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闇の帝国    作者: 大和 武
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第 50 話、正にげんた様様で有る。

「お~い大変だ、源三郎様が大勢の官軍兵と一緒に戻って来られたぞ。」


 と、早くも野洲の領民が気付き、やっぱりだ、さぁ~これは大変な騒ぎになると工藤は思ったが時すでに遅しで有る。


「おい、官軍の奴ら源三郎様に指一本でも触れて見ろ、オレ達が承知しないぞ。」


「おい、若しも源三郎様に何か有ったらオレ達は絶対に許さないぞ。」


「ねぇ~、あんた達、私達の源三郎様なんだからね、わかってるはよね。」


 と、野洲の領民は大隊の兵士、いや元侍達に詰め寄り言いたい放題で有る。


「まぁ~まぁ~皆さん、私は何とも有りませんよ、皆さんも少し落ち着いて下さいね。」


「だって源三郎様、奴らは官軍なんですよ。」


「そうだよ、官軍はオレ達の敵なんですからね。」


 その後も源三郎と領民の問答は続き、橘や中隊長達は余りの迫力に恐れを感じて要る。


「橘、見たか、これが総司令、いや源三郎様の力とでも言うのかこれ程の人物なんだ。」


「少佐殿、自分は領民の迫力に恐れを感じております。」


「その通りだ、私も最初はこの人達に殺されるかと思ったほどだ、だが一度理解してくれると、もう大変でなぁ~、今では我々の事までの心配してくれ、其れが連合国軍の兵士の強みなんだ。」


「私も十分過ぎる程認識致しました。」


 暫くして駐屯地に着いた。


「皆さんに今から大切なお話しをしますのでね、皆さんは我が連合国を知られましたのでね我が連合国から逃げ出す事は先ず不可能だと申して置きます。

 我々は貴方方を監視する事は有りませんので何処に参られ何を聴かれても宜しいですが山には絶対に入らない事です。

 と、申しますのは連合国の山には我々の見方と申しましょうか、仲間とでも申しましょうかねぇ~狼の大群が生息しておりましてね、今まで数百、いや数千の幕府軍や官軍の兵士、又、野盗が向こう側から登って来ましたが、一部を除き全て狼の餌食となっております。

 私の話が嘘だと思われるならば駐屯地の兵隊さんよりも城下の人達に聞かれても宜しいですが全て本当ですよ、そして、前は海で、入り江に有るのは漁師さんの小舟だけで漁師さん達は外海は恐ろしいと今まで外海に出られた事も有りませんので、まぁ~その様な訳ですから皆さんは我が軍の駐屯地の中で過ごして頂きますので、吉田さんには申し訳有りませんがこの方々のお世話をして頂きたいのです。


 其れと後で宜しいので吉田さんも執務室に来て下さい。」


「承知致しました。

 では全員駐屯地に入って下さい。」


「鈴木様と上田様は殿とご家老に報告をお願いします。」


 鈴木と上田はお城へと向かった。


「では工藤さんも皆さんも参りましょうか。」


 源三郎と工藤、そして、橘達も執務室へと向かった。


「皆様方、さぁ~お座り下さい。」


「源三郎様。」


 と、雪乃に加世、すずがお茶を運んで来た。


「源三郎様、先程伝令が有りまして、大江の方々が。」


「あっ、そうでした、私はすっかり忘れておりましたよ、実は官軍の中に大江の方々五十名がおられましてね、今日は菊池に泊まり、明日から順次、野洲、上田、松川へと向かって頂くのですが、多分今頃は高野様が全員の名を聞かれて要ると思うのです。」


「私で宜しければ書状を認めまして、上田の阿波野様、松川の斉藤様、そして、山賀の吉永様にお届けさせて頂きますが。」


「其れならば私も大助かりで御座いますので是非ともお願いします。」


 源三郎が全て出来るのは無い、だがこの様な時には雪乃の存在は大きい。


「大佐殿、今のお方様は。」


「総司令の奥方様で松川藩の姫君様ですよ。」


「何とお美しいお方様でしょうか。」


 中隊長達は雪乃に見惚れて要る。


「ではお話しをさせて頂きますが、その前に橘さんの部隊の兵隊さんですが。」


「全員が農民でして、師団長が浅川に命じ各地の農村から集めて来たのです。」


 綾乃や大江の農民達の言った話しは事実で有った。


「其れでは今残られておられる部隊ですが。」


「隊長、中隊長に小隊長以外の殆どが農民や町民でして、我々は佐渡に向かう様に司令本部より命令を受け、本来ならば既に佐渡で防衛基地を造り、ロシア軍を迎え撃つ予定で御座いました。」


 源三郎に新たな情報で、川田を総司令官とし、橘達師団の全員が佐渡でロシア軍を迎え撃つのだと言う。


「今、本来ならばと申されましたが。」


「私も司令本部から命令を受けておりまして、別の師団は陸奥の国で造っております海軍基地で軍艦に乗る事になっております。」


 上野が言った話しは全て本当だと、この時、源三郎は確信した。


「上野さんが申されました話しは全て本当だったのですねぇ~。」


「司令長官殿は上野参謀長をご存知なので御座いますか。」


「橘、上野参謀は我が連合国に有る山賀と言う国の向こう側で、其処に大きな入り江が有り、我々の仲間と一緒に軍港建設に就いておられる。」


「では大佐殿もお会いされたのですか。」


「連隊長殿、上野参謀、工藤大佐殿と、これは正に我々に取りましては千人が、いや万人の力を得たも同然御座います。」


 中隊長達は正かと思う出来事に喜びの表情で有る。


「まぁ~其れと言うのもあの二個小隊が大変な間違いから大岩に来たと申しましょうか、間違って来られた、其れが今工藤さん達との再会となったのですねぇ~。」


 ロシアの軍港は陸奥の国から西側に向かい軍艦ならば数日と言う所だ、だが其の軍港に有る軍艦だけでも日本を攻撃する事も出来るが、余りにも軍艦の数が足りず、其れならばとロシアで一番大きな軍港より数十隻の軍艦を派遣すれば良い。

 だが今は其の軍港からは簡単に出撃する事も出来ず、ロシアも今は静観しており、だが其れも何時まで続くのかも分からないと言うのが本当で有ろう。


「う~ん、やはりロシアは佐渡の金山を狙って要ると考えねばなりませんねぇ~。」


「では鉄の潜水船を建造しなければなりませんが。」


「大佐殿、今申されました潜水船とは。」


「我が連合国では今十数隻潜水船が有りましてね、以前ですが官軍の軍艦五隻を撃沈させているのです。」


「ですが、私に入って要る情報では物凄く大きな嵐に遭遇し五隻とも佐渡に着く事も出来なかったと。」


「連隊長殿、自分は浅川大隊長と師団長が話されて要るのを聞きましたが。」


「やはり、あの二人は関係していたのか。」


「橘さんも二人が関係していたと聞いておられたのですか。」


「はい、以前よりあの二人には悪い噂が有りまして、佐渡で金塊を奪い他国へ逃げると。」


「ですが彼らの計画は全て我々が水の泡にしたのは間違いは有りません。

 其れよりもロシアの動向が気になるのですが、其れに工藤さんの申される様に鉄の潜水船を建造しなければならないと考えるのですが、我々には鉄の潜水船を建造する為に必要な鉄の板を作る技術が無いのです。」


「司令長官殿、私は潜水船と申されましても、今初めてお聞きし全く理解出来ないので御座います。」


 橘も中隊長達も初めて聞く潜水船とは一体どの様な船なのかも理解出来ないと言う。


「まぁ~簡単に申しますと船が海中を進むんですよ。」


 源三郎は橘達に出来るだけ簡単に説明するがやはり誰もが一緒で、船は海の上を進むものだと思っており、直ぐ理解する事は無理で、其れよりも鉄の板をどの様に調達するのかと言うのが大問題で有る。


「あんちゃん、えっ何で官軍が要るんだ。」


「げんた、久し振りですねぇ~。」


「なぁ~、何で官軍が居るんだ。」


「技師長、同じ官軍でも我々の見方と申しましょうか、彼らは私の元部下でしてご心配は有りません。」


「なぁ~んだ工藤さんの知り合いなのか、なぁ~其れよりもあんちゃん、鉄の板を何とか出来ないか。」


「大佐殿、このお方が連合国の技師長で御座いますか。」


「橘さんも技師長と呼ばれるには年配者だと思われたでしょうが、げんた、いや技師長は我々の連合国では一番の宝でして、技師長の頭は何を考えて要るのか、其れよりもげんたは鉄の板と申しましたが、一体なにを作るのですか。」


「そんなの決まってるよ、鉄の潜水船をだ、其れにオレの頭の中には全部出来上がってるんだぜ、だから早く頼むよ。」


 さぁ~大変な事になった、源三郎や工藤が言った鉄の潜水船、だがげんたの頭の中には既に完成しており、鉄の板を調達せよと迫って要る様にも聞こえる。


「技師長、今其の話しをしておりましてね、ですが正かこの様に早く来るとは思っておりませんでしたので、私もどの様に鉄の板を調達してよいものかも分からないのです。」


 源三郎も多分げんたの事だあの時軍艦の隅々まで見て潜水船は頭の中で完成させたと、だが一番の問題は鉄の板をどの様にして調達するかで有る。


「技師長は何処で鉄の潜水船を建造されるのですか。」


「オレは山賀で造ろうと考えてるんだ。」


「ですが、山賀には浜も、其れに洞窟も有りませんが。」


「工藤さんも分かって無いんだなぁ~、山賀には断崖絶壁が有るんだぜ。」


「えっ、あの場所にですか。」


「あ~そうだよ、あの場所は確か端から端まで一里以上も有ると思うんだ。」


 げんたは山賀に有る断崖絶壁に鉄の潜水船を建造する事まで考えて要るのか。


「私も分かりますよ、確か何かの間違いで内側が落盤したと思うのですが。」


「オレはあの場所でこれから鉄の潜水船を建造する方法を考えたんだ、其れで若様にも相談しようと思うんだけど、後は人手だけなんだ。」


「もう頭の中で出来上がって要るのですか。」


「そうだよ、まぁ~オレ様は大天才なんだからオレ様に任せなって、まぁ~其れよりもあんちゃんは人手と鉄の板を調達してくれればいいんだ。」


 げんたの話しに源三郎は人手ならば確保出来ると思った。


「げんた、人手は直ぐ手配出来ますよ。」


「やっぱりあんちゃんだなぁ~、じゃ~頼むぜ、オレは今から図面を書くからなぁ~。」


 と、げんたは其れだけを言って浜へと帰った。


「総司令は人手は確保出来るので御座いますか。」


「勿論ですよ、一個大隊の元官軍兵が。」


「えっ、では浅川の部隊で御座いますか。」


「そうですよ、あの人達全員を師団に戻す事は出来ませんので、私も何か良い方法は無いかと考えておりましたが、あの場所を掘削するのは大変危険と伴うと思うのですが、正太さん達の仲間には他の場所を掘削して頂きまして、一個大隊の全員で断崖絶壁の内側を掘削して頂くのです。」


 正かと思う話しがげんたから聞けるとは思っておらず、だがげんたは山賀の断崖絶壁の内側で鉄の潜水船を建造すると言い、其の人材も浅川の部隊一個大隊の全員を投入する事が出来るならば可能だ、其れに彼らにはこの話しは拒否出来ないだろうと。


「明日からでも彼らから話しを聞きますが、私の考えではそうですねぇ~、殆どの人達は拒否出来ないと思うのです。」


「司令長官殿は大江の方々を見破られておられたので御座いますか。」


「私が大江の方々を見た時ですが、もうこれで悪事に加担する事も無くなったと安堵の表情をされまして、ですが他の者達は違っておりましてね、やはり大江の方々は藩主殿の教えを守られていたと思うのです。」


 源三郎は見破ったと言う。


「ですが私は何も大江の方々だけを許すとは申しておりませんよ。」


「総司令は大江の方々にも洞窟に。」


「まぁ~其れも仕方有りませんが、ですが今は奥方様やご家族と再会する事が先決でして、全てが終われば私がお話しををしますので。」


 源三郎は大江の元家臣にどの様な話しをするのだろうか。


「まぁ~げんたの事ですから、数日の内に山賀へ向かうと思うのですが、勿論、私も参りますが、其の時には工藤さんも一緒にお願いしたいのです。」


「私は勿論でご一緒させて頂きます。」


「橘さんは師団に戻られるのですね。」


 橘自身も今はどの様になるのか、中隊長達も分かっていないと言う表情をして要る。


「少し考え方を変えましょうか、今残っておられる部隊長の中で工藤さんを知っておられるお方ですが。」


「其れならば掛川と佐野が部隊長として残っておりまして、部下の中隊長や小隊長達は大佐殿がおられます時新兵として配属された者達です。」


「掛川と佐野が部隊長なのか。」


「他の部隊長は師団長の部下です。」


「其れならば話しは簡単ですよ。」


「司令長官殿は簡単だと申されますが、彼らに師団長と浅川の事をどの様に説明すれば宜しいのですか。」


「其れなら簡単ですよ、師団長と浅川の部隊は後から来られたんですよ。」


「其れは私も承知しておりますが。」


「橘さんが駐屯地を出発し、数日後、師団長と浅川の部隊が来ていないと知られたと言う事ですよ、師団長達は橘さんの部隊が知らない内に何処かに消えたんですよ。」


「えっ、では私達は師団長と浅川の部隊が何処に行ったのか知らないと、あっ。」


「その通りですよ、残っておられる各部隊長も橘さんの後から出発されたのは知っておられるのです。

 橘さんは何も真実をお話しされる必要は無いので、部隊長達は師団長の企みだと思われるのです。」


 その手が有ったのかと工藤は思ったが、やはり源三郎は突飛な考え方をすると。


「橘さんも申されましたが、本来ならば今頃は佐渡に到着して要るんだと、ならば橘さんは師団長は道に迷ったのかも知れないと、まぁ~理由は何とでもなりますからね、先程申されました二人の部隊長と橘さんの部隊を残し、他の部隊をさっさと佐渡に向かわせれば済むと思うのですがねぇ~、其れとこの話しは誰にも言われない事ですよ。」


「では私の部下にはこの地と言うよりも菊池には来ていないと言う事に、其れよりも何も話さない様に徹底させなければならないのですね。」


「その通りでしてね、若しもですが誰かが他の兵士に話したならば全てが水の泡となりますからねぇ~。」


 源三郎は橘の大隊の兵士には一切何も話すなと、其れで無ければ全ての計画が失敗するのだと。


「中隊長も小隊長達も承知する事だ、若しも師団長と浅川の事が他の兵士に知れる事にでもなれば何れかの日には司令本部に伝わり、全てが露見し、我が大隊の全員が銃殺刑に、そして、大部隊で菊池の隧道へ押し寄せ連合国は完全に破壊され、勿論、最高司令長官殿もだが全員が殺されるんだ、私も含め大隊の全員に徹底しなければならないし承知するんだ。」


「橘さん、部隊の兵隊さんには私がお話ししますので安心して下さい。」


 源三郎は頭の中で話す内容を全て出来て要ると工藤は思い。


「全て総司令にお任せするんだ。」


「はい、承知致しました。」


 浅川の部隊には数十もの藩から集められ全てが侍でこの地に来るまではどの様な企てに乗せられたのかも分からず、少なくても二つ無いし、三つの元藩士から話しを聞かなければならず、大隊の全員から話しを聞きだすまで一体何日掛かるやも分からないが、その前に源三郎は連合国に付いての話しをしなければならないと考え、明くる日の朝、全員に説明する事にした。


 そして、日が変わり。


「吉田さん、全員を集めて下さい。」


 吉田は中隊長と小隊長に命じ、昨日来た一個大隊の兵士を集合させた。


「皆さん、私は源三郎と申します。」


 と、源三郎は何時もと同じ口調で話しを始めた。


「私は皆さんが我々の連合国に来られまで犯されたで有ろう事は聞きません。

 其れよりも皆さんに私の話を聴いて頂きたいのです。」


「大佐殿、司令長官殿は何時もあの様に冷静にお話しされるのですか。」


「総司令は何時も何事が起きても冷静と言うのか、同じ口調でお話しされるが、話しの内容によっては恐ろしい話しでも全く変わる事も無く、今大隊の兵達は多分恐ろしい話だとは考えていないよ。」


 工藤も長年源三郎の話しを聞いて要るが、表情も全く変えず、恐ろしい話しをするのは知っており、多分今から話す内容も理解して要る。


「皆さんの後方に聳える高い山には我々でも一体何頭の狼が生息して要るのかも分かりませんが、多分ですよ、数万頭は生息して要ると思います。」


 源三郎の話しに元は侍で官軍兵達は昨日師団長と浅川大隊長が狼の餌食になった事を思い出したのか殆ど全員の顔が青ざめ身体は震え、自分達も銃殺刑では無く狼の餌食にされるものと思って要る。


「皆さんは昨日の事を思い出されたと思いますが、我が連合国では狼の侵入防止の為に菊池から山賀に至るまで高さが三十尺以上も有る柵を完成させましたが、この柵は何も狼の侵入だけで無く、旧幕府の残党、野盗、そして、皆さんと同じ官軍兵の侵入をも防ぐ為の柵でしてね、今まで数百、いや数千もの人達が狼の餌食になっております。」


「ですが大佐殿は何処から入られたのですか。」


「実は私達も山に入ったんだが、其の時、運良く総司令のお陰で命は助かり全員がこの地で今までは以上に楽しく生活して要るんだ。

 其れとこの地では誰も山には入らないんだ、山に入るのは猟師さんだけで、我々も猟師さんの案内が無ければ絶対に入らないと決めてるんだ。」


 橘達は連合国の山では戦以上に恐ろしい土地だと改めて知り、其れでも源三郎の話しは続いて要る。


「まぁ~その様な訳ですから皆さんが山に入り逃げ出す事は不可能でしてね、山に入ると言う事は即ち狼に襲われると言う話しでしてね、ですから若しもですよ田や畑仕事をされておられる農民さんや柵の内側で警戒任務に就いておられる連合国軍の兵士が発見されても兵士は一発も撃つ事も無く見て要るだけでしてね、皆さんを助ける事もされませんのでね其れだけは知って置いて欲しいのです。」


 源三郎の言葉使いは優しいが話の内容が理解出来れば正しくこの世で一番恐ろしいところだと解る。


「皆さんの中には菊池の隧道からで有れば向こう側に出る事は可能だと思われて要るでしょうが、菊池の隧道を出た所の大木の上に監視所が有るのですが、この監視所は皆さんと同じ官軍兵や残党に野盗が来るのを監視する為の所ですが本来の目的は付近の地面近くで監視すると言うのは狼の攻撃を受けるので狼の攻撃を受けずに皆さん方を監視する為なのです。

 ですが交代の時期が近付く頃になりますと監視所の兵隊さんは山側を見、熊笹の動きを見て要るのです


 菊池の兵隊さん達は熊笹の動きで狼だと分かれば交代せずに熊笹の動きが無くなるまでただ只管熊笹の動きを見ており、完全に動きが無くなれば一斉に交代出来るのです。


 まぁ~その様な訳ですから皆さんが向こう側に出られましても一町も行けないところで狼の大群に襲われるのは間違いは有りませんよ、まぁ~私の話が本当か作り話なのか駐屯地の兵隊さんでも宜しいですが、其れよりも城下の人達に聞いて頂ければ納得して頂けると思いますよ。」


「連隊長殿、司令長官殿と申されますお方ですが全く表情も変えられずにあの様なお話しされ、自分は今これ程にも恐ろしい話しを聞いた事が無く身体が震えております。」


「連隊長殿、私もで今まで幕府軍と何度と無く戦を交えましたが、其の時は戦とはこの世で一番恐ろしいと思いましたが、ですが司令長官殿のお話しでこの地がこの世で一番恐ろしい地だと思いました。」


「私もですよ、戦ならば簡単に殺されると思いますが相手が狼ともなれば身体中を噛みつかれ苦しんで、苦しみ抜いて死ぬのですからこれ程にも苦しい死に方は無いと思いますよ。」


 中隊長や小隊長達は源三郎の話しを聞いて要るが、余りにも恐ろしい内容に身体が震えて要る。


「皆も分かってくれたと思うが、総司令と言われるお方は誠に恐ろしいお方だ、だが農民さんや漁師さん達には一番お優しいお方で、まぁ~簡単に言えばだ悪人には最も恐ろしいお方だと言う事に間違は無いよ。」


 工藤も今まで何度と無くその様な場面に遭遇して要る。


「皆さん、其れで私からのお願いと申しますのが我が連合国の一番西側に山賀と言う国が有るのですが、その国で今度新たに掘削する仕事が有るのですが、其の仕事を皆さんお願いしたいのです。

 ですが私は何も無理にとは申しませんが、この仕事に就いて頂け無いお方は我々の連合国から出て頂かなければなりませんが、ですが皆さんには何も今直ぐに答えを出せとは申しませんので、私は数日の内に私は山賀に参りまして、山賀の若様に工事のお願いを致したいと、其の時には皆さん方も同行願いたいのです。」


 源三郎は拒否しても良いと言うが、拒否するば連合国から出国する事に成り、其の時には狼の大群にお襲われる覚悟が必要だと、だが何れにしても連合国から出る事は即死を意味すると覚悟しなければならず、どの様に考えても拒否する事は出来ないのだ。

 源三郎の言葉使いは優しいが半ば、いやこの様な時には強制で有る。


「其れと忘れておりましたが皆さん方の食事と寝る所は確保致しますので、何卒宜しくお願い致します。。」


 と、源三郎は元侍の官軍兵に頭を下げた。


「大佐殿、司令長官殿は何故頭を下げられるので御座いますか。」


「橘、有れが総司令なんだ、総司令は頼み事が有れば相手が子供で有ろうが農民さんで有ろうがあの様に、いや今回は違うが今まで全てに置いて土下座されるんだ。」


「えっ、相手が子供でもですか、ですが何故で御座いますか、司令長官殿の立場ならば命令されても宜しいかと思うのですが。」


「まぁ~なぁ~其れが普通だと思うんだ、だが総司令は何時も申されるんだ、私は侍の前に一人の人間としてご無理をお願いするのですから土下座するのが当たり前だと思っておりますと、まぁ~今では連合国の誰もが知っており、私も最初の頃は少し抵抗は有りましたが、今では何も考える事も無く土下座する事が出来るんだ、まぁ~そのお陰と言うのか分からないが連合国軍の兵士もだが領民さん達の信頼を受け、今では大抵の無理は聞いて頂ける事が出来るんだ。」


「大佐殿が兵士に頭を下げられるのですか。」


「あ~今では何とも無いですよ、当たり前になりましたからねぇ~、其れと連合国では侍言葉も軍隊言葉も無く、誰もが普通のと言うか領民さん達の言葉使いになって要るんだ。」


「私の話は以上としますが、吉田さん、この方々は全員が軍服でして軍服では掘削工事は大変ですので作業着の手配をお願いしたいのです。

 多分野洲だけでは足らないと思います。」


「では菊池、上田、松川にも参り集めて参ります。」


「其の方でお願いします、其れと後程軍服も持って来ますので洗濯の方も宜しくお願いしますと。」


「承知致しました、では第一中隊の第一小隊は菊池、第二は野洲、第三小隊は上田と、そして、第四小隊は松川に馬車で向かって下さい。」


 各小隊長は早くも動き出した。


「ではこれで解散としますが、皆さん方、何卒宜しくお願い致します。」


 源三郎の話しが終わり、元侍の官軍兵の中には銃殺刑にならず少し安堵したのか顔付きが変わる者もおり、だが殆どの官軍兵は重たい足取りで駐屯地の中へと消えて行った。


「総司令は今のお話しは考えておられたのでしょうか。」


「いいえ、私は何も考えておりませんでしたよ、ですが昨日げんたの話しでこれならば官軍兵を掘削工事に就かせれば作業員の確保と彼らの行き先も決定出来ると、ただそれだけの話しですよ、其れとげんたの事ですから直ぐにでも図面は書き上げると思うのです。

 後は正太さん達と相談し決定して行けばと考えて要るのです。」


 今回はげんたのお陰だと源三郎は思った。


「橘さんも参考の為に山賀に参られては如何でしょうか。」


「司令長官殿、私もですが、出来るならば中隊長と小隊長の全員で参加させて頂きたいのですが。」


「其れは大変素晴らしいですねぇ~、今後の事を考えれば皆さん方に我が連合国の現状を知って頂ければ尚更幸いかと存じます。」


 源三郎はどうやら橘の部隊と師団に残って要る掛川と佐野が部隊を連合国に引き込むつもりだと工藤は感じて要る。


 その為にはまず橘達に連合国を知って貰う事の方が大事だと思った。


 工藤も元の部下が入って来るのは大歓迎で有る。


 そして、三日後、旧浅川の大隊の兵士全員が源三郎、工藤、そして、橘と中隊長と小隊長の全員と共に山賀へと出発した。


 

    


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