表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
才能がなかった俺は、仲間をS級に導き、『花園の批評家(レビュアー)』と呼ばれるようになった。  作者: マボロシ屋
8章 埋もれた真実、隠れた現実

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

85/139

85:花に巣くう虫の群れ

 部屋で座った姿勢でこちらを見るアルテミス。

 俺の笑顔に、アルテミスも笑顔を返してきていた。


「突然の会合と言う事で驚きましたが……ノーマさん、良くおしになられました」


「すまないな。『百花繚乱』として王都の調査が終わり、急ぎ伝える必要性があると考えてね」


「……それは、どの程度の緊急性を?」


 先ほどの笑顔はどこへ消えたのか。


 更に面倒な事が起きた、とでも言いたそうにアルテミスは目を細め俺を見ると、静かに組んだ両手をひたいに付け、息を一つだけ吐いた。


 それは「聞きたくないが、けられない」、とでも言いたげな仕草だった。


「王都、というよりも王国、と言った方が良いかもしれないな。ここまで根がくさっているとは、俺も思わなかったよ」


「それを聞く前に……カリスト、協会の者にお茶を用意させてもらえる? 緊張しすぎると、つい悪い面ばかりに目が向いてしまうので」


「もう用意させておりますので、そろそろ――」


 静かに扉がノックされ、カリストがそれらを受け取る。


「ノーマ殿はコーヒーの方が好きだと思い、勝手に変えてしまったが……」


「あぁ、ありがたい。正直、お茶よりもコーヒー派でね」


 お礼を言いながらカップを受け取る。


 カリストはアルテミスにお茶を置くと、隣の席に着いた。


「さて……問題は非常にややこしくなったのはさっき伝えた通りだ。『奇跡協会』の調査では一部貴族が関与かんよしていたと判明していたよな?」


「えぇ、その通りです。そして、それらを手引きした者は既にばつを受け――」


「上位貴族はどうなった」


「……『奇跡協会われわれ』でも踏み込めない位置、というものがあるんです。上位貴族の関わりが無ければ行えなかったと考えていても、下位貴族が口を閉ざせば……王国からの協力は得られなくなります」


「やっぱりか……」


「では、今回の件でこちらに来られたのは……」


「アルテミス様、まさか……」


 アルテミスは気付き、遅れてカリストも気付いたようだ。


 だから言ったろ? 王都ではなく、王国の問題だ、と。

 そう、今回の件は踏み込まなくちゃいけない。


「上位貴族、ジスタリア伯爵邸はくしゃくていから残り物が大量に見つかったと報告を受けた」


「なっ……!? 伯爵!? それも……ジスタリア家の者がっ……」


 カリストは事の面倒さから声を上げ、アルテミスを勢いよく見た。


「……落ち着きなさい、カリスト。私達も薄々(うすうす)は気付いていたでしょう? 治安活動の本懐ほんかいであるジスタリア伯爵家であれば、裏通りへの手引きが行える可能性は大いにあると」


「で、ですが! 彼らは治安維持において『奇跡協会』とも手をむすんでいるのですよ! それなのに大量の『ポイスパ』など!」


 アルテミスの言葉に、なおも納得がいかないカリストは声をあらげるように続けた。


「……良しなさい、カリスト。従う者たち全て悪だと決まった訳ではないです。それに『奇跡協会われわれ』の様な使命に高潔こうけつな精神は特殊とくしゅなのですから」


 そろそろ俺が間に入らないとか……アルテミスとカリストのみで話していても仕方ないだろう。

 それにこのままじゃ、方向性がつかめないままだ。会議はおどるされど進まず、となっては目も当てられない。


「……よろしいでしょうか?」


「あ、も、申し訳ない! 口を挟んでしまった……!」


 カリストは俺の話の途中だった事を思い出し、謝罪すると口を閉ざす。


「『奇跡協会あなたたち』としても思うところはあるだろうが……今はまず、この状況をどう打開するかだ。そこで……」


 一息ついて、二人を見る。


 誘導はできない。

 あくまでも、ここは真摯しんしに訴える紳士しんしであるべきだ。


 まだ細くても、確かにからんでいるであろう、信頼と親密というつるを信じよう。

 結果的にそれが、より強固きょうこなしなやかさを持った関係となる。


「先日、言いよどんでいた伝手を教えて頂きたい。これだけの事態、打てる伝手は打つべき段階だ。それほどに状況は――悪化した。だからこそ……お願いしたい、アルテミス、カリスト」


 誘導でもなく、そそのかすでもなく、素直に伝えた。


「……アルテミス様。貴族の問題となれば、やはり『あの者』と連携を取らざるを得ないかと思います……」


「……この件をこれ以上悪化させれば『中央』から叱責しっせきを受けるかもしれません。致し方ないでしょう……古くからの協定に反しますが、『奇跡協会』ディアナ王国支部長アルテミスが彼女と接触しましょう」


 色々と気になる事が多い。

 だがまずは――


「……古くからの協定?」


「誰と会うのかを聞けば理解できるかもしれませんよ? もっとも、ノーマさんが知っているとは思いませんが」


「……『奇跡協会』の貴族への伝手――彼女とはどなたの事でしょうか」


「……エリアベート嬢。エリアベート・ナイト・カレンデュラ伯爵ですよ」


 アルテミスは感情を殺すように、けれど苦々しさを押し殺しきれない表情で告げた。


 まさかここで聞く事になるとはな。

 エリアベート……


 伯爵令嬢でAランク――なのに、こっちの裏を読むような目をしてくる。掴みどころが無さすぎて、正直ちょっと怖いんだよな。


 合同依頼で尚更なおさらに、エリアベートの為人ひととなりが見えなくなった。

 悪人ではなさそうで、けれど簡単に悪人にもなりそうな、そんな雰囲気を俺は感じたんだ。


「エリアベートか……ここでエリアベートの名を聞くなんてなぁ……色々と悪だくみしそうなタイプだと思うが……だからこそ協力してもらえれば、か」


 実際のところ、俺は彼女の素性すじょうを深くは知らない。


「……それで、そんなに彼女は凄いのか?」


「ノーマさんにとっては『Aランク冒険者の伯爵令嬢』でしょうが……えぇ、『奇跡協会』と王国――王族にとっては、それこそ上位貴族などよりも余程の力がありますよ。おっしゃる通り、飄々(ひょうひょう)としているので、どう転ぶのか予測は尽きませんが……」


 なるほどね……じゃぁ、上手く協力が得られる事を祈ろうか……

 ……インフィオが甘えたがりな悪戯いたずら猫なら、エリアベートは悪戯されて困っている姿を楽しむ猫だ。


「アルテミス、カリスト。いつ動き出す」


「……まずは連絡を取り、日程を伝えます。その場で彼女が協力に乗るのであれば良し。断られた場合は……早々に『中央』へ報告をすべきでしょう。カリスト、後で書類を作っておくよう指示してください」


「分かりました、アルテミス様」


 ……さっきも出たが、『中央』とはなんだ?

 4か国の支部とは別に『中央』があるのか?


 ……いや、今は気にするな。目の前の事に集中するんだ。


「分かった。それまでは『百花繚乱こちら』も下手に刺激しげきせずに、連絡を待たせてもらうよ」


 『奇跡協会』に一任してもらうとしよう。

 慎重に動いていても、万が一の失態の責任はえないからな。


「えぇ、それまでは待機をお願いします。では、会合は終わりと致しましょう」


 アルテミスはそう言うと顔を下に向け、今しがたの会合の内容を記した書類の確認をし始めた。


「ノーマ殿、玄関まで送ろう」


「あぁ、頼んだ。アルテミスも、よろしくな」


 アルテミスにそう告げて、立ち上がったカリストと共に扉を出る。


 行きとは違い、静かに通路を歩く。

 カリストから感じる空気はへばりつくかのようなモノだ。


 カリストも事態の重さで緊張しだしているのかもしれない。


「見送りありがとう。連絡待ってる」


 玄関に到着したところでカリストにそう告げる。


 用件を伝えた事で、少しだけ軽くなった足取りでクランへの通りを歩いて行った。


………………


 数日後、何故かクラン長室には彼女――エリアベートが来ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ