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才能がなかった俺は、仲間をS級に導き、『花園の批評家(レビュアー)』と呼ばれるようになった。  作者: マボロシ屋
8章 埋もれた真実、隠れた現実

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88:英雄に至るモノはヒトか、ヒトデナシか

「ノーマ、戻ってきなさい? 固まっていては解決にならないわよ」


 肩を揺さぶられ、強制的に思考の根をちぎられた。


「……現状、色々と聞きすぎて、処理が追いついていません。せめて、どういう事なのか。そこから話してもらえませんか」


 そこから思考すべき事を順序立て、優先順位を考えるしかない……

 正直、目の前の存在が理解の範疇はんちゅうを超えすぎだ……


「……そもそもの話となりますが、魔法とは何かはご存じでしょうか? しろに効力を固定化したモノである事は理解しておりますか?」


「あ、あぁ……魔術と魔法の違いは少しは理解しているつもりだ」


 そう、依り代だ。

 魔術は魔力が留まらず、結果――効力を産み出した後に徐々に消えていく。

 魔法はことなる。そのくらいの知識は持っている。


「そうですか……では人体を依り代にした存在が、彼女と言えば伝わるかと思います。正確には彼女の一族が、ですが」


 ……人体を依り代?

 通常、『奇跡協会』は何を依り代にしているか知らないが……そんな存在が目の前にいるエリアベートだと言うのか、アルテミス。


「人体を依り代にした、魔法? そんな事が出来るのか……?」


「ふふっ、この魔法は受け継がれるモノなのよ。知識、記憶の断片だんぺんを。そして、肉体を強固きょうこにし、才能開花など関係なく『英雄』に近付ける」


 その言葉とは裏腹うらはらに、全く嬉しそうにしていないエリアベートは続けて言う。


「でも『英雄』にはいたらない上に、出来損できそこないの魔法。吸血鬼とはそのまま、ヒトの血を得て強さを維持するからよ」


「我々『奇跡協会』が先代せんだいから後継者こうけいしゃへ、書物や口伝くでんで名と共に引き継ぐのとは異なり、カレンデュラ家は魔法で引き継ぐのです。そして『奇跡協会』は大昔にカレンデュラ家と争った」


 息をき、続けるアルテミス。


「ですが、当時の『奇跡協会』は今ほど大きくはなく、盤石ばんじゃくでもなく。結果として協定が結ばれました。そして、共存へとかじを切ったのです。ヒトでなし――魔法だが本質はヒトである、と。例外として」


 いつの話をしているんだ……そして俺は、なにを聞かされているんだ?


「混乱するのも無理はないでしょう。ですが、事実です。彼女は忌避きひすべき存在であり、ヒトのことわりからはずれた存在です。それ故に、理不尽です」


「理不尽、ねぇ? けれど、その理不尽は『英雄』に至れない存在よ。本当の理不尽とは、こんなモノでは済まないわ。それは『リンド・ブルーム』が証明しているでしょう?」


 リンド・ブルーム。

 俺は……いや、殆どの者が知っている名だ。


 なぜなら、その名は――


「……英雄譚えいゆうたんの、英雄……? なぜ……?」


「彼はヒトでありながら、無能者でありながら――それでも『英雄』へと至ったわ。ヒトはその根源にこそ強さを持つわ。足掻あがき求めるからこそ、才能が芽吹めぶき、力強く花を咲かせるわ」


 目を閉じ、胸に手を当てるエリアベート。


「けれど、カレンデュラ家はそれを不完全と捨てた。それこそが重要だったと気付いた時には、二度と取り戻せなかったわ。あはは、まったく……皮肉ひにくな話よね?」


 英雄――リンド・ブルームは無能者だった……!?

 なぜ、そんな者が英雄とまで呼ばれるまでなったんだ。


 そして俺は、足掻き求めた末に、なぜ何も芽吹かないままなんだ。足掻き足りないのか。それとも、誰しもが無能者から開花に至れる訳ではないのか。


 ……更に、『英雄』は『ヒト』でなくては成れず、『ヒトならざるモノ』は至れない……人工的な魔法によって英雄は生まれない。


 そもそも、なぜカレンデュラ家は英雄を求めた。そこにどんな渇望かつぼうがあった……?


 他にも、情報が飽和ほうわしすぎている……


「情報が多すぎる……なのにまだ情報が足りない……」


 なんだこの二重苦にじゅうくは……!

 情報が必要なのに、これ以上情報におぼれたくない!


「全てを一度に聞くとなれば、誰でもそうなってしまうでしょう。ノーマさん、ある程度を理解できていれば十分なんですよ」


 アルテミスはやわらかく微笑んでそう告げた。


「『奇跡協会』が秘密主義なのがいけないだけだわ。魔法なんてモノ、世に出してしまえば良いのよ」


「魔法がもたらす結果は、俗世ぞくせに混乱をもたらす危険があると未だに理解していないとは恐れ入った。『奇跡協会』はヒトの安寧あんねい繁栄はんえいを管理する組織だ。不必要な魔法など、世にあるべきではない。そして、ポイスパも同じだ」


「やめてくれ……ただでさえ、頭がいっぱいいっぱいなんだぞ……」


「ノーマ殿、一度忘れてしまうと良い。本題に目を向ければ、自然と時間が解決するかも知れない」


 やだ、カリストかっこいい……アルテミスとエリアベートが仲悪すぎて空気になってたけど、カリストだけ冷静……状況のせいで、れちまいそうだわ……


「……カリスト、お前……良い奴だなぁ」


 思わず心の声がれてしまう。


 心の安寧を、まさかお前がくれるとはな……イノシシ娘だけど、根は良い子だなぁ。


 照れたような顔のまま固まるカリストを見ながら、深呼吸し声を出す。


「そうだな……その通りだ。今は差しせまった問題に目を向ける時だ。それが重要で、それ以外は後回しで良い」


 それぞれの顔を見て宣言した。


 俺達は何をしに来た? 当然、『ポイスパ』の件だ。

 俺達に必要な行動はなにか? 上位貴族の排除はいじょだ。

 その為に必要な者は? 『奇跡協会』とエリアベートだ。


 他の事は意識してすみに置け。なんなら無理やり忘れさせても良い。

 今に集中するんだ……


 ヒトは花だ。英雄へ至る為の支援――咲かせる為に俺がいる。芯はブレていない。

 今はそれで良い。それしか見なくて良い。


 この問題が片付いた時に、『百花繚乱』の利益になれば……それで良い!


「『ポイスパ』排除。これが主目的だ。さぁ、会合を始めようか」


 意識を切り替えた。

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