表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
才能がなかった俺は、仲間をS級に導き、『花園の批評家(レビュアー)』と呼ばれるようになった。  作者: マボロシ屋
4章 無能者のディアナ王国武闘祭

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/139

39:なぜかレビューをしてしまう男#

 ガウルとアリアとの訓練を終えた以降も、1日おきに休みをはさんで『開花』――六花りっかの皆に付き合ってもらっていた。

 だが、何度もやっていると前衛のガウル、アリアの動きがどうしても気になってしまった。


 そして、気付けば俺の武闘祭に向けての訓練ではなく、皆のあらさを正す訓練となっていた。


「ガウル! 俺との訓練の時を思い出せ! 体さばきと視線をもっと意識しろ! 頭に血が上った時のお前はフェイントがないんだ! ただのけものになれば、お前が普段倒してる魔物と変わらないぞ! 素早く振られた剣は見えなくても、軌道きどうが読まれていれば待ち構えて受け止められる! それでは意味がない! 考えるより体に覚えこませろ。慣れで自然と使えるようになれ!」


「う、うぅうううっ!!!」


 ガウルはうなるように声を出しながら頭をガシガシとする。ショートパーマのねた赤髪がバサバサとされ、大粒の汗も飛び散る。


「アリア! フェイントを入れた後の手足の挙動に気をつけろ! 俺がお前の最高速に目が追いついていなくても最後に蹴りを防げたのは、予兆が読みやすいからだ! あそこで蹴りの動作に見せかけ、それ以外の体術に切り替えるなりしてみせろ! そんなもんがBランクか!?」


「あぁああーっ!! もうっ!!」


 アリアも声をあげながら俺の指示に従っている。


 ……おかしな話だ。

 C級ダンジョンの時には何もできないと思い知らされ、既に手から離れたと思っていた。


 だが、訓練場でやりあってみれば、まだ俺の手を完全には離れていなかった。

 B級の冒険者でさえ、どこか気付けない欠点がある。


 まだ俺は、『開花』の役に立てているのだろう。


 と言うよりも俺自身、まだまだ批評レビューに粗さもあったのだろう。『花園の批評家レビュアー』などと言われて天狗てんぐになっていた部分もなかったとは言い切れない。


 実力Dランクに防がれるようではいけない。彼女達をSランクに到達とうたつさせなければならないのだから。


 最初に批評した花――六花を眺め、そんな事を考えているとアイシャから声がかかる。


「ノーマ、自分の訓練は良いの? Bランクのガウルとアリアに指南しなんつけるより、目下もっか、自分の事じゃない?」


「あ~……結果的に指南する事で、前衛ぜんえいの動きやくせを再度学ぶ事もできるからな。本当ならもう少し俺の訓練を増やすべきだろうが、俺は魔力が切れて倒れるのも早いし。だから先に、ってな」


「そう? もしあれなら、魔力なしで一緒に訓練する?って誘おうと思ってたんだけど。今はやめとこうかしら?」


 そう言われ、アイシャの握る武器を見る。


 アイシャの武器は細剣レイピアに近い形状で切るより刺す方がメイン。

 俺がよく使う刺突しとつの手本にも、武器は違えどなるはずだ……


 それにカリストは協会騎士とはいえ、当然メジャーな武器での戦い方は学んでいるはずだ。

 もしも普段と違う武器を用いてきた場合の為にも、刺突を避ける練習もしておかなければならないな。


「少しの間、待ってもらえるか? ガウルにり込みが終わったら相手をしてもらおうかな。訓練相手は多ければ多いほどに良いからな」


「はーい。それじゃ、その時に声かけてね!」


 アイシャは手をひらひらとさせながら元居た場所に戻っていった。


「ガウル! 守りのイリアに動きが読まれてるぞ! 俺と訓練するのが久しぶりで刷り込みが鈍ったか! アリア、お前ももっと――」


 少しばかり時間はかかったが、ガウルとアリアの粗さを少しは取れてきたと判断できる程度の動きが見えだした。


 これで後は反復だ。

 ようやっと自身の訓練へと移れる。


 アイシャに声をかけ、抜剣ばっけんして構える。


 お互いの視線、息遣いきづかい、体の動きを意識しながら戦いを何度も行っていく。


 魔力なしでの剣技のみでのさばき合いも中々に面白く、学びがある。

 普段のように魔力を使用すれば、剣技として絶大な威力いりょくを放つ突きや横なぎだが、魔力がなければ印象も変わる。


 脅威ではある、が剣や体に流された魔力量に翻弄ほんろうされているのではないか?と感じさせる一幕ひとまくもあるからだ。

 ガウルの一撃、アリアの体術も同様だろう。


 アルメリアとフリュウにも、恐れすぎるな、と言ったように……俺もあと少し引き付ける、もしくは逆に詰め寄る事ができるかもしれない。魔力の差が実力の差ではないのだから。


 俺はアイシャとの訓練を続けながら、改めて思考にきざみ付けるための策を講じる。


「アイシャ、もっと俺を殺す気で来てくれ。それと、次の試合は魔力を全力で乗せて、俺を本気で刺しに来い」


「えぇ……!? 本当に刺しちゃうかもしれないよ、良いの!?」


「あぁ、刺せるもんなら刺せ!」


 俺の言葉に戸惑うように視線が揺れていたが、すぐに収まり俺を見据える。


「殺す気って言っても難しいんだよ……? ちょっと待ってね……後、致命傷はしっかり、避けてね。信じてるから」


 良いさ、ゆっくりでも大丈夫だ。

 だが、今よりももっと殺気を乗せて俺に飛び込んで来てくれ。死に至る可能性のある一撃を俺にやって来い!


 今よりももっと勇ましく、そしてはたから見れば浅ましい事と映るだろう。

 けれど、そこに可能性を感じられるのだから、試してみるしかない!


「あぁ、時間はまだまだある。ゆっくりと、俺を殺す気持ちを高めてくれ」


 来い……魔力にまどわされるな。臆病おくびょうなのは悪い事じゃない。

 だが、もっと強化の瞬間しゅんかんを待てるはずだ! 身体強化の効率化こうりつか防御ぼうぎょ回避かいひに、攻撃を同時で行うくらいに!


 回避に移るのは、アリアのように視認が厳しいほどの全速力攻撃でない限り、ぎりぎりでも間に合う場面は多い!

 だからこそ、回避を少なくして受け流す機会を増やす。そこに隙を生み出せ。そして反撃を繰り出せ!


「じゃぁ、良いね……? 行くよ、ノーマ」


 準備が整ったのだろうアイシャが声をかけてくる。


 大丈夫だ、俺も覚悟が決まった。


 アイシャに頷き、告げる。


「来いっ!!」


 その声にアイシャが反応する。魔力を、視線からは必ず殺すといった凄みを感じさせる。


 大きく踏み込む一歩。当然、早い……身体強化は目にのみ断続的に行う。だが、目以外にはまだだ……!


 いつもであれば、相手の踏み込みと攻撃動作に合わせて発動させ回避をするが、それでは進歩がない!


 ぎりぎり――!

 ぎりぎりをっ――!!


 コマ送りに見えるアイシャの動き。見切れっ――!


 迫る細剣に身体強化の施されていない体を動かし、一歩前に進もうとする。

 視界からの情報処理の負荷は脳にかかり、体を無理に動かそうとすれば水の中にいるよりも重く感じる。


 だが、一歩前に進んだ、この死地こそが――!!

 今っ! 腕と足に身体強化を! 必死に腕を細剣に合わせろ! 細剣に少し腕の肉を削がれながらの回避で良い! 


「うそ……強化は一瞬だけのはずなのに……前に出てきて首を狙うなんて……」


 アイシャが呟く。


 当然だ。なぜなら、細剣のつばを肉がえぐられた血濡れの手でがっちりと掴み、アイシャの肩に俺の剣を乗せているのだから。この距離までくれば相手の身体強化の前に首を狙える。


「はは、ははは! これだ……これが無能者の、格上の殺し方だ……!」


 俺は痛みなど興奮で麻痺したまま、今の感覚に酔いしれる。


 自分自身で花丸を付けて高笑いし続けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
Bにも負けないDの爆誕ですね〜。 本気で相手が仕掛けて来ないと成立しない、という致命的な欠点は、何か別のことで解消するのかな? (*´ω`*) ※ランクの実力差だと、本気じゃ無くて余力を残しての攻撃…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ