表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/30

5

「……着いたか。ようやくって感じだな」

 石の回廊を抜けた先で、ジーンは足を止めた。足元の魔法陣が静かに淡く光を放ち、その光が周囲の空間をぼんやりと照らしている。そこは、石造りの巨大な闘技場――いや、“見世物小屋”とも呼べる異様な空間だった。


 階段を降りきったばかりのジーンは、未だに自分の手を掴んで離さない少女に、軽くため息をついた。


「おい、いい加減手を離せ。ここまで来たら、もうおしまいだ」


「なによその言い方……!」


 シャルロッテはムッとしながらも、渋々手を放す。が、次の瞬間、今度は彼の服の裾をつまむように掴んだ。


「……おい、俺の服を掴むな。伸びるだろ……高かったんだぞ、それ」


 その声には呆れと、わずかな照れが混じっていた。


 シャルロッテは視線を逸らし、少し頬を赤らめて、ぽつりと呟く。


「……ありがとう。あなたのおかげで、降りられたわ」


 その言葉にジーンが反応する間もなく、空気が変わった。


 目の前に、突如として男が現れたのだ。真紅のタキシードを身にまとい、白い手袋をはめたその男は、どこか仮面のような整った顔立ちをしていた。表情はにこやかだが、どこか歪んでいる。


「ひゃっ……!」


 驚いたシャルロッテが、咄嗟にジーンの背後に隠れる。


 その男は芝居がかった動作で帽子を取り、一礼した。


「君たち、随分とゆっくりだったねぇ? いくら“元”貴族の坊ちゃん嬢ちゃんとはいえ、ここではただの“商品”なんだから、時間くらいは守ってくれなくちゃ困るよ」


 ジーンは眉ひとつ動かさず、口の端を上げた。


「悪いね。でも、時間の指定がなかったからね。まあまあ、そんなにせっかちだと、早死にしますよ? お兄さん」

場にそぐわない軽口を叩くジーンに、男はゆっくりと一拍手。そして、口角をさらに引き上げた。


「ふふ……いいね。そういう口の回るやつ、私は大好きだ。大体そういう奴から潰れてる瞬間が堪らないんだよ。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ