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才能がなかった俺は、仲間をS級に導き、『花園の批評家(レビュアー)』と呼ばれるようになった。  作者: マボロシ屋
8章 埋もれた真実、隠れた現実

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97:『雨上がりの虹』のオフ姿

 『百花繚乱』――『雨上がりの虹』の面々はカフェに居た。

 今日はオフの日のため、それぞれの武具と防具はなく、私服姿だ。


 注文を終えてテラス席に座った4人は話を始める。


「最近さー、ノーマ忙しすぎねー?」


 普段の地味な色、動きやすいビチっとした服装とは異なり、派手な色彩しきさいとショートスカート姿で決めた盗賊――リン。


 リンはアイシャを見て話す。


「え~? そうかな? 前もこんな感じだったでしょ?」


 普段は防具にかくされた素足をさらすショートパンツ、冒険中であれば考えられない無防備なへそ出しの剣士――アイシャ。


 アイシャは顎に人差し指を当てながら、可愛らしい仕草で空を見る。


「ないない。アイがそう思ってるだけでしょ。どう考えたって、以前よりバタバタしだしてるって。それに合わせて、アイも忙しく依頼入れるから気付いてないだけでしょ」


 魔術自然としたローブを脱ぎ去った今、姿を現すゴスロリ服。

 白と黒を基調とし、ヘッドドレスにジャボタイの白さが際立つ魔術師――イブ。


 イブはアイシャの言葉に、いやいや、と手を振り首を振りながら否定する。


「なんでー? 別に、あーしは忙しくしてないし? ノーマもいつも通りの顔して仕事してるでしょ」


 アイシャのあーし発言でメンバーたちは顔を見合わせて笑いあう。


 アイシャがオフの時に、誤魔化したい話題になるとその呼称をする癖がある事を知っている為だ。


「アイちゃんって分かりやすいわよね~? ノーマ君の前だといつもより更にしっかり者になっちゃのよね~」


 冒険時のゆったりとした白い服とは変わり、体のラインを如実に表すワンピース姿の治癒術師――クーリエ。

 パッと見、服装に特徴はないように見えるが、すらっとしたくびれに反するように強調される女性らしい部分。


 クーリエはそんな大きな胸をはさむように腕を組み、アイシャの方をおだやかに微笑ほほみながら見つめて言った。


「でもさー、最近のノーマってばインフィオとかとばっかり行動してないー? うちらの出番なくない?」


「あー、思う思う。最近は全然、クラン長の指名も入ってきてないし。そりゃぁ、『踏みしめる大地』の問題とか分かるけど、頼られてない気もする」


 リンの言葉にイブが同意してうなずいて言うと、アイシャは少し慌てたように口を開く。


「そ、そんな事ないよっ! ただ、ノーマの優先順位って言うか、その……新人の子も入ったばかりだし!」


「それにしたって、『開花』メンバー、インフィオとか新人ちゃんとの行動が多すぎない? うちらのクラン長はさー」


「そ、それは……ノーマはクラン長だけど『開花』のリーダーでもあるし……わ、私たちの事もしっかり信頼してるから……仕方ないでしょ……?」


 リンの重ねて言われた言葉に、少し自信がなくなったかの様に告げるアイシャ。


 そこにクーリエが「そう言えば……」と思い出したように言う。


「でも、インフィオちゃんと何かしてるのは、未だに詳しく教えてもらえてないわよね~。なにやってるのかしら~」


「そ……そうだけど……それは、言えない事だって……あるだろうし」


 クーリエの何気ない一言にうつむいてしまったアイシャ。

 その姿に、やりすぎてしまった、とリンもイブも慌ててフォローをする。


「ウソウソ。冗談だってー。深刻そうな顔しないでってー」


「そうそう。どうせ、いつもの事だよ。『百花繚乱』の為に俺がー、って」


「でも何してるのか気になるわよね~」


「「こらっ! クーリエってば!」」


 リンとイブがマイペースに言ったクーリエにお叱りの声を上げると、アイシャはたまらず笑った。


「あはははっ! もう、皆してっ! あはは!」


 そのアイシャの笑顔にホッとした2人。リンは早めに話題を変える。


「そう言えば、ギルドで噂になってる他国の冒険者の話、聞いた?」


「あぁ、あれでしょ? 隣国から上位冒険者が拠点をディアナ王国に移して、活動するかもー、ってやつ」


 イブが話に乗っかってくれた事で空気も切り替わり、リンは気を良くして話を続ける。


「そうそうー。どんなのが来ると思うー? 上位冒険者って言っても、ディアナ王国の冒険者より強いのかなー?」


「さぁ……どうなんでしょうね。他国での活動って依頼次第ではやるけど、基本は自国内で完了する依頼が多いものね」


「でも『百花繚乱』とは関係ないでしょ。わざわざ他国から来た冒険者が、新進気鋭の若いクランなんて興味持たないだろうし」


 リンとイブの言葉に、他所よその事、とあっさりした言葉を吐くアイシャ。


「どうなのかしらね~」


 クーリエはそう言いながら、カップを揺らして紅茶の香りを楽しむ。


 その後も話題はころころと変わりながら、カフェで会話を続ける若い4人の女性たち。


 彼女たちの『百花繚乱』での日々は大変でありながら、充実している。

 やっぱりオフは良いものだ——そんな気持ちを、4人はそれぞれにみしめていた。

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