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才能がなかった俺は、仲間をS級に導き、『花園の批評家(レビュアー)』と呼ばれるようになった。  作者: マボロシ屋
6章 実を付けぬ金樹(ざまぁ)

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61:咲かせる者に嫉妬(しっと)して

 その日、王都ではある話題で持ちきりだった。


「聞いたか……無能者がAランクの魔物を倒したって」


「ねぇ、聞いた? 希少種の人型を倒したの、無能者なんですって!」


「無開花者がCランクダンジョンで生きてるだけでも凄いってのに、一体全体どうやって……」


「それも、今まで寄生虫だなんだと馬鹿にされてた、『百花繚乱』のクラン長で――」


 クラン合同による『古びた石壁』の踏破。

 参加は王都二大クラン『月下の乙女』、『雄々しき月光』、そして若手中心の新進気鋭『百花繚乱』。


 だが、話題は踏破の事よりも、ノーマばかりに着目される。


 酒場――銀の杯ぎんのさかずきでも同じ状況であった。

 ダンジョン踏破の祝いに、しばらくはワイワイと気にせず、気分よく飲んでいた『金の樹』メンバーは、徐々に不満を募らせていった。


 そして、遂に不満が爆発した。


「あぁああ! くそっ!! なんで俺ら『雄々しき月光』のパーティー、『金の樹ゴールドツリー』の話題が上がらない!」


 『金の樹』リーダー、ジェイドの怒り声に、周りの客は迷惑そうに見やりながら、再び話題に戻っていく。


「そうっす! 俺ら、特にジェイドさんだってボスエリアの活躍が凄かったっす! 可笑おかしいっす!」


 同席するホーが同調するように声を上げると、サンフも続けて声を上げる。


「その通りっしょ! 流石に、無能者ノーマばかりが話題なのは、陰謀っしょ! なぁ、ハルー! お前もそう思うっしょ!?」


 サンフに声を掛けられ、挙動不審きょどうふしんに反応するハルーも口を開く。


「へ、へへ、やっぱりそう思うよね。ぼ、僕もそう思うなぁ。じ、実際、無能者が居合わせただけで、倒したって確証……な、ないよね?」


「その通りだ。われやジェイドの様に、力ある者なら理解できる。だが、奴は盆暗ぼんくらだ。どうせ、後ろで踏ん反り返って戦ったていで話を盛ったに違いない」


 ハルーの言葉に頷きながら、スィーセも言った。


 パーティーメンバーの言葉に、ジェイドは腕を組み目を閉じて、うなずきながら聞き入る。

 そして、しばらく神妙な顔をした後に、目と口を開いた。


「やはり可笑しいと思うか。これはきっと、ノーマによる情報統制じょうほうとうせいに違いない……頭は少し回るようだからな。そして、愚かな群衆はそれと気付かずおどらされ、話題性に乗っかってしまっているんだ!」


 真面目な顔で言い切り、メンバーを眺めるジェイド。


 大声で言い切ったジェイドの発言に、周囲の客の視線は、頭の可笑しい人を見る目に変わっていった。


 だが、『金の樹』メンバーは気付かずに話を続ける。


「流石の読みっす! でも、このままじゃ良くないっす!」


「っしょ! この状況を変えるべきっしょ!」


「う、うん。こんな噂、あからさますぎるからね。ぼ、僕ですら気付けちゃうよ」


「うむ。美しい我と、リーダーのジェイドこそが注目されるべきだ。今の状況は不快でならない」


 口々にジェイドへ同調し、ノーマへの嫉妬と憎悪が『金の樹』の中で肥大化していく。


 そこでジェイドは現状打破の方法をひらめき、告げる。


「この状況は、ノーマがCランクダンジョンの裏ボスを倒したからこそ、だ。それなら、俺達はBランクダンジョンに潜って、単独踏破しようじゃないか! 話題を塗り替えるんだ! あんな奴ができて、俺達に出来ないなんて事があるか!?」


 その言葉を聞いたメンバーは、盛り上がり、力強く声を出す。


「ないっす! 俺ら、ジェイドさんこそ、若手筆頭! そして強者っす!」


「っしょ! 無能者の作られた話題よりも、実力を示して自然と噂されるっしょ! ジェイドさんと一緒ならできるっしょ!」


「ぼ、僕も、ジェイドさんとなら、輝ける……が、頑張るよ」


「ははは! そうだ! 美しい我。そこにジェイドが居れば……不可能など、ない!」


 メンバーの言葉に気を良くして、ジェイドも更に声を張り上げる。


「そうだ! 俺についてこい! 不可能なんてない! 俺こそ若手筆頭Cランク冒険者、ジェイド・マニーツリーだ! 『金の樹』こそ、王都の黄金の栄光を背負う存在――その名が語られぬのは、世界が盲目なだけだ」


 その声で店内の話し声を上書きし、ジェイドの高笑いだけが気分良さげに響き渡っていった。

 彼らのテーブルを、他の客は冷めた目で見ている事には気付かずに……


 酒を飲み干し、酔いによって、更に気の強くなった彼ら『金の樹』は立ち上がると、ドシドシと店を後にする。

 そのままの足で冒険者ギルドへ向かい、依頼を眺めだす。


 そして、あるダンジョンの踏破とボス素材回収の依頼票を見つけると、受付窓口に近付き……

 力強く、バンッ、と出して言う。


「俺達『金の樹』は、単独でBランクダンジョン『陽を遮る緑葉』に挑む!」


 窓口の受付嬢うけつけじょうは慌てながら確認をする。


「あ、あの、こちらの踏破と素材回収依頼ですが、Bランクですよ! よ、よろしいのですか? 『金の樹』はCランクですが……」


「構わない! 俺達の実力、経験はCランクではない! あんな奴がAランクの魔物を倒せるというのであれば、俺達は単独で上のダンジョンを踏破できる!」


 受付嬢は、あんな奴、が誰か分からないながらも、『金の樹』の意思を確認したと書類に記載し、説明を始める。


「それでは……今回の依頼について説明させて頂きますね。依頼主はギルド理事会の関係商会になります。その為、未達成の場合には――」


「未達成などありえない! 俺がいれば問題なく踏破し、依頼を達成できる! それと、明日からすぐに向かう。では、吉報を待っていてくれ! ははははは!」


 ジェイドは受付嬢の言葉をさえぎってそう言うと、身をひるがえす。


「ジェ、ジェイドさん!? 説明を、説明を聞かれた方がっ!!」


 そのまま、メンバーと共にギルドを出ていってしまった。


「え、えぇ~……上位ランクの依頼票は未達成だと、相当重い処罰があるんですよぉ……」


 受付嬢の言葉は、伝えるべき相手を失い、ギルドの騒がしさに消えていった。

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― 新着の感想 ―
念願のジェイド主役回! ジェイド! ジェイド! (*ノ・ω・)ノ♫ ジェイドは引かぬ、媚びぬ、省みぬ! 受付嬢の言葉など要らぬのだ! フハハハハハハ! ヾ(・ω・*)ノ
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