第 1 話 巨大帝国の誕生。
時は、明治、37年、時の帝政ロシアと開戦となり、多くの歴史上では、日本海軍駆逐艦が旅順港の出入りに古い船舶を沈めて封鎖しようとしたが、失敗に終わった。
其れは、旅順港の海中に達してした闇の帝国の潜水艦が発射した魚雷が不発、正確に言うと、機能せず
爆発しなかったので有る。
その後、連合艦隊が敷設した機雷が爆発し、戦艦、2隻を撃沈した為に、闇の帝国の存在は明らかにな
る事は無かったので有る。
だが、その後、闇の帝国は、魚雷が何故不発だったのか、必死で研究と改良を重ねて行くので有る。
日本海軍と言えば、その後も、機雷爆破を試みるのが失敗に終わったので有る。
ロシア、バルト海艦隊、之が、バルチック艦隊で有る、この大艦隊が極東方面へ回航がほぼ確定したの
で有る。
同年10月、バルチック艦隊はウラジオストクに向け出向したので有る。
バルチック艦隊は、7ヶ月にも及んだ、大航海の末、日本近海に到着、5月、連合艦隊と激突するので
有る。
だが、この時、闇の帝国は、魚雷の改良を加え、更に、強力な魚雷として発射される時を待っていた。
日本海軍が大勝利を収めたのは歴史上の話で有るが、その日本海海戦に、闇の帝国が多数保有する潜水
艦が活躍した事など、歴史上でも、当時、世界中の首脳達の誰もが知らないので有る。
この海戦がはじめて闇の帝国が世に出る戦となったので有る。
闇の帝国とは、一体、何者なのか、だが、闇の帝国を物語るには、話を数千百年も逆戻らなければなら
ないので有る。
この頃、アジアからヨーロッパにかけて強大な軍事力を持った国家が存在したので有る。
その国家は一人の狂犬が絶大な権力を握っていた。
狂犬は、自らの支配権力を誇示する為には、たとえ、親、兄弟といえども反対する者は、全て抹殺し
た。
そして、狂犬には、影武者が何人も居る、狂犬は影武者を自由自在に操り、時には、狂犬が、時には、
影武者が出没し、軍や政府、そして、民衆までも惑わすので有る。
その頃の民衆と言えば、地方の豪族や小さな政府の暴力的な支配に対し、民衆や農民達は反逆の意志は
持ってはいるのだが、反面、何時かは、必ず、幸せな生活が来るのだと。
その為には、今の圧制から逃れたい、だが、現実は、そう簡単では無かったので有る。民衆も農民も、
いつかは現れるで有ろう、貧しい、私達の為の正義の見方がと思い、毎日の生活を送っていた、だが、現
実は、何時まで待っても正義の見方は現れない。
それどころか、生活は苦しさが増すばかりなのだ。
その様な状況下では、各地で農民や一般民衆が反逆の狼煙を上げるところも現れた。
だが、緒戦、農民や民衆は強い武器を持たない、豪族や小さな国家と言えど、訓練された兵士を養って
いる、訓練された兵士は強力な武器を持って、民衆を、そして、農民を押さえ込むので有る。
反逆の戦いでは多くの死者が出るのは、いつも、弱い立場の農民や民衆で有る。
大古の昔から、多くの旅人がこの地方を訪れてはいる、その旅人は行く先々で、通り過ぎた、町や村で
起きた事を話していく、その話はやがて、噂が噂を呼び、間たたくの間に世界中に広まり、それと、合い
康応して、この狂犬の独裁者は次々と侵略するので有る。
恐れを知らぬほどで近隣諸国は有うに及ばず、数十年で地球上に有る、殆どといっても良いほど、大小
の国を滅ぼし、そして、紀元前数百年前の初頭には、一部の国を除き、征服されてしまったので有る。
老人や女子供を含めた、5千人ほどの集団が、雪ふる草原を只管歩いている。
其れは、生まれ故郷を追われた人達であった。
その集団は、故郷で起きた跡目争いに巻き込まれ、迫害を恐れ逃避行の最中で有る。
だが、行く当ても無く、既に90日以上の苦しい旅が続いている。
更に、飢えや寒さのため、一人、また、一人と倒れていくが、誰も助ける事が出来ない。
それでも、やがて、雪降る季節は終わり、春を迎える頃、集団は永住の地と思われる場所にたどり着い
たので有る。
故郷は緑豊かな土地であり、毎年、作物は豊かに実り、農民達も裕福とは、決して思えないが、それで
も、民衆は心豊かな毎日を送っていた。
だが、何時の時代でも有る様に裕福になれば、更に上を望む、之は、人間の持って要る感情なのかも知
れない。
故郷の国でも同じであった、其れは、数百年もの長い間には何度か跡目争いはあったが、今回は、今ま
でに無かった凄惨な争いであった。
互いの、一族だけでなく、関係するものたち、其れは、老人や女子供は言うに及ばず、生まれたての赤
子まで殺すというものであった、だが、この集団だけが、何故、逃げる事が出来たのだろうか、この集団
は、国の中心で生活をしていたのでは無い。
馬の足で数日も掛かる駐屯地に居たので有る。
駐屯地では若き司令官の下、数千人ほどの兵士と1万人弱の農民たちが静かな生活を送っていた。
だが、有る時、国の中心部で、其れも突然戦が始まったとの知らせが駐屯地の司令官に入った。
この司令官、歳は若いが、沈着冷静である、伝令から話を聞くと、跡目相続争いだと言うのであった。
この駐屯地の農民達に、この争いには直接関係は無いのだが、自分達の属する部族は既に殆どが殺され
ていると聞き、駐屯地からの避難を考えたのだ、駐屯地の司令官は農民達に事の経緯を話し、全てを農民
達に任せたので有る。
結果、農民たちは迫害を受け、殺されるの待つのはいやだと、それなら、たとえ苦しい逃避行になって
も、いつか、新しい土地に辿り着き、其処で、新たな生活に入りたいと願ってきたのだ。
当然、農民達は、苦しい旅に成る事は覚悟している。
そして、その日のうちの夜に成ったころ、若き司令官の命令で何時ものように焚き火を起こし、夜陰に
まぎれて故郷を離れたので有る。
故郷を離れた農民の数は、この地に到着した頃には半分以上が病と飢えのために倒れて行った、それで
も、この地に到着した事で殆どの農民や兵士達は死んだ様に眠っている。
若き司令官と数百人の兵士は辺りを警戒し、数人の兵士は、この地が本当に安全なのか、偵察に向かっ
たので有る。
農民の中には、飢えと疲れ切った身体で立ち上がる事さえ出来ない者もいる。
司令官は農民には何も言わないのである、この司令官は先頭になり、枯れ木を探し、火を起こし、そし
て、数十人の部下を連れ、近くの森に入り数十頭もの獣を取って帰り農民達に与えるのだった。
数日後、偵察に行った兵士が戻り報告を聞くので有る、其れは、馬で5日行ったところに大きな城は有
るが、其れ以外、この周辺には何も無いとの報告で有る。
「みんな、良く聞いて欲しい、この地を我らの永住の地としたい、だが、我々は兵士だ、貴方方には土
地が必要で有る、今、偵察から戻った兵士の報告によると、馬で5日のところに大きな城が有るそうだ
が、それ以外、この周りには何も無いと聞いた、どうだ、後は、みんなで相談して決めてくれないか。」
司令官の話が終わると、数十箇所で相談する農民達で有る。
その間、兵士達は周りを警戒している。
やがて、農民達は話が纏まったのか。
「司令官、オレ達は、この地に住む事にしたよ、仲間は半分以上が死んだ、オレ達は死んだ仲間の墓だ
けでも作りたいからね。」
農民の代表は悲しげな表情で話すので有る。
「わかったよ、だけどなぁ~、この土地は、大小の岩石が多く有る、それにだ、森には獣も多いぞ、私
はなぁ~、君達にとっては大変危険で農地を作るにしてもだ、多くの困難を伴うと、思うが、それでも我
慢が出来るのか。」
司令官は危険で、しかも、大小の岩石を取り除かねば成らないと思って要る。
「司令官、オレ達は本当に疲れたよ、二度とあんな目に会いたくないから、ここを耕し作物を作り、此
処を、オレ達の故郷と思って頑張るだけなんだ、それによ~、今までの事を思えばよ此処は天国だと思
うよ、なぁ~、みんな。」
農民の代表は、この地を離れる気持ちは無いと言うのだ。
「みんなは、それでいいのか。」
司令官の言葉に、農民達の中から。
「司令官、前みたいによ、みんなで力を合わせて行こうや、楽しくな。」
本当は苦しいはずなのに、この集会中でも子供達は早くも元気な声を上げ走りまわっている。
「よし、わかった、我々、兵士も手伝うからね。」
一人の兵士は少しだが表情も変わったので有る。
「だけどなぁ~、兵隊さんに、オレ達の真似が出来るかね、本当に辛いよ。」
別の農民も言葉とは別に表情は明るかった。
「じゃ~、わかったよ、今から、分担を決める、兵士の半分は森に行き、樹を切り出す、残りの半分
は、此処の岩を掘り出す、女性陣はと言うと、何をして貰おうかなぁ~。」
司令官といえども、女性の仕事はわからないのだ。
「司令官、私達は、みんなの食事と洗濯だね。」
少し年配の女性だった。
「オイ、母ちゃん、食事と言ったが、一体、何を食べるんだ、今は何も無いぞ。」
年配女性の夫だった。
「司令官、食い物が無いよ、それに、水だって。」
みんなは笑ったが、当たり前だった、この地に到着するまで殆どの食料は無くなった。
「其れは、すまなかった、其れじゃ~、今から森に行って獲物を獲ってくるか~。」
司令官は簡単に言ったのだが。
「司令官、そんなに簡単に獲れるもんじゃ~無いよ、オレも、元は猟師だったからね。」
「でも、昨日は獲れたよ。」
「司令官、其れは、運が見方したんだよ~。」
「それじゃ~、君が狩に行ってくれるかね。」
本当は、司令官は狩に行きたくなかった。
「いいですよ、じゃ~、昨日の兵隊さんも一緒にどうです。」
だが、兵士達も狩は苦手の様子で、だが。
「決まった、お前達、この人と一緒に狩に行って、獲物をたくさん獲って帰る事を命ず。」
司令官は笑みを浮かべたのだ。
「そりゃ~、司令官、兵隊さんがかわいそうだよ。」
みんなが大きな声で笑ったが、話は決まり、この猟師と数人の兵士が同行し森へと向かうので有る。
そして、残りの全員でテントを張り、女性陣は火を起こし、男性の半分は森へと向かい住居を建てるため
の木を切り出しに、残りの男性は、まず、近くの石を掘り出すのだった。
「司令官、掘り出した石は何処に捨てるんだ。」
司令官は、はたと考えた、以前の生活では、領地の境はわかっていたのだが、この地は何処までがと、
境がわからないのだ。
本当は広い土地が必要だが、まず、中心となる場所を決める必要が有る。
其処には、一番大事な飲み水の有る場所だと。
「司令官、石を掘り出す事も大事だがね、だけど、飲み水はどうするね~。」
司令官は少し考えた、だが、少し離れた所から。
「お~い、此処に水が湧いているところが有るぞ~。」
と、大声で叫んでいる。
「司令官、行ってみよう。」
「よし、わかった。」
と、司令官と兵士数人、農夫数人が大急ぎで湧き水の有る場所に向かった。
着いて見ると、その場所は、小さな池があり、底からはこんこんと水が湧き出ている。
「よし、此処に、我々が住む中心と決めよう。」
農民にも異存は無かったので有る。
「司令官、ちょっと来てくれよ。」
また、大きな声で叫ぶのだ。
司令官達が行くと、其処は、断崖絶壁であった、そして、良く見ると、その場、一体が同じ風景だ。
「司令官、この場所で有れば、防御も簡単ですよ。」
兵士の一人は、何れ起こるであろう、戦の事も考えたのだ。
「そうだなぁ~、この断崖絶壁を背にすれば、戦いやすくなるな、よし、まずこの場所に石を積み上げ
て行く。
それから、我々の領土を確保する為に掘り出した岩で城壁を作ろう。」
司令官の話は簡単だが、農夫達も異存は無く、直ぐに掘り出した岩をこの場所に持って行くのだ。
だが、道具は殆ど無い、数十頭の馬と数十頭の牛、そして、道具と言えば、スキやクワだけなのだ。
最初は小石を中心に掘り出し、その小石も少なく成ると、次は岩石で有る。
数キロ程度の小石で有れば人間が持つ事は出来る、だが、重さ数百キロも有る岩石とも成れば人間の手
では不可能で有る。
その時、森に行った男達が丸太数十本を持ち帰ったので有る。
「司令官、オレ達の先祖もこんな事をしたと言い伝えが有るんだ。」
司令官は、まだ、わかって無かった。
「何だ、その言い伝えとはよ~。」
「この丸太を利用するんだ。」
司令官はやっとわかった。
「わかったぞ、3本の木を組み合わせ、その組合わせた木材で大きな石を持ち上げる、持ち上げた石の
下に丸太を並べると、そうだよなぁ~。」
農夫は頷き。
「司令官も、バカじゃ~、ねえ~なぁ~。」
「オイ、其れは、言いすぎだよ。」
と、言ったが、顔は笑っていた、それに釣られみんなも笑っている。
「司令官は、バカじゃ~、出来ないからなぁ~。」
農夫も笑っている。
「お~い、誰か、ロープを持って来てくれよ。」
慌てて、数人がロープを取りに戻った。
「君は本当に農夫なのか。」
司令官は先程から不思議に思って要る。
この男、農夫にしては知識が有る。
「オレの事ですか。」
これ以上は言わなかった。
「司令官、ロープです。」
兵士は、数本のロープを持ってきた。
「木をこの場所でくくってくれ、くくり終わったら、立てるから、その前にだ。」
司令官は先頭になり、大きな岩にロープを回し、ロープの端をくくった所を通した。
そして、3本の木を起こし、男数人で引くと大きな岩石はゆっくりでは有るが、持ち上がったのだ。
農夫の数人が丸太を岩石の下にいれ、それから、兵士数人が押すと大きな岩石は少しづつでは有るが動
いたので有る。
「司令官、それじゃ~、駄目なんだ。」
兵士や他の農夫達はわからなかったのだ。
「何故、駄目なんだよ。」
「其れ以上は動かないよ。」
農夫は先に有る、くぼみを視差した。
「司令官、この丸太の下に、今度は縦に木材を敷くんだ、するとね。」
と、言って、農夫は数本の木材を縦に入れた。
「これで、いいんだ、押してみなよ。」
数人の兵士達が押すと、今度は先程と違い、少し早く動くのだ。
「オイ、何をしてんだよ、早く丸太を前に入れろ。」
農夫の大声が飛んだ。
慌てた兵士が数本の丸太をいれ、すると。
「オイ、今度は縦に入れろ、早く。」
またも、農夫の大声が飛んだので有る。
「司令官、わかったかね、この方法で大きな岩は簡単に運べるからね。」
司令官は、頷き、他の兵士や農夫は必死で大きな岩を運んで行く。
「君は本当の農夫では無いね、いずれ、話しを聞かせてくれ、其れと、此処は、君が指揮を執ってくれ
ないかね。」
この農夫、少し考え。
「司令官、本当にいいのかね。」
「いいんだよ、全員が初めから農夫とは限らないし、兵士とも限らない。
私はね、その場にあった人間が指揮を執ればいいと思って要るんだ。」
「司令官、わかったよ、それじゃ~、引き受けてやるよ。」
「そうか、其れはありがたい、頼むよ。」
この農夫、実は築城の技師で有る。
だが、何故、農夫になったのかわからないのだ。
だが、司令官の抜擢で、農夫、いや、築城の技師の指揮の下、数日が経ち。
「司令官、相談が有るんだが。」
農夫、いや、築城技師が突然に言った。
「相談とは。」
司令官は、思いもよらぬ話を聞くので有る。
「司令官、実は、オレはね、昔、ある国の築城や城壁造りの専門家だったんだよ。」
司令官はわざと。
「えっ、其れは、本当かよ~、、なんで、今まで言わなかったんだよ~。」
技師は少し考え。
「オレはなぁ~、司令官の本当の気持ちを知りたかったんだ。」
「本当の気持ちを。」
「そうだよ、じゃ~、聞くが、司令官、オレ達をこの先、どうするつもりなんだ。」
この男、司令官の本心を探っている。
「オレか、オレはね、あの故郷を追われたも同然なんだよ、オレはなぁ~、あの駐屯地で生まれ育った
んだ、だから、あの駐屯地以外の世界を知らないんだよ、それに、あの騒ぎが起きるまで、戦をした経験
が無いんだ。
その駐屯地では、みんな、オレの仲間なんだよ、ただ、オレは、先祖から続く司令官の家で生まれた、
ただ、それだけの事なんだ、だからね、途中で、多くの仲間、其れもな、全員を知って要るんだ。
オレはね、みんなが幸せになれるんだったらよ~、どんな事でもやるよ。
あの死んだ者達の中には、オレの幼馴染みも居るんだ、その為にもね。」
司令官の目に涙が溢れている。
「司令官、わかりました。
私はね、一生、司令官の側に居ますよ。」
技師の口調が変わったので有る。
「其れは、本当か。」
技師は頷き。
「司令官、本当です。」
この技師は、何かを、吹っ切ったのか、技師の目にも涙が。
「で、さっき言った、相談とは。」
「実は、司令官、この地に城を築きたいのですが。」
司令官は、築城など考えもしなかったのだ。
「技師先生、此れからは、こう呼ばせてもらいますよ、で、今、城を築くと聞こえたんですがね。」
技師は本気だった。
「そうです、これだけの人数ですよ、何時、何処から敵が襲って来るとは限りませんよ。」
「技師先生、オレはねぇ~、城なんか必要は無いんですよ、其れよりも、仲間が安心出来る場所を作り
たいんだよ~。」
「司令官、今、言われました、仲間が安心出来る場所、其れが、お城なんですよ。」
司令官は戸惑っている。
「でもね、作物を作り、食べる事と眠る場所があれば、それで良いと。」
司令官の考えて要る城とは、以前住んでいた駐屯地には大きな城があった、それを想像したので有る。
「司令官、私の頭で描いたお城は司令官の想像されている様なお城では無いんです。」
「オレの想像した城では無いと言われるんですか。」
「その通りです、司令官、では、お聞きしますが、此処で、掘り起こし、あそこに積み上げた岩石の処
分は。」
「オレは、何も考えてはいませんですよ、ただ、あの場所が適当だったからですよ。」
「司令官、何れ、遅いか、早いかわかりませんがね、此処で、我々が生活をして要る事が知れ渡ります
よ、その時には、何処かの国か、それとも、野盗が此処を襲ってきます。
その時、司令官は、一体、どうするんですか。」
「オレ達、兵士が守りますよ。」
司令官は簡単に守れると思って要るのだが。
「司令官、今、簡単に守ると言われましたが、これだけの手勢で、どんな方法を使って守るんです
か。」
司令官は考えるのだが。
「其れは。」
実は、方法が思いつかないので有る。
「司令官、はっきりと申しますが、今、突然、数百人の野盗に襲われたとします。
その時は全滅しますよ、司令官も、そして、仲間の全員が殺されますよ、確実に。」
技師の話は本当で有る。
兵士が数千人と言っても、過去に一度も戦をした事の無い兵士達で有る。
「わかりますが、技師、じゃ~、どんなお城を築かれるんですか。」
技師は、やっと司令官もその気になったと。
「私が、以前手懸けた城は見た目も美しく、頑丈そうに見えました。
其れは、岩石を切り出し、積み上げたんです。」
司令官は、以前の城を思い浮かべた。
「オレも知ってますよ、確かに美しいと思いますが、でも、何故かわかりませんがね、一度、壊れ始め
ると、一気に城壁が落ちるんですね、其れを知って要るからですよ。」
だが、この技師は全く別の方法を考えて要るのだ。
「司令官、其れは全く自然を無視したからですよ。」
司令官は唖然とし、自然を無視したとは。
「今、自然を無視したと言われたんですが、何故なんですか。」
技師は微笑み。
「司令官、此処で掘り出している岩石を見て下さい。
どんな形をして要ると思われますか。」
司令官は当然だと言った顔で。
「技師、そんな事わかりきった話でしょう、ほとんどが丸くなっていますよ。」
技師はニヤリとした。
「その通りですよ、司令官、私は何も美しい城を築きたいと言ってはいません。
私はね、城と言うよりも、城壁だけで十分だと思って要るんですよ。」
「城壁だけですか、でも、何処で眠るんですか。」
司令官の考えた城とは内部には多くの部屋があり、兵士の居住する場所も必要だと。
「司令官、私の頭の中に有る城壁、その物が城なんですよ。」
司令官は、技師の説明が全く理解できないのだ。
「城壁が城と言われても、オレはわかりませんよ。」
確かに、技師の言った説明ではわからないのだ。
「司令官、もっと簡単に言いますとね、城壁の内側を空洞にするんですよ。」
「中を空洞にですか。」
「そうです、今までの城では城壁はただの城壁です。
私はね、城壁を頑丈に作るんですが、この城壁を外から見れば、何処にでも有る城壁だと思われるんで
す。
この城壁の中が、いざと言うときには、全員がこの中に入れば、外からは、誰も居ないと思い、野盗や
外敵は一定の時間が過ぎれば引き上げますよ。」
司令官も少しでは有るがわかってきたのだ。
「技師、オレも少しだがわかってきましたよ、我々は、あえて戦う必要は無いと言う事ですよね。」
「その通りですよ、外壁、全部が避難する場所に成るんですよ。」
「それじゃ~、聞きますがね、入口は作り方によっては敵に見つかると思いますが。」
「そんな事は簡単ですよ、入口に使う石は薄く切断した物を貼り付けるんですよ。」
司令官は、その入口は相当な重さになると考えて要る。
「でもね、大きな岩石ですよ、幾ら、薄く切っても相当な重さになると、オレは思いますがねぇ~。」
それでも、技師は二ッコリとしている。
「司令官、城の入口は、跳ね上げ式の橋を知っておられると思いますが、それと同じ方法で作るんです
よ、ただ、反対の作り方で、内外に作るんですよ、何も無い日頃は、この入口は開いていますからね、戦
が始まる前に全員が中に入ればいいんですよ。」
司令官はやっとわかったので有る。
「オレは、何か勘違いをしてたんですね、その場所は非常用だけど使わないときも入口は閉じていると
思ったんでね。」
司令官は、照れ笑いをして要るのだ、この技師の考え方は普通では無いので有る。
「でもね、其処は、非常用だってわかりましたが、それじゃ~、聞きますが、普段は何処で寝るんです
かね~。」
司令官もやっとわかったのだが。
「では、オレ達兵士も同じ木造の家に住めるんですね。」
司令官も木造の家が念願だったのか。
「そうですよ、でもね、司令官の家は特別な作りが必要に成りますね。」
司令官はきょとんとしている。
「なんで、オレの家だけが特別な作り方が必要なんですよ。」
司令官はみんなと同じ作りの家に住みたいと思って要るのだ。
「司令官、貴方は、我々、全員の最高責任者であり、最高権力者なんですよ、それに、此れからは、会
議を開く事も必要に成ります。
その為にも、会議室も必要ですし、農民や兵士と同じ作りの家では、何かの時に、其れは、軍事の事
も、此処での生活の事も、其れは、一国を治める領主の責任なんですよ。」
「でもね、会合は全員で行なえばいいと思っていますから。」
司令官は、領主とは思って無いので有る。
「では、いつも全員で話合いをされるんですか。
確かに、今は、それでもいいでしょう、でも、この先、何年が経っても同じ話し合いが出来ると思いま
すか、其れは、出来ない話ですよ、司令官、わかって下さい。
確かに、司令官は全員が仲間だと言われましたよ、でも、誰かが中心人物になると言う事は、ここが、
いずれかの時期が来たときにですよ、訪問者が来た、その訪問者が有る国の領主とします。
例えば、私がその領主とします。
この地の領主は農民と同じ家に住んでいる、それでは、此処の警備は手薄で有ると思い直ぐに軍隊を送
り込み、この領地は全て取り上げる事は出来ますよ、其れはね、此処には本当の意味で領主は居ないと思
われるからです。」
「でも、オレは、領主なんかじゃないですよ。」
「其れは、此処のみんなはわかっていますよ、でもね、外部の人間にはわからないんですよ、では、聞
きますが、此処に来た訪問者に、一体、誰が対応するのですか、私ですか、それとも、兵士ですか、農民
ですか、此処では誰が見ても司令官が事実上の領主なんです。
領主には、領主に相応しい住居が必要なんですよ。」
司令官は頷くだけで有る。
「私も、あの地を離れて、此処にたどり着くまで、司令官の言葉や行動を拝見してきま
したが、司令官は立派な領主です。
なんでしたら、今直ぐ、みんなに聞いても宜しいですよ、私は誰も反対はしないと思いますね、之は断
言できます。」
司令官も納得せざるを得ないので有る。
「技師、わかりました、では、貴方に任せますがね、その前に全員に話をして下さいね。」
司令官の言葉は何故か弱弱しいので有る。
「わかりました、じゃ~、今から、全員に説明をしますが、司令官は何も言わないで下さいね、お願い
しますよ。」
司令官は技師の言う通りにするのだった。
「みんな、すまないが集まって欲しいんだ。」
司令官はこれだけを言って下がったので有る。
そして、技師が話し始めたので有る。
城壁を作る事も全員が賛成し、そして、全員が住む為の家つくりの説明に入り。
「みんな、聞いて欲しい事が有るんだ、其れは、みんなもわかっていると思うが、我々を此処まで導い
たのは、一体、誰だ。」
「バカ野郎、そんな話、決まってるだろうが、司令官じゃ~。」
一人の農夫が言った言葉に。
「そうだよ、オレ達はなぁ~、司令官を信じて要るんだよ、何で、今更、そんな事を聞くんだよ~。」
其れは、一人だけでは無かった。
「あんた、何を言ってるのよ、私達、女性達一番の憧れの的なのよ、私はね、司令官の為ならね、なん
だって出来るのよ、何よ~。」
「お~い、お前、何時から司令官の奥さんの積もりなんだよ~、旦那が泣くぜ。」
「なによ~、私だけじゃ、無いのよ、あんたの奥さんだって同じなのにさぁ~。」
その時、女性陣から一斉に。
「司令官、愛しているわよ~。」
更に。
「司令官、わたしゃ~、内の亭主よりもねぇ~。」
あちこちで大笑いになったので有る。
「じゃ~、みんな、司令官は我々の領主だよなぁ~。」
「あったり前の話だろうよ、一体、誰が反対するんだよ、反対のヤツはオレ様がぶん殴ってやるから
よ~。」
また、大笑いで有る。
兵士の中からも。
「司令官殿、私も大賛成です。」
この兵士が言った後に、農夫が。
「あんた、本当は技師さんだってね、じゃ~、聞くが、司令官の家は立派な家になるのかね~。」
「其れは、みんなで考えて欲しいんですよ、司令官はみんなと同じ作りの家がいいと言ったんですが
ね、みんなは。」
「そりゃ~、立派な家がいいに決まっているだろうよ、だけどなぁ~、司令官の気持ちが嬉しいよ、オ
レ達と同じ家でいいと。」
「でもね、わたしゃ~、やはり私達と同じ作りの家じゃ~、少しまずいと思うよ。」
女性陣も困っている。
「みんな、有難う、本当は、オレも、みんなと同じ作りの家に住みたいんだよ、だけど、この技師先生
がね、其れはダメだと言うんですよねぇ~、じゃ~、みんなの意見を聞こうと言う事になったんだよ。」
司令官も本当は嬉しかったのだ。
「みんな、聞いてくれ、私が、司令官の家の図面を描くから、後でみんなの意見を聞かせて欲しいん
だ、それから、作る家を決めたいと思いますので。」
全員が賛成し、司令官の家を作る事に成ったのだが。
「みんな、聞いてくれ、オレの家は一番最後でいいからね。」
司令官は自分の家は最後で良いと言った。
其れは、仲間達がいつまでもテント生活を続ける事に反対で有った、それに、早く、子供達にも自分の
家でゆっくりと眠りに付かせたいと願ったので有る。
其れからは家造りが開始され、同じ造りでは有るが、数日で1棟ができ、それに対し女性達は大喜びで
あった。
出来上がった家に、最初は子供達だけを、其れが数十軒も出来ると、年配の女性達から眠る為に入れる
のだ。
数ヶ月も経つと、殆どの農民達の家が出来上がったので有る。
次は、兵士達の家が完成し、その年の雪が降る頃には、最後と成った司令官の家も出来上がった。
そして、全員が雪の降る時でも暖かい家で過ごす事が出来たので有る。
だが、雪の降る中でも、城壁造りは続く、寒い冬でも続くが、誰からも不満が出る事は無かった。
毎日、森に獲物を探しに出る者、そして、城壁を造る者、其れは各自に出来る事から始まるので有る。
そして、次の春が訪れ、次第に城壁の形は出来、女性陣は畑で働く姿が続き、やがて、作物も多く出
来、森の木々にも実りの秋が来る頃には一部では有るが、城壁の内部も完成したので有る。
そして、この城壁造りが数年続き、完成したのだ。
城壁が完成する頃には、畑でも多くの作物が出来、農民達も、兵士達も感謝をするのだった。
そして、この頃には、農民の中から数人が選ばれ、兵士の中からも数人が選ばれ、其れは、此れから先
の事を話し合う事に成った為で有る。
その時、城壁で見張りの兵士が突然叫んだ。
「お~い、誰か、司令官を呼んでくれよ。」
「何が、あったんだよ~。」
「遠くから、多勢の兵隊がこっちに向かって来るぞ~。」
「わかった、直ぐに知らせるから、お前は、そのまま見張りを続けろよ。」
下に居た兵士は大急ぎで司令官の家に向かった。
一方、この軍勢は数年前にこの地に到着した、農民達を偵察した兵士が所属する国の兵士達だった。
「司令官、大変です、多勢の兵士が向かってきます。」
司令官の家では、農民と兵士の代表が集まり、今後の事を話し合いの最中であった。
「わかった、女性と子供達の半分と、年配の男の半分は直ぐに城壁の中に避難させろ。」
司令官の命令に対し。
「司令官、何故、全員を避難させないんですか。」
「君は何もわかってないね、中に入ってきてだよ、これだけの家が有るのにだ、女子供、それにだ、男
が一人も居なかったら、かえって不自然だろうし、半分でも居れば何とでもなる言い訳が出来るんだよ、
わかったら、直ぐに避難させろ。」
「了解です、司令官。」
兵士の数人が手分けし、半分の家族を避難させた、勿論、完成した城壁の中で有る。
残りの家族は何時ものように畑で農作業を行っている。
その頃、軍勢の先頭が城門の外に到着した。
「我々は、この地から遠くの国から来た、我々は国王陛下の命で来たので有る。
此処の城主に面会をしたいので、お取次ぎを願いたい。
私は、国王陛下の軍司令官で有る。」
いかにも、軍司令官らしい言葉使いで有る。
「わかりました、少しお待ち下さい。」
と、言って。その場を去り、下に居た司令官は首を立てに振り、数分後、城門の扉が開いたので有る。
そして、司令官と思しき騎士と、数名の兵士が中に入ってきた。
城壁の上では、兵士が門前の兵士の人数を数えている。
司令官は馬から降り。
「貴殿は。」
と、司令官が先に聞くと。
「私は、この地より、10日ほど離れた城に居られます、国王陛下の命でやってきたのです。」
「わかりました、私は、この城壁の一応城主となっていますが、要件をお聞きしたい。」
城の司令官の側に居る兵士は、中に入った時から、盛んに何かを探している様子だ。
「実は、国王陛下がこちらの城主を夕食にお招きしたいと申しております。」
この司令官は、盛んに探りを入れて要ると思ったのだ。
「私をでしょうか、其れは、何かの訳があっての事でしょうか。」
我が、司令官、この人物は相当な大物だと、側に居る技師は思ったのだ
「いえ、別に、訳などは有りません。
ここ数年来、この地で、城壁を建造されて要ると聞き、陛下がどの様な人物か知りたいと申されました
ので、本日、私が、此方に伺ったのですが、如何でしょうか。」
司令官は、少し考えた振りをして要る、それも作戦だったのか、但し、兵士の動きを見ている。
「私は、城主と言っても、貴殿が見られての通り、数十名と、他は農民達だけです。
私も、日頃は、あの者達と一緒に農作業をする毎日で、国王陛下にお会いするとなっても、今、着てい
る服しか有りません。
この様に汚れ、破けた服しか有りませんので、国王陛下に、大変失礼かと思いますが。」
何処がだ、その服は、先程まで、他の農民が着ていた服では無いか、この大狸がと。
「いいえ、別に、その様な事は有りません。
閣下には、大変失礼だと思いますが、私の馬車に閣下の身体に合うかわかりませんが、服を用意して有
りますので、馬車の入城を許可していただけますれば直ぐにでも。」
「其れは、ありがたいですね、是非ともお借りさせて頂きます。」
兵士は馬車と呼び、馬車は直ぐに入ってきたので有る。
その馬車は、一見、誰が見ても、騎士が乗るような馬車では無かったのだ。
「閣下、宜しければ、この馬車を置いておきますので、閣下のお気に召された服をお選び下さい。」
「其れは、誠ですか、なんとお礼を申し上げて良いかわかりません、では、早速に。」
司令官は、兵士を呼び、馬車を司令官宅の前に行かせるので有る。
「閣下のお住まいは。」
「私の家は馬車が止まったところに有りますが、それが、何か。」
技師の言った話は当たっていたのだった。
「いいえ、何でも御座いません。
其れと、付かぬ事をお聞きしますが、閣下、腰の物は、それに、兵士の持っておられる槍と弓ですが、
あの様な武器では敵が来た時には、如何されるのですか。」
司令官は笑っている。
「その話ですか、我々の敵はですね、あの森の中に居るのです。」
この騎士は探るのだが。
「森の中にですか。」
「その通りです、ご覧のように、農民が育てた大切な作物を食い荒らす獣ですよ。」
騎士は不思議そうな顔付きで有る。
「私達の兵士と言っても、殆どは獣を追い払うか、運がよければ、捕獲できます。
勿論、捕獲した獲物は、我々の腹の中に入りますがね、わはっ、はっ、はっ。」
と、司令官は、笑い飛ばしたのだ。
「わかりました、それで、閣下、何時頃になれば、来ていただけるでしょうか。」
司令官はまたも、考える振りをするのだ。
「私にも都合がありますが、明日の朝、此処を出る事に成ると思いますが。」
「わかりました、では、私の部下を10名ほど残します。
この者達が道案内と閣下の護衛をいたしますので、誤解されぬ様にお願いします。」
「でも、今の私達には、貴殿の部下をお泊め出来る場所は提供できませんが。」
「いいえ、閣下、その様なご心配は無用です。
今夜は城外で野営をし、明日に備えます。
其れと、部下にも、森からの侵入する獣の見張りを立たせますので、今夜は、城壁の兵士もゆるりと休
めるように手配をして下さい。」
「其れでは、私の仲間も数人同行させて頂いても宜しいでしょうか。」
「勿論で御座います。」
「司令官、何から、何まで、有難う存じます。
では、国王陛下にはよろしくお伝え下さい。」
司令官は頭を下げ、城門を出、部下に命令したので有る。
そして、騎士は部下の兵士10人を残し、帰るのだった。
だが、まだ安心はしなかったのだ、司令官は城外に出たのだ、残った10名の兵士は既に野営の準備に
入っていたが。
「如何です、中に入られては。」
司令官は探りを入れたのだ。
「いいえ、私達は、この場で、今夜は野営をします。
閣下のご気遣いを頂き、有難う御座います。」
「そうですか、門は一応閉めますが、何時、獣が入るかわかりませんので、宜しく。」
と、司令官は中に入り、門は閉められたので有る。
そして、要約、城壁の中から、家族達が出てきたのだった。
「司令官も大した役者ですね。」
司令官は涼しい顔で。
「そうかなぁ~、あの兵士達は中の隅々まで、何かを探していたが、多分、この中までは気付いていな
いと思うが。」
側に居た農夫たちも頷いている。
「それで、明日だがなぁ~、君も一緒に行ってくれないか。」
技師は驚いた。
「司令官、何故です、私が行っても、何の役にも立ちませんよ。」
「いいから、いいから、其れに、我々、二人だけではまずいですからね、君、兵を数名、選んで下さい
ね。」
側近の兵士も驚いている。
「司令官は、何か考えでも有るのでしょうか。」
「実は、そうなんだ、国王側も、こっちを探ろうとしたんだよ、だけどね、オレと技師の二人だけで
は、余計に疑われる、さっきの司令官は報告で、数十名の兵士が居ると、だからね、数人を連れて行くん
だ、その数名で、城は敵だと思って偵察するんだ。
だけど、目立つなよ、普通に居るだけでもわかるからな。」
「司令官、わかりました、では、私を含めて5名を選びます。」
「頼みますよ、其れと、土産が必要だが、何かいい物は無いかなぁ~。」
その時だった。
「司令官、昨日、収穫した芋が有るよ。」
今年は、芋が大量に収穫出来たのだ。
「其れが一番だな、あの兵士達もしきりに畑を見ていたからね、だけどなぁ~、我々も食べるからね、
余り多くはダメだぞ。」
「司令官、4袋くらいでどうです。」
司令官も農夫も、この4袋に入った芋が、その後、司令官や農夫達に大きな変化をもたらす事になると
は、この時は考えもしなかったので有る。
そして、明くる朝、早く司令官と技師、5人の兵士は農場を出た。
「閣下、お待ちしておりました。
閣下は馬車にお乗り下さい、お供の方々は馬車の後から付いてきて下さい。
では、出発します。」
彼は、士官であろう、馬車の前には、国王の兵士が10名、馬車の後からは技師と兵士5人が続く。
数日後、司令官達は大国の城門を入ったので有る。
司令官を乗せた馬車は城の正面に有る馬車寄せに止まった。
司令官が降りると、出迎えはあの司令官だった。
「閣下、お待ちして降りました。」
「有難う御座います。」
その時、正面階段を下る、数人のお供の中心に、この城の城主と思われる人物も居る。
「お待ちしておりました。
余が、この国を治める国王で城主で有る。
そちが、あの城の城主なのか。」
城主は威厳を見せ付けたいのか、司令官を見下している。
「陛下、私は、城主では、御座いません。」
「そうか、わかった、其方は、そちのお供なのか。」
「陛下、大変、申し訳御座いませんが、彼らは、私の仲間で、私の部下では御座いません。」
「そうか、わかった、そち達も一緒について参れ。」
技師と5人の兵士も城の中心部に入って行くので有る。
その技師と5人の兵士は周りをキョロキョロと見ている。
出迎えの司令官は何も言わず、ただ、見ているだけである。
暫く歩くと、其処は、立派な造りの部屋に入った。
其処は、国王が食事をする部屋だった。
「さぁ~、皆の者座れ。」
城主が座るのを待ち、司令官と後の6人も座った。
暫くすると、数人の女性達が音楽に合わせて踊り始めたので有る。
司令官はわざと驚いた。
「そちは、女の踊りは初めて見るのか。」
「陛下、さようで御座います、仲間も初めてなので、ただただ、驚くばかりです。」
城主は司令官が世の中の事は余り知らないと思って要る。
踊りが終わる頃、食事が出てきたのだが、技師も兵士達も初めて見る豪華な食べ物だ。
「陛下、私達はこの様な豪華な食べ物は見るのも初めてで、本当に食べても宜しいのでしょうか。」
城主は二コットして。
「之は、全てそち達のものじゃ、何も遠慮は要らぬ、毒などは入ってはおらぬわ、わはっ、はっ、は
っ。」
と、大声で笑うのだ。
城主の側には、王妃と思われる女性と、数人の男達が座っている。
其れは、この城主の主だった家臣と妻たちであろう。
そして、司令官の側には美しい女性が座り、6人の仲間の横にも美しい女性達が座って居るのだ。
司令官の前には、先程の司令官の座る。
「司令官。」
二人は同時に。
「はい。」
と、返事をし、立ったので、食事に入っていた側近たちが笑ったのだ。
「そちではないぞ。」
「陛下、私も仲間からは司令官といつも呼ばれておりますので。」
「そちを、司令官と呼ぶのか。」
「はい、その通りで御座います。」
これも、実は司令官の作戦であった。
「はい、陛下。」
今度は、国の司令官が返事をした。
「司令官の報告では、そちたちが造っておるのは、城築ではなく、城壁だけを造っていると申したが、
其れは、誠なのか。」
「はい、陛下、誠で御座います。
見た者は私だけでは御座いません。
私の部下、数十人が中に入りましたが、中に有るのは畑だけで、他には何も有りません。」
技師が考案した、城壁内の隠し部屋は見つかってはいない。
「そうだ、そちの名前を聞いて無かったなぁ~。」
「はい、陛下、私の名前は、ロシュエと申します。」
城主は頷き。
「そうか、ロシュエと申すのか、では、ロシュエ聞くが、司令官の報告では、ただ、石を積み上げ、ロ
シュエの館は無かったと聞くが、何故じゃ。」
「その通りで御座います。
それに、私に館などは必要が有りません。
其れよりも、仲間の住まいが大切ですので。」
「何、では、ロシュエは仲間とやらの家が大事なのか。」
「その通りで御座います、仲間の殆どが農民ですので。」
城主は、何故、農民の住まいが大事なのかわからないのだ。
「ロシュエは、農民の住まいが大事なのか、では、兵士達は何処に居るのだ。」
「はい、其れは、農民達と同じ造りの住まいですが。」
城主は大変な驚きで有る、それに、食事中の側近たちも、領主や兵士達よりも農民が、何故、大事だと
思っているのだ。
「殆どが農民だと、司令官の報告も同じで有るな、だが、石垣だけで、敵が来たときはどの様にするの
じゃ。」
「陛下、私達は、毎日、毎夜、敵からの攻撃を受けております。」
司令官の話に食事中の全員が大変な驚きなのだ、兵士も居ない石垣だけの砦に、毎日、敵が攻撃をする
とは。
「ロシュエ、毎日、毎夜、攻撃を受けて農民だけで守る事が出来るのか。」
「陛下、私達全員で防いでおります。」
「兵士は何人居るのか。」
「私達に本当の兵士はおりませんが、城壁の上から、常に森を監視しておりますので。」
食事中の家臣たちも手を止めて聞いて要る。
「森を監視して要るのか、敵は何人位なのか。」
誰でもその様に考える、敵は人間だと思うからだ。
「陛下、私達の敵は森に住む獣です。
狼、それに、猪や鹿なのです。」
家臣たちは、敵が狼や猪や鹿と聞き、全員が大声で笑っている。
「陛下、狼や猪や鹿は毎日、毎夜、出没し、農民達が苦労して、作った作物を食い荒らすのです。
私も含め、少ないのですが、兵士が、毎日、毎夜、見張りをして要るのです」。
城主は何も知らないのだと、司令官は思った。
「ロシュエ、それ程にも、狼や猪や鹿は、毎日出没するのか。」
「はい、陛下、狼や猪や鹿は、農民が作る作物が美味しいと知っております。
少ない時で、数頭ですが、多いと数十頭が、一度に出没し畑を荒らすのです。」
「何か、鹿や猪が数十頭もか。」
「はい、その通りです。
その獣から作物を守る為に高い石垣が必要になったのでございます。」
家臣達は納得したのか、再び食事を始めたので有る。
「だが、狼や猪や鹿が高い石垣を登るとは、思わぬのが。」
司令官は正確に報告をして要ると。
「いいえ、陛下、野生の猪や鹿は、私達の背丈くらいであれば、簡単に飛び越えます。
それで、私達の技師が考えたましたのが、5ヒロの高い城壁の様な石垣が必要だと言ったので、失礼し
ました。
此処に居りますのが、私達の技師で、名をワルシュと申しますが、そのワルシュが中心となって造った
ので御座います。」
「そちが、ワルシュと申すのか。」
技師のワルシュは席を立ち、城主に向かい礼をするので有る。
「ロシュエ、そのワルシュは農民なのか。」
司令官の芝居は本物で有る。
「その通りで御座います、ワルシュは、以前、猪や鹿に作物を食い荒らすのを防ぐ石垣を作りましたの
で、今回もワルシュが中心となり、石垣を造ったので御座います。」
「ロシュエ、じゃがなぁ~、そちたちは石垣だと思って造っておるが、我が軍の司令官の報告では、立
派な城壁だと申しておるが。」
「陛下のお城と我々の石垣の違いをご存知でしょうか。」
城主の顔色が変わったので有る。
「ロシュエ、そちは、余を愚弄する気なのか。」
司令官は頭を深深と下げ。
「陛下、決して、その様な事はございません。」
「ロシュエ、話によっては、そち達、全員この城からは生きて帰る事は出来ぬぞ。」
司令官は、再び深深と頭を下げ。
「陛下のご見識の高い事は、私も存じております。
陛下、ですが、陛下のお城に有る城壁の上には、城壁よりも高い見張り所があります。」
城主は頷き、司令官の話を聞いて要る
「それに、城壁には必ず、弓矢から兵士を守る為に窓の様な物が有りますが、私どもの石垣には、その
様な物は作られてはおりませぬ。」
司令官は城主ではなく、この城の警備隊の司令官を見たので有る。
「司令官、ロシュエは城壁では無いと申しておるが、そちは、どの様に見るのか。」
城主は司令官を睨みつけるのだ。
「陛下、誠に申し訳御座いません。
確かに、今、考えますと、城壁とは思えぬ様な造りでございます。
ただ、私は、余りにもこの石垣が、高く造られておりましたので、城壁に見えたので御座います。」
司令官は冷汗をかいている様だ。
「だがのう、ロシュエ、そち達は、その様な高い石垣を造るから、あらぬ疑いを掛けられたのだぞ。」
城主は二コリとした。
「陛下、誠に申し訳御座いません、私は、この地が陛下の物で有ると知らずにおりましたので。」
司令官の新たな作戦で有る。
其れは、この城主が自分の支配地だと思わせる必要があったからだ、だが、城の構えを見ても、自分達
が開拓しているところは支配地でない事は明白でだったのだが。
「ロシュエ、その通りで有る。
そち達は、我が領土に入り込んでおる事は確かじゃ。
だがな、ロシュエ、あの地までは遠い、我が国の司令官も特に巡回をする必要は無いと言っておるが、
此れからは、司令官も巡回の時には、そち達の城を訪ねるように申しつけて置くぞ。」
城主はニンマリとしている。
司令官も腹の中ではニンマリとしているのだ。
「陛下、有難う御座います。
私も、陛下のお心をありがたく思っております。
ですが、私達は石垣を造りましたが、城は造ってはおりませんので。」
城主は、造られたのは、石垣で城では無いと改めて言われ。
「ロシュエ、わかっておる、その方達は、何も心配は要らぬわ。」
司令官は改めて、深深と頭を下げ。
「陛下、誠に有難う御座います。」
顔が少し和らいだように見えたのだ。
「ロシュエ、司令官の話では、そち達の武器は、我が軍の兵士が使っておる武器とはかなり違うと聞い
ておるが。」
やはり、聞きたいのか。
「陛下、私達には、陛下の申される様な武器などは御座いません。
先程も申しましたが、私達の敵は獣で御座いますので、私は、陛下が申される様な武器などを持ってお
りません。」
本当は城壁に造った隠し部屋の中に有るが、之は、誰にも見つからない場所に有る。
「司令官からも、その様に聞いてはおるが、その粗末な武器で猪や鹿を仕留める事は出来るのか。」
「陛下、今までに、何頭かは仕留める事は出来ましたが、其れ以上は無理でした。」
本当は全く違い、兵士達は既に数十頭の猪や鹿を捕獲し、肉は全員で食べ、残った肉は冬の為に塩漬け
に、皮も冬に備え隠して有るのだ。
「粗末な武器では、猪や鹿を仕留める事など出来ぬぞ、我が軍から、獣退治のために弓と矢を進呈する
が、どうだ。」
司令官はこれで占めたと思ったのだ。
「陛下、其れは誠で御座いますか。」
「余は嘘はつかぬぞ、わはっ、はっ、はっ。」
「陛下、誠にありがたき、幸せに存じます。
これで、今まで以上の狼や猪や鹿を撃退する事が出来、冬の備えも出来まする。」
「そうか、そうか、では、司令官、弓、と矢をロシュエ達が帰るまでに揃える様にな。」
城の司令官は、頭を下げ。
「陛下、承知致しました。
閣下、どれ程を用意すればよいでしょうか。」
「司令官殿、私達の民兵は数十人です。
民兵分だけで宜しいかと。」
「閣下、では、数百人分を用意いたします。
其れと、弓ですが。」
「司令官殿、弓はお任せいたしますが、余り多く頂く事になれば、陛下のお城を守る兵士達の矢が少な
く思いますので。」
「閣下、私達の城には、やじりを作る専門の鍛治が居りますので、心配は無用です。
では、私にお任せいただけますでしょうか。」
「ロシュエと司令官、その様な話は後でするが良い、すべて、その方達に任せる。」
城主は本題に入りたいので有る。
「陛下、かしこまりました。
閣下、では、後程に話の続きは。」
「陛下、司令官殿、有難う御座います。」
と、頭を下げるので有る。
「ロシュエ、実はの~、そちに聞きたい事が有るのじゃ。」
司令官は、領主が何かを求めていると思った。
「陛下、私が、お答え出来る事であれば、どの様な事でも。」
「ロシュエ、そなた達は、作物だけを作っていると聞いたのだが、豊作なのか。」
司令官が予想もし無かった話で有る。
「ハイ、陛下、私達は作物だけを作っておりますが、其れが、何か。」
「その作物は、どれ程とれるのか。」
司令官は答えに困ったのである。
豊作だと言えば、すべての作物を取り上げられると思ったのだ。
「陛下、豊作までとは言えませんが、でも、私達の仲間が食べるだけの収穫は有ると思っています。」
「わかった、ロシュエ、実はの~、我々が住む、この地では毎年、思う様な収穫で出来無いのじゃ、だ
がな、そち達が居る、あの土地では、以前の領主から多くの収穫が有ったと聞いておる。」
この城主は何が言いたいのだ。
「陛下、私達は以前の事は全く知りませんので、ですが、今、私達が居らせていただいておりますとこ
ろの殆どが、大小の岩が有り、その岩を取り除く事が先決です。」
「ロシュエ、余もわかっておるは、そち達が岩を掘り出し、城壁なる物を作っておると早くから聞いて
おる。」
司令官は、この地の開拓を始めてから、数十回にわたり、偵察を受けていた事は知っていたのだ。
「陛下、私達は、陛下の領地で有る事も知らず、開拓をしておりましたので。」
「ロシュエ、その話は良い、それでじゃ、そなたに、あの領地を与えるから、我が国に作った作物を供
給する事を頼みたいのじゃ。」
司令官は、大変な驚きであった。
「陛下、今、なんと申されたのでしょうか、私の聞き違いかと思うのですが。」
城主は顔色も変えず。
「ロシュエ、余があの土地を下げ渡すと言ったのじゃ。」
其れが本当で有れば、次の戦略を考え無ければと思う司令官だった。
「陛下、大変ありがたいのですが、ただ。」
司令官は口を濁したのだ。
「ロシュエ、あの領地では不満なのか。」
城主の顔色が少し変わった。
「陛下、その様な事はございません、ただ。」
「ロシュエ、ただ、何だ。」
「私達は、今の所を開拓するだけで、他の場所も開拓するとなれば人手も足りません。」
「ロシュエ、其れも、十分承知しておるわ。
其処でだ、そち達が作った作物だがな、どの様に分配しておるのじゃ。」
「ハイ、陛下、私もですが、私の父、いいえ、先祖の代から作った作物は、まず、農民を優先し、次に
兵士、最後に領主が頂く事になっておりました。」
城主の顔は驚きではなく、半分は怒りの表情に成ったのだ。
「ロシュエ、何故じゃ、何故、領主が最後なのじゃ。」
「ハイ、陛下、私達の先祖ですが、我が国王の領地でも、最も遠くにあり、本国からは30日以上も掛
かります。
その為、すべての権限は、この地の司令官に与えられておりました。」
城主は頷くだけで有る。
「最初の頃は、陛下が思われております通り、領主が作物の分配を決めておりました。
ですが、その分配に不満を持った農民が直訴に及んだのです。」
「直訴は、死刑と決まっておるぞ。」
「陛下、その通りで御座います。
ですが、私の曽祖父は違ったのです、農民の不満を聞いたので御座います。」
「ロシュエ、何故じゃ、何故、農民の不満を聞いたのじゃ。」
「農民は、いつも腹を空かせていると、それでは、満足な作物は作れぬと、申したので御座います。」
「ロシュエ、何故じゃ、その農民達を外敵から我々が命をかけて守っておるのだぞ。」
城主の怒りも当然だと、司令官はわかっている。
「はい、陛下、勿論で御座います。
ですが、農民は、兵士や領主の為、朝の早くから、働き、其れは、年中なのです、でも、外敵は、毎
日、襲ってくるのでは有りません。
でも、農民は、毎日が戦争だと、申すので御座います。」
城主の顔色が少し変わってきた。
「ロシュエ、其れは、当たり前の事じゃ、だがな、兵士は、何時、敵が襲ってくるかわからぬ状態で
も、常に、常にじゃ、訓練をしておるのじゃぞ。」
城主の口調も変わってきたのだ。
「陛下、勿論で御座います。
ですが、陛下、陛下もお腹が減って、戦に望めますでしょうか、兵士もです。」
城主は頷き。
「余も、腹が減っては戦は出来ぬぞ。」
司令官は、占めたと思った。
「陛下、今、申されましたように、兵士も腹が減っては戦は出来ぬので御座います。」
「当然の事じゃ。」
「私の先祖も、農民から同じ話を聞かされたので、御座います。」
「それで。」
城主は話を聞きたいのだと。
「陛下、私の先祖は農民の話を聞き、この駐屯地では、今後、作物の配分は農民に任せる事にしたの
で、御座います。」
「ロシュエ、その後、いかがしたのじゃ。」
「はい、陛下、農民が半分。」
「何、半分だと。」
再び、城主の顔色が変わった
「その通りで、御座います、陛下。」
「では、残りの半分が領主なのか。」
司令官は、表情も変えず。
「いいえ、陛下、残りの半分ですが、半分以上が兵士にと申しますか、兵士の人数に合わせたので、御
座います。」
「では、領主は、どれだけの取り分なのじゃ。」
「ハイ、領主は、兵士を大事だと考え、時には、配分の8割か9割が兵士に配分します。」
「ロシュエ、それでは、領主には殆ど無いではないか。」
「陛下、その様に成りますが、でも、お陰でと申しますか、農民は元気になり、兵士達の指揮も上が
り、領主の命令する事無く、敵を撃退する様になったので御座います。」
「では、領主は、満足しておるのか。」
城主も少し落ち着いたのか。
「ハイ、私の先祖は、何もする事が無かったと聞いております。」
「何、領主は何もする事が無いだと、其れは、誠なのか、余は信じる事が出来ぬぞ。」
「ですが、陛下、今、私と、一緒に来た仲間は、その農民達の子孫です。
なんでしたら、直接、お聞きに成られては如何でしょうか。」
城主は、まだ、信じる事が出来ないと、表情に表れているのだ。
「陛下。」
「なんじゃ、司令官。」
「陛下、私も、はじめは信じる事が出来ませんでしたが、閣下の仲間と言われる農民達ですが、閣下の
命令では無く、誰もが自主的に、それも、楽しく、農作業を行なっておりました。」
「何、楽しく農作業をだと。」
「はい、陛下、私の仲間は、強制されて、農作業や、他の仕事に就いてはおりません。」
「では、ロシュエの所では、みなが、そうなのか。」
「はい、陛下、その通りで、御座います。
私は、司令官と言う立場で、仲間に接してはおりません。」
「では、先程、申した作物の分配も全員で決めるのか。」
「陛下、今は、全員で協議する事は、ございません。」
「では、誰が、決めるのじゃ。」
城主は興味を示し出したので有る。
「陛下、私達は、数人の代表で仕事の配分や、他の事も協議し、決めるのです。」
「ロシュエ、其れは、農民の代表というのか。」
城主にこのような話が理解出来ると思わないのだが。
「その通りで御座います。
農民の代表ですが、同じ農民ですので、仲間から、仕事に対する不満も聞くのです。」
「では、ロシュエは、その不満とやらを聞いてどの様にするのじゃ。」
「私は、すべての不満を聞きますが、中には、不満ではなく、建設的な意見も有ります。
私は、仲間に伝えておりますので、全ての不満を解消する事は出来ないと。」
城主も、少し理解できたのか、頷くので有る。
「其れは、余もわかるぞ、それで、今、申した建設的は意見とは、どの様な事じゃ。」
城主は、何かを求めているようだが。
「私達は、すべての作業を分担で行っています。」
「何、分担作業だと、ロシュエ、農作業は、すべて同じでは無いのか。」
またも、城主の顔付きが変わったのだ、だが。
「陛下、私は、分担作業が、今では、成功し、其れで、楽しく農作業が出来るのです。」
「では、そちは、その分担作業とやらで、農作業が成功したと申すのか。」
「陛下、その通りで御座います。」
「では、どの様な分担を行なって要るのじゃ。」
城主は、司令官から、早く聞きたいのだ。
「私達の農作業は、3日働き、1日休む方式で行っています。」
城主もだが、食事中の家臣達も初めて聞く話で、大変な驚き様で有る。
「ロシュエ、今、なんと申した。
3日働き、1日は休みと取るとな。」
城主は、驚く以前に、怒りを感じて要るのだ。
「ロシュエ、農民はなぁ~、生かさず、殺さずじゃ、その方は、余を、愚弄する気か。」
城主の怒りは頂点に達して要る。
「陛下、私は、陛下を愚弄しようなどとは思ってもおりません。
ですが、私も、この方法を取り入れ、その結果、同じ仕事だけでなく、ほかの仕事も行い、仲間は、ど
の仕事も出来る様に成ったので、ございます。」
「ロシュエ、其れは、農作業に関する事なのか。」
「はい、陛下、私達の仲間に鍛治専門の職人が居なかったのですが、今では、誰もが出来る様になり、
それで、農工具や、クワ、スキの修理も出来る様になったので御座います。」
「其れは、良かったの~、じゃが、農民は死ぬまで農民じゃぞ。」
「陛下、私は、その様には思ってはおりません。
全ての農民は農作業だけを行う人達とは思っております。」
他の出席者は食事の手を止め、ロシュエと城主の話を聞いて要る。
「では、農民ではなく、農作業を行う職人だと申すのか。」
「はい、陛下、その通りで御座います。」
だが、城主は、この話を何時までも続ける気持ちは無かったので有る。
「ロシュエ、その方が行って要る方法が成功し、作物も多く取れるというのじゃな。」
「はい、陛下、今では、仲間も、陛下の領地で作物を作らせて頂き、みんなは陛下に感謝を致しており
ます。」
城主の顔はほころび。
「そうか、そうか、そちの仲間とやらは、余に、感謝しておるとな。」
「はい、その通りで御座います。
陛下、私は、この先、陛下から、お借りしております、あの土地で農作業を続けたいのですが、如何で
しょうか。」
司令官は頭を下げるので有る。
「ロシュエ、その方達の望はかなえるぞ、だがな、ロシュエ、余からも、頼みが有るのじゃが。」
城主は、何を頼むのか、其れは、司令官が思っていた事とは全く違ったのである。
「陛下、私に出来る事であれば、どの様な事でもお伺い致します。」
「そうか、ロシュエ、実はの~、そちの農場で作っている作物の事で相談したいのじゃ。」
「えっ、陛下、私達の農場で作った作物の事だと聞えたので、ございますが。」
城主は、少し言いにくいのか。
「その通りじゃ、我が国では、この数年間、作物の不作で農民もだが、兵士達も満足に食べる事が出来
ぬのだ。」
司令官は、最初、目を疑ったのだ、では、この食卓に上がった食べ物はいったい。
「陛下、その話は誠でしょうか。」
城主も頷き。
「ロシュエ、誠の話じゃ。」
「ですが、この食卓には大変なご馳走が並んでおりますが。」
「実はの~、この様な食事は、もう、無いかも知れないのじゃ。」
その話しが本当ならば、今まで、農場が攻撃を受け無かったと言う事は理解が出来る。
「ですが、陛下、何故、その様な話を、私にされたのでしょうか。」
城主に迷いは無かったのだ。
「ロシュエ、そなたに聞いた話しが誠だと思い、我が国の窮地を述べたのじゃ、どうだ、ロシュエ、そ
ちの農場で作った作物を分けてはもらえないだろうか。」
城主は、初めて頭を下げたのだ。
「陛下、その様な事をされては、私は困ります。
どうか、頭を上げて下さい。」
城主は、真剣で有る。
「我が国の隣国には、この様な話はできぬのじゃ、先程から失礼は事ばかり聞いたのも、ロシュエが、
本当に敵対する人物では無い事を知りたかったのじゃ。」
その話を聞いていた、司令官もやっとだが、この城主がした質問が理解できたのだった。
「陛下、私も、はい、わかりましたとは、簡単に答える事が出来ないのです。」
「ロシュエ、余も承知はしておる、何も、今、直ぐに答えろと言わぬ。」
だが、司令官は直ぐに答えを出したのだ。
「陛下、大変、申し訳御座いませんが、今は、作物をお渡しする事が出来ないのです。」
城主の顔色が変わったのだ。
「何故じゃ、ロシュエ、そちの農場では、先程も豊作だと申したではないか、あれは全て嘘なのか。」
城主は、本気で怒ったのか、今までとは違う口調だ。
「確かに、今年も豊作で御座いますが。」
「其れならば、良いではないのか。」
やはり、城主は理解をしていないと。
「陛下、今年、取れました作物の全てを食べるのでは有りません。
確かに、農民は半分を取りますが、その半分のまた半分は、次の作物を植える為に大切な種を採る為の
作物なのです。」
此れからが本当に大変だと司令官は思ったのだ、この城主は、作物の全てを食べると思って要る、この
城主に、種が大切だと理解させる必要が有ると。
「陛下、先程も申しましたが、我々の農地には、今も作物が有ります。
ですが、この作物は種を取る為の作物なのです。」
「では、種を採った後は、どうなるのじゃ。」
「はい、陛下、食べ物が必要なのは、何も、我々人間だけでは御座いません。
人間と同じ様に働く、牛や馬にも必要なのです。」
「何、牛や馬にも、作物を与えるのか。」
城主は、まだ我慢をして要るのだ。
「その通りで、御座います。
牛や馬は、人間以上に働いておりますので。」
「なんと言う事だ、人間が食べる作物を、牛や馬に与えるとは、わかった、だが、冬になるとじゃ、食
べる物は如何するのじゃ。」
この城主、なんとしても作物が欲しいので有る。
「陛下、冬には、冬に出来る作物が有りますので。」
「ロシュエ、その冬に取れる作物をじゃ、我が国に届けてはくれぬか。」
司令官も、此処で引き下がる事は出来ないので有る。
「陛下、今は、収穫する時期では無いのです。
作物にも、収穫時期が御座いますので。」
「ロシュエ、わかったが、今のままでは、我々は、冬を越す事も非常に厳しいのじゃ。」
「陛下、其れは、農民でしょうか、それとも、お城の人達なのでしょうか。」
司令官も簡単には受け入れる事は出来ないのだ。
この国と我々の農地は余り離れていないのに、何故、この国では不作なのかと思うのだ。
だが、城主も必死の様で有る。
「勿論、我々全員の話で有る。」
「陛下、我々全員とは、お城の人達なのですか。」
城主は、初め簡単に話が出来、食料が手に入ると考えていたのだが。
「勿論、我が領民も含め全員の事じゃ。」
司令官も領民の全員と聞き、少しはと考えてはいるのだが簡単に答えは出せない。
「陛下、わかりましたが、この問題は、私が独断で決める事は出来ませんので、明日の朝、早く、お城
を出発し、戻り次第、仲間と協議し、少しでもお届けが出来る様にと考えますが、如何でしょうか。」
「ロシュエ、わかった、少しでも良い、一刻も早く届けて欲しいのじゃ。」
だが、司令官が言った、少しだけとなれば、領民に果たして食料が届くのか。
「ロシュエ、今、申した、少しの食料だけで、全ての領民が食べる事が出来るのか。」
この城主は何を考えて要るのか。
「陛下、其れはわかりません。
私は、陛下の領民が何人居られるのわかりませんので。」
その答えは、城主ではなく、この国の大臣が答えた。
「ロシュエ殿、我が国の領民は2万人ほどでございますが。」
其れは、この城内の兵士達を含んでいなかったのだ。
「2万人も居られるのですか、では、その半分くらいに成ると思いますが。」
「では、残りの半分は、生き残れぬと申すのか。」
司令官は、あえて多く言ったのだ。
「ハイ、陛下、誠に申し訳御座いませんが、その様に成ります。」
先程、答えた大臣もだが食事中の全員は何も言えないのだが、司令官と同行した者達は、
静かにに食べている。
彼らにすれば、今までに見た事の無い豪華な食べ物ばかりだった。
「ロシュエ、では、その方に頼みが有るのじゃ、そちが申した、残りの領民じゃが、そち達が、連れて
は行けぬか。」
またも、思いもよらない話で有る。
領民の1万人も連れて行けとは、この城主は、本当に何を考えて要るのだ。
「陛下、少しお待ち下さい。
私が、陛下の領民、1万人も連れて帰るのでしょうか。」
司令官は、本当にあきれたのだ、この城主は、一体、何を考えて要るのだ。
「ロシュエ、そちの話を聞き、この男なれば、我が、領民の命を預ける事が出来ると思ったのじゃ。」
城主も司令官の話を真剣に聞いていたのだ。
「先程の食料も話もですが、1万人の人達をお受けするとなれば、私達には、大変重要な問題です。
今、お答えする事は出来ませんので、少しの時間を頂きたく思います。」
司令官も、之は、重大な問題だと考えて要る。
「ロシュエ、わかった、何とか頼むぞよ。」
「はい、陛下。」
司令官も其れ以上は言えないのだった、そして、暫くして。
「ロシュエ、先程の話、宜しくな、余は、部屋に戻るが、後は、司令官と良く話してくれ、ロシュエ、
頼むぞよ。」
と、言って、城主は、食事を終え、部屋を出、側近の大臣達も同じく部屋を出たのだ。
残った、司令官と技師長や兵士達も食事を終え、この国の司令官と話しに入った。
「司令官殿、先程、陛下が申された話ですが、本当なんですか。」
「閣下、誠に申し訳の無い話ですが、全て本当なのです。」
司令官は、嘘はついていないと思ったのだ。
「司令官殿、それ程、此処では作物が取れないのですか。」
司令官は、何も言わず、ただ、頷くだけで有る。
「でも、司令官殿、私も先程、陛下に申し上げましたが、私の一存で決める事は出来ないのです。」
「閣下、私も、十分承知しておりますが、ここに有る食事は、3日振りの食事なんです。」
なんと、この城では、毎日、食事が出来るのでは無かった。
「司令官殿、なんと、では、この食卓に有る料理は見せ掛けだといわれるのですか。」
「閣下、誠で御座います。」
技師長や同行の兵士達は、口は開いたままで、何も言えないのだ。
「では、領民達の生活は。」
「はい、閣下、領民も同じです。」
司令官は、結論を迫られるのだが。
「司令官殿、私も、なんとかしたいと思ってはいるのですか。」
「閣下、私も、承知しております、それに、閣下が、直ぐお答えが出来ない事も十分理解はしておりま
す。
ただ、私は、本当の話をお伝えしたいだけなのです。」
「陛下は、司令官に全てを任せるといわれておりましたが。」
「その通りで御座います、私が、閣下の領地から戻り、全てをお話しをしたのです。
先程、陛下と同席した大臣達は、自分達の事だけを考えておりますが、閣下が真剣なお話をされ、それ
で、少しは考え方も変わったと思います、と、言いたいのですが、多分、変わる事は有りません。」
「司令官殿は、陛下から全幅の信頼を得られておられていると思います。
そこで、司令官殿の。」
今は、其れ以上の話を聞く事を止めたので有る。
其れは、下手に話をすれば、何処で、誰が、聞いて要るかわからないと思ったからだ。
「閣下、明日、戻られる時に、持ち帰られる物を書き出したのですが。」
司令官は、一覧表を見たのだ、それには、弓矢にナイフなどが書かれているが、この書面、何か不自然
なのだ、だが、あえて聞く必要は無かった。
「司令官殿、之は。」
「はい、閣下に、明日、お渡しいたします物の一覧表で御座います。」
「これほどの物をお借り出来るとは思いませんでしたので、驚いているのです。」
事実、書いて有る物を見ると、この城に有る弓矢、それに、剣まで書かれている、槍も、数百人分は有
る。
国の司令官は、何かを伝え様としているがのだが、司令官も、今は、伝える事が出来ないと考え。
「閣下、それに、馬車も必要になると思いますので。」
「其れは、ありがたい。」
「では、閣下、明日の朝までに用意致しますので。」
「そうですか、では、司令官殿、明日の朝に。」
司令官は部下に何かを指示している。
そして、明くる日の朝である、早くから、馬車に積み込む音が聞えるのだ。
「閣下、朝食の用意が出来ましたので、昨日の食堂においで下さい。」
と、彼は、昨日、司令官から指示を受けた兵士で有る。
「有難う、では。」
と、ロシュエ司令官は昨日の部屋に向かうのだ、すると、兵士が書き物を渡したのだ。
「閣下、之は、後で読んで下さいと、司令官からの伝言です。」
と、兵士は小声で言ったのだ。
「わかりました、有難う、それで、司令官殿は。」
「司令官は、朝、早く出かけられました。」
「行き先は。」
「私は、聞いておりませんので。」
だが、兵士は知って要ると思った。
「有難う、では。」
部屋に入ると、数人の女性が、ロシュエを待っていたが、彼女達も同じで、何も言わず、食事の用意を
して要る。
「有難う。」
食卓には、之は、一人では食べ切れないほどの量だと。
「すまないが、陛下は、まだ、お休みでしょうか。」
「はい、その様で御座います。」
と、頭を下げた。
ロシュエ司令官は考え事をしながら、食事を終え、そのまま、仲間の待つ馬車の方に向かうので有る。
馬車は、5台あり、護衛の兵士達10人が居る。
「貴方方は、私達の護衛なんですか。」
「はい、その通りです。」
一人の兵士が答えたのだ。
「そうですか、では、宜しく頼みますね。」
司令官は馬に乗り、合図をした。
「では、戻りましょうか。」
5台の馬車は、ゆっくりと城門を出たのだ、だが、城門には、数人の兵士が居るだけで、あとの兵士
は、一体、何処にこの城には、数千人の兵士が居るはずだ。
「司令官、この城は何かありそうですね。」
同行した兵士も同じ様に思って要る。
確かに、昨日は多くの兵士が居たのだが。
「オレも同じなんだよ、この城には何か有るねぇ~。」
「司令官、昨日の話ですが、お受けされるのでしょうか。」
技師長も昨日の話が気になっているのだ。
「城主の話が本当だとすればだが、それでも、我々に領民、1万人を引き受けるなどは出来ないよ。」
だが、技師長はわかっている、司令官の事だ、領民の多くは農民だ、農民の苦しさは知って要る。
「ですが、領民と言っても、殆どが農民だと思いますが。」
「だから、オレは困っているんだよ、あれが、城の者ならね、直ぐに断るんだがねぇ~。」
司令官は引き受けるつもりで有ると、技師長は思った。
数日の野営が終わり、今日は、懐かしい自分達の農地に帰れると思うと、心は早くも、農場に有る、だ
が、その時で有る、護衛の兵士が。
「閣下、右手の方から兵隊が近づいてきます。」と。
「なんですか、兵隊がですか。」
と、司令官は振り替えり、右手を見ると多勢の兵隊と民間人と見られる、それも多勢の人達が歩いてく
るのだ。
数人の兵士が馬を走らせて来る、やがて、其れは、司令官と部下の兵士であった。
「閣下、申し訳御座いません。
私達も、同行させて頂きたいのです。」
司令官と同行の技師長は大変な驚きで有る。
「司令官殿、なんですって、いったい、何処に行かれるのですか。」
司令官はわかっていたのだ。
「閣下の下にです。」
「私達の農場にですか。」
「司令官殿、何ですって、私達と同行されるとは。」
驚くの当然で有る、其れは、数千人の兵士と農民だったからだ。
「私の独断で、国を出ました。」
「国を出ましたって、簡単に言われますが。」
「閣下、その通りです、私は、閣下の下で働けるならと思い。」
之は、困った、だが、農民達に今更戻れとは言えない。
「私達の農場では、皆さんの、お世話が出来るだけの食べ物は有りませんよ。」
閣下、私は、何も申し上げる事は有りませんが、せめて、領民に少しだけの食べ物だけでも、と、あつ
かましいお願いだと思っておりますが。」
司令官は頭を下げたのだ。
「司令官殿、では、お城には。」
「はい、閣下の想像されるとおりです。
陛下と数人の重臣の全員だけです。」
「では、陛下はご存知なんですか。」
司令官は少し考え。
「実は、之は、陛下が決められたのです。」
其れは、予想さえしなかった話で有る。
「陛下の命令ですか。」
「はい、閣下、私が、閣下があの地で農地を作られ、作物を作って居られる事を報告したのです。」
ロシュエ司令官は、ただ、頷いた。
「でも、陛下の重臣たちは、私の報告を聞き、直ぐに兵隊を向かわせ、食料を奪えと言うのです。」
「何ですって、私達の大切な食料を奪えと。」
「その通りです、陛下も初めは、重臣の言う通りだと思っておりました。
ですが。」
「司令官殿、ですが、なんです。」
ロシュエの口調も、表情も変わったので有る。
「閣下、私も正直はところ、閣下の農地でお話を伺うまでは、兵士に命じ、食料の略奪を考えておりま
した。
ですが、閣下は農民だけの事を考えておられていると、私は、その時に、気が付いたのです。
この閣下の下で有れば、自分の命を預ける事が出来ると。」
司令官は真剣だと。
「では、初めは食料を略奪しようと。」
「はい、閣下、誠に申し訳御座いません。」
「ですが、何故、多勢の兵士と農民と思われる領民が一緒に。」
「私は、閣下との話の後で陛下の部屋に呼ばれました。」
では、あの後でこの話があったのかと考えるのだ。
「陛下は、なんと。」
「私に命ぜられました。
領民の全てと兵士を連れてロシュエ閣下の下に行けと。」
其れこそ、予想もしなかった話で有る。
初めは、食料の略奪を考えていた城主が何故だ。
「ですが、あの時は、何も起こらなかったですが。」
あの時とは、食事の時で有る。
「実は、あの食事中に閣下を死なせる積もりだったのですが。」
驚くべき話だ、だが、何故、城主の気持ちが変わったのだ。
「私達を暗殺する積もりだったんですか、でも、何故、暗殺しなかったんですか、簡単に出来たと思い
ますが。」
其れは、何の武器も持たずに来たのだから。
「閣下のお話では、いつも農民が大切だと、其れが、陛下の心に変化をもたらしたと、私は、思ってい
ます。
それに、今は、奪った食料は直ぐに食べつくすのです、では、その後は。」
多分、この司令官は城主に直訴したのだろう思うので有る。
「では、陛下の命令で来られましたが、城に残られた重臣たちは。」
「はい、何も知りません。
ただ、城に兵士が居ない事に今頃、気がついていると思いますが。」
「では、残りの兵士は。」
「閣下、残りの兵士も数日以内に城を抜け出すと思います。」
之は、城主に対する反逆では無い、領民のために、城主は決断したのだと。
「でもね、司令官殿、余り期待されると、私は困るんですがねぇ~。」
「はい、閣下、勿論、承知しております。
領民達も承知の上ですので、領民は持てるだけの荷物と食べ物は全員で分けるようにと伝えて有ります
ので。」
「司令官殿、馬をお借りしたいのですが、宜しいでしょうか。」
「はい、閣下、私の馬で良ければ。」
と、言って、司令官は馬車から下りたので有る。
「技師長、オレが戻ってみんなに話すから、後の事は宜しく頼むよ。」
其れだけを言い残し、ロシュエは馬を走らせるのであった。
「技師長殿、閣下は何処に。」
技師長と同行の兵士達は二コ二コしている。
「司令官殿、何も心配は有りませんよ、私達の司令官の事ですから、何とかしますよ、ねぇ~、技師長
さん。」
「そうですね、我々の司令官は自分の事よりも、農民の事を一番大切に考える人ですよ。」
だが、一抹の不安は有るのだ、農場でも、これだけの人数が食べるだけの作物は無いと技師長は思って
要る。
司令官といえば、その後、農場に戻り。
「お~い、みんな帰ったよ。」
「司令官だけですか。」
一人の農民は、何か有ったのだと表情が変わったので有る。
「お~い、みんな集まってくれ、話が有るんだ。」
農場で働く、農民達は不安な顔つきで集まるので有る。
「司令官、一体、何があったんだ。」
「今から、みんなに大事な話しが有るんだ、みんな聞いてくれるか。」
司令官は、その後、今までの話をした、そして、数時間が経った頃で有る。
「司令官、自分達は今から森に入ります。」
と、一人の兵士が言ったのだ、すると。
「司令官、私達は、森に入り、きのこと山菜を探しに行くわよ。」
女性の一人が言ったのだが。
「バカ野郎、森へはオレ達が行く、女を危ない目に合わせる事なんか出来ないからよ~。」
「みんな、有難うよ、みんなの気持ちを今から戻り、伝えてくるからなぁ~。」
と、ロシュエは代わりの馬に乗り、再び戻るのだった。
一方、その頃、技師長達はと言うと。
「司令官殿、お城の農民達が不安そうな顔ですよ、何も心配ないと言って上げて下さい。」
一人の兵士は農民達の不安な顔付きを見ていたのだ。
「わかりました、私から、みんなの不安を少しでも和らげる事が出来るのであれば、なんとでしますか
ら。」
司令官は馬車を降り、後ろの農民達の方に向かうので有る。
司令官は長い間、農民達を話をして要る、其れが、暫くすると元気は声が聞えたのだ。
農民に何を言ったのかは知らないが、其れからは、農民達の歩むのが早く成ったのだ。
「技師長さん、オレ達の司令官の事だ、我々の農場に受け入れると思うがねぇ~。」
「そうですねぇ~、私も、間違いなく受け入れると思いますが、問題はどれくらいの作物が残っている
かですねぇ~。」
兵士も頷くのだ。
ロシュエ司令官が戻ってから数時間が経つ、果たして話し合いはどうなったのか。
その頃、司令官は馬を飛ばしていたのだ、早く、みんなに知らせたいと必死だった。
そして、太陽が西の空に沈む頃に。
「お~い、司令官が戻ってこられたぞ~。」
と、先頭の兵士が大声で叫んだ、その大声は全員に聞えたのか、後ろからも歓声が上がった。
司令官は、馬車のところまで来て、馬から馬車に乗り込み。
「お~い、みんな、今日は此処で野営をして、明日の朝、早く出発するぞ~。」
その時、後ろの農民から、さらに、大きな歓声が上がったのだ、其れは、明日には農場に入れる、そし
て、食事も出来るのだと思ったからだ、城の司令官も馬車まで来た。
「閣下、大変、ご苦労様でした。
それで、如何でしたでしょうか。」
司令官は、まだ、確信が無かったのだ。
「司令官殿、明日の朝、早く出発すれば、昼までには到着しますよ。」
司令官は、少し安心したのか。
「其れは、大変良かったです。
ですが、閣下、お仲間は、どの様な返事をされたのでしょうか。」
不安は残っているのだ、司令官は少し沈んだ顔付きだ。
「司令官殿、我々の仲間は、大歓迎すると言っておりますよ。」
司令官の顔がやっと和らいだのだ。
「閣下、有難う御座います。
これで、私の責任を果たす事が出来ました。」
すると。
「司令官殿、責任はまだ残っておりますよ。」
司令官は意味がわからないので有る。
「閣下、私は、農民達を送り届ける命令を受けましたが。」
「司令官殿、ただ、送り届けただけでは、任務は終わりませんよ、私はねぇ~、城主がどんな気持ち
で、司令官殿に任せたと思うのです、今頃じゃ~、あのお城では家臣達が大騒ぎしていますよ。」
司令官は、まだ、理解が出来ないのだ。
「閣下、私は、ただ、命令を受け。」
「司令官殿、そうじゃ、無いんだって、城に何人が残っているか知って要るんですか、この農民は全員
だろうよ、全ての農民がいなくなればだよ、それに、この兵隊の人数もだ殆ど全員だと思うがねぇ~。」
司令官は、やっとわかったのだ。
「では、閣下は。」
「その通りだよ、あんたに、全てを託したんだよ、だから、此処まで来たんだろうよ。」
「では、城は。」
「古い家臣達が乗取った、と、思って要るよ、だがね、農民が、それもだ全員がいなくなればどうなる
と思いますか。」
「閣下。」
「そうだよ、何れ、古狸たちは死ぬねぇ~、それも、餓死だから、一番苦しい死に方だよ。」
「私は、どの様にすれば宜しいのでしょうか。」
「司令官殿、あんたの任務はだねぇ~、農民の為に、何でも出来るかね。」
司令官は、なんと答えて良いのかわからないのだ。
「私に出来る事であれば。」
「そうだよ、此れからはなぁ~、農民達の為に任務を続けるんだね。」
「閣下、わかりました、私も、閣下の下で、働かせて頂きますので。」
「司令官殿、わかってくれた様でよかったよ、それじゃ~、今から野営の準備に入って欲しいんだ、其
れと、兵士は、周りの警戒を頼むよ、この周りじゃな、夜に成ると狼が出るんでねぇ~。」
「閣下、わかりました、私も、今夜は農民達の為に、警戒に入りますので。」
司令官は、早速、兵士達に命令を出したのだ、司令官の顔は何かが吹っ切れた様だった。
「技師先生よ~、2日間で簡単な図面は書けるかねぇ~。」
「勿論です、私は、あの城に入った時に、何かを感じておりましたが、正か、こんな事に成るとは思い
ませんでしたよ、でも、城の兵隊と、多勢の農民を見たときに、私は、はっとしたんです。」
「わかったよ、では、頼みましたよ。」
城から来た兵士に守られた1万人の領民達は本当に久し振りと思われる静かな夜を過ごすのだった。
次の朝、早く。
「さぁ~、行くぞ、しゅっぱ~つ。」
ロシュエ司令官の号令で、兵士と領民達1万人は何時もより元気を出して歩き始めたので有る、其れ
は、大人も子供も、そして、老いた人も、女達もだ、昨日までとは、全く違う足取りで有る。
「あんた、これで、私達も幸せになれるねぇ~。」
「そうだよ、オレ達にも、やっと希望が沸いてきたんだよ。」
農民夫婦のやり取りである。
それ程、あの国では、農作物が育たなかったのだろうか。
「みんな、後少しで、我々の農場に着きますよ、我々の仲間がみんなを歓迎すると言ったからね、何も
心配する事は無いですからね。」
ロシュエ司令官は、農民達を励ましていくので有る。
やがて、太陽が頭上を過ぎた頃、高い石垣が見えたのだ。
「お~い、大きな城壁が見えたぞ~、後、少しだからな、みんな、頑張れよ~。」
先頭の兵士が大声で叫んだ、すると、城門が開くのが見え、農民達は一斉の大声で。
「お~い、着いたぞ~。」
予定よりも、少し遅れたのだが、全員が無事に着いたので有る。
城内からは多くの仲間が手を大きく振り、笑顔で走って出てくるのが見える。
ロシュエ司令官は先頭になり、笑顔で城内に向かうのだ、やがて、司令官の前を、一人、また、一人
と、通っていくので有る。
「司令官も大変だね、後は、オレ達がやるからね、暫く休みなよ。」
「有難うよ、だけどなぁ~、オレは、休みが取れないんだよ~。」
その通りである、司令官に休みは無いのだ。
「何故じゃ~、司令官も人間なんだからさぁ~、狼じゃ、無いんだからよ。」
「其れは、わかってるよ、だけどよ、オレが先頭になれば、此処に着いた農民達もだ。」
「司令官、何を、言ってるんだよ、バカ野郎、司令官がだよ、本当に倒れたらだよ、オレ達は、本当に
困るんだからよ~、わかってるのかよ~。」
仲間の農民達の言葉は悪いが、本当に司令官の身体を心配して要るのだ。
「有難うよ、みんな、オレは、本当に嬉しいよ、だけど、今日着いた人達の為に、オレがよ~。」
「このバカ司令官が、今まで、オレ達の為にいつも先頭になりやがって、本当に仕方の無い程目立ちや
がりの司令官なんだから、たまにはよ~、オレ達にもよ目立つ事をさせてくれよなぁ~。」
司令官の顔には一筋の涙が流れたのだ。
「みんな、本当に有難う、それじゃ~、お言葉に甘えて、ず~っと、休みにするか。」
仲間を含め、全員が大声で笑うのだ、其れは、城から到着した司令官と兵士達も同じだった、。
その時。
「閣下、私が先頭になります。
私では、閣下のような仕事は出来ないと思いますが、私は全力でやりますから、私にお任せ下さい。」
「司令官殿、よく言ってくれました、此れからの数年間は大変だと思いますが、宜しくお願いします
よ。」
司令官は頭を下げたのだ。
「閣下、どうか、頭を上げて下さい、お願いします。」
「有難う、司令官殿、だけど、オレの真似はしないで下さいよ、オレは、無茶をしますんでねぇ~。」
「閣下が、無茶をされるとは思わなかったですねぇ~。」
「司令官殿よ、オレはさぁ~、元々融通の利かない男なんでね、だから、余計に無茶をするんで。」
「閣下、わかりましたよ、では、私が、閣下を制御いたしますから、宜しいですね。」
二人は、顔を見合わせ、二コットするのだった。
「お~い、みんな、今日、来た人達の為に、パーティをするから準備を手伝ってくれよ。」
近くで、農夫が叫んだ。
「すまね~な、オレも手伝うよ。」
「司令官は、休みなんだから、いいんだよ。」
「そうだよ、司令官は本当に仕方が無いんだからねぇ~、本当に融通が効かないんだから。」
「そうか、やはり駄目か。」
「勿論だよ、早く座って、早く、早く。」
司令官は仕方無く座るのだった。
「お~い、これじゃ~、肉が足りないぞ~。」
「閣下、何時もこうなんですか。」
「そうだよ、此処じゃ~な、みんなが、自分に出来る事は、出来ないとはっきりと言えばだ、他の仕事
に回るんだよ、之がね、ここでのやり方なんですよ。」
「閣下、私は、閣下やみんながうらやましいですよ、本当に、私は、その城の事しかわかりませんが、
何をするにしても、許可が必要で、上からの命令でしょう。」
「だけどね、時には、意見の違いで衝突する事もあるんですがね、でも、大丈夫ですよ、みんな、お互
いの気持ちがわかっていますからね。」
「司令官、肉が足りないんですよ。」
農夫は既に弓を持っていた。
「それじゃ~、司令官殿、オレ達の出番となりましたよ。」
司令官に休みは無かったのだが、心は弾んでいるのだ。
「閣下、私も同行させて頂きます。」
「それじゃ~、司令官殿、弓の上手な兵士も数人連れて行きましょうかね。」
城の司令官は何かを期待しているのだ、そして、数人の兵士が来た。
「じゃ~、行ってくるよ、みんな待っててくれよな。」
「司令官、十頭もあれば十分だからね。」
「お~、任せなよ。」
「本当かよ。」
「大丈夫だって、ハ・ハ・ハ・・・。」
こんな、やり取りを司令官と農夫がして要る、城から来た司令官は本当にうらやましいと思いつつも森
に入って行くのだった。
「技師さんよ、あの人達に家が要るね~。」
「そうなんだ、司令官からも頼まれているんだ。」
「じゃ~、明日から森に入って、切り出しに入るか。」
「頼むよ、オレはね、造りは同じで行こうと思って要るんだ。」
「わかったよ、じゃ~、オレが、みんなに伝えるからよ~。」
「すまないが、頼むよ。」
「そんな事、いいんだって、気にするなよ。」
だが、技師は別の事を考えていたのだ。
「すまないが、代表を呼んで欲しいんだよ。」
「技師さん、わかったよ。」
農夫は立ち上がり、仲間の方に向かった、暫くして、数人の代表が来たのだ。
「技師さん、何か相談があるって聞いたんだが。」
「そうなんだ、此処に帰る前なんだけど、司令官に言われたんだ。」
「技師さんよ、司令官は、今日、着いた人達を受け入れを決めたと思うんだよ。」
「そうなんだ、だけど、今までの農地じゃ、狭いから、広くしたいんだが、問題はね、何処に作るかな
んだ。」
「技師さん、今までの倍以上広い土地がいるよ。」
今の農地では、受け入れた1万人と兵士達の食料は確保出来ないのだ。
「それで、明日、何人かに手分けして、適当な土地を探して欲しいんだが。」
「技師さんよ、わかったが、今日来た人達にも協力を頼みたいんだよ、みんなの協力が有れば早く探せ
ると思うんだよ。」
「わかったよ、じゃ~、誰か、森に入って司令官に戻ってくれと伝えて欲しいんだ。」
「じゃ~、オレが行ってくるよ。」
「すまんが、頼むよ。」
一人の農夫が急いで森に行くのだ、暫くして、司令官と城の司令官も一緒に戻ったのだ。
「技師長、オレに話があるってか。」
「良かったです、お二人が戻られて、実は、今日、多勢の人達が我々の農場に到着されました。」
「そうだよ、其れが何か。」
司令官はわかっているのだが。
「司令官、今までの農地では狭いと思いませんか。」
其れも、司令官はわかっているのだ。
「当たり前の話だよ、技師長の言いたい事はわかっているよ。」
「それで、お二人に相談があるんですが。」
「農地と住居の問題だよな。」
技師長は頷き。
「司令官、私は、明日からでも、住居の建設に入りたいのですが。」
「其れは、大変良い事ですね。」
と、司令官は言って、舌をペロット出すのだった。
城の司令官は何も言わず、頷くだけだ。
「技師長、問題は人数だろう。」
さすが、司令官、わかっているな、と、技師長は思ったのだ。
「司令官、建物は今までと同じですが、何処に建てるかですが。」
技師長は、以前の場所には建てる場所が無いと思って要る。
「そうか、場所か、じゃ~、代表を呼んで相談してはどうですかね~。」
其れは、技師長も同じ考えで有る。
「私も、其れが、一番良い方法だと思います。」
「じゃ~、直ぐに集まってもらおうか。」
技師長はニヤリとして。
「司令官、もう、全員が司令官室の会議室に集合完了です。」
「わかったよ、では、我々も行きますかね、司令官殿。」
「はい、閣下、お供します。」
三人は急ぎ、司令官室に向かうのだった。
「お~、みんな集まってくれていますね。」
二人の司令官と技師長は会議室に入り座ったので有る。
「では、今から会議を始めたいと思います。
本日の議題ですが、今日、到着されました、新しい仲間の住居の問題ですが、司令官からお話しを頂き
ます。」
技師長は、直ぐに司令官と交代したので有る。
「いま、技師長が言ったように、今日、我々のところに新しい仲間が多勢到着しました。
私は、仲間達の為に住居を大至急建てる必要が有ると思う、それで、みんなにお願いをしたいんだ、み
んな、協力して欲しいんだよ。」
農民の代表は頷き。
「それで、出来れば、明日からでも作業に入りたいんだが、どうだろうか、みんな。」
「司令官、オレ達は司令官が戻ってくる前に、全員で相談したんだよ。」
二人の司令官は頷き。
「するとね、みんなが賛成してくれたんだよ。」
「そうだよ、司令官、オレ達も、此処に来るまでは大変な苦労をしたんだ、だからね、今日の人達も同
じだと思って要るんだ、だからよ、明日からは、今日着いた人達にも参加してもらって全員で家を建てる
事が一番いいと思うんだよ。」
「閣下、私は、今、どの様な言葉で感謝の気持ちを伝えて良いかわからないのです。
私達が、この様な歓迎を受けるとは思いもよらなかったので。」
城から来た司令官の目は潤んでいたのだ。
「司令官、オレ達に任せなよ、何でもするからよ。」
農民達の代表は気持ちの整理は出来て要るのだと、すると。
「司令官、話は違うんだがね~、オレ達の司令官は一人なんだがよ、此方の人も司令官と呼ばれている
だろう、オレ達、みんなで相談したんだがよ。」
司令官は何かあると思ったのだ。
「何を相談したんだ。」
「今日からはだなぁ~、オレ達は城から来た人を司令官と呼び、オレ達の司令官を大将と呼ぶ事に決め
たんだ。」
「何、このオレが大将だ、其れは、困るんだよ、だって、オレは、大将なんてガラじゃ、無いんだから
よ~。」
「大将、其れは、オレ達が困るんだよ、司令官は一人、大将も一人と決めたんだからね。」
農民の代表はニヤッとしている。
「閣下、私も、大賛成です、私も、あの城では司令官と呼ばれておりましたが、此処では、私は、司令
官では有りません。」
「何を言ってるんだよ、あんたは司令官だからね。」
司令官、いや、大将となったロシュエは満更で無かったのだ。
「じゃ~、決まりだな、大将で、これでいいんだよなぁ~。」
みんなは二コ二コとしている。
「わかったよ、仕方が無いから引き受けるがな、オレは、この先もオレだからね。」
司令官は、大将になり、城から来た司令官は、今まで通り司令官と呼ぶ事に決まったので有る。
「じゃ~、司令官、明日から仕事に入る前に仕事があります。其れを、今から言いますからね。」
司令官は仕事の前に仕事が有ると言われたが、意味がわからないのだ。
「閣下、仕事の前に仕事ですか。」
代表達は意味がわかっているので、二コ二コとしている。
「司令官、別に難しい仕事じゃ~、無いんだよ、之はね~、仕事の効率を上げる為には必要なんだ。」
司令官は、首をひねっているのだ。
「オレ達の仕事では、毎日、誰かが仕事に就いているんだよ、それでね、3日間仕事をすると、1日は
完全に休みを取るんだよ。」
「閣下、3日の仕事で、1日は完全に休みですか、そんな事をすれば家や城壁の完成は遅れると思いま
すが。」
ロシュエは二コットして。
「オレも初めはそう思ったんだよ、だけど、之が、結果的には早く出来るんだなぁ~。」
司令官は、意味がわからないので早く聞きたいのだ。
「閣下、では、どの様方法で行うのですか。」
「オレ達が考えた方法はねぇ~、簡単に説明するとだ、3班に分けるんだよ。」
「其れは、全体をですか。」
「そうだよ、兵士も農民もだよ。」
「閣下、お話を聞かせて下さい。」
司令官は興味を持ったのだ。
「では、簡単に説明をするよ、最初に森へ行って、木を切り出すんだ、其れは、みんなの家を建てるた
めに必要な木材だからね、其れと、大きな岩を運ぶ時に必要な丸太もいるんだ、簡単な話だろう~。」
司令官は頷いている。
「司令官、これに兵士がいるんだよ、其れとは、別に農地を作るために農民だ、之は、男も女も関係は
無いんだよ、ただしだよ、年配の女性は子守、年配の男性は、切り出した木材を寸法どおりに切断する、
簡単だろうよ、そして、最後にだ、年齢は15歳以上と決める、まぁ~、それでも、15歳前後と言う事
かな。」
「閣下の言われる事は、実に簡単なんですが、班分けは、一体、誰がするんですか。」
「そうだなぁ~、初めてだから、先に作業した兵士と農民の代表にしてもらおうかね~。」
ロシュエは、農民の代表を見たのだ。
「司令官、済まないねぇ~、何時もの口癖で、大将、それでいいですよ、オレ達がやりますから、大丈
夫ですよ。」
代表の農民は納得しているのだ。
「将軍、オレ達は、兵士の班分けを行いますので。」
「オイ、オイ、オレは将軍じゃ~、無いぞ。」
と、言ったのだが、心の中では、将軍と呼ばれ大満足だった。
「閣下、私の任務ですから。」
「司令官の仕事は全体を見る事だよ、事故の無いように、其れと、身体の調子が悪い人が居れば、休ま
せる、之がねぇ~、以外と難しいんですよ。」
「閣下、何故、難しいんですか。」
司令官は、今までは相手が兵士だった、兵隊の任務は死を覚悟の上で戦いに行くのだ。
其れが、此れからは無理をさせず、身体を休ませなければ成らないのだ、だが、現実は誰もが無理をす
る、其れは、自分自身のためだからで有る。
「司令官、其れはだよ、兵士も農民も、今度は、自分達が生活する為の、家と農場を作る為に無理をす
るんだ。」
「閣下、私は、兵士には少々の無理をさせても良いと思って要るんですが。」
「司令官、其れはね、兵士の為じゃ~、無いんだ、誰かが無理をするとだ、それに、釣られる、確かに
兵士は体力があるよ、だから、みんなの事も考えてだよ、兵士も休みを取らせる必要があるんだ。」
「閣下、では、其れを管理するんですね。」
司令官も、其れが、本当に大変な任務とは、まだ、理解が出来ないのだ。
「司令官が一人で管理する事は無理だよ、だからね、5人くらいを選んで、彼らに管理をさせる、其れ
を統括する任務が司令官なんですよ。」
「閣下、わかりました、今からでも5人を選びに入ります。」
「宜しく、頼みますよ、詳しい話は、此処に居る代表に聞いて下さい。」
「閣下、わかりました、皆さん、宜しくお願いします。」
と、司令官は農民と兵士の代表に頭を下げるので有る。
「さぁ~、みんな、此れからは、忙しくなるぞ、今日から頼みますよ、ところで、司令官、兵士の服装
なんですが。」
「閣下、私は、城を出る時に民衆の服を用意させましたので、今から、説明した後に兵士全員に服を着
替えさせますので。」
「わかりました、オレも少し心配になっていましたので、これで、安心しましたよ。」
司令官も、二コットするのだった。
そして、全員が元司令官の家を出、司令官は兵士達の所へ、ロシュエは、農民達の元へ行くのだ。
「お~い、みんな、集まってくれないか、今から大切は話しが有るんだ。」
新旧の農民達は集まったのだ。
「実はなぁ~、明日からの事で、みんなに話しが有るんだが、その前にだ、新しく此処に来た人達の間
に、前から居るみんなが入ってくれ、夫婦は一人とみなし、15歳以上の男女は全員参加する事、そし
て、年配者は。」
「お~い、将軍、誰が、年配者だって。」
ロシュエは頭を下げ。
「申し訳ないが、50歳以上は年配者扱いとする。」
「じゃ~、オレは、49歳だから、若いんだな。」
「バカ野郎、49歳も50歳も同じだよ。」
と、みんなが大笑いをするのだが。
「だがね、この年配者には、大切な仕事があるんだなぁ~、之が、みんなのためにだ。」
「将軍、早く言えよ。」
「わかったよ、まず、女性なんだが、幼い子供達の面倒を見て欲しいんだよ、其れと、男性はだ、森か
ら切り出された丸太の加工を頼みたいんだよ。」
「じゃ~、将軍、オレ達にも仕事が有るんだなぁ~。」
「勿論だよ、それでだ、女性陣もはじめは男性陣と共に、小石を拾って欲しいんだ、この一帯の小石を
だよ、其れが終われば、今後は全員の食事造りに入ってもらうから、其れと、詳しい話はみんなの側に居
るものから聞いてくれ、其れと、最後に班分けもな。」
「将軍、班分けとは、何の話しだよ。」
「その話も全部だよ、オレが詳しく説明するよりもわかるからよ~、それじゃ~、みんな、宜しく頼む
よ。」
明くる朝早くから、農民の1万人と兵士達は班分けで大変な忙しさだったが、夕方に、全てが終わり、
その明くる朝で有る。
「さぁ~、行くぞ、出発。」
ロシュエの号令で、新旧の農民達と兵士達は大声を上げ、自分達の仕事に入った。
だが、農場が完成するまでは、最低でも2年間が必要だったのだ。