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闇の帝国    作者: 大和 武
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 第 26 話。 向こう側にも人は住んで要るのか。

 山賀のお城の北堀では鉄になると言う土を掘り出す作業が連日忙しく行われており、正太は最も中心的な人物で有る。


「正太さん、今いいですか。」


「鍛冶屋さん、何か起きたんですか。」


 正太は誰かが訪ねて来ると必ず事故か、問題が起きたと考える、其れが今の正太に与えられた最も重要な役目で有る。


「別に無いんですがね、わしも鍛冶屋としての面子が有りますんで、其れよりも少し聴きたいんですが。」


「何ですか、オレも全部は知らないんで、まぁ~知ってる事だったら何でも話しは出来ると思うんで。」


「だったら聴きたいんですが、わしらが作ってる鉄の板ですが、何に使うんですか。」


「何に使うって、オレが源三郎様に聞かさられた時には、今山賀以外の国に有る洞窟で造ってる潜水船を補強する為に船体の外側に着ける鉄板って聞いたんだけど、其れが何か。」


「その潜水船って大きな船なんですか。」


「オレも実物は見た事は無いんですが、長さが半町近くも有るって。」


「えっ、半町近くも有るってそんな大きな船を造ってるんですか。」


「そうなんだ、其れも一隻や二隻じゃ無いって言われた様に思うんだ。」


「へ~そんな大きな船の外側に付けるのか。」


「正太さん、どうかされましたか。」


「若様。」


 若様は全てを正太に任せて要るのでは無く、必ず何処かの現場に出向いており、現場の声を直接聞く事で今の状況を把握する為で有る。


「鍛冶屋さんが来ておられるとは何が有ったのですか。」


「鉄の板を何に使うんですかって言われるんですが、オレが知ってるのは山賀以外の国に有る浜の洞窟で造られてる潜水船の補強材って聞いたんですが。」


「ええ、正太さんの言われて要る通りですよ、其れが何か。」


「正太さんの話しじゃ船の大きさが半町も有るって、でも今わしらが作ってる鉄の板は小さいんですよ。」


「其れも仕方が無いと思いますよ。」


 鍛冶屋は今の鉄板は小さいと言うが、小さな鉄板しか作れないと知っており仕方が無いと思って要る。


「だけど半町も有る大きな船の外側に付けるんだったらもっと大きな鉄の板が要ると思うんですが。」


 以前から鉄の板が小さいと分かっていたが現実を見ると今の装置ではこれ以上大きな鉄の塊を作り出す事は無理で、例え大きな塊を作り出したとしてもどの様な方法で引き延ばすのかその方法が分からない。


「鍛冶屋さんの言われる事は私も理解しております。

 ですが、北の掘りに有るものでは今の塊が限界なんですよ、其れにですよ、若しも大きな塊を作り出す事が出来たとしても一体どの様な方法で大きな塊を引き延ばすのですか、鍛冶屋さんが大きな金槌で打つのですか、大きな塊を引き延ばすと言っても一体何回打てば鉄の板になるのですか、一千回ですか、いや一千回や二千回では出来ないのでは有りませんか、私もね鍛冶屋さんのお気持ちは痛い程分かりますので何とかしたいとは思って要るのですがねぇ~、其れが今は出来ないのです。」


 若様も出来るならば大きな塊を作り出し、大きな鉄の板を作りたいとのだ。


「若様も分かってられるんですよ、オレも若様の気持ちは知ってるんですよ、オレだってもっと大きな鉄の板が作れないかって考えてるんですが、其れが今は無理なんですよ。」


「そうだったんですか、わしは誰も考えて無いって一人で思ってたんで、若様、申し訳無いです。」


 鍛冶屋も若様も何か方法は無いか考えて要ると知り、頭を下げた。


「鍛冶屋さんが何も謝る事は有りませんよ、私も考えて見ますので鍛冶屋さんも何か良い方法は無いかを考えて頂きたいのです。」


「若様も考えてられるって言われますが、ですが一体どんな方法が有ると思われるんですか、わしら鍛冶屋にも面子ってもんが有るんです。

 鍛冶の仕事が専門で、そのわしが何日も考えても分からないんですよ、怒られる覚悟で言わせて貰いますが、若様は素人ですよ、素人が一体何を考えられるんですか。」


 若様は別に怒る様子も無く、寧ろニコニコとしており、其れが余計不気味に感じる鍛冶屋と正太だ。


「ねぇ~、若様は何でニコニコとしてるんですか、オレは全然理解出来ないですよ。」


「其れはねぇ~、義兄上の心境が今頃になって理解出来る様になってきたんですよ。」


「えっ、義兄上様って源三郎様の事ですか。」


「ええそうですよ、義兄上はねぇ~、何時も誰に対しても、私は何も知りませんので教えて下さいって申されるんですよ、確かに鍛冶屋さんの申される通りで私は素人ですよ、ですがねぇ~そんな義兄上は素人と思えない程に次々と思い付くと申しますか、考えられた事は鍛冶屋さんの様に玄人でも思い付かない方法で次々と難題を解決されて要るのです。


 私は鍛冶屋さんの申される通り素人ですよ、ですがそんな素人だから誰もが考え付かない様な事を考えられるとは思われませんか。」


「なんだか分かりませんが、若様の言ってる事が分かる様な気になって来ましたよ。」


「うん、本当だ、わしも若様が言われるのが本当かも知れないと思うんです。

 素人だから飛んでも無い方法を考え付くかも知れないって、今になって思います。」


 鍛冶屋も正太も若様の話しに納得した様だが、果たして若様はどんな方法を考え付くのだろうか。


「其れで先程のお話しに戻りますが、鍛冶屋さんが考えられる鉄板に厚みと大きさですが一体どれくらいにすれば良いと思われますか。」


「えっ、そんなの突然言われてもわしも分からないですよ。」


「何故ですか、鍛冶屋さんは日頃から考えておられるのでは無かったのですか。」


「其れは勿論考えましたが、ですが鉄の厚みとか大きさなんて、わしは其処までは考えて無かったんです。

 ただ今の様な小さな鉄板だったら一体何枚の鉄板が要るのかなぁ~ってただそんな事を考えてただけでして。」


 やはりだ、鍛冶屋の事だ、ただ漠然とした考えで大きな鉄の板を作るには大きな鉄の塊を打たなければならず、其れよりも鉄板の厚みが均等にならないとその不安が有ったのかも知れない。


「ではお聞きしますが例えば一尺四方の鉄板を打つとなれば鉄の板は均等に作る事は出来ますか。」


「其れは勿論で、例え薄い板でも少ない枚数だったら鍛冶屋だったら誰でも出来ますんで、其れで聞いたんですが潜水船の大きさが半町も有るって言うんですよ、そんな大きな潜水船が山賀以外の国の洞窟で造られてるって、じゃ~一体何枚の鉄板が要るんだって思ったらわしら鍛冶屋は大変だと思っただけなんです。」


「其れは私でも同じ気持ちになりますよ、義兄上の考えでは十隻以上の潜水船を造る必要が有ると申されておられますよ。」


「え~十隻以上も潜水船を造るんですか、わぁ~大変な事になったなぁ~。」


 鍛冶屋は諦めとも取られる溜息混じりの声を上げた。


「まぁ~まぁ~鍛冶屋さんも溜息を付かないで下さいよ、私達は何も鍛冶屋さんだけにお願いする事は有りませんので、私も含め正太さん達にも考えて頂きたいのですが、正太さんは如何ですか。」


「えっ、オレ達にもですか、オレ達にそんな頭は無いですよ。」


「正太さんには悪いですがね頭が良いから考え付くとは思わないんですよ、其れは私もでしてねぇ~、何時も松之介は頭が悪いって姉上には散々言われてきたんですよ。」


「えっ、若様は頭が悪いって雪姫様に言われたんですか、そんな事絶対に無いですよ。」


 正太は手を振り言ったが。


「何故ですか、私も自分で頭は良いとは思っておりませんよ。」


 傍では鍛冶屋が笑いを堪えて要る。


「正太さんも笑っていいですよ、今の話は本当ですからね、嘘だと思うんでしたら今度姉上に聞いて貰ってもいいですからね、其れよりも正太さんも全員に言って欲しいんです。」


「オレもみんなに話して見ますが、あんまり期待はしないで欲しいんです。」


「まぁ~ねぇ~、私も最初からうんこれだと言う様な素晴らしい提案が有るとは考えてはおりませんよ。」


「そんなぁ~、其れだったらオレ達には期待出来ないって事なんですか。」


 若様は大笑いするが。


「いいえ、その様な事は有りませんよ、私が言いたいのは、私を含め全員が横一線だと言う事なんですよ。」


「だったら何でもいいんですか。」


「勿論ですよ、私はねぇ~どんな方法が提案されるのか其れが一番楽しみなんですよ。」


「そうか、だったらオレも真剣に考えるとするか。」


 正太も真剣に考えると言うが。


「其れだったら城下の人達にも知らせたらどうですか。」


「そうですねぇ~、今の様な提案が出る事を私は願って要るんですよ、分かって頂けましたか鍛冶屋さん。」


「そうかなるほどなぁ~、わしは今何も難しい事なんか考えて無かったんで、同じ考えるんだったら城下の人達にも入って貰ったらいいんじゃ無いかって思っただけなんですよ。」


「其れなんですよ、だからさっきも言いました様に余り難しく考え無い方が良いと思うんですよ。」


 鍛冶屋もやっと理解したようで有る。


「オレ今からみんなに話してきますよ。」


 正太は何か嬉しそうで、其れが一番だと若様も嬉しくなった。


「宜しゅう御座いましたなぁ~。」


 吉永も若様の決断が余程嬉しかったのだろう、一安心だと言う表情をして要る。


「ですが、私はあのように申しましたが本当の事を申しますと、鍛冶屋さんが申されました様に鉄の塊が余り大きくなると鍛冶屋さんには大変な苦労をお願いしなくてはならないと考えて要るのです。」


「源三郎殿は今より更に大きな潜水船が必要になるで有ろうと申されておられますよ。」


 確かに今よりも更に大きな潜水船が必要になると考えて要るだろうが、官軍が鉄の軍艦を建造して要ると言うのに、連合国は今だに木造の潜水船を造っており、その様な官軍と果たして同等の、いや官軍の軍艦と対等に戦う事が出来るだろうかと吉永も疑問に思って要る。


「私も義兄上から伺っておりましたのでして、何としても大きな鉄板を作りたいと考えて要るのですが、今の方法ならばとてもでは御座いませんが不可能に近いのです。」


 確かに鍛冶に関しては全くの素人で、素人だから誰もが全く考えもしないような提案が出るだろうと考えて要る。


「鍛冶のあんちゃん。」


「技師長か一体何処に行ってたんですか。」


「さっきまでお城で工藤さん達と話してたんだ。」


「えっ、工藤さんって駐屯地のか。」


「そうだよ、其れでね、一尺四方の鉄の板が要るんだけど。」


「えっ、一尺四方の鉄の板が要るって、だけど一体何を作るんだ。」


 浜の鍛冶屋は潜水船に使う鉄の板だと思って要る。


「頭に被せる物と胸に当てる物を作りたいんだ。」


「その作りたい物って、だけど潜水船と何か関係でも有るのか。」


「今は全然関係が無いんだ。」


「潜水船と関係無いって、だけど何で関係無い物を作るんだ。」


「前にオレとあんちゃんが江戸に行くって言ってた話しだけど。」


「あ~知ってるよ、だけどあの時幕府軍の残党か野盗か知らないけど襲われて、でも兵隊さんのお陰でげんたの命が救われたって聞いただけど。」


「そうなんだ、其れでさっき工藤さんと吉田さんに話を聞いたんだ、工藤さんが集められた兵隊さん達は幕府軍との戦では戦死者は一人も出て無いって、だけどあの兵隊さんは熊源さんって言うんだけど、熊源さんが最初の戦死者って聞かされたんだ。」


「えっ、今の話が本当だとすれば大変な事だぜ、げんたが考える物は若しかして兵隊さんの命を守る為に必要な物なんだな。」


「其の通りなんだ、あんちゃんの話では幕府はもう崩壊するって、でも幕府が崩壊しても官軍は残るんだ。

 オレは官軍と戦になれば連合国の兵隊さんからも大勢の戦死者が出ると思うんだ。」


 げんたはその後、駐屯地を訪れ中隊長や小隊長から聞いた話しをすると。


「う~ん、其れにしても兵隊さんって大変だなぁ~、オレ達の、いや連合国の人達の為にって物凄い訓練をしてるんだなぁ~。」


「そう思うんだ、オレもだけど城下の人達は兵隊さんが命懸けで守ってくれてるって事なんか誰も知らないと思うんだ。」


「オレもだ、今までは幕府との戦も見た事も聞いた事も無かったからなぁ~、でも源三郎様から何度も聞かされたけど今までは実感として感じた事も無かったからなぁ~。」


「オレもあの時が初めてであんなに恐ろしい事も初めての経験なんだ。」


「なぁ~げんた、いや技師長オレも手伝うよ。」


「いや今はいいんだ、オレは考えながら作りたいんだ。」


「よ~し分かった、技師長の好きな様に作ればいいんだ、まぁ~何か分からない時には聞いてくれ。」


 兵士の命を守る為に鉄兜と胸当てを作る為早速鍛冶屋の仕事場で作業を開始した。


 一方、山賀の山向こう側で幕府軍の残党と思われる五十人程の侍が要る。


「お~い戻って来たぞ。」


「で、どうだった。」


「漁師に聞いたところでは、あの山の向こう側は直ぐ海で大勢の人間が住める様なところでは無いと。」


「え~其れでは一体何処に行けば良いのだ。」


「そうだ、我々は。」


「まぁ~少し話しを聞いて下さい、確かに漁師の話しでは山から直ぐ海だと、ですが誰一人として山の向こう側に行っていないのは確かです。」


「何だと、今の話では山の向こう側に行った事は無いと、では何故山の向こう側が直ぐ海だと分かるんだ。」


「漁師の話では高い山には狼の大群がおり誰も山には登らないと言うのです。」


「誰も山に登った事が無いだと、其れで何故狼の大群が要ると分かるんだ。」


「拙者も同じ様に思ったんで聞いたんですが、この付近では大昔よりの言い伝えで高い山にも物凄い数の狼が住んでおり、其れに山で獣を追う猟師からも同じ話しを聞いたのです。

 夜になると其れは物凄い数の遠吠えで山の近くに住む人達は狼の遠吠えで夜もろくろく眠れないって言うのですよ。」


「では我々の行き場が無いと申されるのか。」


「確かに井川殿の申される通りですが、ではお聞きしますが、官軍相手にどの様な戦法をお考えなのでしょうか、私は今の人数で突撃すれば全滅する事は間違いは無いと思うですが如何で御座いましょうか。」


「う~ん。」


 と、井川は腕組みしたまま黙り込んだ。


「なぁ~其れよりも我々はこの間々戦い続けるのか、拙者は。」


「高田殿は一体どうしたと言うのだ急に。」


「この戦を続けても全く意味が無いと思うんだ、確かに我々は侍だ、だけど我々の藩は官軍の為に完全に壊滅させられ、其れにだ今更どんな顔して国に帰れと言うんだ、例え家族の、いやご城下の誰かが生き残っていたとしてもだ一体誰が我々を覚えて要ると思うんだ。」


「そうだなぁ~、確かに高田殿の申される通りかも知れないなぁ~、拙者もあの惨状を見ると藩の仲間や家族が生き残って要るとはどう考えても思えないんだ。」


 その後、彼らもお互い何を考えて要るのかを話し合ったが勿論何の解決策も出ず、今は何を考えても絶望的で、かと言って狼の大群が住む山を越え新しい世界に向かうと言う決断も出せない。


 その後数時は誰もが発言せず沈黙が続き、やがて太陽が西の山に沈む頃。


「拙者は思い切って山を登る事にします。」


「えっ、今何と申されました、相川殿は狼の大群が住む山に登られるですか。」


「はい、私の両親は既に他界しており、今は誰も残ってはおらず国には何の未練も御座いませぬ。」


 若い相川と言う侍は故郷に帰る事を断念し、狼の大群が住むと言う山を越え新しい世界に飛び込むと言う。

 確かに狼の大群が住む山を越えると言うのは大きな危険を伴うのは間違いは無い。

 だが今更何も無理して官軍と戦う必要も無いと考えて要る。


「漁師達の話では山には狼の大群が住んで要るのですよ、山を越えると言うのは大変な危険を伴うのでは御座いませぬか。」


「勿論拙者も承知致しております、ですが狼の大群が必ず拙者を襲うとは限りません。

 ですが官軍と戦えばまず生き残れると言うのは不可能だと考えたのです。」


「確かに相川殿が申される事も分かりますよ、其れに兵藤殿が申される事も理解出来るのですが、でも相川殿は高い山を越える為に方策でも考えておられるのですか。」


 彼は相川と兵藤の言う事も理解で来ると、其れならば相川が狼の大群が住むと言う山を越える為の方策でも有るのか、良い方策ならば山を越える事で若しかすれば官軍からは逃げれる事で生き残れるので有ると。


「私は正直申しまして何の策も考えてはおりません。

 ただ山には我々の身の丈を越える熊笹が有り、私は着物を裂いて手や顔を覆い隠せば手や顔は熊笹で切り傷を付ける事も無ければ狼に気付かれる事も無く山を越える事が出来るのではないかと、ただ漠然とその様に簡単に考えただけの事でして、其れ以上深くは考えてはおりません。」


「相川殿は今のお話しを何処で聞かれたのですか。」


「私は昔祖父から聞いた様に思っております。

 私がまだ幼い頃だった様に思うですが、森に住む獣は傷付いた他の獣の餌食となり、其れが森の中では日常の出来事で、毛皮の獣でさえも傷を付ければ生き抜く事は至難で、我々の身体には獣の様な毛皮も無く、特に狼は人間が傷を受け血を流して要ると知れば、二足の人間が四足の狼から逃げる事は不可能なのです。

 ではどの様にすれば熊笹から傷を付けずに済むのか、其れが着物を裂き顔や手に巻けば身体に傷を付ける事も無いかと考えたので御座います。」


 相川は祖父から聞いたと言う狼から身を守る為の方策を話した。


「確かに相川殿の申される通りだと思いますが、若しも、若しもですが狼の大群に襲われたならば我々は一体どの様になると考えられますか。」


「其れは間違い無く狼の餌食になる事は間違い御座いませぬ。

 私は其れも運命だと諦め狼の餌食になる前に自害致します。」


「相川殿、何故で御座いますか、折角此処まで逃げて来られたのですよ。」


「私も其れは十分承知致しております。

 確かに官軍の連発銃に撃たれれば簡単にと申しますと語弊が有るかも知れませぬが、戦死する事は簡単で、ですが狼に襲われたとなれば足や手を牙に噛まれ、其れこそ苦しみながら死んで行くのです。

 私は同じ死ぬのならば自害する事で苦しむ事も無く死ねると思っただけの事なのです。」


 同じ死ぬので有れば自害すると、例え狼の餌食になったとしても苦しむ事も無く死ぬ事が出来ると言う。


「う~ん、確かに相川殿の申される通りだ、拙者は何としても生き抜いて、そうだ相川殿の申される方法で明日にでも山に登ります。」


 と、一人が言うと、その後は。


「よ~し拙者も参りますぞ。」


「私も参ります。」


 と、次々と名乗り上げ、暫くすると全員が高い山を登ると言う、彼ら五十名の侍は相川が言う方法で顔や手に着物を端切れにし巻いて行く、夜は官軍に発見される事を恐れ火も起こさず、更に狼の遠吠えに身体は震えが収まらず、ただ只管に夜が開けるのを待った。


 そして、夜が明けると侍達は山を登り始め、二時が、いや二時半が過ぎた頃要約山の中腹まで来た。


「おい、あれは若しかして、うんあれは狼の動きでは無いぞ。」


「確かにだ、どう見ても人間が登って来た様だなぁ~。」


 連合国の猟師数名が山の向こう側から登って来る者達を発見した。


「よ~し暫く様子を見てからだ。」


 その後、猟師達は潜み侍達の動きを監視し一時が経った頃。


「よ~しわしが話しをするから、市蔵は人数と武器を、其れと他の者は何も言わずにな。」


「うん、分かったよ。」


「じゃ~行くぞ。」


 と、猟師達は何食わぬ顔で侍達の方へと向かい。


「あれ~お侍様は一体何処に行かれるんですか。」


 侍達は突然現れた猟師達に大変な驚き様だ。


「えっ、何故猟師が。」


「お侍様、わしらは下の村の猟師でして、ですがお侍様は何処に行かれるんですか。」


 相川達は暫く何も言わずに要ると。


「お侍様は山の向こう側に行かれるんですか。」


「えっ、何故其の様な事を聴くんですか。」


 侍達は正か猟師が官軍の者では無いかと思ったのも無理は無く、侍達の行き先を聴き出す方法だ。


「お侍様、わしらは何も知りませんが、此処の山を登ると言う事は向こう側に行くと思ったんで。」


「確かに猟師さんの申される通りで、我々は向こう側に行きたいのですが、山の向こう側どの様になって要るのですか。」


 やはり猟師の思った通りで、だが侍達は幕府軍の様子でも無く、かと言って野武士では無い。

 では一体何者なのか、猟師達は何の目的で山の向こう側に、其れは連合国に入ると言う事に成る。


「わしらも本当のところ山の向こう側がどんなところなのか全然知らないんですよ。」


「えっ、ですが猟師ならば山の向こう側も知っておられるのではないのですか。」


「この付近の山には狼の大群がおりますんで、幾らわしらが猟師でも狼の大群だけは相手にしたくは無いんですよ。」


「今、狼の大群が要ると申されましたが、二百か三百頭くらいでは無いのですか。」


「飛んでも有りませんよ、三千か、いや五千かわしらは一万頭以上が住んでるって思ってるんですよ。」


「えっ、正か一万頭以上の狼が要るとは全く知りませんでしたよ。」


「相川殿が申されました方法が良かったのですねぇ~。」


「確かに其の通りだ、拙者も相川殿の申された方法が我々の命を救って要るのだと思いますねぇ~。」


「何ですかその方法って。」


 猟師達は侍の姿を見た時に分かっていた、だが知らぬ顔で聞いた。


「猟師さん、其れはですねぇ~。」


 と、その後、相川が説明すると、彼らは幕府軍でも無く、さりとて官軍でも無く、むしろ官軍の攻撃を受け城下は焼き払われた被害者と言う立場かも知れない。


「猟師さん、この山を越えると一体何処に着くのでしょうか。」


「さっきも言いましたがわしらも本当に知らいないんですよ。」


「う~んだが何としても山を越えねばならないのですが。」


 彼らの顔には悲壮感が現れ、いや其れよりも深刻な表情をし此処まで生き永らえて来たのだと、猟師達も暫く考え。


「わしらは何とも言えませんが、この付近は海からの潮風で人間の臭いが狼に知れずに済むと思うんですが。」


「今何と拙者の聞き違いかと思うんだが、潮風で我らの臭いが狼に知れないと。」


「はい、わしら猟師も海からの風が強く吹く頃だけは少しですが安心出来るんです。」


 猟師達は侍達の悲壮感を漂わせた表情に根負けしたのか、其れとも別の考えが有ったのだろうか、運が良ければ助かるかも知れないと言った様にも聞こえる。


「では我々は別の国に着けると申されるのか。」


「但しですよ、わしも何とも保証は出来ませんので其れだけは分かって欲しいんで。」


「分かりました、ではこの間々進めば良いのですか。」


「はい、でも今日はもう遅いんで明日の朝登った方がいいですよ。」


「そうか、我々にも少しだが希望が湧いて来ましたぞ、拙者は何としても生き残りたいので猟師さんの申される通り明日の朝山を登りますぞ。」


「私も同行させて頂きます。」


「拙者もだ、だが其れにしても夜中になれば狼に襲われるかも知れいないが、何か良い策でも御座らぬか。」


「わしら猟師は木に登って夜が明けるのを待つんですよ。」


「えっ、木に登ってと申されると眠る事は出来ないのでは御座いませぬが。」


「そんなの平気ですよ、狼に襲われたら命は亡くなるんですよ、餌食になるくらいだったら木に登って夜明けを待つ事なんか何とも無いですから。」


 猟師の大嘘に侍達は見事に騙され。


「よし拙者は木に登りますぞ。」


 と、その後は狼の夜間攻撃を避ける為に木に登り夜明けを待つ事に賛成した。


「わしらもこれから下りますので。」


「左様ですか、貴方方も無事ご家族の元に戻れますように。」


「はい、じゃ~わしらは行きますのでお気を付けて下さいませ。」


 猟師達は侍達から離れ家族の元へ戻る為山を下り始めた。


「我らは相川殿の申された方法で此処まで登って来られたのです。

 拙者は今後も相川殿が考えておられる方法にお任せしますぞ。」


「拙者もだ、我々が考え付かなかった方法で此処まで来られたのですからねぇ~。」


 だが相川は困惑して要る、彼は侍達の中でも一番の若手で自分よりも年齢が上の者が果たして言う事に賛同して貰えるとは考えもしなかった。


「相川殿、貴殿は拙者寄りも年齢も若い、だが其の様な事は考えずにどの様にすれば我々全員が生き残れるのか方法を考えて欲しいのだが、皆様方は如何お考えでしょうか。」


 彼は侍達の中でも最も信頼される人物で、その人物から中心人物として推薦されると言う事は相川の肩に全員の命を預けられた、相川にとっては大変な負担で、だが相川が考えるよりも他の者達が賛成し、今後は相川が提案した方法で何としても現在の難局を乗り越えたいと他の侍達の思惑が合致したので有る。


「皆様方、私は若輩者で御座います。」


「のぉ~相川、貴殿は若輩者だと申されるが、貴殿が考えられた方法で我らが高い山の中腹まで来られたのは間違いは無いのですぞ、拙者は貴殿よりも年齢は上だが、年齢が高いと言って良い方法を考え付くものでは無い、更にだ我らが賛同したのだから何も心配される事は無い。

 拙者は何も若輩者だからと言って貴殿の申される事に反対するものでは無い。

 其れよりもだ我ら全員が生き延び官軍の悪行を世間に知らしめる事が出来れば、我が領内で虐殺された者達への復讐にもなると考えて欲しいのだ。」


「そうだ、相川殿、貴殿は我々年配者が若輩者の話しを全て反対すると思って要るだろうが、我々年配者も馬鹿では無い。

 拙者も実を申すとあの時思った、何としてでも無念の死を遂げられた方々の怨みをどの様な方法を取ってでも仇を討ちたいと密かに考えていたのだ。」


「えっ、今何と申されましたか、市川殿は正かとは思いますが官軍相手に敵討ちを考えておられるので御座いませんか。」


「えっ、正かお主も考えておられたのか。」


 官軍相手に敵討ちを考えて要るのは何も市川一人では無かった。


「相川殿が申されておられる方法は何としても生き残る為で大昔から我々武士は親兄弟が無念の死を遂げ、更に相手が一人か若しくは数人ならば主君より仇討ちを許可するとの書面を頂き仇討ちも可能ですが、今度の相手は官軍と言う今までに無い強敵、いや軍隊に仇討ちを考えておられると思ったのです。」


「正か相川殿がその様な事を考え生き残ると考えておられたのですか。」


 相川は何も答えず要る。


「各々方、実を申しますと拙者も相川殿と同じ事を考えておりました。」


 彼は藩内では何も重鎮では無い、だが上は重臣から若い家臣までも信頼が厚い人物だ。


「まぁ~まぁ~相川殿、何もこの場で否定される必要は御座らぬ、確かに我々の目前でお城は炎上しご城下でも同じで、更に正かとは思ったが領民までもが虐殺され民家には次々と火を点けられ、何も相川殿だけで無くても犬死覚悟で官軍相手に戦を挑むのは無謀だと思う、だが相川殿は密かにその無謀な戦を一人で考えていたと思うのだ、だが相川殿、拙者もその無謀な戦に加担したいのだ、いやさせて頂きたいのです。」


「大川様、私はあの時決心したので御座います。

 我々武士とは全く関係の無い領民までもあの様に無残な姿にする必要も無いと、何故に官軍は其れまでして領民までも虐殺する必要が有ったのだと考えたので御座います。」


「そうか、相川殿はあの時既に覚悟しておられたのか。」


「大川様、実は拙者もで御座いました。

 ですが敵軍は官軍でその官軍は大軍でしかも我々が今まで見た事も無い強力な鉄砲を用い、聴くところに寄りますと幕府軍は火縄銃と旧式の戦法でその様な官軍相手に果たして何が出来るのかを考えておりました。」


「拙者は無念でなりませぬ、何故、罪の無い女子供、其れに領民までも死なせる必要が有るので御座いましょうや、拙者は何としても官軍に我々武士の意地を見せ、例え其れが犬死だと言われても良いのです。

 一人でも二人でも殺さなければ天国に参った時、妻や子供に合わす顔が御座いませぬ。」


 侍達は涙を流しながら、例え其れが犬死だと言われようと一人でも多くの官軍兵を殺さなければ武士の意地が、いや天国にも地獄にも行けぬと言う。


「う~ん。」


 と、大川は腕組みし考えるが、当初より犬死覚悟で官軍に戦を挑むつもりで有った。


「のぉ~相川殿、拙者は何もお主に責任を被せるつもりなど毛頭無い。

 お主もだが我々も官軍相手に戦を挑んで要る、お主は若輩者だと申すが、我々では思い付かぬ事を考え、其のお陰で我々は今山の中腹まで来られたのだ、この先もお主の奇策で我々を安全な場所へ、そして、官軍相手に一泡噴かせてやろうでは無いか。」


「そうですよ、我々は幕府にも何ら恩義は受けていないと私は考えて要るのです。

 幾ら幕府が横暴だとしてもあの様に領民の女子供まで含め全ての人達を殺し、家の中に閉じ込め家事焼き払うとは思いもしなかったのです。

 拙者は何としても一人でも多くの官軍兵を殺さなければ腹の虫が収まらないのです。

 大川様が申されます様に官軍に一泡吹かせる戦に拙者も加わらせて頂きたいのです。」


「拙者もで御座いまして、拙者はあの時、何も出来なかったのが今でも悔しく夢にまでも出て来るので御座います。

 拙者は奴らに一泡、いや二泡も吹かせてやりとう御座います。

 拙者は何も犬死だとは考えておりませぬ、大川様が先頭になって頂けば皆が付いて行く事は間違いは御座いませぬ、大川様、皆様方、是非ともやりましょう。」


 この後も、彼らは官軍に対し全滅覚悟で戦に臨むと、全員が官軍と一戦を交えると、大川は暫く考え。


「皆様方、よ~く分かりました、拙者は先程から皆様方のお話しをお伺い致しておりましたが皆様方の熱意に負けました。」


「大川様、ではお引き受け頂けるので御座いますか。」


「相川殿、これからが大変ですぞ、皆様方もこの山を登り切っても果たして我々が思う様な土地に辿り着けるのか全く分かりませぬが、我々が正か生き残って要るとは官軍も考えていないと思います。

 相川殿が考え、我々が実行に移す、これで如何で御座いましょうか。」


「大川様、私の様な若輩者で宜しいのでしょうか。」


「我々があの時味わった屈辱を今度は官軍に味わせるのです。

 相川殿は何も心配せず官軍への報復策を考えて下されば宜しいのです。」


「そうですよ、相川様が考えられた方法ですが先程の猟師達も大変驚いており、其れが現実として今我々が生き残って要るのです。」


「なぁ~相川、お主が例え間違った策を考えても我々には分からぬ、だからお主が黙っておれば誰も気付かぬ、其れで良いと思うのです。」


「えっ、ですが、私は。」


「いいんだ、誰にも理解出来ないのだから相川は胸の中に収めておれば良いのだから。」


「吾平さんの話しにお侍達は全然疑ってませんでしたね。」


「そんなの当たり前だ、オレ達だって吾平さんの話しにすかっり騙されてるんだから。」


 だが吾平は何やら考えて要る。


「なぁ~父ちゃんは何を考えてるんだ。」


「新平、其れに市蔵、佐平もよ~く聞いてくれよ、確かにお侍様達はわしの話しは一度なら信用したと思うんだ、だけどお侍様が山を越えるとわしらの連合国に着くのは間違いは無いんだ。」


「え~じゃ~若しかしたら。」


「そうだ、お侍様達が連合国に着いたら一体どうなると思うんだ、確かにあの時お侍様達は官軍の為に妻や子供が殺されてお侍様が可哀想だと思ったよ、だけどわしらの国に入った時に考え方が変わる事も有るんだ。」


「だったら早く若様に知らせないと。」


「其れはわしも考えて要る、市蔵と佐平は今から山を下りて若様に知らせるんだ。」


「分かったよ、じゃ~市蔵行くぞ。」


「佐平、少し待つんだ、わしが今考えてる事が。」


「でも早く行かないと。」


「其れはわしも分かってるんだ、だけど若様に何て言うんだ、五十人のお侍が山を登って来ましたってか。」


「其れだけ十分だと思うんだ。」


「だからお前の考え方が甘いって言うんだ、お侍様が何時頃山を下るのか、其れを見極める事が一番大事なんだぞ、わしら猟師だったら夕刻にはお城に着けるが、お侍様は此処の山を全然知らないだ、其れでわしの話しを信用したと思うんだが、本当に信用してるのかも分からないんだぞ。」


「でも吾平さんの話しは誰が聞いても信じるよ。」


「其れはなぁ~お侍じゃ無いからなんだ、山賀のお侍様達だったらわしの話しは全部本当だって思うが、さっきのお侍様はなぁ~、まぁ~言い方は悪いがご城下の人達とは違うんだ、お侍様は幼い頃から色々な事を学ばれわしらの考えてる事なんかとは全然違うんだ。」


「だけど若様はオレ達の事を。」


「新平は何も分かってないんだ、若様は特別なんだ、わしもだがお前達も前の殿様、其れに鬼家老の事を忘れた訳じゃないはずだ。」


「当たり前ですよ、オレ達もあの頃、お侍って本当に賢いのかって思ってましたから。」


 山賀の猟師達も鬼家老には散々な目に合わされ、其れが源三郎と若様によって全てが排除され、今は何の不自由も無い。

 だが官軍と言う新たな敵が現れ山賀を含む連合国に取っては今最大の脅威で有る。


 吾平達山賀の猟師達は何も若様に強制された訳でもなく、今は領民の誰もが考え、何事に置いても領民の命が一番大切だと言う源三郎の考え方に賛同し自らの命と同じ様に領民の命も同じだと考える様になった。


「お侍様って言うのはなぁ~わしらが考えてる以上に物事を真剣に考えてられるんだ。」


「だったら吾平さんの話しって本当のところは信じてないかも知れないんですか。」


「そこなんだ、わしの話は途中までは本当なんだ、だけど問題は明日なんだ。」


「新平も市蔵も佐平も良く聞くんだぞ、海から一里以上先に有るあの場所までは狼よりも気の荒い熊が要るんだ、気の荒い熊は狼よりも厄介なんだ。」


 狼よりも気の荒い熊が厄介だと言うが新平も市蔵、佐平も気質の荒い熊を知らない。


「吾平さんが言う熊ってそんなに厄介なんですか。」


「狼は確かに賢い、だけどその狼でも気の荒い熊に手向かう事は滅多にしないんだ、其れはなぁ~熊の手に跳ね飛ばされた時に前足の爪で命を落とすからなんだ。」


「でも狼が十頭で襲ったらどんなに強い熊でもやられると思うんですが。」


「其れが大間違いなんだ、熊の爪は一寸半以上も有るんだ、そんな爪を持った手で跳ね飛ばされて見ろ、十頭や二十頭の狼じゃまぁ~簡単に全部殺されるんだ。」


 吾平はその後も山賀の一番海側有る山には狼よりも気の荒い熊が多く要ると言う、その熊に出会う事も無ければ五十人の侍達は狼はいないと判断し一気に山を越えて来る可能性が有ると言う。


「だったらどうしたらいいですか。」


 吾平はその後暫く考え。


「よ~し今更考えても仕方が無い、市蔵と佐平はお前達の見た通りを若様に伝えるんだ。」


「じゃ~お侍様達は何時頃山を下ると思うんですか。」


「う~ん、其れが分からないんだ、お侍様達がわしの話しを信用したと思ってだなぁ~。」


 またも吾平は腕組みし考え始めた。


「なぁ~父ちゃん、あんまり考えても同じだと思うんだ、お侍様達は父ちゃんの話しを信用したと思うんだ、其れにお侍様達は熊笹から手や顔を守る為に自分達の着物を裂いて巻き付けてたんだ、オレは父ちゃんが嘘つきだって思ってないんだ、だから父ちゃんの考えてる事を市蔵さんや佐平さんに言って欲しんだ。」


「そうですよ、吾平さんはオレ達には大師匠なんですよ、オレ達はこの先も大師匠に教えて貰わないと一人前にはなれないんですから。」


「そうですよ、吾平さん、オレ達に考えてる事を話して欲しいんですよ、若様にはオレ達が見た事も感じた事も全部話したいんです。」


「よ~し分かった、じゃ~わしの考えた事を話すから若様に伝えてくれ。」


 その後、吾平は市蔵と佐平に話し、二人は大急ぎで山を下って行った。


「父ちゃん、大丈夫だよ、お侍様達は父ちゃんの思った通りに動くと思うんだ。」


「其れよりも今夜は冷えるから二人が貸してくれた皮を身体に巻き付けるんだぞ。」


 市蔵と佐平は残る二人に自分達が使う為に持って来た熊の毛皮を渡していた。


「なぁ~父ちゃん、お侍様達は大丈夫かなぁ~。」


 新平は五十人の侍達の事を心配して要る。


「お侍様達は寒さよりも何時狼が襲って来るか、其れが心配で今夜は眠る事なんか出来ないんだ。」


 吾平は侍達が話しを信用し木に登り休みを取って要るはずだと思って要る。


 確かに吾平が言う様に山賀の北側に有る山には狼の大群はいない、だからと言って全くいないのでは無く、其れよりも熊の方が遥かに面倒だと考えて要る。


 そして、夜が更けて行くと。


「うぉ~、うぉ~。」


 と、侍達はの遠吠えと寒さに襲われ眠る事さえも出来ず夜が明けるのをじ~っと我慢しなければならず。


 そして、我慢し待ちに待った夜が明け始め。


「皆様方、お早う御座います。」


 誰も眠る事は出来なかったと見え、全員の目は赤く滲んで要る。


「皆様が昨日使われました蔓ですが、今から何をするかを説明させて頂きます。」


「相川殿、蔓はこの間々使うのですか。」


「はい、蔓の細い方を手の先から手の甲え、最後は手首まで巻き付けて行きます、この様に巻き付ければ手を熊笹から守る事が出来ます。」


 と、相川は蔓の細い方を手の先から巻き付けて行き手首まで蒔くと内側に織り込んだ。


「ほ~これならば熊笹で腕や甲が切れると言う事も無くなりますなぁ~。」


 と、早速侍達は相川の言う方法で蔓を巻き付け、近くの熊笹を払うと熊笹は手に振れる事も無く、其れは傷が付かず血も出ないと言うのが実証された。


「この方法で熊笹をより分けて行けば山を登り下る事も少しは楽になると思います。」


「では皆様参りましょうか。」


 大川が先頭になり山の頂上へと向かった。


 話しは昨日の夕刻に戻り。


「パン、パン。」


 と、突然二発の銃声が聞こえた。


「父ちゃん、二人は下りたよ。」


「うん、間違いない。」


「大川様、今の銃声は。」


 侍達は突然の銃声に驚いて要る。


「あれは多分火縄銃だ、さっきの猟師が撃ったんだろう。」


 大川達は火縄銃で何かの獲物を撃ったと思って要るが、其れは大きな間違いで市蔵と佐平が無事下山したとの合図で有った。


 市蔵と佐平は大急ぎでお城へと向かい、お城へは半時程で着き。


「若様は。」


「執務室におられますよ。」


「はい、じゃ~急ぎますんで。」


 市蔵と佐平は大急ぎで山賀の城の執務室へと向かい。


「若様、若様、大変です。」


 市蔵と佐平は息を切らせて飛び込んで来た。


「一体どうされたんですか、そんなに慌てて、まぁ~お座り下さい、誰かお茶を。」


「若様、其れが大変なんですよ、驚かないで下さいよ。」


 猟師は大変だと言うが、若様は話しも聞いておらずさっぱり分からない。


「猟師さんも少し落ち着いて下さい、一体何が起きたのかゆっくりとお話し下さい。」


 猟師は家臣の持って来たお茶を一気に飲んで。


「実はさっきの事なんですが。」


 猟師は侍達の事を話すと。


「そうですか、其れで今は吾平さん親子が侍達を見張られて要るのですね。」


「其の通りでして、オレ達二人は吾平さんの弟子でして。」


 市蔵は今回の事でも吾平から色々と教わり、吾平の言う事は間違いは無いと思って要る。


「若、猟師さんのお話しでは侍達に敵意は無いと考えて間違いは御座いませぬ。」


「私も其の様に思いますが、問題は侍達が見たと言う約五千の官軍兵だと思うのです。」


「若も同じですか、拙者もでして、ですが五千の官軍兵が一体何の目的で集結したのかを調べる必要が有ると思うのです。」


 五十人の侍達よりも五千人の官軍兵が何の目的で集結したのか、其の方が余程大事だと考えて要る。


「猟師さんは官軍兵を見られたのですか。」


「山のこちら側もですが、向こう側も熊笹と大木で山の下は全然見えないんです。」


「そうですか、では吾平さんも官軍兵は見た事も無いのですね。」


「はい、オレ達はお侍様達の話しを聞くまで官軍が居る事も全然知らなかったんです。」


「どなたか中隊長を呼んで、そうだ正太さんも呼んで下さい。」


 数人の家臣が執務室を飛び出して行き、山賀の執務室は今までになく大変な緊張感に包まれて要る。


 其れと言うのも若様達の知らない山の向こう側に五千の大軍が集結して要ると言う、一体どうすればいいのか、今の若様には最大の難問で有る。


「若様、大至急との事ですが。」


 中隊長が飛び込んで来た。


「中隊長、実は北側の向こう側から五十名の侍が登って来て要るのです。」


「何ですと、五十名の侍が登って来たと申されるので御座いますか、では数時の内に山を下って来ると考えねばなりませぬが。」


「其れは多分、大丈夫だと思います。」


 若様はその後猟師から聞いた内容と話すと。


「では侍達は早くて明日の、いや明後日の昼頃から夕刻に掛けて北の草地に下りて来ると考えて間違いは御座いませんねぇ~。」


「猟師さんと中隊長が申される様に明後日の昼過ぎに草地へ着くと考えております。」


「若、では。」


「私は大至急義兄上にお知らせしなければならないと考えております。」


 執務室の家臣は猟師と若様の話しを、そして、若様と中隊長の話し合いを必死で書き留めて要る。


 其れは直ぐに伝令が持ち野洲へと早馬を走らせる事を想定しての事だけでは無く、何れ後日調べる時に役立つとの事で、何も山賀だけに限ったたことでは無く、全ての執務室では当然の如く行われて要る。


「中隊長、明後日ですが、二個小隊で参りましょうか。」


「其れと先程申されました官軍の動向ですが、中隊の中でも斥候の役目を得意とする小隊が有りますので、その小隊を向かわては如何で御座いましょうか。」


 若様が初めて聞く斥候と言う役目だが今まで全く知らなかった。


「今申されました斥候と言う役目ですが、私は初めて聞いたので教えて頂きたいのです。」


「実は斥候と言う役目を考えられたのが中佐殿でして、斥候の任務は敵軍の人数や武器の種類など敵軍の目的地など多くを調べる専門の分隊でして、菊池から松川まで配置されております中隊には必ず斥候専門の分隊が配置されております。」


「総司令はご存知なのですか。」


「多分ですが、中佐殿がご説明されて要ると思います。」


「山賀の司令官としては失格ですなぁ~、今の今まで全く知らなかったと言うのは全く情けない話です。」


「其れは全て自分の責任で最初にご説明していなかったので、大変申し訳御座いません。」


「いや、いや、其れは違いますよ、私が山賀に来てから家老と言う重責の為に何も出来なかったと言う口実を言って逃げていたのですから、若、誠に申し訳御座いませぬ。」


 吉永は言い訳はしない、だからと言ってこの間々知りませんでしたでは済まされる事では無い。


「では斥候専門の分隊に向こう側の官軍の動向を調べさせるのですか。」


「我が中隊もですが、どの中隊でも現地の状況に合わせ偽装し敵軍の真近くまで進み多くを調べるのです。」


「えっ。」


 またも初めて聞いた偽装とは一体どの様な意味なのだ。


「偽装と申しますのは、例えば先程のお話しの中でも北の草地に着くだろうと申されましたが、若様が申されました二個小隊の全員が近くの草を身体に付ければ敵軍の真近くまで行く事が出来ます。」


「では敵軍に発見されると言う事は。」


「勿論、全てが成功するとは限りませんが、中佐殿は他の部隊には内緒で進めておられましたので、今の官軍でも発見される事は無いと思います。」


「中隊長が申される方法だと北の草地ではどの様になるのですか。」


「まぁ~相手にもよりますが、二間、いや一間近くまでは可能だと思いますが。」


「えっ、一間ですか、そんなにも近くまで行き発見された時にはどの様になるのですか。」


「其れも相手次第でして、相手が攻撃する仕草でも有れば我が中隊の兵士は問答無用と発砲しますので何も心配は御座いません。」


 何と言う話しだ、敵軍の兵士の目前まで行く事が出来ると言う。


「では明後日北の草地に向かう小隊ですが。」


「第一小隊は山の真近くの草地に、第二小隊は侍達の真近くの草地に潜みますので、まず発見される事は無いと思います。」


「明後日は拙者が参りますので。」


「えっ、何故ですか、私が行って侍達の話しを聞きたいのですが。」


「若は此処でお留守番をして頂きます。」


 吉永は先手を打ち自分が行くと決めた。


「そんなぁ~、又も私が留守番ですか。」


 若様は残念で仕方が無いと言う表情をして要る。


「若様。」


 其処へ正太が飛び込んで来た。


「正太さん、お忙しいところ申し訳有りませんねぇ~。」


「北の山にお侍が登って来たって本当ですか。」


「私もさっき猟師さんから聞いたばかりですよ。」


「で、一体どうするんですか、勿論、お侍は全員殺すんですよね、幕府の奴らだから。」


「侍ですが猟師さんのお話しでは侍は幕府軍でも無く、官軍の攻撃でお城と城下の人達も含めて全員が殺されたと言う話しですよ。」


「えっ、何で城下の人達も殺すんですか、じゃ~子供ですか。」


「そうなんですよ、侍はどうやら官軍の虐殺を見て逃げたのだと思いますねぇ~。」


「そんな事って何の為に侍が要るんですか、オレはその侍も許せないですよ。」


 侍が一番嫌いだ、その侍が領民を置いて逃げ出すとは正太は絶対に許せないと思った。


「若様、そんな侍は早く殺して下さいよ。」


 正太の怒りは収まらない。


「正太さんも余り怒らないで下さいね、其れよりも大事な事が有るんですよ、実はねぇ~北側の山向こうで五千人の官軍が集結して要るんですよ。」


「えっ、五千人の官軍って、で、何時攻めて来るんですか。」


 正太は直ぐにでも官軍が攻めて来ると思った。


「官軍が直ぐに攻めて来る事は無いと思っておりして、其れでね正太さんにお願いが有るのですが。」


「なんでも言って下さいよ、オレは何でもやりますから。」


「猿軍団を全員集めて下さい、そして、全員で北側の山に入り官軍の動きを監視して頂きたいのです。

 正太さん達にも今回は物凄く危険だと思っておりますが、お願いが出来るでしょうか。」


「そんなの簡単ですよ、オレも一緒に行きますんで。」


「いいえ、正太さんは此処に残って頂きますよ、絶対に行っては駄目ですからね、絶対にですよ。」


「若様、何でオレが行けないんですか、そんなのって不公平ですよ。」


 正太が何故向こう側に行きたいのか分かって要る。


 山賀で正太が抜けると北の空掘りで行われて要る掘削工事は一体誰が指揮するのだ。


「私はねぇ~正太さんの気持ちは十分承知しておりますよ、ですが正太さんが抜けると北の空掘りで行われて要る工事は一体誰が面倒、いや指揮するのですか、私はねぇ~、正太さんが抜けられると大変困るんですよ、私は正太さんが一番頼りなんですからね、分かって貰えますよね。」


 若様の言葉は正太の胸にぐさりと突き刺さって正太は何も言えず下を向いて要る。


「正太殿、今度の作戦は山賀の、いや連合国にとっても非常に大事でして、我が中隊も腹を括って参りますので、どうか若様の申されます通りにお願いします。」


 中隊長も残れと言う、もう此処まで来たら正太も行く事は出来ないと諦めるしか無い。


「ええ、分かりましたよ、じゃ~オレは残りますがね。」


 正太の表情は今にも不満が破裂しそうだが今は仕方が無いと思って要る。


「多分ですが、野洲から義兄上が来られると思いますので、詳しいお話しは其の時にしましょうか。」


「では自分は隊に戻り第一、第二小隊に説明し、残りの小隊には総司令が来られてからのご説明の後でと言う事に致します。」


「中隊長、宜しくお願いします。」


「若様、先程の書状が出来ました。」


「分かりました、では私が署名しますので野洲の義兄上に届けて下さい。」


 若様が書状の署名し家臣は其れを持ち馬に飛び乗り野洲へと飛ばして行く。


「父ちゃん、お侍様達は相当苦労して登ってるよ。」


「まぁ~其れも仕方が無いんだ、此処は狼よりも熊が出没するから本当は一番恐ろしいところなんだ。」


「父ちゃんは熊が来た時には分かるのか。」


「狼よりも動きが大きいし熊は木の実も食べるから木の実が実る木を大きな身体全体で押すから時々木が揺れてるのが分かればその付近に熊が要ると言う事なんだ。」


「そうか、だったら熊を見付けるのも簡単だなぁ~。」


「まぁ~そう言う訳だから、わしはあのお侍が言った方へ行く事を願ってるんだ。」


 吾平は山の頂上から其のまま真下に行くように話した。


 其れは草地に近く、更に海面までは一町程も有る断崖絶壁に近く、吾平の思惑は其処に有った。


「相川殿が考えられた蔓を使う方法ですが、熊笹をより分けるのが楽になりましたよ。」


「其れは私もですよ、これならば手に傷も着かず痛さも感じませんが、何故この様な方法を考え付かれたので御座いますか。」


「先日、猟師が言った様に狼は非常に賢い生き物で、我々人間が擦り傷だと思っても血の臭いを嗅ぎ付け襲って来るのです。」


「狼って、そんなにも賢いのですか。」


「私は祖父から聞いたところでは狼は集団で獲物を襲います。」


「猟師が言った事が本当ならば我々の誰か一人でも身体に傷を付けたならば狼は直ぐ嗅ぎ付けると申されるのですか。」


「正しく其の通りで御座いまして、其れに狼は決して一頭では襲う事はせず、数頭、いや数十頭の集団で襲い、獲物は仲間で分け合うのだと聴いております。」


「ですが逃げる事も出来るのでは御座いませぬか。」


「狼は四つ足ですよ、我々人間は二本足で人間が幾ら早く走っても四つ足に狼に勝つ事は不可能ですよ。」


 相川は祖父から狼は四つ足で走り、どんな方法を使ったところで人間が狼に勝つ事は不可能だと。


「では、相川殿は狼に見付かれば我々の命は無いと申されるのですか。」


「正しく其の通りでして、我々は武士だから太刀を持ち応戦すれば狼に勝てると思われるでしょうが、狼は数十頭の集団で襲って来ますので武士がどんなに追い払ったところで狼に勝つ事は不可能でして、最後には餌食となり、そして、烏が残りの全てを食べ、我々は骨だけになります。」


 何と相川は最後に残るのは骨だけになると、それにしても実に簡単に話すが。


「相川殿、狼の餌食にと申されましたが、狼の牙では簡単には死ぬ事は出来ないのでは。」


「そうですねぇ~、相当苦しむと思いますので、私は同じ死ぬので有れば脇差で自分の命を絶ちます。

 其れならば狼に噛みつかれたとしても、私は其の前に死んでおりますので何の痛みを感じません。」


「相川殿、もうこの山の頂で御座いましょうか。」


「皆様方、多分で御座いますが、山の頂だと思いますので少し休みませんか。」


「そうですなぁ~、其れにしても熊笹は一体何処まで続くのだろうか。」


 侍達は付近を見渡すが、何処を見ても熊笹の大群で其れが身の丈以上の高さに成長しており前後左右が全く分からない、頂きで暫く休むと。


「そろそろ参りましょうか、今度は下りになりますが登り以上に危険で御座いますのでゆっくりと下って下さい。

 若しも足を滑らせ早くなる様でしたら、どんな木でも宜しいのでしがみついて下さい。」


「では皆様方、参りますぞ。」


 下りも先頭は大川と相川で有る。


「其れにしても腹が減ったのぉ~。」


 侍達はこの数日何も食べておらず、さりとてウサギや鹿を仕留める程の腕も無く、じっと我慢するしかない。


「皆様方、お腹が減るのは我慢するしか御座いませんが、喉の渇きは我慢出来ないと思いますので少しお待ち下さい。」


「相川殿は一体何をされるのですか。」


「私が水の有る所を探して参りますので、皆様方は出来るだけ太い竹を探し水を入れる筒を作って頂きたいのです。」


「まぁ~其れにしても相川殿は物知りで御座いますなぁ~。」


「私も其れは認めざるを得ないと思います。」


「我々は確かに書き物を読んでおり知識は有ると考えておりましたが、相川殿は其れよりも祖父から学ばれ、其れで今我々は生かされて要ると思うです。」


 侍達は付近に有る竹を数本切り水を入れる竹筒を作り、相川が戻って来るのを待った、だが四半時以上も経っただろうかまだ戻って来ない。


 そして半時は経っただろうか相川が戻って来た。


「皆様方、少し下がった所に水が流れて要るを見付けましたので参りましょう。」


 その場所は其処から半町程下がった所で水がちょろちょろを流れて要る。


 だが侍達は今日の朝から何も腹に入れておらず、だが其れよりも喉の渇きを潤すだけで十分で有った。


 侍達は一人二本づつの竹筒に水を入れると、又下り始め。


 そして、山の中腹に差し掛かったのだろうか、辺りは少し薄暗くなり始めた。


「皆様方、これ以上進みますと危険ですので昨日と同じ方法でお願いします。」


 相川は昨日の今日だ別に詳しく説明する必要も無いと思った。


 侍達は付近の木立に登り蔓で身体を括り休めるだけの座る場所を確保し、余程疲れて要るのだろうかコクリコクリと始めた。


 其処は吾平が考えた通り断崖絶壁に近く、例え侍達が剣豪だとしてもこの場から逃げ出す事は不可能だと言う場所で有る。








         

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