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才能がなかった俺は、仲間をS級に導き、『花園の批評家(レビュアー)』と呼ばれるようになった。  作者: マボロシ屋
8章 埋もれた真実、隠れた現実

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96:平穏の中で飲むコーヒーは格別な癒し

 あの非公式の謁見えっけんから数日。

 俺は再びの平穏へいおんをクラン長室で送っていた。


「……まさか、本当に翌日には動き出すとはね」


 そう……王城から戻った翌日には、見逃されていた下位貴族、上位貴族含め、らえられる事となった。


 ジスタリア伯爵は最後まで逃げ延びようと、第六騎士団と共にあらがった。だが、ディアナ女王による勅命ちょくめいにより、他騎士団はジスタリア伯爵の逃亡とうぼう阻止そしらえた。


 ジスタリア伯爵が指揮系統を完全に掌握しょうあくしていたのは、裏通りを含む王都治安維持の担当――第六騎士団のみ。それがこうそうしたのだろう。


「だが……既定路線きていろせん、か。『毒蜘蛛ポイズンスパイダー』にとっての既定路線はどこにあったんだろうな……」


 つい自分自身の曖昧あいまいな未来予想に、愚痴ぐちの様に口からこぼれ出る。


 恐らくは、魔物とヒトへの臨床実験りんしょうじっけんかさね、何年もついやしてきた結果だったはずだ。

 それをいとも容易たやすく投げだせる組織力そしきりょく


「……英雄、吸血鬼。奇跡協会、毒蜘蛛、王国。冒険者ギルド、百花繚乱、無能者」


 一つ一つを思い浮かべながら、口に出す。

 見つからない答えの欠片かけらをはめ込もうとするように……


 コンコンッ、とクラン長室の扉がノックされる。


「ノーマさん。よろしいでしょうか?」


 ローズの声が扉越しにかけられた。


「あぁ、構わないよ」


 俺の言葉で扉が開かれ、ローズが入室する。最近は大きな音をかなでる事の多い扉は、静かに閉じられた。


 執務イスに座る俺の前まで来るとローズは口を開いた。


「今回の件を調査した限り、現時点では『百花繚乱』の名は表には出ておりません。ですがノーマさんが懸念けねんしていた通り、『開花』がオークキングとの戦闘――討伐を報告した場合、どこから騒動そうどうが起きたのかは結びつきます」


 ローズは困ったような顔で俺を見る。


 俺は机にひじを付き両手を組むとひたいに当てて、考えながら口を開く。


「かといって冒険者ギルドに報告せずに、隠匿いんとくするのも危険、か。仕方がない、報告書には詳細しょうさい記載きさいせずに、俺の話をまとめておいて欲しい。俺が書くよりも詳細を知り過ぎないローズの方が良いだろう」


 まぁ、この報告は仕方ないとしか言えない。


 オークキングの様なAランク相当の魔物のれとの戦闘。片付くまで、意図的いとてきに報告の時期をずらしてはいた。

 だが事件が片付いた以上、冒険者ギルドへの報告義務をおこたる事などできない。


「ノーマ。『毒蜘蛛むこう』は『百花繚乱』に気付いたらどう動くと思う?」


「きゃっ!!? インフィオさん! いきなり後ろに立たないでください!」


 インフィオがローズの背後からいきなり出てきたせいで、ローズが珍しくクラン長室で驚きの声を上げた。


「ローズを驚かせるなよ、インフィオ。書類でたたかれても知らないぞ? それで、『毒蜘蛛』が気付いたらって事だが……多分、何もしてこないだろうな」


 俺はやれやれ、と言った様に両手を軽く上げ、肩をすくめてみせた。

 その反応にうなずいたインフィオが再び口を開く。


「やっぱり、そうなりそうだよね。可能性として『毒蜘蛛やつら』も所在しょざいがバレかねない危険を排除はいじょできないしね。同じく『百花繚乱』には手を出さないって考えてたよ」


 インフィオもややうんざりしたように言う。だが、うんざりの種類が違っていそうだ。


 インフィオの場合は『毒蜘蛛』が手出ししてくれた方が、つぶす理由が明確にできて良いのかもしれないな……鬱陶うっとうしい『毒蜘蛛ムシ』をさっさと駆除くじょ、とでも思っていそうだ。


 俺としては、これ以上『百花繚乱』が敵対視されるような事は起きて欲しくはない考えだが……


「じゃぁ、これ以上何かする事はないのかな? 暇になっちゃったね?」


 いきなりの出現に驚いていたローズだったが、インフィオに対して「もうっ……」、と言いながら真顔に戻って会話に戻る。


「『百花繚乱』としては折角、『奇跡協会』、エリアベート嬢の後ろに身を隠せてますしね……」


「まぁ、なぁ……これ以上首突っ込めば、それこそ王国――」


 ッ!! あぶねぇッ……!!

 あの会合は非公式だ! まだインフィオやローズにも言えないだろッ!


「いきなり黙ってどうしたのさ、ノーマ? ねぇねぇ~、教えろよ~」


 インフィオが構って欲しそうな猫なで声を出す。

 だが、この件は無理だ。


「……だめだ。これはまだ口には――」


「エリアベートに無理矢理捕まって、秘密で王城に行っただけでしょ。隠し事はなしだよ~? ダメでしょ~?」


 にやにやしながら言うインフィオ。


 えっ!? なんでお前が知ってんだよ!?

 どこから見てたんだ!? まさか、拘束されたところも知ってた癖に俺の反応を楽しんでたのかっ!!?


 見惚れる笑顔のインフィオは執務机に近付き、俺の耳元に口を寄せる。


「……地下通路は楽しかった? 秘密の通路は大体知ってるから、今度、案内しようか?」


 俺にだけ聞こえるように話すと、にまぁっと笑うインフィオ。

 その訳知わけしり顔の様子にローズがあわてだす。


「えっ!? どういう事ですか、ノーマさん!? インフィオさんも、詳しく知っているのなら教えてくださいっ!」


「どうしよっかな~? ねぇ、ノーマ? どうする? 話しちゃうの~?」


 やめろ!! ローズには今は話すべきじゃない事なのに!

 ローズの顔が少し悲しそうだろうがっ!!


「……俺からは何も言えないからな」


 はがねの意思で、なんとか黙秘もくひを告げる。


「ノーマさんっ!? この『百花繚乱』では、私に隠し事はなしですよ! ノーマさん!! インフィオさんっ!!」


 あぁ、こいつは凄い事態だ……

 普段、冷静なローズの驚きの顔から、さけびながら怒るような顔を見られるなんてなぁ……


 俺が我関われかんせずでコーヒーをすすりだした為、ローズはインフィオに問いかけだした。


 そんなインフィオとローズのやり取りの光景を、コーヒーカップ片手に静かに眺めていると――


 バタンッ、と扉が開いた。


「ノーマ君っ! ギルドで他国から冒険者くるって噂が出てるよ! 楽しみだねっ!」


「ノーマ! 酒場の冒険者もだ! オレ達が先に、他国に出向いて荒らしに行こうぜっ!」


 アリアとガウルが勢いよく入室して大声を出す。


 そんな、一層いっそうさわがしいクラン長室の中……

 俺は何事もない日常を思い浮かべながら、静かにコーヒーを啜るのだった。

リアクション・評価・感想・レビュー、甘口でも辛口でも大歓迎です(´・ω・`)


お返事は気付いた範囲でとなりますが、

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ブクマや★をひとつ付けていただけるだけでも、すごく力になります。


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