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闇の帝国    作者: 大和 武
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第 46 話。革新的な機械とは。

「まぁ~其れにしても物凄い量ですねぇ~。」


「本当ですよ、良くもまぁ~此処まで詳しく書き留めたものですなぁ~。」


 鈴木と上田は吾助達が書き留めた目録を書き写して要るが、積み荷の全てが書き出されており、其の分量と言えば厚さにして一寸以上は有ろうかと言う程で二人は感心するばかりで有る。


 そして、数日後には飯田達が野洲へ戻って来ると高野から書状が届き、当日の朝、大手門には数名の家臣が今や遅しと飯田達の乗った馬車を待って要る。


「う~ん、其れにしても遅いなぁ~。」


 家臣は何事かを呟いて要る。


「あっ、見えましたよ間違いは御座いません。」


「総司令にお伝えするんだ。」


 家臣は執務室へと走って行く。


「なぁ~お城で何か有ったんですか、朝からお侍が菊池の方ばかり見てるんだ。」


「よ~しオレが聞いて来るよ。」


 数人の町民が大手門にやって来た。


「お侍様、何か有ったんですか。」


「其れはもう大変でしてね、飯田様と上田様に森田様が六十台もの馬車とお店の人達を百人近く連れて戻って来られるんですよ。」


「えっ、馬車が六十台って、でも一体何を積んでるんですか。」


「其れが我々も全く分からないんですよ。」


「お侍様が知らないんですか。」


「そうなんですよ、源三郎様もまだ見ておられないと聞いておりますので。」


「そうか、成る程なぁ~、源三郎様も知らないのか、じゃ~仕方無いか、お侍様有難う御座いました。」


 町民は城下へと戻って行き、大手門には源三郎とお殿様、ご家老様も出られ今や遅しと待って要る。


「あれは。」


 先頭の馬車には飯田が乗り、だが飯田の姿を見たお殿様は。


「源三郎、あの着物は何と申すのじゃ。」


「殿、あれが今東京の人達が着ておられる洋服と言う新しい着物で御座います。」


「何じゃと、洋服と申すのか、余は初めて見るが何と言って良いのか分からぬぞ。」


 お殿様もご家老様も驚いて要る。


「吉田さん、此処で馬車を受け取り駐屯地で一時保管をお願い致します。」


「承知致しました。

 中隊は順次交代し駐屯地へ馬は休養させて下さい。」


 其の頃になると城下の人達が大勢集まり出し。


「わぁ~何て大きな馬車だ、馬が八頭で引いてるぞ。」


「本当だ、オレも今までこんなに大きな馬車は見た事が無いよ。」


 城下の人達が見た馬車は東京で特別に作られ、頑丈な作りで馬が八頭で引いており、其れだけでも大変な驚きで有る。


「源三郎様、こんなにも大きな馬車に何が積まれてるんですか。」


「あれはねぇ~巨大な大砲ですよ。」


「えっ、巨大な大砲ってまた戦でも始まるんですか。」


「いや冗談ですよ、冗談ですからね。」


「え~そんなぁ~、源三郎様もあんまり驚かさないで下さいよ、オレは本当かって思ったんですから。」


「皆さん、申し訳有りませんねぇ~、ですが本当の事を申しますとね私も何が積み込まれて要るのかもさっぱり知らないんですよ。」


「え~源三郎様も知らないんですか。」


「源三郎様。」


「元太さん、申し訳有りませんねぇ~。」


 浜の漁師、元太と、更に浜のお母さん達が総出でやって来た。


「浜の皆さん大変申し訳有りませんねぇ~。」


「まぁ~源三郎様のお願いですから、でも私達に任せて下さい。」


「なんじゃと、源三郎、若しや。」


「お殿様、今日は駄目ですよ。」


「おせい、其の様な事を申すな。」


「お殿様、今日は駄目って言ったら絶対に駄目なんですからね。」


「おせい、其の様な事を申すな、一尾で良いのじゃ、なっ、頼む。」


 と、お殿様は手を合わせ頼んで要るが其の姿に見た吾助達はもう大変な驚き様で有る。


「社長様、おのお方は。」


「野洲のお殿様ですよ。」


「えっ、お殿様って、そんなのってもっと早く言って下さいよ、お~いみんな野洲のお殿様だ。」


 吾助達が土下座すると。


「皆の者、其の様な事はするで無い、余は幽霊なのじゃ。」


「吾助さんも皆さんも殿はおられませんよ、皆さんが見えるのは幽霊ですからね。」


「でも源三郎様。」


「宜しいんですよ、私が許しますからね。」


「のぉ~、おせい、余の頼みじゃ。」


「もぉ~お殿様って本当にお好きなんだからねぇ~。」


 だが誰が見てもお殿様で、其のお殿様が平民に対し頼み込んで要る様にか見えないが、野洲の領民は又も始まったと大笑いして要る。


「社長様、あの女の人ですが。」


「浜のお母さんで、技師長のお母さんですよ。」


「源三郎様、本当にお殿様なんですか。」


「ええ、其れは間違い有りませんよ。」


「でも誰が見ても町民の女の人だと思うんですが、下手をしたら打ち首になるんですよ。」


「まぁ~其れよりも見てて下さい。」


 吾助達は何時女性の首が撥ねられるのかひやひやしながらも見て要る。


「殿、駄目ものは駄目で御座います。」


「わぁ~雪乃じゃ、のぉ~雪乃からも頼んではくれぬか。」


「殿、その様な事を申されますと二度と浜には行けませぬが、其れでも宜しいので御座いますか。」


「あ~そうじゃのぉ~、やはりじゃ、源三郎 野洲の女子は誠恐ろしいのぉ~。」


「殿、其れも仕方御座いませぬ、私も同じで御座いますので。」


「やはりか、源三郎も雪乃が恐ろしいか、まぁ~其れも仕方有るまいのぉ~、わっ、はっ、はっ、はっ。」


 と、お殿様とご家老様は大笑いしながら戻って行った。


「あ~其れにしても本当に恐ろしかったよ、私は何時打ち首になるのかともう心の臓が止まりそうで。」


 だが城下の人達も大笑いして要るが、吾助達にとっては野盗達に襲われた時以上に恐ろしい光景だ。


「吾助さんも皆さんも我々の連合国では今の様な会話が日常的でしてね、皆さんは大変驚かれたと思いますが、お殿様は今の様な会話を楽しまれて要るのですよ。」


「でも社長様は知っておられたんですか。」


「いいえ、飛んでも有りませんよ、私も今初めて知りましたので大変驚いて要るのです。」


 飯田達が知るはずが無い、今の様になったのも飯田達が菊池を出てからで有る。


「雪乃様、今日は私達に任せて下さい。」


「皆さんも大変だとは思いますが、何卒宜しくお願い致します。」


 と、雪乃は浜のお母さん達に頭を下げた。


「さぁ~みんな行きましょうか。」


 浜のお母さん達は勝手知ったお城の賄い処へと向かった。


「総司令、全て運び入れました。」


「吉田さん、私も積み荷は知りませんので宜しくお願い致します。」


「はい、全て承知致しております。」


 余りにも手際のよさなのか、吾助達は半ば呆れ果て唖然として要る。


 菊池でもだが野洲では菊池以上で東京での出来事がまるで嘘の様に思うので有る。


「さぁ~さぁ~皆さんお入り下さい、雪乃殿、宜しくお願い致します。」


「はい、全て心得ております。」


 雪乃と数人の家臣、腰元達の案内で吾助を始めてとする百人もの店の人達は大広間へと向かった。


「其れにしても大変な量ですが、一体何が積まれて要るのでしょうか。」


「明日か明後日からでも荷物の確認作業に入りますので、其の時に成れば分かりますよ。」


 源三郎はむやみに馬車の荷物を降ろすのでは無く、鈴木と上田が書き写して要る目録が出来上がるまで待つ事にしたので有る。


「私はねぇ~、其れよりも馬車の作りを見て連合国でも同じ作りの馬車が出来れば兵士や物資の輸送に、更に申せば工事に関する各種の物材も大量に運ぶ事が出来ると考えて要るのです。」


「総司令は兵士の輸送と申されましたが、私もあの馬車ならば一個小隊の全員とまでは行かずとも二個分隊は十分乗れるのでは無いかと考えたのです。」


 工藤も一台の馬車に二個分隊が乗れる様にしたいと考えたのだろうか。


「あの馬車ならば馬も八頭で十分だと、更に補充用の弾薬も多く積み込めると思います。」


「私は早速親方の所に向かい相談させて頂きます。」


 やはり工藤は何かを考えていたのだろうか、浜の親方に会いに向かった。


 其の頃、げんたも悪戦苦闘の連続で、だが今は信太朗達がおり大いに助かって要る。


「技師長さん、オレが考えた方法なんですが。」


 井助が考えた方法をげんたに説明すると。


「其れでいいよ、だったらあんちゃん達に任せるからね全部作ってくれるか。」


「えっ、わしらにですか、でも。」


「失敗してもいいんだ、最初から最高の物は出来ないと思ってるんだ、だからあんちゃん達に任せるから自分達の好きな様に考えて作って欲しいんだ。」


 信太朗達は驚いた、だがげんたの言うのは相当高度な物作りが要求されるのだと思っていたが、げんたは兵士の命を守る為の鉄兜と胸当てで、其れが完成すれは源三郎に見せるつもりで有る。


「技師長さん、其れで一体何個くらい作るんですか。」


「え~っと、連合軍の兵隊さんの全員だからなぁ~、最低でも五千人分は要るんだ。」


「えっ、五千人分って、そんなのオレ達には絶対に無理ですよ。」


「オレはねぇ~、どんな物を作るにしても絶対に作るんだ、其れが出来ないと兵隊さんだけじゃ無くて、他の人達も死ぬ事になるって思ってるから、オレは何が有っても作るからね、あんちゃん達も出来ないって言うんだったら無理には頼まないよ、その変わりあんちゃんに頼んで狼の。」


「えっ、狼のって、其れだけは絶対に嫌ですよ、狼の餌食になるくらいだったら死ぬ気で作りますんで。」


「オレは別に無理にとは言わないからね。」


 と、げんたは信太朗達を見てニヤリとし、其れが余計信太朗達に恐怖を与えるので有る。


 そして、二日後には完成し、げんたはお城に向かうが、其の少し前。


「源三郎様、目録の書き写しが終わりました。」


「左様ですか、ですが大変だったのですねぇ~。」


「私もこれ程にも詳しいとは思ってもおりませんでしので。」


「ではこの書状を菊池、上田、松川、山賀へと届けて頂けますか。」


 家臣達が手分けし各国へ向け馬を飛ばし、そして、三日後に高野、阿波野、斉藤に若殿、そして、山賀の若様と吉永が野洲のやって来た。


 執務室に入ると飯田、上田、森田、そして、吾助の他、店の人達から十人程が座り待っていた。


「皆様方、大変お待たせ致しました。

 十年程にも前になりますが、野洲の飯田様、上田様に森田様が野洲を発たれまして、大変なご苦労の末に百名のお仲間と六十台もの馬車に大量の荷物を積み込まれ東京より戻って来られました。」


 当時の事を知る者は吉永だけで、その吉永も十年振りに三名の顔を見るが、余りの変わり様に驚きの表情で有る。


「只今より荷物の目録を読み上げと荷物を拝見したいと思うのですが、皆様方は如何で御座ましょうか。」


 暫くの沈黙が有ったが。


「源三郎殿、拙者は至急にお荷物を拝見したく存じます。」


 やはりだ、吉永が最初に発言した。


「義兄上、私も是非拝見いたしたく存じます。」


 と、若殿が続き。


「では、皆様方只今より駐屯地に向かいます。」


 源三郎を先頭に若殿に若様が続き、大手門を出、駐屯地へと向かったが、丁度其の時。


「お~い、あんちゃん、何処に行くんだ。」


「げんた、いや技師長、丁度良いところに来ましたねぇ~、今から駐屯地に置いて有ります馬車の荷物を見るところでしてね、ですが一体何を着けて要るのですか。」


「これか、これで兵隊さんの命を守るんだ。」


 げんたの周りには若様や若殿が集まり、何か不思議な物でも見る様な顔付きで有る。


「兵隊さんの命を守る物ですか。」


「そうだよ、これが鉄兜で、これでお腹と背中を守るんだ。」


 源三郎達が見た鉄兜は今までに見た事も無い作りで、胴巻きも今まで見た事が無い。


「技師長、鉄兜を被り、其の胴巻きの様な物を身体に着けるのですか。」


「高野さんもあの時、監視所の兵隊さんは全員が頭に弾を受け戦死しのを知ってると思うんだ、其れでオレは頭と胴体を守ることが出来たら兵隊さんは怪我で済むと思ってこれを作ったんだ。」


「技師長、今から駐屯地に行きますから鉄兜と胴巻きを試して見ましょうか。」


「オレが鉄兜と胴巻きを身体に着けるからあんちゃんが撃ってくれよ。」


「えっ、其れは幾らなんでも無茶ですよ、技師長が自ら試しの。」


「え~何でだよ、オレは自信が有るから自分で確かめるんだ、其れに。」


「幾らなんでも其れは無理と言うものですよ、其れに一体誰が撃つのですか。」


「そんなの決まってるよ、さっきも言ったけどあんちゃんが撃てばと思ってるんだ。」


「えっ、今何と言ったんですか、私がげんたを撃つのですか、冗談は止めて下さいよ。」


「いいやオレは本気だ、あんちゃんが撃ってもオレの造った鉄兜と胴巻きだ絶対に失敗しないんだから。」


 げんたは鉄兜を被り、胴巻きを付け。


「鈴木のあんちゃんと上田のあんちゃんは胴巻きの紐を結んで欲しいんだ。」


 まぁ~何を言いだすかと思えば、げんたは自分の身体に着け源三郎に撃てと飛んでも無い事を言い出した。


「技師長の身体で試すのでは無く、鉄兜は何かの上に置いてですねぇ~、胴巻きも同じ様にして試すと言うのは無理でしょうか。」


 上田も何とかしてげんたに止める様にと言うが。


「オレはねぇ~、鉄兜もだけど連発銃の威力も知りたいんだ。」


「其れは私も分かりますが、若しもと言う事も考えねばなりませんし、其れに総司令は絶対に撃たれませんよ、勿論、他の誰も撃ちませんよ、絶対にね。」


「そうかやっぱり無理かなぁ~。」


「其れは当たり前ですよ、連合国で技師長の身に何か起これば、其れこそ一大事で御座いますから。」


「だったら上田のあんちゃんが決めてくれるか。」


「勿論ですよ、私に任せて下さい。」


「分かったよ、じゃ~仕方が無いけど脱ぐとするか。」


 やっとげんたは諦め、皆もほっとした様子で、上田は駐屯地近くに鉄兜と胴巻きを置いた。


「では私が撃って見せますよ。」


「え~あんちゃんは連発銃を撃てるのか。」


「そうでしたねぇ~、私は連発銃を撃った事が無かったのですねぇ~。」


「なぁ~んだ、だったら下手をするとオレはあんちゃんに撃ち殺されてたのか、あ~参ったなぁ~。」


「総司令、では我が軍の中でも一番腕の良い兵士がおりますので、彼に任せれば如何でしょうか。」


「そうですねぇ~、ではそのお方にお任せしましょうか。」


 吉田が一人の兵士を連れて来た。


「彼ならば半町先でも見事に命中させますので。」


「だったら、鉄兜は横からも撃って欲しいんだ、其れと胴巻きは前と後ろから撃って欲しんだけど。」


 兵士は弾薬を点検し、再び装填し狙いを定めると直ぐ撃った。


「パン、パン。」


 と、鉄兜の側面に、そして、反対側からも。


「パン、パン。」


 と、撃ち、鈴木が鉄兜を取り戻って来た。


「ほ~何と素晴らしいでは有りませんか、弾に当たった所ですが、少しのへこみが有るだけで、他は何とも有りませんねぇ~。」


 源三郎は鉄兜を工藤に渡し、工藤は何とも表現の方法が無いと言う顔をして要る。


 そして、次は胴巻きに狙いを定め兵士は。


「パン、パン、パン。」


 と、連続で撃ち、次に背中部分に変え、又も連続して撃った。


「パン、パン、パン。」


 と、今度は鈴木が取り戻って来て、皆が注目の中源三郎は見たが、先程の鉄兜と同様で少しのへこみの様な傷は有るが、他は何とも無く。


「これは大変な品物ですねぇ~、これで兵士は安全な任務に就く事が出来ますねぇ~。」


「私も認めますよ、げんた、今、何個と申しましょうか、何体と申して良いのか分かりませんが、完成して要るのですか。」


「あんちゃんは本当に何も分かって無いんだなぁ~、これを作るのに一体何日掛かったと思ってるんだ。」


「其れは私も分かりませんが。」


「鉄板は物凄く厚みが有るんだぜ、其れを鍛冶屋さんが五日以上も掛かってこの形にしたんだからなぁ~。」


「そんなにも掛かるのですか。」


「そうだよ、其れからも大変なんだ、鉄兜の裏側を見ても分かる様に頭を保護する様に熊の毛皮を使ってるんだぜ、鹿の皮を細く切って紐にするだけでも大変なんだからなぁ~。」


「確かに裏側は頭を保護する為に熊の毛皮を使っておりますねぇ~。」


「其れと胴巻きも見てくれよ、一体何か所穴を開けてると思うんだ、人間の身体は全部同じじゃ無いんだぜ、お腹と背中部分の鉄板は同じだけど、脇の所は別の鉄板を使って脇腹を保護してるんだからこれだけ全部作るのに一体何日掛かると思ってるんだ。」


「技師長、では今はこの一体だけなのですね。」


「やっぱりだ、若様は分かってくれたんだ、其れに何で鉄砲の弾が突き抜け無いか其れはなぁ~、どれも一度焼きを入れてるんだ。」


「そうか、其れで弾が通り抜けなかったんですか、鉄兜を見ただけでは全く分からないですねぇ~。」


 げんたの説明にやっと皆が理解を示した。


「ところであんちゃんはさっき馬車の荷物を見るって言ってたけど。」


「そうでしたねぇ~、私もすっかり忘れておりましたよ、げんた、其れよりもこの鉄兜と胴巻きを造って頂けませんかねぇ~。」


「やっぱりなぁ~、あんちゃんは分かってたんだ。」


「高野様、阿波野様、斉藤様にお願いが有るのですが、鍛冶屋さんにこれと同じ物を作って頂たいのです。」


「勿論で御座います。

 これで兵士の命を守る事が出来るのですから。」


 高野も阿波野も、更に斉藤も理解を示した。


「まぁ~その話しは後程にしまして早速積み荷を調べましょうか、吾助さん達にもお手伝いをお願いしたいのですが宜しいでしょうか。」


「源三郎様、私達全員が社長様は命の恩人で御座いますのでお役に立てるので有れば何でもお手伝いさせて頂きますので宜しくお願い致します。」


 そして、目録に書かれた順番に馬車の被せて有る物を取ると。


「この機械ですが長い布を作る事が出来るのですが、機械を動かせる為には強力な動力が要るのです。」


「動力が必要なのか、う~んこれは困りましたねぇ~、我が国には動力を作り出す様な装置は有りまんが。」


 源三郎も布を作る機織り機は重要だと思うのだが一番必要な動力源となる装置が連合国には無い。

 では一体どの様にすれば動力を得る事が出来るのだ、だが源三郎の悩む姿を見てもげんたは涼しい顔をして。


「ねぇ~其の動力って何かを回す様な物でもいいんですか。」


「勿論でして、回すだけで十分なんですが。」


「だったら、水車小屋を作ればいいんだ。」


「げんたは簡単に申しますがね、山の麓は全部田畑になるんですよ、其れに機械を設置する為には大きな建物も要るのですよ。」


「オレだってそんな事は分かってるよ、其れよりも何処に建物を立てるんだ、其れからでも作れるから心配するなって。」


 げんたは簡単に言うが源三郎は建物を設置する場所を何処にするのかも判断しなければならない。


「吾助さん、この機械ですが何台有るのでしょうか。」


「全部で十台有ります。」


「十台ですか、では吾助さん達はどれくらいの建物が必要なのかご存知でしょうか。」


「私達が以前江戸で仕事をしておりました頃ですが最低でも一千坪以上は有ったと思うので御座いますす。」


「飯田様、その建物には他に何か必要なものでも有るのですか。」


「巻き糸の保管場所も必要でして、其れとは別に。」


 飯田と吾助はこの後も源三郎達に詳しく説明するが、其れだけでも一時以上も掛かった。


「あっそうだ、源三郎様、大変な事を忘れておりました。」


「飯田様は何を忘れられたのですか。」


「実は上州に明示政府が建設しました生糸の製造工場の工場長に数日の内に巻き糸を買い取りに伺いますと申しておりまして。」


「ですが其れには大金が要るのでは御座いませんか。」


「金子の事ならば心配は御座いません。

 私達は陸軍省と海軍省から軍服を作る為の約定書を頂いておりまして、其れには大量の巻き糸が必要でして、代金は全て明示政府が支払うと書かれております。」


「今申されました巻き糸ですが、此処にも大量の数が書き込まれておりますがこれでは不足なのですか。」


「源三郎様、失礼で御座いますが、今有ります巻き糸では直ぐに不足します。」


「それ程にも必要なのですか。」


「私達は連合国の皆様方に洋服の作業着と兵隊さんには新しい軍服を着て頂たいのです。」


「洋服の作業着を作られるのですか。」


「其れに皆様方には洋服を着て頂きたいと思って要るのです。」


「源三郎様、我々が着ております洋服ですがこれになれますと非常に楽で御座います。」


 上田は洋服ならば仕事にも楽だと、更に日常生活も楽になると言うが、連合国の領民は数百年間と言う物全てが着物で、今急に洋服の方が良いと言われても直ぐには適応する事は出来ないと思って要る。

 其れでも何れの時期が来れば洋服の生活になる事は間違いは無い。


 そして、次々と荷物が見せられると誰もが驚きの連続で全てを理解する事などは不可能な状態で有る。


「次の荷物で御座いますがこれが一番驚かれるのでは御座いませんでしょうか。」


「それ程にも珍しい品なのですか。」


「其れは勿論でして、では被せて有る物を取って下さい。」


「お~。」


 と、源三郎だけで無くげんたや傍に居る全員が驚きの声を上げた。


「吾助さん、これは一体何ですか。」


「源三郎様、皆様方、これが陸蒸気と申しまして、其の模型で御座います。」


「えっ、陸蒸気と申されますと。」


 源三郎達が見た陸蒸気とは蒸気車の模型で田中から話しには聞いていたが、其の模型が今目の前に有る。


「吾助さん、これは動くのですか。」


「勿論で、ですが今直ぐ動かせるのは無理でして、別の馬車に乗せて有る線路なる物を敷き線路に乗せなければなりません。

 更に陸蒸気の窯に火を入れ蒸気を溜めるので御座います。」


 その後も吾助と数人が説明するが誰もが初めて見聞きする物でさっぱり分からないと言う表情だが。


「まぁ~簡単に言うと陸蒸気って言う物は蒸気の力で動くと言う事なんだ、そうですよねぇ~。」


 やはりげんただ、今初めて見たが、其れでも吾助達の説明は直ぐ理解出来て要る。


「げんた、陸蒸気を作る事は出来ますか。」


「えっ、又だ、あんちゃんは何時も突然に言うんだからなぁ~、だけどこれはオレでも作れないぜ。」


「えっ、げんたでも作れない物は有るのですか。」


 源三郎も正かと思って要るがげんたも作れるとは考えていない、やはり外国の技術には到底及ばないと、この時改めて思ったので有る。


「陸蒸気で御座いますが、イギリスと言う外国で作られ、明示政府も多くの技術者を招いて要るのです。」


「上田様、今申されました技術者がおられなければ作れないで御座いますか。」


「勿論でして、外国の技術は恐ろしい程にも発展しており、今の日本では到底では御座いませぬが無理と言うもので御座います。」


「先程の機織り機ですが、日本では人間の力を利用するので大量に作る事は出来ませぬが、外国では蒸気の力を利用し、あれ程にも複雑な機械を作り大量に作って要るので御座います。」


「では先程の機織り機も蒸気の力が無ければ大量の物は作れないと言うのか、う~んこれは大変困りましたねぇ~。」


 源三郎達が話しの最中でも吾助と店の人達は馬車から線路を降ろし駐屯地の中に敷設し、陸蒸気の模型を置き、小さな窯に火を入れ蒸気が溜まるのを待って要る。


 げんたも必死で見ており、やはり一番衝撃を受けたのは陸蒸気なのかも知れない。


 そして、半時以上が過ぎた。


「あの~源三郎様、そろそろ動くと思いますが。」


「そうですか、では動かせて頂けますか。」


 吾助は仲間に伝えると、一人の男が陸蒸気の模型に跨り、何かを押した。


「ピ~。」


 と、大きな音を響かせ蒸気が噴出した。


「じゃ~今から動かしますんで。」


 陸蒸気の模型の横から大量の蒸気を噴出し車輪がゆっくりと動くと。


「お~。」


「わぁ~。」


 と、何とも言えない声が飛び出し、陸蒸気はゆっくりと線路の上を走り、暫くして停まった。


「義兄上、陸蒸気は何としても作らねばなりませんねぇ~。」


「若、私も陸蒸気は必要だと考えますが、げんたが、えっ。」


 源三郎がげんたを見ると、げんたは腕組みししきりに何かを呟いており、若しやげんたの事だ別の方法を考えて要るのでは無いのか、だが今話し掛けたところでげんたの耳には何も聞こえない状態だ。


「高野様、工藤さん、先日の事ですが、野盗が二百と官軍の中隊がやって来た時にですが、お二人は北の方角に官軍の駐屯地が有るのではと申されておられましたが。」


「私も同じ様に思っておりまして、分隊規模で偵察に向かわねばと考えて要るのです。」


「飯田様は巻き糸を大量に必要だと考えられ、何とか言う工場に向かわせばと考えておられたのですね。」


「其れは私よりも吾助さんや店の人達から聞いて頂ければ何故大量の巻き糸が必要なのかが分かって頂ける思うのですが、其れも今回の一回だけで終わりたいのです。」


「其れには何か理由でも有るのですか。」


「源三郎様もご存知だと思うのですが、我々の国は高い山のお陰で外の国とは一切関わりの無い国でして、若しも数回巻き糸を受け取りに行ったとすれば、必ず我々の国の存在が知られると思うので御座います。」


 飯田も今回だけ終わらせなければ明示政府に連合国の存在が知られる事になると考えたので有る。


「其れは間違いは無いと思いますねぇ~、若殿、松川の粘土を掘り出した土地ですがどれくらい有るのでしょうか。」


「え~っと、確かあの場所は松川から山賀に向かう方角に有りまして、五町坪以上は有ると思いますが。」


「五町坪ですか、吾助さん五町坪も有れば必要な建物は建てられるでしょうか。」


「其れは勿論で御座いまして、五町坪も有れば十分過ぎると思うので御座います。」


 源三郎は何を考え、次々と聞いて要るのだろうか、高野や工藤に聞いた話しを松川の五町坪とは一体何の関係が有ると言う。


「吾助さん、荷物の中で雨が掛かっても大丈夫なのはどれでしょうか。」


「陸蒸気と線路だけで御座います。」


「では他の荷物は雨は大敵なのですか。」


「其れは勿論で御座いまして、特に巻き糸と機織り機などは雨は厳禁で御座います。」


「上田様、中川屋さんと伊勢屋さんの番頭さんを呼んで来て下さい。」


 上田は大急ぎで城下へ向かった。


「鈴木様は巻き糸をお城の空いて要る部屋に、これも吾助さん達の指示を受けて下さいね、吾助さん達は機織り機と巻き糸を移動させる為の指示されるお方を選んで下さい。

 吉田さんはどなたでも宜しいので浜に馬車で行って頂き、親方と銀次さんを連れて来て欲しいです。

 斉藤様、先程若殿にお伺いしましたが粘土を搬出した土地を整地して頂きたいのです。

 其れに関しまして今から詳しく説明させて頂きますので皆様方は一度執務室に戻って下さい。」


 鈴木と数名の店の人達がお城へ向かうが、馬車は三十台近くも有り駐屯地の兵士達も動員し運ばれて行く。


 其の頃、げんたは腕組みし考えており、源三郎達がお城へ戻って行く事も知らず、執務室には今までに無い程大勢が入り、源三郎は何時も以上に何かを考えて要る。


「皆様、突然で申し訳御座いませんが今からお話しをさせて頂きますが、何故急にと思ったかと申しますと、げんた、いや技師長が腕組みし何かを考え始めたからで、技師長があの様に腕組みし考え始める誰の声も耳に入らないのです。」


 その後、源三郎は詳しく説明し始めた頃。


「源三郎様。」


 と、中川屋と伊勢屋の番頭が息を切らして飛び込んで来た。


「中川屋さんと伊勢屋さんの番頭さんには大変お忙しいところ誠に申し訳御座いません。」


「いいえ、私は源三郎様が大至急来るようにとお伺いしましたので、でご用件で御座いますが。」


「中川屋さんと伊勢屋さんにお伺いしたいのですが荷車の数倍も有る馬車があるのですが雨に掛からない様な建物は有るでしょうか。」


「荷車の数倍と申されますと、一体何を積んで要るので御座いますか。」


 中川屋の番頭は空の馬車だと思っており、やはりどこかで大量のお米を仕入に行くのかと思って要る。


「中川屋さん、実はですねぇ~。」


 と、源三郎も考えながら中川屋と伊勢屋の番頭に説明し。


「左様で御座いましたか、実は私どもはこの先も大量のお米と伊勢屋さんも他の物を置ける様にと大きな倉庫を建てておりまして、今は倉庫の下段には梅干し樽を保管させて頂いておりまして、その馬車ならば五台か六台で有れば入れるだけの空きは御座いますので。」


「左様ですか、では建物が完成するまで馬車を保管して頂けましょうか。」


「其れは勿論で御座います。」


「吾助さんのお仲間数人で今から中川屋さんと伊勢屋さんに馬車を運んで頂けますか。」


「はい、承知致しました。」


 吾助は数人に声を掛け、彼らは執務室を出て駐屯地へと向かった。


「吉田さんには申し訳有りませんが馬を繋いで下さい。」


 吉田は執務室の外で待機中の兵士に伝えると兵士は駐屯地へと飛んで行った。


「源三郎様、あっ、えっ。」


 と、今度は親方と銀次が飛び込んで来た。


「銀次さんも親方もお忙しい時に申し訳御座いませんねぇ~。」


「いいえ、そんな事は有りませんが大至急だって言われたもんで。」


「今回の仕事は大変でしてね、松川で建物が、其れも大きな建物でしてね大至急必要になったのです。」


「じゃ~げんたが又飛んでも無い物を考え付いたんですか。」


 親方もげんたが別の物を作ると思っており、銀次も頷いて要る。


「まぁ~其れは間違いは有りませんが、今回は私の勘でしてね、今駐屯地で腕組みをしておりますよ。」


「だったら又飛んでも無い物を考えてるんですか。」


「其れは間違い有りませんが、今は何も分からないのです。」


「じゃ~どんな建物なんですか。」


「其れは吾助さん達に聞かなければなりませんが、今から詳しく説明しますので聞いて下さいね。」


 源三郎は松川に建てる予定の建物に付いては吾助達の話しの内容で一応の概要は分かるが。


「じゃ~其の何とか言う機織り機の機械を置く為の建物なんですね。」


「其の通りでしてね、ですが一番重要な動力源がどれくらいの大きさになるのか、其れは今げんたが考えて要ると思うのです。」


 源三郎はげんたの事だ同じ陸蒸気を作るのは無理だとしても代わりになる機械は作るだろうと思って要る。


「じゃ~さっき言われました松川で其の建物を建てるんですか。」


「其の通りでしてね、菊池も野洲も上田にも適当な場所が無いのです。

 其れに松川ならば山賀で搬出して要る石炭と、更に連岩も直ぐ手に入りますのでね。」


「じゃ~わしらは吾助さん達の話しを聞いて図面を作り建てればいいんですか。」


「其の通りで、銀次さん達には原木の切り出しと親方のお手伝いをお願いしたいのです。」


「でもげんたはどんな物を考えてるんですか。」


「其れは私が一番知りたいのですが、まぁ~げんたの事ですからねぇ~、又も理解出来ない物を作り出すと思いますよ。」


「源三郎様、先程のお方がげんたさんって言われるんですか。」


「ええ、其の通りでしてね、げんたは今我が連合国で技師長と呼ばれ、官軍でも考え付かない物を作りますので、まぁ~天才と申しても良いと思いますよ、其れで吾助さんのお仲間でどの様建物が必要なのかを考えて頂きまして、親方に説明して頂たいのです。」


「吾助さんも皆さんも何も心配される事は有りませんよ、全て源三郎様にお任せ頂たいのです。」


「社長様、私は飛んでも無い事をして要るんでしょうか。」


 吾助は連合国に着てまだ数日だが今までの生活とは全く違い、頭の中が混乱して要る。


「私達は吾助さん達の協力が無ければ機織り機も陸蒸気も動かす事が出来ないのです。

 私は何も出来ませんが、今は連合国の領民の為には命を差し出す覚悟は出来ております。

 吾助さん、そして、皆様方、何卒我が連合国の領民の為、勿論、皆様方も今は連合国の領民で御座いますので其の方々の為にお力を貸して頂たいのです。」


 源三郎は吾助と仲間の店の人達に対し手を付き頭を下げた。


「源三郎様、私達は元は農民と町民で、その様な私達に頭を下げられるのは。」


「何故でしょうか、私は皆さんにご無理をお願いして要るのです。

 ご無理をお願いするのに頭を下げるのは人間として当然だと私は考えております。」


 吾助達は飯田達から話は聞いていたが、やはり話しの通りの人物だと改めて思って。


 その後も源三郎は次々と指示を出し、野洲に集まった若殿を始め若様も吉永達も新しい機械を何としても動かさなければならないと気持ちを改めるが、げんたは何時頃何を作り出すのか、全てはげんたの頭に中に有る。


      


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