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才能がなかった俺は、仲間をS級に導き、『花園の批評家(レビュアー)』と呼ばれるようになった。  作者: マボロシ屋
7章 花園への道、未だ遠く

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69:留守は頼んだ。行ってくるよ

 北のナモナキ村に里帰りをする日がやってきた。

 六花――幼馴染おさななじみ達にも伝えて、一緒に帰郷ききょうする手はずになっている。


 そして、集合場所は出発前の挨拶をするために『百花繚乱』クランの前だ。

 馬車も定刻前に到着して待機している。


 後は、『百花繚乱いのこりぐみ』の皆と挨拶だけだ。


「ガウル、しっかりと時間に来れて偉いぞ」


 よしよし、とガウルの頭を、ガシガシと撫でてやる。


「ほめろほめろ~! もっと、なでやがれ~!」


 嬉しそうに手にぐりぐりと頭を押し付けてくるガウルを撫でていると、『開花』の皆から視線を感じて、手が止まる。


「ねぇねぇ、ノーマ君。ガウルだけ、やっぱりずっこくない? 特別感でてるって!」


 アリアが代表して口をとがらせて言った。


「いや、これは別に……」


「そうだそうだ! オレはずっこくない!」


「ずっこいでしょうが! アンタ、覚えてなさいよ! 村に帰ったらアンタのママに――」


 ガチャッ、と扉が開かれる。


「皆さん、クランの前で言い合いしないでくださいよ。周りから変な目で見られてしまいますよ?」


 ローズが中から出て来ると、開口一番に言い合いをいさめる。

 後ろから、ぞろぞろと花扇の面々も顔を見せてくる。


「おはようございます、ノーマさん。今日から休暇、羽を伸ばしてきてください」


 ローズがにこやかに言う。


「ノーマ、付いて行って良い~? つまんない~」


「インフィオ……俺がいない間、しっかり頼んだぞ……?」


 インフィオの駄々にぴしゃりと言い放ってやった。


 やったのだが……


 おいおい……そんな顔しないでくれよ。なんだその、捨てられた猫みたいな顔。

 罪悪感が生まれちまうって。


「ノーマ、こっちの事は任せておけ。お前の変わりとまではいかないが、何かあれば『浮かぶ湖面ムーンレイク』で対応して――」


「レイク、君たちだけに良いカッコしいさせないよ? 『風運ぶ音色ウィンドサウンド』で、だよ?」


 レイクの言葉にウィンリィが被せて発言し、横目で見やる。


 仲が良いんだか、悪いんだか。この場面だけ切り取れば分からなくなるだろうな。

 だけど……彼等、彼女等は、同じ『百花繚乱』であり、互いに花を咲かせ、主張しあう。

 仲間であり、気の置けない仲であり、競争相手。


 周りを見れば……

 『雨上がりの虹レインボウレイン』、

 『踏みしめる大地ステップグラウンド』、

 『陽光注ぐ草原サニーグラス』、

 『見晴らす丘ヒルビュウ』。


 不敵ふてきに笑い、挑戦するようなひとみ

 一様に『月浮かぶ湖面』と『風運ぶ音色』を見ていた。


 変わらない。

 変えてなるものか。


 それを再確認しながら、声を出す。


「じゃぁ、皆、留守は頼んだ。行ってくるよ」


 俺は言葉少なに告げて、予約した馬車に乗り込む。


「じゃな!」


 ガウルはあっさり。


「ば~い。よろしく~」


 アリアは軽く手を振り。


「では、失礼いたします。皆様、留守の間、宜しくお願い致します」


 イリアはお辞儀をして。


「もう、皆、切り替え早すぎます! ノー兄も! それでは皆さん、よろしくお願いします!」


 ノインは少しの小言を言いながら。


「少しの間よろしくねー」


 ユリアはペロッと舌を出しながら。


「お、お願いします」


 クロエはおずおずと。


 俺達『開花』が乗り込んだ馬車は、少しだけ手狭てぜまさを感じるが、6人が乗ってもまだスペースがあるだけ、マシだろう。

 荷馬車に乗ったら体が痛いからな……


 そうして見送られながら、俺達は『北のナモナキ村』へ向かい始める。

 馬車は動き、通りを進み、王都の門を出ていった。



………………



「で? あんた達はどうすんだい? 活動休止なんだろ?」


 ヒルダが後ろを向き、アルメリアとフリュウに声をかける。


「と、特には決めてないんですよね……訓練に付き合って頂けたら良いなぁ、とか考えてました……」


「ですです。わ、私達はダンジョンでの失敗もありましたので……」


 悩ましそうに答える二人に、ヒルダは額と目に手を当てる。


「……はぁ。ったく、ノーマも抜けてるねぇ……仕方ない、私がいっちょ、お嬢ちゃん達に道を示してあげようじゃないか」


「ほ、ほんとですか! や、やったね、フリュウ!」


「う、うん! アルメリアちゃん!」


 嬉しそうな声を上げる二人。

 その様子を見てヒルダは肩をほぐす動きをしながら、苦笑して告げる。


「勘違いするんじゃないよ。あんた達は先にやる事があるんだよ。こっちに来なっと。あんた達、軽いねぇ……さて、『花扇』のリーダーは皆、来てやってくんないかい」


 ヒルダの長身でしっかりとした体躯、腕にがっしりと掴まれ、抱えるようにして運ばれるアルメリアとフリュウ。


「え、えぇぇえ!?」


「わ、わわぁあ!?」


 いきなりの事で慌てる二人を他所に、周りに声をかけた。


「あん? んだよ、ヒルダ? リーダーが顔つき合わせて、こいつらに何するってんだ?」


 グレイがキョトンとした顔でヒルダに聞き返す。


「はぁ……ほんっとうにあんたは……他の奴は分かってんだろ?」


「了解した。グレイ、後で分かるから付いてこい。お前もリーダーなら、もう少し機微を理解する事だな」


 ヒルダの呆れ混じりの言葉にレイクが同意しながら告げるとクランへ戻る。


「んな!? 俺のどこが――」


「はいはい、行きましょうねー」


 アイシャはグレイが突っかかろうとするのを、強制的に抑え込み、背中を押して、クランの扉をくぐらせる。


「ノーマも時々は抜けてるからね! ボク達が支えてあげないと! ははっ!」


「ノーマくんはそれくらいが良いよ~。厳しい時は本当、大変なんだから~」


 ウィンリィとサニアは軽口を言いながら入っていった。


「じゃぁ、お嬢ちゃん達。行くよ」


「え、え? えぇええ!?」


「な、なんですかぁ!? ど、どこに行くんですかぁ!?」


 アルメリアとフリュウは叫び声を上げながら、抱えられたままクランへ入っていき、扉が閉まる。


 静かになったクランの前で、ローズは『花扇』を微笑ましそうに見た後に、グッ、と背を伸ばす。


「さぁ、私達も仕事をしましょうか」


 クランの前からは先ほどまでの喧騒けんそうは消え、変わりない風景だけが残った。



………………

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― 新着の感想 ―
成程。休暇で里帰りするんですね。 ……他のメンバーはノーマくんの休みに便乗した休暇なのか。羨ましい。 ガウルだけ特別扱いですけど、馬車でノーマの隣の席は争奪戦にならないのかな? 普通に考えて「宜しい。…
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