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才能がなかった俺は、仲間をS級に導き、『花園の批評家(レビュアー)』と呼ばれるようになった。  作者: マボロシ屋
7章 花園への道、未だ遠く

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75:重なる風景、異なる情景

 『北のナモナキ村』へ帰郷ききょうしてから数日。


 王都での冒険者活動の報告をし、過去の両親とのすれ違い――わだかまりも消えた。

 父さんと母さんとの距離きょりは元に戻り、みぞまっていく。


「……避け続けて、途方とほうもないみぞの様に思っていただけだった。避けるのではなく、一歩前に……」


 武闘祭の時と似ている事に気付き、笑ってしまった。


 その翌日……

 村長の声掛こえかけに皆が賛同さんどうし、夕方から宴会をもよおす事となった。

 父さんと母さんも、宴会の準備のため、昼から広場へ出向でむいて行った。


 それを見送り、俺とノインは通りの楽しそうな声を、庭の長イスで聞きながら、のんびりと待つ。


「宴会か……帰郷した事で、こんなに気分が変わるとは思わなかったな」


 思い出されるのは村を出る前の宴会。

 だが、当時の気持ちと今の気持ちは変わっている。


「ノー兄、嬉しそうだね」


 隣に座るノインが俺の顔を見て笑う。


「あぁ、凄く楽しみなんだ。心の底から、この宴会を楽しめるって思えるんだ」


「そっか。良かったね、ノー兄」


 ノインはそれだけ言うと、長イスに寝転がる。


「……温かいね」


「あぁ、本当にな……」


 時間が来るまで、俺とノインは村の通りを眺め続けた。


 空も夕焼けに染まる頃、俺とノインは広場に向かって歩いていく。


 近付いて行けば、声も大きくなっていく。


「わぁ~、広場がすっかり宴会場えんかいじょうだね!」


 ノインの言葉の通り、広場には屋台で様々な料理が提供されていた。


 鳥肉などを一口大にカットした物を炭火で焼いた串焼き。

 具材がはみ出るほどパンにはさまれたハミパン。

 厚い鉄板に油を引き、った粉ときざみ具材を流し込み、焼き上げられ、こうばしい香りを放つ、鉄板焼き。


 どの食べ物も食欲をそそる香りを放っている。


「ノーマとノインも来たぞ! ほら、こっちに座ってくれ!」


 農家のおっちゃんが俺達に気付くと、声を出して周りに知らせる。

 そのまま、村総出むらそうでで宴会の準備が終わった広場の奥に、俺達を先導せんどうする。


「こうやってお前らとまた、宴会が出来て嬉しいもんだ! あの時のガキンチョどもが!」


 おっちゃんは、かっかっか、と笑い声を上げると立ち止まる。

 おっちゃんの後ろには、幼馴染おさななじみ達がすでに席にき、手を上げている。


「今日の主役は、お前らだ! お前もだぞ、ノーマ」


 にかっ、と笑うと、かたたたいて屋台へ去っていく。


 おっちゃん……

 俺は、どれだけの人にあの日、気付かれていたんだろうな……


「ノーマ、ノイン! 早く座って食おうぜ! 腹減った!」


「ノーマ君、ノイン、待ってたよ~。もう料理もアタシ達で準備してあるよ!」


「ノーマさん。こちらにどうぞおかけに。ノインさんもどうぞあちらに」


「お兄さん、遅いよー! ほらほら! ノインも早く座って!」


「お兄さん、ノイン。い、一緒に食べましょう」


 皆が笑顔で、俺とノインをさそう。


 冒険者になっても、いつも一緒にいる幼馴染達。

 既に宴会の食事や酒は用意されていても、俺達を待っていてくれた。


 今後も変わる事のない関係。

 そして……記憶に残り続け、れる事のない大切な思い。


「ありがとう、みんな」


 イリアの引いたイス――長テーブルの上座かみざ側に座る。

 右手にガウル、ノイン、クロエ、左手にアリア、イリア、ユリアの順。


 全員が着席した事を確認し、みんなで酒を手に取る。


「これまでも、俺に付いてきてくれてありがとう。心配もかけたりしてる。でも、これからも俺に付いてきて欲しい」


 乾杯とはまだ言わず、俺の気持ちを告げる。

 だが、ガウルがフライングで飲んでしまった。


「あ~……じゃぁ、乾杯!」


「「「「「乾杯っ!」」」」」


「ぷはぁっ!!!」


 乾杯の後に、ガウルが酒を飲み干した吐息といきれ、みんなの笑い声に花が咲いた。


 しばらく俺達だけで飲食しながら会話していると、村長が台座の上へ移動し、声を出した。


「ナモナキ村の皆。今日は賛同してくれて感謝する。知っての通り、王都に行き、冒険者として活躍かつやくしている彼等『開花』が戻ってきた! 今日は無礼講ぶれいこうだ。存分に飲み、食べ、なつかしみ、今をかたらおう!」


「「「おぉっ!」」」


 そこからは、俺達のテーブルにちらほらと人がおとずれ、二言三言ふたことみこと、会話をしていった。


 ある程度、人の波が途切れた所で一息ついていると、こちらに大人数で向かってくるのが見えた。


「ノーマ、ノイン。皆さんが挨拶あいさつしに来てくれたわよ」


 そう言って母さんが手の平で示す先には……

 幼馴染達の両親。


 慌てて立ち上がり、お辞儀じぎをする。


 すっかり酒に食事と楽しんでしまったが、しっかりと挨拶をしてなかった……

 彼女達と冒険者として活動しているのだから、最初に挨拶するべきだったな。


「す、すみません! リーダーとして、こちらから挨拶にうかがうべきでした」


「ははは。ノーマ、気にしなくて良いよ。うちの子が行きたくて付いて行っただけさ」


 そう言って、大きく口を開けて笑うのは、ガウル母――テレーザ。


「そうさ。ガウルはノーマ君に付いて行くって、ずっと言ってたからね」


 ガウル父――レオネルは、テレーザの後ろから顔を出すと、同意して笑う。


「ワタシの子たちもそうよ~。アリアは昔も今もノーマさんにべったりだし、イリアなんて家政婦みたいになったのノーマさんの為だし、ユリアだってお姉ちゃんたちだけズルいって~」


 ほほに手を当てながら、おっとりと言う、アリア達3姉妹の母――セラフィ。


「マ、ママ!!? ちょっと口閉じてっ!!」


「お母さま、少しこちらへ来てくださいますか? お話したい事があります」


「ママと話してくるね~」


 ピニー家の3姉妹はさわがしく立ち上がると、セラフィの手を引き、背中を押して離れていった。


「ふふ、セラフィのうっかりだね。いつもそばに居てくれるから、親としては安心できるよ。ありがとね、ノーマ君。それで、いつ頃に婚約こんやくしてくれるのかな?」


 アリア達の父――ルシアンが微笑ほほえまし気に離れていった彼女達を見ながら言う――


 アリア達が離れていった先から、石が投擲とうてきされ、見事ルシアンに当たり、即座に近付いてきていたアリアに引きずられていった……


 その後ろから、おずおずと出てくるのはクロエの父――ベルランと母――マーティ。


「……ノーマ君、ありがとう」


「あ、ありがとうね……」


 小さな声で、犬獣人の耳と尻尾しっぽを小さく振り、手も振る。


「そう言ってもらえて良かったです。今後も彼女達のリーダー、クラン長として、支え続けていきます」


 幼馴染達の両親の感謝に、気恥きはずかしくありながらも、胸をって伝える。


 そのまま談笑だんしょうをしていると、一人の少年が近付いて来ていた。


 顔に見覚えもないので、俺らが村にいた時にまだ生まれたばかりの子だったのだろう。


「なぁなぁ! 兄ちゃんはさ、無能者って奴なんだろ?」


 大声で無邪気むじゃきに笑ってたずねる、年端としはもいかない少年。

 周囲の大人達の話し声が消え、静かになってしまった。


 だが俺は、少年に笑顔を向ける。


「そうさ。俺は無能者って奴だよ。無開花者――凡人って奴だな」


「じゃぁさ、なんで冒険者やってるの? 無能者が冒険者になっても強くなれないって聞いたよ?」


 少年の純粋じゅんすいな質問。周囲は静かなままだ。

 以前の俺なら、一緒に静かになり、気にしていただろうな。


 だが、今の俺は『百花繚乱』クラン長、『花園の批評家レビュアー』のノーマだ。

 無理、無茶、無謀むぼうを行い、進み続ける者。


 だからこそ――


あきらめきれないモノがあったんだ。だから、誰かの否定では止まれなかった、止まりたくなかった。我武者羅がむしゃらに進んで、生死を彷徨さまよってなおも、諦められなかったモノだから。……だから今も、冒険者なんだよ」


 俺の言葉に、少年は目をじっと見てきて言う。


「兄ちゃん、かっけぇな! 挑戦者チャレンジャーって奴だ! 教えてくれてありがとな!」


 そう言って、満足したのか手を振って去っていく。

 俺の言葉が、態度が、気にした素振そぶりもないので、周囲に話し声が戻っていった。


 挨拶も終わったところで、そっと主賓しゅひんの席を離れ広場のはしへ行く。


 昔の俺が見た景色けしきかさなる。

 けれど、感じる情動じょうどうは全くの別物だった。


「今日は、月も綺麗きれい、だ……」


 空をあおぎ、月をながめる。

 騒がしい中、悠然ゆうぜんとそこにある月。


 ――ドンッ!!、と音が鳴る。


 それまでの宴会の音と違う、異質なモノ。

 村のみんなも、今の音に違和感を感じたのか徐々に静かになる。


 ドゴンッ!!ガララッ!、とくずれる音に、鉄がきしむ音が静かになった広場に続けて聞こえてくる。


 その瞬間、『開花ブルーム』の面々は俺の下に来る。


 反射的に動き出す。

 誰かの指示を待つまでもない。


 俺は静かに手で指し示し、広場に告げる。


「皆、広場に居てくれ!」


 宴の余韻よいんを振り切るように、俺達はけ出す。


 方角的に放牧地ほうぼくち

 近付く毎に、細かい瓦礫がれきの音を、耳がとらえていく。


 身体強化で暗闇くらやみの先を見ようとする。


 ――何かが、そこにいた。

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― 新着の感想 ―
良い感じの祝いの席。 故郷で評価されるというのは、王都で評価されることとはまた違った感慨があるのでしょうね。 (*´ω`*) 楽しく終わるかと思いきや、何やら不穏な締め……。 どうなるのか楽しみ! …
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