


「上野様には大変申し訳無く思っております。


 実は我が連合国には今だ他国の、いや新政府も知らない特殊な船が有りまして、我々は潜水船と

申しております。」


 遂に連合国以外の、其れも新政府軍の参謀長に潜水船の存在を知られる事になった。


「えっ、今何と申されましたか、私の聞き違いで無ければ潜水船と聞こえたのですが。」


 周りに居る中隊長や小隊長達は大変な驚きで唖然として何も言えない状態で有る。


「正しくその通りでしてね、此処に居ります技師長が考え建造したのです。」


「技師長がと申されますと。」


 上野はげんたが本当に技師長なのかも先程の話を聞いても本当は信じておらず、げんたが余りに

も若く、その人物が官軍でも知らない潜水船を建造したと驚きの表情で有る。


「参謀長殿、間違いは御座いません。


 私も吉田も見ておりますので。」


「其れにしても工藤大佐でも潜水船は考え付かなかったのか。」


「私も外国の書物を多く読みましたが何れの書物にもですが、私自身が船と言うのは海の上を行く

物だと、其れが海中に潜るとは全く考えておりませんでした。」


「実を申しますと、我々と言うよりも吉田さんは潜水船に乗り此処の浜近くまで来て要るのです。


 上野様も覚えておられると思いますが、以前ですがこの浜に漁師の一人が小舟で流れ着いたの

を。」


「其れならば鮮明に記憶しておりますよ、確か与太郎さんと言う能登の漁師だと思いますが。」


「その通りでして、与太郎さんは我が連合国の漁師さんでして有る時誤って外海にでたのです。


 そして、流れ着いたのが此処の浜でして、勿論浜の漁師仲間も大変心配していたのですが、数日

後に無事で戻られ、与太郎さんのお話しで大きな入り江がと申しますか、湾の奥に大勢の官軍兵が

居ると申しまして、其れで数日後に今度は元太と言う漁師が此処の浜に来たのです。」


「やはりでしたか、私も与太郎さんは本当に流されたと思いますが、数日後に又も同じ能登から流

されて来たと言う漁師が、ですが私は余りにも不自然だと考えました。


 能登には旧幕府でも簡単に手の出せない鹿賀と言う強力な軍事国家が存在し、若しも鹿賀の国か

ら送り込まれて要るとすれば、多分大軍が我々の駐屯地近くまで来て要ると判断し、其れと申しま

すのは駐屯地の兵は僅か五百でして殆どが大工達職人で下手に戦を仕掛ける事も出来ないと思い、

元太と言う漁師の好きな様にさせておりまして、其れに官軍でも鹿賀の国の情報が余りにも少なく

どの様な武器を持って要るのかさえも分からない状態でした。」


「左様ですか、では工藤さんや吉田さんも鹿賀の国に行ったと考えておられたのでしょうか。」


「正しくその通りでして、工藤少佐が出撃してから数日程経った頃ですが、工藤らしき軍人と大勢

の兵隊が鹿賀の国へ向かって要ると、其れからは多くの部隊を編成し工藤少佐達を捜索したのです

が、何れの部隊も向こう側に見える高い山の麓付近で忽然と姿を消しており、官軍でも鹿賀の国は

聞きしに勝る強国だと思っていたのです。」


 工藤が連合国に来た後、吉田は別として小田切や五十嵐などが多くの兵士を伴い探した、だが結

果は全て失敗に終わった。


「ですが、何故それ程までに工藤さんを探しておられたのですか。」


「官軍の中でも工藤少佐が盗んだと言う連発銃と大量の弾薬はそれ程重要では無かったのです。」


「では工藤さんが学ばれたと言う外国の軍艦の事なのでしょうか。」


「その通りでして、連発銃や弾薬は補充出来ますが、工藤少佐の頭脳は補充出来ないのです。


 若しも工藤少佐が鹿賀の国に入り軍艦を建造するなれば当時の官軍としては手の出しようも無く

下手をすれば新政府は鹿賀の国に滅ぼされる可能性も考えられるのです。」


 官軍は工藤の頭脳が他国に、其れも能登に有ると言う鹿賀の国と言う強大な国家に流失するのを

恐れたので有る。


「ですが実際には我々の連合国に来られたのです。」


「参謀長殿、先程の元太さんと言う漁師さんですが、我が軍の参謀として、あの時の作戦を考え実

行されたのです。」


「何故に漁師が参謀に収まるんだ、私は全く理解出来ないぞ。」


「まぁ~其れが我が連合国でしてね、例え農民さんでも漁師さんでもそのお方の能力と申しましょ

うか、我が連合国では誰もが同じなのです。


「私が総司令官を望んだのでは無く、結果がその様になっただけでして、我が連合国の領民さん達

は多方面に渡り多くの能力を発揮されて要るのです。


 其れの最高の産物と申しましょうか、其れが潜水船でして、今度、我々は鉄の潜水船を建造する

計画なのです。」


「今申されました潜水船ですが、海中に潜るとなれば大砲は使えないのでは。」


「勿論でして、ですが技師長は別の武器を考えておりまして、今の私が説明を受けたとしても全く

理解出来ないと思います。」


「参謀長殿、技師長が何を考え、何を作りだすのかは全く分かりません。


 ですが我が連合国の武器と申しますのは全て技師長だけが考案されて要るのでは有りません。」


「では一体誰が、若しや武器を考案する専門の部隊でも有るとでも言うのか。」


 工藤の話し方では上野が言うのが本当かも知れない。


「我々の連合国では皆が考え、皆が作るのです。


 我々には大砲よりも強力な武器が有りましてね、持ち運びが可能で、兵士は数個づつ持っており

ます。」


「何だと、では連合国には大砲は無いと。」


 上野だけが驚くのでは中隊長達も大変な驚き様で一体どの様な武器なのかを知りたいのだが。


「上野さんが驚かれるのも当然だと思いますが、工藤さんが申されます様に我々の連合国軍には一

門の大砲も有りませんが、この武器は大砲以上に強力でして、大砲の様に砲弾を遠くへ飛ばす事は

出来ませんが、敵軍が少人数で半町以内ならば一個も有れば全滅させる事が可能なのです。」


「中隊長、今の陸軍に、いや軍隊にそんな武器は有るのか。」


「いいえ、飛んでも有りません、自分も初めて聞く武器でして、其れにしても連合国とは何と恐ろ

しい国でしょうか、自分は何も考え付かないのですが。」


 やはりだ一番驚いて要るのは上野では無く中隊長の様だ。


「総司令長官殿、鉄板ものですが、その他に必要な物をどの様な方法で此処に持って来るかを考え

ます。」


「中隊長さん、余り深刻に考えない事ですよ、其れはねぇ~普段の中に目標となるものが有るので、

其れを少しだけでも良いので注意深く考えれば直ぐに答えは出て来ると思いますよ。」


 今直ぐに鉄板は必要とはしないが、今から準備を進める必要が有り、だが一体どの様な方法で運

び入れるのだろうか、源三郎は上野や中隊長の決断力が試されると思って要る。


「中隊長、若しもだが司令本部に知れるとわしは当然の事だが君も軍法会議に掛けられ死刑を宣告

されるのは間違いは無いぞ。」


「自分は死刑なんか何とも思っておりません。


 其れよりもどの様な武器を造られるのかそちらの方が今は最も恐ろしんです。」


「そうだったなぁ~、若しも司令本部に知られたならば、わしと君は死刑だが、もっと恐ろしいの

は、例え一隻でも完成すれば日本海軍の軍艦は全て沈められるんだ、わしはそれを想像するだけで

も恐ろしいんだ。」


「参謀長殿、自分は一度製鉄所に勤めております友人に軍艦の資材をどの様な方法で受け送り出し

て要るのか書状を送り確かめたいと思います。」


「君は簡単に言うが友人と言うのは信用出来るのか。」


「其れを確かめる為にもどの様な返事が戻って来るのか知りたいのです。」


「中隊長さんのご友人だと申されますと同じ元官軍のお方なのでしょうか。」


「左様で彼の名は郷田と申しまして、自分の家とは隣同士で幼い頃よりの遊び仲間です。」


「郷田さんと申されるお方ですが、中隊長さんの書状を上官に見せられるとは考えられませんで

しょうか。」


 郷田と言う人物も追求されるだろうし、当然ながら司令本部への出頭命令が下り、中隊長も厳し

く問いただされる事になる。


「自分がこの地に来た理由も知っておりまして、二人は子供の頃よりの悪ガキと申しましょうか、

近所では悪名を轟かせておりまして、大人達があっと驚く様な事ばかり考えておりまして、奴の事

ですから誰からも追求される事の無い方法を考え付くと思います。」


 中隊長は郷田と言う人物は信用出来ると言うが、やはり書状を送ると言うのは若しもの事を考え

れば中止する方が良いと。


「私は中隊長さんのお気持ちは大変嬉しく思いますが、やはり若しもと言う事も有り得ると思いま

すよ、私は何も中隊長さんや郷田さんの事を申し上げて要るのでは御座いません。


 と申しますのは書状と言うのは必ず差出人と受け取り人の名が分かるのです。


 若しも差出人の名が郷田さんのお仕事とは直接関係の無い人物と知れば差出人の人物や書状の

内容を聞かれるやも知れないのです。」


「その通りかも知れないぞ、以前だがこの部屋で話した内容が知られており、君達が調べた結果で

差出人の名の無い書状から判明した事は君も覚えて要ると思うんだ、まぁ~その話はゆっくりと考

えてだ、わしは何としても潜水船と言う我々にはまだ未知の軍艦でロシアの大艦隊を撃破出来るな

らば最高だ、だが表向きは日本海軍の勝利に終わらせる、其れが総司令長官殿のお考えでは思って

おります。」


「左様でして、我々は誰にも知られる事の無い闇の帝国の軍隊だと、其れならば皆様方にもご迷惑

をお掛けせずに済むのでは御座いませんでしょうか。」


「今申されました闇の帝国の軍隊とはどの様な意味を持って要るのでしょうか、私が思うには海中

は闇で有り、暗闇の海中から忍び寄る海の忍者では御座いませんか。」


「ほ~成程ねぇ~、海の忍者ですか、これはまた素晴らしい名を付けて頂きまして、潜水艦は海の

忍者そのものだと思いますねぇ~。」


 源三郎が言う連合国は明示新政府も軍司令本部も全く知られず、今も松川から菊池の入り江に有

る洞窟の中には十数隻の潜水船が係留されており、更に今度は山賀の断崖絶壁の内側には巨大な秘

密の潜水艦基地を建設し、数十隻もの海の忍者を配備しロシアの大艦隊を迎え撃つ、そして、全て

の作戦が成功出来れば日本国はロシアの植民地にはならず、其れよりも欧州の国々から見ればロシ

アと言う強大な国家を相手に新生日本国が勝利を収めた、この事実はこの先も大変な脅威になる事

はまず間違いは無い。


「上野様、先程技師長が書き出しました品物ですが、出来るならば数台分をお願いしたいのです。


 技師長は陸蒸気は造らないと申しましたが、ですがよ~く考えてもどの品物も今の我が連合国で

は作るれる物では有りませんので、陸蒸気を数台分造れだけの品物でお願いしたいのです。」


「あんちゃん、オレはなぁ~、同じ陸蒸気を造るつもりは無いんだぜ。」


「其れはわかっておりますよ、ですがその前に本物の陸蒸気がどの様な構造になって要るのかを知

れば後々役に立つと思うのです。」


「あっそうか、オレも分かったきたよ、うん、そうか成程なぁ~、そうかうん。」


 と、げんたは独り言を言うが、源三郎が言った意味を本当に理解したのだろうか、そして、明日

は後藤達が建設を進めて要る軍港の現場へと向かうので有る。




      

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