表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
才能がなかった俺は、仲間をS級に導き、『花園の批評家(レビュアー)』と呼ばれるようになった。  作者: マボロシ屋
8章 埋もれた真実、隠れた現実

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

92/139

92:しばしの平穏からの落花

 『奇跡協会』のアルテミスとカリスト、そして貴族令嬢のエリアベートとの会合から幾日か経過した。


 あれから進展があったのかどうかはインフィオにも調べさせていない。

 上位貴族との問題をエリアベートが行っている時に、インフィオの姿があれば、問題をかきみだす可能性もあったからだ。


 その為、『百花繚乱』には久方ぶりの静けさがあった。


「……ローズ。ちょっと聞いても良いかな」


 静かに扉を開きクラン長室に入ってくるローズ。


「ノーマさん、どうされました?」


「この書類なんだけどさ。どうしてこんなに高いの?」


 ローズはそこに記載きさいされている内容を確認して、思い出すようにしながら話し出した。


「これは……以前、ノーマさんが許可を出した『ポイスパ』のサンプル解析かいせきの件ですね。許可はもらっているとうかがっておりましたが……?」


 なるほどね。

 『ポイスパ』のサンプル解析か。あれから更に優先度は高くなった結果、解析も急いでるって感じなのかな?

 以前よりも大分、の張るめずらしい素材にまで手を出してるから、ってのもあるだろうけど。


「あ~、そうか……サンプルの件ね……了解っと! いつもよりも大分、素材購入費が高くなってたから気になったんだ」


 書類に承認しょうにんしローズに手渡すと、ローズは心配そうな顔をして話し出す。


「どうも成分解析に時間がかかっているようです。クロエさんとノインさん、書類提出時に申し訳なさそうな顔でしたから」


 ……どん詰まり、と言う訳でも無いんだろうけど。一度、元気づけに行ってやるべきか?


 でもなぁ……基本、中には入れてくれないんだよな。危ないし、俺に迷惑がかかるからって……

 ん~、アリアやイリアに言っておくか。

 インフィオだと幼馴染おさななじみじゃないから、遠慮えんりょしそうだしな。


「まぁ、その件での費用増なら問題ないって、俺の方で上手く伝えておくよ。悪いね、呼び出しちゃって」


「いえ。それでは書類の件、費用を回すように指示しておきますね」


 ローズはそう言うと、静かにクラン長室を出て行った。


 しかし、今回の件が片付いたらサンプルの確保は厳しくなるか?

 いや、確保よりも回収を優先するべきか。


 今時点のサンプル解析で結果が出せたなら……

 素材販売経路から組織へのつながりが示唆しさされ、恩は売れる。


 もしくは、サンプル数を増やし依存成分いぞんせいぶん除去じょきょ……いや、これは望みすぎだな。


「さて、もう少し書類仕事に精を出した後、訓練場に向かうか……」


 ローズとの会話で少し抜けた気合いを、一人呟つぶやき入れなおす。


 冒険者よりも眼、肩、腰にくる……それに集中力の鍛錬たんれんをしている気分になる。部門担当長、担当事務の皆には頭が上がらない……


 目の前に必要性のあると判断され、積まれた書類の山。

 もう一息、深呼吸して取りかった。


 しばらくして……

 ふと書類から目を上げれば、が落ちはじめている事に気付き、イスから立ち上がる。


 結構な時間、集中して書類仕事をしてしまったな……


「ん、ぁあ……」


 伸びをすると関節がボキボキとなる。


 そろそろ書類仕事をめて訓練場に行くか……

 そこでアリアとイリアが居れば話しつつ、アルメリアとフリュウの状態も確認しよう。


 クラン長室を出ればローズは今も書類を確認していた。


「ローズ、少し訓練場に向かうね」


「はい。他に何か用があればお呼びください」


「ははっ、ありがと」


 流石に、書類から顔を挙げずに仕事をしているローズを見たら、雑用なんて頼めないけどな。


 腕を伸ばしたり、手首を回したりしながら階段を降りていく。


 段々と訓練場の熱気が伝わってくる。

 近付くにつれてストレッチしながら、ふつふつと体を動かし訓練をしたくなってきた。


「……書類仕事は急ぎは終わってるしな……少し訓練するか」


 言い訳のようにまたひとごとを呟きながら、地下2階にある訓練場の扉を開く。

 その先に、アルメリアとフリュウの姿がある事を確信している。


 エリアベートの言葉を思い出しながらも、気にしない様に頭から振りはらう。それを2人の前では決して出さない様に……


 まだ、この件は伝えるべきではないはずだから。


 そこには、既に訓練をし続けボロボロになっている、アルメリアとフリュウの姿があった。

 今日は『見晴らす丘』リーダーのヒルダではなく、アリアが教えていたようだ。


「あ、ノーマ君じゃん! やっほ~!」


 アリアは俺に気付くと声をかけてくる。

 疲れた様子など微塵みじんも感じさせず、けれどひたい大粒おおつぶの汗を張り付かせていた。


「どうやら、大分2人をしぼった様だな? アリアとしてはまだまだ余力がありそうだが……」


「あったり前! Dランクの2人を相手にして、厳しい訓練なんて思う程、やわな鍛錬してないしね」


 アリアの視線はするどく2人を射貫いぬく。


 どうやら……アリアとしてはまだまだ及第点きゅうだいてんとは思ってないようだな……

 でもなぁ……アリアはガウルとの訓練が基準になってるせいで、結構無茶やるからなぁ……早めに止めるか。


「ん~、今日はもうおしまいな。これ以上無茶させたら体の方が壊れるかもしれないし。アリアもそれは分かってるだろ?」


「……まぁ、ね。けど、もう少し鍛えておきたかったかな。今日のノルマ、微妙にクリアできてないし?」


 アリアの言葉に、息もえで会話に入れないアルメリアとフリュウがビクッと肩をふるわせる。


 その姿に苦笑しながらアリアの目を見る。


「……分かった。その目で見られると、流石にアタシも困っちゃうから」


 少しだけねたような声音で同意してくれた。


 悪いな。俺の目にはこれ以上やったら罅割ひびわれそうに移ったもんでな。


「ありがとう、アリア。それで? 厳しいながらに訓練してみてどうだ? 飲み込みは大分良いし、動きも先日見た時、中々成長していたように思うけど」


「う~ん……まだアルメリアの踏み込みが甘いのと、フリュウがアルメリアとの連携れんけいで微妙に遅れ気味なところかな。別にCランク目指すだけなら、今のままでも良いと思う」


 そこで区切ると、再び鋭い視線でへなへなと、疲れ切った2人に目を向けるアリア。


「……けど、上位をのぼって行くつもりなら大きな課題。アタシの目から見ても感じ取れるって事は、ノーマ君の目なら尚更なおさら感じるだろうし~」


 アリアは最後に挑発するようにニヤッと笑って言う。


 その言葉と顔に、地面に倒れ込んで休む2人は、歯を食いしばり立とうとするが――


「2人とも、休んでおけ。これ以上無理しても何も得られない。クラン長の命令は聞いておけ。それとアリア。お前も余りあおってやるなよ? まだ伸び盛り、花開く前なんだ。ぽっきり折れても、変なくせがついても困るし、な?」


 無理は駄目だからな。

 流石と言うべきか、まったくと言うべきか……アリアもき付け方を心得こころえている。

 でも、今じゃないからな?


「は~い。それじゃ2人とも、今日はここまでね~」


 アリアの言葉に2人は何も言わず、ズルズルと地をう様にして端に寄ると、壁を背にして休みだした。


「……はは、大分お疲れだな」


「それで、ノーマ君は何しに来たの? 確認だけ?」


「あぁ、アリアと……イリアもいるな。伝えて欲しい事があって来たんだ」


 俺の言葉にイリアも静かに近寄って来る。


「クロエとノインが『サンプル』の解析費用で申し訳なさそうにしてたって聞いたんだ。それで俺から言うより、お前ら『開花おさななじみ』から、問題ない、って伝えてもらった方が気が楽だろうって思ってな。俺は『研究室』の出入りを歓迎かんげいされてないし、その方が良いだろ?」


 少し苦笑しながら伝える。


 アリアとイリアは納得した顔でうなずく。流石双子、息がぴったりだ。


「なんだ、それだけね! 了解っ!」


「承知しました、ノーマさん」


 あっさりとうなずかれ、用件は終わった。


 まぁ、研究室は『乙女――秘密のその』なんだろう。見られたくないモノもあるのかもな。


「さて、用は済んだし……俺も少し訓練して体を動かすとするか」


「ほんとっ!? じゃぁ、一緒に鍛錬たんれんしよっ! ノーマ君との鍛錬、ひっさしぶりー!」


 アリアの言葉を否定する間もなく引っ張られ、なしくずし的に厳しい鍛錬を行う事となった。

 魔力量の問題もあって長時間は出来なかったが……密度のさは普段と比べて相当、過酷かこくだった。



………………



 鍛錬を終え、外も暗い時間となった。

 疲労感で今すぐにでもベッドで眠りたいところだが、自宅に戻るまでの我慢がまんだ。


 アリアとイリアを連れ、『百花繚乱』の出入口扉を開け外に出る。


「じゃぁ、ノーマ君。まったね~」


 元気に別れを告げるアリア。

 対照的に俺はぐったりと疲れて、片手を上げるだけにとどめる。


「アリア姉さんが失礼しました、ノーマさん。それでは、また」


 イリアは綺麗きれいにお辞儀じぎをし、アリアの後に付いて行った。


 二人を見送り、俺も通りを歩き出す。


 そしてしばらく通りを歩き、人通りの少ない通りに入って、自宅に近付いたところで……


 疲労感で相手に気付かず、背後から羽交はがめされ、口を抑えられた。


「……むぐっ!!? ん!!? んんっ!!?」


「静かにしてください。これからアナタをお連れ致しますので」


 徐々に首をめられていき、気が遠くなっていった。



………………



「……んっ」


 ここは……?

 俺は、何が……ここはどこだっ!!?


 くそっ!? 猿轡さるぐつわに手足の拘束こうそく

 油断しすぎてた……! まさか、王都で俺に仕掛しかけてくるなんて!


 どうにかして拘束を解こうとしていると、カツカツと足音が近づいてくる。それも複数の足音。


 ギィイと扉が開き、魔道具でこちらを照らす者が入ってきた。


 くそっ! 誰だ!? なぜ俺だと気付かれた! 『百花繚乱』は俺の状況に気付くには時間が足りない!!

 どうする!! どうするっ!!?


「…………」


 相手がこちらに光を向け、静かに視線を向けている感覚。


「カスミ、やりすぎよ」


「……そうでしょうか?」


 聞こえてきたのはエリアベートの声だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ