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才能がなかった俺は、仲間をS級に導き、『花園の批評家(レビュアー)』と呼ばれるようになった。  作者: マボロシ屋
5章 気まぐれな花は見る者を翻弄する

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48:好奇心は猫を殺す、かもしれない

 晴れた通りを歩く。

 今日は午前中から冒険者ギルドへおもむき、希望招集の件の会議に参加する予定だ。


 まぁ、ダンジョン踏破って話だが、何が待っているのかねぇ……


 眼の前にギルドの建物が見えてきた。

 徐々に建物に近付いて行くと、不意ふいに隣から声がかけられた。


「あら? 確率はそう高くはないかもしれない、なんて思っていたけれど……来てくれたのね」


 バッと横を見れば、目立つはずの金髪、白いドレスの美少女がいつの間にか隣で俺の歩く速さに合わせるように歩いていた。


 おかしい、これだけ目立つ格好をしていて、気付けなかった……

 確かに王都の往来おうらいだからと、少し気は抜いていたかもしれない。


 それでも、これだけ目立っているんだぞ? いや、待て……周りにもそれほど認識されていない事を考えれば、インフィオのように何かしらのじゅつを利用しているはずだ。


「ふふ、やっぱり面白いわね。貴方あなた、いつもそうやって思考しているの? 今は何を考えていたのかしら……いきなり声をかけられておどろいた、とか?」


 成人を迎えている女性の妖艶ようえんさと、あどけない少女のような可憐かれんさ……見ていると吸い込まれそうなかがやく赤のひとみ……


 視線がうばわれ、歩くのをやめていた事に気付く。


 危険だ……

 この往来で俺一人をあやつるなど容易たやすいだろうと感じさせる何か。魔力か、それとも才能とは別の異能いのうか。


 なんにせよ、ギルドへ早めに向かおう。ここで何かしらを仕掛しかけられてはが悪すぎる。


 あわてて視線をはずし、目を見ないで伝える。


「王都で活動していながら、御挨拶ごあいさつはした事がなかったですね。レディ、エリアベート」


「……あら、エリアベートで構わないわよ。したしい者は皆そういうの」


 いや、アンタと俺はさっき会ったばかりだろうが……クラン創設そうせつ時には少しは関わり――依頼の取り合いがあったが、それも砂粒すなつぶほどの認識だったに違いない。


 それなのに、なんだこの扱いのされ方は……


 そんな考えをしているのを読みかれたかのような笑い声をエリアベートが上げる。


「あはは、その顔は何を考えているかが良くわかったわ。困り顔だもの! ふふ、貴方あなたって意外と感情表現かんじょうひょうげんゆたかなのね」


 遠回しに百面相ひゃくめんそう面白おもしろおかしい顔だって揶揄からかわれているのだろうか?


 いかん、また表情に出てしまった……


「ふふ、ふふふ! あはははは!」


 ……なんなんだよ、まったく……人の顔を見て笑うなんて。取り留めもない一般的な顔だろうが……少し傷付くぞ?


 まぁ、口に手を当ててる辺りは育ちが良いとは思うけどさ。


「ひっふ! ふふ、ふひゃっく!」


 そんな気持ちを考えていたのも表情から読まれたのだろう、エリアベートが笑いをこらえようとして、ひくつくような音が混じりだした。


 おいおい……大丈夫か?

 はぁ、俺の顔を見て笑ってたと思えば、今度は笑いながらしゃっくりか……


 びっくり人間だな、彼女は。


「だ、大丈夫か? 俺の顔のどこが面白いかは知らないが、そろそろ笑うのをやめてくれ……それに、ギルドが目の前だ。流石に、俺としてもAランク冒険者で『月下の乙女』クラン長――エリアベートに笑われている姿は余計な面倒めんどうが増えそうだ」


 あんまりな扱いに、俺なりの丁寧ていねいな言葉づかいすらおこなうのを忘れ、伝えてしまった。


 流石にこう笑われ続けるのは、こちらとしては面白くはないからな。


 だが、特にいやそうな顔はせずに、手で口をおおいながら息を整えようとしている。


「え、えぇ……ひっ、ひっ、ふぅー……あぁ、可笑おかしい。久々にこんなに楽しく笑ったわ。ますます、好奇心こうきしんいてくる……」


 ようやっと息を整え終わったかと思えば、じぃっと俺を見てくる。


 この目だ。

 綺麗きれいな花――エリアベートの見た目、におい、声が吸い寄せるように……獲物えもの――俺をとらえてのがさない。

 そのひとみの奥に何かを宿やどしているかのようで、先程も感じた恐怖心きょうふしんが背後からにじり寄ってくる感覚がぬぐえない。


 鳥肌とりはだが立っちまう……

 表情もそうだが見透みすかされているかのようで、上手うまかくせてねぇな……


 だが、こんなもんで俺が恐怖に飲まれる訳にいかねぇだろ!


 エリアベートの目線に俺の目線を合わせ、力強く心の中でとなえる。


 そんな俺の目を見ながら、エリアベートが語りかけてきた。


「でも、さっきの言葉はうそね。貴方は周り――この私にですら、何を言われても気にしないでしょう? だって、貴方の目が力強くそう言っているもの。誰であろうと構わずに押し通るって。この私を前にして、本当に面白いわ」


 目に、口に、笑顔が張り付いて、獲物えものねらうかのような視線……

 背筋がブルっときちゃうね……


 もう、ギルドの扉は眼の前だ。さっさとギルドに入ろうっと!


 俺が扉を開き、エリアベートに先に入るように自然と促す。


 レディファーストだ。さぁ、ここからは変なちょっかいは止めてくれよ?


「レディ、どうぞお先に」


「あら、残念。ギルドに付いてしまったわ。それじゃ、ノーマ? また後で会いましょう」


 エリアベートは笑顔を張り付けたままそう言うと、ギルドに入り奥の階段を上がって行った。


 ビッグスと何か先に打ち合わせのようなものでもするのだろうか。何にせよ、助かった……


 Aランク冒険者で年齢不詳ねんれいふしょう伯爵令嬢はくしゃくれいじょう――エリアベート。

 彼女は、何を思い、何を狙っているのか……不安が残る会話、視線だったな……


 インフィオの言うように、何が有るか分からないが……

 できれば、何事もなければ良いのだがな……


 ギルドの受付へ向かおうと考えながらも、階段を上がった先――ギルド長室の方角を一抹いちまつの不安をかかえてながめ、棒立ぼうだちしてしまった。

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暗雲が立ち込めております! (╹▽╹) 現場中継からはノーマくんが確実にロックオンされた模様との報告が来ております。 これは嵐になるかも知れません。 以上、現場リポーターからでした! (「`・ω・)「…
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