47:招集されたモルモット
3日間の武闘祭開催期間が終わり、しばらく経過した。
既に大通りはお祭りムードが鳴りを潜め、いつもの通りに姿を変えている。
それでも人通りは多い方だが、年1度、3日間の武闘祭にどれだけ人が集まっていたかが良く分かるというものだ。
俺は武闘祭の初日にぼろぼろになったので、翌日以降も満足に動けず。そして無理に動く気にもなれずで自宅で療養する事にした。
なのでほぼ、エキシビションのみ楽しんだと言える。
他にも本戦や授賞式を見たり、屋台を楽しみたくもあったが、俺のメイン――エキシビションで疲れ切っていたので今年は仕方なかった。
そうして傷が癒え、祭典が終わり、クラン運営を再び頑張ろうと思い、日々過ごしていた頃。
クランの部門区画に届いた郵便物をローズと確認していると、冒険者ギルドから招集通知が来ていた。
「冒険者ギルドからの努力義務の希望招集? なんだこれ? 日付は今日入れて5日後だけど、なにか受け渡しの際に言われたりしなかった?」
ローズも分からないようで首を傾げる。
「今回は特に何も言われませんでした。なんでしょう? ノーマさんも思い当たるフシはないのですか?」
「う~ん……有るような無いような……ただ、武闘祭が終わってしばらく経ったしなぁ……やっぱりないかなぁ……」
「インフィオさんはなにかお知りですか?」
「ん~……? 最近、なにか動きあったっけかなぁ……? 特に緊急性のある内容はなかったはずだし、懸念事項もなかったはずなんだけどなぁ」
インフィオも不思議そうに首を傾げて答えているところを見るに、なにか問題が起きた訳でもなさそうだな。
う~ん……どうするかな……努力義務の招集だから断ってしまっても良いんだろうけど。
アルメリアとフリュウの経験になる事なら喜んで受けてしまっても良いんだよなぁ。
「どうする? 調査部門で調べておこうか?」
インフィオがこちらを見ながら言う。
どうするか……一応、なんの件で、何をするかだけでも調べてもらっておいた方が良いか。
「頼んでも良いか? インフィオが出るほどの内容でもないだろうから、調査部門で軽く調べてもらえれば良いよ。どういった件で、何をするための招集が入ったのか辺りが分かれば十分だからさ」
「分かった。じゃぁ、調査部門の子達に伝えておくね」
そう言うとインフィオは部門長区画を出て行った。
「じゃぁ、残りの郵便物を確認しちゃおうか」
「はい。あ、こちらは訓練場の請求――」
その日はそのまま別の作業を行い、暗くなって帰宅した。
次の日も同様にクラン運営に関わる作業を行い、その後に訓練場で少しばかりの運動を行って帰宅。
さて、今日も代わり映えのない作業を開始しま――
「ノーマ、今回の招集の件だけどさ」
毎度の事ながらお前はどこから出てくるんだよ……!
イスに座って作業しようとしたら、クラン長室の中央部床が開いてインフィオがこんにちは、とか聞いてねぇし!?
あと、俺が依頼してたクランの建物の設計内容と違うみたいなんですけど!?
「インフィオ! クランの建物どうなってんだ! ネズミの穴じゃねぇんだぞ!?」
「大丈夫。クランの建物強度は問題ないから」
「そういう事じゃ――」
「ねぇ、招集の件。聞かなくて良いの?」
インフィオが俺の言葉を遮って言う。
ぐっ……ま、まぁ……? 先に要件の方を済ましてしまうか……
「それで? どうだったんだ?」
「軽くで良いって話だったから本当に軽くしか調べてないけど、王都の有名な2大クラン『│月下の乙女』、『│雄々しき月光』と新進気鋭な若手クラン『百花繚乱』が招集されたみたい。どうも発起人は月下の乙女だってさ」
「『月下の乙女』ってあれだろ。伯爵令嬢でAランク冒険者の……」
「エリアベート・ナイト・カレンデュラが率いるクランだね。そこからの要請を受けて、冒険者ギルドも努力義務って形で招集の手紙を出したみたい。内容は合同踏破って話だったけど、どこのダンジョンでやるかは確認を取ってないよ」
エリアベート・ナイト・カレンデュラ。
伯爵令嬢でありながら冒険者をしている珍しい女性。
年齢は公には不詳とされているが、俺がクラン創設した年から武闘祭で連覇している猛者――ツワモノだ。
そして、今、最もSランクに近いと噂される程の冒険者……
エリアベートからの合同踏破……自身がAランク冒険者である事を考えれば、ただの合同踏破のお誘いとは思い込めないよな……
これは、虎穴に入って良いものか否か……
「大分、おかしな話だよね。エリアベートが居るんだから大抵のダンジョンなんて踏破できちゃうだろうし」
「そうだな……今回、招集に応じても依頼の強制受注はないはず。であれば、行っても良いとは思うんだけどな」
2日後――明後日の招集かぁ……できればインフィオを動かして調べてもらいたくもなるが……相手はAランク冒険者で得体が知れない。バレた場合には相応の報復もあり得る……
噂話ではあるが、見目麗しい女性であれば、とても紳士的な淑女として接するなんて聞いた覚えは有る。
やめておくか……インフィオが捕まった時に大変な状況になりそうだしな。
Aランク冒険者を相手取るのは、インフィオにはまだ厳しいはずだ。Bランクなら可能だろうが、な。
ま、面の皮を厚くして招集に行くとしようか。当日、ギルドで話を聞いて、依頼が合わないと思ったら断ってやれば良い。
「よし、行ってみるとしようか。インフィオ、この件はもう調べなくて良いぞ。エリアベート――Aランク冒険者と喧嘩になりたくないしな」
「そう? じゃぁ、当日は何が有るか分からないし、気を付けてね」
「あぁ、ありがとうな。それじゃ、また仕事に戻るか……」
そうして2日後、発起人エリアベートによる希望招集の日がやってきた。




