第 13 話 待ち構えていた恐怖。
ウエス達は、過酷な状況でも必死だ、この仕事が、いや、任務なのか、それ
は、堤防造りと大池造りが終われば、対岸で待機する仲間に知らせなけれ
ば、自分達の命が無いと考えて要る。
勿論、兵士達も必死で、指定されたところに着くと大木を下ろし、食事を
取り直ぐ戻る事になるのだ。
兵士達の中には、余りにも過酷な仕事の為に食事を取る事さえ出来ない程疲
れきっていた。
農場の外では、運び込まれた大木を使い道によって加工されていき、15
日から20日も経てば城門や内部と城壁造りも大変な速さで完成されて行
く。
木こり達も殆どが戻り、大工達の指示により、大小の道具を使い加工に入
って要る。
兵士達も途中から要領もわかり、今では、大工達の指示がなくても組み上
げて行けるので有る。
「お~い、次は。」
「わかったよ。」
と、お互いが声を掛け合って無駄なく作業が進んで行く。
「司令官、こりゃ~大したもんだねぇ~。」
「はい、私も、大変驚いております。」
「だがよ~、其れにしても頑丈そうな城壁じゃないか、これに、まだ、岩
石を積み上げるんだから、敵軍はもっと驚くぜ。」
「はい、その様に、私も思っております。
岩石は削る事無く積み上げますので。」
「まぁ~、これを見りゃ~よ、敵軍は簡単に落とせるって思うだろうがよ
~、手を入れたって、角が無いからつかむところが無いんだからなぁ~。」
「私も、閣下と最初にお会いした時、この城壁ならば簡単に落とせると思
いましたが、其れは、無理だと証明したのが、狼で有り、ウエス達の軍隊で
御座いました。」
「うん、オレもなっ、最初は迷ったんだ、だがよ、やはり、角が無いから
よ~、手は入っても、何処にもつかむところが無いんだ、其れで、これを城
壁に使えば簡単に打ち破る事は出来ないと考えたんだ。」
「本当で御座いますね、閣下、其れにしても、閣下が予想されましたより
も早く完成するのでは有りませんか。」
「うん、そうなんだ、で、司令官、最後の城壁は何時頃出来るんだ。」
「はい、私も、其れが気になっておりましたので、数日前、大工さんに聞
きましたところ、後、10日程で加工が終わるとの事で御座います。」
「えっ、後、10日で加工が終わるってのかよ~、じゃ~よ、30日後に
は城までが完成するってのか。」
ロシュエは少し笑みを浮かべるので有る。
この頃には野盗隊を改め、狼犬部隊も現場へと復帰して行ったのだが、有
る時。
「将軍。」
ホーガンが声を掛けてきた、ホーガンは大変な重傷にも関わらず、今で
は、すっかり元気になり、狼犬部隊の先頭になり活躍している。
「オ~、ホーガンかよ、一体、どうしたんだよ~。」
「実はですね、あいつらの事なんですが。」
ホーガンのあいつらと言うのは、片方の足を切断した者と、片腕の中程を
切断した仲間達の事で有る。
「えっ、あいつらって、一体、誰の事なんだよ。」
ロシュエも一瞬わからなかったのだ、ロシュエは、あいつらとは、ウエス
達の事だと思ったからなのだ。
「はい、足と腕を切断した、オレ達の仲間の事なんですが。」
「あ~、彼らの事かよ~、オレは、一瞬、ウエス達の事かと思ったんでよ
~。」
「済みません。」
ホーガンは頭を下げ。
「いや、いいんだよ、オレが勝手に間違ったんだが、うん、其れで。」
「はい、オレも現場に復帰出来ましたんですが、将軍は、あいつらの事を
何か考えて要ると思うんですが。」
彼らの足の傷も、腕の傷も殆ど治り、後、暫く経てば不自由は残るが日常
の生活に戻れるところまで回復してきている。
だが、この頃、早朝と夜間は冷え込み、彼らは痛みを堪える毎日なので有
る。
「ホーガン、オレも考えてるんだ、彼らも本当は狼犬部隊の一員として現
場に行きたいと考えて要ると思うんだ、だがよ~、其れは、とても無理なん
だ。」
ホーガンも、其れは十分理解はして要る、だが、現実を考えれば、馬に乗
り、ホーガンを放つと言う事は出来ないと。
「はい、オレもわかってます、でも、今の今まで、あいつらとは一緒にな
って戦ってきたんですよ、其れを、突然、お前は、もう、オレ達とは一緒の
行動は出来ないって、オレは、とてもじゃないですが言えないですよ。」
ロシュエも、ホーガンの気持ちは痛いほどわかっている。
「ホーガン、オレだって、お前の気持ちと一緒なんだ、だがなぁ~、彼ら
に、今まで通の活躍を期待するのは、それこそ、言い方は悪いがよ~、酷っ
てもんだぜ。」
「じゃ~、将軍は、何か方法を考えてるんですか、あいつらは、傷が治れ
ば、元に戻るつもりですよ。」
「ホーガン、彼らの事は、オレに任せてくれ、決して悪い様にはしないか
らよ~。」
「はい、わかりました、将軍、あいつらの事をよろしく頼みます。」
ホーガンは、狼犬部隊へと戻って行く。
「司令官、外の状況を見に行くぞ。」
「はい、畏まりました。」
二人は、大工部隊のところへと向かった。
「おやっさん、どうだ。」
「将軍、あの大工さん達は素晴らしいですよ、やはり、本職の腕前は本当
に凄いです。」
「へ~、そんなに凄いのかよ~。」
「まぁ~、将軍も司令官も上に上って下さいよ、本当に驚きますから。」
「うん、わかったよ、じゃ~、行くか。」
ロシュエと司令官、其れに、大工のおやっさんは、完成したばかりの城壁
の上に上がって行くので有る。
「なぁ~、おやっさん、その素晴らしいってのは、一体、何処なんだ
よ。」
「将軍、一番、上に行って下さい、直ぐにわかりますから。」
3人は、内部を3階建に作られた最上階に上がった、すると。
「おやっさん、之は、一体、何なんだよ~、こんな、隙間を造ってよ
~。」
ロシュエは、隙間と思った間から真下が丸見えの場所を見つけたのだ。
「将軍、丁度、大工さんが上がって着ましたので、彼に説明してもらいま
すのでね、大工さん、将軍に、この隙間の説明をして下さい。」
「あんた達かよ、この隙間を作ったのは。」
「はい、将軍様、私も、木造の城壁は初めてだったんですが、木造だから
作れたんです、で、この隙間ですが、私達の間では、矢口と言っておりまし
て。」
「何だ、その矢口ってのは。」
「はい、将軍様、この矢口の下を見て、何が見えますか。」
ロシュエは、矢口から下を見ると。
「そんなの決まってるじゃないか、城壁だよ、それも、真下になっ。」
「ええ、そうなんです、私は、以前のお城でも、この様な矢口を作ったん
です。」
「えっ、じゃ~、前と同じなのかよ~。」
「いいえ、其れが違うんです、私は、戦の事は知りませんが、どんなに頑
丈なお城でも、敵が、城壁の真下に来ると、此方からは攻撃が出来ないとわ
かったんです。」
「そりゃ~、当たり前だよ、だってよ~、敵の全部を城壁に着くまでに殺
す事は出来ないんだぜ。」
「将軍様、私も、そのとおりだと思います。
でも、この矢口は真下の敵に攻撃が出来るんですよ。」
「えっ、じゃ~、何か、突破した、数十、数百の敵が真下に入ると、この
矢口からホーガン矢を放てるというのかよ~。」
「はい、さようで御座います。」
「だがよ~、下からも見えるんじゃ無いのかよ~。」
「はい、勿論、見えると思いますが、真下から、この細い隙間を狙っては
放つ事は無理だとは思いますが。」
「司令官、誰でもいいからよ、何人か呼んでくれないか。」
「はい、直ぐに。」
司令官は、下に行くのだ。
大工は、戦は知らないが、以前の城でも作ったと言うので有る。
「あんた達が作ったのはどんな矢口だったんだ。」
「はい、以前、作ったのは、石を削って作りました。」
「えっ、石を削ったのかよ~。」
「はい、ですから、本当に大変でした、でも、此処は木造なので、簡単に
作る事が出来たんです。」
「閣下、連れて参りました。」
「有難うよ、君は。」
「はい、第5大隊の。」
「いや、いいんだ、君が持ってるホーガンで、この矢口から真下に来た敵
は撃てるか。」
「はい、では。」
と、兵士は構え、ホーガン矢を放つ仕草をした。
「で、どうだ。」
「はい、之は、自分も初めてですが、真下と言うよりも、少し斜めに狙い
を定めると、この城壁に辿り着いた敵を殺すのは、思った以上に簡単ではと
思いますが。」
「うん、そうか、わかった、じゃ~、下からはどうだ。」
「将軍、此処からですと、弓で撃つ事は出来ると思いますが、穴ですか、
隙間ですか、下からは、はっきりとは見えません。」
下の兵士は大声で言うのだ。
「そんなに見難いのか。」
「はい、今は、木造ですが、でも、此れから岩石を積み上げて行くと、全
くわからないと思います。」
下の兵士は上を見上げて言うので、はっきりとは聞えないのだ。
「よ~し、わかった、有難うよ、大工さんも有難うよ。」
「将軍、私達に出来るのは木造だから出来たんです。
皆さんのされている事に比べたら。」
「いや~、大工さん、其れは違うんだよ、あんた方のお陰でよ~、我々の
軍の兵士達の命も助かると思うんだ、此れからも、よろしく頼むよ。」
「はい、将軍様、私達も、一生懸命に作りますので。」
と、言って、大工は別の場所に向かうので有る。
「将軍、大工さん達の仕事は、本当に素晴らしいですよ、オレ達なんかあ
んな事まで考えていなかったんですから。」
「いや~、おやっさん、オレはね、みんなのお陰だと思ってるんだ、オレ
なんか、何も出来ないんだからよ~。」
「いいえ、将軍のお陰で、此処に居る全員が安心してるんですよ。」
「其れよりもだ、おやっさん、本当の所、木造の城壁なんだがよ、何時頃
までに完成するんだ。」
「はい、今の所、後、20日か30日もすれば、完成すると思います
が。」
「そうか、じゃ~、オレも、別の作戦を考える事にしょうかよ~、なぁ
~、司令官。」
「えっ、閣下、別の作戦と申されますと、いよいよでしょうか。」
司令官は、ウエス達の事だと思っている。
「何が、いよいよなんだよ~、オレは、敵軍との戦法を考えてるんだ
ぜ。」
「はい、私も、同じ事を考えておりました。」
司令官は、言い訳をしたのだが。
「いや、いいんだよ、だがよ~、この内部の作り方だが、本当に頑丈に造
られているんだなぁ~。」
ロシュエは、3階から2階に降り、見ている。
「閣下、農場の城壁とは、全く造り方が違うと、私は思っております
が。」
「うん、この柱の太い事、これだけ太い柱の上に岩石を積み上げて行くん
だなぁ~。」
司令官も驚きの連続だ、二人は、1階に降り、城門を見て、またも驚い
た。
「おやっさん、この扉なんだが、一体、どうなってるんだよ~。」
「これですか、之は、技師長が考えられたんです。」
「ふ~ん、わかったが、今、開いているんだがよ~。」
「はい、この扉はですねぇ~、どちらも、内側にだけ閉める事になるんで
す。」
「えっ、じゃ~、敵軍が攻めてくるだろう。」
扉が余りにも頑丈なので、一人や二人の力では開閉は無理なのだ。
「おやっさん、動かんぞ。」
「将軍、この扉は、とても頑丈に作られていますので、一人や二人では開
け閉めは出来ないんですよ、其れにですよ、開ける時は内側を先に、反対に
閉める時は外側を先に閉めないと駄目なんです。」
「何じゃと、じゃ~、何か、何時も、そんな面倒な事をするのかよ~。」
「いいえ、日常、何も無い時は、内側か外側のどちらか一方だけで十分な
んです。」
「だがよ、何処で止まるんだよ。」
「将軍に太い柱が見えると思いますが、あれで止まるんです。」
「だがよ~、技師長も凄い事を考えたなぁ~。」
「でも、将軍、それだけじゃ~無いですよ、まだ、有りますよ。」
「えっ、だがよ~、これだけの扉だ、そうは簡単には破る事は出来ないだ
ろうよ。」
「私も、最初、将軍と同じだったんです、ですがね、此処の大工さん達は
違うんです。
二重の扉は破る事は出来ますよって。」
「えっ、じゃ~、まだ、有るのかよ~。」
「はい、この上に有ります。」
おやっさんは、内側の扉に更に重く頑丈な落ちる物を見せたので有る。
「おやっさん、一体、之は。」
「はい、之が、最後なんですよ、上の左右にね、留め金が有りまして、そ
の留め金を叩くと、あの頑丈なドアが落ちるんです。」
「そんな物が有ると、危ないだろうが。」
「将軍、この巨大なドアは、普通では落ちませんよ。」
「えっ、なんでだよ~、留め金だけで、後は、何も無いんだろうよ。」
「でも、其れが、大丈夫なんですよ、今は、何も無いと思いますよ。」
ロシュエは、正か、其処までは考えもしなかったのか、呆れている。
「だがよ~、あんな物、どうして上げるんだよ~。」
「まぁ~、この柱に秘密が有りましてね、大工さん達の技でしょうねぇ
~。」
ロシュエは、もう、何も言う事は無かった。
「おやっさん、此れから、岩石の積み上げが始めるんだろう。」
「はい、其れで、鍛冶屋さんには、大変無理をお願いしまして、滑車を数
十個作って頂きましたんで、今度は、中で掘り出した岩石の積み上げをと考
えて要るんです。」
「そうか、で、何時頃から始めるんだ。」
「はい、農場での収穫が終わり、数日後からと考えてるんですが。」
「だがよ、此れから、寒くなるんだぜ、急いで事故には。」
「はい、勿論です。」
「じゃ~、オレは戻るが、よろしく頼むぜ。」
「はい、承知しました。」
一方、農場では、後、数日で、収穫も終われ、次の準備に入って要る。
寒い時期に収穫出来る野菜も、後、数十日後から収穫が始まり、今から種
を蒔くのは、季節が変わり、暖かくなる頃に収穫出来る野菜なのだ。
この種を蒔き終わると、暫くの間だが農民達も手伝いに入る事が出来るの
で有る。
その頃、ウエス達を苦しめた大木運びも最後の6本を残すだけとなった。
「どうだ、最後の6本だが、一台に3本積むか、それとも、最後は1本で
行くか、どちらの方法で行くんだ。」
フォルト隊長は、ウエスに聞くので有る。
「はい、最後は1本で行きますので。」
「よし、わかった、少し休んでから、2本の積み込みを開始する。」
「はい、わかりました。」
この頃になると、ウエスの部下は過労状態で殆どと言ってもよいほど、普
通に歩く事さえ出来ない状態だが、其れでも、フォルト隊長は休ませる事も
無く作業を続けさせる。
だが、ウエス達には更なる仕事が待ち構えている事も知らなかった。
数日後、最後の1本を運び終えると、部下達は地面に大の字になってい
る。
「大木運び、大変、ご苦労でした、今から半日の休みを取ったあと、新た
な仕事が待って要る。」
「えっ、隊長、数日間の休みをいただけるのでは。」
「いや、其れは無い、半日の休みを利用して食事を取る様に、では、一度
解散する。」
「あの~、隊長様、あの隊長様は、本当に恐ろしい隊長様ですね。」
「えっ、彼がですか、彼は、我が軍の中でも、一番に優しい隊長です
よ。」
4番大隊の木こり達も最後の切り出しを終わり、少しの休みを取ってい
る。
「えっ、あの隊長様が、一番優しいって。」
「ええ、そうですよ、彼は、まだ、本気じゃないと思いますよ。」
「隊長様の言われている意味がわからないんですが。」
「そうですか、じゃ~ね、彼は、芝居をして要ると思いますよ。」
「えっ、お芝居をですか、何故なんですか。」
「まぁ~ね、これには、色々な事情が有りますが、私も、此れから先、ど
の様になるのかわかりませんので。」
「はい、其れで、お聞きしたいのですが。」
「何ですか、言って下さい。」
「はい、一応、此処の大木は切り出したんですが、隊長様、大木の切り株
なんですが。」
「その事で有れば、問題は有りませんよ。」
「はい、わかりますが、あの切り株は残されるのでしょうか、私達は、其
れが、気に成りましたので。」
「やはりね、その切り株であれば、フォルト隊長が、ウエス達を使い、全
部、掘り起こす事になっていますよ。」
「わかりました、それと、もう一つ聞きたいんですが、我々は、この後、
どの様な事になるのでしょうか。」
「そうですねぇ~、まぁ~、今日は、のんびりとして、明日の早朝、出発
しますか。」
「じゃ~、我々も、将軍様の居られるところに行くのですか。」
「勿論ですよ、之は、将軍の命令ですから。」
「えっ、将軍様の命令なんですか。」
木こり達は、ロシュエも居る、農場に行く事に戸惑っているのだ。
「何か、不都合な事でも有るのですか。」
「いえ、別に。」
何かを怖がっている様子なのだ。
「何も、心配は要りませんよ、将軍は、一番恐ろしい人ですがね、其れ
は、ウエス達や、敵軍にとってはですよ。」
「えっ、将軍様って、そんなに恐ろしい人なんですか。」
「ええ、その通りですよ、でもね、将軍は、農場の人達にとっては、一番
強い見方ですからねぇ~。」
其れを、聞いて、木こり達も少し安心したのだろう。
「じゃ~、我々、木こりも、お仲間に入れていただけるのでしょうか。」
「勿論ですよ、其れに、大工さん達も、今頃は楽しく仕事をされて要ると
思いますよ、皆さんが苦労して切り出された大木で、私の知る限りでは、こ
の世界では一番の城壁を造られていると思いますからねぇ~、皆さんは、胸
を張って行く事が出来ますよ。」
木こり達は、胸を張って行けるなどとは、ウエス達と一緒の時には考えも
しなかった。
「はい、隊長様、ありがとうございます。」
と、やっと、安心したのだ。
「では、休憩を終わる、今から、切り株の掘り出しに向かう、全員、集合
し、直ちに、出発せよ。」
ウエスもだが、部下の殆どは反論する事も出来ない状態だ、それと言うの
も、大木運びで体力を使い果たしているのだろうか、歩くのも辛そうだと、
フォルトは思うのだが、ロシュエ軍の中で一番優しい隊長は、今は、鬼の様
に見えるだろう。
暫く行くと、最初の切り倒した大木の切り株が有る。
「よ~し、此処に有る、切り株全部を掘り起こすが、方法は自分達で考え
る事だ、では、作業開始。」
フォルトの号令が掛かった。
2百本の大木は、何処まで根を張っているのかわからないが、ウエスは、
全員に方法を教え、土の掘り出しから始めた。
「中隊長は、集合してくれ。」
フランド隊長は、突然、中隊長達を集めるので、中隊長達は、一体、何事
が起きたのかもわからず、フランド隊長の元へと集まるので有る。
「みんな、聞いてくれ、我々、4番大隊の任務は終わった、だが、今だ、
3番大隊は厳しい任務に就いている。
其れで、相談なんだが、我々、4番大隊が、3番大隊と交代したいと思う
んだ、どうだろうか、みんなやってくれるか。」
「隊長、待ってました、自分達の中では、早く、隊長からの命令が出るの
を待っておりました。」
第1中隊長は笑みを浮かべた。
「えっ、何時の間に決まったんだ。」
「はい、隊長が、一度、戻られた時にです。」
他の中隊長達も、部下達も喜んでいる様な顔をして要る。
「だが、この任務は厳しいぞ。」
「隊長、第3番大隊は、今まで辛抱されてきたんですよ、今度は、我々
が、奴らに、厳しく、厳しく、恩返しをさせて頂きま~す。」
何か、彼ら、4番大隊は交代する事に喜んでいる様子なのだ。
「だが、これだけは言って措くぞ、奴らを殺したり、傷を付ける様な事は
するなよ。」
隊長は、言うのだが、顔は笑っている。
「えぇ~、駄目なんですか。」
中隊長もわかっている、ウエス達の一人でも、大きな怪我をさせると、狼
が匂い嗅ぎ付け、場合によっては大群が襲ってくる事が有ると。
「其れに、若しも、殺したりすると、将軍は本当に怒るぞ、将軍はなっ、
本当に恐ろしい人だからなぁ~。」
「わかってます、隊長、冗談、冗談ですよ。」
隊長も冗談とわかっているので、顔は笑っている。
「第1中隊は、残ってくれ、第3番大隊が到着次第合流してくれ、では、
全員武器の準備が出来次第出発。」
それから、間も無くして、第4番大隊は、第1中隊だけを残し、第3番大
隊と交代の為出発した。
「隊長、第4番大隊が此方に向かわれて来ます。」
「う~ん、何かあったのかなぁ~。」
移動すると言っても、直ぐ側なので、先頭が着いても、最後の方は、ま
だ、出発していない。
「フォルト隊長、ご苦労様です。
此れからは、私達、4番大隊が任務に就きますので。」
4番大隊隊長のフランド隊長が突然交代を申し出たのだから、フォルト隊
長は意味がわからず。
「えっ、フランド隊長、何かあったのですか。」
「いいえ、別に、何も有りませんよ、フォルト隊長、今度は、第4番大隊
が、ウエス達をいじめに来ました。」
と、フランド隊長は、笑いながら、大真面目で言うので。
「其れは、将軍の命令でしょうか。」
「はい、その通りですよ、第3番大隊は休みを取る為に、木こり達を連
れ、農場へ帰れとの事です。」
フォルト隊長は意味がわかり。
「フランド隊長、有難う、御座います。
私は、フランド隊長のご親切に甘え、休みを取る為に木こり達と一緒に農
場へ帰ります。」
と、敬礼した。
「第4番大隊は、第3番大隊と交代し、任務に就け。」
「了解しました。」
4番大隊の兵士達は、3番大隊の兵士達と交代して行く。
「フォルト隊長、木こりさん達には、第1中隊を残しておりますの、フォ
ルト隊長申し訳有りませんが、到着され次第、此方に向かえと。」
「はい、フランド隊長、了解しました。
第3番大隊の兵士は交代が完了次第、木こりさん達が居られる場所へ移動
する。」
この後、第3大隊は、次々と木こり達の居る場所へ向かった。
その頃、ウエス達は大隊の交代を知って要るのか、知らないのか、必死
で、大木の切り株を掘り起こしている。
「ウエス隊長。」
「はい、あっ、隊長さんは。」
「はい、今、交代してきましたので、其れで、此処に斧を持ってきました
ので、手分けして作業を続けて下さい。」
数百本の斧をウエス達に渡したので有る。
「はい、有難う御座います。」
ウエスは、数百本の斧を部下に配らせ、切り株の掘り起こし作業を続ける
ので有る。
「ウエス隊長、切り株の掘り起こしは、何時まで掛かるのですか。」
「はい、お昼までには終わりますが。」
「そうですか、切り株はまとめて置き、昼からは、何時もの作業に入る様
に。」
ウエスは、4番大隊のフランド隊長を知らないのか、少し安心したような
顔をしている。
「第1小隊、集合せよ。」
「はい、第1小隊集合しました。」
「よし、将軍に伝令だ、切り株の掘り起こし作業は午前中に終わり、午後
からは、継続の作業に入りますと。」
「はい、了解しました。」
「小隊長、他は何も言うなよ。」
「はい、勿論です、では、直ぐに、出発します。」
第1小隊は、将軍に伝令として農場に馬を走らせるので有る。
「あの~、隊長、切り株の掘り起こし作業だけで、伝令を出されるのです
か。」
「ええ、そうですが、其れが何か。」
「いえ、別に無いのですが、前の隊長は、伝令を出されて無かった様に思
いましたのですが。」
「将軍にしなかったと言う事で、私が交代したのだ、それと、私は、前の
隊長と違い、随時伝令を出す、之は、将軍の命令で有る。
此れからは、夜明け前に集合し、休みは食事の時だけとする、以上で有
る。」
「はい、わかりました。」
ウエスは、何を期待したのだろうか、顔付きが変わり作業現場へと向かう
のだ。
「隊長、将軍はその様に命令されますか。」
「いいや、将軍の命令は簡単で、後は、現場に任せると言われるよ。」
「では、今の命令は、隊長の判断ですね。」
「その通りですよ、あれで、少しは変わりますよ、ウエスはね、多分、私
と交代したので、少しは、何かを期待した様ですがねぇ~、其れが大間違い
だと言う事ですよ。」
「では、隊長は厳しくされるのですか。」
「其れは、必要無いと思いますよ、それよりも大切なのは、ウエス達の動
向を将軍に知らせる方が大事だと言う事ですね。」
「では、伝令は多くなるのですか。」
「私はね、今日は、此処まで出来ましたと、言う報告は必要無いと思って
います。
でも、ウエス達の手前、その様な報告に行くのですよ、此れからは、数日
ごと、将軍にウエス達の動向を伝える必要が有りますからね。」
「将軍は、敵軍は、必ず攻撃してくると考えておられるのでしょうか。」
「将軍が、どの様に考えておられるのかわかりませんが、私は、必ず、来
ると思っていますよ。」
やはり、フランド隊長も敵軍が来ると考えて要るのだが、今は、ウエス達
の動向を探る方が大事だと考えて要る。
「君は、各中隊を回り、ウエス達の動向には注意する様に伝えてくれ、何
か、犯しな動きがあれば、直ぐ、私に報告する様に。」
「はい、わかりました、隊長、どの様な小さな動きでも宜しいのです
か。」
「勿論だ、私達が判断するのでは無い、全て、将軍にお知らせする事が重
要なんだ。」
「はい、では、今から回ります。」
第2中隊長は、その後各中隊を回るので有る。
その頃、ロシュエも動き出した。
「司令官、特別室に行くぞ。」
「はい。」
二人は、特別室に向かう、特別室には、足と腕を切断した、元野盗隊の3
人が居る。
「お~い、どうだ。」
「はい、オレ達も、もう大丈夫です。」
「そうか、其れは、大変よかったよ、其れで、少し話が有るんだがよ、い
いか。」
「はい、どんな話でしょうか。」
彼らは、狼犬部隊に復帰出来るものと思っている。
「話は、簡単なんだよ、あんた達には、別の大事な仕事を頼みたいんだ
が、どうだ、聞いてくれるかよ~。」
彼らは、一瞬、もう用無しだと言われると思い、顔は緊張した表情だ。
「将軍、もう、オレ達は使い物にならないんでしょうか。」
「オイ、今、なんて言ったんだ、何時、誰が、そんな事を言ったんだえ
~、オレはだ、あんた達に頼みに来たんだぜ、何をバカな事を言うんだ。」
「将軍、じゃ~、オレ達は。」
「お前達は大バカ野郎か、あんた達はだ、この農場の人達には英雄なんだ
ぜ。」
「将軍、オレ達が英雄だって。」
「そりゃ~、そうだろうよ、狼犬部隊はよ、泣く子も黙る、恐ろしい部隊
なんだぜ、あんた達はよ~、オレ達を助けたんだぜ、この農場の人達全員が
知ってるんだ、わかったかよ~。」
「はい、済みませんでした。」
「うん、まぁ~、わかりゃ~いいんだ、実はよ~、オレは、前から考えて
た事が有るんだが、どうだ、聞くかよ~。」
司令官は、ロシュエが、何を考えて要るのか知らない。
ロシュエと言う将軍は、時には思い付きで決める事は有るが、今回もその
思い付きでは無いだろうかと思っている。
「将軍、オレ達は、足と片腕が無いんですよ。」
「えっ、何だって、其れが如何したんだよ、命が有るじゃないかよ、生き
てりゃ~よ、何だって出来るんだぜ、あんた達も知ってると思うが、ウエス
達が攻撃した時、我々の兵士が戦死したんだ。」
彼らも知って要るので頷き。
「確かによ~、今頃は、天国に居るだろうが、一度、死んだ者は、生き返
れないんだ、だがよ~、あんた達は、今、此処で生きてるじゃないか、た
だ、みんなと違うのはだ、足や腕を切り落としたと言うだけなんだぜ。」
「じゃ~、将軍、オレ達はまだ。」
「当たり前だ、だからよ、オレの頼みを聞いて欲しいんだ。」
「はい、将軍、わかりました、で、一体、何をするんですか。」
やっと、彼らも、納得したと、ロシュエも司令官も思ったので有る
「いや、その前に聞きたい事が有るんだ。」
「何をですか。」
「じゃ~、聞くぜ、あんた達は、元々農民だろう。」
「えっ。」
と、足を切断した彼の口から思わず出た。
「なぁ~、オレ達はだよ、訓練された兵士なんだ、オレや司令官が見ると
だよ、幾ら、狼犬部隊だと言ってもだ、訓練を受けた兵士には勝てないん
だ。」
「じゃ~、将軍は知っていたんですか。」
「勿論だよ、司令官も知ってたんだ。」
司令官も頷き。
「はい、私は、貴方方の事は最初から知っておりましたよ。」
「其れによ~、ホーガン達は、元兵士なんだ。」
「えっ、じゃ~、オレ達は何も知らずに。」
「うん、その通りだよ、それと、話は変わるが、あんた達も知って要る敵
軍なんだが、オレはね~、この敵軍との戦争では、我々の兵士達も多くが戦
死と、覚悟はしてるんだ、だがよ~、あんた達は別なんだよ~。」
「将軍、なんで、オレ達は別なんですか、オレ達だって戦いますよ。」
彼らも、本当は、戦いに参加したいと言った、だが。
「その気持ちだけで十分なんだ、例え、オレが戦死したって、この農場だ
けは守る、どんな事があってもだ、それだけはわかってくれよ。」
ロシュエは、今度の戦では、多くの犠牲者が出る事は覚悟している。
それでも、農場だけは死守すると言うので有る。
「将軍、じゃ~、狼犬部隊は、一体、どうなるんですか。」
「其れは、オレにもわからんよ、だがよ~、オレは、どんな事が有って
も、ウエス達だけは許す気持ちは無いんだ、奴らには、必ず、この、オレが
天罰を与えるよ。」
「将軍、オレ達もウエスを許す事は出来ないんですよ、だって、オレ達の
村を焼き払い、女も子供も。」
「わかってるよ、だがなぁ~、あんた達は、決して手を出すな。」
ロシュエは、一体、どんな方法で、ウエス達を成敗するのだろうか、今度
ばかりは、司令官もわからないのだ。
「其れでだ、オレはあんた達に、お風呂部隊を纏めて欲しいんだよ~。」
「えっ、将軍、オレ達がお風呂部隊の手伝いをするんですか。」
彼らも、正か、風呂の手伝いをするとは思いもしなかったので有る。
「お~、そうなんだよ~、今は、子供達が一生懸命やってはいるが、中に
は、小さな子供も居るんだよ~。」
「じゃ~、オレ達がお風呂の準備をするんですか。」
彼らの気持ちもわかる、何故、自分達が風呂の仕事に就くんだと。
「今まではだ、だがよ、今度からは、あんた達が隊長として入ってくれれ
ば、お風呂部隊は、狼犬部隊と同じなんだよ。」
「えっ、将軍、じゃ~、オレ達は、狼犬部隊のままで、お風呂部隊の隊長
って事になるんですか。」
彼らの、表情が変わってきた。
「そうだよ、誰が、狼犬部隊を辞めろって言ったんだ、ええ~、一体、誰
なんだ。」
「いいえ、誰も言ってませんが。」
「うん、其れでいいんだよ、今度からは、お風呂の全ては狼犬部隊のあん
た達に任せたいって言ってるんだよ~、え~、わかってるのか。」
ロシュエの口調は荒くなってる、其れは、彼らが、まだ、何処かにお風呂
部隊には行きたくは無いと思っているからだ。
「其れにだよ~、あんた達に、狼犬部隊の武勇伝を子供達に話して欲しい
んだよ。」
「武勇伝をですか、でも。」
「だってよ~、あんた達は、狼の大群をやっつけたんぜ、子供達も聞きた
いと思うんだがなぁ~、嫌なのかよ~、え~、どうなんだ。」
ロシュエは、子供達に武勇伝を話すにも大切だと、其れは、狼犬部隊が最
強だと自慢して欲しいので有る。
「じゃ~、将軍は、オレ達に作り話をしてもいいと。」
「いいよ、だって、殆どの話は本当の事なんだからよ~。」
「なぁ~、オレ達がこんな身体になっても、仕事を下さるんだよ、オレ
は、それだけでも、ありがたいと思ってるんだ、其れに、オレは、右手1本
じゃ~、当然、ホーガンは使えないし、お前だって、片足で馬に乗れると思
ってるのか。」
「オレも、同じなんだ、其れに、オレ達は元々、農民なんだ、オレは、将
軍の言われる通りだと思うんだ、それに、オレ達が行っては、ホーガン達に
返って迷惑を掛けると思うんだ。」
「うん、それもそうだなぁ~、じゃ~、3人でやって見るか。」
「そうか、済まんなぁ~、オレも、ごちゃ、ごちゃと、言ったけどよ~、
あんた達が行ってくれると、子供達も安心すると思うんだよ~、だがよ~、
あんた達は狼犬部隊なんだから、それだけは、忘れるなよ。」
「はい、将軍、オレ達の仕事は子供達の為にですね。」
「うん、そうだ、じゃ~よ、傷も治って、これで、行けると思うまでは、
まぁ~、此処でのんびりとしてくれよ、じゃ~、オレは、行くからよ~。」
「あの~、将軍、オレは、イレノアさんに、お礼を。」
「いいんだって、イレノアだってわかってるんだからよ~。」
「でも。」
「じゃ~なぁ~。」
ロシュエは、手を振り、司令官と一緒に出て行く。
「閣下、有難う御座います。
彼らも、これで、気持ちよく、お風呂部隊に参加をしてくれると思いま
す。」
「いや~、実はよ~、オレも色々と考えたんだよ~、今まで、野盗隊とし
てだよ、頑張ってきたんだぜ、彼らも、一時は、自信を無くしていたと思う
んだ。」
「そうですねぇ~、あれが、私であれば、自分で命を。」
「司令官、それだけは、絶対に許さんぞ、之は、オレからの厳命だ。」
「はい、申し訳御座いません。」
司令官は頭を下げたので有る。
ロシュエと司令官は、場外に向かって行く、少し行くと、大工部隊の作業
現場に着き。
「やぁ~、大工さん、忙しい時に済まんがよ~。」
「はい、将軍様、なんでしょうか。」
「うん、之は、相談なんだが、農場から城までの城壁が完成するとだ。」
「はい、あの城壁に使う加工は終わり、数日以内に組み上げを予定してい
るのですが、」
「そうか、有難うよ、で、相談なんだが、一箇所目と二箇所目の農場に柵
を作りたいんだが、どうだろうか。」
「はい、何時からでも宜しいですが。」
「そうか、済まんよ~、じゃ~、組み上げが終わり、休みを数日間取って
だ。」
「将軍様、オレ達は、別に休みは要りませんが。」
「だがよ、大工さんだけじゃ~無いんだぜ、兵士達も居るんだから。」
「其れは、大変失礼をしました。」
「いや、いいんだ、其れでだ、大工さんにお願いする柵なんだが、狼を締
め出したいんだよ~。」
ロシュエは、1番、2番の農場を安心して造る事を考えていたので有る。
「では、適当に隙間を作るんですね。」
「うん、その通りなんだ、其れでだよ、途中、数ヶ所の出入り口を作って
欲しいんだ。」
「わかりました、では、オレ達が考えて加工します。」
「うん、其れは任せるよ、だがよ、余り急ぐなよ、あんた達も疲れている
んだから。」
「オレ達は大丈夫ですよ、だって、オレ達は加工するだけですから。」
「其れが、駄目なんだ、休みはきっちりと取って欲しいんだよ。」
「はい、有難う御座います。」
「じゃ~、頼んだぜ、司令官、城壁の組み上げ終了後に、3番大隊と4番
大隊を除き、全兵士を休ませてくれ、休みは3日間とする。」
「はい、承知致しました。」
司令官は、聞く必要が無かった、その休みが終了すれば、大規模な作戦が
開始されると知ったので有る。
だが、ロシュエも知らない事があった、明くる日の昼頃。
「将軍に伝令だ。」
「よし、わかった。」
「伝令です、伝令がきま~す。」
ロシュエも全くの予想外だった、伝令は、4番大隊からで有る。
「将軍、自分は。」
「何が有ったんだ。」
「はい、4番大隊のフランド隊長から将軍にお伝えを。」
「うん、わかった、其れで。」
「はい、切り株の掘り出し作業は昨日で終わり、少しの休みを取り、大池
作りと、堤防作りに入ると。」
「で、ウエス達の動向は。」
やはり、フォルト隊長の考え通りだった。
「はい、ウエス達は、相当疲れている様子でした。」
「よし、有難うよ、急いで戻る必要も無いからよ、まぁ~2~3日はゆっ
くりと休め。」
「はい、有難う御座います。
将軍、其れで、第3番大隊が木こりさん達を連れて戻って来られます。」
「うん、わかった、じゃ~、行っていいよ、休むんだぞ。」
小隊は、馬を放ち、兵士達も大食堂で食事を取れるので有る。
「閣下、之は、大きな収穫で。」
「うん、4番隊のフランド隊長は、3番大隊を休ませる事を考えた様だな
ぁ~。」
「はい、私も同感ですね、では、3番大隊が戻って着ましたら、私から、
フランド隊長に伝えましょうか。」
「済まんが、頼む、オレは、少し考える事が有るんで、後は、よろしく頼
むぜ。」
「はい、かしこまりました。」
ロシュエは宿舎に戻って行った。
司令官も考えるのだ。
「閣下は、一体、何を考えるのだろうか、後、数日もすれば、農場から城
まで、巨大で、長い城壁が完成する。
大規模な作戦が実施される事に間違いは無い、だが、いまだ、閣下は何も
言わない、其れは、今までには無かった事なのだ。」
司令官も正かと思う様な作戦をロシュエは考えて要るのだ。
3番大隊は相当疲れているはずだ、戻れば決行の日までは、何もする事は
無い。
そして、数日後、最後の木造城壁の組み上げが終了し、兵士も、大工達も
戻って行く。
「当番兵さん。」
「はい。」
「済まんがよ~、司令官と、今、戻って着た、3番大隊のフォルト隊長、
1番、2番、5番大隊の隊長を呼んでくれないか。」
「はい、直ぐに。」
当番兵は、司令官や、1番、2番、3番、5番大隊の隊長達に、直ぐ、執
務室に来る様にと伝えた。
司令官もだが、各隊長達も、一体、何事が起きたのかわからず、急いで、
ロシュエの執務室に向かうのだ。
「イレノア。」
「はい。」
「イレノア、君には悪いんだが熱いスープを。」
「はい、承知しました。」
イレノアは、ロシュエが、何時もと何かが違うと感じていた。
「閣下。」
「お~、司令官、済まないよ~。」
其れからは、次々と隊長達が執務室に集まった。
「みんな、疲れている時に済まん、イレノア、頼む。」
「は~い。」
イレノアは、出来立ての熱いスープを司令官や、隊長達の前に置き、台所
に戻った。
「閣下。」
「うん、オレは、決断したぞ。」
やはり、ロシュエは、ウエス達に天罰を与えるのか、司令官は、まだ、先
だと思っていたのだが。
「今日を含め、3日間の休みが終われば、全大隊は、早朝に出発する。
あっ、そうだ、狼犬部隊を。」
その時、ホーガンが。
「将軍は。」
「はい、今、執務室で、司令官と4人の隊長達と。」
「お~い、ホーガン、入れよ。」
「はい。」
ホーガンが執務室に入ると、司令官達の顔つきが違うのだ。
「ホーガン、まぁ~、座れよ、イレノア頼む。」
「はい。」
「ホーガン、先程、各隊長にも言ったが、今日を含め、3日間の休みが終
わり、4日目の早朝、全部隊が出動する、狼犬部隊が先頭で、1番、2番、
3番、5番大隊と、順次出発、それと、武器は、全員持参せよ、食料は簡単
の物とする、以上で有る。
それと、今、城門の警備隊は。」
「はい、私の第2中隊です。」
「よし、第2中隊は警備続行だ、全部隊に告げ、解散せよ。」
司令官達は、ロシュエに敬礼し、執務室を出た、だが、有る人物がイレノ
アと話をしていた。
隊長達が部屋を出た後。
「将軍。」
「お~、テレシアか、一体、如何したんだよ~。」
「如何したって、あんたって本当に水臭いわよねぇ~。」
「テレシア、一体、何の話だ。」
「何の話しだって、将軍、一体、あんたと、私は、何年の付き合いなのさ
ぁ~。」
テレシアは、本気で怒っているのは、ロシュエはわかっている。
「さぁ~なぁ~、オレは、忘れたよ。」
「あんたさぁ~、4日目の朝、全軍が出動するんだろうよ~。」
「お~、その話かよ~。」
「その話しかよ~じゃないわよ、全軍が出動する朝、何も食べないで行く
のかねぇ~。」
「まぁ~なぁ~。」
「将軍、あんたが、私達に面倒を掛けたくないって気持ちは、私はねっ嫌
だよ、将軍、あんた一人だけならいいけど。」
「テレシア、今度は。」
「今度はじゃ無いよ、私が、聞いたからにはねぇ~、兵隊さんに食事は出
すんだから、だって。」
テレシアの頬を一筋の涙が下がれている。
「テレシア、許してくれよ、オレは、何も。」
「あんたはねぇ~。」
「テレシアさん、申し訳有りません、私が。」
「イレノア、あんたが悪いんじゃないよ、このロシュエって将軍はねぇ
~。」
「テレシアさん、もう、それ以上は。」
「あいよ、将軍、イレノアの為に、これ以上は言わないよ、その代わり、
兵隊さんに食事をねっ。」
「テレシア、済まない。」
ロシュエはテレシアの手を握った。
「イレノア、3日目の夜から仕込むからね、あんたは、あの娘達に話して
欲しいの。」
「はい、わかりました、私も行きますので。」
「あんたはいいよ、だって、将軍の。」
「いいえ、私も、行きます、例え、将軍でも、一人の兵隊ですから、これ
だけは、将軍が何と言っても、私は行きます。」
ロシュエは、わかっていた、イレノアと女性は、一度、決めると、誰が何
と言おうと引き下がらないと。
「わかったわよ~、本当にあんたって人は、もう~、将軍以上に頑固なん
だねぇ~。」
テレシアは、やっと笑った。
「で、テレシア、何かの用事があったのかよ~。」
「あっ、忘れてたよ、将軍、あんたの言ってた軍服が出来たんだよ。」
「お~、本当か、そりゃ~、嬉しいね、で、何処に。」
「イレノア、其処に置いたんだけど。」
「これですか。」
テレシアが作った物とは、一体。
「こりゃ~、本当に素晴らしいぜ。」
「わぁ~、凄い、黒の狼なんですねぇ~。」
其れは、ホーガン達が獲ってきた狼の中でも、黒い狼の毛皮だけで作っ
た、全身が黒色の軍服だった。
「こりゃ~、凄いぜ、テレシア、全身が真っ黒だがよ~。」
「そうだよ、これを作るのに、本当に苦労したんだからねっ。」
「そりゃ~、そうだろう、これだけ、同じ黒色の狼なんて、簡単に見つか
る事も無いからよ~。」
「将軍、まだ、有るんだよ。」
「えっ、何が有るんだ。」
「これだよ。」
「わぁ~、何だ、之は。」
ロシュエが驚いたのは、狼の頭で作った被り物で有る。
「こりゃ~、大変だぜ、こんな物を被り、全身黒色の軍服なんて、どこに
も無いぜ。」
「将軍には、特別製の軍服が必要だと思ってねっ。」
「有難うよ、テレシア、だがよ、誰にも言うなよ。」
テレシアもイレノアも頷くので有る。
テレシアとイレノア達20人の女性達は3日目の深夜から、全兵士達の朝
食を作る為に必死だった。
そして、4日目のまだ、夜も明けぬ暗い頃に兵士達は集まり始めたので有
る。
「さぁ~、みんな、朝食だよ、大食堂はね、中隊長達以上で一杯だから、
寒くて悪いけど我慢してよねぇ~。」
「閣下。」
「いいんだよ、全員に食べさせてくれよ。」
「はい、かしこまりました、全員、テレシアさん達からの朝食です、食べて下さい。」
「わぁ~、ありがたいよ、こんなに寒いと、熱いスープが一番だ。」
兵士達は、寒さも忘れて、嬉しそうな顔で朝食を取るので有る。
「さぁ~、将軍、あんた達にもだよ。」
隊長達も、中隊長達も熱いスープを、その中にはたくさんの肉が入って要
る。
「イレノア、この肉は。」
「はい、先日ですが、ホーガンさん達が、50頭も大鹿を仕留められてき
ましたので、兵隊さん達にと。」
ロシュエは、正か、鹿の肉が入って要るとは知らなかった。
「テレシア、済まんなぁ~。」
「何、言ってんのよ、これくらいの事は当たり前じゃ無いのよ、ねっ、昔
から言うでしょう、腹が減っては戦は出来ぬってね。」
テレシアは、大笑いし、兵士達は、満足した様子で有る。
「じゃ~、司令官、そろそろ、出発するぞ、オレが先頭だ、続いて、狼犬
部隊だ、その後は、1番大隊より順番だ。」
「はい、閣下。」
隊長達と中隊長達も大食堂を飛び出し、自分達の隊へと走って行く。
その時だった、農場から多勢の農民が出てきたのだ。
農民には、何も知らせて無かったのだが。
「将軍、司令官、他の兵隊さん達も、みんな、無事に帰って来て下さい
よ。」
「兵隊さん、どうか、無事でねぇ~。」
と、あちら、此方から農民達は兵士達に言葉を掛けるが、多くの女性は涙
を流し。
「ねぇ~、兵隊さん、どんな事があってもよ、絶対に生きて帰って来るん
だよ。」
「はい、必ず、帰って来ますから。」
「じゃ~、約束だからねぇ~。」
ロシュエが、城門を出る頃は、まだ、辺りは暗かったが、最後の第5大隊
が城門に近づく頃には辺りは、寒いが、太陽が昇り始め、その頃、何も知ら
ない子供達が起きてきた。
「ねぇ~、父ちゃん、兵隊さん達は、何処に行くの。
彼らは、ロシュエがウエス達に天罰を与えに行くとは知らない。
「父ちゃんも知らないんだ。」
「だって、みんなが出て行くよ、あっ、あの兵隊さんは、お兄ちゃんだ、
お兄ちゃん、何処に行くの、帰って来るの。」
声を掛けられた兵士達は、何も言わず、ただ、二コ二コとして、手を振る
だけで有る。
だが、子供達も気付き出したのだ有る。
「兵隊さんは戦争に行くんだ、そうでしょう、父さん。」
この父親もわかっているのだが、返事ができず、ただ、頷くだけで有る。
そして、最後は、馬車、10台が城門をでた時には、城門は静かに閉じら
れた。
城門が閉められると、大食堂には、大工部隊や木こり部隊をはじめ、農場
からも数十人が押し寄せてきた。
イレノアをはじめ、20人の娘達とテレシアが後片付けを、何も無かった
のかの様にして要るので有る。
「テレシアさん、なんで、オレ達に言ってくれないんですか。」
「まぁ~、みんな、落ち着いて座ってよ。」
イレノア達も座り。
「ねぇ~、イレノアさん、私達だって、同じなのよ。」
イレノアは立ち上がり。
「皆さん、私は、何も知らせる事が出来なかったんです。」
イレノアの気持ちは、誰でも知って要る。
「あんた達、イレノアが、一番辛いんだよ、だって、将軍の奥さんだか
ら、全部、知って要ると思うでしょう、でもね、あのロシュエ将軍って人は
ね、イレノアさんが、みんなに知らせるだろうと、何も言わない人なの
よ。」
「でも、テレシアさんだって、知ってたんでしょう。」
「そうよ、私も、本当はね、将軍達が話をして要る時に知ったんだよ、で
もね、あの人はね、私にも言わないのよ、だけど、兵隊さんは、朝の食事も
取らないで行くって聞いたんで、何も出来ないけど、熱いスープだけでもっ
て言って、イレノアさん達にお願いしたのよ。」
「でも、私達にも出来る事があった。」
「私もだけど、さっきも言ったけど、イレノアさんが一番苦しい思いをし
て要るのよ、私は、いいよ、でもね、これだけはわかって上げて欲しいの
よ。」
イレノアは、下を向いて涙を流している。
「テレシアさん、わかったよ、オレ達は、何もイレノアさんを責めてるん
じゃ無いんだ、将軍が、全軍を連れて、一体、どこに行くのか知りたいん
だ。」
イレノアは、涙を拭き。
「本当に、私も詳しい事は知りませんが、ウエスさん達に天罰を与えるっ
て、将軍は言っておられました。」
「えっ、ウエス達に天罰を与えるって。」
「ええ、将軍は、オレは、ウエスに騙されたって。」
「ウエスに騙されたって。」
「ウエスに騙されたって、其れは、本当の話なのかい。」
その時、あの大工が立ち上がり。
「あの~。実は、将軍様に、ウエス達の事を話をしたのは、オレなんで
す。」
「じゃ~、あんた達は、何を話したの。」
「オレ達の村にウエス達が来たんです。
奴らは、村で収穫した食料を奪い、村の女性達を犯し、女性の全員と子供
達を家に閉じ込めて火を点けたんです。」
「えっ、そんな事を。」
「本当なんですよ、家の中からは、女性や子供の叫び声が聞えるんです。
でも、オレ達は、何も出来なかったんです。」
大食堂の中に居た全員は何も言えず、女性達は涙を流している。
「だけど、あんた達は。」
「はい、なんで助かったと言われるんでしょう、オレ達は、大工で、オレ
達が住んで居る近くにはお城が有るんですが、そのお城で使う、テーブルや
椅子を作ったり、修理をしていたんです。」
「じゃ~、他の男達は。」
「はい、農民は全員殺されました。」
この農場の殆どが農民なのだ、だが、多くの農民達は、迫害を受け、この
農場に逃げ込んできたので有る。
「うん、オレ達も、恐ろしかった頃を思い出すよ。」
彼も、逃げ込んだ農民なのだ。
「奴らは、人間の皮を被った狼、いや、狼じゃないんですよ、狼よりも恐ろ
しい奴らですよ。」
この時、川の対岸から来た農民が。
「オレ達は、司令官様に言われ、川を渡って着たんですが、あいつらは、
オレ達農民が育てた作物を全部奪って行くんですよ。」
「ウエスって、やつは、人間じゃないですよ。」
同じ様な話しが次々と出てくるので有る。
その頃、ロシュエ達全軍は、ウエス達が進めて要る、堤防と大池造りの現
場へと向かって行く。
「ホーガン。」
「はい、将軍。」
「お前達もウエスに対しては、相当な恨みつらみが有るんだろうよ~。」
「そら~、将軍、奴らは、最低の軍隊ですよ。」
「うん、俺も、わかってるよ、で、ホーガンは、どの国の軍隊だったん
だ。」
「えっ。」
ホーガンは、突然の話に驚いている。
「ホーガンよ~、オレもだが、司令官だって、お前達は、元兵士だって事
は知ってるんだぜ。」
ホーガンは、ロシュエは、何も、知らないと、今まで、思っていたので有
る。
「将軍、何時から、ご存知だったのですか。」
「オレか、オレは、最初から知ってたよ。」
「でも、何故、わかったのですか。」
「ホーガン、オレだって、兵士の端くれなんだよ、お前や、お前の仲間の
動きを見りゃ~よ、隊長クラスなるとわかるって事なんだよ~。」
ホーガンは、言い損ねたのだろうか。
「では、将軍は、ご存知のまま、今まで、知らぬ顔をされていたって訳な
んですか。」
「うん、まぁ~、そう言う事だ、オレはよ~、何も、ホーガン達を責める
んじゃ~ないんだ、それよりもだ、ウエス達に怨みを持って要るかを知りた
かったんだ。」
「将軍、私達は、この農場に着いた時、本当に安心しました。
それと言うのも、奴らは、近隣の小さな城を襲い、城の者達もですが、付
近の農村からは、作物を略奪し、村民を殺し、家屋に火を点け、女は犯し、
子供までも殺して行くんです。」
「だがよ、何故、お前達は助かったんだよ。」
「はい、其れは、私達は、近隣を偵察に行っておりましたので、城に帰っ
て着た時には、城の住民は全て殺されていました。」
「だがよ~、なんで、ウエス達ってわかったんだよ、全員が殺されてたん
じゃ~、何も、わからんだろうが。」
「はい、将軍の言われる通りなんです。
でも、奴らだって犠牲者を出していますよ、で、死んだ奴の軍服と、ウエ
ス達が着ていた軍服が同じだったと言う事なんです。」
「そうか、奴らは、相当な悪だなぁ~。」
「将軍、今まで言わなかった事が有ります。
「うん、何だよ。」
「はい、其れは、司令官の居られたお城から、北に15日程行ったところ
に城が有るんですが。」
「何、其れが、お前達の城なのか。」
「いいえ、そうでは有りません。
その城は、小さいのですが、周りを深い森に囲まれていますので、簡単に
は見つける事が出来ないのです。」
「だがよ~、そんな深い森に囲まれているって事は、狼の襲撃は無いのか
よ~。」
「はい、勿論、狼は大群をなしています、ですが、その城には、狼の襲撃
を防ぐ木造の高い城壁が有りますので。」
ホーガンは、何故、其処まで詳しい事を知って要るのだろうか、ロシュエ
は不思議に思うので有る。
「ホーガンよ、何で、お前が詳しい事を知ってるんだよ、お前達の城は全
滅したんじゃ~、無いのかよ~。」
だが、ホーガンからは思わぬ言葉が出た。
「はい、実は、そのお城の城主は、私達の国王の弟が治めている城でし
て。」
「えっ、じゃ~、その城と、お前達の城主は兄弟って話なのかよ~、オレ
もなっ、何か変だと思ったんだ、それじゃ~よ、お前達もその城に行く事は
有ったか。」
「はい、その通りで、どちらの城主も温厚な性格の国王で、領民達も穏や
かな暮らしをしておりました。」
「だが、ホーガン達の城は、ウエス達の攻撃で破壊され、領民は殺され
た、だが、今、言った城は行かなかったんだよ、何か都合が悪い事で有るの
か。」
「将軍、其れは、有りませんでした、ですが、私は、国王の仇もですが、
あの国の兵士達をこのまま野放しにする事は出来ないんです。
国王も、城に残れと言われたんですが、でも、私は、奴らを許す事が出来
ないと言うのが本当の気持ちなんです。」
「ホーガンよ、よくわかったよ。」
ホーガンは、ロシュエに頼み事が有るのだが、其れは、多分、許されない
だろうと考えていた。
「ホーガンよ、他に言いたい事が有るんじゃないのか。」
ロシュエに隠し事は出来ないと、ホーガンは思ったので。
「将軍、私も、長い間、考えていた事が有ります、でも、この話は出来な
いと考えておりました。」
「ホーガン、オレに出来るか、出来ないか、其れは別の問題としてだよ、
先に話を聞かないと、前に進まんと思うんだ、だがらよ~、言った方が楽に
なるぜ。」
と、言いつつも、ロシュエは、ホーガンが何を言いたいのか、其れは、わ
かっていた。
「将軍、私は、あの城と領民を助けたいのです。」
やはり、ロシュエの思ったとおりだった、だが、今のウエス達に天罰を与
える事と、城まで木造の城壁造りが最優先なのだ、其れは、ホーガンもわか
っているはずだ。
「ホーガンの気持ちは、オレも十分理解出来るよ、だがなぁ~、今は、ウ
エス達に天罰を与え、多くの人達が味わった苦しみを奴らに判らせる事が、
今、一番大事なんだぞ。」
「はい、将軍、私も、十分承知しております。」
「それにだ、城までの城壁がまだ、完成してないんだよ。」
だが、ロシュエは、何としても助ける事は出来ないのか考えるので有る。
「お~い、司令官を呼んでくれ。」
狼犬部隊の一人が、司令官を呼びに行く。
若しかすればと、ホーガンは、心の中で、少し期待をするので有る。
司令官は直ぐに来た。
「閣下、お呼びでしょうか。」
「うん、実は、ホーガンの報告で、新しい情報が入ったんだよ。」
ロシュエは、司令官に説明するのだ、側のホーガンは何も言わず、ロシュ
エの説明を聞いて要る。
「閣下、では、その城の者達と領民を助けると、申されるのですか。」
司令官も、ホーガンも気持ちはわかっている。
「閣下の申される事は、私も、理解しておりますが、今は、ウエス達を全
滅させる事と、城壁造りが。」
「司令官、オレは、何も、今直ぐにとは思ってないんだ、だがよ~、対岸
の敵軍が、ホーガンの言う城下を襲うとだ、虐殺が起こると思ってんだ、だ
からよ~、何か方法は無いかって、話なんだよ~。」
「ホーガン、その城ですが、城と領民で、何人位の人達がおわれるのです
か。」
司令官は、何故、人数を知りたいのだ、其れよりも、助ける方法を考え無
ければならないはずなのに、と、ホーガンは思うのだ。
「司令官、私も、本当は何人か知らないのですが、何故、人数を知る必要
が有るのでしょうか。
「ホーガン、人数が多くなれば、我が軍からも多くの兵士を行かせる必要
が有ります。
其れに、城に何人の兵士が居るのかも知る必要が有りますよ、其れと、大
事なのが領民ですね、女性や子供達を乗せるためには馬車が必要になります
からねぇ~。」
「はい。」
ホーガンは其処までは考えて無かった。
「まぁ~、ホーガン、何も司令官は、駄目だとは言って無いんだ、司令官
も考えてくれると思うんだぜ。」
「閣下、少し時間が必要だと思いますね、まずは。」
「うん、わかってるよ、ホーガン、先にウエス達を片付けようや、それか
ら考えるとしようか。」
「はい、有難う、御座います。」
「でだ、司令官、今夜の野営地は。」
「はい、まぁ~、隠れ野営地と申しましょうか、夕刻までには到着する予
定となっておりますので。」
「うん、じゃ~、野営地に食料は。」
「はい、私よりも、1番大隊のロレンツ隊長がよく知っておられますの
で。」
「ホーガン、ロレンツ隊長を呼びに行かせてくれ。」
「はい、お~い、誰か、一番大隊のロレンツ隊長をお呼びするんだ。」
「はい、では、自分が行きます。」
一人が1番大隊に向かって行った。
「将軍、最後尾の馬車に猪と、鹿を合わせて50頭程積んでおりますの
で。」
「お~お、だがよ~、農場には。」
「はい、農場に渡した物とは別に準備しておいたんです。」
ロシュエも、正か、猪や鹿を捕獲しているとは知らなかったので。
「えぇ~、本当かよ、司令官、こりゃ~大助かりじゃないか。」
「はい、私も、此れから、食料の調達をと考えておりましたので。」
「じゃ~よ、1番大隊に任せるか。」
司令官も、ほっとしたのだ、食料の調達と簡単に言うが、何時も、猪や大
鹿を大量に捕獲出来るとは限らないのだ。
「将軍。」
ロレンツ隊長が来た。
「ロレンツ隊長、今日の野営地だが。」
「はい、予定通りに行けば、夕刻には到着すると思います。」
「じゃ~よ、食料は。」
「はい、少しだけですが、有りますが、他の隊長とも相談したのですが、
今から調達にと思っています。」
「ロレンツ隊長、猪と大鹿を合わせて50頭程、後部の馬車に積んで有る
んだよ。」
「えっ、本当なんですか、其れであれば大助かりです。」
「じゃ~よ、隊長は野営地の準備に入ってくれるか。」
「はい、其れは、宜しいのですが、私は、中に全員が入るのは無理だと思
いますが。」
「うん、其れは、仕方が無いよ、だが、馬はどうだ。」
「はい、何時も、別の場所に放していますが、その場所と合わせれば十分
確保出来ると思います。」
「それじゃ~、全員が外でと言う事だなぁ~。」
「はい、ですが、将軍と司令官には小屋が有りますので。」
「いや、其れは、駄目だよ。」
司令官は、直ぐにわかったので有る。
今回は、あの3人を参加させている、彼らは、足と腕を切り落としてい
る、この寒さで外に眠る事は避けたいと考えていた。
「ですが、将軍や司令官に、何かがあれば。」
「ロレンツ、心配するなよ、其れよりもだ、あの3人をその小屋で眠らせ
てくれよ、オレの言ってる意味はわかるな。」
「はい、承知しました、では、1番大隊から2個中隊と馬車を持って行
き、野営地の準備に入ります。」
「済まんなぁ~、ロレンツ、今夜は、心配無く篝火を点けてくれよ。」
「はい、では、お先に。」
「それと、狼犬部隊も一緒だ、頼むぞ。」
「判りました、では、ホーガン隊長、よろしくお願いします。」
「ロレンツ隊長、此方こそ、では、将軍。」
狼犬部隊と1番大隊の第1中隊と第2中隊、馬車数台は今夜の野営地の設
営に向かったので有る。
其れからは、何事も無く、夕刻の少し前に野営地に到着した。
1番大隊は手際良く進めて要るので、思いのほか、スムースに出来た。
ロシュエは、数年振りの野営だったが、何時に無く良く眠った。
明くる朝、辺りはまだ薄暗い時に野営地を出発し、昼過ぎには堤防と大池
を造っている現地に到着した。
「将軍、如何されたのですか、其れに、全軍を率いて。」
「そうだよ、隊長、部下を集合させよ。」
「はい。」
4番大隊フランド隊長も、何故、ロシュエ将軍が、大軍を引き連れて着た
のか直ぐの理解した。
「狼犬部隊は、オレの後ろに、全軍、横一列に整列。」
第1番大隊から第5番大隊までの全軍の動きは素早かった。
ウエスの部下達は、一体、何事が起きたのかわからずにざわめいている。
ウエスは、ロシュエの前に来て。
「将軍、一体、何事でしょうか。」
「なぁ~、ウエスさんよ~、オレなぁ~、お前さんの兵隊全員を、この世
から葬りに着たんだよ。」
「えっ、何故ですか、何故、私達は、此処の堤防と、大池造りに全員が毎
日、必死で働いて要るんですよ、其れが、何故なんですか。」
「うん、其れは、オレも十分判ってるよ、だがよ~、其れは表向きで、お
前達は、時間を稼いでいる事は知って要るんだよ。」
「別に、その様な事は考えておりませんが。」
「だがなぁ~、対岸に居るオレ達には敵軍なんだが、ウエス、お前達の見
方がよ~、お前達の処刑を見たいと言ってるんだぜ。」
「えっ、対岸にですか、でも、私には見えませんが。」
ウエスは、此処に来ても、まだ、言い訳をするので有る。
「だがよ~、オレは、そんな事よりもだ、お前達全員をこの世から去って
欲しいんだなぁ~、だがよ~、オレは、お前達に逃げ道を作ってやるよ。」
司令官も狼犬部隊も、大変な驚きである、ロシュエは、ウエス達に逃げ道
を作ると言ったのだ。
「其れは、実に簡単な話なんだよ、この川を泳いで対岸に辿り着いた者は
逃げる事が出来るんだ。」
「えっ、何だと、我々に川へ入れと。」
ウエスは、遂に、本性を現した。
「うん、その通りなんだ、オレはよ~、今まで、多くの農民から聞いた話
じゃ~、お前達は、人間の皮を被った狼だとよ、いや、それ以下だってよ
~。」
ウエスの部下達は、早くも動揺している。
雪がちらつく中、川に入ると言う事は、川で凍え死ねと言う事に成るの
だ。
「だがよ、川沿い上流に行く事も出来るんだが、ここから、1日か2日か
も行けば、狼の大群がいる事は、お前達もよ~く、知って要るだろう、オレ
はよ~、別に狼の餌食になってもいいと思ってるんだがよ~、それじゃ~、
みんなが気が済まないんだよ。」
それでも、ウエスは、命が欲しいのか、この場から何としてでも逃れるの
だと考えている。
「我々は、その様な事はしていないですよ、だって、武器も渡したのです
から。」
「なぁ~、ウエスさんよ、本当にあれで全部かよ~。」
「そうですよ。」
「ウエス、今更、何を言ってるんだ、川沿いの大木の下から大量の武器は
押収した。」
「えっ。」
「そうだ、お前達が隠した武器だよ。」
「正か。」
「そうだ、大工さんが教えてくれたんだ、だからよ~、もう、観念して
よ~、川に飛び込んだらどうだ。」
それでも、ウエスはしぶとく。
「我々は、将軍との戦争で負け、武器を差し出し、今、この様にして堤防
と大池を造ってるんですよ。」
「お前達がよ~、近隣諸国の村を襲い、作物も略奪して、まぁ~、これ
も、お前達が生きる為なんだろうが、お前の部下達は、女を犯し、そして、
女と子供達を家に閉じ込めて火を放ち、村人を焼き殺した事は、知ってるん
だよ、だから、オレは、お前達全員を殺しに来たって話なんだよ、早く、い
や待てよ、その前にだ、ホーガン、あの3人をここえ。」
3人は、狼犬部隊の助けでロシュエの横に来た。
「あんた達は、ウエスを殺したいんだろう。」
「はい、将軍。」
「だがよ、簡単には死なせないよ。
狼犬部隊下馬し、石を持って奴らに投げろ、お~、そうだ、全員を殺す前
に、ウエスを血祭りに上げてやるよ、このオレが直々にだからね、ウエス、
喜べよ。」
ロシュエは、自らウエスを殺すと言ったので有る。
「だがなぁ~、オレは、ホーガンも剣も使わないよ。」
ロシュエは、一体、どの様な方法でウエスを殺すと言うのだ、司令官も狼
犬部隊も、他の隊長や兵士達もわからないので有る。
「お~い、馬車を。」
「は~い。」
1台の馬車がロシュエの横に着いた。
馬車の荷台には数十本の棒が積み込まれていたが、誰も、その棒の使い道
を知らなかったので有る。
「うん、よ~し、これに決めたぜ。」
ロシュエは、中から1本を取り出し。
「オイ、ウエス、お前の部隊の中に、隊長ってのは何人だ。」
ウエスは返事もせずに居る。
「わかったよ、じゃ~、お前達に聞く、中隊長と隊長は、何処に居るん
だ。」
だが、誰も、名乗らないので。
「そうか、よ~く、わかったよ、この部隊は、ウエスが隊長で、後の全員
は兵隊なんだなぁ~、まぁ~、オレも少しは考えていたんだよ、百人は居る
と思っていたんだが、じゃ~、仕方無いか、一度に全員を殺す必要も無いか
ら、少しづつ前に出て待ってろよ、オレの本当の恐ろしさを教えてやるから
よ~。」
言った途端、ロシュエは、ウエスの足を持っていた棒で力いっぱい殴っ
た。
ウエスは、呻き声を上げ、その場に倒れ、立ち上がる事も出来ず居る。
「今から、オレが、このウエスをなぶり殺しにするからよ~、よ~く、見
て置けよ。」
今度は、数十回、足だけを殴ったので、ウエスは呻き声を上げている。
だが、其れからが、凄まじかった、5回、10回、更に続き、百回も殴り
続けるので、其れを見ていた数十人の兵士が。
「将軍、この男が隊長です。」
と、前に突き出したので有る。
「オイ、この男だけなのか。」
其れからは、次々と、前に突き出され、隊長、中隊長は百人程になった。
「そうか、お前達がなぁ~、じゃ~、残りは、全員兵隊なんだなぁ~。」
ウエスは、痛みの余り、転げ回っている。
「ホーガン、馬車に棒が有るはずだ、其れを持って来るんだ。」
「はい。」
数十人が50本近くの棒を持ってきた。
「ホーガン、その棒を持たせろ。」
「はい。」
ホーガンは、この時、寒気を感じた、ウエス達を殺す棒が有るとは知らな
かった。
「よし、狼犬部隊は、その棒で、前に居る隊長や中隊長の足だけを狙って
殴るんだ、但し、思いっきりは駄目だぞ、こいつらは、特に時間を掛けてゆ
っくりと殺るんだから、最後は、川に放り投げ終わりだ、じゃ~、やれ。」
ロシュエが、これほどにも恐ろしい将軍だとは知らなかった。
ウエス達は、村民を殺す時は、やりや剣を突き立てて殺すので、直ぐに死
ぬのだが、棒で、それも、足だけを狙うとは、其れは、数十、数百回殴られ
て気絶する事はあるが、足だけでは死ぬ事は無い。
狼犬部隊は、棒で、隊長や中隊長達に対し、数十回も殴り続けるので、ウ
エス同様、殴られた隊長や中隊長達は痛みのため、付近を転げ回り、呻き声
を上げている。
「よ~し、少し休め。」
「えっ。」
司令官が声を上げた、休めとは、一体、どの様な意味なのだ。
「司令官、オレは、奴らを簡単に殺すとは言ってないんだ、1回、1回が
だよ、この野郎達に殺された人達の人数だと思ってくれよ。」
「将軍が、怒られた顔は拝見しているが、こんな恐ろしい顔は初めてです
よ。」
ロシュエの後ろには3番大隊が控えている、やがて、一人、二人と倒れて
行く。
「お~い、石を投げるのを止めろ。」
ロシュエは、狼犬部隊を制止した。
其処には、百人程が、全身に投石を受け、呻き声を上げている。
「その転がっている奴を、川に放り投げろ。」
狼犬部隊は、顔と言わず、頭と言わず、血を流している兵士達を次々と川
に放り投げて行く。
兵士達は、1度、2度と川面に顔を出すが、やがて力尽き水中へと沈んで
行く。
その様子を見ている兵士からは。
「頼む、一層の事、やりで突き殺してくれ、お願いだ。」
「何を言ってるんだよ、そんな簡単に殺してやるか、まぁ~、暫くそのま
まで居ろよ。」
「お~い、ホーガン、また、始めるとするか。」
ロシュエの命令を受けて、ホーガンもだが、司令官達も、ロシュエの恐ろ
しさを初めて知ったのだ。
だが、殆どの兵隊には、石は投げられておらず、兵隊達は恐怖の表情にな
り、中には身体が震え出した者も居る。
「おい、狼犬部隊、疲れたのかよ~。」
ロシュエの表情を見た狼犬部隊の隊員も、なんと、恐ろしい顔だと思って
いる。
「じゃ~、始めるぞ、やれ~。」
ロシュエの命令で、またも、投石が始まった。
だが、ウエスの兵士達は、投石を受ける前に冷たい川に、次々と飛び込
み、対岸へと向かって泳いで行こうとするが、彼らも、寒さを凌ぐために、
狼や他の動物の毛皮を全身に着けている、その為、泳ぐ事も出来ず、数ヒロ
も行けず、次々と水中へと沈んだ。
数時間後には、ウエスの部下は殆ど水中に飲み込まれた。
「よ~し、後に残ったのは、これだけか、じゃ~、その前に、ウエス、お
前の番だ。
ホーガン、3人をこっちに。」
狼犬部隊の数人が、替え添えし、3人が着た。
「君達は、今まで、奴らのために命を落とした人達の為に、ウエスの復讐
するんだ。」
「えっ、オレ達がですか。」
彼らは、今の今まで、ロシュエが行なってきた、恐ろしい殺し方を見て震
えている。
「そうだよ、奴らのために、何百、何千と言う罪の無い多くの村民が殺さ
れたんだぜ、その人達の怨みを晴らして欲しいんだ。」
「でも。」
彼らは、やはり農民なのだ、言葉では殺したいと言ってはいるのだが、い
ざとなれば農民に出来るはずが無かった。
「なぁ~、出来ないだろうよ、其れが、本当の人間なんだ、だけど、この
ウエスや他の連中には、人間の心なんてものは何処にも無いんだ、オレはな
っ、あんた達にウエスは殺せないって事はわかってるよ、だが、このウエス
だけは、命を落とした農民の為に天罰を下してやるからよ。」
ロシュエは、馬から降り、近くに有った棒を持つと、ウエスに近づき、足
と腕を何十回と無く、渾身の力が殴るので有る。
それでも、頭と身体は殴らないのだ、ロシュエも息が切れるほどだが、ウ
エスは呻き声を上げている。
「どうだ、お前達、オレは本気だ。」
残った、数人の兵士に言ったのだ。
「苦しんで、苦しんで、それでも、まだ、苦しみ抜いて死なせてやるん
だ、それでなけりゃ~、死んだ多くの村民の気持ちが晴れないと思うんだか
らなぁ~。」
司令官は、何も言わず頷くだけで有る。
ウエスに対する制裁は更に続き、両方の足は完全に別の方向に向いてい
る。
ウエスは、それでも生きている。
「ホーガン、ウエスを川岸に連れて行け。」
数人がウエスを川岸まで連れて行き、身体を川の中に入れた、ウエスは、
泳ぐ事も川岸に戻る事も出来ず、ただ、もがいている、だが、やがて力尽き
川面に顔を埋めたまま流されて行く。
一方、隊長達に対する制裁も激しさを増している、数十回も両足だけを殴
ると、少し休み、其れが延々と続くので有る。
ウエスの部下の兵隊は正視も出来ない程で、狼犬部隊は数百回も棒で殴っ
たのだろうか棒には血が着いているが、それでも、終わりは無かった。
「将軍様、オレ達は、ウエス隊長の命令で仕方が無かったんですよ。」
「何だと、じゃ~、命令する、今から、お互いで殴り合え、それも石で
だ。」
「えっ。」
殆どの兵隊は絶句するのだが。
「お前達は、ウエスの命令で、何の罪も無い、女、子供を焼き殺したん
だ、オレが許しても、その人達が許さないんだ、早くやれよ。」
兵隊は、仲間同士の殺し合いは出来ないのだが。
「よ~し、オレが順番に殺ってやるよ。」
ロシュエは、今度は顔面と言わず、身体中を殴り始めたのだ、その内、一
人、また、一人と、冷たい川に飛び込んで行く。
中には、恐怖の余り、漏らす者も居るが、ロシュエに、容赦無かった。
その内、狼犬部隊も加わり、制裁と言う名の虐殺が行なわれた。
数時間も続いたのだろうか、若い二人と、少し年の行った男が涙を流し。
「将軍様、お願いだ、もう止めて下さい。」
「なんだと、お前、うん、まだ、3人が生き残っている、ホーガン、早く
片付けろ。」
と、言ったのだが、其れまで、石を投げていた狼犬部隊も辞めたので有
る。
「司令官、来てくれ。」
「はい、閣下。」
「済まんが、オレは、また、突然、気が変わったよ、この残った奴らは生
かして置く。」
「えっ、何故ですか。」
「いや、オレが考えた事が有るんだよ、済まんが、奴らは生かさず、殺さ
ずで頼む。」
ロシュエは、一体、何を考えたのだ、ウエスの連中全員を殺すはずだった
のが、突然の変更で、司令官や他の隊長も驚いている。
「よ~し、ホーガン、ウエスを川に放り投げろ。」
「はい。」
数人掛りでウエスの身体を川に放り出し、ウエスの身体はそのまま、川面
を流れて行く。
ホーガンは、残った数人を見ていた。
「おい、お前達、お前達は、少しの時間だけ生かせて置く、だが、その前
に聞くが、本当の事を言うんだ、わかったか。」
数人の内、一人だけは、返事をしなかったので。
「うっ、お前はやはり、ウエスの部下だなっ。」
それでも、返事はしなかったのだが。
「将軍様、オレは何でも言います。」
「そうか、じゃ~、聞くがよ、敵軍は、やはり対岸にいるのか。」
「はい。」
「司令官、オレの思ったとおりだ。」
「はい、その様です。」
「各隊長も来てくれ。」
ロシュエは、5人の隊長を呼んだ、隊長達は、ロシュエが聞き出すのを待
って要る。
「じゃ~よ、兵隊の人数は。」
「はい、オレも、はっきりとは知りませんが、ウエス隊長の話では、約、
2万人だと。」
その人数は、木こりや大工が言った人数と同じだった。
「よし、わかった、お前の知って要るだけで良い、それで、武器は。」
「はい、剣とやり、後は、弓です。」
「その弓は、何本くらい有るんだ。」
「はい、2百本くらいだと、思いますが。」
「えっ、2百本だと、じゃ~後は。」
「はい、やりと剣だけと思います。」
司令官達は驚き。
「閣下、すると殆どが歩兵だと言う事に。」
「うん、オレも、同じだ、じゃ~、馬の数は。」
「はい、5百頭だと聞いています。」
「何だと、5百頭だと、司令官、オレの予想とは全く違ったよ。」
ロシュエは、2万人の兵隊で有れば、半分は騎馬兵だと考えていたので有
る。
「閣下、作戦の変更が必要になります。」
「う~ん、本当だよ、だがよ~、お前は、なんでそんなに詳しく知ってる
んだよ。」
ロシュエの疑問は当然なのだ、一兵士が、自軍の事までを詳しく知る事な
ど普通では考えられないのだ。
「将軍、お話が有るんですが。」
「何だよ、言いたい事が有るのか。」
この若い兵士は、何としても生き残りたいと思い必死なのだろうと、ロシ
ュエも司令官も思うのだ。
「何だ、言いたい事が有るのか。」
「はい、オレと、この彼は、元々農民なんです。」
「えっ、今、なんて言ったんだよ、お前達、二人は農民だと、今更、何を
言ってるんだよ、え~、農民だからと、嘘を言って、生き残れるとでも思っ
てるのかよ~。」
「いえ、本当なんです、オレ達は、有る国の領民でした。
でも、有る時、突然、ウエス達が村を襲ったんです。」
ロシュエも、正かと思い、信じる事が出来ないので有る。
「じゃ~よ、なんで、お前達、二人が生きてるんだよ、え~。」
「はい、オレ達、二人は、その時、別の場所に居たんです。」
「えっ、何だと、別の場所に居たんだと、そんな話、一体、誰が信じると
思うんだ。」
「将軍様、本当なんです、オレ達は、国王様にお届けする物を持って、お
城に行く途中でした。」
その時、ホーガンは思い出したので有る。
確か、若い二人の農民が馬車に乗り、城の方向へと進む途中ですれ違った
のを。
「将軍。」
「何だ、ホーガン。」
「はい、実は、二人ですが、私達が、偵察に行く途中に森の中ですれ違っ
た農民ではと思いまして。」
「あっ、じゃ~、あの時の兵隊さんですか。」
「ホーガン、一体、どう言う話なんだよ~。」
「はい、私が居りました、城では、毎年、数回、近隣の農民が、新鮮な野
菜や果物を届けてくれるんです。」
「ホーガン、じゃ~、何か、この二人も城に野菜か果物を届けに行く途中
だったのか。」
「はい、でも、城主は、何も強制はされていません、ただ、農民は、届け
た時に作物の出来具合を報告する事になってるんです。」
「じゃ~、その為に、農民が行くのかよ~。」
「はい、その通りです、城主は、無理な事は農民には言いませんので、農
民も暮らしは楽だったと思います。」
「将軍様、本当なんです、国王様は、オレ達に、一度も、無理は言われま
せんでした。
何時も、オレ達、農民の事を考えて下さいましたので、オレ達、農民も出
来るだけお城に届け様としていました。」
「じゃ~、聞くがよ~、お前達は、なんで、ウエス達の仲間に入ったん
だ。」
「別に仲間に入りたくて、入ったんじゃないんです。
お城に届け物をして帰ると、村の全員が殺されていたんです、其れで、二
人で相談し、他の国に行こうとしました、でも、農民の服を着ていれば、殺
されると思い、途中で、兵隊さんの死体から服を盗み着たんです。」
「じゃ~、その服か、今、着ている軍服なのか。」
「はい。」
ロシュエも、ホーガンの話で、二人を信用するのだが。
「だがなぁ~、お前達は農民だ、その農民が軍服を着て、よく、ウエスに
知られなかったなぁ~。」
「オレ達も、何故かわかりませんが。」
「だが、一体、何人殺したんだ。」
ロシュエの顔付きが変わったのだ、若しも、彼らが同じ様に農民を殺して
いたならば、簡単に許す事は出来ないと。
「将軍様、オレ達は、誰も殺していません、オレ達も農民です、だから、
同じ農民を殺すなんて事は出来ませんでした。
でも、この服を盗んだのは悪いと思っています。」
彼ら、二人は生きる為に、兵士の服を盗んだので有る。
「判ったよ、オイ、そっちの男は、何とか言ったらどうだ。」
この兵士は、ウエスの部下だと知られ、さっき見た光景を思い出したの
か、恐怖の表情で身体は震えている。
「じゃ~よ、お前にも少しだが、生き延びる方法が有るがよ、正しだ、運
が良かったらの話だよ。」
この時、兵士は、運が良ければ殺される事は無い、だが、簡単に行かない
と思った。
「お前は捕虜として扱う、正だ、オレ達の農場には、お前を入れる檻が無
い、だがら、オレが許可するまで、木に吊るす。」
何と言う方法なのだ、確かに農場には、捕虜を収容する様な施設な無い、
だからと言って、農場に入れる事も出来ない。
外は寒く、毎日、小雪がちらついているのだ、その様なところに、一体、
何処に吊るすのだろうか。
「司令官、城門に吊るしてくれ、それと、奴の傷が少し良くなったらよ
~、奴には、本当の恐怖を味合わせてやるからよ。」
「はい、閣下。」
本当の恐怖とは、一体、どの様な恐怖なのか、司令官もホーガンも理解出
来ない。
「司令官、今日は、此処で野営するが、今夜は食べ物が無いが、みんなに
辛抱する様に伝えてくれ。」
「はい、閣下、みんなも承知して要ると思いますので。」
「お~、それからだ、こんなに寒いからよ~、この辺りの木を焚き火にす
る様に。」
「はい、畏まりました。」
「将軍、実は、今夜の食事ですが。」
「うん、申し訳ないんだが。」
「いえ、そうでは有りません、私の判断で、野営地より、肉とテントを持
って着ましたのですが。」
「えっ、何だと、そりゃ~、本当か。」
ロシュエの表情が和らいだ、其れは、少しでも良い、熱いスープがあれ
ば、兵士達も、少しは気持ちが楽になるのだ。
それにしても、1番大隊は、またしても、ロシュエの考えの先を行くので
有る。
「隊長、有難うよ、だって、オレよりも、兵士がよ~。」
「はい、この寒さですので、ですが、この男には。」
「そんな事は必要無い、だれか、この男を木にくくりつけろ。」
「はい。」
狼犬部隊から数人が来て、川岸の木にくくりつけるので有る。
「将軍、この二人は。」
「う~ん、ホーガン、お前に任せる。」
「えっ、私にですか。」
「そうだよ、この二人は、ホーガンが命を助けたんだから、それとだ、敵
軍の情報を出きるだけ、思い出させるんだ、少しでも、嘘を言った時にはよ
~、ロープに繋いで、狼の餌に差し出してやるからよ~。」
ホーガンは、ロシュエの作戦なのだと。
木に縛り付けられたウエスの部下は恐怖に震えている。
「将軍、此処には、技師長とウエスが使っておりました小屋が有るんです
が。」
「あ~、そうだったなぁ~、じゃ~、ホーガン、あの3人をウエスのい
や、今度から隊長になったホーガン、お前が一緒だ。」
「えっ、でも、将軍と司令官は。」
「ホーガン、何も考えるなよ、わかってるのか。」
其れは、ウエスの部下にさせられた、若い農民も一緒に入れと言っている
のだ。
「将軍、有難う、御座います。
では、お言葉に甘えさせて頂きます。」
狼犬部隊もだが、他の隊長もわかっている。
二人の農民は、投石を受け、全身が傷だらけなのだ。
足や腕を切断した3人と、2人の農民を連れて、ホーガンは、ウエスが使
っていた小屋に入ると、之が、ロシュエの優しさなのだと、ホーガンは思
い、二人の農民に色々は話をするのが必要だと考えたが、其れが、ロシュエ
の狙いなのは間違い無い。
「将軍、スープが出来ました。」
「じゃ~、先に兵士達にだ、オレは最後でいいんだから。」
「はい、有難う、御座います。」
3個小隊の兵士達は手分けして、各大隊へ熱いスープの鍋を持って行く。
明くる朝だった、ロシュエは、何時もと変わらぬ表情だった。
「将軍、朝、早くから申し訳御座いません。」
「いや、オレは起きているからよ、で、何だ。」
2番大隊のオーレン隊長で。
「はい、実は、伝令を出したいのですが。」
「う~ん、何処にだよ。」
「はい、農場にですが。」
ロシュエも昨夜考えていた、早朝に農場に伝令を出そうと。
「うん、いいよ、其れで。」
「はい、全員、無事だと。」
「オイ、オイ、それだけかよ。」
ロシュエは、ウエス部隊が消滅した事も伝えるべきだと考えていたのだ。
「はい、私も、ウエス達が全滅した事を伝えても、良いかと考えたのです
が。」
「オーレン隊長、勿論だよ、農場には、ウエス達の為に今まで、苦しんだ
人達が居るんだ、その人達は、ウエス達が完全に消滅したと、聞くだけで、
今日から本当の意味で安心するだろうからなぁ~。」
「はい、有難う、御座います。
では、その様に伝えますが、将軍、我々の本隊は、何時頃、農場に戻る予
定なのでしょうか。」
「オーレン隊長、オレも、其れを考えて要るんだよ、小走りで行きゃ~
よ、夕刻には帰れると思うんだが。」
「そうですね、私も、その方が、兵士達も喜ぶと思いますので。」
「じゃ~よ、司令官と各隊長に伝えてくれ、少し早いが、出発の準備に入
れと。」
オーレン隊長も本当は、農場に帰りたいと思っていたので、自然と顔がほ
ころぶ。
「はい、将軍、了解しました。」
オーレン隊長は、司令官をはじめ、各隊長に知らせ、隊長達も急ぎ、帰り
の準備に入る様に指示を出すと、伝令は、喜びを表した表情で。
「隊長、一刻も早く、知らせたいと思いますので。」
「お~い、余り飛ばすなよ、馬は大切だからなぁ~。」
「は~い。」
と、言ったと思うと、あっと言う間に、姿が見えなくなった。
「将軍、宜しいでしょうか。」
「ホーガンか。」
「はい、失礼します。」
「いいよ、で、何だ。」
「はい、昨夜。」
ホーガンは、若い農民に、今までの事を話したと言うので有る。
「そうか、で、二人は。」
「はい、大変喜んでいました、其れで、農場に戻ってからの事なんです
が。」
「うん、判ってるよ。」
「では、二人を大池造りに参加させても宜しいでしょうか、」
「まぁ~、其れは、任せるよ、其れよりも、オレが聞きたいのは。」
「将軍、私も聞きましたので、説明します。」
と、出発前に話をするのだ、暫くすると。
「将軍、全員準備完了です。」
「よし、わかった、では、農場の戻るぞ、帰りの順番も同じだ、ホーガ
ン、あの二人は、馬車に乗せろ、話は農場に戻ってから詳しく聞くからよ
~。」
「はい、承知致しました、では、私は。」
それから、直ぐに出発の命令が下った。
「では、全員、乗馬。」
どの兵士達も顔が喜びで一杯で有る。
「よし、全隊、農場に向かって出発せよ。」
ロシュエを先頭に、全隊が農場へと出発したので有る。
其れは、一人の犠牲者も無く、ロシュエの引き得る軍隊が、正に完全勝利
の行進だ。