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才能がなかった俺は、仲間をS級に導き、『花園の批評家(レビュアー)』と呼ばれるようになった。  作者: マボロシ屋
5章 気まぐれな花は見る者を翻弄する

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51:顔合わせと出発の時

 あれからギルドを出てからは大忙しだった。


 クランに戻ってアルメリアとフリュウの都合つごうを確認し、『風運ぶ音色ウィンドサウンド』――ウィンリィに話をつけに向かった。


 ウィンリィは自分も行きたいと言っていたが、今回は後進育成こうしんいくせいが主な目的だ。

 『風運ぶ音色』はパーティーとしては総合評価Cランクだが、ウィンリィ個人はBランク。


 それなら『踏みしめる大地ステップグラウンド』――グレイ達と『陽光注ぐ草原サニーグラス』――サニア達に来てもらいたい。


 そのせいで少しねてしまったようだが……

 リーダーがCランクであり、この二つが最適解さいてきかいだと考えていると説得し、納得してもらった。


 そして準備を行い、当日をむかえ……


 集合場所の北門に立っていると『百花繚乱うち』のメンバーが徐々にそろいだす。


「早いな、もう居たのか。なぁ、ノーマ、本当に良いんだよな? 確かに俺らは今、微妙びみょうな時期だけどよ。後進の育成つったら、本来Dランクの下部組織――訓練生だろ?」


 グレイが俺に手を上げて挨拶あいさつしながら言う。


 ほぉ? 自分ではもう大丈夫みたいに言うんだな。

 だがな、グレイ。そもそもが、パーティーリーダーがCランクのくせに上手くまとめられていない時点で駄目なんだよ。


 その状態が改善かいぜんしてきているとはいえ、君たちはまだまだ俺の中では後進さ。

 世間せけんの評判なんて関係ない。


 俺にとっては足りないんだ。グレイはこんなもんじゃない、もっと咲き誇れるはずだ、と考えているからな。


「何言ってるんだ、グレイ。君もまだまだだ。Cランクに上がって、しばらくっているとは言え、Dランクみたいな失敗――焦りで連携れんけいみだすような事をしている。その時点で後進に毛が生えたレベルの認識だよ? というか、『踏みしめる大地』はローリー以外の精神性において、Dランクさ」


「うぐっ……それを言われると……言い返せねぇよ」


 俺の言葉にグレイが顔をしかめて声をらす。


「グ、グレイ、頑張りましょう! ね!?」


 ローリーになぐさめられながら、少し離れた位置にいるパーティーの元に戻っていった。


「それでそれで? ノーマくん、アタシ達がアルメリアちゃんとフリュウちゃんと行動すれば良いんだよね? なんかウィンリィに悪い気もするけど、楽しみだな~!」


 サニアが犬耳をぴこぴこさせながら声をかけてくる。


「あぁ、そうだよ。サニア達は元々、加入候補先の一つで考えてた訳だからな。臨時りんじで入れて経験を積ませるには持って来いさ。それに、伸び盛りだ」


「え、えへへ~……照れますなぁ~……」


 サニアがほおに手を当ててもじもじしていると、後ろから声がかかる。


「サニア姉さん。そういう動きやめてってば。妹として恥ずかしいから」


「えぇ~!? だって、嬉しいじゃん! そうしたら自然と体も動いちゃうんだって!」


 立った耳がぴこぴこ、体をくねくね、尻尾はブンブン。

 サニアは犬獣人の中では割と感情がれまくりな方だ。というか、獣人は基本、体のどこかを見れば感情が漏れている気がする。


 妹・アニサの場合は耳が小さくぴくっと動いたり、時々は慌ててせわしなく動いたりと、バレていたりする。

 知らぬは本人ばかりなり、ってな……


 まぁ、それでも姉に比べるとかくせているし、精神的には妹が姉、みたいな感じには見えるかもな。


「な、なんですか、ノーマ。私の耳をじっと見て……」


 おっと、余り見すぎるといやがられるか。女性は視線に敏感びんかんだしな……


「いや、なんでもない。しっかり者の妹だなぁ、と思ってただけさ」


 俺の言葉にサニアが反応する。


「そんな事ないよ? アニサだって時々さび――」


「サニア姉さんっ!! 何を言おうとしてるの!?」


 サニアの言葉はアニサにさえぎられ、ずるずると俺のそばから引きはがされていった。


「にしし、いつもノーマちゃんの前に二人揃うとこんな感じだなー」


「にゃー。ノーマっちにすきあらば、べったり過ぎて心配だにゃー。依存症だにゃー」


 猫獣人のキューイとルーイが手をつなぎ、お互いの尻尾同士さわさわと撫でながら近づいてきた。


「お前らもいつも仲良しで良い事だ。二人もアルメリアとフリュウの事、頼んだぞ?」


「はいなー」


「にゃー」


 のんびりな会話にのほほんとしてしまうな。こいつらは日なたでぬくぬくしてるのが似合うよ、ほんと……


「お、アルメリアとフリュウも来たな。後ろから『月下の乙女ナイトメイデン』、『雄々しき月光ブレイブシェイド』のメンバーもついて来てるな……」


 エリアベートはつばひろの白い帽子をかぶり、その様はお忍びの旅行に向かうお嬢様だな……

 まぁ、伯爵令嬢だからお嬢様は間違いではないんだけどさ。


「ノーマ、おはよう。後ろの子たちも。『百花繚乱そちら』は随分楽しそうな雰囲気ふんいきね? 私の子たちは静かなの。『明の月』のゲツエイ、『卯の花』のサクヤよ」


「おはようございます、エリアベート。それにゲツエイ、サクヤも。今回はよろしく。こっちは俺の無茶に慣れているからかな。もしかするとピクニック気分かもしれないな? ははは」


 俺がそう言って笑うと、背後からじとっとする視線を感じた気がするが……

 無視だ、無視。


 横の二人にも声をかける。


「アルメリア、フリュウもおはよう。緊張はしていなさそうだな。今回は事前に話した通り、お前らの成長度合いも見るからな? しっかりと対応して見せろよ」


「うん! あれからウィンリィさんに教えてもらってるから、だいぶ変わったんじゃないかなって!」


「うんうん! 私達も成長してきたって感じるよね」


 自信が付き始めたか?

 だが、まだ早いな。その自信、今回の合同踏破で軽く揉んでやるか……


 少しばかりのショックは与えないと、強くたくましい花とはならない。焦らず、丁寧に……だな。


「はは、それじゃぁ、現地では魅せてもらおうかな? もう一度伝えるが、俺が全部をアドバイスする訳ではないからな? 『陽光注ぐ草原』と話し合った上でお前らの安定する連携方法を見つけ出してみろ。都度、これは気付きにくいって判断したら伝えてやるからさ」


「「はい!」」


 アルメリアとフリュウが返事をしたので『陽光注ぐ草原』に指を向けて向こうに行くように伝える。

 二人が離れたので、大男――グリズリーにも声をかける。


「グリズリーさん、おはようございます。若輩じゃくはいの身で参考になるか分かりませんが、俺なりの批評レビューをしていきますよ」


「がはは! 若輩の奴が俺みたいなのを軽々と飛び越えていくんだ、気にすんじゃねぇ! まぁ、なんも分からなくても文句は言わねぇよ。安心しろ! そんで、後ろの奴らが付いてくる奴らだ」


「……『金の樹ゴールドツリー』ジェイドだ。ふん……」


「は~い、お兄さん。『鎖つなぎクレナテッセ』よ。よろしく」


「ど、どうも……」


 ……おいおいおい、こいつ。

 武闘祭の期間で酒場で大声出して陰謀論を語ってた奴だろ? 声も名前も一致しているんだが……


 前途多難ぜんとたなんかぁ……? 敵愾心てきがいしん持たれちゃってるの丸分かりだしなぁ。


 俺がそんな事を考えているとも思っていないだろうグリズリーが声を出す。


「よし、全員揃ったな? 挨拶も済んだな!? なら、馬車に乗り込め! 出発の時だ!」


 皆、その声でパーティー毎に用意された馬車に乗り込んでいく。


 クラン長も一つの馬車に集まり座る。


「さぁ、ダンジョンに向かいましょうか」


 エリアベートの張り付いたような笑顔を見ながら、何事も起きなければ良いんだが、と移動をしていった。

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批評家(レビュアー)の腕の見せ所が迫ってきていますね。 途中までは他のキャラで感想を書こうと思っていたのですけれど、後半に思いがけぬ出会い頭の事故があって全部飛びました。 (╹▽╹) 伝説の男、…
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