表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
才能がなかった俺は、仲間をS級に導き、『花園の批評家(レビュアー)』と呼ばれるようになった。  作者: マボロシ屋
7章 花園への道、未だ遠く

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/139

77:飢えを満たすは王の務め#

 ユリアは静かに弓を引き絞り、待っている。

 俺がクロエに薬瓶くすりびんを投げさせる瞬間しゅんかんを……


 アリアとガウルは、奥地に先行し進んでいった。

 その間に、手前のオークを静かに処理する……


 俺は風の流れを確認してから、クロエに視線を送る。そして狙う位置を手で示す。


 俺の指示で、クロエはしびれ薬の入ったびんを――


「んっ!!」


 静かに力を入れて投げ込んだ。


 綺麗な放物線を描きながら、複数体のオークの頭上に向かっていく瓶。


「……しっ!!」


 弓のつるを指から離し、矢が解き放たれる。


 木々の隙間すきまから月の光が刺し込み、瓶が光を反射する。

 そして……矢によって砕かれた。


 パリンッ、と割れる音が響くとしびれ薬が散布され、月の光でキラキラと光り輝く。


 ドスン……、とオークが倒れだす。


 しばらく、綺麗に粉塵ふんじんが舞うのをながめながら、収まるのを待った。


 ……もう行けるな。

 クロエの痺れ薬でオークと一緒に痺れたらかなわないからな。


 彼女達は平気だけど……以前、吸い込んで偉い目にあったからな……


「良し……向かう――ん? どうした?」


 立ち上がろうとするとクロエに腕を引っ張られる。


「だ、だめ。ノーマはまだ……ご、ごめんね」


 ……どうやら、俺ならまだ十分に痺れる事が出来るようだ。


 ……俺だけ風上に迂回うかいして指示を出そう。

 リーダーだけ痺れるなんて情けない姿を、さらしたくないしな。


 森の中で倒れるオークを、イリアとユリア、ノインが処理していく。

 クロエは薬品で痺れているオークを確認している。


 それらを遠目に見ているリーダーの俺。


 もうそろそろ、良いよな?


「……クロエ、もう大丈夫かな?」


「ま、まだお兄さんはだめ……そばに来る前に終わると思うから、待ってて、ね?」


 お姉さん口調で眼鏡めがねの位置を直しながら、俺をたしなめるクロエ。


 まだ効果が残ってるのか……


「……仕方ない。今後は俺も問題ない様に、何かしらの薬品対応策をお願いするか」


 一人、離れた位置で呟いていると、クロエが近付いてきた。


「お兄ちゃん、やっぱりこのオーク達も同じような傷がある。この群れは全個体ぜんこたいが恐らくだけど、何かを刺されて、通常個体が変異――変質してる」


 おだやかじゃない言葉だな。

 通常個体の変異――変質。


 明らかな異常事態いじょうじたいだ。


 先行しているアリアと護衛のガウルの報告次第だが、『開花』の手に余る事態かも知れない。


 だが、応援を待っている時間も無い。

 俺が作戦指揮をして、一網打尽いちもうだじんにするしかない。


 先行する二人を待ちながら、森の中でオーク本陣での指揮を考え続けた。


「……ノーマ君、そっちは無事に終わったみたいだね」


「……一大事いちだいじだぞ、ノーマ」


 アリアとガウルが、顔をしかめめながら戻ってきた。


 くそっ……悪い方向に事態が進んでやがる……

 アリアとガウルは個別Bランクだぞ……それが顔をしかめるって事は……


「……オークキングがひきいていたか」


「もうちょっと状況は悪いかな……上位種はキング1体、ジェネラル1体、ナイト5体。下位種オークは30体ってところ」


 ……まずい。

 想定よりも上振うわぶれている……


 この数は、ノインが下位オークを上手く減らせたとして、ギリギリ対応できるかどうかだ。


 そして、オークキングはAランク、ジェネラルはBランクだ。ナイト5体も警戒にあたいする。


 歯車が狂えば全滅ぜんめつしかねない危険度だ……


 顔には出さないが、背中に汗が吹き出てきた。

 誰よりも彼女達の実力を知っているからこそ、厳しさも理解できてしまう。


「……ノイン、魔力は練り終わってるか? 最初に数を減らすぞ。キングを中心に放ってくれ」


「うん、問題ないよ。初撃に範囲魔術を叩きこむね」


 ノインの魔術の後は……


「クロエ、何がある」


「今は……しびれ薬、溶解毒ようかいどく閃光玉せんこうだま煙幕玉えんまくだま粘着剤ねんちゃくざい、かな……」


 クロエの返答で幾重いくえの指揮を組み合わせ、頭の中で展開を想定していく。


「クロエは下位種の動きを阻害そがいし、狙えるならユリアとの連携れんけいで上位種に毒を浴びせろ」


 ……だが、まだ厳しい。

 最悪の事態におちいった場合にも、彼女達を無事に撤退てったいさせる事が重要だ……


「ユリア、木の上から全体を把握はあくし狙え。それと、追加のオークで退路が無くなりそうな時は知らせてくれ」


「了解、お兄さん」


 ……これで退路の問題は解決したな。


 徐々に勝算の高い指揮へと固まっていく。


「ガウル、ノインの魔術で生じたすきじょうじて、キングを引き付けろ。決して無理して倒そうとするな。奴に指揮の隙を与えなければ、それで良い」


「……あいよ。だが、無理しなきゃ食い破って良いんだろ?」


 先ほどまでと打って変わり、にやっと笑うガウル。


 ……もう恐怖よりも、格上との戦闘を楽しみに感じだしてるのか。

 だが、尖兵せんぺい――前衛はそれで良い……


「アリア、ガウルと一緒に出ろ。得意の速さと回避で、ジェネラルをキングから離すんだ」


「分かった。しっかりと引き離すね」


 アリアは厳しい状況を理解しているだろう。

 だが、キングとジェネラルを引き離すにはアリアしかできない。


 これで対応すべき上位種はナイトだけだ。


「イリア、ナイトと下位種を中衛、遊撃ゆうげきとしてしのぎ倒すぞ。俺も援護に回る」


「……かしこまりました。ノーマさん、よろしくお願いいたします」


 背筋をピンと立て、俺の目を見て告げるイリア。


 中衛はイリアに任せれば問題ない。

 後衛のノイン、クロエにオークが流れてくる事はないだろう。


 これで適材適所てきざいてきしょな役割は決まった。


 後は臨機応変りんきおうへんに指揮をすれば良い……絶対に、彼女達を生還せいかんさせる。


 俺はうなずき、『開花』を引き連れて森を進む。

 それまでの空気が一変する。


 厳しい状況を乗り越える――乗り越えさせるのが、リーダー、クラン長のつとめだ。


 森の先に見えだした空間を見据みすえる。


 オークが群を成し、軍を形成していた。

 その中心――キングとジェネラルを囲んでいる。


「動き出したら止まれないからな。覚悟は良いな?」


 彼女達に確認をするまでもなかった。

 既に油断なく獲物えもの――魔物をにらみ、俺の合図を待っていた。


 ここからでも異様な魔力の質を感じる。

 ねっとりと体にまとわりつき、意識していなければ呼吸がみだれそうになる。


 キングは目の前に出された魔物の肉にかぶりつく。

 それだけの行動で俺は恐ろしさで背筋せすじこおる。


「……っ」


 恐怖から声が出そうになる。

 だが、生唾なまつばを飲み込みこらえた。


「ふぅ……はぁ……」


 彼女達の気配を感じろ。一人じゃない。

 『開花』は7人だ。


 『花園の批評家レビュアー』、覚悟は良いな……?


「……ノイン、やれ」


「……凍てつく氷柱つららうな暴風ぼうふう烈火れっかほのおつつみ飲み込め地割じわれ。複合魔術ふくごうまじゅつ天地開闢てんちかいびゃく


 ノインが静かにとなえ、体からはなたれるられた魔力が、世界にじつを持って顕現けんげんする。


 並のオークなら容易ようい串刺くしさすであろうするどい氷柱、飛ばされてしまう程の回転力と切断を生む暴風、魔力であやしく七色に輝く炎、動きを阻害そがいし命をうばう地割れ。


 氷の冷たさが肌を刺し、風は悲鳴ひめいを上げながら森を引きき、業火がおおぜ、地面がふる地鳴じなりする。


 今、この場において、天地開闢てんちかいびゃく瞬間しゅんかんおとずれていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ