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才能がなかった俺は、仲間をS級に導き、『花園の批評家(レビュアー)』と呼ばれるようになった。  作者: マボロシ屋
8章 埋もれた真実、隠れた現実

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81:誰が為に事を為す

 馬車で『北のナモナキ村』を出発し、宿場町で一泊いっぱく。 また翌日も移動しての夕方前。


 徐々に人の声が辺りに響きだし、窓を覗けば、王都の門が見えてきていた。


 ……戻ってきたな。

 1週間程度の留守だったが、『百花繚乱ライオットオブカラー』の皆はしっかりやっていたかな?


 そう思っていると御者が後ろを向いて声をかけた。


「『開花』の皆さん、王都の門をそろそろくぐります。『百花繚乱』クラン前でよろしいですね?」


「えぇ、お願いします」


 御者はそれだけ言うと前に向き直った。


「ほら、皆。そろそろ到着するぞ。寝ぼけまなこで『百花繚乱』の前に出ないようにな」


 馬車の移動も慣れっこな幼馴染達は宿場町からずっと静かに眠っていた。

 だが俺の声で起きると、伸びをしたり欠伸あくびをし、のんびりとした雰囲気ふんいきで窓の外をながめる。


「ふぁあ……なんだ、もう着いちまったのか」


 ガウルはまだ寝たりなさそうに目をこすりながら言う。


 涎を自分で拭けって、ガウル……

 イリアに拭いてもらってる年齢じゃないぞ?


「さて、到着したら俺はクラン長室に戻るが……お前らはどうするんだ?」


「ん~…馬車移動で鈍った体でも動かすとすっかな」


「アタシもそうしよっと」


 ガウルとアリアの声に皆もうなずく。


「じゃぁ、ついでに『花扇』がいたら、様子でも見ておいて。何かあったら教えてくれると助かる」


「は~い」


 軽く返事をしたアリアに、俺も頷き返すと馬車が停車した。


「『開花ブルーム』の皆さん。到着しましたよ」


 ……おっと、もう門をくぐってクラン前か。

 後はローズやインフィオに言えば良いか。


「よし! じゃぁ、休暇きゅうかも終わりだ! 俺は冒険者活動はまだできないが、皆は問題ないしな」


 扉を開いて馬車を降りる。


「御者さん、長期間の依頼を受けてくれて助かったよ。今後もクランで御贔屓ごひいきにさせてもらう」


「ありがとうございます。それでは、これで」


 そう言って御者は馬を歩かせ去っていった。


 ……さて、と。

 クランに入る前に彼女達に伝えておかないとな。


「皆、休暇中のあの件は伏せておくように。然るべき時、場所で、俺がクラン長として『百花繚乱』に周知させる。良いな?」


 幼馴染達は頷く、が――


「ガウルは皆で見張っていてくれ。うっかり喋ってしまいそうだからな」


 苦笑しながら伝えた。


「そんな事ねぇだろ! オレだって、黙ろうとすれば黙れるって!」


「ガウルさんはいつもそう言っては口から漏れておりますよ。先ほどのよだれの様に」


 イリアが釘を刺すと、ガウルの動きが固まる。

 思い出して恥ずかしくなったのか、顔を赤らめながら何も言わずにクランの扉を開いて歩いて行ってしまった。


「あ~……まぁ、良い薬にはなったかな? じゃぁ、皆。頼んだ」


 会話も終わりにし、俺達もクランに入る。


 手を振って幼馴染達と一階いっかいで別れ、俺は上階のクラン長室に向かって階段を歩く。


 その先には……

 いつもと変わらずに働くローズ達――部門担当長達の姿。


 仕事中毒ワーカーホリックなのかねぇ。

 どうにもいつも通りに仕事をしてる空気でほっとしちまった。


「ノーマさん! お帰りなさい。休暇はどうでしたか? ゆっくりお休みできましたか?」


 矢継ぎ早にお帰りの挨拶と質問が投げかけられた。


 ひ、久々に休んだからかな……?

 ローズの言動に落ち着きがないな……


「た、ただいま、ローズ、皆。休暇は楽しく、ゆっくりできたよ。それでちょっと話があるから、ローズと……インフィオはどこにいるんだ?」


「クラン長室に居ます」


 ……どういう事?


「なんで?」


「さ、さぁ……ノーマさんが出発されてから、クラン長室の応接用のソファと机で業務を……」


 インフィオ……お前、本当に猫っぽいな。飼い主の居ない部屋で飼い主を待つって……

 なんか、申し訳なさで涙出そうだよ……


「……分かった。まぁ、クラン長室で別に悪さをしてた訳じゃないなら良いさ」


 そのままクラン長室の扉を開き、ローズと一緒に入る。


 室内の応接区画を見れば――


「あ、ノーマ、お帰り~」


 ソファーに横になり、だらけながら資料を読んでいるインフィオの姿があった。


 自由に仕事をしても良いとは思う。

 ただ、他の部門担当長に示しがつかない気がするんだが……


 ちらっとローズを見れば、苦笑しながら首を振られた。


 気にしないでも良いって事だろう。


「……インフィオにも話がある。この話はくれぐれも内密で頼むぞ」


「いつも内密にしてるじゃんか」


 あっけらかんと言うインフィオ。


 ……確かにそうだな。

 改めてインフィオやローズに言う事でも無かったな。


 応接用ソファに座る。

 するとインフィオも体を起こし、ローズの座る場所をけてやると、ローズも静かに座る。


「さて、内容だが……結構面倒な事態だ。正直に言えば、休暇中に起きて欲しくはなかった」


「何が起きたの?」


 面倒な事態という言葉で、インフィオはゆるんだ顔から真顔に戻る。


「『北のナモナキ村』奥の森でオークキングの群れが出来ていた」


「オークキングの――」


 インフィオの言葉を手で制す。


「そのオーク達を討伐後に確認したが、腕に小さな刺し傷があり……どの個体も変異――変質が起きていた。光に過敏かびん凶暴きょうぼうと言った具合にな」


 俺の言葉を聞きながら、あごに手をやり考えるインフィオ。

 ローズも似たような状況だな。


「更に周囲を探索すれば、隠ぺいされていた洞窟どうくつがみつかった。研究施設だったようで、人間の死体が幾つも転がっていた。死体にも同様の刺し傷。そして注射器も見つけた」


 インフィオは、はっとした顔で俺を見る。

 ローズも事態の大きさ、面倒さに驚きの顔に変わった。


 ……インフィオはもう気付いたみたいだな。流石、優秀な元暗殺者だ。

 注射器、変異――変質の情報で、確度の高い予想に辿たどり着くとはね。


「その中身をクロエが調べた結果――」


 既にインフィオの顔は困り顔だ。


 ……まぁ、そういう顔になっちまうよな。

 俺もこの事実に関しては、同じ顔しかできないよ。


「『ポイスパ』と同じ成分だと判明した」


 ローズもはっとしたと思えば、すぐに困り顔になった。


 しばらく無音な空間で、俺達は苦笑したままだった。

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