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才能がなかった俺は、仲間をS級に導き、『花園の批評家(レビュアー)』と呼ばれるようになった。  作者: マボロシ屋
6章 実を付けぬ金樹(ざまぁ)

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63:ひび割れた金の樹#

 薄暗く、視界の悪い森を歩いた『金の樹』は立ち止まり、周囲を見回していた。


 あれから道中で、何度もピクシーやバインドスネークに襲われたが、なんとか追い払い、遅れを取り戻そうと息つく暇もなく、ジェイドの指示で進み続けていた。


 だが森の先を良く見れば、地面には最初に襲われた地点である事を示す、ピクシーの死体が転がっている。

 奥に進んだのではなく、森で迷い戻って来た事を、否応なく理解させる。


 ダンジョンで、息つく暇なく戦闘した疲れだけではない、ひりつくような空気がただよう。


「で……? サンフ、俺達は今どこにいるか聞かせて見せろ! なんか弁解の一つくらいあんだろうな!?」


 ジェイドはイラつき、ダンジョン内で大声を出し、詰め寄る。


「……ピクシーとの戦闘で、道しるべのアイテムを持ってかれたっす……ジェイドさんが、どんどん先に行ったから、荷物を確認する暇も――」


「この俺のせいだっていうのか? お前、何年冒険者やってきた…… こんなぼんミス、初心者しかやんねぇよ。俺は、お前がもっとやれると思ってた。――裏切られた気分だぜ」


 サンフの言葉の途中で、ジェイドは噛みつき、更に顔をみにくゆがめ、怒声を上げる。


「ちょっ!? 俺もっしょ!?」


 ホーは目を見開き、驚きの声を上げるが、ジェイドの目がぎょろっと向き、黙り込む。


「はぁっ……、お前も同罪に決まってんだろ。ピクシーからサンフを庇ってやってりゃ、こんな事になってねぇんだよ……」


「我やジェイドに何度失望させるつもりだ? 言い訳ばかりで、見苦しい。実に不愉快だ」


 ジェイドの言葉にスィーセも同調し、あきれた声を出して3人を見やる。


 一頻ひとしきり怒りをぶちまけた後、ジェイドはサンフに問いかけた。


「それで、ここからどうやってダンジョン踏破を目指すんだ? 案の一つくらいあるんだろう? まさか、ただ謝ればそれで良い、なんて思ってないよな! 盗賊シーフなら盗賊の仕事をしろ!」


「そ、それは……そうっす、代わりに樹に印を――」


「だったらなんでやってねぇんだ! 本当にお前、使えねぇなっ! さっきまでの道でやってりゃ良いだろうが!」


 代替案だいたいあんを提示しようとしたサンフの言葉に、ジェイドはカッとなり、何を今更言っているんだ、とあきれと怒り混じりで告げる。


「い、今からやるっす……申し訳ないっす……」


「はぁ~……まじでこんなのが出来てないなんて、可笑しいだろうが……! それにホー! ハルー! なんでお前らも気付かない! そうやって俺に言われるまで――」


「ま、またピクシーの群れっす! 前方! 今までよりも多いっす!」


「ちっ!! ちんたらやってるから、また魔物が来ちまったぞ! ハルー、魔術で範囲攻撃で処分しろ! 早くやれ!」


「わ、分かった! さ、裁断さいだんする風の舞! 鎌切かまきり!」


 前方から襲い来るピクシーの群れをハルーの風魔術が処理していく。

 しかし、魔物の攻撃はこれで終わらなかった。


「しゅ、周囲にいきなり複数の気配が現れたっす! 警戒っす!」


「あぁっ!? いきなりってどういう事――」


 ジェイドがサンフの言葉に怒鳴り声を上げようとすると……

 『金の樹』を囲む樹が生き物の様に動き始める。

 上からは枝が、土からは根が、槍の様に刺し、つるの様にまとわり付こうとする。


「ト、トレントっす……狡猾こうかつおびき出し、養分にする魔物……まずいっす……囲まれたっす……!」


「くそがぁっ! こんな魔物に遅れなんか取るかっ! ホー、俺と連携しろ! スィーセ、ハルーの援護だ! サンフ、魔物の群れを迂回うかいして逃げるルートを探せ!」


 初めて、ジェイドがまともな指示を出した瞬間だった。

 魔物に囲まれ、逃げ場を探す場面になり、ようやく正しい指示を出した。


 その言葉で『金の樹』は共通の危機を脱するために、先ほどの事を忘れ、一丸となって動く。


 バインドスネークが、トレントの枝に乗ってハルーに襲い来る。

 それをスィーセが防ぎ、守る。

 ハルーは仲間を信頼し、ピクシーに向けて魔術を放ち続ける。


 ジェイドとホーは全体のトレントの枝と根を牽制けんせいし、『金の樹』のスペースを確保する。


 サンフも牽制しながら周囲を細かく確認し、魔物の隙間すきまを探していく。


 この段階になって、『金の樹』は幸か不幸か、まとまって行動できた。


 しばらく『金の樹』で守りに専念していると、サンフが声を出す。


「ダンジョン出口側は魔物が多すぎるっす! 反対にジェイドさんの左手側は手薄っす! 一度やり過ごすっす!」


「聞いたか、お前ら! 良いな! 左に進むぞっ! 行くぞぉおおっ!! うらぁあああっ!!!」


「了解っしょ!」


 ジェイドの声に、ホーが反応して、『金の樹』の道を切り開く。


 中衛にサンフとハルー、殿しんがりにスィーセが付く。

 堅実な連携で、魔物の壁が手薄な場所を突き崩していった。


「お前ら、やったな! ハルー、魔術で大群のピクシーを払いのけるとは凄いぞ。ホー、良く俺に合わせてくれた。サンフ、あの状況で良く打開策を見つけた! スィーセ、殿として耐えてくれて助かった!」


 一時の休息に、ジェイドは嬉しそうにメンバーを褒めていった。


 誰も言葉を返さず、ただ足元に視線を落としたままだ。

 まるで、誉め言葉が疲労と苛立いらだちの土壌どじょうに落ちた雨粒のように、音もなく、痕跡もなく、染み込んで消えていくようだった。


「ジェイドさんのため……ジェイドさんの……」


 ハルーは小さく呟いた。


 そして、しばらくすると魔物の波は途絶えずに、また襲ってきた。


 壁は突破したはずだが、迂回、休息しようとする度に接敵してしまう。


 気付けば、アイテムは消耗し、歩き、走り、戦闘し……疲労が蓄積ちくせきし続けていた。


 そうして進まされ続けた先には……

 ダンジョンの最奥さいおうを示す、ボスエリアが見えた。


 『金の樹』はそこで気付いてしまった。

 魔物の群れの囲いを、無事に抜けられたのではなく……


「は、はは……や、やっちまったっす……は、はめられちまったっす……」


 魔物に逃げないように誘導されていたのだと。


「これは俺達の栄光、未来を引き寄せた結果だ! はめられた? 違う! ダンジョン踏破される事に魔物は気付かず、俺らを導いただけだ!」


 だが、ジェイドはその言葉を潰し、その先の未来を思い描き続けていた。

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― 新着の感想 ―
お、まともに機能しはじめてるやん! ボス部屋を乗り切れば、勝ったも同然! ガハハ! ヾ(・ω・*)ノ ……とにかく、ジェイドたちの無事の帰還を祈ってますよ〜。 (*´ω`*)
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