第 54 話。 山賀へ向かう訳。
「総司令、あれから既に十日経ちましたので、そろそろかと思います。」
「そうですねぇ~、では小川さんは小隊を編成して頂けますか。」
「総司令、自分が参ります。」
「左様ですか、ではお願いします。」
人質となっていた小隊が行くと言う。
「では皆さん装備が十分ならば参りましょうか。」
源三郎と小川、そして、小隊が大手門から駐屯地へと向かった。
駐屯地の周辺はおびただしい程の死体、いや人間の骨で中には未だ肉片が残っており、烏が奪い合っており、死体が人間だと言うには僅かに残って要る軍服の切れ端で判別出来る。
「小川さん、これを片付けるには相当な日数が必要ですねぇ~。」
「私も其の様に思いますが、何れにしても片付け無ければなりません。」
「総司令、隊長。」
彼らは山で警戒任務に就いていた中隊で有る。
「中隊長の部隊ですが全員無事でしょうか。」
「其れは大丈夫ですが一体何が有ったのでしょうか、自分達が山を下った時には城下には誰もおらず、これは大変な事態だと思い直ぐ山小屋に避難すると、其の直後と申しましょうか、狼の大群が北の方へと移動始めたんです。」
「中隊長の判断に間違いは有りませんでしたよ、捕虜にしたと申しましょうか、官軍の一個大隊が人質を取り駐屯地を占拠しましてね、十日程前狼の大群が官軍を襲いこの様な惨状になったのです。」
「では人質もでしょうか。」
「いいえ、其れが小川さんの作戦が見事に的中しましてね人質は勿論ですが領民からも犠牲者は出ておりませんよ。」
「其れは何よりでしたねぇ~、では自分達も後片付けを手伝います。」
「大変助かりますよ、ですがまだ官軍兵が潜んで要るやも知れませんので十分注意し片付けには入って頂けますか。」
その後、お城からは次々と領民が出て来た。
「わぁ~なんだ、あれは人間の骨だ、でも一体何人がやられたんだ。」
「皆さんは家に戻って下さい。」
「源三郎様、我々も片付けを手伝いますよ。」
「そうだよ、オレ達だって何時も兵隊さんのお陰で、だからこんな時こそみんなで片付けますから。」
「お~いみんな荷車と道具を集めてくれ、みんなで後片付けするんだ。」
領民達が一斉に駐屯地の後片付けを始めた。
「お~い、女達は食事の準備に入ってくれ、男達は後片付けだ。」
駐屯地の後片付けは数日間で終わり。
「若、私は一度戻りますが、後の事は宜しく頼みます。」
「総司令、自分もご一緒させて頂きます。」
工藤も作戦が成功しほっとして要る。
「司令長官殿、私達も一緒に戻らせて頂きます。」
橘達も一緒に戻ると言う、その時。
「お前達は。」
官軍兵がまだ五十名程兵舎の中に隠れていた。
「おのれ、良くも我々の仲間を殺してくれたなぁ~。」
と、言うが早いか官軍兵は太刀を抜き源三郎に襲い掛かった。
だが源三郎は一瞬早く橘の太刀を抜き官軍兵を打ち据え、両足を砕かれた者、腰や肩の骨を、更に背骨を砕かれた官軍兵は痛みを感じないのか倒れても太刀を振り回して要る。
「おい、早く殺せ。」
「いいえ、其れは駄目ですよ、せっかく皆さんが綺麗に片付けし、掃除を終わられたのですか貴方方の汚れた血を流す訳には参りませんよ、ですが何故に見付からなかったのでしょうか。」
「総司令、申し訳御座いません。
自分達が悪いのでして、この部屋は自分達が閉じ込められていた所で正か官軍兵が同じ部屋に隠れて要るとも考えずこの部屋だけは確認しておりませんでした。」
「そうでしたか、まぁ~其れも仕方有りませんねぇ~、では貴方方に罰を与えます。」
小隊長と小隊の兵士達は一瞬で顔から血の気が引いた。
「貴方方はこの部屋を確認もせず、更に掃除もしていない、其れは重大な過失ですよ、では貴方方は官軍兵を荷車に乗せ北の断崖絶壁に連れて行き少し離れた所に、そうですねぇ~、半町、いや一町程の所に放置して来る事を命じます。」
源三郎は小隊の全員に罰を与えたが。
「何だと其れでは我々は一体どうなるんだ。」
「そうですねぇ~、運が良ければご自分の力で断崖絶壁から身を投げ出す事も出来ますが、運が悪ければその場で飢え死する事になり、後は烏が何も残さずに片付けしてくれますので安心して下さい。」
生き残ったと思われた官軍兵は身体中の骨を砕かれ自らの力で動く事も出来ず断崖絶壁から身を投げる事も出来ないと、其れならば飢え死にと言う人間が味わう最も苦しい死に方のどちらかで最後には烏が肉片の全てを食べ骨だけが残ると言う恐ろしい刑が待って要る。
「何と言う恐ろしい刑を。」
「橘、これが総司令が与えられる処刑だ、確かに何も知らぬ者は総司令の刑罰は余りにも残酷だと思うだろう、だが彼らは何の罪も無い人達を簡単に殺し、挙句の果てに家に閉じ込め焼き殺すと言う普通の人間が考える殺し方では無い。
狼や森に生きる動物は生きる為に他の生き物を襲うが、この者達は獣でもやらない人道に反する行為に総司令はあえて地獄を味合わせる為の刑で、私も其れに異論を唱えるつもりも無い。
総司令と言うお方は普段は誰でも知って要るお優しいお方だ、だがあの様な者達には決して容赦はされないんだ。」
「自分は今回初めて司令長官殿にお会いしましたが、これ程のお方が官軍に大勢おられたならばこの先の日本国は安泰だと思いますが、やはり現実は違うのだと分かりました。」
「小隊長、早く連れて行って下さいよ、でなければ何時狼の大群が戻って来るかも分かりませんので。」
源三郎の言葉に小隊長は慌てて荷車を集め官軍兵を乗せ北の断崖絶壁へと急ぎ向かった。
そして、その後、源三郎達も野洲へと戻って行った。
「橘さん、明日の朝、大隊の全員にお話しをしますので全員を駐屯地の前の広場に集合させて下さい。」
橘は其れだけを聞くと中隊長と小隊長の全員は駐屯地へと入り、そして、明くる日の朝、橘と大隊の全員、其れと工藤と吉田を含め広場に集合した。
「皆さん、お早う御座います。
皆さんには今から大切なお話しをしますが全て真実ですのでねよ~く聞いて下さいね。」
源三郎はその後半時程掛け山賀で起きた浅川の大隊の全員が狼の大群に襲われ全滅した事を話した。
「皆さん、先程も申しましたが今の話しは全て事実です。
では今から本題に入りますのでね。」
源三郎は山賀の洞窟で拡張工事の作業員が不足して要る事を説明した。
「今からは皆さんが何を聴いて頂いても宜しいのでね全て私が説明しますのでお聞き下さい。」
「あの~源三郎様、洞窟って物凄く狭く暗いって聞いてるんですが。」
やはりだ、最初の質問は洞窟は恐ろし所だと思って要る。
「其れはねぇ~多分島送りにされた人達が入られた洞窟だと思いますが、山賀の洞窟は全て違いましてね中は大きく広いですよ、そうですねぇ~、幅は五間以上で高さも三間は有り、内部は岩でしてね、まぁ~其れでも落盤事故が起きたんですよ、其れと言うのも先端部分を掘削していたのですが断崖絶壁の真下だと言う事を知らず、先端部分が海の真近くに来た時突然海側を隔てておりました部分が海水の圧力で崩壊し大量の海水が流れ込み先端で掘削されておられた十数人が犠牲になられたのです。」
源三郎は全て真実を話すが大隊の兵士達は其れよりももっと多くの犠牲者が出て要ると思い。
「今のお話しは本当なんですか。」
「全て真実ですよ、私もですが山賀の若様と現場の作業員が海に飛び込まれ助け出したのですが、でも既に遅く十数名の人達が亡くなられたのです。
ですが大きな落盤事故はその一回だけでして、その後は一度も起きてはおりません。
その理由ですが、現場では掘削と並行して連岩と言う物を使いまして洞窟内を補強しながら掘り進んで要るのです。」
「源三郎様、洞窟の現場ですが島送りにされた人達が掘られてるんですか。」
そうか何も知らない人には洞窟の掘削は犯罪人の仕事だと思って要る。
「えっ、今何と申されましたか、犯罪人が掘削の仕事をさせられて要ると聞こえたのですが、其れは大間違いですよ、これは私の説明が悪かったのですねぇ~、我々の連合国では仕事に就いて頂ければ食事と眠る所は有りますが、仕事に就いて頂け無ければ食事は勿論ですが眠る所も有りませんよ、我々の連合国ではどの様な仕事に就いて頂いても宜しいのです。
例えば十歳くらいの子供が幼い子供の面倒を見る、これも立派な仕事でして、其れに連合国では男も女も誰でも働き、そして、食べ眠る所と、まぁ~私の話が嘘だと思われるので有れば後程城下の人達に聞いて頂いても宜しいです。
ですが今回皆さんにお願いします掘削現場では今も一千人以上の人達に働いて頂いておりますが其れでも人手不足でしてね、私は人手不足を解消する為に浅川の大隊の兵隊さんにお願いしたのです.
ですが彼らは何を勘違いされたのか分かりませんが、我々の仲間を人質に取られたのです。」
「源三郎様は仕事に就いて頂けば食べる事も眠る所も有るって言われましたが、オレ達は官軍兵ですから捕虜なんですか。」
「皆さんは何を勘違いされておられるのですか、我々は皆さんを捕虜だとは決して思っておりませんよ、但しですよ皆さんは我々の連合国を知られたのです。
我々は今まで幕府にも官軍にも知られる事も無く城下の人達と仲良く暮らしておりましたが皆さんが山の向こう側に出られ官軍に我々連合国の事を話されるは大変都合が悪いのです。」
源三郎はその後も橘の大隊の兵士達全員に理解出来る様に優しく説明して行くが、彼らは今も官軍の兵士で有り、戦で負けたのでは無く何も分からないまま自分達は捕虜になったと思って要る。
「連隊長殿、中隊長殿に小隊長殿、源三郎様のお話しじゃオレ達は捕虜でも無いって、だけど連合国からは出す訳には行かないって言われてるんですが、じゃ~オレ達はこれから一体どうすればいいんですか。」
兵士が思うのも無理は無く、捕虜では無いが、かと言って連合国から出られると困ると。
「橘さん、私は何も申しませんので小隊長も中隊長も、其れに橘さんのお気持ちを伝えて頂きたいのです。
其れで無ければ部隊の兵隊さんは不安だと思うのです。」
「司令長官殿、私が説明致します。」
「ですが何も隠される事は有りませんので全てお話し下さい。」
「承知いたしました。
では今から話しますが、今も司令長官殿が申された様に全て話しますので。」
橘はその後今までの全てを話し、今回の件も源三郎からは強制されたのでは無いと半時以上も掛け説明。
「皆からの質問には正直に答えますので。」
と、橘は兵士達から質問を受けると。
「連隊長殿、今の話しだったらオレ達はもっと前に佐渡に行く事になってたと、じゃ~この先はどうなるんですか。」
「皆は何も知らないと思うだろうが、ロシアと言う強大な国が我が日本国を植民地にする為に襲って来ると言うのです。」
「何ですか、そのロシアって其れに何で日本を植民地にするんですか。」
「では其の話しをしましょう。」
橘は何故ロシアが日本を植民地にするのかを詳しく説明すると。
「じゃ~佐渡の金山を攻撃隊し金塊と日本国中の小判全てを奪いに来るんですか。」
「其の通りでして、金と言うのは何処の国でも高価でしてね、ロシアは日本を植民地にし日本中の小判を全てを本国に送る。
其の第一弾が佐渡の金山を襲う計画を日本政府が嗅ぎ付け佐渡に兵士を送り防衛線を敷く、其の第一陣が師団長に与えられた任務だったんです。」
「だけど師団長は大量の小判も持ち何処かの国へ逃げるつもりだったんですか。」
「正しく其の通りでしてね、全ての計画通りに行けば師団長と浅川大隊長と他の隊長達に部下の全員は今頃他国に其れが外国だったんですよ。」
「でも連隊長殿も知ってられて何も出来なかったんですか。」
「皆も知っての通り、私の大隊と掛川、佐野の大隊の全員が農民や町民の集まりで、ですが師団長達の全員が元侍でして。」
「其れだったら知ってますよ、でも何でそんな事になったんですか。」
「其れが師団長の頭の良いところでしてね、全員が元侍だと成れば裏に何か有ると疑われますから、私と掛川、佐野の大隊を編入すれば計画を知らない軍令部は師団長として佐渡に派遣する、これが師団長の計画だったんです。」
「じゃ~連隊長殿は師団長達の計画に利用されたんですか。」
師団長と言う人物は実に悪賢い、同じ官軍兵でも元侍達だけならば裏に何か有ると疑われる、其れならば何も知らない橘の三個大隊を編入し師団となり佐渡に行く、其れならば軍令部とて何も疑わず派遣するだろうと考え師団長の企みは見事成功しあの地に来た。
「でも何で軍令部に言わなかったんですか、オレだったら。」
「まぁ~ねぇ~貴男の言われる通りですが、其れが軍隊なんですよ、軍隊と言うのは階級が一つ違うだけでも全然違いましてね、其れよりも私が計画を知ったのは師団として編成され出発しあの地に着く少し前でして、例えば私が軍令部に報告したとしても師団長は何も知らない、いや其れよりも軍令部に報告する事も出来なったんです。」
「何でですか、連隊長殿が軍令部に報告すれば師団長の企みは軍令部が知ると思うんですよ。」
「ですが報告書をどの様にして送るんですか、若しもですよ、貴方方の中の誰かが軍令部に届け様と駐屯地を出発しようとします。
師団長は駐屯地の出入り口の全てを浅川の部隊に配置させておりまいてね数人でも出る事も出来ず、若しもですよ書状が師団長の手に渡れば私は適当な理由を付け銃殺刑に、其れよりも下手をすれば貴方方全員は殺されるんですよ。」
師団長は頭の切れる人物で駐屯地の出入り口には橘の部隊の兵士では無く、浅川は橘とは関係の無い部隊の兵士を使い橘達の兵士は日夜監視させていたので有る。
「私もですが、皆も全員が日夜監視されてたも同然で何も出来なかったんです。」
「じゃ~其の前にですが二個中隊は何処に行ったんですか。」
「あの中隊は菊池の隧道近くで連合国軍と戦になり全員が狼の餌食になりました。」
「でも何で連隊長殿とオレ達と、其れに師団長と浅川大隊長の部隊が連合国に入れたんですか、オレ達は何も知らなかったんですよ。」
「其れはねぇ~浅川が私の部隊の二個小隊に偵察に向かわせる様にと言って来ましてね、二個小隊は何を間違ったのか山賀の北側の向こう側に有る大岩付近で山賀の二個小隊に発見され、二人の小隊長は師団長が送った刺客と勘違いして反撃し、ですが其の後、兵士が山賀の若様に事情を話すと、若様が司令長官殿に書状を送られまして、其の時、此方におられる工藤大佐殿が私の事を知られ、大佐殿は司令長官殿に嘆願され、ならば師団長と浅川と大隊の兵士だけを誘い出す作戦を練り其れが成功し、我が部隊が師団長と浅川の部隊を菊池に誘い込んだんです。」
「工藤大佐殿って連隊長殿とどんな関係なんですか。」
「大佐殿は私の上官ですよ。」
大隊の兵士が初めて知る橘と工藤の関係で有る。
「えっ、上官って、でも師団長も上官じゃ無いんですか。」
「其の通りですよ、ですが師団長は軍令部からで、でも大佐殿は私が官軍に入った時の最初の上官でしてね、大佐殿も元は侍ですが部下の命は大切だと申されておられましてね、私の知る限り一度も突撃命令は出されておられないのです。
其れに吉田少佐殿も其の時の小隊長で、今山賀の隊長なれたお方と私と同期の間柄でしてね、私と彼は其の時お互いで誓ったんですよ、将来指揮官になっても無謀な、其れはねぇ~意味の無い突撃命令だけは出さないって。」
「其れでだったんですか、連隊長殿も中隊長も小隊長も突撃命令を出されなかったのは。」
「工藤大佐殿も吉田少佐殿も戦は好きになれないんだ、其れ以上に戦が大嫌いなのが司令長官殿でして、司令長官殿は山賀では木剣だけを持たれ官軍兵に言われた、貴方方は私の仲間を人質に取り、仲間の一人でも大怪我、いや一人でも殺したならば、私は命を捨ててでも貴方方全員この世の地獄を味合わせる、だが仲間全員を解放し、私がお願いした仕事に就いて頂いてくれるので有れば全てを水に流すと。」
「でも官軍兵は言う事を聞かなかったんですか。」
「ええ、その通りでね、司令長官殿は隊長の考えた作戦を明くる日の早朝に開始すると。」
「ですが何でそんな事になったんですか。」
源三郎は官軍兵を許すと、其れは官軍兵に仕事をして欲しいのと、正太達には他の仕事に就いて貰う為で、だが官軍兵の全員が元侍で彼らは今だ自分達侍がそんな仕事は出来ないと、やはり何処か間違ったところで自分達は侍だと言う誇りだけが出て来たのだろう。
「貴方方の殆どが農民や町民だから理解出来ないだろうと思われるでしょうが、元々が侍と言うのは簡単に誇りを捨てる事が出来ず、其れが結果的に自らの命を短じめたのでしょう。」
「連隊長殿は今でも侍の誇りは持ってるんですか。」
「私も元は侍でしたよ、確かに侍だったと言う事は誇りに持っても良いとは思いますよ、ですがこれからの時代では誇りだけでは何の役にも立たないのです。
侍だからと言う変な意地は捨てなければならないと思います。」
「連隊長殿、話しは変わりますが、オレ達はこれからどうなるんですか。」
やはり彼らも官軍兵だと言う変な意地が有るのだろうか、官軍兵としてはこの地を離れる事は出来ない。
だが源三郎の言う掘削の仕事に就けば食事も有り眠る所も有るが、其れよりもこの先戦に行く事も無いと聞いており、彼らの中にも少しづつだが変化が起きて来た。
「話しは変わりますが、駐屯地に残って要る佐野と掛川の部隊を此方に来て欲しいのですが、これは私の考えですが、一個小隊か二個小隊だけが生き残ったと言う話しにして他の者は山賀で仕事に就いて欲しいと考えて要るんです。」
「えっ、一個小隊か二個小隊だけが生き残ったって、でも何でそんな話になるんですか、オレだったら。」
「其れが作戦と言うものでしてね、二個小隊と言っても同じ小隊の兵士では無く別の小隊から数人づつを選びましてね、まぁ~人数は余り気にせずに、其れよりも小隊長には怪我をして貰って師団に帰り、掛川と佐野には此処で有った話をして貰いましてね、残りの三個大隊には早く佐渡に行って頂いてですよ、二個大隊は師団長と浅川大隊長の部隊と私の部隊が帰って来るまでこの地に残ると、まぁ~今考えたんですが皆はどの様に思うかです。」
「みんな聞いて欲しいんだ、私は連隊長殿が言われたロシアから日本を守る為、今山賀の断崖絶壁の内側で密の軍港を建設する任務に、いや仕事に行く事に決めた。
確かに今までは幕府を倒す事だけを考えていたが、其れはもう終わった、私は日本国の為に何としてもロシアからの攻撃を防ぐ為の任務に就きたい、連隊長殿が許して頂け無いので有れば私は連隊長殿と殺してでも参ります。」
一人の中隊長が名乗ると。
「連隊長殿、自分も参ります。
連隊長殿は自分をこの世から抹殺して下さい。」
又も今度は小隊長だ、そして、その後は中隊長と小隊長の全員が山賀に行き秘密の軍港建設に就くと言う
「みんな有難う、司令長官殿、私も一兵卒として山賀に参ります。」
「橘さん、其れに中隊長と小隊長の全員本当に有り難いで、私は何も申し上げる事は有りません。」
「橘、良く決心してくれた、自分もお礼を言います、本当に有難う。」
「ねぇ~そんなのってずるいですよ、連隊長殿や中隊長と小隊長殿だけが行くなんて、オレも一緒に連れて行って下さいよ。」
「オレも行くぜ、ロシアの野郎達に日本を植民地にされて溜まるもんか。」
「オレもですよ、誰も止めるなよ、オレは絶対に。」
「お前って本当に馬鹿だなぁ~、誰も止めるもんかオレも行くんだから。」
と、その後は大隊の全員が行くと。
「ですが皆さん全員が山賀に参って頂くのは私も大変嬉しいのですが、先程も申されましたが、二個小隊と小隊長ですがどなたにされるのですか。」
「あっ、そうだ自分もすっかり忘れておりました、では誰か師団に帰り掛川と佐野隊長に報告する役目を受けて欲しいんだが。」
だが中隊長と小隊長の全員が横を向き師団に帰る事を拒否し、更に部隊の全員が後ろ向いた。
「司令長官殿、全員に拒否されましたが私は一体どの様にすれば宜しいのでしょうか。」
「まぁ~橘さんも私と同じだと言う事ですねぇ~。」
と、源三郎と工藤は大笑いした。
「司令長官殿も大佐殿も他人事だと思って、私は笑い事では有りませんよ。」
だが源三郎も工藤も笑いが止まらないが暫くして。
「悪かったなぁ~、では一番簡単な方法で決めて下さい。」
「えっ、何ですか、その一番簡単な方法って。」
部隊の全員が振り返った。
「全員をくじで決めるんだ、くじで残る者と師団に帰る者と決めるんだ。」
「では誰が残るのかも分からないのですか。」
「まぁ~其れが一番の方法だと思うが、如何でしょうか。」
「そうですねぇ~、私もその方法ならば良いと思いますよ、但しですよ決して怨み辛みは無しですよ、どちらに入られても大変だと言う事だけは皆さん全員が自覚して頂きたいのです。」
「司令長官殿、大佐殿承知致しました。
ではみんなその方法で宜しいでしょうか。」
「連隊長殿、勿論ですよ、よ~しオレは悪運が強いから残れるとしただ。」
「お前って何を考えてるんだよ、まだ何も決まって無いんだぜ。」
「そうか、でもやっぱり残りたいんだ。」
「よ~しみんなでくじを作ろうぜ、そうだ小隊長を先に決めるくじを作ってだ、後はと。」
「よ~し今からみんなで作ろうぜ、連隊長殿、宜しいでしょうか。」
「では全員でくじを作って下さい。」
兵士達は一体何を喜んで要るのか分からないが、鈴木と上田が紙を持って来て、其れからは兵士達はわいわいがやがやと其れはもうお祭り騒ぎの様な状態で暫くして。
「連隊長殿、小隊長殿を選ぶくじを作りました。」
兵士達の顔はニコニコとし、橘にくじを渡した。
「大佐殿、申し訳御座いませんが、私が持っておりますと変に疑われますので大佐殿にお願いしたいので。」
「では私が持ちますので、小隊長は順番にくじを引く、これで宜しいんですね。」
「では自分が最初に引きます。」
と、一人目の小隊長がくじを引き開けると何も印が無く。
「では、私が。」
と、二人目の小隊長が引き開けると。
「丸印か、決まったなぁ~。」
「はい、承知致しました。」
一人目が決まり、その後二人目も決まり、その頃には二個小隊の兵士を決めるくじも作り終わり。
「連隊長殿、くじが出来上がりました。」
「よ~しみんな始めるぞ、誰に決まっても文句無しだぞ。」
其れからは大隊の全員がくじを引き、何の印も無いくじを引いた者は残り、丸印を書いた紙を引いた者は師団へ戻ると、其れからは当選した喜びなのか、其れとも当選しなかった喜びなのか兵士達は大歓声を上げ半時もせずに二個小隊の人員が決定した。
「君達は選ばれた者ですから今から師団に戻ってからの作戦を全員で考えて欲しいんだ。」
二人の小隊長と二個小隊の兵士達は別のところで作戦を練り始めた。
「司令長官殿、自分達は何時でも出発出来ます。」
「橘さんと中隊長と小隊長には他のお話しが有りますので執務室へ、吉田さんは小隊を連れ菊池に残った浅川の中隊長と小隊長達を引き取りに馬車で向かって下さい。
其れと部隊の全員は出発の準備に、鈴木様は中川屋さんに二十俵をお願いしますと、後は城内から梅干しの樽を十樽を出し馬車に積み込みに、兵隊さんは鈴木様と上田様の指示に従って下さい。
では橘さん、工藤さん参りましょうか。」
源三郎達が執務室に向かう同じ頃、城下に数台の馬車が向かった。
「皆さんお座り下さい、今から簡単にお話しします。」
源三郎は橘達に山賀で行う掘削工事に付いて説明した。
「自分は兵士を守る為、若様と正太さん達をよ~く相談し事故を起こさない様に致します。」
「其れと菊池の残して来ました中隊長と小隊長達ですが洞窟内で最も危険な場所でも仕事に就かせて頂きたいのですが詳しい仕事の内容に付きましては正太さん達と相談して頂ければ大丈夫かと思います。
山賀に着くまでに浅川さんの部隊の全員が狼の餌食になった事も話して頂きたいのです。」
源三郎は中隊長と小隊長達に部隊の全員が狼の餌食になったと伝える様にと、部隊の全員が狼の餌食になったと告げれば幾ら中隊長や小隊長達でも今度ばかりは反乱も起こせないだろうとの計算で、やはり其処まで聞かせると言うのは彼らに恐怖感を与え、連合国からは逃げる事は不可能だと思わせる事が最も効果が有ると。
そして、菊池に向かった吉田は二時半程して野洲に戻り、その半時後、橘と大隊は山賀へと出発した。