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新・305号室
担がれた身体がふわっと重力から放たれる。いや、重力のままに落とされる。
地面に転げるや否や、梶さんが顔面から305号室のドアに突っ込む。俺も暫くは身体がまともに動けそうになかった。しかし梶さんをどうにかしなければいけない。俺は感覚の少ない身体を一生懸命に、丁寧に動かしながら梶さんを部屋の中に運んだ。そこには産まれたばかりの鹿のような儚さがあった。梶さんをベッドに放る。ベッドは不思議と綺麗だった。俺もすぐそばの地面に横たわる。暫くすると、身体全体に激痛が走る。ずっと運ばれていて血が巡っていなかったのと、「昨日のこと」もあったのだろう。俺は歯を食いしばって耐える。血の味がする。歯茎から流れたものだ。身体は電流が走ったみたいに、無理やり筋肉が引き伸ばされる。そのままもがいていると、段々と痛みはひいていった。三時間ぐらいかかった。ようやく身体を起こせるようになる。地面は血が少し垂れている。それを念入りに拭き取る。拭き取っているティッシュペーパーを見ながら考える。
「なんで廃墟にこんなに物が揃っているんだろう。」
ピンポーン
呼び鈴の音まで同じか。




