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なろう底辺の私に出版社から電話がかかってきた  作者: 大崎真


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3/3

③堂々の完結編

資料が届いて四日後。

またもや、出版社から着信があり、留守電も入っていた。資料が無事に届いたのか、目を通して頂けたのか、そして折り返しの電話が欲しいという内容だった。


考えてもみてほしい。そもそも、かけ放題プランができない人間に大金を出してくれというのが間違えている。それになにより、出せるわけないじゃないか。どんな作品なのかも知らないのに。


仕事終わりの夕方、フリーダイヤルで電話をかけることにした。


『いかがでしたか?』

「ちょっと大金なので……」

『ご家族で話し合われましたか?』

「一応、話しました」


妻は、


――どんな作品なのか知らないけど、誰にでも電話をかけてるんじゃないの?


と言っていた。普通なら怒るところなのかもしれないが、


(俺もどんな作品なのか知らないんだよな……)


と、思ってしまった。


「大金ですし無理ですよ」

『そうですか~……』

「半分ぐらい、そっちで負担してもらえません?」

『これでもかなり負担してるんです』

「ええーっ? 本を作るのってそんなにもするんですか?」

『するんです』

「もうちょっと、なんとかなりません?」

『十二月の予算が決まっていて、その範囲内で頑張って出してるんです。もうこれ以上は出せません。こっちもカツカツで、とても無理なんです』

「あ、じゃあ、こうしよう。印税いらないから全額負担してくんない?」

『そういうわけにもいかないんです。十二月の予算が決まってるんです』

「そんなこと言わずにさ~」

『無理なんです~』


お互いに共通していることは、どちらもお金がないことと、この作品に懸ける想いや情熱がさほどないことだ。


こっちは内容を知らないから情熱を注げないが、そっちは内容を知ってるのに情熱を注げないなんて、ちょっとひどいじゃないか。……とはならないか。内容を忘れている時点で、こっちもひどいか。


「ちなみに、この作品を評価しているのは、今のところ小川さん一人だけなんですか?」

『いえ、私は評価する部署ではないので、他の方たちがされました。一人だけが評価したというわけではないですよ』

「そうですか」


一人だけの評価ではないとはいえ、一度は落選しているし、確実にハネると確信できるものでもないけど何がハネるかも分からないから、とりあえず自費出版のお声があったのだろう。


「じゃあ、とりあえず、今はやめておきます。気持ちが変わったら、また連絡します」

『分かりました』

「ちなみに、《小説家になろう》のサイトの大崎真のペンネームで書いてますんで、よかったら読んでみてください」

『小説も書かれてるんですね! うち、小説も扱ってますんで、よかったらお願いします~』

「エッセイで小川さんのこと書きますんで、よかったら読んでみてください」

『お手柔らかにお願いしますね~』

「はい、いろいろありがとうございました」

『こちらこそ、お時間、ありがとうございました。では、失礼しま~す』


こうして、電話は終わった。

いつもの日常に戻り、いつものなろう底辺の私に戻ったのであった。

そして、


(結局、《これな~んだ?》ってどんな話だったんだろう?)


と、私は思った。

小川さん、読んでますか?



あれから、必死に考えて、途中の内容はまだ思い出せないままですが、ラストのオチだけ思い出しました。「ああ! なるほど! うまい!」みたいなラストです。


電話口で「印税いらないからさ~」と言った時に思いました。どうやら、私は印税はいらないみたいです。いや、もらえるものなら全額、受け取るけども。


なんで書いてるんだろう?と思い返してみて思いました。どうやら私は、読者の皆さんが笑ってくれたり、感動してくれたり、驚かせたいだけみたいです。


きっと、ここで書いている皆さん、そんな方たちばかりですよね。

しんどいことの方が多いですが、なろうの皆さんがしんどいのに頑張ってはるので、私ものんびりですが頑張ります。


読んでくださって、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
お互いに共通していることは、どちらもお金がないことと、この作品に懸ける想いや情熱がさほどないことだ。 ぶははは(笑 向こうの儲けになるなら、こちらには許可してもらうだけになるはずです(経験あり) …
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