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闇の帝国    作者: 大和 武
11/288

第 11 話  助けるんだ、将軍を。

夕方近くになり、森に入っていた農民が農場に戻って着た。


 「お~い、みんな、有難うよ。」


 「あれ~、将軍が、出迎えに出ているぞ~。」


 「みんな、ご苦労だったなぁ~、お風呂も食事も、全員が、一度には無理


なんだ。」


 「将軍、心配するなって、オレ達、みんなわかってるんだから、みんな聞


いてくれ、今日は、風呂と食事が有るんだが、お風呂は、子供部隊が、朝か


ら準備しているんだ、後から、入る人達の為にも、綺麗に洗ってから入って


やって欲しいんだ。」

 

 「お~、任せなって、じゃ~、前から順番にだ、みんな、済まないが、湯


船にはだよ、そうだなぁ~、自分で百を数えて欲しいんだ、其れで、次の人


達と交代ってのはどうだ。」


 「よし、其れで、決まりだ。」


 「将軍、決まったよ。」


 農民達が決め、其れに、みんなが賛成し、次々と、農民達は、風呂場に向


かって行く。


 外では、順番待ちの農民達がのんびりとしている。


 その時、兵士達も戻って着た。


 「将軍。」


 「お~、君達か、有難うよ。」


 農夫達もだが、兵士達も命令を受け参加したのでは無い。


全員が、自らの意思で決めている。


 「兵士諸君、今日は、お風呂とその後、食事も準備しているからよ~。」


 「えっ、将軍、自分達にもですか、其れは、ありがたいです。」


 その時、テレシアが出てきた。


 「今日は、特別だよ、兵隊さんには、女性用を使ってもいいからね。」


 「でも、自分達は、泥だらけですので。」


 「だから、いいんだ、全員、着替えの用意を、それとね、汚れた服は、出


しときな、私達が洗うからね。」


 「えっ、でも、自分達で洗いますから。」


 「何、言ってのよ、あんた達にそんな時間が有ると思うの。」


 「え~、無いですが、でも。」


 「ごちゃ、ごちゃ、言ってないで、だったら、お風呂も食事も無いわよ、


如何するの。」


 テレシアは、大笑いした。


 「お~い、兵隊さんよ、此処じゃ~、将軍よりも、テレシアさんを怒らせ


ると、後が、大変だよ、この農場じゃ~、将軍より怖い、テレシアって、知


らないのか。」


 この農夫達も笑っている。


 「ええ、一体、如何するんだよ、早く、決めなよ、私はねぇ~、気が短い


んだから。」


 またも、大笑いするので。


 「じゃ~、テレシアさん、お言葉に甘えまして、自分達は、女性用に入ら


せて頂きますので。」


 「うん、其れで、いいんだよ、初めから、素直になればいいのよ。」


 「では、全員、兵舎に戻り、着替えの用意をして、此処に集合する事、そ


の前に言っておくが、お風呂は、お風呂部隊、其れは、子供達が、必死にな


って、お湯を作ってくれている、その為、後から入って来る者の為に、綺麗


に入る事で有る。


 尚、入浴準は、第一中隊からとし、湯船には、百を数え、次の者と交代す


る事、最後に、子供達が頻繁にお湯を入れに来るので、子供達の邪魔になら


ない様に、以上だ。」


 ロレンツ隊長の指示で、兵士達は、兵舎に着替えを取りに戻って行く。


 「なぁ~、司令官、オレは、何も出来ないがよ~、みんなに感謝している


んだ。」


 「閣下が、常日頃、農民達を大切にされている証拠で有ります。」


 「いや~、オレは、当たり前の事をしてるだけなんだぜ。」


 「閣下の人柄も関係しております。」


 ロシュエは、今までに無い嬉しさに自然と涙が溢れてきたのだ。


 本来ならば、明日の朝、全員に話をする予定だったのだが、この様子なら


ば説明の必要も無くなったのだと。


 それ程にも、この農場の人達は結束力が強い、普通では、考えられないの


が、軍の兵士と農民が、お互いを助けあっているのだから。


 他の国では有り得ないが、ロシュエの農場では当然の様に行なわれてい


る。


 「なぁ~、司令官、オレの推測が間違っている事を願いたいよ。」


 「はい、私も同感ですが、閣下の申された方が正しいと、私は、思いま


す。」


 「ウエス達も、正かだよ、此処の人達全員が結束して、城壁を造るなん


て、考えもしないだろうからよ~。」


 「私も、今の今まで、考えておりませんでしたが、あの人達は、閣下をお


助けするんだと、言っておりましたよ。」


 「司令官、オレは、兵士だ、兵士は、農民を守るのが任務だと思ってるん


だ。


 オレは、父から、その様に教えられてきたから、今でも、其れが、普通だ


と思ってるんだ。」


 「閣下、今から、少し、外に出て、どの様になったのか見ては如何でしよ


うか。」


 「そうだなぁ~、オレが、何も知らないと言う訳には行かないからなぁ


~。」


 「では、私も。」


 と、二人は、城門を出て行く。


 「わぁ~、こりゃ~、見事なもんだなぁ~。」


 ロシュエが、驚いたのは、門を出たところから、大小の岩石が、と、言う


よりも、動かす事の出来る岩石が、大きさを分けて並べて有る。


 「閣下、この場所は、確か、兵士達が行なっていた場所では。」


 「うん、其れにしても、さすがだよ、だが、一体、誰の発案なんだ。」


 「私も、知りませんが。」


 「だがよ~、これで、次の作業が行いやすいと言う事だなぁ~。」


 「はい、その様で、閣下、道路の向こう側には。」


 「うぉ~、こりゃ~、まぁ~、何と。」


 ロシュエが驚くのも無理は無かった、其処には、数百本も森から切り出さ


れた、これも、また、整然と並べてあり、しかも、枝は打ち落とし、長さ


も、整えて有る。


 「こりゃ~、大工部隊だなぁ~、だがよ、一体、何本有るんだ。」


 「確か、最低は5百本と聞いておりますが。」


 「で、司令官、何本用意するんだ。」


 「私は、聞いておりませんが、2千から3千本は必要かと。」


 その時、だった。


 「将軍、司令官、技師長で~す、技師長が、馬車で此方に向かっておられ


ま~す。」


 「そうか、わかったよ、じゃ~、そのままで、此処で待つとするか。」


 技師長と、数人の護衛の兵士は、その後、到着し。


 「将軍。」


 「お~、技師長、済まないねぇ~。」


 技師長は、馬車を降り。


 「君達も、ご苦労でした、馬を休ませて下さいね。」


 「そうだ、大食堂に行って来い、みんな居るぞ。」


 「はい、では。」


 と、兵士達は、馬を降り、他の兵士に世話を任せ、大食堂に走って行く。


 「将軍、一体、何が、あったのですか、大至急、帰って来いと聞きました


が。」


 「まぁ~、その前に、此処の現場を見てくれよ。」


 「え~、一体、如何されたんですか、大量の岩石も、大量の大木も。」


 「実はよ~、此れから、話をするんだが、オレも証拠は無いんだがよ


~。」


 「はい、多分、ウエス達の事では無いのですか。」


 「技師長も知っていたのか。」


 「はい、フランド隊長のお考えですが。」


 「そうか、じゃ~、話は早いなぁ~。」


 その後、ロシュエと、技師長の話は続き。


 「まぁ~、技師長、陽も暮れてきたからよ~、大食堂に行こうか、司令官


も一緒に。」


 「はい、勿論で御座います。」


 3人は、大食堂に向かうのだ。


 「将軍、其れで、私も、隊長の話で、将軍も、多分、ご存知だと思い、将


軍ならば、どの様な計画を立てられるのだろうと考えまして、一応、簡単で


すが、図面を作りましたので。」


 「技師長、オレの計画なんて、何の役にも立たんよ、其れよりもだ、技師


長の図面の方が。」


 「はい、では。」


 その時、大食堂に着いた。


 「あっ、将軍だ、お~い、将軍と、司令官と技師長が来られたぞ。」


 「いいんだよ、オレ達の事は、それより、大工部隊は。」


 「将軍が入られて、直ぐ、左の席に。」


 「お~、そうか、有難うよ。」


 ロシュエ達は、大工部隊の席に行き。


 「将軍、如何されたんです。」


 「いや~、なっ、技師長が、たった、今、戻って着たんだ、其れでだよ、


技師長の図面をなっ。」


 「こりゃ~、大助かりですよ、早く、見せて下さいよ。」


 「お~、わかったよ、誰か、この食器を。」


 「はい、直ぐに。」


 テーブルの上からは、食器が片付けられ、技師長が数枚の図面を取り出し


た。


 その席も周りには、早くも多勢の人だかりが出来。


 「わぁ~、こりゃ~、凄いよ、技師長、この通りに作ればいいんです


か。」


 「うん、その通りなんだが。」


 その後、技師長は、大工部隊に説明を始めた。


 技師長の説明の間、ロシュエも司令官も、口を挟む事も無く、技師長と大


工部隊のやり取りが続き、その中には、鍛冶屋も参加し、数時間も続いた。


 「技師長、わかりましたよ、其れで、農民さんの代表は居られますか。」


 「勿論だ、我々も、さっきから話を聞いていたよ。」

 

 「じゃ~、お願いが有るんだけど。」


 「オレ達に出来る事なら、何でもするよ。」


 「有り難い、実は、今の大工部隊の人数だけじゃ~少ないんだ、其れに


だ。」


 「その先は、わかったよ、オレ達の中から、大工の仕事が出来る人物が欲


しいんだ。」


 「うん、そうなんだ、何人でもいいんだけど。」


 「わかったよ、今、此処に居るだけでも聞いて見るよ、お~い、誰か、農


場の人達で大工の仕事が出来るんだって言う人が居れば、明日から、大工部


隊に回って欲しいんだが、どうだろうか。」


 「オレは、出来るぞ~。」


 と、5人、10人と増えて行く。


 「みんな、有難う、大工部隊の仕事なんだけど、簡単な仕事も多いんだ、


だから、少しでも出来るんだったら参加して欲しいんだ。」


 「じゃ~、オレも、少しは経験が有るからやるよ。」


 「じゃ~、オレもだ。」


 と、その後、どんどんと増え、百人を超え。


 それでも、ロシュエは、ただ、聞いて要るだけで、今は、彼らの方法で明


日からの作業の準備に入って要る。


 「将軍、今、皆さんの顔を見ているのですが、どの人の顔を見ても、大


変、楽しそうですねぇ~。」


 「技師長も、そう見えるか、オレも同じだよ、本当に、みんな、いい顔し


てるよ。」


 「技師長、この図面ですが。」


 「やはり、わかりましたか。」


 其れは、今回、初めて作る、城門に取り付ける扉の図面だった。


 「えっ、何だよ、何も変わってないと思うぜ。」


 「将軍、よ~く見て下さいよねぇ~、扉がね、内側と外側の2箇所も有る


んですよ。」


 大工が見たのは、今までとは、全く、別の方法だった。


 「将軍、この扉ですが、内側も外側のどちらも、外側には開かないんです


よ。」


 「えっ、じゃ~、何か、内側も外側も、内側にしか開かないってのかよ


~。」


 「はい、その通りですよ、この扉にすると、たとえ、外側の扉を破壊され


ても、今度は、内側の扉は簡単に開かないんですよ。」


 「技師長、だってよ~、外側が突破されりゃ~よ、内側も突破されると思


うんだが。」


 「ええ、其れは、普通に考えればですがね、外側を突破した兵士達は、一


度に、数十人が入って着ますが、内側の扉を開く為には外側に開く必要が有


るんですがね、この扉は内側に引かないと開かないんですよ、でも、内側に


開く取っ手が無いんですよ。」


 「じゃ~、何か、他の方法で、兵士達が引かないと、扉は開かないと言う


のかよ。」


 「はい、その通りですよ、其れにですよ、内外共に、その場を通過出来る


のは人間と馬だけなんですよ、ほら、此処に大木が有りますから。」


 技師長の考え方は、扉が反対方向に引く事が出来ない様に太い大木が開き


止めの役割に使用されているのだ。


 「じゃ~よ、この大木をどけるか。」


 「将軍、其れは、無理ですよ、この大木も重要な木ですから。」


 「じゃ~、場内への突破は簡単には出来ないって事なのか。」


 「はい。」


 「だがよ、普段も、馬車は通過出来ないって事じゃないかよ~。」


 「其れが、出来るんですよ、この部分ですが、普段は、通行出来る様に厚


みの有る板を敷いているんですがね、いざと言う時には、4箇所に付けたロ


ープを引くと、敷板は上に上がる様になってるんですよ。」


 「あ~ぁ、そうか、わかったよ、じゃ~、普段は通行出来るが、敵が来れ


ば上げると言う事なのか。」


 「はい、大工部隊には、大変、無理な注文に成るんですが。」


 「いや~、技師長、そんな事は無いですよ、だって、この城門を通れない


と言うので有れば、農場の中は安心と言う事に成りますからねぇ~、オレ達


もやりがいの有る仕事になりますよ。」


 「その様に言っていただけるだけでも、私は、嬉しいですよ。」


 「其れで、後、何か、変わったところは無いですか。」


 「実はですねぇ~、此れから、造っていただく城壁の内部は、3層構造で


すが、1階は、通路と武器庫なんです、2階にはですが、中から敵に攻撃が


出来る様にと思いましてね、ホーガンを撃つ事が出来る矢口と言うものなん


ですがね、これを、作って欲しいんですよ。」


 「えっ、矢口って、一体、其れは、どんな物なんですか。」


 大工部隊よりも驚いたのは司令官だった。


 「司令官、普通は、兵隊さんの姿が敵からも見えていると思いますが。」


 「ええ、其れは、私達は、何時も全身が見えておりますが、我々からも敵


軍が丸見えなのですよ。」


 「司令官、其れが、普通なんですよ、そんな状態で有れば、敵もですが、


我が軍にも、大変な被害を受ける事に成ります。」


 「では、今、言われた矢口と言うのは。」


 「ええ、それなんですがね、内側からは敵軍が見えますが、敵軍からは、


矢口は見えるが、その中は見えないと。」


 「では、我が軍の被害は大幅に減ると言われるのですか。」


 「はい、私は、その様に考えておりますが、ただ、どの様な形に成れば良


いかは考えていないので、丸型か、三角か四角が良いのか、其れは、この穴


を作る時には、大工さんの仕事なんですよ、兵隊さんと、大工さんにも参加


して頂きたいと思いますが、将軍、私も、初めてなので、どれだけの時間が


掛かるのかはっきりと申し上げる事が出来ないんです。」


 「う~ん、そうだなぁ~、他に何か方法は無いのかよ~。」


 ロシュエも、司令官も、全く予想していなかった、正か、技師長が其処ま


で考えていたとは思いもしなかったと言うか、技師長の言う、矢口が本当に


出来るのか、全わからなくなってきたので有る。


 「まぁ~、将軍、オレ達も何とか考えてみますよ、だって、我々が、予想


していないと言う事はですよ、敵軍は、もっと大騒ぎに成ると思うんです


よ、今までだったらね、前か上に兵士の姿が見えてたのにですよ、何処に


も、兵士の姿が見えないのにですよ、ホーガン矢が飛んできたら、奴ら、き


っと、驚くと思いますがねぇ~。」


 「だってよ~、一体、誰がだよ、その矢口ってのを作るんだよ~。」


 「でもですよ、今、此処で考えたって仕方が無いですよ、まぁ~、何人


か、一度、試しに作るりますんで、技師長、その矢口って、何個くらいの穴


が必要なんですか。」


 「之は、私の考えなんですがね、一ヒロに一箇所もあれば、十分じゃ~無


いかと思いますがねぇ~。」


 「じゃ~、やって見ますよ、まぁ~、その内、誰かが方法を考えてくれる


と思いますのでねぇ~。」


 大工部隊が言ったので、矢口の件は終わった。


 「技師長、他に、特別な事は有りませんか。」


 「私は、別に有りませんが、鍛冶屋さんも、大量の釘を作って頂く事に成


りますが、宜しく、お願いしますね。」


 「将軍、オレ達だって、意地ってものが有りますよ、これくらいの事で弱


音を吐きませんよ、其れに、ウエス達が差し出した槍や剣が大量に残ってい


ますので、問題は無いと思いますよ。」


 「じゃ~、みんな、宜しく頼んだぜ。」


 「あいよ、将軍、まぁ~、オレ達に全て任せなってよ、奴らが、驚く様な


城壁を造ってやるからよ~。」


 「じゃ~、オレ達は戻るからよ~、みんな、宜しくなぁ~。」


 ロシュエ達は、手を振り、大食堂を出ようとした時。


 「お~い、第一中隊のみんな、最後の人がお風呂を上がったら、第一中隊


は風呂掃除に入りたいと思うんだ、皆さん、如何でしょうか。」


 若い兵士の提案だった。


 「其れは、ダメよ。」


 テレシアが止めた。


 「テレシアさん、何故なんですか。」


 「あんたは、何もわかってないね、お風呂の残り湯で、みんなの服を洗濯


するんだからね、最後にするんだよ、お風呂の掃除はね、其れにっ、あんた


達、そんな時間が有るんだったら、薪木でも作ったら、子供達だけじゃ~、


無理なんだよ。」


 「じゃ~、今から、薪木を作りますか、皆さん、如何でしょうか。」


 「うん、そうだよ、だって、大量の薪木を準備させるなんて、かわいそう


だよ、あの子供達も一生懸命なんだからなぁ~。」


 「そうだよ、我々で、薪木を作ってやろうぜ。」


 「じゃ~、皆さん、腹ごなしに行きましょうか。」


 「行こうぜ。」


 其れは、第一中隊だけでは無かった、兵士達全員で薪木を作る事になっ


た、だが。


「兵隊さん、明日からも続きが有りますので、宜しく頼みますよ。」


 大工部隊からも声が掛かり、兵士達は、手を振り出て行き、その明くる日


の早朝は大変な騒ぎで農場を出て行く事に。


 「閣下、起きておられますか。」


 「お~、司令官、勿論だよ、今から、みんなを見送りに行くところなんだ


よ。」


 「はい、でも、その前にですが、お話しが有りまして。」


 「何だよ、大事な事なのかよ。」


 「はい、私は、その様に思っておりますが。」


 「うん、じゃ~、聞こうか。」


 「では、失礼しまして。」


 司令官も、執務室の椅子に座り。


 「私も、昨日、考えていた事が有りまして。」


 「何か、有るのかよ~。」


 「はい、私も、別に、急ぐ必要は無いと思うのですが、野盗隊をウエスが


結んだで有ろうと思う敵軍の偵察にと考えたのですが。」


 「そうだったよなぁ~、実はな、オレも考えてたんだがよ~、今は、まだ


いいかと思ってたんだが、司令官は、先に敵軍の位置を知りたいと言うんだ


なっ。」


 「はい、私は、その様に考えております。


 正かですが、近くまでは来ているとは思いませんが、でも、万が一って事


も有ります。


 ウエスが、何時の時点で敵軍に知らせるのか見当も付きませんので。」


 司令官も、ロシュエも、考えは同じだった、敵が遠方に居るのか、それと


も近くまで来て居るのか、それだけでも知る必要が有る。


 「閣下、私は、まだ、相当遠方だとは思いますがね、何れにしても知るだ


けの必要は有ると思います。」


 「うん、うん、そうだなぁ~、ウエスが、どんな方法で合図を送るのかも


わからないんだ、やはり、司令官の言う通りだなぁ~、じゃ~、今からで


も、野盗隊を帰らせてだ、偵察に行かせようか。」


 「はい、で、私の判断で、先程、第一中隊、第二小隊を向けましたの


で。」


 「司令官、さすがだ、手を打つのが早い、うん、大変、宜しい。」


 と、ロシュエは、笑う。


 一方、ウエス達は、ロシュエが思ってた以上にゆっくりと作業を行なって


いる。


 其れは、大木の切り出し作業で、自分達の仲間を失ったのが原因だった。


 「隊長、私は、急ぐよりも確実に作業を進めたいのですが、宜しいでしょ


うか。」


 「ウエス隊長、勿論ですよ、急ぐ余り、事故が起きる事を考えれば、確実


に行なって頂く事が大切だと思いますので、ウエス隊長にお任せ致します。


 では、宜しく、お願いします。」


 その言葉は、ウエスの本心だろうと、隊長は、思った。


 今回の大池造りは、今までとは訳が違い、農地を造る場所では、大小の岩


石を掘り出した後は、埋め戻すのだが、今回は、20ヒロから30ヒロの深


い穴を掘るのだ。


 その為、穴が深くなれば、自然と落盤事故が発生する可能性も高くなる、


其れは、ウエス達にも大変なリスクを背負っている。


 「隊長、技師長は、何時頃、戻って来られるのでしょうか。」


 ウエスは、技師長が、どの様な用事で帰って行ったのか知りたいのだろ


う。


 「多分、直ぐに戻られると思いますが、将軍に報告する必要が有るのだと


言っておられましたので。」


 隊長は、さらりと流した。


 「ウエス隊長、堤防の盛り土ですが、下流はどの付近までの予定なのです


か。」


 「はい、私は、此処から、1千ヒロは下流に行きたいと考えております


が。」


 「えっ、1千ヒロもですか。」


 「はい、洪水が大規模になれば、下流の方の被害が大きく成りますが、1


千ヒロも下流に行けば農場からは遠く成りますので。」


 其れは、普通の考え方なのだ、其処まで盛り土を行なえば、ウエス達は簡


単に攻略出来ると考えて要るのだろう。


 「でも、大変ですよ。」


 「はい、私も、十分に承知しておりますが、私達も命は惜しいですからね


ぇ~。」


 ウエスは、何かを確信したのかニヤリとする。


 「後は、技師長が戻られ、大木をどの様にして高い柵にして行くかだけで


すね。」


 「はい、高い柵が完成すれば、私達も安心して堤防造りに専念出来ますの


で。」


 野盗隊も引き上げるに違い無いと確信して要るのか。


 「その様になれば、野盗隊も引き上げる事に成ります。」


 隊長は、ウエスの気持ちを代弁する。


 「はい、あの人達も大変ですからねぇ~。」


 ウエスの腹の中は読めてきたと、隊長は思った。


 一方で、大事故が起きた現場でも新たな事実がわかってきたのだ。


 「隊長さん、千人が行かれましたが、何時頃、戻って来るのでしょう


か。」


 「私も、わかりませんが、何故ですか。」


 「はい、実はですね、こんな事が、ウエスの耳にでも入ったら、私達は殺


されるかも知れませんので。」


 「何ですって、でも、貴方は、ウエスの部下では無いのですか。」


 「はい、一応は。」


 「一応はとは、どの様な意味が有るのですか。」


 「はい、先日の大事故で死んだ兵士達は、ウエス直属の部下で、私達は違


うのです。」


 隊長も正か、その様な話を聞くとは思わなかった。


 「私達も、本当は農民なんです。」


 「えっ、今、何と言ったのですか、本当は農民だと聞えましたが。」


 「はい、隊長さん、本当なんです。」


 「でも、貴方方が農民だとは知らなかったですよ。」


 「はい、もう数年になります、私達は、遠くの国で農業をしてたのです


が、ウエス達の国に滅ぼされ、国王も兵隊も全員が殺され、私達は、ウエス


の部隊が多勢居る様にと、軍服を着せられていたんです。」


 「では、戦は。」


 「さっきも言いましたが、私達は農民ですので、戦は知りません。


 でも、相手にすれば人数が多いので。」


 「そうですか、でも、何故、今頃になって、その様な話をされるのです


か。」


 「はい、大事故でウエスの部下が死んで、今は、本当に安心しています。


 実は、私も、この様な話をしても良いのか、仲間達と相談したんです。


 隊長さんが言われる様に、今頃になって話ても、一体、誰が、信じてくれ


ると思いますか、それだけ、私達は、ウエス達が怖いんです。」


 「其れは、私も、よくわかりますよ、我々は、本物の軍隊ですからねぇ


~。」


 「はい、勿論です、でも、私達は、兵隊さんが恐ろしかったんです。


 でも、隊長さんの兵隊さんは、ウエスの兵隊と違い、皆さん、穏やかな顔


で、私達に接してくれました。


 其れで、私も覚悟を決め、今、お話をさせて貰っているんです。」


 「では、あの死亡した50人は、監視の為に送ったのだと、言われるので


すか。」


 「はい、私は、その様に言われました。」


 何と言う話になったのだ、死亡した50人は、監視の為に送ったのだと、


其れにしても、この話は本当なのか、確かに、今になって、彼らの表情は変


わってきた、50人の監視役の兵士が、今は、全員死亡し、誰も、ウエスに


密告する者などもいないからか、それとも、まだ、人間の皮を被っているの


か、確信が持てない。


 「では、あの時、ウエス達が、我々の農場に攻撃をした時は。」


 「はい、その時は、私達は、別のところにおりました。」


 「でも、あの時、兵隊の服装をした多勢が農場に向かって来ましたが。」


 「あれは、本当の兵隊ですが、私達は、剣もですが、今まで、武器なんて


持った事が無いんです。」


 「では、貴方方は人数合わせだとでも。」


 「はい、でも、今回は、少し違っていました。」


 「何が、違っていたのですか。」


 「はい、ウエス達は、この農場に来る前にですが、たくさんの武器を隠し


ています。」


 やはり、ウエスは、全ての武器を出したのでは無かった。


 我々に差し出した武器が余りにも少ないと思っていたのだが、その通りだ


った。


 「何ですって、大量の武器を隠して有ると。」


 「はい、私達も手伝いましたので、間違いは有りません。」


 何と、言う話だ、将軍が思った通りだ、だが、ウエス達は、我々が、ま


だ、何も知らないと思っているはずだ。


 「じゃ~、その武器の隠した場所は覚えているのですか。」


 「はい、勿論です。」

 

 それでは、一刻も早く武器を取り出す必要が有ると思った隊長は、作戦を


考えた。


 今、野盗隊は、森の入り、名目上は、狼の襲撃からウエス達を守ると言う


監視に入って要るのだ。


 ウエス達に知られない方法として、野盗隊に武器の隠し場所に行かせ、武


器を取り出し、農場に持って帰るらせるのが一番だと考えた。


 「で、その場所は、一体、何処なんですか。」


 「はい、この森の奥に隠しました。


 其処には、目印を付けて有りますので、直ぐにわかると思います。」


 「森の奥と言うのは、今、この場所からですか。」


 「はい、此処から、左の方に大きな木が見えると思いますが。」


 彼が、指差す方角を見ると、確かに、その大木は、他の大木よりも遥かに


大きいのだ。


 「左の、あの大木ですか。」


 「はい、あの大木に目印で、十字を刻んで有りますので。」


 「十字ですね。」


 「はい、その下の木を除けると有りますので。」


 「わかりました。」


 その時、野盗隊が、10頭の大鹿と、20頭の狼を仕留め持ってきた。


 「隊長、今日の収穫ですよ。」


 野盗隊も元気が良い。


 「ホーガン、大切な話が有るんだ。」


 「えっ、隊長、オレ達に出来る事なんですか。」


 「あ~ぁ、勿論だよ、今、君達が帰ってきたので、大助かりなんだ、今


も、君達を探しに行こうかと思ってたところなんだ。」


 「えっ、じゃ~、相当、大事な用件なんですね。」


 「そうなんだ、ホーガン、後ろの左の方角に、大木が見えるか。」


 「はい、他の大木よりも大きな木ですね。」


 「その下にだよ、ウエス達が隠した武器が大量に有ると言うんだ。」


 「でも、隊長、本当なんですか。」


 ホーガンは、全く、信用していない、隊長も、全面的に信用しているので


は無い。


 「いや~ね、彼の話なんだが。」


 「えっ、でも、奴らはウエスの。」


 「それがですよ、今、話を聞くと、数年前、それよりも、早く行って武器


の回収だ。」


 「はい、わかりましたが、隊長、その武器は。」


 「うん、農場に届けて欲しいんだ。」


 「じゃ~、そうだ、馬車を何台か、お借りしても。」


 「う~ん、少し待って下さいよ、その武器だが、馬車に載せるとすれば、


何台くらい必要に成るんですか。」


 「はい、私は、5台の馬車で運びましたが。」


 「ホーガン、6台使ってくれ、其れで、回収が終われば、其のまま、農場


に行くんだ。」


 「はい、わかりました、では。」


 「私も、彼ら数人を連れて、今から、農場に向かうので、宜しく、頼む


よ。」


 「隊長、勿論ですよ。」


 問題が、大きく変わって行く、ウエス達が隠した大量の武器、其れが、発


見出来れば、ウエス達の野望は終わったと同じだ。


 「では、私と、貴方、それと、数人が一緒に来て下さいね。」


 「はい、わかりました。


 でも、隊長さん、将軍は、恐ろしい人なんでしょうか。」


 隊長は、ニヤリとして。


 「其れは、誰でも知っておりますよ、あの農場では、一番、恐ろしい人で


すからね、それと、将軍に、嘘は通じませんよ、今回も、ウエス達の嘘は早


くから知っていましたからね、何事も、正直に話をして下さい。


 将軍はね、嘘だとわかっても、その場では、何も聞きませんがね、後が、


恐ろしいですからねぇ~。」


 「隊長さん、私は、今まで、ウエスが一番恐ろしい人だと思っていました


が。」


 「でもね、あの人は、最高に優しい将軍ですから、何も心配は要らないで


すよ。」


 「隊長さん、優しいって、其れが、なんで、一番、恐ろしいんですか。」


 彼の、言う事もわかる、優しいのに、何故、一番、恐ろしいのか、意味が


わからない。


 「本当はね、将軍は、農民の見方なんですよ、我々の農場では、兵士も農


民もみんな、お互いを認めているんですよ。」


 「えっ、じゃ~、兵隊さんと、農民は仲がいいのですか、でも、そんな話聞いた事が無いですよ。」


 彼らは、ウエス達が来るまでも、国の兵士達が恐ろしかった。


兵士達は、農家から食料は略奪するは、女性には乱暴するはで、国中の農民


達は兵隊は恐ろしい者だと思っている。


 「でも、まぁ~、我々の農場ではね、そうですね、将軍よりも、更に、恐


ろしい人が居ますよ。」


 隊長は、テレシアの顔を思い浮かべ笑ったので。


 「え~、将軍よりも恐ろしい人が居るんですか。」


 彼らは、農場に行くのが恐ろしくなってきたのだろうか。


 隊長も、言い過ぎたと思い。


 「まぁ~、皆さん、私の、言った事は半分が冗談で、半分は本当の話です


が、でも、本当に大丈夫ですからね。」


 その前に、中隊長を呼び、今までの話をし、数人の兵士と共に、農場に向


うのだ。


「じゃ~、行きましょうか。」


 隊長の顔は優しくなっている。


 「ねぇ~、兵隊さん、さっき、隊長さんにも聞いたんですが、将軍様っ


て、本当は大変、恐ろしい人だと聞きましたが。」


 兵士は、笑って。


 「隊長、また、そんな事言ったんですか、将軍は恐ろしい人だと。」


 隊長も笑って。


 「あ~ぁ、言ったよ、だけど、本当なんだからね、だけど、ウエス達は、


まだ、将軍の恐ろしさを知らないからなぁ~。」


 「そうですねぇ~、本当に悪い奴らには、将軍は、本当に恐ろしい人で


す、でもね、将軍は、何時も、どんな時でも、農民の見方なんですよ。」


 「えっ、じゃ~、本当は、とっても優しい将軍様なんですね、あ~あ、よ


かった。」


 他の農民達も胸をなでおろすので有る。


 「でも、隊長、余り脅かさないで下さい。」


 兵士も笑い。


 「いや~、私は、本当の事を話しただけだよ。」


 「え~、まぁ~、本当の事ですからねぇ~。」


 「兵隊さん、有難う。」


 「いや~、だけど、農場にはね、将軍よりも恐ろしい人が居るんですよね


ぇ~、隊長。」


 「やはり、君もそう思うか。」


 「はい、あの人が一番恐ろしいですよ、其れに比べたら、将軍は天使です


 「おい、おい、知らないぞ、彼らは本気にするよ。」


 「でも、大丈夫ですよ、その女性はね、本当に、最高に優しい、まぁ~、


僕達のお母さんの様な人ですから。」


 「えっ、兵隊さん、隊長さんも言っておられましたが、将軍よりも恐ろし


いってのは、女性なんですか。」


 「そうですよ、そうか、将軍より、恐ろしいから狼って思ったんでしょ


う。」


 「おい、おい、テレシアさん、今頃、大きなくしゃみをして要るぞ、帰っ


たら、今の話を言ってやろうか。」


 「隊長、止めて下さいよ、自分は殺されますよ。」


 「冗談だよ、冗談。」


 隊長も、数人の兵士達も大笑いするので。


 「隊長さん、私は、皆さんが羨ましいですよ、だって、私達は、今まで、


長い間兵隊に苦しめられてきましたので、今の、お話に憧れますよ。」


  「まぁ~、我々が、話した事は、誰でも、同じ様に言いますからね、そ


の時になればわかると思いますよ。」


 「なぁ~、みんな、我々も早く、その将軍様や、その女性に会って見たい


よなぁ~。」


 「それでね、先程の話に戻りますが、ウエス達は、何か、貴方達に言って


ませんでしたかねぇ~。」


 「はい、言った様にも思いますが、それが、何か。」


 隊長は、ウエス達も企みを知りたいのだ。


 「其れは、どの様な話しでしたか。」


 「ええ、でも、余り覚えていないのですが。」


 だが、別の農民は覚えていた。


 「あの~、私は、少しだけど、話を聞きましたが。」


 「じゃ~、貴方の覚えているだけで宜しいので。」


 「はい、私達が、此処に来る前だったんですが。」


 その後、彼らの話が続き、其れは、ロシュエの考えていた通りだった。


 ウエスは、他国に行き、この農場の話をしたのだと。


 「やはり、そうでしたか、将軍の考えられたとおりだった、其れで。」


 「はい、ウエスは、時間を掛けて、準備を進めるので、暫く待って欲しい


と言っていましたよ。」


 時間を掛けると言う事は、堤防を築き、農民達の生活が始まるまでと言う


事なのか、それとも。


 「じゃ~、今の堤防が完成すればと言うのですか。」


 「私は、其処までは知りませんが。」


 「有難う、それだけの情報でも、我々にとっては重要な話ですから。」


 「隊長、早く知らせる必要が。」


 「いや、いいんだよ、将軍は、別の方法も考えておられると思うから。」


 だが、この隊長も、農場の全員が、其れは、兵士も含めてで、農場から城


まで城壁造りに入って要るとは、この時は知らなかった。


 「でも、隊長、将軍は、どんな方法を考えておられるんでしょうかねぇ


~。」


 「まぁ~、きっと、我々が驚く様な事だと思うよ。」


 「そうですよねぇ~、将軍の頭は、我々、兵士とは全く別の事を考えてお


られるから。」


 「隊長さん、将軍さまって、じゃ~、皆さんは反対されないんですか。」


 「いや~、それがね、反対どころか、何時も大賛成する事になるんです


よ、だけど、将軍の偉いところは、殆ど、命令を出さないと言う事かなぁ


~。」


 「隊長、それと、我々の様な末端の兵士からの提案も聞いて下さるんです


よ。」


 「うん、そうだなぁ~。」


 「じゃ~、隊長さんの提案は。」


 「之がねぇ~、隊長の意見よりも、彼らの様な末端の兵士を大切にされる


んですよ。」


 「そうだ、あの時だって、戦死された仲間の。」


 「うん、でも、あれは、農場の人達が中心だったんだ。」


 「でも、話を聞けば、聞くほど、早く将軍様にお会いしたいです。


 私は、将軍様に、ウエス達の事で知って事を全部話しますからね。」


 「うん、其れでいいんですよ。」


 隊長と兵士数人と兵隊の服装をした、実は、農民で、その様な話を続けな


がらも農場へと向かって行く。


 一方、農場では。


 「お~い、みんな、準備は出来たか。」


 農場の人達は手を挙げ。


 「じゃ~、行くぞ~。」


 男達は、今日も元気で森に出掛けて行く。


 「第1中隊から、順次出発する。」


 此方は、兵士達が中心なので整然とした行進で出発して行く。


 「ねぇ~みんな、聞いてくれる。」


 「如何したの、テレシア、今日も作るんでしょう。」


 「うん、そうなんだけど、昨日、洗濯した兵隊達の服を見たんだけど、ど


の服もよ、ボロボロになってるのよ。」


 「えっ、本当なの。」


 「本当よ、だから、服を見られたくないから、自分達で洗濯するって言っ


たの。」


 女性達は、兵士達が、ボロボロの服を見せたくないと思ったのだろうと思


い、少し悲しくなったのだ。


 「テレシア、わかったわ、じゃ~、私は、服の縫製をするわ。」


 「じゃ~、私も。」


 と、女性達の半数が、兵士達の服の縫製に周り。


 「みんな、御免ね、どちらも人数が足りないけど。」


 「いいのよ、だって、私達に力仕事は無理だもんねぇ~。」


 「有難うね、じゃ~、私は、食事の準備に掛かるわね。」


 農場では、男女を問わず、其れに、子供達もが、兵士達も同じだった、其


れは、ロシュエの為と言うよりも、最後は、農民自身のためでもあり、その


為なのか、誰も、不満を持つ者などはいない。


 「閣下、私は、閣下の部下にならせて頂き、最高の幸せ者で御座いま


す。」


 「司令官、何を言ってるんだよ~、オレはなぁ~、あの人達の笑顔が好き


なんだよ~、あの人達が、元気で、楽しく、今日も働いてくれるだけで、オ


レは満足なんだ。


 ウエス達に、この農場を奪われてたまるもんかよ~、オレはなぁ~、オレ


の命を掛けてでも、この人達を守ってやるぜ。」


 「閣下、私も、同感で御座います。」


 司令官も、今回はどんな事が有ろうと、農民達を守るんだと、改めて決意


した。


 「司令官よ~、あのウエスって野郎だが、オレ達が、まだ、何にも知らな


いとでも思ってるのかなぁ~。」


 「はい、私もです、其れに、第3大隊からの伝令も有りませんので、其れ


が、余計に不気味なのです。」


 「オレだって、同じなんだよ~。」


 だが、ロシュエも司令官も、その後、話が急展開するとは、この時には、


全く知らなかった。


 「おやっさん。」


 おやっさんとは、大工部隊の言わば、隊長の事だが、此処では、仲間から


も、おやっさんと呼ばれている人物なのだ。


 「うん。」


 「うん、オレが考えたんだがよ~、いいかな。」


 「うん、いいよ。」


 「あの図面通りの物を作るんだったら、長さの基になる物が要ると思うん


だけど。」


「うん、その通りなんだが、オレも、其れを考えてるんだが、何か方法


は。」


 「うん、オレはね、この寸法の長さの木を作ったらと思ったんだ、確か


に、此処の仲間は素晴らしいよ、だけど、今度の城壁は失敗が出来ないと思


うんだ。」


 「うん、そうか、いい事を考えてくれたよ、お前の思った物って、どんな


物か作ってくれよ。」


 「うん、おやっさん、もう、作って有るんだ、之が、その物なんだけ


ど。」


 若い大工が差し出した物は、長さの違う板切れだったのだが。


 「これで、長さを決めるのか。」


 「うん、そうなんだ。」


 若い大工が印を付けると。


 「これだったら、初めから目印を付ける事が出来ると言う事なのか。」


 「そうなんだ、この目印の所を切ったり、削ったりすれば、早く加工が出


来、仕上がりも早いと思ったんだ。」


 「よし、いい物を作ってくれたよ、お前は、この板切れを何本か作ってく


れ、それから、各隊に渡してくれ、よ~し、これで、同じ物が作れると言う


事になるぞ~。」


 おやっさんは、若い大工の頭を撫でるのだ。


 若い大工は、それから、数本を作り、各部位を作り初めて要る現場に持っ


て行った、それからと言うものは作業が大幅に進み出したのも間違いは無


い。


 一方で、兵士達は悪戦苦闘をして要る。


 「中隊長、この岩石ですが。」


 「う~ん、之は、此処に残す事に、其れは、運んでくれ。」


 幾ら、若い兵士達だと言っても、岩石は重く、一人の力ではどうにもなら


ない、掘り出す兵士も大変だ。


 「小隊長、どの深さまで掘るんですか。」


 「もう直ぐ、技師長が来られるので、其れまで待って欲しいんだ。」


 「お~、技師長、随分と早いねぇ~。」


 「はい、今から、兵隊さんの所へ。」


 「じゃ~、オレも、行くよ。」


 「じゃ~、一緒に行きましょうか。」


 「あそこは大変だと思うんだが。」


 「そうですね、一番、大事なところですが、でも、一応は説明はして有り


ますので。」


 「そうか、で、昨日見た図面じゃ~、大きさがわからないんだが。」


 「はい、農場の城壁と同じ高さですがね、今度の造りは、幅が広く成りま


すので。」


 「どれ位になるんだ。」


 「はい、この図面では、わかりませんが、幅は、5ヒロも有りますの


で。」


 「え~、そんなに広いのかよ~、高さが、5ヒロで、幅が、5ヒロだっ


て、こりゃ~、本当に大変だなぁ~。」


 「お~い、みんな、元気かよ~。」


 「あっ、将軍、技師長も一緒ですよ、中隊長。」


 技師長は、乗ってきた馬車から大きな木で作られた打ち木を取り出し。


 「中隊長、この打ち木で、地面を打って欲しいんですが。」


 「技師長、何か、間違っていましたか。」


 「いや、そうでは有りません。


 打ち木を使い地面を硬くするのですよ、少しですが、小石も入れて下さ


い、そうする事で、よりいっそう地面が硬くなり、大木を立てても大丈夫な


んです。」


 「わかりました、で、何本くらい有るのですか。」


 「馬車の中に、10本くらいは有ると思いましたが、それと、杭も数十


本、長いロープも一緒に降ろして下さいね。」


 「わかりました、君達、馬車の荷物を降ろしてくれ。」


 2個小隊が荷物を降ろし、10本の打ち木で地面を硬くする作業に入る。


 「中隊長、今から、杭を打ち、ロープを張りますので、お手伝いを。」


 「はい、わかりました、第3と第4小隊は、技師長のお手伝いをしてくれ。」


 ロシュエは、何も言わず、ただ、見ているだけなのだが、感心して頷いて


いる。


 技師長は、兵士達に、次々と、杭を打つ場所を指示し、兵士達も、杭を打


ち、ロープを張って行くが、其れは、長さにして百ヒロも有り。


 「一応、此処までとします、中隊長、今の要領で、次からはお願いしま


す。」


 「はい、では、私が責任を持って杭打ちと、ロープ張りを行いますの


で。」


 「では、よろしく、お願いします、それと、城門の場所ですが、中間に成


りますので、その頃に、また、私が、来ますので。」


 「はい、わかりました、よろしくお願いします。」


 「では。」


 技師長は、農場地を離れた。


 「なぁ~、中隊長よ、この現場は大変だと思うが、兵士達には、余り、無


理をさせないで欲しいんだ。」


 「将軍、勿論です、でも、私が、言ってもねぇ~。」


 中隊長は、半ば諦めている様子なのだ。


 その後、大工部隊も農地の予定地で順調に作業は進み、10日程経った


頃、10台以上の馬車に最初の木材が到着した。


 「中隊長、明日の朝から、加工した材料で建て、張りも取り付けたいの


で、兵隊さんにもお手伝いをお願いしたいのですが。」


 「はい、私達は、何時でも宜しいですよ、その前に、あれで良いのか見て


頂きたいのですが。」


 中隊長は、整地の終わった場所に案内すると。


 「中隊長、申し分有りませんよ、これだけ固めていただければ、少々の事


ではビクともしませんからねぇ~。」


 「いや~、其れは、良かったですよ、兵士達も、よく頑張りましたので、


私からも褒めておきます。」


 「じゃ~、明日の朝に。」


 大工部隊は加工した木材を指定された場所に置いて行くが、その様子を見


て。


 「お~い、みんな、之は、素晴らしい物だと思うよ、だって。」


 「いいよ、お前も、よく頑張ったからなぁ~。」


 「小隊長もですよ、自分は、初めて見ましたが、こんな大木を明日の朝か


ら建てるんですねぇ~。」


 「うん、今、大工部隊の人達が言ってたよ、我々も手伝うんだからなぁ


~、少し休みを取って、また、始めるとするか。」


 「は~い。」


 「じゃ~、みんな、一休みだ。」


 兵士達は、その場に座り、何やら話をして要る。


 「なぁ~、あのウエスって奴は、本当に攻めて来ると思うか。」


 「うん、あいつの事だ、きっと来るよ、だって、この農場には、何時も食


料が有るって知ってるからなぁ~。」


 「じゃ~、早く、城壁を完成させないとなぁ~。」


 「うん、そうなんだ、今までは、何度も、将軍の知恵で、此処まで生き延


びる事が出来たけど、今度は、何かが違う様な気がするんだ。」


 「うん、そうだなぁ~、あいつ達には、絶対に農場を渡す事なんか出来な


いんだ。」


 「勿論だよ、この農場は、将軍が命懸けで造られたんだぜ、今度は、自分


達が将軍を助けないとねぇ~。」


 やはり、末端の兵士達でさえ、ウエスの企みを知って要るのだ、彼らは、


ウエスの計画を逆手に取り、城壁造りに入ったので有る。


 「お~い、全員、聞いてくれ、明日の朝から、支柱を立て、張りを取り付


けるんだが、今から大きな岩石を移動させたいんだ。」


 「中隊長、自分達が考えた方法を聞いて頂きたいのですが。」


 「うん、宜しいですよ、言って下さい。」


 「はい、今も、大きな岩石を見たんですが、大きな移動は出来ないと思う


んですが、ロープの内側に有るものだけではダメでしょうか。」


 「そうだなぁ~、じゃ~、みんな、足元の岩石を見て、之は、移動させる


必要が無いと思われる岩石はそのままで、移動が必要だと思われる岩石は移


動させるので、太い丸太と枕になる様な丸太の用意だ、準備の出来たところ


から始める様に。」


 兵士達は走り、適当な丸太を用意し、其れから岩石の岩石の移動が始まっ


た。


 だが、思った以上に岩石は重く、簡単な作業では無かった。


 有る時は、大きな岩石の下に数本の丸太を入れ、数人が丸太の下を押し、


数人は、丸太に乗り掛かる様にして押す作業が夕方近くまで続いた。


 「みんな、ご苦労だった、これで明日からの作業が少しだが楽になると思


う、今日はこれで終わる、みんな疲れたと思うので、今夜は、早く眠る様


に、以上だ、解散する。」


 若い兵士達も普段見慣れている岩石がこれほど思いとは考えもしなかった


のだろう。


 農場に着くと、お風呂に入り、食事を取り、兵士達は早くも眠りに入っ


た。


 そして、今日は、農場では初めてとなる大掛かりな工事なので、大工部隊


も兵士達も、少し緊張している様子だ。


 「今から、簡単に説明しますが、馬車には、今日、引き上げる為の道具が


有ります。


 1台では無理だと判断すれば、2台にしますが、今回の造りは初めてなの


で、全員の協力をお願いします。


 合図は、私がしますので、みんな事故だけは注意して下さい。


 では、皆さん、よろしくお願いします、出発するぞ~。」


 おやっさんの号令で、大工部隊と兵士達は、何時もの楽しそうな顔ではな


く、足取りも、何か、ぎこちないが、現場は城門を出たところなので直ぐ作


業開始となった。


 「丸太の上部に滑車を取り付けてくれ。」


 そして、いよいよ始まる。


 「おっ、之が、最初の丸太だ、よし、この穴にロープを入れてくれ。」


 之からは大変な作業が続く、だが、大工部隊は慣れたもので、大木は引き


上げられ直立した。


 「よ~し、支え木をかませ。」


 最初の1本が立ち、次は張りを引き上げる。


 「よ~し、そうだ、ゆっくりとなぁ~、さぁ~、思い切り引いてくれ。」


 太い丸太は、最上段のところまで引き上げられ。


 「よ~し、今から、穴に入れるぞ、みんな、支え木を頼むぜ。」


 おやっさんの指示が飛ぶ。


 「よ~し、入ったぞ。」


 その時、下から、上に登ってくる大工に何かが飛んだ様に見えた。


 「よ~し、次は、支柱だ。」


 2本目の丸太を立てた。


 「よ~し、ゆっくりとだ、そうだ、よし入れろ、入ったぞ、楔を打つ込


め。」


 先程、下から飛んで行った物は大きな楔だった。


 「よ~し、みんな、下がれ、支え木を外せ。」


 数十本の支え木が外されても、組み立てられた物はビクともしない。


 「司令官、この調子だと、午後から、同じ物が出来るなぁ~。」


 「はい、その様ですねぇ~、ですが、閣下、思った以上に大きな物ですね


ぇ~、これだけ高いと、簡単には登れないと思いますが。」


 「司令官、ウエスの事だ、何を考えてるのかわからんよ、まぁ~普通の人


間ならよ~、こりゃ~駄目だと思うだろうが、奴は。」


 その時だった。


 「将軍、野盗隊が戻ってきま~す。」


 「えっ、何だと、野盗隊が戻ってくるだと、司令官、こりゃ~、何かが起


きたかも知れんぞ~。」


 「はい。」


 「将軍、馬車も続いていま~す。」


 「えっ、馬車もだと、一体、何があったんだ。」


 ロシュエも、司令官もただ事では無いと感じたのだ、しかし、其れは、ロ


シュエ達の見当違いだった。


 「お~い、全員だよ。」


 「はい、その様ですね。」


 その直後、野盗隊が到着した。


 「将軍、大変な物を見つけましたよ。」


 「え、何がだよ。」


 ロシュエが、馬車の荷台を見ると、なんと、其処には大量の武器が積まれ


ている。


 「オイ、ホーガン、一体、どうしたんだよ~。」


 「将軍、驚いちゃ~駄目ですよ。」


 「何を、今更、何を聞いても驚かないよ。」


 「之はね、やはり、ウエス達が隠した武器でした。」


 ロシュエは、これで、証拠も揃ったと確信した。


 「だがよ~、一体、何処で見つけたんだよ~。」


 「いや~、其れがね。」


 ホーガンは、ロシュエに説明すると。


 「じゃ~、何かよ、死んだのは、ウエスの部下だったのか。」


 「はい、其れで、フォルト隊長が、その人達数人を連れて、もう直ぐ着く


と思います。」


 「将軍、フォルト隊長達が到着されま~す。」


 「よし、わかった、ホーガン、済まんがよ~、この武器をだ、鍛冶屋の所


へ。」


 「はい、将軍、ところで、目の前に有る、この巨大な物は、一体、何です


か。」


 ホーガン達も初めて見る巨大な足組みされた物は、城壁の内部に入る物だ


った。


 「まぁ~、その話は、後でするからよ、鍛冶屋のところへ持って行ってく


れ。」


 「はい、わかりました、野郎ども、行くぞ~。」


 野盗隊は、ウエスが隠した大量の武器を運んで行く、それと、入れ違い


に、フォルト隊長達が着いた。


 「将軍、一体、之は、何に使われるのですか。」


 「いや~、実はね、ウエス達を少し脅かそうと思ってな、これで、遊ぶん


だよ。」


 「やはり、ウエス達をですか。」


 「お~、そうなんだよ、で、この人達は。」


 「はい、ウエス達に脅かされておりましたが、本当は農民だったと言う事


なんです。」


 「じゃ~、あの時、何も言わなかったのではなく、何も言えなかったと言


う事なのか。」


 「はい、申し訳有りませんでした。」


 「いや~、あんた達が誤る事なんかないんだよ、それで、さっき言ったと


思うんだがよ、大事故で死んだのは、全員、ウエスの部下なんだって。」


 「はい、それも間違いは有りません。」


 「だがよ~、何故、もっと早く言わなかったんだ。」


 「将軍、この人達は兵隊が恐ろしいんです。


 彼らは、城でもウエス達の虐殺を見ていたので、恐怖心が先に立ち、直ぐ


には言えなかったんです。」

 

「よし、わかった、其れで、ひとつ聞きたいんだがよ、ウエスが加わったと


言う軍隊なんだが。」


 「将軍様。」


 「オイ、オイ、その様ってのは止めてくれよ、オレは様ってガラじゃ~無


いんだから。」


 「でも。」


 「わかったよ~、好きにしろ、で、話の続きを聞かせてくれ。」


 「はい、私達は、お城で、いつも、兵隊さんを見ておりましたので、兵隊


とは少しは知っておりますが、あのウエスと組んだのは、如何見ても、普通


の軍隊じゃ~無かったと思います。」


 「えっ、何故、其れがわかるんだよ、軍隊ってのはよ、軍服を着てるだろ


うよ。」

 

 「はい、でも、全員が同じ服じゃ無かったと思います。」


 「何だと。」


 ロシュエは、今の今まで、ウエスは、他国の軍隊に入ったものばかりだと


思っていたのだ、其れが、軍服が違うとは、一体、どう言う事なのか。


 「じゃ~、全員が、バラバラなのか。」


 「いいえ、何種類かの軍服だと思います。」


 ウエスは、その軍が混合の軍隊だとわかり、ロシュエ達の農場を攻略すれ


ば、自分は、一躍、上層部の幹部になれると考えたのだろう、だが、現実


は、ウエスの思い通りには運ばない。


 「あの野郎は、この農場を乗っ取る事が出来れば、その軍隊で大幹部にで


もと約束をさせたんだなぁ~、だがよ~、オレ達だって、簡単に引っ込む訳


は無いんだ、だってそうだろうよ~。」


 「はい。」


 「其れでだ、その軍隊ってのは、何人位の兵隊が居るんだ。」


 彼は、少し考えて要る、元々、兵士では無いので人数や武器の種類には関


心が無い。


 「将軍様、はっきりとはわかりませんが、2万人から3万人は居た様に思


うんです。」


 「将軍、何れにしても大軍で有る事に間違いは有りませんので、私達も覚


悟を決め無ければと思います。」


 「うん、其れは、オレもわかってるんだ、だがよ~、その前にだ、あんた


達の仲間で木こりや大工の仕事が出来る人達は何人位居るんだ。」


 「はい、半分は木こりで、半分は大工ですが。」


 「よし、話は簡単だ、誰か、おやっさんを呼んでくれ。」


 「はい、只今。」

 

 若い兵士は大工部隊のところに走って行く。


 「其れでだよ、あんた達全員って事は出来ないんだ、オレ達は、ウエス達


に知られず、この城壁を完成させたいと思ってるんだ、其れで、相談なんだ


がよ~、大工さんを百人ほど、此処に残って手伝ってもらいたいんだがよ


~。」


 「えっ、将軍様、大工を百人ですか。」


 「お~、そうなんだよ。」


 「将軍、お呼びだそうで。」


 大工部隊のおやっさんが飛んできた。


 「おやっさん、実はなぁ~、この人達は、木こりや大工さんなんだってよ


~。」


 「えっ、そりゃ~、大変だよ、でも、その人達全員が此処に残るのは。」


 「いや~、おやっさん、其れは、無理なんだ、全員が此処に来ると、ウエ


スが怪しむと思うんだ、でだ、この人達の中に大工さんが居るんだがよ、百


人だけ、此処に来てもらおうと思ってんだがよ、どうだろうか。」


 「将軍、そりゃ~、我々は大助かりですよ、だって、我々だって本物の大


工じゃないんですよ、本物さんが来てくれりゃ~、百人力、いや、千人力で


すよ、大助かりです。」


 ロシュエは、その男達を見てニッコリとするのだ。


 「で、どうだ。」


 「将軍様、本当に宜しいんですか。」


 「当たり前だよ、だって、本物の大工だったらよ~、技師長の書いた図面


通りの物が作れるだろうからよ~。」


 「はい、其れは、間違いは有りませんが、でも、選ぶとなると。」


 「まぁ~、何も心配するなって、あんたは、ウエスに知られて要ると思う


んだ、それでだよ、選ぶ方法なんだが、ウエス達に知られない様にと言う事


はだ、余り知られていない人達を選ぶんだ。」


 「はい、わかりました、自分達、木こりは全員残ればいいんですね。」


 「済まないよ、後の事は、隊長に任せてだ、今夜はゆっくりとしてだ、明


日の朝にでも戻って行けばいいんだからよ~。」


 「将軍様、本当に有難う御座います。」


 「だがよ、帰っても余計な事は話すなよ、何処で、ウエスの仲間が聞いて


要るかわからんからよ~。」


 「はい、わかりました。」


 「おやっさん、其れでだ、今、農民さんと兵士達が居るだろう、彼らは、


今日で終わり、明日からは、元の仕事に戻して欲しいんだ。」


 「将軍、わかりましたよ、我々も、これで、仕事が一気に進むと思います


からねぇ~。」


 「うん、その通りだ、誰か、この人達をテレシアの所へ。」


 「はい、自分が行きます。」

 

 若い兵士が、彼らを、テレシアの所に連れて行く。


 「其れでだ、今後の事も有るんで、隊長とホーガンは、オレの部屋に来て


くれ。」


 「将軍、わかりましたよ、ウエス達をどんな方法で料理するのかって話な


んですね。」


 「オイ、オイ、ホーガン、オレは、まだ、何も言って無いぞ、だがよ~、


まぁ~、其れに近いかなぁ~、じゃ~、行くぞ。」


 ロシュエの後には、司令官と3人の隊長、それと、ホーガンも一緒に、ロ


シュエの執務室に向かうのだ。


 「兵隊さん、将軍様って、いつも、あの服なんですか。」


 「うん、そうなんだよ、我々は何時もお願いしてるんだ、軍服を着て下さ


いってね。」


 「なんで、軍服を着られないんですか。」


 「将軍はね、農民が、一番、大切だと言われているんですよ、あの服だっ


てね、農民が着てた服を奥様が手直しされているんだ。」


 「えっ、奥様がですか。」


 「うん、そうだよ、将軍の奥様は美しい人だよ。」


 「其れは、当たり前でしょう、だって。」


 「オイ、オイ、当たり前か、だけどなぁ~、今から行くところのテレシア


さんって言う女性なんだけど、この女性も、本当に優しいんだよ、若い兵士


達の母親でも有り、お姉さんでも有る人なんだ。」


 「はい、わかりました。」


 「さぁ~着きましたよ、入って。」


 兵士と数人の農民は大食堂に入って行く。


 「なぁ~、司令官、本物の大工百人が来れば、城壁の内側の作業は進むと


思うんだ。」


 「はい、閣下、私も、その様に思います。


 ですが、ウエス達に知られない様に進めて行く必要が有りますね。」


 「そうだなぁ~、みんな入ってくれ、イレノア。」


 「は~い、準備は出来ていますので、直ぐに。」


 「何時も突然で悪いなぁ~。」


 「いいえ、私に出来る事があれば、どの様な事でも致しますので。」


 「有難うよ。」


 イレノアは、熱いスープとパンを置くと、台所に戻った。


 「さぁ~、みんなも腹が減っていると思うが、今は、これしか用意が出来


ないんだよ、済まんなぁ~。」


 「閣下、私達は、十分で御座います。」


 他の者達も頷くので有る。


 「じゃ~、今から、今後の事を説明するからなぁ~、よ~く、聞いてくれ


よ。」


 司令官達は、スープを飲み、パンを食べながら、ロシュエの話を聞く。


 「最初にホーガン、野盗隊には偵察に行ってもらう事にしたいんだ。」


 「えっ、将軍、オレ達がですか。」


 「うん、そうだよ、だがよ、野盗隊全員じゃないんだ、野盗隊を分隊する


んだ。」


 「将軍、分隊って。」


 「そうだなぁ~、10人前後の人数にするんだ。」


 「何故、分隊が必要なんですか、敵と戦うのに少数じゃ勝てませんよ。」


 ホーガンは、偵察任務が好きでは無い様なのだが、今回の任務は、戦う前


には重要な任務だと言う事がまだ理解出来ないのだろうか。


 「ホーガン、時が来れば戦争になると思うがよ~、お前達もだが、第1、


第2大隊にも同じ任務に入って貰う必要が有るんだ。」


 「えっ、大隊も偵察も行かれるのですか。」


 「そうだよ、ホーガン、軍隊と言う組織の中では、この偵察隊の任務が一


番大事なんだよ、其れでだ、司令官、城の近くに大きな川が流れているの


か。」


 「閣下、あの川は、私の居りました城からは、1日程度の距離が有ります


が。」


 「じゃ~、川は、どの辺りで曲がってるんだ。」


 「はい、これも、1日程、行きますと流れが変わってきます。」


 「わかった、ホーガン、野盗隊は、この城と川の間を中心に偵察するん


だ。」


 「じゃ~、城の裏側って事なんですか。」


 「うん、その様に思ってくれればいいんだ、之はなっ、オレの勘なんだが


よ~、城と川の間に数百人の兵隊が居ると思うんだよ。」


 「将軍、じゃ~、奴らを見つければ。」


 「ホーガン、偵察、特に今回の偵察は、戦をする為に行くんじゃないん


だ、敵軍を知る為の偵察なんだよ。」


 「はい、勿論、其れはわかりますが、奴らが攻撃したらですが。」


 「出来る限り逃げるんだよ。」


 だが、ホーガンの気持ちの中で、敵軍に背中を見せて逃げる事がどうして


も納得出来ないのだろう。


 「将軍、逃げるんですか。」


 「その通りだ、さっきの話だと敵軍は少なく見てもだ、2万は居ると思う


んだよ~、其れにだよ、仮にだ、敵が追いかけてきても、相手が野盗だとわ


かればしつこくは追っては来ないんだ、だがよ、野盗隊では無く、我々の正


規軍だとすると、敵軍は諦めず追いかけて来るんだ。


 そして、一人でも捕虜として捕まればだよ、自白するまで、拷問するんだ


よ、オレは、大嫌いだがよ~、オレはなっ、先日、母親の話を聞いたんだが


よ~、死亡した、ご主人の下に入って助かったんだ、だがな、ウエス達は


だ、死人に槍を十数回も突いて、死体の下に誰か居ないか調べたそうなんだ


よ、ホーガン、お前の気持ちはわかるが、敵軍を知る為には、今度、野盗隊


が行なう偵察任務が、一番大事なんだ、野盗隊が一番危険な任務に就くん


だ、だから、今回は野盗隊が、我々の農場が生き残れるか、鍵を握ってい


ると、オレは、思ってるんだよ~。」


 「将軍、じゃ~、オレ達、野盗隊が、この先の勝敗の鍵を握ってるんです


ね。」


 「うん、その通りだ、ホーガンよ~、今は、一人でも欠けると、この農場


は大変な事になる事は間違いは無いんだ。」


 ホーガン達、野盗隊が、戦争の勝敗の鍵を握っている事は間違いは無い。


 「ホーガン、私もね、実はね、城の裏側を知らないのですよ、私も、閣下


の申される通りだと思います。


 この偵察任務は、野盗隊で無ければ出来ない程重要だと思いますよ。」


 「えっ、司令官は、城の裏側を知らないって、何故、知らなかったんです


か。」


 「其れは簡単な話しですよ、大きな川ですが、城から1日程と言いました


がね、その上流から、流れが少し速くなっているんですよ、ですからね、あ


の川からは、敵軍は来ないと、私が判断したものです。


 ですから、先程も言いましたが、城から川までの事は知る必要が無かった


と言う事なのですよ。」


 司令官は、当時、偵察隊を出し、付近を調べた。


 その結果、城の裏側から上流に向かって2日間と、下流に向かって1日半


までのところは流れが速く、人間は勿論だが、船を出しても渡る事も出来な


いのだ。


 「将軍、よく、わかりましたよ、余計の事を言いまして。」


 ホーガンは、ロシュエに頭を下げるのだ。


 「ホーガン、いいんだよ、頭を下げる必要は無いんだ、それよりもだ、野


盗隊を少人数に分けると言うのはだよ、例えばだ、城の裏側で煙が上がって


いるとするだろう、近づくには馬は必要無いんだ。」


 「えっ、何故、馬が必要無いんですか。」


 「うん、そう思うのは当たり前なんだがよ~、確かに馬の上から見ると


だ、よ~く見えるのはわかるよ、だけど、敵からも発見されやすいと言う事


だ、じゃ~、如何するんだ、ホーガンだったらよ~。」


 「其れは、当然、馬から降りて近づきますよ、だって、誰でもわかる事で


すよ。」


 「うん、じゃ~、馬は。」


 「勿論、一緒に行きますよ、だって、見つかったら、早く逃げろって、将


軍が言ったでしょう。」


 「うん、だがよ、馬ってのはよ、何時、鳴き声を上げるかわからないんだ


ぜ、馬の鳴き声がするって事はだ、馬の側に誰かが、居ると言う事なんだよ


~。」


 ホーガンにすれば、敵軍に見つかると早く逃げる事を考えたのだ。


 「う~ん、じゃ~、どうするんですか。」


 「早く、馬から降りて歩くんだよ、馬は、他の者が見るんだ。」


 「じゃ~、何ですか、一人が、二人分の馬の面倒を見るために残すんです


か。」


 「その通りなんだ、偵察する者は声も出さない、音も立てないで近くに行


き、敵が何人で、武器は、何を持ってるかを調べ、直ぐに戻るんだ。」

 

 「其れで、敵が気付かないって事なんですね。」


 「そうなんだ、軍隊じゃ~、偵察隊は専門の任務なんだ。」


 「じゃ~、見つかった時は。」


 「当然、早く逃げる、それでも、捕まったら、大嘘を言うか、それとも、


何も話さず、拷問に耐えるかなんだ。」


 「大嘘は、オレ達の専門だ、だけど、大嘘がばれたら。」


 「まぁ~、仕方が無い、拷問に耐えて、敵が諦め殺されるまで我慢出来る


かって事だ。」


 「えっ、拷問の後は殺されるんですか。」


 「勿論だ、オレでも、殺すよ、だってよ~、何の為に生かせて行く必要が


有るんだ、捕虜から、敵の情報が入れば、其れでお仕舞いって話なんだよ


~。」


 「将軍、その拷問って、我慢は出来るんですか。」


 「まぁ~、無理だね、其れにだよ、敵の情報はどんな小さな事でもいいん


だ、其れを、聞き出すためには手段は考えないんだ、ウエス達は、死人に槍


を突き刺してまで生きて居る人達を探すんだ、そんな奴らに捕まって見ろ、


どんな方法を使っても白状させられる事になるんだ、だから、早く逃げろっ


て言うんだよ。」


 ホーガンは、ロシュエはまだ知らないのだが、元々は有る城で軍の隊長を


していたので、拷問がどれだけ酷いかは知っていた、鍛え抜かれた軍人で


も、果たして耐える事が出来るだろうか、其れは、到底無理なのだ、例え、


ホーガンが耐える事は出来ても、他の者達ならば耐える事は出来ないのだ


と。


 「だがよ、オレは、奴らの事だ、其れが、野盗だとわかってても、仲間を


拷問に掛けると脅されれば、白状すると思うんだ。」


 「将軍、よ~く、わかりましたよ、オレは、最初、偵察なんて簡単だと思


ってましたが、将軍のお話で、其れが、間違いだと、今、わかりましたよ、


今の話を仲間に言ってやりますよ、今度の任務は、オレ達にしか出来ない任


務だってね。」


 ホーガンは、笑みを浮かべた。


 「じゃ~、次にだ、第1番大隊の任務なんだが、野盗隊は城の裏側の偵察


だがらよ~、1番大隊はよ~、城の正面から見ると左側と言う事になるんだ


が、司令官、この付近はどうなんだ。」


 「閣下、その付近と申されますと、農場から見れば、野盗隊の左なので、


奥と言う事に成りますが。」


 「うん、その通りだ、で、どうなんだ。」


 「はい、その付近ですが、見える範囲は殆ど草原なので、敵軍が隠れる様


な場所は、あっ、有ります。


 遠くの丘を向こう側に下ったところにも森が有りますので、丘の上に立た


なければ、城は常に監視に入れる事は出来ます。」


 「じゃ~、その丘の向こう側に近づく方法は無いのか。」


 「そうですねぇ~、確か、城の周りは林ですので、その林を川の方向に向


かい、川沿いに進めば。」


 「司令官、でも、あの川沿いは、直ぐに見つかってしまいますよ。」


 ロッキー隊長も、司令官と同じ城に居たので。


 「お~ぉ、そうだった、隊長も以前は、あの城に。」


 「はい、其れで、今、司令官の言われた川沿いなんですが、木が少ないの


で、少人数でも見つかると思います。


 私ならば、城の正面が森になっておりますので、一度、森に入り、草原近


くを進みますが、まぁ~、此処も狼の大群が潜んでいる可能性も有りますの


で。」


 「うん、だがよ~、其れは覚悟の上だ、で、その先は。」


 「はい、丘の上からは見えないように進みますが、森と丘の境界線に出ま


すので、其処からは、丘の向こう側ですね、そちらに入れば良いと思います


が。」


 「じゃ~、少し遠回りになるのか。」


 「そうですねぇ~、1日分だと思いますが。」


 「それじゃ~、別に問題は無いんだなぁ~。」


 「将軍、丘を越えると、大きな森が有りますよ。」


 「よし、わかった、少し変更してだ、城から川へも、二組くらい行かせて


欲しいんだ。」


 「では、敵軍が居なければ、野盗隊と合流する事に。」


 ロシュエは、城の周りに敵軍が潜んでいない事を確認したいのだ。


 「うん、其れでだ、オレはなぁ~、野盗隊と二組の偵察隊が城の裏側で合


流すればだ、一応は、城の付近に敵軍が居ないだろうと考えたんだよ。」


 「閣下、敵軍が城に入ってないとすれば、偵察隊は、城で休む事も出来る


と考えておられるのでは。」


 「司令官、実はそうなんだ、だってよ~、この付近には狼の大群がいるん


だぜ、昼間もだがよ、食べ物より、少しでもだ安心して眠る事が出来る場所


が有るか、無いか、其れは大違いだからよ~。」


 確かに、ロシュエの考えたとおりで、夜中、みんなが眠った頃に、狼の大


群の襲われでもすれば、数十人が狼の犠牲になる。


 犠牲者を出さない為にも、城に敵が居ない事を確認したいのだ。


 「はい、其れは当然だと思いますね、昼間に火を使えば煙で発見される可


能性も有りますが、夜になれば、簡単に発見される事は無いと思いますねぇ


~。」


 だが、問題は有るのだ、若しも、敵の大群が城の中にいれば、野盗隊は勿


論、1番大隊も2番大隊も入れば全滅する可能性も考え無ければならない。


 「オレはなぁ~、奴らが、我々が気付いていないと思い、城の中で火を使


ってる思うんだ、だからよ~、城内から煙が出ているとわかれば、全員、引


き上げるんだ。」


 「じゃ~、将軍、偵察は。」


 「ホーガン、城から煙が上がっていると言うのはだ、其れよりも、大軍が


居るって事なんだぜ。」


 「じゃ~、人数は。」


 「そんな事はいいんだ、あの木こりが教えてくれた、2万から3万人を信


用するしか無いんだよ~。」


 「閣下、私は、城に大軍が来るとなれば、我々の作戦も変更する事になり


ます。」


 「そうなんだ、だって、城から農場までは、馬を飛ばせば、直ぐにでも着


く距離なんだよ、オレは、城に居ない事に。」


 「私達もですが、ウエスがどんな話をしたかわかりませんが、何れにして


も警戒だけは怠るなと言う事ですね。」


 ロシュエも司令官も大軍が居ないと確信が出来ないのだ。


 其れは、ウエスが何処で、どの様な方法で敵に知らせるのか、其れが、今


でもわからないと言う事だ。


 「其れでだよ、さっきの話の続きなんだが、1番大隊は、森を抜けて丘の向


こう側まで行って欲しいんだ、その先は、現地に着いてから判断してく


れ。」


 「はい、ですが、丘を越えたところの森も調べるのでしょうか。」


 「うん、そうなる事も考えていて欲しいんだ、それから、2番大隊はだ、


城の正面からそのまま、前の森と、その先までを頼むぞ。」


 2番大隊のオーレン隊長も頷き。


 「其れで、問題はだ、5番大隊の任務は大変だぞ。」


 「はい、将軍、私は、初めから覚悟をしております。」


 「みんな、済まないよ~、其れでだ、今、城壁で警戒任務に就いている中


隊をだ、少し休ませて欲しいんだよ、彼らは、この数日間、神経を相当使っ


ているだろうから、だってよ~、毎日と言ってよいほど、誰かが、馬を飛ば


して来るんだぜ。」


 「はい、その様に、私も考えておりますので。」


 「其れでだよ、城壁造りの現場の警戒とだ、此処の城壁の監視任務の両方


をこなして貰う事になるんだ、特に、ウエス達の居る現場から煙が上がって


いる可能性も考えるんだぜ。」


 「はい、承知しております。」


 ロシュエの言う両方の監視任務は、此れから、何日間続くのだろうか、リ


ッキー隊長は、少し不安を覚えるのだ。


 「今回は、中隊長達よりも、末端の兵士にだよ、十分、理解してもらうん


だよ、で無いと、作戦は成功しない可能性が有るんだ、全員が承知して欲し


いんだ。」


 「はい。」


 全員が返事をする。


 「将軍、其れで、野盗隊も各大隊も、バラバラで行くんですか。」


 ロシュエは、最初、各隊毎に出発する様にと考えていたのだが、この農場


の全員に、兵士全員と野盗隊が隊列を組んで出発する光景を見せようと、其


れは、急に思った。


 「いや、今回の作戦は、この農場の全員が一致団結していると言う姿を


だ、農場の子供達にも見せたいんだよ~。」


 「閣下、では、各部隊ではなく、全員が一斉に出発するのですか。」


 「いや~、司令官、済まんなぁ~、オレの我がままなんだ、オレはなっ、


農場の女性達にも見て欲しいんだ、女性達は、何時も見慣れているとは思う


んだが、1番大隊、2番大隊、5番大隊、其れに、野盗隊がだよ、整然と行


進して行くんだよ、何時もは、バラバラだがよ~、こんな機会は滅多に無い


んだ、其れにだ、兵士達も、見られていると言う意識が有れば、何時もの様


な顔付きじゃ~無く、きりっとした男前の顔になると思うんだよ。」


 「閣下、有難う御座います。


 閣下は、兵士達の姿を農場の皆さんにも見て頂きたいと、私は、全く考え


ておりませんでした。


 隊長達も、兵士達に伝えて下さいね、農場の女性達が見ていますからね、


だらけた姿は駄目ですからね。」


 司令官は、命令では無く、優しい言い方だ。


 「将軍、じゃ~、オレ達が先頭ですよね、勿論だと思いますが。」


 「ホーガン、何時もならば、野盗隊が先頭なんだがよ~。」


 「えっ、じゃ~、オレ達は。」


 「オレはなぁ~、5番大隊がだよ、城門から整列してだよ~、その前を、


1番大隊、2番大隊と、最後に野盗隊と考えてるんだが。」


 「将軍、そりゃ~駄目ですよ、だって、オレ達が最後なんて、とてもじゃ


ないですが、筈かしくて、将軍、お願いですから、先頭に。」


 ロシュエは、ホーガンが先頭に行かせてくれと言い出すと待っていた。


 先頭と言えば、部隊では花形なのだ、ホーガンは、花形を選んだのではな


い、野盗隊は、元々、派手な存在ではなく、ホーガンが言う様に、整然とし


た隊列を組み、みんなの注目を浴びる場所から逃げたいと言うのだろうが本


望なのか。


 「ホーガン、どんな顔して恥ずかしいって言うんだよ、野盗隊は、今回の作戦では、最も、注目の部隊なんだぜ。」


 「将軍、オレ達がですよ、最後に行くとですよ、前の兵隊さんの整然とし


た行進が余計に目立つんですよ、いや、別に行進が嫌だって言うんじゃない


ですよ、でも、なんか最後ってのは、一番目立つんじゃないんですか。」


 ロシュエの思ったとおりだった。


 「わかったよ、ホーガン、じゃ~よ、野盗隊が、1番だ、其れでいいんだ


な。」


 「はい、将軍、オレは、本当の事を言いますとね、そんなところから早く


逃げたいんですよ。」


 ホーガンの本当の気持ちは違っていたのだ、ホーガンは、自分はいいと、


だが、他の隊員は今まで、注目されなかった、だが、野盗隊の最後の花道を


作りたかったのだと。


これを、見た3人の隊長達もわかっていたの。


其れは、ロシュエが考えたのだ、軍隊の出陣では、先頭が一番の花形なの


だ、今回の偵察任務では、野盗隊が最も危険なのだ、ロシュエは、ホーガン


が最初で最後になるかも知れない野盗隊の全員に花を持たせようと考えたの


だろう思ったので有る。


 「では、後は、1番大隊と2番大隊で行くぞ。」


 「はい。」


3人の隊長達もロシュエの気持ちは理解している。


 「将軍、では、私達は、これで失礼します。」


 彼らは、ロシュエに敬礼し、部屋を出て行く。


 「イレノア。」


 「はい、只今。」


 イレノアも、何かを察している様子で。


 「はい、私に、何か、御用でしょうか。」


 「うん、そうなんだ、君も知ってるだろう、今、場外で、大規模な城壁造


りに入っている事は。」


 「はい、承知しております。」


 「うん、其れでだ、農場の女性達は、食事の準備と、洗濯なんかの用事で


多分だとは思うんだが、農地まで手が回っていないと思うんだよ。」


 「はい、私も、同じ様に思っておりましたので、何か出来る事があればと


考えておりました。」


 「そうか、君も同じ事を考えていてくれてたんだ、其れでだ、君は、20


人の女性に声を掛けてだよ、テレシア達の手伝いは出来ないかと考えたんだ


が。」


 「はい、その様な事であれば、私はいつでも。」


 「オレはなぁ~、農場の女性達には、本当に感謝してるんだ、だって、子


供達の面倒も見ながらなんだから大変だと思うんだ、だから、女性達には、


少しの時間でも子供達と一緒の時間を過ごさせてと考えたんだが。」


 ロシュエは、農場の女性達の事も考えて要る、今は、女性達の中からは不


満も出てこない、だが、何れ、不満が出るだろうと、ロシュエは、女性達が


全員の食事を作り、子供達の面倒も見ると言うのは大変だと考えていた。


 「では、私達は、農場の女性達に、少しでも子供達と一緒に過ごせる時間


を作って上げる様にすれば良いのですね。」


 「うん、そうなんだ、君達にも自由な時間が必要だって言うのは、オレ


も、十分にわかっているんだ、だがよ~、今の状態が長く続けば、農場の人


達から不満が出、その為に、この農場が崩壊する様な事にでもなれば、他国


からの攻撃を受ける事にもなると。」


 ロシュエは、何としても、農場だけは守りたいのだ。


 「私達は、この農場の女性達には感謝しているんです。


 皆さんのお陰で、今は、この様に何の不自由もなく、此処で生かせて頂い


ていると、フランチェスカも言っておりました。」


 「イレノア、本当に申し訳ないと思ってるんだ、今は、君達が頼りなんだ


よ、少しの時間だけでも、お願い出来ないかと。」


 「私は、何の異論も有りません。


 今からでも、宜しければ、みんなに声を掛けに行きたいと思うのです


が。」


 「そうか、本当に有難うよ、だがよ、オレの事は何も心配するなよ、オレ


もみんなと一緒でいいからよ。」


 「でも、それでは、私が困ります。


 他の女性が出来るのに、私だけが、させて頂け無いと言うのは、不満でご


ざいます。」


 「イレノア、気持ちだけで十分なんだよ、今はよ~、オレの世話よりも、


みんなの為になっ、お願いだから。」


 ロシュエは、手を合わせるのだ。


 「いいえ、私は、承諾出来ません。


 私は、将軍のお世話も致しますので。」


 イレノアと言う女性は、一度、決めると、ロシュエが何と言っても駄目な


のだ。


 其れは、ロシュエ以上に頑固な女性だと言う事だ。


 「わかったよ、じゃ~、イレノア、オレの事だが、出来る時だけでいいか


らよ~、無理をしなくてもいいんだからなぁ~。」


 ロシュエは、イレノアの機嫌を何とか戻したいと思っている、だが、イレ


ノアは、賢い女性だ、一番、大切なロシュエの世話も出来なければ、その時


は。


 「将軍、私は、将軍の妻なんですよ、自分のご主人様のお世話も出来ない


様な女では有りません。」


 と、きっぱりと言った、ロシュエも、そんなイレノアの気持ちは十分に理


解している。


 「イレノア、有難うよ、だがよ~、本当に無理だけはするなよ。」


 「はい、将軍、では、私は、今からみんなに話しに行って参りますの


で。」


 「うん、よろしく頼むよ。」


 ロシュエは、少し休み、お風呂場に向かった。


 農場の一角に、大食堂と、その横に、巨大な風呂場が作られて要る、この


風呂場での作業は全て子供達に任されている。


 風呂場と言っても、巨大な造りで、大人が、一度に5百人以上も入浴出来


るのだ。


 「よ~、みんな、元気かね。」


 「あっ、将軍だ、みんな、将軍が来たよ。」


 子供達と言っても、下は5歳から、上は、15歳までと決めている。


 「将軍、何か、御用でも。」


 「お~、君か、此処の責任者だったなぁ~。」


 「はい、僕が、一番年上なので。」


 「そうか、そうか、みんなも大変なのに、有難うよ。」


 彼は、一応、風呂場の責任者となっている。


 普通ならば、この年齢だと、農場での仕事に入るのだが、彼は、進んで、


この風呂場の仕事に就いている。


 「今、此処で、仕事に入って要る者は、何人居るんだ。」


 「はい、男女合わせて、5百人ですが。」


 「そうか、5百人を纏めるのも大変だと思うが、何か、必要な物は無い


か。」


 「はい、今は、別に有りませんが、将軍、僕は、父から聞いたんですが、


兵隊さんや、野盗隊の人達、其れに、この農場の人達全員が大変だと。」


 「うん、其れでだよ、君達に話しが有るんだが。」


 「はい、将軍、僕達に出来る事で有れば、何でもしますので。」


 「うん、君も知って要ると思うが、今、場内から城まで続く城壁を造り始


めてるんだがよ~、君が言った様に、農場の全員が参加してるんだ、其れで


だ、此れからが大事な話になるんだがよ~、お風呂を毎日、夕方に入れる様


に出来るか、いや、別にだよ、出来なかったっていいんだよ。」


 「将軍、僕達は、お風呂部隊なんです。


 父もですが、兵隊さん達も、この農場の大人が大変な時に、僕達に出来る


のは、疲れた身体を少しでも休める事が出来るのが、お風呂だと思います、


僕達はやりますよ。」


 彼は、父親から聞いていた、此処に来るまでは、風呂も無く、疲れは簡単


に取れず、其れが、農作業にも響くので、一日を何とか続けるのが、精一杯


だった。


 だが、この農場に風呂場が完成し、たとえ、数日に一度でも暖かい湯船に


浸かると、今までの疲れが飛んで行く様だと。


 「でも、大変だぞ。」


 「将軍、僕は出来ると思いますが、でも、小さな子も居ますので、無理は


出来ません。」


 「やはり、無理だよなぁ~。」


 その時、5歳か、6歳くらいの男の子が敬礼し。


 「将軍、僕のお父さんが言ってたよ、農場の人達も大変だけど、兵隊さん


はもっと大変なんだって、ねぇ~、将軍、なんで兵隊さんは大変なの、僕は


ね、お父さん達が疲れたと言って直ぐに寝るんだ、でもね、お風呂に入った


時はね、あ~あっ、本当に気持ち良かったよ、明日も頑張るぞって言うんだ


よ。」


 「うん、そうだよ、君達が入れた、お風呂に入って、お父さん達も、また


元気になって仕事が出来るんだよ、だからね、君達はね、お父さん達の疲れ


た身体から、また元気を取り戻す為の仕事なんだよ。」


 「じゃ~、僕達の仕事ってとっても大切なんだね。」


 「うん、その通りだよ。」


 「うん、わかったよ、じゃ~ねっ。」


 別の、8歳くらいの女の子も。


 「ねぇ~、将軍、私のお父さんが言ってたけど、農場の人達よりも、兵隊


さんは、もっと大変だって。」


 「う~ん、其れはね、兵隊さんのお仕事はね、君達を狼から守る、大事な


仕事なんだ、農場から外に出ると、狼がたくさんいるんだよ、新しい農場を


造るのにね、狼がたくさんいると造れないんだ、だからね、この農場からお


城まで城壁を造ってね、狼を退治すると新しい農場も出来るんだ、だから、


今は、みんなで協力して早く造ろって決まったんだよ。」


 「将軍が言ったの。」


 「私は、何も言ってないよ。」


 「でも、お父さんが言ってたよ、今までは、将軍に助けられたんだ、だか


ら、今度は、みんなで、将軍を助けるんだって。」


 「本当に嬉しいよ、でもね、君達の仕事も大変なんだよ、だから、みん


な、無理はしないでね。」


 子供達の親は、何時も、我が子に話をして要る、ロシュエは狼の大群と言


ってるのは全くの嘘では無い、この付近には、大きな森が、点在し、狼の餌


となる小動物も多い、だが、人間が、この地に来てからは、狼の餌も少なく


なったのだろうか、いや、狼も知って要る、小動物でも簡単に取れるもので


は無い、だが、人間と言う動物は、逃げ足も遅く、それに、人間は食料を持


って要ると狼が学んだのだ。


 「将軍、僕達もですが、父や母は、何時も言っています。


 この農場には、将軍が一番大切な人物だって、将軍のお陰で、みんなが安


心して生活が出来るんだって、僕も、前のところでは、何時も、狼や、他の


国の兵隊に脅えていたのを覚えていますが、此処では、僕も安心しているん


です。


 だけど、今回だけは違うんだって、僕達も知っています。」


 「そうか、だがよ~、此れから、毎日、お風呂に入れる様にするって本当


に大変だと思うんだ、何か考えでも有るのか。」


 「はい、僕は、数人と話し合ったんです。」


 彼らが考えたのは、どの様にして、お湯を作るかと言う事なのだ。


 「数人って。」


 「一応、僕が責任者と言う事になってるんですが、僕に年齢が近い男女な


んです。」


 「ほ~、其れは、素晴らしい話だ、其れで。」


 「今、農場のお父さん達なんですが、場外で城壁造りに行かれ、農場の仕


事は、母達がしてるんです。


 でも、将軍、誰も、不満なんか言ってませんよ、だって、みんな、将軍の


お陰だって。」


 「オレなんか、何も出来ないんだぜ。」


 「将軍が、この農場に居られるだけで十分だって言ってますよ。」


 「本当にありがたい話だねぇ~。」


 「其れで、僕は、お母さんに相談したんです。」


 「えっ、一体、何を相談したんだよ。」


 「実は、何時も、お母さんが食事を作る時に使う大きな鍋を使ってもいい


かって。」


 「えっ、鍋って、一体、何に使うんだよ、あれは、お母さん達の大切な物


なんだぜ。」


 彼の言う、大鍋を、一体、何に使うのか、ロシュエも考えるのだが、全く


わからない其れは、彼らが、考えての事なのか、正か、その使い道が。


 「でも、暫くは家で使う事も無いって。」


 「だがよ、大鍋を一体、何の使うんだよ。」


 「大鍋で、お湯を作ろうと思うんです。」


お風呂部隊は、お湯の補充する為に、大鍋でお湯を作ろうとは、正かだ。


 だが、一体、何個の大鍋を用意出来ると言うのだろうか。


 「大鍋を使って、お湯の補充をするのか。」


 「はい、今までは、数日に一度、お風呂の用意だったので、今の風呂釜で


十分だったんですが、其れが、農場の全員ですね、勿論、兵隊さんも入れて


なんですが、それだけの人数が入るとなれば、どうしても、お湯は不足する


と思ったんです。」


 「だがよ、一体、何個のお鍋を用意するんだ。」


 「わかりませんが、出来る限り、多く集めようと思ってます。」


 「だがよ、作ったお湯を何処から入れるんだ。」


 「はい、大工部隊に無理を言って、数ヶ所からお湯を流し込む様に作って


頂きました。」


 「そうか、有難うよ、君達には感謝するよ、だがよ、小さな子には無理は


させるなよ。」


 「はい、僕も、色々と考えていますので、事故だけは、注意しようと思っ


てます。」


 「そうか、じゃ~、みんな、お父さんや兵隊さんの為にガンバってくれ


よ。」


 「将軍、僕達は、みんなで考えたんです。」


 「えっ、何を考えたんだよ~。」


 「其れは、秘密です。」


 「なんだよ、言ってしまえよ、そうだ、忘れるところだったよ、明日の


朝、野盗隊と、第1大隊、第2大隊が出撃するんだ、君達も出来ればでいい


んだがよ、兵隊さんを見送りに来てくれないか、野盗隊も兵隊さんもきっと


喜ぶぞ~。」


 「はい、勿論、我々、お風呂部隊も参加します。」


 「じゃ~よ、済まないが頼んだぞ。」


 ロシュエは、お風呂場を出て、農場へと向かう。


 ロシュエの考える様に、今回の偵察任務は大変危険だ、敵軍を知る為だ


が、其れにもまして狼の大群もいる、その場所へと偵察に向かわせる事に、


ロシュエも不安を抱いている、下手をすれば、野盗隊は全滅するだろう、そ


れだけの覚悟は全員が持って要るが、それでも、ロシュエは、此処で鬼にな


るしか無かった。


 誰かが犠牲になる事で、誰かを助ける事が出来るのだと、その誰かとは、


一体、誰なんだ、ロシュエが日頃、兵士達に言っている、その誰かとは、農


民なのだ、農民を助けるのが兵士達の任務なのだ。


ロシュエが、常日頃言っている、其れが、今回の大掛かりな偵察任務なの


だ。


 本当ならば、ロシュエ自身が先頭になり行きたいと願っている、だが、現


実は酷だ。


 「やぁ~、みんな、元気そうだなぁ~。」


 「将軍、一体、如何したんですか。」


 「いや~、何でも無いんだ、みんなが元気か、其れを知りたかっただけな


んだよ、で、代表は。」


 「今、呼んできますよ。」


 「忙しいのに、済まんなぁ~、みんなも疲れているのによ~。」


 「いいんですよ、だって、兵隊さんだって、同じですから、あの人達に比


べりゃ~、オレ達は平気ですよ。」


 「将軍、お呼びで。」


 「お~、済まないよ~、少しみんなにお願いが有るんだ。」


 「将軍、お願いだなんて、水臭いですよ、オレ達は、将軍にお世話に成っ


てるんですからね、なぁ~、みんな。」


 付近に居た農民達は頷き。


 「で、一体、何をすればいいんですか。」


 「うん、実はなぁ~、明日の朝、野盗隊と、第1、第2大隊が出撃するん


だ。」


 「えっ、将軍、其れは本当なんですか、だって。」


 「うん、わかってるよ、だが、之は大切な任務なんだよ、野盗隊も第1、


第2大隊も喜んで行ってくれるんだ。」


 近くの農民達は何も言わず聞いて要る。


 「其れでだ、明日の朝なんだがよ~。」


 「将軍、わかりましたよ、我々、農場のみんなで見送りに行きますんで、


任せて下さいよ。」


 代表もわかっている。


 「じゃ~、済まないが頼むぜ。」


 ロシュエは戻って行く。


 そして、明くる日の朝。


 「イレノア、済まんが、軍服を出して欲しいんだ。」


 「はい、只今。」


 イレノアも、前から、軍服を着るだろうと思っていたのだ。


ロシュエは軍服を着用し、馬に乗り、何時もの場所へと向かうのだ。


同じ頃、司令官も、新しい軍服を着用し、馬に乗り向かっていた。


 「オイ、大変だぞ、将軍も司令官も新しい軍服を着ているぞ。」


 「ホーガン、それだけ、オレ達の任務が大事だって事なのか。」


 「うん、オレも、今は、そう思ってるよ、だって、将軍が軍服を着るなん


て、あの結婚式以来だぜ。」


 「じゃ~、オレ達も、本気でやらないと、みんなに笑われるよなぁ~。」


 「うん、そうだ。」


 「全員、将軍に対し、敬礼。」


 司令官の号令で、野盗隊、第1、第2大隊の全員が、ロシュエに対し敬礼


し、ロシュエも答礼したので有る。


 広場には、農場からも全員が、彼らを見送りに集まっている。


 「只今より、閣下からお言葉を頂く。」


 「みんな、お早う。」


 「将軍、お早う御座います。」


 兵士達も農民達からも大きな声で答えた。


 「みんな、聞いてくれ、野盗隊、第1大隊、第2大隊は、此れから、今ま


でに無い、最も過酷で、重要な任務に行く、本当はオレが先頭になって行き


たいんだ、だがよ~、オレが行って、何の役にも立たないって事は十分わか


っているよ、オレが行く事でだ、みんなに迷惑を掛ける事になるんで、今回


は止めるが、その代わりと言ってなんだが、野盗隊と、第1大隊、第2大隊


が、オレの代わりに行ってくれるんだ、みんな、農場の人達の為に、よろし


く頼むぜ、それとだが、この任務は危険だと思った時にはよ~、此処に戻っ


てくれよ、お前達の中からは犠牲者を出して欲しくは無いんだ、どんな事が


あっても、命だけは大切にするんだぞ、じゃ~、みんなよろしく頼むぜ。」


 ロシュエは、それ以上、言葉にならなかった。


 「只今より、全部隊出撃に向かう、第5番大隊より、出撃開始。」


 司令官の号令で有る。


 「第5番大隊、整列、只今より、野盗隊より、出撃を開始するので、5番


大隊は見送りをする。」


 その時だった。


 「お風呂部隊整列。」


 この部隊のリーダーの号令で、お風呂部隊は、ロシュエと司令官の横に整


列したので、ロシュエや司令官は勿論、野盗隊を初めとする、第1、第2大


隊も大変な驚きだ。


 「我々、お風呂部隊は、この度、出撃される、野盗隊を初め、第1番大


隊、第2番大隊の皆さんに対し、お風呂部隊の気持ちです、行くぞ~。」


 「お~。」


 と、お風呂部隊の子供達は拳を挙げ、大きな声で。


 「では、始める、お風呂部隊の一人は。」


 「みんなの為に。」


 「では、お風呂部隊のみんなは。」


 「お風呂部隊の全員は、将軍の為に。」


 「以上、全員、敬礼。」


 一斉に、ロシュエに敬礼したので有る。


 ロシュエは、驚きも去る事ながら、お風呂部隊の敬礼に対し、答礼をし


た。


 「野盗隊のおじさん、早く帰って来てねぇ~、僕達は、何時でも、お風呂


に入れる様に準備は出来てるからねぇ~。」


 「お~、有難うよ、じゃ~な、おじさん達は行くよ、野盗部隊、しゅっぱ


~つだ、オレ達も、オレ達一人は、みんなの為に、オレ達、野盗部隊の全員


は、将軍の為に。」


 と、言って、手を振りながら、門に向かって行く。


 「ホーガン、早く帰っておいでよ、何時でも、熱いスープとパンは食べら


れる様に作って置くからねぇ~。」


 テレシアは、手を振りながら、涙が溢れている。


 「みんな、早く、帰って来てねぇ~。」


 農場の女性達だ、残る、農場の人達の誰もが手を振り、中には、涙を流す


多くの女性が居る。


 野盗隊の全員が門を出ると、第1番大隊と、第2番大隊が続くのだが。


 「将軍、行って参ります、では、我々、第1番大隊も、我々、一人の兵士


は、みんなの為に。」

 

 「我々、第1番大隊は、将軍と農場の人達の為に。」


 と、大きな声で叫ぶ様に言って、手を振り進むので有る。


 「お風呂部隊は、第1番大隊に対し、敬礼。」


 子供達は、敬礼を続けながらでも。


 「兵隊のお兄さん、早く帰って来て、僕達と遊んでねぇ~。」


 「わかったよ~、早く、帰るから、みんなも頑張れよ~。」


 兵士達も、早く任務を終え、子供達と遊びたいのだ、だが、今回の偵察任


務がどれ程過酷な任務なのか、其れは、現地に行ってはじめてわかるのだろ


う。


 第1番大隊に続き、第2番大隊も、同じ文言を言って、任務地に向かうの


で有る。


 そして、兵士達全員が出撃した後、其れは突然だった。


 「大工部隊集合。」


 おやっさんの号令で、大工部隊が、ロシュエと司令官の前に来た。


ロシュエも司令官予想外だったので、少し驚いた。


 「えっ、なんで、大工部隊までもが。」


 だが、ロシュエも司令官も馬から降りずに居る。


 「将軍、我々、大工部隊も出撃します。


 兵隊さんだけじゃ~有りませんよ、我々の戦場は眼の前に有ります。」


 彼ら、大工部隊の戦場とは、切り出した大木の加工と戦うのだ、ロシュエ


は、何も言わず、敬礼をした。


 「大工部隊の一人は、みんなの為に、そして、大工部隊の全員は、将軍の


為に。」


 と、言って、手を振り、門に向かって行く。


 大工部隊の全員が農場を出た後、ロシュエと司令官は馬を降り、農民達の


元に行き。


 「みんな、本当に有難う、オレは、本当に嬉しいよ、みんなのお陰だ。」


 「将軍、我々、農民だって、兵隊さん、いや、お風呂部隊が言った言葉と


気持ちは同じなんですよ。」


 「うん、其れは、オレもわかってるよ、オレはね、今まで生きて来て、本


当に、こんなに嬉しい事は無かったよ。」


 「なぁ~みんな、オレ達農民だって、こんなに嬉しい事は無いよなぁ~、


オレ達よりも、お風呂部隊に先を越されてしまったからなぁ~。」


 「うん、そうだ、そうだよ、本当だよ、オレ達は、今まで、将軍に助けら


れてきたんだよ、だからって言うんじゃないが、今度は、オレ達が、将軍を


助ける番なんだ。」


 「みんな、本当に有難うよ、だがよ、無理だけはするなよ。」


 「お~、わかってるよ、将軍も無理はするなよ。」


 「あいよ、じゃ~な。」


 ロシュエと司令官は戻って行く。


 それでも、後から、農民達が一斉に。


 「オレ達、農民は、将軍を助けるぞ~。」


 と、其れは、何度も、何度も、聞えてくるのだ。


 「閣下、おめでとう、御座います。


 何時も、閣下が、兵士達に申されておられました、兵隊は、農民を助ける


のが任務だ、ですが、今回は、どうやら、風向きが変わった様で御座います


ねぇ~。」


 「いや~、オレも驚いたよ、昨日、お風呂部隊のリーダーは、秘密だと言


ってたが、正か、その秘密が、あの文言だったとはねぇ~。」


 「閣下、これで、閣下が目標とされておられます、農民と兵士達が団結し


たと言う事で御座います。」


 野盗隊と、第1、第2番大隊は、門を出た、その後、3大隊は、城までの


中間地点まで、一緒に進む事になり、その後、野盗隊は、城の裏側へ、第1


番大隊は、城よりも、先の森を目指して、第2番大隊は、城の正面前方の森


に向かう為に分かれて行く。


 その偵察任務は大きな危険を伴う事になるのだろうか、それとも、偵察任


務が成功するのか、今は、誰も知る事が出来ない。


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