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才能がなかった俺は、仲間をS級に導き、『花園の批評家(レビュアー)』と呼ばれるようになった。  作者: マボロシ屋
5章 気まぐれな花は見る者を翻弄する

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49:合同依頼の打ち合わせと目的①

 先ほどまでの不安を置き去りにするように、冒険者ギルドの受付へ向かいアンナへ声をかける。


「アンナさん、おはようございます」


「あ、ノーマさん! おはようございます! 今日は希望召集の件ですか?」


 アンナは顔を上にあげ、下唇したくちびるに人差し指を当てながら言う。


 話が早くて助かるな。アンナはおっとりしてはいるが、こと仕事においてはその限りではない。

 まぁ、ささっと集合場所を教えてもらいますか。


「それです。受けるかは別として、一応、話だけでも聞かせてもらおうかなと思ってね。どこに行けば良いかな?」


「分かりました! 確認しますので少々お待ちください!」


 そう伝えるとアンナが書類をさっと出し、後ろで机仕事をしている職員と確認を始める。


 今回の件、『百花繚乱うち』――Cランク冒険者の俺が率いる総合B寄りのC評価クランと、『雄々しき月光』――Aランク冒険者のグリズリー率いる総合B評価のクランが希望召集されている。


 発起人ほっきにんである『月下の乙女』が総合B寄りのA評価な事を考えれば、3クラン共に実力がある。


 単純に考えれば、相当に厄介やっかいなダンジョンとなりそうなんだが……

 しかし、改めて考えると、クラン毎の交流は今まで無かったに等しいんだよな。依頼の取り合いとかは起きたりはしているが、それでも相互不干渉そうごふかんしょうに近いというべきか……


 そんな事を考えているとアンナが確認を終えたのか、顔を上げる。


「ノーマさん、場所はギルドの1階、受付横の廊下を進んだ先にある第1会議室です! 行ってらっしゃい! 頑張ってくださいね!」


「ありがとうございます。それでは、また」


 アンナに別れを告げ、第1会議室へ向かう。


 ギルドの会議室なんて利用した事なかったな……

 まぁ、合同依頼なんて基本は緊急時だし、普段の依頼は個々のクランで斡旋あっせんしてもらってうもんな。


 廊下を奥に進むと第1会議室と書かれた部屋が問題なく見つかる。


 扉を開けば――


「あ? お前は……」


 厳ついおっさん――グリズリーが既に会議室の席に座っていた。


「お前も参加するのか? 『百花繚乱』は個人主義でこういうもんには参加しないと思ってたが……こいつは、面白くなってきたな!」


 前と横の髪は短く襟足が長い髪型――マレットヘアの強面こわもてで筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)な大男が軽鎧けいがいを着込んでいる。


 Aランク冒険者のグリズリーか……こうやって相対すると、少しだけ暑苦しいな……

 いや、失礼な事だとは思うんだが、部屋が狭く感じる。


 元々、傭兵ようへいくずれで冒険者になったという話で、傭兵時代からそこそこ有名だったようだ。俺は戦争に駆り出された事もないから知らないけどな。


 まぁ、数十年、他国との戦争なんて、殆ど小競り合い程度しか起きていなかったはずだ。深刻な被害もなかっただろうけれど、実戦によって培われた戦術・戦法も大いに関係して、Aランクにまで上り詰めたと言う事か?


 性格は大胆だいたんで細かい事を気にしないという。こういうのを豪放磊落ごうほうらいらくとでも言うのだろうか。

 ヒルダの男版と言っても良いか? 本人に言ったら怒られそうだけど……


 ただ『雄々しき月光』には悪い噂も聞くんだよな。

 内部では実力主義による上位パーティーからの成果横取りが横行おうこうしていると……


 大手クラン以外でも似たような事は起きているが、それもまた良し、としている節がある言動を聞いた者が多いらしい。


「まだ参加は決めてはいないが、内容次第では参加もやぶさかではないかな。事を急いては仕損じるってね」


 俺の言葉に目を細めて見定めるようにするグリズリー。


「ほぉ? だが、俺としては参加してもらいたいもんだ! まだまだ若いエリアベートの嬢ちゃんと、若手を集め先日の武闘祭で実力を見せた無能者のお前。直接、目の前で見てみたいものだからな! はっはっは! 実力ある奴とやりあうのは面白れぇしな!」


 ……噂が事実かは別にして、悪い奴ではないのだろう。

 まぁ、事実だとしても違和感はないけど。ほぼ初対面でここまで言いのける男だし……


 エリアベートを嬢ちゃん呼ばわりできるのも凄いよ、ほんと。

 ただ、目の前で言うのは無しな? 頼むぜ、本当に。


「そうすると『雄々しき月光』は参加を決めていると?」


「当たり前だな! 合同依頼ってのは中々お目にかかれない分、周りの実力を見極めるのにも『雄々しき月光』――俺らの宣伝にも大きく繋がる! 招集先が嬢ちゃんなら、話題性は抜群ばつぐんだろうよ!」


 確かにそうなんだけどさ……

 今回、そう上手く行くかねぇ?


 まぁ、この男は元傭兵。情勢の流れには敏いはず……俺が心配しすぎなのか?

 でもさぁ、エリアベートの反応が、どうにも気になっちゃうっていうかさぁ……


 グリズリーと一頻ひとしきり会話をして終えると、俺も席に着く。

 無言でお互いに席に座り、エリアベートが来るのを腕を組んで待った。


 無言でいるのも結構つらい!

 というか、やっぱこの男と二人きりはむさ苦しいって!


 今だけは早く来てくれ、エリアベート!

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― 新着の感想 ―
グリズリー……(╹▽╹) 名前からして熊っぽくて強そう。肉食系男子。 あ、そういう意味ではなくて。 (^~^;)ゞ エリアベートさんも二人の様子が発展するのを期待して草葉の陰から覗いているのでしょう…
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